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磁気記録媒体基板用ガラスおよび磁気記録媒体基板

阅读:607发布:2024-01-23

专利汇可以提供磁気記録媒体基板用ガラスおよび磁気記録媒体基板专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且【課題】高結晶磁気異方性定数(Ku) 磁性 材料を使用するための高い耐熱性と高度な機械的強度とを兼ね備える磁気記録媒体 基板 用ガラス及び磁気記録媒体基板の提供。【解決手段】必須成分として、SiO2、Li2O、Na2O、及びMgOを含み、Li2O、Na2O及びK2Oからなる群から選ばれるアルカリ金属 酸化 物を合計で6〜15モル%含み、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を合計で10〜30モル%含み、Li2O/(Li2O+Na2O+K2O)が0〜0.3、MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)が0.80以上、ガラス転移 温度 が650℃以上、ヤング率が80GPa以上である磁気記録媒体媒体用ガラス。【選択図】なし,下面是磁気記録媒体基板用ガラスおよび磁気記録媒体基板专利的具体信息内容。

  • 必須成分として、SiO 2 、Li 2 O、Na 2 O、およびMgOを含み、
    Li 2 O、Na 2 OおよびK 2 Oからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物を合計で6〜15モル%含み、
    MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を合計で10〜30モル%含み前記アルカリ金属酸化物の合計含有量に対するLi 2 O含有量のモル比{Li 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0超かつ0.3以下、
    前記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するMgOの含有量のモル比{MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)}が0.80以上、
    ガラス転移温度が650℃以上、
    ヤング率が80GPa以上、
    である磁気記録媒体基板用ガラス。
  • 前記アルカリ金属酸化物および前記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するMgO、CaOおよびLi 2 Oの合計含有量のモル比{(MgO+CaO+Li 2 O)/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O+MgO+CaO+SrO+BaO)}が0.50以上、
    である請求項1に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
  • 前記アルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するCaOの含有量のモル比{CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)}が0.20以下である請求項1または2に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
  • 100〜300℃における平均熱膨張係数が55×10 -7 /℃以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
  • モル%表示で、
    SiO 2を56〜75%、
    Al 23を1〜20%、
    Li 2 Oを0%超かつ3%以下、
    Na 2 Oを1%以上かつ15%未満、
    MgOを8〜30%、
    ZrO 2 、TiO 2 、Y 23 、La 23 、Gd 23 、Nb 25およびTa 25からなる群から選ばれる酸化物を合計で0モル%超かつ10%以下、
    含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
  • モル%表示で、
    SiO 2を56〜75%、
    Al 23を1〜20%、
    Li 2 Oを0%超かつ3%以下、
    Na 2 Oを1%以上かつ15%未満、
    2 Oを0%以上3%未満、
    MgOを8〜30%、
    含み、かつBaOを実質的に含まず、
    アルカリ金属酸化物の合計含有量に対するK 2 O含有量のモル比{K 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0.08以下である含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
  • 比弾性率が30MNm/kg以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
  • 化学強化用ガラスである請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラス。
  • 請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラスからなる磁気記録媒体基板。
  • 請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁気記録媒体基板用ガラスを化学強化してなる磁気記録媒体基板。
  • 破壊靭性値が0.9MPa・m 1/2以上のガラスからなる請求項9または10に記載の磁気記録媒体基板。
  • バビネ法により求められる2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状であり、ただし該凸形状は圧縮応力側へ凹む凹み部を含まない化学強化ガラスからなる請求項10に記載の磁気記録媒体基板。
  • バビネ法により求められる引張応力の平均値Tavと引張応力の最大値Tmaxとが、下記式(1)を満たす化学強化ガラスからなる請求項10に記載の磁気記録媒体基板。
    Tav/Tmax≧0.4 …(1)
  • 说明书全文

    本発明は、ハードディスク等の磁気記録媒体の基板材料として好適な磁気記録媒体基板用ガラス、およびこのガラスを使用した磁気記録媒体基板に関する。

    インターネットなどの情報関連インフラ技術の進展に伴い、磁気ディスク、光ディスクなどの情報記録媒体の需要は急速に伸びている。 コンピュータなどの磁気記憶(記録)装置の主要構成要素は、磁気記録媒体と磁気記録再生用の磁気ヘッドである。 磁気記録媒体としてはフレキシブルディスクとハードディスクとが知られている。 このうちハードディスク(磁気ディスク)用の基板材料としては、例えば、アルミニウム基板、ガラス基板、セラミック基板、カーボン基板等があり、実用的には、サイズや用途に応じて、主に、アルミニウム基板とガラス基板とが使用されている。 ノートパソコン用ハードディスクドライブにおいては、耐衝撃性に加えて、磁気記録媒体の高密度記録化に伴いディスク基板の表面平滑性の向上への要求はますます厳しくなっているため、表面硬度、剛性に劣るアルミニウム基板で対応するには限界がある。 そこでガラス基板の開発が、現在主流となっている(例えば特許文献1〜4参照)。

    また近年、磁気記録媒体のより一層の高密度記録化を図ることを目的として、Fe−Pt系、Co−Pt系等の磁気異方性エネルギーが高い磁性材料(高Ku(結晶磁気異方性定数)磁性材料)を使用することが検討されている(例えば特許文献5参照)。 高記録密度化のためには磁性粒子の粒径を小さくする必要があるが、一方で、粒径が小さくなると、熱揺らぎによる磁気特性の劣化が問題となる。 高Ku磁性材料は熱揺らぎの影響を受けにくいため、高密度記録化に寄与すると期待されている。

    特開2001−134925号公報

    特開2011−251854号公報

    特開2004−43295号公報

    特開2005−314159号公報

    特開2004−362746号公報

    しかし高Ku磁性材料は、高いKuを実現するために特定の結晶配向状態を得る必要があり、そのため、高温での成膜、あるいは成膜後に高温で熱処理を行う必要がある。 したがって、これらの高Ku磁性材料からなる磁気記録層を形成するためには、ガラス基板には高温処理に耐え得る高い耐熱性、即ち高いガラス転移温度を有することが求められる。

    一方、磁気記録媒体を構成するガラス基板には、高度な機械的強度も求められる。 磁気記録媒体は、例えば1分間あたり数千回転から数万回転で高速回転するため、ガラス基板には高速回転時に大きな変形を起こさない高い剛性(ヤング率)を有することが求められる。 また、磁気ヘッドと磁気記録媒体との衝撃や磁気記憶装置自体の衝撃に対して、ガラス基板にクラックや割れ等の損傷が生じないように優れた耐衝撃性が求められる。 特に、近年検討が進められている熱アシスト方式の磁気記録媒体のように極めて高い記録密度に適用される磁気記録媒体用のガラス基板には、高度な機械的強度が特に求められている。

    しかしながら、磁気記録媒体の高記録密度化に対応すべくガラス基板の耐熱性を高めるようにガラスの組成調整を行うと、機械的強度が低下してしまう傾向にある。

    本発明の一態様は、高い耐熱性と高度な機械的強度とを兼ね備える磁気記録媒体基板用ガラスおよび磁気記録媒体基板を提供する。

    本発明の一態様は、
    必須成分として、SiO 2 、Li 2 O、Na 2 O、およびMgOを含み、
    Li 2 O、Na 2 OおよびK 2 Oからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物を合計で6〜15モル%含み、
    MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を合計での10〜30モル%含み、
    上述のアルカリ金属酸化物の合計含有量に対するLi 2 O含有量のモル比{Li 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0超かつ0.3以下、
    上述のアルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するMgOの含有量のモル比{MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)}が0.80以上、
    ガラス転移温度が650℃以上、かつ ヤング率が80GPa以上、
    である磁気記録媒体基板用ガラス、
    に関する。

    上述の磁気記録媒体基板用ガラスは、高度な耐熱性と機械的強度を有するガラス組成物から形成されたガラスであり、高いガラス転移温度と高いヤング率を兼ね備えている。

    本発明によれば、高Ku磁性材料からなる磁気記録層を形成する際の高温熱処理に耐え得る高い耐熱性、および高速回転や衝撃に耐え得る高い機械的強度を有する磁気記録媒体基板、およびこの基板を備えた磁気記録媒体を提供することができる。

    図1は、化学強化ガラス基板における応プロファイルの模式図である。

    図2は、化学強化ガラス基板における応力プロファイルの模式図である。

    図3は、式(1)の説明図である。

    図4は、式(1)の説明図である。

    図5は、モル比{MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)}と化学強化ガラス基板の破壊靭性値の関係を示す図である。

    図6は、モル比{CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)}と化学強化ガラス基板の破壊靭性値の関係を示す図である。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは、必須成分として、SiO 2 、Li 2 O、Na 2 O、およびMgOを含み、Li 2 O、Na 2 OおよびK 2 Oからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物を合計で6〜15モル%含み、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を合計で10〜30モル%含み、上述のアルカリ金属酸化物の合計含有量に対するLi 2 O含有量のモル比{Li 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0超かつ0.3以下、上述のアルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するMgOの含有量のモル比{MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)}が0.80以上、ガラス転移温度が650℃以上、かつヤング率が80GPa以上、である磁気記録媒体基板用ガラスである。

    本発明の更なる態様は、
    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスからなる磁気記録媒体基板;および、
    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用を化学強化してなる磁気記録媒体基板、
    に関する。

    以下に、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスおよび基板の諸特性について説明する。 特記しない限り、以下の諸特性は、化学強化された基板については化学強化後の値をいうものとする。

    1. ガラス転移温度 前述のとおり、高Ku磁性材料の導入などによって磁気記録媒体の高記録密度化を図る場合、磁性材料の高温処理などにおいて、磁気記録媒体用ガラス基板は高温下に晒されることになる。 その際、基板の極めて高い平坦性が損なわれないようにするため、磁気記録媒体用ガラス基板には優れた耐熱性を有することが求められる。 耐熱性の指標としてはガラス転移温度が用いられ、本発明の一態様にかかるガラスは、650℃以上のガラス転移温度を有することで、高温処理後にも優れた平坦性を維持することができる。 したがって、本発明の一態様にかかるガラスは、高Ku磁性材料を備えた磁気記録媒体用基板の作製に好適である。 ガラス転移温度の好ましい範囲は670℃以上である。 ガラス転移温度の上限は、例えば750℃程度であるがガラス転移温度は高いほど好ましく特に限定されるものではない。 なお、ガラス転移温度は化学強化の前後でほぼ一定の値となる。

    2. ヤング率 磁気記録媒体の変形としては、HDDの温度変化による変形の他、高速回転による変形がある。 高速回転時の変形を抑制する上から、上述のように磁気記録媒体基板のヤング率を高めることが求められる。 本発明の一態様にかかるガラスは、80GPa以上のヤング率を有するため、高速回転時の基板変形を抑制し、高Ku磁性材料を備えた高記録密度化された磁気記録媒体においても、データの読み取り、書き込みを正確に行うことができる。
    ヤング率の好ましい範囲は81GPa以上であり、より好ましくは82GPa以上であり、更に好ましくは83GPa以上であり、一層好ましくは84GPa以上であり、より一層好ましくは85GPa以上であり、更に一層好ましくは86GPa以上である。 ヤング率の上限は、特に限定されるものではないが、他の特性を好ましい範囲にする上から、例えば95GPaを上限の目安と考えることができる。 なおヤング率も、化学強化処理の前後で、ほぼ一定の値となる。

    3. 熱膨張係数 磁気記録媒体用ガラス基板を構成するガラスとHDDのスピンドル材料(例えば、ステンレスなど)の熱膨張係数の差が大きいと、HDDの動作時における温度変化によって磁気記録媒体が変形し、記録再生トラブルが起こるなど信頼性が低下することになってしまう。 特に、高Ku磁性材料からなる磁気記録層を有する磁気記録媒体は、記録密度が極めて高いため、磁気記録媒体の僅かな変形によっても前記トラブルが起こりやすくなる。 一般にHDDのスピンドル材料は、100〜300℃の温度範囲において55×10 -7 /℃以上の平均線膨張係数(熱膨張係数)を有するものであるところ、本発明の一様態にかかるガラスは、100〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数が55×10 -7 /℃以上であるため信頼性を向上することができ、高Ku磁性材料からなる磁気記録層を有する磁気記録媒体に好適な基板を提供することができる。
    上述の平均線膨張係数の好ましい範囲は60×10 -7 /℃以上、より好ましい範囲は63×10 -7 /℃以上、さらに好ましい範囲は65×10 -7 /℃以上、一層好ましい範囲は70×10 -7 /℃以上、より一層好ましい範囲は75×10 -7 /℃以上である。 上述の平均線膨張係数の上限は、スピンドル材料の熱膨張特性を考慮すると、例えば120×10 -7 /℃程度であることが好ましく、100×10 -7 /℃であることがより好ましく、88×10 -7 /℃であることがさらに好ましい。 なお、熱膨張係数は、化学強化の前後でほぼ一定の値となる。
    また、一態様では、500〜600℃の温度範囲における平均線膨張係数が60×10 -7 /℃以上であることが好ましい。 さらに好ましい範囲は65×10 -7 /℃以上、一層好ましい範囲は70×10 -7 /℃以上である。 上述の平均線膨張係数の上限は、例えば100×10 -7 /℃以下であることが好ましく、90×10 -7 /℃であることがより好ましい。 500〜600℃の温度範囲における平均線膨張係数が上述の範囲のガラスを用いて基板を作製することにより、高Ku磁性材料等の多層膜を成膜後、アニール処理中や処理後に多層膜がガラス基板から剥離することや、アニール処理中に基板が保持部材から落下することを、確実に防止することができる。

