樹脂処理顔料、該顔料の製造方法及び顔料分散体

申请号 JP2012506999 申请日 2011-03-22 公开(公告)号 JPWO2011118557A1 公开(公告)日 2013-07-04
申请人 大日精化工業株式会社; 国立大学法人京都大学; 发明人 嶋中 博之; 博之 嶋中; 賀一 村上; 賀一 村上; 真一郎 青柳; 真一郎 青柳; 後藤 淳; 淳 後藤; 敬亘 辻井; 敬亘 辻井;
摘要 本発明は、顔料と不飽和結合含有モノマーの重合体とからなる樹脂処理顔料であって、顔料と該重合体との質量比率が、顔料:重合体=50〜95:5〜50であり、且つ、該重合体は、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを5〜70質量%含有してなるブロックコポリマーであることを特徴とする樹脂処理顔料、その製造方法及び樹脂処理顔料を用いた顔料分散体である。
权利要求
  • 顔料と不飽和結合含有モノマーの重合体とからなる樹脂処理顔料であって、顔料と該重合体との質量比率が、顔料:重合体=50〜95:5〜50であり、且つ、該重合体は、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを5〜70質量%含有してなるブロックコポリマーであることを特徴とする樹脂処理顔料。
  • 前記ブロックコポリマーが、アクリル系ポリマーであるA−Bブロックコポリマーであって、該A−Bブロックコポリマーを構成する、A鎖のポリマーブロックは、分散媒体に親和するアクリル系ポリマーであり、且つ、B鎖のポリマーブロックは、前記ブロックコポリマー中に含まれる紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーの全質量中の70%以上を、その構成成分としてなるアクリル系ポリマーである請求項1に記載の樹脂処理顔料。
  • 前記A鎖のポリマーブロックの数平均分子量(Mn)が1,000以上20,000以下であり、その分子量分布である重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が1.6以下であり、且つ、B鎖のポリマーブロックの分子量が10,000未満である請求項2に記載の樹脂処理顔料。
  • 前記A鎖のポリマーブロックが、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーを構成成分とし、その酸価が50〜250mgKOH/gである請求項2又は3に記載の樹脂処理顔料。
  • 前記A−Bブロックコポリマーが、構成成分のすべてをメタクリレート系モノマーとする請求項2〜4のいずれか1項に記載の樹脂処理顔料。
  • 前記紫外線吸収性基が、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収性基、トリアジン系の紫外線吸収性基又はベンゾフェノン系の紫外線吸収性基のいずれかである請求項1又は2に記載の樹脂処理顔料。
  • 請求項2〜6のいずれか1項に記載の樹脂処理顔料を得るための製造方法であって、前記A−Bブロックコポリマーを、少なくとも有機ヨウ素化合物を開始化合物とするリビングラジカル重合法によって合成し、得られたA−Bブロックコポリマーを用いて顔料を処理することを特徴とする樹脂処理顔料の製造方法。
  • 前記リビングラジカル重合法による合成に、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート系化合物、イミド類、ヒダントイン類、バルビツル酸類、シアヌル酸類、フェノール系化合物、アイオドオキシフェニル化合物、ビタミン類、ジフェニルメタン系化合物、シクロペンタジエン類、アセトアセト系化合物、からなる群から選ばれる1種以上の化合物を触媒として使用する請求項7に記載の樹脂処理顔料の製造方法。
  • 顔料を、水、モノマー、有機溶剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び紫外線・電子線硬化型樹脂からなる群から選ばれる少なくともいずれかを含む分散媒体に分散してなる顔料分散体であって、前記顔料が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂処理顔料であることを特徴とする顔料分散体。
  • 说明书全文

    本発明は、耐光性が向上された樹脂処理顔料、該顔料の製造方法及び該顔料を分散してなる顔料分散体に関する。 より詳しくは、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを少なくとも構成成分とする共重合体(ブロックコポリマー)、より好ましくは、アクリル系のA−Bブロックコポリマーにて処理してなる顔料が、該ブロックコポリマーにてカプセル化されている樹脂処理顔料、該顔料の製造方法及び該顔料の分散体に関する。

    顔料は、染料のような分子状態で媒体中に存在するのではなく、結晶である粒子とし媒体中に存在する。 このため、各種製品の着色剤として用いた場合に、染料を着色剤として用いた製品よりも、光、紫外線に対して劣化しづらく、退色しない、すなわち、良好な耐光性を示すものとなる。 その性質を利用して、顔料は、屋内外の、塗料、インキ、コーティング剤、捺染剤、文具、カラーフィルター、トナー、インクジェットインク、成型物、フィルム及び繊維着色など、極めて広い様々な用途に対応した着色剤として使用されている。