    4. 比弾性率・比重 磁気記録媒体を高速回転させたときの変形(基板のたわみ)を抑制する上から、基板材料として高い比弾性率を有するガラスが好ましい。 比弾性率も化学強化の前後でほぼ一定の値となるが、本発明の一態様にかかるガラスにおける比弾性率の好ましい範囲は、30.0MNm/kg以上である。 比弾性率は30.0MNm/kg超であることがより好ましく、30.5MNm/kg以上であることが更に好ましい。 その上限は、例えば40.0MNm/kg程度であるが特に限定されるものではない。 比弾性率はガラスのヤング率を密度で除したものである。 ここで密度とはガラスの比重に、g/cm 3という単位を付けた量と考えればよい。 ガラスの低比重化によって、比弾性率を大きくすることができることに加え、基板を軽量化することができる。 基板の軽量化により、磁気記録媒体の軽量化がなされ、磁気記録媒体の回転に要する電力を減少させ、HDDの消費電力を抑えることができる。 本発明の一態様にかかるガラスの比重の好ましい範囲は2.90以下、より好ましい範囲は2.80以下、さらに好ましい範囲は2.70未満である。

    5. 破壊靭性値 破壊靭性値は、以下の方法で測定される。
    AKASHI社製の装置MVK−Eを用い、板状に加工した試料に押し込み荷重P[N]でビッカース圧子を押し込み、試料に圧痕およびクラックを導入する。 試料のヤング率をE[GPa]、圧痕対線長さをd[m]、表面クラックの半長をa[m]とすると破壊靭性値K 1c [Pa・m 1/2 ]は下式で表される。
    1c =[0.026(EP/π) 1/2 (d/2)(a) -2 ]/[(πa) -1/2 ]
    本発明の一態様にかかる基板を構成するガラスの破壊靭性値(荷重P=9.81N(1000gf))は0.9MPa・m 1/2以上であることが好ましい。 破壊靭性は耐熱性とトレードオフの関係にあり、磁気記録媒体の記録密度を高くするために基板の耐熱性を高めると破壊靭性値が低下し、耐衝撃性が低下してしまう。 これに対し本発明の一態様によれば、破壊靱性値を高めつつ耐熱性、剛性、熱膨張特性をバランスさせた高記録密度対応の磁気記録媒体に好適なガラス基板を提供することができる。 破壊靭性値の好ましい範囲は1.0MPa・m 1/2以上、より好ましい範囲は1.1MPa・m 1/2以上、更に好ましい範囲は1.2MPa・m 1/2以上である。 破壊靭性値が0.9MPa・m 1/2以上であることにより、耐衝撃性が優れ、信頼性の高い高記録密度対応の磁気記録媒体を提供することができる。 なお、特記しない限り、本発明において破壊靭性値とは、荷重Pを9.81N(1000gf)として測定される破壊靭性値を意味する。 破壊靱性値の測定は、圧痕対角線長さd、表面クラックの半長aを正確に測定する上から、ガラスの平滑面、例えば研磨された面において行うことが好ましい。 また本発明において、化学強化されたガラスからなる基板についての破壊靭性値は化学強化されたガラスの値とする。 上述の破壊靱性値は、ガラス組成によっても変化し、また化学強化条件によっても変化するため、化学強化されたガラスからなる本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板を得るためには、組成調整および化学強化処理条件によって、上述の破壊靱性値を所望の範囲とすることができる。

    本発明の一態様にかかる基板を構成するガラスの破壊靭性値を、荷重Pを4.9N(500gf)としたときの破壊靭性値で表すこともできる。 その場合、破壊靭性値(荷重P=4.9N(500gf))は0.9MPa・m 1/2超であることが好ましく、1.0MPa・m 1/2以上であることがより好ましく、1.1MPa・m 1/2以上であることが更に好ましく、1.2MPa・m 1/2以上であることが一層好ましく、1.3MPa・m 1/2以上であることがより一層好ましい。

    6. 耐酸性 磁気記録媒体用ガラス基板を生産する際には、ガラスをディスク形状に加工し、主表面を極めて平坦かつ平滑に加工する。 そして、上述の加工工程の後、通常、ガラス基板を酸洗浄して表面に付着した汚れである有機物を除去する。 ここでガラス基板が耐酸性に劣るものであると、上述の酸洗浄時に面荒れを起こし、平坦性、平滑性が損なわれ磁気記録媒体用ガラス基板として使用することが困難となる。 特にガラス基板表面の高い平坦性、平滑性が求められる高Ku磁性材料からなる磁気記録層を有する、高記録密度化された磁気記録媒体用ガラス基板は、優れた耐酸性を有することが望ましい。
    また、酸洗浄に続いて、アルカリ洗浄して表面に付着した研磨剤などの異物を除去して一層清浄な状態の基板を得ることができる。 アルカリ洗浄時にも面荒れによる基板表面の平坦性、平滑性の低下を防ぐ上からガラス基板は耐アルカリ性に優れたものであることが好ましい。 優れた耐酸性および耐アルカリ性を有し基板表面の平坦性、平滑性が高いことは、前述の低浮上量化の観点からも有利である。 本発明の一態様では、ガラス組成の調整、特に化学的耐久性に有利な組成調整を行うことにより、優れた耐酸性および耐アルカリ性を実現することができる。

    7. 液相温度 液相温度とは、固体のガラスを所定範囲の速度で昇温し、各温度に保持した場合、結晶が析出しない最低の保持温度である。 ガラスを熔融し、得られた熔融ガラスを成形する際、成形温度が液相温度を下回るとガラスが結晶化し、均質なガラスが生産できない。 そのためガラス成形温度は液相温度以上にする必要があるが、成形温度が1300℃を超えると、例えば熔融ガラスをプレス成形する際に用いるプレス成形型が高温のガラスと反応して、ダメージを受けやすくなる。 熔融ガラスを鋳型に鋳込んで成形する場合も同様に鋳型がダメージを受けやすくなる。 こうした点に配慮し、本発明の一態様にかかるガラスの液相温度は1300℃以下であることが好ましい。 液相温度のより好ましい範囲は1280℃以下、さらに好ましい範囲は1250℃以下である。 本発明の一態様では、前記したガラス組成調整を行うことにより、上述の好ましい範囲の液相温度を実現することができる。 下限は特に限定されないが、800℃以上を目安に考えればよい。

    8. 分光透過率 磁気記録媒体は、ガラス基板上に磁気記録層を含む多層膜を成膜する工程を経て生産される。 現在、主流になっている枚葉式の成膜方式で基板上に多層膜を形成する際、例えばまずガラス基板を成膜装置の基板加熱領域に導入しスパッタリングリングなどによる成膜が可能な温度にまでガラス基板を加熱昇温する。 ガラス基板の温度が十分昇温した後、ガラス基板を第1の成膜領域に移送し、ガラス基板上に多層膜の最下層に相当する膜を成膜する。 次にガラス基板を第2の成膜領域に移送し、最下層の上に成膜を行う。 このようにガラス基板を後段の成膜領域に順次移送して成膜することにより、多層膜を形成する。 上述の加熱と成膜は真空ポンプにより排気された低圧下で行うため、ガラス基板の加熱は非接触方式を取らざるを得ない。 そのため、ガラス基板の加熱には輻射による加熱が適している。 この成膜はガラス基板が成膜に好適な温度を下回らないうちに行う必要がある。 各層の成膜に要する時間が長すぎると加熱したガラス基板の温度が低下し、後段の成膜領域では十分なガラス基板温度を得ることができないという問題が生じる。 ガラス基板を長時間にわたって成膜可能な温度を保つためには、ガラス基板をより高温に加熱することが考えられるが、ガラス基板の加熱速度が小さいと加熱時間をより長くしなければならず、加熱領域にガラス基板が滞在する時間も長くしなければならない。 そのため各成膜領域におけるガラス基板の滞在時間も長くなり、後段の成膜領域では十分なガラス基板温度を保てなくなってしまう。 さらにスループットを向上することも困難となる。 特に高Ku磁性材料からなる磁気記録層を備えた磁気記録媒体を生産する場合、所定時間内にガラス基板を高温に加熱するために、ガラス基板の輻射による加熱効率を一層高めるべきである。

    SiO 2 、Al 23を含むガラスには、波長2750〜3700nmを含む領域に吸収ピークが存在する。 また、後述する赤外線吸収剤を添加するか、ガラス成分として導入することにより、さらに短波長の輻射の吸収を高めることができ、波長700nm〜3700nmの波長領域に吸収を持たせることができる。 ガラス基板を輻射、すなわち、赤外線照射により効率よく加熱するには、上述の波長域にスペクトルの極大が存在する赤外線を用いることが望まれる。 加熱速度を上げるには、赤外線のスペクトル極大波長と基板の吸収ピーク波長をマッチさせるとともに赤外線パワーを増やすことが考えられる。 赤外線源として高温状態のカーボンヒータを例にとると、赤外線のパワーを増加するにはカーボンヒータの入力を増加すればよい。 しかし、カーボンヒータからの輻射を黒体輻射と考えると、入力増加によってヒータ温度が上昇するため、赤外線のスペクトルの極大波長が短波長側にシフトし、ガラスの上述の吸収波長域から外れてしまう。 そのため、基板の加熱速度を上げるためにはヒータの消費電力を過大にしなければならず、ヒータの寿命が短くなってしまうなどの問題が発生する。

    このような点に鑑み、上述の波長領域(波長700〜3700nm)におけるガラスの吸収をより大きくすることにより、赤外線のスペクトル極大波長と基板の吸収ピーク波長を近づけた状態で赤外線の照射を行い、ヒータ入力を過剰にしないことが望ましい。 そこで赤外線照射過熱効率を高めるため、ガラス基板としては、700〜3700nmの波長域に、厚さ2mmに換算した分光透過率が50%以下となる領域が存在するか、または、前記波長域にわたり、厚さ2mmに換算した分光透過率が70%以下となる透過率特性を備えるものが好ましい。 例えば、鉄、銅、コバルト、イッテルビウム、マンガン、ネオジム、プラセオジム、ニオブ、セリウム、バナジウム、クロム、ニッケル、モリブデン、ホルミウムおよびエルビウムの中から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物は、赤外線吸収剤として作用し得る。 また、分または水分に含まれるOH基は、3μm帯に強い吸収を有するため、水分も赤外線吸収剤として作用し得る。 ガラス組成に上述の赤外線吸収剤として作用し得る成分を適量導入することにより、ガラス基板に上述の好ましい吸収特性を付与することができる。 上述の赤外線吸収剤として作用し得る酸化物の添加量は、酸化物として質量基準で500ppm〜5%であることが好ましく、2000ppm〜5%であることがより好ましく、2000ppm〜2%であることがさらに好ましく、4000ppm〜2%の範囲がより一層好ましい。 また、水分については、H 2 O換算の重量基準で200ppm超含まれることが好ましく、220ppm以上含まれることがより好ましい。
    なお、Yb 23 、Nb 25をガラス成分として導入する場合や清澄剤としてCe酸化物を添加する場合は、これら成分による赤外線吸収を基板加熱効率の向上に利用することができる。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは酸化物ガラスであり、そのガラス組成は酸化物基準で表示するものとする。 酸化物基準のガラス組成とは、ガラス原料が熔融時にすべて分解されてガラス中で酸化物として存在するものとして換算することにより得られるガラス組成である。 上述のガラスは、結晶化のための熱処理工程が不要なこと、および加工性が優れていることから、非晶性(アモルファス)ガラスであることが好ましい。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは化学強化に好適である。 本発明の一態様において、化学強化は低温型化学強化を意味する。
    また本発明において、「主表面」とは、ガラス基板またはガラスの表面のうち、最も面積の広い面を意味する。 ディスク状ガラス基板の場合、ディスクの円形状の表裏対向する一対の表面(中心穴がある場合は中心穴を除く。)が主表面に相当する。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスのガラス組成は、必須成分として、SiO 2 、Li 2 O、Na 2 O、MgOを含み、Li 2 O、Na 2 OおよびK 2 Oからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物を合計で6〜15モル%含み、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を合計で10〜30モル%含み、アルカリ金属酸化物の合計含有量に対するLi 2 O含有量のモル比{Li 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0超かつ0.3以下、アルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するMgOの含有量のモル比{MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)}が0.80以上である。
    以下、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスのガラス組成について、更に詳細に説明する。 なお、特記しない限り、各成分の含有量、合計含有量、比率はモル基準で表示するものとする。

    SiO 2は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラス安定性、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させる効果がある。 磁気記録媒体用ガラス基板上に磁気記録層等を成膜する工程や前記工程により形成した膜を熱処理するため、輻射によって基板を加熱する際、基板の熱拡散を低下させ、加熱効率を高める働きをする成分でもある。 SiO 2の含有量が過剰になるとSiO 2が完全に熔けずにガラス中に未熔解物が生じたり、清澄時のガラスの粘性が高くなりすぎて泡切れが不十分になる。 未熔解物を含むガラスから基板を作製すると、研磨によって基板表面に未熔解物による突起が生じ、極めて高い表面平滑性が求められる磁気記録媒体基板としては使用できなくなる。 また、泡を含むガラスから基板を作製すると、研磨によって基板表面に泡の一部が現れ、その部分が窪みとなって基板の主表面の平滑性が損なわれるため、やはり磁気記録媒体基板として使用できなくなる。 以上の理由により、SiO 2の含有量は56〜75%とすることが好ましく、58〜70%がより好ましく、60〜67%が更に好ましい。

    Al 23は、ガラスのネットワーク形成に寄与し、剛性および耐熱性を向上させる働きをする成分である。 ガラスの耐失透性(安定性)を良好に維持する観点からは、Al 23の含有量は20%以下であることが好ましい。 また、ガラスの安定性、化学的耐久性、および耐熱性を良好に維持する観点からは、Al 23の含有量は1%以上であることが好ましい。 ガラスの安定性、化学的耐久性および耐熱性の観点から、Al 23の含有量のより好ましい範囲は1〜15%、さらに好ましい範囲は1〜11%である。 ガラスの安定性、化学的耐久性および耐熱性の観点から、Al 23の含有量のより好ましい範囲は1〜10%、更に好ましい範囲は2〜9%、一層好ましい範囲は3〜8%である。 また、ガラス基板に対して化学強化処理を行う観点からは、Al 23の含有量は、5〜20%の範囲が好ましい。

    上述のSiO 2およびAl 23を含むガラスの中でより好ましいガラスは、ガラス成分としてアルカリ金属酸化物R 2 O(Rは、Li、Na、またはKを表す。)を含むガラスである。 R 2 Oは、ガラスの熔融性を改善し、ガラスの均質性を改善する効果、熱膨張係数を大きくする効果があり、化学強化を可能にする成分でもある。 本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスにおいて、R 2 Oとしては、高耐熱性を損なわず、化学強化に有効に働くLi 2 OおよびNa 2 Oを必須成分として含有させる。

    Li 2 Oの導入量がアルカリ金属酸化物の合計含有量(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)に対して過剰であると耐熱性の低下を招き、過少になると化学強化性能の低下を招く。 そこで本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスでは、アルカリ金属酸化物の合計含有量に対するLi 2 O含有量のモル比{Li 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0超かつ0.3以下となるように、Li 2 Oの導入量をアルカリ金属酸化物の合計に対して調整する。 後述するLi 2 Oの導入による効果を得つつ耐熱性の低下を抑制する観点から、モル比{Li 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}のより好ましい上限は0.25、更に好ましい上限は0.20、一層好ましい上限は0.15である。 また、化学強化性能の低下を抑制する観点から、モル比{Li 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}の好ましい下限は0.001、より好ましい下限は0.005、更に好ましい下限は0.01である。 なお以下では、Li 2 O、Na 2 OおよびK 2 Oからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物をまとめてR 2 Oと表記することがある。

    Li 2 Oは、ガラスの剛性を高める成分である。 また、アルカリ金属の中でガラス中の移動のしやすさはLi>Na>Kの順であるため、化学強化性能の観点からもLiの導入は有利である。 したがって本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは、Li 2 Oを必須成分として含む。 他方、耐熱性の低下(ガラス転移温度の低下)を抑制する観点からは、Li 2 O導入量は4%以下とすることが好ましい。 即ち、Li 2 Oの含有量の好ましい含有量は、0%超かつ4%以下であり、より好ましくは0%超かつ3%以下である。 高剛性、高耐熱性および化学強化性能の観点から、Li 2 Oの含有量の更に好ましい範囲は0.05〜3%、一層好ましい範囲は0.05〜2%、より一層好ましい範囲は0.07〜1%、更に一層好ましい範囲は0.08〜0.5%である。

    Na 2 Oは、熱膨張特性改善に有効な成分であることから、1%以上導入することが好ましい。 また、Na 2 Oは化学強化性能にも寄与する成分であるため、1%以上導入することは化学強化性能の観点からも有利である。 また、耐熱性を良好に維持する観点からは、Na 2 O含有量は15%未満であることが好ましい。 したがってNa 2 Oの含有量は1%以上かつ15%未満とすることが好ましい。 熱膨張特性、耐熱性および化学強化性能の観点から、Na 2 Oの含有量のより好ましい範囲は4〜13%、更に好ましい範囲は5〜11%である。

    2 Oは、熱膨張特性改善に有効な成分である。 ただし、過剰量の導入により耐熱性、熱伝導率の低下を招き、化学強化性能も悪化する。 また、Kは、他のアルカリ金属Li、Naと比べて原子番号が大きく、アルカリ金属成分の中では破壊靭性値を低下させる働きがある。 また本発明の一態様にかかる基板を化学強化ガラス基板とする場合、Kはイオン交換の効率を低下させる働きがある。 したがって、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは、K 2 O含有量が3%未満のガラスであることが好ましい。 K 2 O含有量の好ましい範囲は0〜2%、より好ましい範囲は0〜1%、更に好ましい範囲は0〜0.5%、一層好ましい範囲は0〜0.1%であり、実質的に導入しないことが好ましい。 なお、本発明において、「実質的に含まない」、「実質的に導入しない」とは、ガラス原料中に意図して特定の成分を加えないことを意味し、不純物として混入することまで排除するものではない。 ガラス組成に関する0%との記載も同義である。

    Li 2 O、Na 2 OおよびK 2 Oからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物の合計含有量、すなわちR 2 Oの含有量(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)が6%未満では、ガラスの熔融性および熱膨張特性が低下し、15%を超えると、耐熱性が低下したり、化学的耐久性が悪化する。 したがって、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスにおいて、R 2 Oの含有量は6〜15%とする。 R 2 Oの含有量の好ましい範囲は7〜15%、より好ましい範囲は8〜12%である。

    上述の通りLi 2 Oは過剰量の導入により耐熱性の低下を招くが、Na 2 Oに対する導入量が過剰になっても耐熱性の低下を招く傾向があるため、Na 2 O含有量に対するLi 2 O含有量のモル比(Li 2 O/Na 2 O)が0.50未満の範囲となるように、その導入量をNa 2 O導入量に対して調整することが好ましい。 Li 2 Oの導入による効果を得つつ耐熱性の低下を抑制する観点から、上述のモル比(Li 2 O/Na 2 O)は0.005以上0.50未満の範囲とすることがより好ましく、0.009〜0.40の範囲とすることが更に好ましく、0.01〜0.20の範囲とすることが一層好ましく、0.01〜0.10の範囲とすることがより一層好ましい。

    さらに、アルカリ金属酸化物の中ではK 2 Oが原子番号が大きく熱伝導率を低下させる働きが大きいこと、化学強化性能の点では不利であることから、K 2 Oの含有量はアルカリ金属酸化物の総量に対して制限することが好ましい。 詳しくは、アルカリ金属酸化物の合計含有量に対するK 2 O含有量のモル比{K 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}は0.08以下とすることが好ましい。 化学強化性能および熱伝導率の観点から、上述のモル比はより好ましくは0.06以下、更に好ましくは0.05以下、一層好ましくは0.03以下、より一層好ましくは0.02以下、特に好ましくは0.01以下、最も好ましくは実質的にゼロ、即ちK 2 Oを導入しないことが最も好ましい。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは、MgOを必須成分として含む。 MgOは、剛性(ヤング率)を高めるとともにガラスの熔融性を向上する効果を奏する。 また、アルカリ土類金属酸化物MgO、CaO、SrO、BaOは、ガラスの熔融性を改善する効果、熱膨張係数を大きくする効果がある。

    MgOは、上述のように必須成分であるが、過剰に導入するとガラスの液相温度を必要以上に上昇させ耐失透性が低下する傾向がある。 このため、MgOの好ましい含有量は8〜30%、より好ましくは8〜25%、更に好ましくは8〜22%、より一層好ましくは10〜22%、更に一層好ましくは13〜20%の範囲である。

    CaOは、熱膨張特性およびヤング率の向上、ならびに低比重化の観点から、一態様では、好ましい導入量は0〜9%、より好ましくは0〜5%、更に好ましくは0〜2%、一層好ましくは0〜1%、より一層好ましくは0〜0.8%の範囲であり、実質的に導入しなくても(即ち、CaO含有量が0%でも)よい。

    SrOは、熱膨張特性を向上する成分であるがMgO、CaOと比べて比重を高める成分であるため、その導入量は4%以下とすることが好ましく、3%以下とすることが好ましく、2%以下とすることが好ましく、1%以下とすることがより好ましく、実質的に導入しなくても(即ち、SrO含有量が0%でも)よい。

    また、高いガラス転移温度を得るために、混合アルカリ土類効果の観点からアルカリ土類金属酸化物は、複数種添加するのではなく、アルカリ土類酸化物のうち単一成分のみを添加することが好ましく、複数種添加する場合には、最も多いアルカリ土類酸化物の割合がアルカリ土類金属酸化物全量の70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上となるように選択することができる。

    BaOは、ガラスの溶解性を高め、失透温度を上昇させないために有効な成分である。 一方、BaOは、大気中の炭酸ガスとの反応によりガラス基板表面の付着物となるBaCO 3を生成するおそれがあり、磁気記憶装置のヘッド素子の損傷等の原因となることから、本発明にかるガラス基板において、BaOを実質的に含まない(即ち、BaO含有量が0%である)ことが好ましい。

    MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物R´O(R´は、Mg、Ca、Sr、またはBaを表す。)の合計含有量、すなわちR´Oの含有量(MgO+CaO+SrO+BaO)が過少では、ガラスの剛性および熱膨張特性が低下し、R´Oの含有量を過剰にすると、R 2 Oが過剰な場合ほどではないが、ガラス転移温度が低下したり、化学的耐久性が低下する。 この観点から、高剛性、高熱膨張特性および良好な化学的耐久性を実現するために、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスでは、R´Oの含有量の範囲は10〜30%である。 R´Oの含有量の好ましい範囲は13〜23%、より好ましい範囲は15〜20%である。

    磁気記録媒体基板用ガラスにおいて、優れた耐熱性と高い機械的強度を実現するためには、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物の導入量が大きな影響をもたらす。 特に、ガラス転移温度、すなわち耐熱性が高いガラスの化学強化性能を向上させるにあたり、アルカリ金属とアルカリ土類金属のそれぞれのイオン半径が関与する。

    Li 2 OおよびNa 2 Oを含むガラスをナトリウム塩とカリウム塩の混合熔融塩に浸漬して化学強化を行うと、ガラス中のLi +イオンと熔融塩中のNa +イオンとがイオン交換し、またガラス中のNa +イオンと熔融塩中のK +イオンがイオン交換して、表面近傍に圧縮応力層が、ガラス内部に引張応力層が形成される。
    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは、ガラス転移温度が650℃以上と高く、優れた耐熱性を有し、高Ku磁性材料からなる磁気記録層を形成するための磁気記録媒体用基板材料として好適である。 磁性材料の高温処理などにおいて、ガラス基板は高温下に晒されることになるが、上述のようにガラス転移温度が高いガラス材料を使用すれば、基板の平坦性が損なわれることがない。

    ガラス中におけるアルカリ金属イオンの拡散速度はイオン半径が小さいイオンほど大きいため、熔融塩中のNa +イオンはガラス表面からより深層にまで達して深い圧縮応力層を形成し、熔融塩中のK +イオンはNa +イオンほど深層には達せず、圧縮応力層は表面から浅い部分に形成される。 混合塩により化学強化されたガラスの深さ方向の応力分布は、Na +とLi +のイオン交換により形成される応力分布とK +とNa +のイオン交換により形成される応力分布を合成したものになる。 そのため、深さ方向の応力分布は緩やかに変化し、図1に模式図を示すように、バビネ法により測定される2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状となる。 この凸形状には、後述の図2に示すような圧縮応力側へ凹む凹み部は含まれない。 また、比較的深い圧縮応力層が形成される。 なお図1中、中央のL線よりも左側が圧縮応力の領域であり、右側が引張応力の領域である。

    仮にガラス表面のクラックが成長して引張応力層に達しても、上述の応力分布を有する化学強化ガラスでは、即、ガラスが破壊することはない。
    一方、Na 2 Oを含み、Li 2 Oを含まないガラスを化学強化する場合は、ガラスをカリウム熔融塩に浸漬し、ガラス中のNa +イオンと熔融塩中のKイオンとの交換により、ガラス表面近傍に圧縮応力層を形成する。 K +イオンはNa +やLi +と比較し拡散速度が小さいため、ガラス深層まで達せず、圧縮応力層は浅く、深さ方向の応力分布は急峻に変化し、図2に模式図を示すように、バビネ法により測定される2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、主表面間の中央部からそれぞれ主表面側に寄った箇所で極大となる。 つまり、引張応力が極大となる位置は2箇所になる。 このような極大は、アップヒルと呼ばれる。 このようなガラスでは、仮にガラス表面のクラックが成長して引張応力層に達すると、クラックの先端が引張応力の極大領域に達するので、引張応力によって破壊の進行が助長され、所謂、遅れ破壊を引き起こす。
    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは、ガラス成分としてLi 2 OおよびNa 2 Oを含むため、Na + 、K +の混合塩で化学強化することにより、遅れ破壊を防止することができる。 遅れ破壊の発生をより一層効果的に防止する観点からは、Li 2 O含有量は0.05%以上であることが好ましい。

    ところで、ガラス転移温度が高いガラスを化学強化する場合、強化処理温度も高温になる。 ガラス転移温度が高いガラスを化学強化する場合、ガラス転移温度が比較的低い従来のガラスでは問題にならなかったイオン交換効率の低下が顕著になる。
    本発明者らは、この点について検討した結果、次のような知見を得た。
    アルカリ金属イオンLi + 、Na + 、K + 、アルカリ土類金属イオンMg 2+ 、Ca 2+ 、Sr 2+ 、Ba 2+のポーリングによるイオン半径は表1に示すとおりである。