    しかしながら、下記に挙げるように、顔料といえども耐光性に劣るものがある。 顔料には、無機化合物からなる無機顔料と、有機化合物からなる有機顔料があり、一般的に、有機顔料に比して無機顔料は耐光性に優れる傾向にあるが、無機顔料でも耐光性に劣るものがある。 例えば、酸化チタン顔料では、その結晶形の違いにより、アナターゼ型とルチル型が知られているが、アナターゼ型は一般に耐光性に劣る。 有機顔料は、結晶して粒子として存在しているとしても、有機化合物であるために、どうしても紫外線に対して劣化が起こり、上記したように、無機顔料と比較すると耐光性に劣る傾向がある。 そして、有機顔料の中でもアゾ系顔料は、構造中にあるアゾ基が紫外線によって分解しやすく、耐光性が低い。 また、耐光性が強い銅フタロシアニン顔料でも、ε型の銅フタロシアニンは、耐光性が他の結晶形のものよりも低いことが知られている。

    また、顔料は、結晶である粒子で存在していても、その粒子径によっては、耐光性に劣る場合がある。 例えば、顔料を微粒子化するほど耐光性は悪くなる傾向にある。 例えば、インクジェット用インクに顔料を適用した場合、インクを細いノズルから吐出する記録方式の特殊性から、より顔料粒子を微細化することが求められるが、特にアゾ系黄色顔料では、微粒子化すると耐光性が劣るものになったり、求める色範囲が狭まったりすることが生じる。 このため、顔料の粒子径については、妥協しながら使用しているのが現状である。 また、カラーフィルター用の顔料の場合、そのコントラストや透明性を挙げるために、顔料を微粒子化することが必須となるが、やはり顔料の粒子径が小さくなるため、耐光性が悪くなるという問題がある。 この問題に対しては、紫外線吸収フィルムなどの保護層を導入し、微細化顔料にできるだけ紫外線が当たらないようにするといった対応がとられている。 上記したように、顔料の耐光性は、顔料の分子構造、結晶、粒子径によるものなので、顔料の性質によって決定されてしまい易い。 そのため、耐光性の点で使用が限られることがあり、用途によっては、所望の顔料を使用できないことがあった。

    そこで、顔料の耐光性を向上させるために、顔料の構造を変化させたり、または分子量を大きくしたり、さらには、アゾ顔料においては、2個以上のアゾ基を持つジアゾ以上の顔料にしたりして、分子量を大きくして、その耐光性を向上させている。 また、その顔料の粒子径や結晶形を調整したり、特に高結晶性にしたりすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。

    また、製品を製造する際、着色剤として顔料を添加した時に、紫外線吸収剤や光安定剤などの耐光性向上添加剤を添加したりすることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。 その他にも、顔料を添加してなる製品を、紫外線吸収剤が添加されたフィルム、コーティング剤などで、多層化やオーバーコート化したり、または、光源に対して紫外線を発生しないようにしたり、紫外線をカットするように光源に、紫外線吸収フィルムやコーティングなど施したりしたりして、顔料の退色を抑えることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。

    特開2004−26930号公報

    特開平8−208976号公報

    特開平7−142173号公報

    しかしながら、前記に挙げた従来の方法では、構造の変化や分子量の増大により、色相が変わったり、求める色相にならなかったりする場合があった。 また、粒子径を大きくすると、表面が劣化してもその表層以下の部分が発色することによって、色の保持を保ち、結果として、耐光性を向上させることができるが、この場合は、顔料の鮮明性、透明性や発色性が劣る結果となる。

    また、紫外線吸収剤などの添加物を顔料と共に物品に添加して耐光性を向上させる従来の方法では、これらの添加物は低分子量であるため、物品に使用するとブリートアウトしたり、抽出されてしまったりして、効果の持続性に問題がある。 また、この場合は、紫外線吸収剤などが顔料の近傍にいて顔料に紫外線を当てないこと、または、劣化してできたラジカルなどをトラップして顔料の耐光性を向上させる必要がある。 しかし、紫外線吸収剤は低分子であるために、分散媒体に拡散して、顔料の近傍にいることは難しいと考えられ、その効果は十分ではない。 また、先に挙げた紫外線吸収フィルムなどを用いて光源からの紫外線をカットする方法は、根本的な顔料の耐光性向上を解決する手段ではない。

    これに対し、本発明者らは、紫外線吸収性基を有する重合体で顔料を処理する方法が有効ではないかと考えるに至った。 すなわち、この場合は、紫外線吸収剤のような低分子量ではないので、ブリードアウトしたり、抽出されたりせず、また、分散媒体に対して親和がないように設計すれば、重合体が顔料を被覆することによっての効果が期待できる。