    表1から明らかなように、Li +とMg 2+ 、Na +とCa 2+ 、K +とSr 2+のイオン半径は近い値となっている。 強化処理温度を高めていくと、ガラス中と熔融塩中のアルカリ金属イオン同士のイオン交換に加え、ガラス中のアルカリ土類金属イオンと熔融塩中のアルカリ金属イオンとのイオン交換が起こるようになる。 特に、イオン半径の値が近いアルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンのイオン交換速度が増加すると考えられる。

    CaOを含むガラスをナトリウム塩とカリウム塩の混合熔融塩を用いて高温で化学強化する場合、ガラス中のNa +と熔融塩中のK +のイオン交換と並行してガラス中のCa 2+と熔融塩中のNa +のイオン交換が起こり、アルカリ金属イオン同士の交換が阻害されると考えられる。
    ガラス中のMg 2+は、リチウム熔融塩を用いなければガラス中のMg 2+と熔融塩中のLi +のイオン交換は起こらない。 また、ガラス中のSr 2+は、イオン半径が大きく拡散速度が遅いため、熔融塩中のK +と交換しにくい。

    また、MgOおよびCaOは優先して導入される成分であり、合計で10〜30%の量となるように導入することが好ましい。 MgOとCaOの合計含有量が10%未満では、剛性および熱膨張特性が低下し、30%を超えると化学的耐久性が低下するからである。 MgOとCaOを優先して導入することによる剛性および熱膨張特性の効果を良好に得る観点から、MgOとCaOの合計含有量のより好ましい範囲は10〜25%、更に好ましい範囲は10〜22%、一層好ましい範囲は11〜20%、より一層好ましい範囲は12〜20%である

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスでは、高耐熱性ガラスの化学強化に特有のイオン交換効率の低下によって引き起こされると考えられる機械的強度の低下を解決するために、アルカリ土類金属酸化物の中で、イオン交換効率を低下させることなくヤング率を高めるために有効な成分であるMgOの割合を高めることにより、即ち、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するMgOの含有量のモル比(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))を0.80以上とすることにより、上述の機械的強度の低下を解決することができる。 イオン交換効率の維持、機械的強度の維持という観点から、モル比(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))の好ましい範囲は、0.85〜1.00、より好ましい範囲は0.90〜1.00、更に好ましい範囲は0.95〜1.00である。

    ところで、本発明者らの研究グループは、ガラス成分として複数種のアルカリ土類金属酸化物を共存させるとガラス転移温度が低下傾向を示すとの新たな知見を得た。 この知見によれば、耐熱性を維持する上から、アルカリ土類金属酸化物はできるだけ一種に集中して導入することが好ましい。 すなわち、モル比(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))を上述の範囲にすることは耐熱性を維持する上からも好ましい。

    また、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスの好ましい形態として、高耐熱性ガラスの化学強化に特有のイオン交換効率の低下によって引き起こされると考えられる機械的強度の低下を解決するために、アルカリ土類金属酸化物の中で、イオン交換効率を低下させるCaOの割合を抑えることが好ましい。 即ち、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))を0.20以下とすることが好ましい。 これにより、上述の機械的強度の低下を解決することができる。 イオン交換効率の維持、機械的強度の維持という観点から、モル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))のより好ましい範囲は、0〜0.18、更に好ましい範囲は0〜0.16、一層好ましい範囲は0〜0.15、一層好ましい範囲は0〜0.10である。

    なお、アルカリ土類金属酸化物の中でBaOが最もガラス転移温度を高く維持する働きを有するが、前述のように、BaOは実質的に含まないことが好ましい。 そこで、このBaOをフリー化することによりガラス転移温度が低下しないよう、アルカリ土類金属酸化物であるMgO、CaOおよびSrOの合計含有量に対するMgOおよびCaOの合計含有量のモル比{(MgO+CaO)/(MgO+CaO+SrO)}を0.86以上とすることが好ましい。 アルカリ土類金属酸化物の総量を一定とした場合、この総量を多種のアルカリ土類金属酸化物に配分するよりも1種または2種のアルカリ土類金属酸化物に集中して配分することで、ガラス転移温度を高く維持することができるからである。 即ち、BaOフリー化によるガラス転移温度の低下を、上述のモル比を0.86以上とすることで抑制することができる。 また、ガラス基板に求められる特性の1つが高剛性(高ヤング率)であることは前述の通りであるが、ガラス基板に求められる望ましい特性としては後述するように比重が小さいことも挙げられる。 高ヤング率化および低比重化のためには、アルカリ土類金属酸化物の中でMgOとCaOの導入を優先することが有利であり、したがって上述のモル比を0.86以上とすることは、ガラス基板の高ヤング率化および低比重化を実現する効果もある。 上述の説明した観点から、モル比{(MgO+CaO)/(MgO+CaO+SrO)}は、より好ましくは0.88以上、更に好ましくは0.90以上、一層好ましくは0.93以上、より一層好ましくは0.95以上、なお一層好ましくは0.97以上、更に一層好ましくは0.98以上、特に好ましくは0.99以上、最も好ましくは1である。

    Li 2 O、Na 2 O、K 2 O、MgO、CaOおよびSrOの合計含有量(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O+MgO+CaO+SrO)は、20〜40%であることが好ましい。 20%以上であることでガラスの熔融性、熱膨張係数および剛性を良好に維持することができ、40%以下であることで化学的耐久性および耐熱性を良好に維持することができるからである。 上述の諸特性をより良好に維持する観点から、上述の合計含有量のより好ましい範囲は20〜35%、更に好ましい範囲は21〜33%、一層好ましい範囲は23〜30%である。

    前述のとおりMgO、CaOおよびLi 2 Oはガラスの剛性を高める(高ヤング率化)を実現するために有効な成分であり、これら3成分の合計がアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の合計に対して過少になると、ヤング率を高めることが困難となる。 そこで一態様では、上記アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するMgO、CaOおよびLi 2 Oの合計含有量のモル比{(MgO+CaO+Li 2 O)/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O+MgO+CaO+SrO+MgO)}が0.50以上となるように、MgO、CaOおよびLi 2 Oの導入量を上述のアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物の合計に対して調整する。 ガラス基板のヤング率をより一層高めるためには、上述のモル比は0.55以上とすることが好ましく、0.60以上とすることが一層好ましい。 また、ガラスの安定性の観点からは、上述のモル比は0.80以下とすることが好ましく、0.77以下とすることがより好ましく、0.75以下とすることが更に好ましくい。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは、ZrO 2 、TiO 2 、Y 23 、La 23 、Gd 23 、Nb 25およびTa 25からなる群から選ばれる酸化物を含むこともできる。 ZrO 2 、TiO 2 、Y 23 、La 23 、Gd 23 、Nb 25 、Ta 25は、剛性および耐熱性を高める成分であるため少なくとも一種を導入することが好ましいが、過剰量の導入によりガラスの熔融性および熱膨張特性が低下する。 したがって、上述の酸化物の合計含有量は0%超かつ10%以下の範囲であることが好ましく、0.5〜10%の範囲であることがより好ましい。 上述の酸化物の合計含有量のより好ましい上限は9%、更に好ましい上限は8%、一層好ましい上限は7%、より一層好ましい上限は6%、更に一層好ましい上限は3.5%、なお一層好ましい上限は3%である。 一方、上述の酸化物の合計含有量のより好ましい下限は1.5%、更に好ましい下限は2%である。 一態様では、上述の酸化物の合計含有量は、より好ましくは2〜10%、更に好ましくは2〜9%、より一層好ましくは2〜7%、なお一層好ましくは2〜6%の範囲とする。

    また、上述のとおりAl 23も剛性および耐熱性を高める成分であるが、ヤング率を高める働きは上述の酸化物の方が大きい。 一態様では、上述の酸化物をAl 23に対して0.1以上のモル比で導入することにより、即ち、Al 23含有量に対する上述の酸化物の合計含有量のモル比{(ZrO 2 +TiO 2 +Y 23 +La 23 +Gd 23 +Nb 25 +Ta 25 )/Al 23 }を0.10以上とすることにより、剛性および耐熱性の向上を実現することができる。 剛性および耐熱性をより一層向上する観点から、上述のモル比は、0.20以上とすることが好ましく、0.30以上とすることがより好ましい。 また、ガラスの安定性の観点からは、上述のモル比は3.00以下とすることが好ましく、2.00以下とすることがより好ましく、1.00以下とすることが更に好ましく、0.80以下とすることがより一層好ましく、0.70以下とすることがなお一層好ましい。

    23は、ガラス基板の脆さを改善し、ガラスの熔融性を向上する成分であるが、過剰量の導入により耐熱性が低下するため、上述の各ガラスにおいて、その導入量を0〜3%とすることが好ましく、0〜2%とすることがより好ましく、0%以上1%未満とすることがより好ましく、0〜0.5%とすることが好ましく、実質的に導入しなくてもよい。

    Cs 2 Oは、所望の特性、性質を損なわない範囲で少量導入し得る成分であるが、他のアルカリ金属酸化物と比べて比重を増加させる成分であるため、実質的に導入しなくてもよい。

    ZnOは、ガラスの熔融性、成形性および安定性を良化し、剛性を高め、熱膨張特性を向上する成分であるが、過剰量の導入で耐熱性および化学的耐久性が低下するため、その導入量は0〜3%とすることが好ましく、0〜2%とすることがより好ましく、0〜1%とすることが更に好ましく、実質的に導入しなくてもよい。

    ZrO 2は、上述のとおり剛性および耐熱性を高める成分であり、かつ化学的耐久性を高める成分でもあるが、過剰量の導入でガラスの熔融性が低下するため、一態様では、その導入量は0%超かつ10%以下とすることが好ましく、1〜10%とすることがより好ましい。 ZrO 2の含有量のより好ましい上限は9%、更に好ましい上限は8%、一層好ましい上限は7%、より一層好ましい上限は6%、さらに一層好ましい上限は3.5%、なお一層好ましい上限は3%である。 一方、ZrO 2の含有量より好ましい下限は1.5%、更に好ましい下限は2%である。 他の一態様では、ZrO 2の導入量は1〜8%とすることが好ましく、1〜6%とすることがより好ましく、2〜6%とすることが更に好ましい。

    TiO 2は、ガラスの比重の増加を抑え、かつ剛性を向上する作用があり、これにより比弾性率を高めることができる成分である。 ただし過剰量導入するとガラス基板が水と接触した際に基板表面に水との反応生成物が生じ付着物発生の原因となる場合があるため、その導入量は0〜6%とすることが好ましく、0〜5%とすることがより好ましく、0〜3%とすることが更に好ましく、0〜2%とすることがより一層好ましい。

    23 、Yb 23 、La 23 、Gd 23 、Nb 25およびTa 25は、化学的耐久性、耐熱性向上、剛性や破壊靱性向上の点で有利な成分であるが、過剰量の導入で熔融が悪化し、比重も重くなる。 また高価な原料を使用することになるので、含有量を少なくすることが好ましい。 したがって上述の成分の導入量は合計量として、0〜3%とすることが好ましく、0〜2%とすることがより好ましく、0〜1%とすることが更に好ましく、0〜0.5%とすることがより一層好ましく、0〜0.1%とすることがなお一層好ましく、熔融性向上、低比重化およびコスト低減を重視する際には実質的に導入しないことが好ましい。

    HfO 2も、化学的耐久性、耐熱性向上、剛性や破壊靱性向上の点で有利な成分であるが、過剰量の導入で熔融性が悪化し、比重も重くなる。 また高価な原料を使用することになるので、含有量を少なくすることが好ましく、実質的に導入しないことが好ましい。

    Pb、As、Cd、Te、Cr、Tl、UおよびThは、環境への影響を考慮し、実質的に導入しないことが好ましい。

    また、アルカリ金属酸化物(Li 2 O、Na 2 OおよびK 2 O)の合計含有量に対するSiO 2 、Al 23 、ZrO 2 、TiO 2 、Y 23 、La 23 、Gd 23 、Nb 25およびTa 25の合計含有量のモル比{(SiO 2 +Al 23 +ZrO 2 +TiO 2 +Y 23 +La 23 +Gd 23 +Nb 25 +Ta 25 )/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}は、耐熱性を高めるとともに熔融性を高める観点から、好ましい範囲は3〜15であり、より好ましくは3〜12、更に好ましくは4〜12、一層好ましくは5〜12、より一層好ましくは5〜11、なお一層好ましくは5〜10の範囲である。

    以上のような各ガラス成分の特性を考慮し、良好な耐熱性および高度な機械的強度を有する本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスの一実施形態としては、以下の構成を挙げることができる。 すなわち、
    SiO 2を56〜75モル%、
    Al 23を1〜20モル%、
    Li 2 O、Na 2 OおよびK 2 Oからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物を合計で6〜15モル%、
    Li 2 Oを0モル%超かつ3モル%以下、
    Na 2 Oを1モル%以上かつ15モル%未満、
    MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を合計で10〜30モル%、
    MgOを8〜30モル%、
    ZrO 2 、TiO 2 、Y 23 、La 23 、Gd 23 、Nb 25およびTa 25からなる群から選ばれる酸化物を合計で0モル%超かつ10モル%以下、
    含み、
    上述のアルカリ金属酸化物の合計含有量に対するLi 2 O含有量のモル比{Li 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0超かつ0.3以下、
    上述のアルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するMgOの含有量のモル比{MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)}が0.80以上、
    ガラス転移温度が650℃以上、
    ヤング率が80GPa以上、
    となるように組成調整されたガラスが望ましい。

    また、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスの一実施形態において、
    100〜300℃における平均線膨張係数が60×10 -7 /℃以上であること、
    比弾性率が30MNm/kg以上であること、
    破壊靭性値が0.9MPa・m 1/2以上であること、
    を1つ以上、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つすべ満たすように組成調整されたガラスが望ましい。

    組成調整については、例えば上述のガラスにおけるK 2 O含有量の好ましい範囲は上述のとおりである。 またアルカリ土類金属酸化物の一種であるBaOは破壊靭性を低下させる働きがあるため、その含有量の上限を破壊靭性値が0.9MPa・m 1/2以上となるように制限することが望ましい。 破壊靭性値の好ましい範囲は前述のとおりである。 荷重4.9N(500gf)で測定して得られる破壊靭性値を用いる場合は、破壊靭性値(荷重4.9N(500gf))が0.9MPa・m 1/2超となるようにBaO含有量の上限を制限すればよい。 破壊靭性値(荷重4.9N(500gf))の好ましい範囲は前述のとおりである。 上述したように、BaOは含有させなくてもよい。 なお本発明の一態様にかかる基板が化学強化ガラス基板である場合には、この基板において上述のアルカリ金属酸化物を構成するアルカリ金属原子の少なくとも一部がイオン交換されている。 本発明において、特記しない限り、化学強化されたガラス基板に関するガラス組成については同様とする。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体用基板の好ましい態様は、化学強化を行ってなることを特徴とするガラス基板、すなわち、化学強化されたガラス基板である。 化学強化によってガラス基板の破壊靭性値を一層高めることができる。 化学強化は、硝酸カリウムもしくは硝酸ナトリウムの溶融物、または硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの溶融物で行うことが破壊靭性値を一層高める上から好ましい。 当該ガラス基板を得るために化学強化処理が施される本発明のガラスには、ガラス成分としてイオン交換可能な成分として、Li 2 OおよびNa 2 Oが含有されている。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体用ガラス基板は、高耐熱性(ガラス転移温度が650℃以上)であるとともに、高度な機械的強度(高ヤング率、高比弾性率、高破壊靭性のいずれかを含む)を兼ね備えている。 したがって、本発明の一態様にかかるガラス基板は、高い信頼性が求められる回転数が5000rpm以上の磁気記録装置に好適に用いられ、回転数が7200rpm以上の磁気記録装置により好適に用いられ、回転数が10000rpm以上の磁気記録装置に更に好適に用いられる。

    同様に、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体用基板は、高い信頼性が要求されるDFH(Dynamic Flying Height)ヘッドを搭載した磁気記録装置に好適に用いられる。

    以下に、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスの別の一実施形態を例示する。
    すなわち、磁気記録媒体基板用ガラスとして、
    SiO 2を56〜75モル%、
    Al 23を1〜20モル%、
    Li 2 O、Na 2 OおよびK 2 Oからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物を合計で6〜15モル%、
    Li 2 Oを0モル%超かつ3モル%以下、
    Na 2 Oを1モル%以上かつ15モル%未満、
    2 Oを0モル%以上3モル%未満、
    MgO、CaOおよびSrOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を合計で10〜30モルモル%、
    MgOを8〜30モル%
    含み、かつBaOを実質的に含まず、
    上述のアルカリ金属酸化物の合計含有量に対するLi 2 O含有量のモル比{Li 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0超かつ0.3以下、
    上述のアルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するMgOの含有量のモル比{MgO/(MgO+CaO+SrO)}が0.80以上、
    上述のアルカリ金属酸化物の合計含有量に対するK 2 O含有量のモル比{K 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0.08以下、
    となるように組成調整されたガラスが望ましい。

    上述の磁気記録媒体基板用ガラスは、さらに、アルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するMgOおよびCaOの合計含有量のモル比{(MgO+CaO)/(MgO+CaO+SrO)}が0.86以上であることが望ましく、Li 2 O、Na 2 O、K 2 O、MgO、CaOおよびSrOの合計含有量に対するMgO、CaOおよびLi 2 Oの合計含有量のモル比{(MgO+CaO+Li 2 O)/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O+MgO+CaO+SrO)}が0.50以上であることが望ましい。

    また、上述の磁気記録媒体基板用ガラスは、ZrO 2 、TiO 2 、Y 23 、La 23 、Gd 23 、Nb 25およびTa 25からなる群から選ばれる酸化物の合計含有量が0%超かつ10%以下であることが望ましく、かつAl 23含有量に対する上述の酸化物の合計含有量のモル比{(ZrO 2 +TiO 2 +Y 23 +La 23 +Gd 23 +Nb 25 +Ta 25 )/Al 23 }が0.30以上のガラスであることが望ましい。

    以上、例示したガラス組成を有する磁気記録媒体基板用ガラスは、化学強化処理によりガラス表面にイオン交換層を形成することが可能である。

    (ガラスの製法)
    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは、例えば、上述の組成のガラスが得られるように酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物などの原料を秤量し、混合して調合原料とし、この調合原料を熔融容器に投入して1400〜1600℃の範囲で加熱、熔融し、清澄、攪拌して泡、未熔解物を含まない均質な熔融ガラスを作製し、この熔融ガラスを成形して得ることができる。 熔融ガラスの成形には、プレス成形法、キャスト法、フロート法、オーバーフローダウンドロー法などを使用することができる。 プレス成形法では、熔融ガラスをプレスしてディスク形状に成形することができ、磁気記録媒体基板用のブランクを成形する方法として好適である。
    プレス成形法の中でも、基板ブランク1個分に相当する熔融ガラスを落下させ、空中にある熔融ガラスをプレス成形する方法が好ましい。 前記方法では、一対のプレス成形型で空中の熔融ガラスを挟んでプレスするので、各プレス成形型と接する面からガラスを均等に冷却することができ、平坦性のよい基板ブランクを製造することができる。

    (化学強化ガラス)
    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは、化学強化用ガラスとして好適である。
    前述の組成調整により良好な化学強化性能を付与されているため、化学強化処理によってガラス表面にイオン交換層を容易に形成することができ、表面の一部または全部にイオン交換層を形成可能である。 イオン交換層は、高温下、基板表面にアルカリ塩を接触させ、該アルカリ塩中のアルカリ金属イオンと基板中のアルカリ金属イオンを交換させることにより形成することができる。

    通常のイオン交換は、アルカリ硝酸塩を加熱して熔融塩とし、この熔融塩に基板を浸漬して行う。 基板中のイオン半径の小さいアルカリ金属イオンに換えてイオン半径の大きいアルカリ金属イオンを導入すると、基板表面に圧縮応力層が形成される。 これにより磁気記録媒体用ガラス基板の破壊靭性を向上し、その信頼性を高めることができる。

    化学強化は、必要に応じて予め加工した上述のガラスを、例えば、ナトリウム塩とカリウム塩を含む混合熔融塩に浸漬して行うことができる。 ナトリウム塩として硝酸ナトリウムを、カリウム塩として硝酸カリウムをそれぞれ用いることが好ましい。 本発明の磁気記録媒体基板用ガラスは、前述のようにLi 2 Oを必須成分として含むものであるため、イオン交換は、Liよりもイオン半径の大きなNa、Kにより行うことが好ましい。

    イオン交換により、化学強化ガラス表面からのアルカリ溶出量を低減することもできる。 なお、化学強化する場合は、イオン交換を、基板を構成するガラスの歪点より高温かつガラス転移温度より低温で、アルカリ熔融塩が熱分解しない温度範囲で行うことが好ましい。 基板がイオン交換層を有することは、ガラスの断面(イオン交換層を切る面)をバビネ法により観察して確認する方法、ガラス表面からアルカリ金属イオンの深さ方向の濃度分布を測定する方法等によって確認することができる。

    強化処理温度(熔融塩の温度)、強化処理時間(ガラスを熔融塩に浸漬している時間)は適宜調整可能である。 例えば強化処理温度の範囲は400〜570℃を目処に調整すればよい。 強化処理時間の範囲は0.5〜10時間を目処に調整すればよく、1〜6時間を目処に調整することが好ましい。

    前述のようにガラスのガラス転移温度、熱膨張係数、ヤング率、比弾性率、比重、分光透過率は化学強化の前後でほぼ一定の値を示すことから、本発明においては、化学強化前後の熱膨張係数、ヤング率、比弾性率、比重、分光透過率の各特性は同じ値として扱う。 またアモルファス状態のガラスは、化学強化後もアモルファス状態を維持している。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスは、化学強化により前述の応力プロファイルを示すことができ、これにより遅れ破壊の発生を防ぐことができる。 したがって本発明の一態様にかかるガラスを化学強化してなる本発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、遅れ破壊を起こしにくく、かつ、高い耐熱性と優れた機械的強度を有することができるガラス基板であり、上述の磁気記録媒体基板用ガラスを化学強化してなるガラスが有する諸々の特長を示すことができる。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板は、バビネ法により求められる2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状であり、ただし該凸形状は圧縮応力側へ凹む凹み部を含まない化学強化ガラスからなるガラス基板であることができる。 当該応力プロファイルについては、先に説明した通りであり、このような応力プロファイルを示すことにより、遅れ破壊の発生を防ぐことができる。 例えば、前記仮想断面において、主表面からの深さをxとしたとき、深さxにおける応力値S(x)を応力プロファイルと呼ぶことにする。 応力プロファイルは、通常、2つの主表面間の中心で線対称となる。 応力プロファイルを知るには、2つの主表面に対して垂直にガラス基板を破断し、破断面をバビネ法により観察すればよい。
    応力プロファイルの好ましい態様としては、両主表面近傍において圧縮応力値が極大となり、深さxが増加するにつれて圧縮応力値は減少し、圧縮応力と引張応力とが釣合う深さx 0よりもさらに深くなるにつれて圧縮応力が引張応力に転じ、引張応力値が緩やかに増加して2つの主表面間の中央部または中央部近傍で極大値を取る態様を挙げることができる。 当該極大値は、図1に示すように、深さ方向の一定領域で維持されている場合もある。 このような応力プロファイルを取るガラス基板であれば、基板表面で発生したクラックの深さがx 0より深くなっても引張応力によってクラックが急激に成長して破壊に至る遅れ破壊を防止することができる。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板は、バビネ法により求められる引張応力の平均値Tavと引張応力の最大値Tmaxとが、下記式(1):
    Tav/Tmax≧0.4 …(1)
    を満たす化学強化ガラスからなるガラス基板であることもできる。 以下、図3および図4に基づき式(1)について説明する。

    引張応力の最大値Tmaxとは、上述の引張応力値の極大値である。 図3中、引張応力の平均値Tvは、引張応力と圧縮応力との中心線であるL線は、面積S 1 、S 2 、S 3が、S 1 +S 2 =S 3となるように決定される。 S 2側の主表面と平行な仮想直線と、2つの主表面に垂直でTmaxを通過する仮想直線との交点からS 2側の主表面までの距離をDOLとすると、Tav=S 3 /(tsub−2×DOL)として、引張応力の平均値Tavが算出される。
    Tav/Tmax≧0.4であり、Tav/Tmax≧0.5であることが好ましく、Tav/Tmax≧0.7であることがより好ましい。 Tav/Tmaxの上限値については、例えば、Tav/Tmax<1.0である。
    式(1)で規定するTav/Tmaxは、先に図2を示し説明したアップヒルが存在しないことを示す指標として用いることができ、アップヒルが存在するガラス基板は、Tmaxが大きいため、Tav/Tmax<0.4となる。
    これに対し、上述の式(1)を満たすガラスは、アップヒルが存在しないため、遅れ破壊の発生が抑制されている。

    なお図2に示すようにアップヒルが存在するガラス基板については、図4に示すように、L線は面積S 4 、S 5 、S 6 、S 7 、S 8が、S 4 +S 5 +S 6 、=S 7 +S 8となるように決定される。 さらにTavは、Tav=(S 7 +S 8 −S 6 )/(tsub−2×DOL)として算出される。 図2において、引張応力層はS 6によって2つの層S 7とS 8とに分かれているが、図1に示すように引張応力層が一層からなる場合は、上述の通り、Tav=S 3 /(tsub−2×DOL)によりTavを算出すればよい。

    更に本発明の一態様は、
    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスからなる磁気記録媒体基板ブランク;および 上述の磁気記録媒体基板ブランクを加工することを含む磁気記録媒体の製造方法、
    に関する。
    ここで磁気記録媒体基板ブランク(以下、基板ブランクという)とは、加工して磁気記録媒体用ガラス基板に仕上げる前の基板用ガラス母材を意味する。 基板ブランクを構成するガラスの組成、特性、ならびに組成および特性の好ましい範囲については、先に説明したとおりである。
    本発明の一態様にかかる基板ブランクは磁気記録媒体用ガラス基板がディスク形状をしていることから、ディスク形状であることが好ましい。

    基板ブランクは、上述のガラスが得られるように、ガラス原料を調合し、熔融して熔融ガラスとし、作製した熔融ガラスをプレス成形法、ダウンドロー法またはフロート法のいずれかの方法により板状に成形し、得られた板状のガラスを必要に応じて加工することで作製することができる。
    プレス成形法では、流出する熔融ガラスを切断し、所要の熔融ガラス塊を得て、これをプレス成形型でプレス成形して薄肉円盤状の基板ブランクを作製する。