    しかしながら、一般に、紫外線吸収性基を有するモノマーは溶剤溶解性に劣るため、重合体中に多くの量を導入できない場合がある。 これに対し、溶剤を選択することによって、紫外線吸収モノマーの導入量を多くした紫外線吸収ポリマーを得ることができるが、この場合は、最適な溶剤を選択することが必要になるので煩雑である。 また、上記の紫外線吸収ポリマーは、分散媒体への相溶性に劣り、顔料を樹脂処理した場合にも分散性が低くなる傾向がある。 また、紫外線吸収モノマーは、一般的にコストが高く、多く導入すると製品のコスト高になってしまうという経済性についての問題もある。

    したがって、本発明の目的は、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを少なくとも構成成分とする重合体を用いた、耐光性が向上された樹脂処理顔料、該顔料の製造方法及び該顔料を分散してなる顔料分散体を提供することにある。 本発明の別の目的は、顔料の耐光性を向上させることによって、今まで使用することができなかった用途や分野に顔料を適用でき、加えて、今まで耐光性が十分でないことから使用できなかった顔料の使用を可能とすることで、その色表現範囲の拡大を可能とすることにある。 また、本発明の別の目的は、今まで使用している分野においても、顔料の耐光性をさらに向上させることによって、顔料を着色剤として適用した製品の退色時間の長期化を達成して、製品を長持ちさせて省資源化にも寄与し得る、各種用途において、耐光性が向上された各種製品の提供を可能とすることにある。

    上記の目的は、下記の本発明によって達成される。 すなわち、本発明では、顔料と不飽和結合含有モノマーの重合体とからなる樹脂処理顔料であって、顔料と該重合体との質量比率が、顔料:重合体=50〜95:5〜50であり、且つ、該重合体は、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを5〜70質量%含有してなるブロックコポリマーであることを特徴とする樹脂処理顔料を提供する。

    このように、紫外線吸収性基を有するブロックコポリマーで、顔料粒子を被覆し、いわゆるカプセル化する構成によって、顔料の耐光性を向上させることができる。 なお、本発明でいう「カプセル化」とは、顔料粒子表面に、該ブロックコポリマーが吸着や堆積していること、さらには、該ブロックコポリマーが成膜して顔料粒子表面が被覆されていることを意味する。

    本発明の好ましい形態としては、前記ブロックコポリマーが、アクリル系ポリマーであるA−Bブロックコポリマーであって、該A−Bブロックコポリマーを構成する、A鎖のポリマーブロックは、分散媒体に親和するアクリル系ポリマーであり、且つ、B鎖のポリマーブロックは、前記ブロックコポリマー中に含まれる紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーの全質量中の70%以上を、その構成成分としてなるアクリル系ポリマーである樹脂処理顔料が挙げられる。

    上記好ましい形態によれば、上記構成を有するA−Bブロックコポリマーを使用することで、紫外線吸収性基が集中しているB鎖のポリマーブロックにて顔料粒子を効率よく被覆してカプセル化でき、紫外線を吸収するものとできる結果、顔料の耐光性を高めることができる。 紫外線吸収モノマーが比較的コスト高な場合には、紫外線吸収モノマーの使用量を少量とすることができるので、コスト低下にも役立つ。 さらには、上記構成では、A鎖のポリマーブロックが分散媒体に相溶するため、樹脂処理顔料の分散性がより向上する。

    本発明の樹脂処理顔料のより好ましい形態としては、下記のようにすることが挙げられる。 前記A鎖のポリマーブロックの数平均分子量(Mn)が1,000以上20,000以下であり、その分子量分布である重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が1.6以下であり、且つ、B鎖のポリマーブロックの分子量が10,000未満であること、また、前記A鎖のポリマーブロックが、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーを構成成分とし、その酸価が50〜250mgKOH/gであることが挙げられる。 このように酸価を調整した構成とすれば、性で使用できるようになる。

    また、前記A−Bブロックコポリマーが、構成成分のすべてをメタクリレート系モノマーとすること、また、前記紫外線吸収性基が、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収性基、トリアジン系の紫外線吸収性基又はベンゾフェノン系の紫外線吸収性基のいずれかであることが挙げられる。

    本発明では別の実施形態として、上記の樹脂処理顔料を得るための製造方法であって、A−Bブロックコポリマーを、少なくとも有機ヨウ素化合物を開始化合物とするリビングラジカル重合法によって合成し、得られたA−Bブロックコポリマーを用いて顔料を処理することを特徴とする樹脂処理顔料の製造方法を提供する。 ここで、「処理する」とは、A−Bブロックコポリマーの存在下で、顔料化や微細化、分散、混合などを行い、A−Bブロックコポリマーを顔料粒子表面に析出させて、顔料をカプセル化することである。

    本発明の樹脂処理顔料の製造方法の好ましい形態としては、前記リビングラジカル重合法による合成に、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート系化合物、イミド類、ヒダントイン類、バルビツル酸類、シアヌル酸類、フェノール系化合物、アイオドオキシフェニル化合物、ビタミン類、ジフェニルメタン系化合物、シクロペンタジエン類、アセトアセト系化合物、からなる群から選ばれる1種以上の化合物を触媒として使用することが挙げられる。