    本発明の更なる態様は、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板上に磁気記録層を有する磁気記録媒体に関する。
    以下、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体について、更に詳細に説明する。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体は、例えば、ガラス基板の主表面上に、該主表面に近いほうから順に、少なくとも付着層、下地層、磁性層(磁気記録層)、保護層、潤滑層が積層された構成を有する、ディスク状磁気記録媒体(磁気ディスク、ハードディスクなどと呼ばれる)であることができる。
    例えばガラス基板を真空引きを行った成膜装置内に導入し、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、ガラス基板主表面上に付着層から磁性層まで順次成膜する。 付着層としては例えばCrTi、下地層としては例えばCrRuを用いることができる。 上述の成膜後、例えばCVD法によりC 24を用いて保護層を成膜し、同一チャンバ内で、表面に窒素を導入する窒化処理を行うことにより、磁気記録媒体を形成することができる。 その後、例えばPFPE(ポリフルオロポリエーテル)をディップコート法により保護層上に塗布することにより、潤滑層を形成することができる。
    また、下地層と磁性層との間には、軟磁性層、シード層、中間層などを、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法などの公知の成膜方法を用いて形成してもよい。
    上述の各層の詳細については、例えば特開2009−110626号公報の段落[0027]〜[0032]を参照できる。 また、ガラス基板と軟磁性層との間には、熱伝導性の高い材料からなるヒートシンク層を形成することもできるが、その詳細は後述する。

    先に説明したように、磁気記録媒体のより一層の高密度記録化のためには、高Ku磁性材料から磁気記録層を形成することが好ましい。 この点から好ましい磁性材料としては、Fe−Pt系磁性材料、Co−Pt系磁性材料、またはFe−Co−Pt系磁性材料を挙げることができる。 なおここで「系」とは、含有することを意味する。 即ち、本発明の磁気記録媒体は、磁気記録層としてFeおよびPt、CoおよびPt、またはFe、CoおよびPtを含む磁気記録層を有することが好ましい。 例えばCo−Cr系等の従来汎用されていた磁性材料の成膜温度が250〜300℃程度であるのに対し、上述の磁性材料の成膜温度は通常500℃超の高温である。 更にこれら磁性材料は、通常、成膜後に結晶配向性を揃えるため、成膜温度を超える温度で高温の熱処理(アニール)が施される。 したがって、Fe−Pt系磁性材料、Co−Pt系磁性材料、またはFe−Co−Pt系磁性材料を用いて磁気記録層を形成する際には基板が上述の高温に晒されることとなる。 ここで基板を構成するガラスが耐熱性に乏しいものであると、高温下で変形し平坦性が損なわれる。 これに対し本発明の磁気記録媒体に含まれる基板は、優れた耐熱性(ガラス転移温度として650℃以上)を示すものであるため、Fe−Pt系磁性材料、Co−Pt系磁性材料、またはFe−Co−Pt系磁性材料を用いて磁気記録層を形成した後も、高い平坦性を維持することができる。 上述の磁気記録層は、例えば、Ar雰囲気中、Fe−Pt系磁性材料、Co−Pt系磁性材料、またはFe−Co−Pt系磁性材料をDCマグネトロンスパッタリング法にて成膜し、次いで加熱炉内でより高温での熱処理を施すことにより形成することができる。

    ところで、Ku(結晶磁気異方性定数)は保磁力Hcに比例する。 保磁力Hcとは、磁化の反転する磁界の強さを表す。 先に説明したように、高Ku磁性材料は熱揺らぎに対して耐性を有するため、磁性粒子を微粒子化しても熱揺らぎによる磁化領域の劣化が起こりにくく高密度記録化に好適な材料として知られている。 しかし上述の通りKuとHcは比例関係にあるため、Kuを高めるほどHcも高まり、即ち磁気ヘッドによる磁化の反転が起こりにくくなり情報の書き込みが困難となる。 そこで、記録ヘッドによる情報の書き込み時にヘッドからデータ書き込み領域に瞬間的にエネルギーを加え、保磁力を低下させることで高Ku磁性材料の磁化反転をアシストする記録方式が近年注目を集めている。

    このような記録方式は、エネルギーアシスト記録方式と呼ばれ、中でもレーザー光の照射により磁化反転をアシストする記録方式は熱アシスト記録方式、マイクロ波によりアシストする記録方式はマイクロ波アシスト記録方式と呼ばれる。 前述のように、本発明の一態様によれば高Ku磁性材料による磁気記録層の形成が可能となるため、高Ku磁性材料とエネルギーアシスト記録の組み合わせにより、例えば面記録密度が1テラバイト/inch 2を超える高密度記録を実現することができる。 即ち、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体は、エネルギーアシスト記録方式に使用されることが好ましい。 なお、熱アシスト記録方式については、例えばIEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS, VOL. 44, No. 1, JANUARY 2008 119に、マイクロ波アシスト記録方式については、例えばIEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS, VOL. 44, No. 1, JANUARY 2008 125に、それぞれ詳細に記載されており、本発明の一態様においても、これら文献記載の方法により、エネルギーアシスト記録を行うことができる。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板(例えば磁気ディスク用ガラス基板)、磁気記録媒体(例えば磁気ディスク)とも、その寸法に特に制限はないが、例えば、高記録密度化が可能であるため媒体および基板を小型化することも可能である。 例えば、公称直径2.5インチは勿論、更に小径(例えば1インチ、1.8インチ)、または3インチ、3.5インチ等の寸法のものとすることができる。

    次に、磁気記録媒体基板の製造方法について説明する。
    まず、所定のガラス組成が得られるように酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物などのガラス原料を秤量、調合し、十分混合して、熔融容器内で、例えば1400〜1600℃の範囲で加熱、熔融し、清澄、攪拌して十分泡切れがなされた均質化した熔融ガラスを作製する。 なお、必要に応じてガラス原料に清澄剤を外割で添加してもよい。 清澄剤としては、Sn酸化物およびCe酸化物を使用することが好ましい。 これは以下の理由による。

    Sn酸化物は、ガラス熔融時、高温で酸素ガスを放出し、ガラス中に含まれる微小な泡を取り込んで大きな泡にすることで浮上しやすくすることにより清澄を促す働きに優れている。 一方、Ce酸化物は、低温でガラス中にガスとして存在する酸素をガラス成分として取り込むことにより泡を消す働きに優れている。 泡の大きさ(固化したガラス中に残留する泡(空洞)の大きさ)が0.3mm以下の範囲で、Sn酸化物は比較的大きな泡も極小の泡も除く働きが強い。 Sn酸化物とともにCe酸化物を添加すると、50μm〜0.3mm程度の大きな泡の密度が数十分の一程度にまで激減する。 このように、Sn酸化物とCe酸化物を共存させることにより、高温域から低温域にわたり広い温度範囲でガラスの清澄効果を高めることができるため、Sn酸化物およびCe酸化物を添加することが好ましい。

    Sn酸化物およびCe酸化物の外割り添加量の合計が0.02質量%以上であれば、十分な清澄効果を期待することができる。 微小かつ少量であっても未熔解物を含むガラスを用いて基板を作製すると、研磨によってガラス基板表面に未熔解物が現れると、ガラス基板表面に突起が生じたり、未熔解物が欠落した部分が窪みとなって、ガラス基板表面の平滑性が損なわれ、磁気記録媒体用の基板としては使用できなくなる。 これに対しSn酸化物およびCe酸化物の外割り添加量の合計が3.5質量%以下であれば、ガラス中に十分に熔解し得るため未熔解物の混入を防ぐことができる。

    また、SnやCeは結晶化ガラスを作る場合には結晶核を生成する働きをする。 本発明のガラス基板は非晶質性ガラスからなるので、加熱によって結晶を析出しないことが望ましい。 Sn、Ceの量が過剰になると、こうした結晶の析出がおこりやすくなる。 そのため、Sn酸化物、Ce酸化物とも過剰の添加は避けるべきである。

    以上の観点から、Sn酸化物およびCe酸化物の外割り添加量の合計を0.02〜3.5質量%とすることが好ましい。 Sn酸化物とCe酸化物の外割り添加量の合計の好ましい範囲は0.1〜2.5質量%、より好ましい範囲は0.1〜1.5質量%、さらに好ましい範囲は0.5〜1.5質量%である。
    Sn酸化物としては、SnO 2を用いることがガラス熔融中、高温で酸素ガスを効果的に放出する上から好ましい。

    なお、清澄剤として硫酸塩を外割りで0〜1質量%の範囲で添加することもできるが、ガラス熔融中に熔融物が吹きこぼれるおそれがあり、ガラス中の異物が激増することから、上述の吹きこぼれが懸念される場合は、硫酸塩を導入しないことが好ましい。 なお、本発明の目的を損なわないものであって清澄効果が得られるものであれば、上述の清澄剤以外のものを使用してもよい。 ただし、前述のように環境負荷が大きいAsの添加は避けるべきである。 またSbも環境への負荷を考慮すると使用しないことが好ましい。

    次に、作製した熔融ガラスをプレス成形法、ダウンドロー法またはフロート法のいずれかの方法により板状に成形し、得られた板状のガラスを加工する工程を経ることで、基板形状のガラス成形品、即ち本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板ブランク、を得ることができる。

    プレス成形法では、流出する熔融ガラスを切断し、所要の熔融ガラス塊を得て、これをプレス成形型でプレス成形して薄肉円盤状の基板ブランクを作製する。
    ダウンドロー法では、樋状の成形体を用いて熔融ガラスを導き、成形体の両側へと熔融ガラスをオーバーフローさせ、成形体の下方で成形体に沿って流下する2つの熔融ガラス流を合流させてから、下方に引っ張ってシート状に成形する。 この方法はフュージョン法とも呼ばれ、成形体表面に接触したガラスの面を互いに張り合わせことにより、接触痕のないシートガラスを得ることができる。 その後、得られたシート材から薄肉円盤状の基板ブランクがくり抜かれる。
    フロート法では、溶融錫などを蓄えたフロートバス上に熔融ガラスを流し出し、引っ張りながらシート状ガラスに成形する。 その後、得られたシート材から薄肉円盤状の基板ブランクがくり抜かれる。
    このようにして得た基板ブランクに中心孔を設けたり、内外周加工、両主表面にラッピング、ポリッシングを施す。 次いで、酸洗浄およびアルカリ洗浄を含む洗浄工程を経てディスク状の基板を得ることができる。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板の製造方法は、破壊靭性値K 1cが1.3MPa・m 1/2より小さいガラス素材を研磨する工程と、前記研磨工程後に化学強化する工程を有することもできる。
    研磨などの機械加工では、破壊靭性が小さいガラスのほうが加工は容易である。 そこで、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板の製造方法では、破壊靭性値K 1cが1.3 MPa・m 1/2より小さいガラス素材を機械加工した後、化学強化して破壊靭性を高めることにより、破壊靭性値が高く耐衝撃性の優れたガラス基板を容易に製造することができる。 破壊靭性値は、主に化学強化条件によって所望の値に制御することができる。 例えば化学強化条件を強化する(例えば処理時間を延ばす)ほど、破壊靭性値を高めることができる。

    上述のガラス素材の化学強化前の破壊靭性値は1.2MPa・m 1/2以下であることが好ましく、1.1MPa・m 1/2以下であることがより好ましく、1.0MPa・m 1/2以下であることが更に好ましく、0.9MPa・m 1/2以下であることが一層好ましく、0.8MPa・m 1/2以下であることがより一層好ましい。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板の製造方法では、化学強化工程後に更に研磨工程を行ってもよい。 本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板の製造方法の好ましい態様は、化学強化工程を有する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、前記化学強化工程は、化学強化前のガラス素材の破壊靱性値K 1c (前)と、化学強化後のガラス素材の破壊靱性値K 1c (後)との比(K 1c (後)/K 1c (前))を1.5以上にする工程であることを特徴とするものである。 この方法では、機械加工に適した破壊靭性値を有するガラス素材を研磨等の機械加工後に化学強化して破壊靭性値を高め、比(K 1c (後)/K 1c (前))を1.5以上にすることにより、更には1.7以上にすることにより、耐衝撃性の優れた磁気記録媒体基板を容易に製造することができる。 なお、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板の製造方法におけるK 1c (前)、K 1c (後)は、いずれも同じ荷重で測定される破壊靭性値であり、K 1c (前)を荷重9.81N(1000gf)で測定した場合は、K 1c (後)も荷重9.81N(1000gf)で測定した値とし、K 1c (前)を荷重4.9N(500gf)で測定した場合は、K 1c (後)も荷重4.9N(500gf)で測定した値とする。

    ところで、化学強化ガラス基板の作製において、ガラス成分として含まれるB 23はK 1c (前)を増加させ、化学強化前の機械加工性を低下させる一方で、化学強化性能の改善に寄与しないため、K 1c (後)/K 1c (前)の大きなガラスを得る上からB 23の含有量を0〜3%の範囲に制限することが好ましく、0〜2%の範囲に制限することがより好ましく、0%以上1%未満の範囲に制限することがより好ましく、0〜0.5%の範囲に制限することが好ましく、実質的に導入しないことが好ましい。 なお化学強化前の破壊靱性値K 1c (前)とは、研磨工程後に測定される値である。

    また、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板は、アルカリ金属酸化物の合計含有量に対するK 2 O含有量のモル比{K 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0.08以下であるガラスに化学強化処理が施されたガラスであって、ガラス転移温度が650℃以上、かつ破壊靭性値が0.9MPa・m 1/2以上のガラスからなるものであることもできる。

    また、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板は、ガラス転移温度が650℃以上、ヤング率が80GPa以上、比弾性率が30MNm/kg以上、かつ破壊靭性値が0.9MPa・m 1/2以上のガラスからなるものであることもできる。

    ノートパソコン用のHDDには外径2.5インチサイズの磁気記録媒体が通常用いられ、それに使用されるガラス基板の板厚は従来0.635mmであったが、比弾性率を変えずとも基板の剛性を高め、耐衝撃性をさらに改善することを目的として、例えば0.7mm以上の板厚とすることが好ましく、0.8mm以上の板厚とすることがより好ましい。