    本発明では別の実施形態として、顔料を、水、モノマー、有機溶剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び紫外線・電子線硬化型樹脂からなる群から選ばれる少なくともいずれかを含む分散媒体に分散してなる顔料分散体であって、前記顔料が、上記のいずれかに記載の樹脂処理顔料であることを特徴とする顔料分散体を提供する。 本発明の樹脂処理顔料或いは上記のようにしてなる顔料分散体は、例えば、塗料、インキ、コーティング剤、文具、捺染剤、カラーフィルター、トナー、インクジェットインク、プラスチックの着色剤として、広く使用することができる。

    本発明によれば、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを少なくとも構成成分とする重合体を用いた、耐光性が向上された樹脂処理顔料、該顔料の製造方法及び該顔料を含む顔料分散体が提供される。 本発明によれば、顔料の耐光性を向上させることによって、今まで使用できなかった用途や分野に顔料を適用でき、加えて、今まで耐光性が十分でないことから使用できなかった顔料の使用を可能とすることで、その色表現範囲の拡大を可能になる。 また、本発明によれば、今まで顔料が使用されている分野においても、顔料の耐光性をさらに向上させることで、顔料を着色剤として適用した製品の退色時間の長期化を達成し、製品を長持ちさせて省資源化にも寄与し得る、従来の各種用途においても、耐光性が向上された各種製品の提供が可能となる。

    以下に好ましい発明を実施するための形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
    本発明の樹脂処理顔料は、顔料と、不飽和結合含有モノマーの重合体とからなるものであって、顔料と該重合体との質量比率が、顔料:重合体=50〜95:5〜50であり、且つ、該重合体は、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを5〜70質量%含有してなるブロックコポリマーであることを特徴とする。 すなわち、本発明では、ブロックコポリマー全体に使用されるモノマー成分のうちの5〜70質量%が、紫外線吸収モノマーであるブロック共重合体を用いる。 より好ましくは、使用する紫外線吸収モノマーの全質量中の70%以上が、一方のポリマーブロックに集中しているA−Bブロックコポリマーを用いる。

    上記したように、本発明の好ましい形態では、紫外線吸収性基を有するブロックコポリマーの構成を、紫外線吸収性基が70%以上集中している構造のポリマーブロックを持つA−Bブロックコポリマーとする。 そして、例えば、そのB鎖のポリマーブロックに、紫外線吸収性基が集中しており、さらに、好ましくは、その紫外線吸収性基が、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系又はベンゾフェノン系のいずれかの芳香環の化合物に由来するものとする。 顔料と共にこのようなA−Bブロックコポリマーを使用すれば、該ポリマーは、顔料への親和性が高く、また分子量が比較的大きいので、分散媒体に相溶せず、この結果、顔料をカプセル化すること、及び、B鎖のポリマーブロックに全ポリマーに含まれる紫外線吸収性基を集中させることができる。 このようなポリマーを使用することによって、本発明の樹脂処理顔料は、顔料の表面で紫外線をより多く吸収することとなり、顔料の耐光性をさらに向上させることができる。 さらに、同じ紫外線吸収量であるポリマーの分子鎖で比べてみると、通常のランダム重合では、紫外線吸収性基が分子鎖にランダムに配列することになるが、ブロックコポリマーとした場合は、B鎖のポリマーブロックに紫外線吸収性基を集中させることになる。 上記した理由によると考えられるが、本発明者らは、ポリマー中に同量の紫外線吸収性基を導入しても、ブロックコポリマーとした場合の方が、顔料の耐光性がより良好になることを確認した。 すなわち、本発明では、顔料と共に用いる樹脂の構造をブロックコポリマーとしているため、通常のランダムコポリマーの場合よりも、導入した紫外線吸収性基が少ない量で、高い耐光性向上の性能を発揮させることが可能になる。

    また、本発明で使用する重合体を、A−Bブロックコポリマーとした場合は、その構造上の特性から、下記に述べるような効果が得られる。 すなわち、B鎖のポリマーブロックが、顔料を被覆、カプセル化する一方で、A鎖のポリマーブロックは、分散媒体に相溶するポリマーブロックであるので、A−Bブロックコポリマーで処理した顔料を分散媒体に分散させると、A鎖は分散媒体に拡散して、良好な分散性を与える。 このような構成の樹脂処理顔料を分散媒体に分散させることで、高耐光性、高透明性、高発色、高分散安定性、微分散性、高耐熱性を実現し得る優れた着色剤が提供される。 以下、本発明の樹脂処理顔料を構成する各成分について説明する。

    本発明で使用される顔料は、従来公知の無機顔料、有機顔料をいずれも使用することができ、特に限定されない。 本発明によれば、耐光性が十分でなかった顔料を使用した場合には、その耐光性を向上させることができ、また、耐光性に優れる顔料を用いた場合であっても、その耐光性をより向上させることが可能になる。