    磁気記録層が形成される主表面は、下記(1)〜(3)の表面性を有することが好ましい。
    (1)原子間力顕微鏡を用いて1μm×1μmの範囲で512×256ピクセルの解像度で測定される表面粗さの算術平均Raが0.15nm以下;
    (2)5μm×5μmの範囲で測定される表面粗さの算術平均Raが0.12nm以下;
    (3)波長100μm〜950μmにおける表面うねりの算術平均Waが0.5nm以下。

    基板上に成膜する磁気記録層のグレインサイズは、例えば垂直記録方式では、10nm未満となっている。 高記録密度化のため、ビットサイズが微細化されても、基板表面の表面粗さが大きいと、磁気特性の向上は見込めない。 これに対し上述の(1)、(2)の2種の表面粗さの算術平均Raが上述の範囲の基板であれば、高記録密度化のためにビットサイズが微細化されても磁気特性の改善が可能である。 また、上述の(3)の表面うねりの算術平均Waを上述の範囲にすることにより、HDDにおける磁気ヘッドの浮上安定性を向上させることができる。 上述の(1)〜(3)の表面性を兼ね備えた基板を実現する上で、ガラスの耐酸性、耐アルカリ性を高めることは有効である。

    本発明の一態様にかかる磁気記録媒体は、磁気ディスク、ハードディスクなどと呼ばれ、デスクトップパソコン、サーバ用コンピュータ、ノート型パソコン、モバイル型パソコンなどの内部記憶装置(固定ディスクなど)、画像および/または音声を記録再生する携帯記録再生装置の内部記憶装置、車載オーディオの記録再生装置などに好適であり、前述のようにエネルギーアシスト記録方式に特に適したものである。

    次に磁気記録装置について説明する。
    本発明の一態様にかかる磁気記録装置は、少なくとも磁気記録媒体の主表面を加熱するための熱源と、記録素子部と、再生素子部とを有する熱アシスト磁気記録ヘッド、および、上述の本発明の磁気記録媒体を有するエネルギーアシスト磁気記録方式の磁気記録装置である。

    本発明の一態様によれば、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体を搭載していることで、高記録密度かつ高い信頼性を有する磁気記録装置を提供することができる。
    また、上述の磁気記録装置は、高強度の基板を備えるため、回転数が5000rpm以上、好ましくは7200rpm以上、より好ましくは10000rpm以上の高速回転においても十分な信頼性を有する。

    さらに、上述の磁気記録装置はDFH(Dynamic Flying Height)ヘッドを搭載したものであることが、高記録密度化の観点から好ましい。
    上述の磁気記録装置として、デスクトップパソコン、サーバ用コンピュータ、ノート型パソコン、モバイル型パソコンなどの各種コンピュータの内部記憶装置(固定ディスクなど)、画像および/または音声を記録再生する携帯記録再生装置の内部記憶装置、車載オーディオの記録再生装置を例示することができる。

    以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。 但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。

    (1)熔融ガラスの作製 表2〜表6に示すNo. 1〜No. 22(実施例)、および表7に示すNo. 23(比較例)の各組成のガラスが得られるように酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物などの原料を秤量し、混合して調合原料とした。 この原料を熔融容器に投入して1400〜1600℃の範囲で3〜6時間、加熱、熔融し、清澄、攪拌して泡、未熔解物を含まない均質な熔融ガラスを作製した。 得られたNo. 1〜No. 22のガラス中には泡や未熔解物、結晶の析出、熔融容器を構成する耐火物の混入物は認められなかった。

    (2)基板ブランクの作製 次に、下記方法AまたはBにより、円盤状の基板ブランクを作製した。
    (方法A)
    清澄、均質化した上述の熔融ガラスをパイプから一定流量で流出するとともにプレス成形用の下型で受け、下型上に所定量の熔融ガラス塊が得られるよう流出した熔融ガラスを切断刃で切断した。 そして熔融ガラス塊を載せた下型をパイプ下方から直ちに搬出し、下型と対向する上型および胴型を用いて、直径66mm、厚さ2mmの薄肉円盤状にプレス成形した。 プレス成形品を変形しない温度にまで冷却した後、型から取り出してアニールし、基板ブランクを得た。 なお、上述の成形では複数の下型を用いて流出する熔融ガラスを次々に円盤形状の基板ブランクに成形した。
    (方法B)
    清澄、均質化した上述の熔融ガラスを円筒状の貫通孔が設けられた耐熱性鋳型の貫通孔に上部から連続的に鋳込み、円柱状に成形して貫通孔の下側から取り出した。 取り出したガラスをアニールした後、マルチワイヤーソーを用いて円柱軸に垂直な方向に一定間隔でガラスをスライス加工し、円盤状の基板ブランクを作製した。
    なお、本実施例では上述の方法A、Bを採用したが、円盤状の基板ブランクの製造方法としては、下記方法C、Dも好適である。
    (方法C)
    上述の熔融ガラスをフロートバス上に流し出し、シート状のガラスに成形(フロート法による成形)し、次いでアニールした後にシートガラスから円盤状のガラスをくり貫いて基板ブランクを得ることもできる。
    (方法D)
    上述の熔融ガラスをオーバーフローダウンドロー法(フュージョン法)によりシート状のガラスに成形、アニールし、次いでシートガラスから円盤状のガラスをくり貫いて基板ブランクを得ることもできる。

    (3)ガラス基板の作製 上述の各方法で得られた基板ブランクの中心に貫通孔をあけて、外周、内周の研削加工を行い、円盤の主表面をラッピング、ポリッシング(鏡面研磨加工)して直径65mm、厚さ0.8mmの磁気ディスク用ガラス基板に仕上げた。 得られたガラス基板は、1.7質量%の珪弗酸(H 2 SiF)水溶液、次いで、1質量%の水酸化カリウム水溶液を用いて洗浄し、次いで純水ですすいだ後に乾燥させた。 実施例のガラスから作製した基板の表面を拡大観察したところ、表面荒れなどは認められず、平滑な表面であった。
    次に、上述のディスク状のガラス基板を硝酸ナトリウムと硝酸カリウムの混合熔融塩に浸漬し、イオン交換(化学強化)によって表面にイオン交換層を有するガラス基板を得た。 化学強化条件を表2〜表6に示す。 このようにイオン交換処理(化学強化処理)を施すことは、ガラス基板の耐衝撃性を高めるために有効である。 イオン交換処理を施した複数枚のガラス基板から、サンプリングしたガラス基板の断面(イオン交換層を切る面)をバビネ法により観察し、イオン交換層が形成されていることを確認した。
    イオン交換層はガラス基板表面の全域に形成してもよいし、外周面のみに形成してもよいし、外周面と内周面のみに形成してもよい。
    また、イオン交換処理後、イオン交換層を残すように鏡面研磨処理してもよい。 この場合、研磨処理による取代は好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下とすると、イオン交換層を十分残すことができ、K 1cが低下しすぎることがなく好ましい。

    (4)磁気ディスクの作製 以下の方法により、実施例のガラスから得られたガラス基板の主表面上に、付着層、下地層、磁性層、保護層、潤滑層をこの順に形成し、磁気ディスクを得た。

    まず、真空引きを行った成膜装置を用いて、DCマグネトロンスパッタリング法にて、Ar雰囲気中で、付着層、下地層および磁性層を順次成膜した。

    このとき、付着層は、厚さ20nmのアモルファスCrTi層となるように、CrTiターゲットを用いて成膜した。 続いて枚葉・静止対向型成膜装置を用いて、Ar雰囲気中で、DCマグネトロンスパッタリング法にて下地層としてCrRuからなる10nm厚の層を形成した。 また、磁性層は、厚さ10nmのFePtまたはCoPt層となるように、FePtまたはCoPtターゲットを用いて成膜温度400℃にて成膜した。

    磁性層までの成膜を終えた磁気ディスクを成膜装置から加熱炉内に移しアニールした。 アニール時の加熱炉内の温度は、650〜700℃の範囲とした。

    続いて、エチレンを材料ガスとしたCVD法により水素化カーボンからなる保護層を3nm形成した。 この後、PFPE(パーフロロポリエーテル)を用いてなる潤滑層をディップコート法により形成した。 潤滑層の膜厚は1nmであった。
    以上の製造工程により、磁気ディスクを得た。

    1. ガラスの評価(1)ガラス転移温度Tg、熱膨張係数 表2〜表6に示すガラスについては、板状に加工し表2〜表6に記載の条件で化学強化処理を施した試料のガラス転移温度Tgおよび100〜300℃における平均線膨張係数α、および500〜600℃における平均線膨張係数を、リガク社製の熱機械分析装置(Thermo plus TMA8310)を用いて測定した。 なお上述の特性は、いずれも化学強化処理前後において殆んど変化しないことから、化学強化処理前のガラスも、上述の測定によって得られたガラス転移温度Tgおよび100〜300℃における平均線膨張係数α、500〜600℃における平均線膨張係数を有するものとみなす。
    表7に示すガラスについては、化学強化なしの試料について、上述と同様に各特性の測定を行った。
    (2)ヤング率 表2〜表6に示すガラスについては、板状に加工し表2〜6に記載の条件で化学強化処理を施した試料のヤング率を超音波法にて測定した。 なおヤング率は、化学強化処理前後において殆んど変化しないことから、化学強化処理前のガラスも、上述の測定によって得られたヤング率を有するものとみなす。
    表7に示すガラスについては、化学強化なしの試料について、上述と同様にヤング率の測定を行った。
    (3)比重 表2〜表6に示すガラスについては、板状に加工し表2〜表6に記載の条件で化学強化処理を施した試料の比重をアルキメデス法にて測定した。 なお比重は、化学強化処理前後において殆んど変化しないことから、化学強化処理前のガラス基板も、上述の測定によって得られた比重を有するものとみなす。
    表7に示すガラスについては、化学強化なしの試料について、上述と同様に比重の測定を行った。
    (4)比弾性率 上述の(2)で得られたヤング率および(3)で得られた比重から、比弾性率を算出した。
    (5)破壊靭性 表2〜表6に示すガラスについて、AKASHI社製の装置MVK−Eを用い、板状に加工し表2〜表6に記載の条件で化学強化処理を施した試料に押し込み荷重9.81Nでビッカース圧子を押し込み、試料に圧痕およびクラックを導入した。
    また、No. 1、No. 2のガラスについては、表2に記載の条件で化学強化処理を施した試料に押し込み荷重4.9Nでビッカース圧子を押し込み、試料に圧痕およびクラックを導入した。
    更に、No. 1、No. 2のガラスについては、化学強化なしの未強化品に対して、上述と同様に荷重9.81Nまたは荷重4.9Nを掛けて試料に圧痕およびクラックを導入した。
    試料のヤング率をE[GPa]、圧痕対角線長さ、表面クラックの半長を測定し、荷重、試料のヤング率から破壊靭性K 1cを算出した。
    (6)Tav/Tmax
    表2〜表6に示すガラスについて、板状に加工し表2〜表6に記載の条件で化学強化処理を施した試料について、板厚方向の断面をバビネ法で観察し、前述の方法でTmaxとTavを算出し、算出した値からTav/Tmaxを求めた。

    2. 基板の評価(表面粗さ、表面うねり)
    表2〜表6に示すガラスについて、化学強化処理前後の各基板の主表面(磁気記録層等を積層する面)の5μm×5μmの矩形領域を256×256ピクセルの解像度で原子間力顕微鏡(AFM)により観察し、1μm×1μmの範囲で512×256ピクセルの解像度で測定される表面粗さの算術平均Ra、5μm×5μmの範囲で測定される表面粗さの算術平均Raを測定した。
    化学強化処理前後の各基板の主表面(磁気記録層等を積層する面)の波長100μm〜950μmにおける表面うねりの算術平均Waを、光学式表面形状測定装置を用いて測定した。
    1μm×1μmの範囲で測定される表面粗さの算術平均Raが0.05〜0.15nmの範囲、5μm×5μmの範囲で測定される表面粗さの算術平均Raが0.03〜0.12nmの範囲、波長100μm〜950μmにおける表面うねりの算術平均Waが0.2〜0.5nmであり、高記録密度の磁気記録媒体に用いられる基板として問題のない範囲であった。

    表2〜表6に示すように、No. 1〜No. 22のガラス基板は、高い耐熱性(高いガラス転移温度)、高剛性(高いヤング率)、高熱膨張係数、高破壊靭性という、磁気記録媒体基板に求められる4つの特性を兼ね備えたものであった。 更に表2〜表6に示す結果から、No. 1〜No. 22のガラス基板は、高速回転に耐え得る高い比弾性率を有し、かつ低比重であり基板の軽量化も可能であることも確認できる。 加えてガラス基板作製のために実施例で使用したガラスが、化学強化処理によりイオン交換層を容易に形成できるものであり、その結果、高い破壊靭性を示すことも確認された。
    以上の結果から、本発明の一態様によれば、磁気記録媒体基板に求められる特性を兼ね備えたガラスが得られることが確認された。

    図5は、表3、表4に示すNo. 3〜No. 9、No. 10、No. 11のガラスについて、化学強化処理後の破壊靭性値を、モル比(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))に対してプロットしたグラフである。 図6は、表3、表4に示すNo. 3〜No. 9、No. 10、No. 11のガラスについて、化学強化処理後の破壊靭性値を、モル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))に対してプロットしたグラフである。
    これらグラフから、モル比(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))を上げるほど、またはモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))を下げるほど、破壊靭性値、即ち機械的強度が向上することが確認できる。