    具体的には、有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、ジケトピロロピロール顔料などが挙げられる。 本発明は、勿論、これらに限定されるものではない。

    無機顔料としては、例えば、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、微粒子酸化チタン、必要に応じて、光触媒酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛などの白色顔料;硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、カオリンや白土などのクレー類、シリカや珪藻土などの二酸化ケイ素類、タルク、硫酸マグネシウム、アルミナなどの体質顔料;オーカー、チタンエロー、弁柄、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、ジンクグリーン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン、ニッケル・コバルト・亜鉛・チタンの複合酸化物、コバルト・クロムの複合酸化物、銅・クロム・マンガンの複合酸化物などの有色無機顔料や複合酸化物顔料;硫化ストロンチウム、硫化亜鉛、タングステンカルシウ� ��などの蛍光顔料;アルミン酸ストロンチウムなどの蓄光顔料;マイカ、白雲母、鉄雲母、金雲母などの雲母類のチタン処理品であるパール顔料;その他ガラス粉末、炭化ケイ素、窒化ケイ素、フェライトなどが挙げられる。 特に、紫外線を吸収する酸化亜鉛の場合は、より紫外線を吸収するがアップするので好ましい。

    次に、上記に挙げたような顔料を処理するために本発明で用いる紫外線吸収性基を持つ重合体について説明する。 本発明で用いる該重合体は、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを重合して得られるブロックコポリマーであることを特徴とする。 その他、ランダムコポリマー、グラフトコポリマーなどの構造のポリマーもあり、これらを併用することも可能であるが、本発明では、先に述べた理由から、特にブロックコポリマーを用いたことを特徴とする。

    本発明で用いるブロックコポリマーとしては、特に、下記の構成のものが好ましい。 すなわち、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを構成成分としてなるA−Bブロックコポリマーであって、その構造が、A鎖のポリマーブロックが、分散媒体に親和するアクリル系ポリマーであり、B鎖のポリマーブロックが、全コポリマー中に含まれる紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーの70%以上を構成成分としてなるポリマーブロックであることが好ましい。

    このようなA−Bブロックコポリマーによって、顔料を処理すると、顔料にB鎖のポリマーブロックが堆積、被覆して、顔料をカプセル化し、一方のA鎖のポリマーブロックは、分散媒体に対し親和するため相溶することができる。

    本発明に使用できる紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーとしては、従来公知のものを使用することができる。 特に本発明では、ベンズトリアゾール系の紫外線吸収性基、トリアジン系の紫外線吸収性基或いはベンゾフェノン系の紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを使用するとよい。 これらの紫外線吸収性基を有する化合物は、従来から紫外線吸収剤として使用されており、ブロックコポリマー中に残基として紫外線吸収性基を有する場合に、その性能を十分に発揮できる。 また、本発明に好適な上記に列挙した紫外線吸収性基は、後述するように、その骨格中に芳香環を多数持つ分子であり、顔料への吸着性がπ−πスタッキングで形成され、また、その多数の芳香環の存在によって溶剤溶解性に劣ることになるので、顔料に、堆積、被覆、カプセル化するのに役立つ。

    本発明に好適な紫外線吸収性基としては、例えば、以下の構造から水素原子を一個取り去って1価の残基とできる、以下のような骨格を有する官能基が挙げられる。 また、本発明に好適な紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーとは、それらの骨格の適宜な位置に付加重合基が直接又は各種官能基(例えば、エステル、アミド等)を介して結合しているものである。
    まず、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収性基の骨格は、次の構造式で一般的に表せる。 例えば、構造式中のR'の位置に付加重合性基が結合したものをモノマーとして使用することで、B鎖のポリマーブロックの構造中にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収性基が結合されてなるものを得ることができる。


    上記式中のR及びR'は、同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリル基、アルコキシ基、エステル基及びオキシカルボニル基からなる群から選ばれるいずれかである。

    トリアジン系の紫外線吸収性基は、一般的に、次の骨格を有する構造のものである。


    式中のR1〜R5は、同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリル基、アルコキシ基、エステル基及びオキシカルボニル基からなる群から選ばれるいずれかである。

    ベンゾフェノン系の紫外線吸収性基は、一般的に、次の骨格を有する構造のものである。


    式中のR6、R7は、同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリル基、エステル基、オキシカルボニル基からなる群から選ばれるいずれかである。 本発明で使用する紫外線吸収基は、上記に示した構造部分のいずれかを含有するものを使用することが好ましい。

    これらの紫外線吸収性基を有するモノマーとしては、従来公知のものを使用することができる。 そして、上記に挙げたような構造の紫外線吸収性基を有する付加重合性のモノマーであれば、どのような構造のものでも使用することができる。

    これらの紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーは、市販品をそのまま使用して重合に用いてもよいし、また、例えば、グリシジル基、イソシアネート基などの反応性基を持つモノマーと、それらの反応性基を有する官能基を有する紫外線吸収剤を反応させてモノマーとし、これを用いてもよい。 また、反応性基を有するモノマーを重合させた後、その反応性基と反応しうる基を持つ紫外線吸収剤を反応させて、本発明で使用する紫外線吸収性能を有するブロックコポリマーとしてもよい。

    紫外線吸収性基を有する付加重合性のモノマーとして、下記のものが挙げられる。 例えば、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収性基を有するモノマーとしては、2−(2'−ヒドロキシ−3'−ビニルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールをグリシジル(メタ)アクリレートなどを反応させたモノマーなどが挙げられる。 また、トリアジン系の紫外線吸収性基を有するモノマーとしては、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと、グリシジルメタクリレートを反応させたものや、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどを、(メタ)アクリロキシエチルイソシアネートなどと反応させたものが挙げられる。 ベンゾフェノン系の紫外線吸収性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロキシエチルベンゾフェノンなどが挙げられる。 本発明は、これらの例示物に限定されるものではない。

    本発明で使用するブロックコポリマーは、上記に挙げたような紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを、それぞれ質量基準で、5〜70%含有してなる重合体である。 より好ましくは、5〜50%、さらに好ましくは、10〜30%である。 しかし、上記した範囲よりも少ないと、本発明で要求する紫外線吸収能が不足し、また、上記した範囲を超えると、ポリマーとしての物性に劣るし、コストも高くなってしまう。 特に、本発明によれば、例えば、10〜30質量%と、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーの量を少なくして得たブロックコポリマーを用いた場合であっても、顔料の耐光性を向上させる効果が発揮される。 これは、本発明の好ましい形態では、使用する重合体(ブロックコポリマー)を構成するB鎖のポリマーブロックに、該重合体を形成する紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーの70%以上を集中させることを規定しているため、このB鎖のポリマーブロックが効果的に紫外線を吸収できるようになることによると考えられる。 さらに、前記したように、紫外線吸収性基として、より好適には、ブロックコポリマーの構造中に多数の芳香環を有するものを使用しているため、顔料との親和性が強く、分散やカプセル化にも寄与し得、良好な状態の樹脂処理顔料を得ることができたものと考えている。

    本発明で使用する重合体は、その形成成分として、紫外線吸収性基を有する付加重合性のモノマーを5〜70質量%の範囲で含有してなるものであるので、下記に挙げるような他の重合性モノマーを併用する。 このような他の重合性モノマーとしては、下記に挙げるような、従来公知のものが使用できる。 例えば、エチレン、プロピレンなどのオレフィン系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリルなどのビニル系モノマー:(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドなどである。 本発明では、そのブロックコポリマーを得やすいことから、スチレン系のビニルモノマー或いは(メタ)アクリレートが好ましく、さらに好ましくは、少なくとも(メタ)アクリレート系モノマーを含有するとよい。 また、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、第4級アンモニウム塩基、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタニル基、水酸基などの官能基を有するモノマーも使用することができ、それらの官能基を有するモノマーを構成成分としたポリマーを使用することができる。

    本発明で好適に使用されるアクリル系ポリマーであるA−Bブロックコポリマーは、上記したようなモノマーを使用して得られる。 また、その構造中のA鎖のポリマーブロックは、本発明の樹脂処理顔料を分散媒体に分散して顔料分散体とする場合における分散媒体と相溶する(親和する)ポリマーブロックであることが好ましい。 しかし、そのモノマー構成は、特に限定されず、使用する分散媒体との兼ね合いで好適なモノマー種を選択して、これらを共重合して得られるものを使用すればよい。 例えば、分散媒体が水である場合は、カルボキシル基やスルホン酸基、リン酸基などの酸基を有するモノマー、ジメチルアミノ基などのアミノ基、ポリエチレングリコール鎖のようなグリコール鎖を有するモノマーを共重合させて得られるものが好ましい。 この際、酸性基の場合は、アルカリ性物質にて中和してイオン化して水可溶化できるし、アミノ基の場合は、酸性物質で中和してイオン化して水可溶化できるし、或いは、炭化水素ハロゲン化物や硫酸エステル類にて第4級化して水可溶化できる。 また、グリコール鎖の場合は、水素結合によるグリコール鎖の水可溶という作用によって、本発明に好適なA−Bブロックコポリマーを、水に可溶化することができる。