    一方、表7に示すモル比(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.706、モル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.294のガラス(No.23)を用いて熔融塩の温度が500℃の温度で化学強化を行った場合、破壊靭性値は0.74MPa・m 1/2であった。 さらに、複数枚のガラスを同時に500℃の熔融塩に浸漬し、化学強化したところ、急激に熔融塩が劣化し、強化後の破壊靭性値は0.74MPa・m 1/2に達しなかった。 同様に複数枚のガラスを順次、500℃の熔融塩に浸漬し、化学強化しても、2回目以降に化学強化したガラスの破壊靭性値は急激に低下した。 これは、前述のとおり、ガラス組成中に含まれるCa 2+イオンが熔融塩中に溶け出し、アルカリ金属イオン同士のイオン効果を阻害したためと推察される。 なお、同様の結果が、モル比(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.8より小さい場合、モル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.2より小さい場合にも見られた。

    これに対し、表2〜6に示すNo. 1〜22の各ガラスでは、同時に複数枚のガラスを熔融塩に浸漬して化学強化しても、0.90MPa・m 1/2に以上の破壊靭性値を維持することができた。 また、No. 1〜22の各ガラスでは、複数枚のガラスを順次、熔融塩に浸漬して化学強化しても、0.90MPa・m 1/2に以上の破壊靭性値を維持することができた。
    このように、モル比(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.80以上のガラス、または、モル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下のガラスでは、化学強化による熔融塩の劣化が生じにくく、高い破壊靭性値を有する化学強化ガラスを安定して生産することができる。 これに対し、モル比(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.80未満、モル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20超になると、化学強化によって熔融塩が劣化し、高い破壊靭性値を維持することが困難になる。

    なお化学強化後のNo. 1〜No. 9のガラスには、表面に深さ30〜120μmの圧縮応力層が形成されており、圧縮応力の大きさは2.0kgf/mm 2以上の値(19.6MPa以上の値)となっている。 また、化学強化後のNo. 10〜No. 22のガラスには、表面に深さ20〜120μmの圧縮応力層が形成されており、圧縮応力の大きさは2.0kgf/mm 2以上の値(19.6MPa以上の値)となっている。

    以上の結果から、本発明の一態様によれば、磁気記録媒体用基板に求められる特性を兼ね備えたガラスが得られることが確認された。
    また、イオン交換処理後に取代を0.5〜5μmの範囲内から適宜選択して鏡面研磨を実施したこと以外は上述と同様にしてガラス基板を作製した。 得られた複数枚のガラス基板の断面をバビネ法により観察したところ、イオン交換層が形成されており、機械的強度の劣化は見られなかった。 その他特性については上述と同様であった。

    各実施例(化学強化後のNo.1〜No.22の各ガラス)について、前記したバビネ法により観察により得られた断面写真では、2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状であり、アップヒルは見られなかった。 これら応力プロファイルから、図3に基づき説明した前記方法でTav/Tmaxを求めたところ、No. 1〜No. 15のガラスの化学強化後のTav/Tmaxの値はいずれも0.7以上であった。 また、No. 16〜No. 22のガラスの化学強化後のTav/Tmaxの値はいずれも0.4以上であった。

    上述の応力プロファイルを示す化学強化ガラス基板が遅れ破壊を示さないことを実証するため、以下の試験を行った。
    実施例において破壊靭性値を測定した化学強化処理後の試料には、押し込み荷重9.81Nでビッカース圧子を押し込んでできた圧痕が存在する。 この圧痕のある試料を環境試験機に入れて温度80℃、相対湿度80%の環境下に7日間放置した後、取り出し、圧痕を観察した。 試料は、各実施例ともに100枚ずつ用意し、上述の試験を行った結果、いずれの試料においても圧痕からのクラックの伸長は認められなかった。
    以上の遅れ破壊の加速試験の結果から、実施例の化学強化ガラス基板において遅れ破壊防止効果が得られていることを確認した。

    3. 磁気ディスクの評価(1)平坦性 一般に、平坦度が5μm以下であれば信頼性の高い記録再生を行うことができる。 上述の方法で実施例のガラス基板を用いて形成した各磁気ディスク表面の平坦度(ディスク表面の最も高い部分と、最も低い部分との上下方向(表面に垂直な方向)の距離(高低差))を、平坦度測定装置で測定したところ、いずれの磁気ディスクも平坦度は5μm以下であった。 この結果から、実施例のガラス基板は、FePt層またはCoPt層形成時の高温処理においても大きな変形を起こさなかったことが確認できる。

    (2)ロードアンロード試験 上述の方法で実施例のガラス基板を用いて形成した各磁気ディスクを、回転数10000rpmの高速で回転する2.5インチ型ハードディスクドライブに搭載し、ロードアンロード(Load Unload、以下、LUL)試験を行った。 上述のハードディスクドライブにおいて、スピンドルモーターのスピンドルはステンレス製であった。 いずれの磁気ディスクもLULの耐久回数は60万回を超えた。 また、LUL試験中にスピンドル材料との熱膨張係数の違いによる変形や高速回転によるたわみが生じると試験中にクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害が生じるが、いずれの磁気ディスクも試験中にこれら障害は発生しなかった。

    (3)耐衝撃性試験 磁気ディスク用ガラス基板(2.5インチサイズ、板厚0.8mm)を作製し、ランスモント社製MODEL−15Dを用いて衝撃試験を行った。 この衝撃試験は、磁気ディスク用ガラス基板を、HDDのスピンドル及びクランプ部に似せて作製された専用の衝撃試験用治具に組み付け、1msecで1500Gの正弦半波パルスの衝撃を主表面に対する垂直方向に与え、この磁気ディスク用ガラス基板の破損状況を見ることによって行った。
    その結果、実施例のガラス基板においては破損が観察されなかった。 一方、比較例のガラス基板については破損が観察された。 この破損発生部について詳細に調査した結果、多くがディスク内径部に位置していることがわかった。

    以上の結果から、本発明によれば耐衝撃性に優れ、信頼性の高い記録再生が可能である磁気記録媒体用ガラス基板が得られることが確認できる。

    上述の方法で実施例のガラス基板を用いて作製した磁気ディスクをレーザー光の照射により磁化反転をアシストする記録方式(熱アシスト記録方式)のハードディスクドライブに搭載し、熱アシスト記録方式の磁気記録装置を作製した。 前記磁気記録装置は、磁気記録媒体(磁気ディスク)の主表面を加熱するための熱源(レーザー光源)と、記録素子部と、再生素子部とを有する熱アシスト磁気記録ヘッド、および磁気ディスクを有する。 なお、上述の磁気記録装置の磁気ヘッドはDFH(Dynamic Flying Height)ヘッドであり、磁気ディスクの回転数は10000rpmである。
    これとは別に、作製した磁気ディスクをマイクロ波によりアシストする記録方式(マイクロ波アシスト記録方式)のハードディスクドライブに搭載し、マイクロ波アシスト記録方式の情報記録装置を作製した。 このように高Ku磁性材料とエネルギーアシスト記録の組み合わせた情報記録装置によれば、先に説明したように高密度記録を実現することができる。

    本発明の一態様によれば、高密度記録化に最適な磁気記録媒体を提供することができる。

    最後に、前述の各態様を総括する。

    一態様によれば、必須成分として、SiO 2 、Li 2 O、Na 2 O、およびMgOを含み、Li 2 O、Na 2 OおよびK 2 Oからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物を合計で6〜15モル%含み、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を合計で10〜30モル%含み、アルカリ金属酸化物の合計含有量に対するLi 2 O含有量のモル比{Li 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0超かつ0.3以下、アルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するMgOの含有量のモル比{MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)}が0.80以上、ガラス転移温度が650℃以上、ヤング率が80GPa以上である磁気記録媒体基板用ガラスが提供される。

    磁気記録媒体基板用ガラスとしては、以下のガラス組成および特性の1つ以上を満たすことが、より好ましい。

    アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するMgO、CaOおよびLi 2 Oの合計含有量のモル比{(MgO+CaO+Li 2 O)/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O+MgO+CaO+SrO+BaO)}が0.50以上である。

    アルカリ土類金属酸化物の合計含有量に対するCaOの含有量のモル比{CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)}が0.20以下である。

    100〜300℃における平均線膨張係数が、55×10 -7 /℃以上であるガラス。

    モル%表示で、SiO 2を56〜75%、Al 23を1〜20%、Li 2 Oを0%超かつ3%以下、Na 2 Oを1%以上かつ15%未満、MgOを8〜30%、ZrO 2 、TiO 2 、Y 23 、La 23 、Gd 23 、Nb 25およびTa 25からなる群から選ばれる酸化物を合計で0モル%超かつ10%以下を含む。

    モル%表示で、SiO 2を56〜75%、Al 23を1〜20%、Li 2 Oを0%超かつ3%以下、Na 2 Oを1%以上かつ15%未満、K 2 Oを0%以上3%未満、MgOを8〜30%含み、かつBaOを実質的に含まず、アルカリ金属酸化物の合計含有量に対するK 2 O含有量のモル比{K 2 O/(Li 2 O+Na 2 O+K 2 O)}が0.08以下である。

    Li 2 O含有量が0.5モル%以下、例えば0.08〜0.5モル%の範囲であり、かつCaOを実質的に含まない(即ち、CaO含有量が0モル%である)。

    比弾性率が、30MNm/kg以上である。

    一態様では、上述の磁気記録媒体基板用ガラスは、化学強化用ガラスである。

    本発明の一態様によれば、上述の磁気記録媒体基板用ガラスからなる磁気記録媒体基板が提供される。

    上述の磁気記録媒体基板は、好ましくは、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスを化学強化してなる基板である。

    上述の磁気記録媒体は、好ましくは、破壊靭性値が、0.9MPa・m 1/2以上である。

    一態様では、上述の磁気記録媒体基板は、バビネ法により求められる2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状であり、ただし該凸形状は圧縮応力側へ凹む凹み部を含まない化学強化ガラスからなる。

    一態様では、上述の磁気記録媒体基板は、バビネ法により求められる引張応力の平均値Tavと引張応力の最大値Tmaxとが、下記式(1):
    Tav/Tmax≧0.4 …(1)
    を満たす化学強化ガラスからなる。

    また、一態様では、上述の磁気記録媒体基板は、ナトリウム塩およびカリウム塩を含む熔融塩に浸漬して化学強化されたガラスからなる。

    また、一態様では、上述の磁気記録媒体基板は、Li 2 Oを0.1モル%以上含むガラスを前記熔融塩に浸漬して化学強化されたガラスからなる。

    また、一態様では、上述の磁気記録媒体基板の原子間力顕微鏡を用いて1μm角で512×256ピクセルの解像度で測定した主表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.15nm以下である。

    また、一態様では、上述の磁気記録媒体基板は、回転数が5000rpm以上の磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体用の基板である。

    また、一態様では、上述の磁気記録媒体基板は、DFH(Dynamic Flying Height)ヘッドを搭載した磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体用の基板である。

    また、一態様では、上述の磁気記録媒体基板は、エネルギーアシスト磁気記録用磁気記録媒体に用いられる。

    本発明の他の一態様は、上述の磁気記録媒体基板用ガラスからなる磁気記録媒体基板ブランクに関する。

    一態様では、上述の磁気記録媒体基板ブランクは、ディスク形状である。

    本発明の他の一態様は、上述の磁気記録媒体基板ブランクを加工することを含む磁気記録媒体基板の製造方法、に関する。

    一態様では、上述の磁気記録媒体基板の製造方法は、ナトリウム塩およびカリウム塩を含む熔融塩にガラスを浸漬して化学強化する工程を含む。

    また、一態様では、上述の工程において、Li 2 Oを0.1モル%以上含むガラスを前記熔融塩に浸漬して化学強化する。

    また、一態様では、バビネ法により求められる引張応力の平均値Tavと引張応力の最大値Tmaxとが、下記式(1):
    Tav/Tmax≧0.4 …(1)
    を満たす化学強化ガラスとなるように上述の化学強化を行う。
    なお、Tav/Tmax≧0.5であることがさらに好ましい。

    また、一態様では、バビネ法により求められる2つの主表面に垂直な仮想断面における応力プロファイルにおいて、引張応力分布が凸形状であり、ただし該凸形状は圧縮応力側へ凹む凹み部を含まない化学強化ガラスとなるように上述の化学強化を行う。

    本発明の他の一態様は、上述の磁気記録媒体基板上に磁気記録層を有する磁気記録媒体、に関する。

    一態様では、上述の磁気記録層はFeおよび/またはCoと、Ptとの合金を主成分とする磁性材料を含む磁気記録層であり、上述の磁気記録媒体はエネルギーアシスト磁気記録用磁気記録媒体である。

    本発明の他の一態様は、上述の磁気記録媒体基板の主表面に、Feおよび/またはCoと、Ptとの合金を主成分とする磁性材料を成膜した後、アニール処理を行うことにより磁気記録層を形成することを含む磁気記録媒体の製造方法、に関する。

    本発明の他の一態様は、少なくとも磁気記録媒体の主表面を加熱するための熱源と、記録素子部と、再生素子部とを有する熱アシスト磁気記録ヘッド、および、上述の磁気記録媒体を有するエネルギーアシスト磁気記録方式の磁気記録装置、に関する。

    一態様では、上述の磁気記録装置において、磁気記録媒体の回転数は5000rpm以上である。

    また、一態様では、上述の磁気記録装置は、DFH(Dynamic Flying Height)ヘッドを搭載した磁気記録装置である。

    今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。 本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
    例えば、上述の例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体基板用ガラスを作製することができる。
    また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。

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