    特に、A鎖のポリマーブロックは、カルボキシル基を有するものであることが好ましい。 これは、カルボキシル基を中和物質によって中和することで水に可溶化することができるからである。 また、中和物質をアミン類にすることで、これを製品に使用した場合に、アミン揮発による水不溶化が達成できる。 このため、製品に耐水性が必要な場合は、中和物質にアミン類を用いることが好ましい。 A鎖のポリマーブロック中におけるカルボキシル基の量は、A鎖のポリマーブロックの酸価によって規定でき、50〜250mgKOH/gとすることが好ましい。 これは、50mgKOH/gよりも少ないと、水可溶化が十分に得られない場合があると考えられるからである。 一方、250mgKOH/gよりも多いと、カルボキシル基が多過ぎ、中和物質に用いたアミンが揮発して水不溶化しても吸水などを起こし、製品の耐水性が劣るものになると考えられるからである。

    上記したように、A鎖のポリマーブロックの有するカルボキシル基などの酸基を中和して水可溶性とすることができるが、中和するアルカリ物質としては、特に限定されず、下記に挙げるものが使用できる。 例えば、アンモニア;ジエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアミン類;ポリアルキレングリコールの末端アミン類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛などのアルカリ金属塩などである。

    上記したA鎖のポリマーブロック由来の酸価に起因する、A−Bブロックコポリマー全体の酸価は特に限定されない。 該A−Bブロックコポリマーによって顔料を処理した場合、B鎖のポリマーブロックが顔料へ付着し、A鎖のポリマーブロックが分散媒体へ相溶することから、A鎖のポリマーブロック由来の酸価が重要となる。

    次に、本発明で好適に使用されるアクリル系ポリマーであるA−Bブロックコポリマーを構成するB鎖のポリマーブロックについて説明する。 B鎖のポリマーブロックは、ポリマー中に含まれる全ての紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマー(紫外線吸収モノマー)の質量中の70%以上を、さらに好ましくは80%以上を構成成分としてなるアクリル系ポリマーである。 残りの紫外線吸収モノマーは、A鎖のポリマーブロックを構成していてもよい。 本発明に用いるA−Bブロックコポリマーにおいて特に重要なことは、B鎖のポリマーブロックに紫外線吸収基を集中させた構造としたことにある。 下記の理由から、残りの紫外線吸収モノマーが、A鎖のポリマーブロックを構成していたとしても問題はない。 まず、その量はB鎖を構成する量と比べて少ないため、A−Bブロックコポリマーにおける紫外線吸収能への寄与は少ない。 また、A鎖のポリマーブロックが有する分散媒体への親和性(溶解性)の面でも、他のモノマーを用いたポリマーと同等となるため、A鎖のポリマーブロックに紫外線吸収モノマーを含有していてもよい。

    B鎖のポリマーブロックは、その全てが紫外線吸収モノマーからなるポリマーであっても、他の付加重合性モノマーを構成成分としているものであってもよい。 本発明では、特に、その紫外線吸収性基がB鎖に集中していることが重要であり、前記したように、より好ましくは、B鎖に、紫外線吸収性基の70%以上が集中できるように、紫外線吸収モノマーを含むモノマー組成を設計することが重要となる。

    次に、本発明で使用する紫外線吸収性基含有ブロックコポリマーの分子量について説明する。 本発明で用いる分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPCと略記)のポリスチレン換算の数平均分子量(以下、Mnと略記)を言い、また、重量平均分子量/数平均分子量でその分子量の分布を表す分子量分布(以下、PDIと略記する場合がある)を使用する。 また、一方のポリマーブロックのMnはGPCにて測定されるが、一方のポリマーブロックの分子量は、ブロックコポリマーの全体のMnから、測定した一方のポリマーブロックのMnを引いた値で算出される。 このため、これを単に分子量と証する場合がある。

    本発明に好適な紫外線吸収性基含有A−BブロックコポリマーのA鎖のポリマーブロックの分子量は、1,000〜20,000であることが好ましい。 分子量が1,000未満であると分散媒体への相溶に劣る場合があり、分子量が20,000を超えると、分散してもポリマーの絡み合いがあって分散状態がよくない場合があるからである。

    B鎖のポリマーブロックの分子量は20,000以下であることが好ましい。 さらに好ましくは、10,000以下である。 これは20,000を超えると分子量が大き過ぎて複数の顔料粒子を被覆したり、凝集させたりする可能性があるからである。 本発明の大きな特徴は、このB鎖のポリマーブロックの分子量を小さくすることによって、且つ、前記したように紫外線吸収性基を集中させることで、顔料粒子を微粒子で効率よくカプセル化して、効率よく紫外線を吸収して顔料の耐光性を向上させることができた点にある。

    また、全体の分子量分布は1.6以下であることが好ましい。 このようなものは、後述する本発明のブロックコポリマーの重合方法によって得ることができる。 このようにPDIがせまいことによって、ポリマーの性質が均一なものとなり、好ましい効果が得られる。

    本発明は、上記した本発明を特徴づける重合体であるブロックコポリマーによって顔料を処理してなる樹脂処理顔料に関するが、その顔料と重合体との比率は、顔料:重合体=50〜95:5〜50である。 顔料の比率が50%よりも少ないと、本発明の樹脂処理顔料を製品に適用した場合に、ブロックコポリマーが多過ぎて、これが製品への異物となって性能を低下させる場合がある。 一方、顔料の比率が95%よりも多いと、ブロックコポリマーの量が少な過ぎて、本発明を特徴づけるブロックコポリマーの性能が発揮されない場合がある。 より好ましくは、顔料と重合体との比率を、顔料:重合体=60〜95:5〜40、さらには、顔料:重合体=75〜95:5〜25とするとよい。

    本発明で使用するブロックコポリマーは、通常のラジカル重合では得ることができず、アニオン重合やカチオン重合、又は、リビングラジカル重合で得ることができる。 好ましくは、重合条件がアニオン重合やカチオン重合よりも温和なリビングラジカル重合が好ましい。 このリビングラジカル重合としては、従来公知の方法をとることができる。

    例えば、アミンオキシドラジカルの解離と結合を利用するニトロキサイド法(Nitroxide mediated polymerization、NMP法)、銅やルテニウム、ニッケル、鉄などの重金属、そして、それと錯体を形成するリガンドを使用して、ハロゲン化合物を開始化合物として重合する原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization、ATRP法)、ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物などを開始化合物として、付加重合性モノマーとラジカル開始剤を使用して重合する可逆的付加開裂型連鎖移動重合(Reversible addition-fragmentation chain transfer、RAFT法)や、MADIX法(Macromolecular Design via Interchange of Xanthate)、有機テルルや有機ビスマス、有機アンチモン、ハロゲン化アンチモン、有機ゲルマニウム、ハロゲン化ゲルマニウムなどの重金属を用 いる方法(Degenerative transfer、DT法)などである。

    しかしながら、これらのリビングラジカル重合では、重合条件が厳しかったり、特殊な化合物が必要だったりして、本発明で用いるブロックコポリマーを製造するにはそれぞれ問題があった。 これに対し、本発明者らは鋭意検討を行って、リビングラジカル重合を利用した本発明の製造方法を見出した。 以下に説明するリビングラジカル重合を利用した本発明の製造方法によれば、各ポリマーブロック鎖の構造を特定の状態に制御してなるブロックコポリマーを得ることができ、特に、本発明で好適に用いるA−Bブロックコポリマーを容易に得ることができる。

    すなわち、本発明の樹脂処理顔料の製造方法では、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーと、少なくともヨウ素化合物を開始化合物とし、且つ、ヨウ素原子を引き抜くことができうるリン化合物、窒素化合物、酸素化合物及び炭素化合物からなる群から選ばれるいずれかの化合物を触媒とするリビングラジカル重合法によって、前記したA−Bブロックコポリマーを容易に合成し、得られたA−Bブロックコポリマーを用いて顔料を処理する。 より具体的には、ヨウ素原子を引き抜くことができうる触媒として、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物またはフォスフィネート系化合物などのリン化合物、イミド類、ヒダントイン類、バルビツル酸類またはシアヌル酸類などの窒素化合物、フェノール系化合物、アイオドオキシフェニル化合物またはビタミン類などの酸素化合物、ジフェニルメタン系化合物、シクロペンタジエン類、アセトアセト系化合物などの炭素化合物を使用する。

    本発明において行う上記重合方法は、従来、行われているラジカル重合やリビングラジカル重合とは異なる、本発明者らが見出した新規なリビングラジカル重合である。 すなわち、本発明で行うリビングラジカル重合は、従来のリビングラジカル重合方法とは異なり、金属化合物やリガンドを使用せず、また、ニトロキサイド、ジチオカルボン酸エステルやザンテートなどの特殊な化合物を使用しなくてもよく、従来公知の付加重合性モノマーと、ラジカル発生剤である重合開始剤を使用するラジカル重合に、有機ヨウ化物である開始化合物と、本発明で規定する触媒を併用するだけで容易に行える。

    上記した新規なリビングラジカル重合方法は、下記一般反応式で表される反応機構で進み、ドーマント種Polymer−X(P−X)の成長ラジカルへの可逆的活性反応である。 この重合機構は、使用する触媒の種類によって変わる可能性があるが、次のように進むと考えられる。 式1では、重合開始剤から発生したP・がXAと反応して、in−situで触媒A・が生成する。 A・はP−Xの活性化剤として作用して、この触媒作用によってP−Xは高い頻度で活性化する。

    さらに詳しくは、ヨウ素(X)が結合した開始化合物の存在下、重合開始剤から生じるラジカルが、触媒の活性水素や活性ハロゲン原子を引き抜き、触媒ラジカルA・となる。 次いで、そのA・が開始化合物のXを引き抜きXAとなり、その開始化合物がラジカルとなって、そのラジカルにモノマーが重合し、すぐにXAからXを引き抜き、停止反応を防止する。 さらに、熱などによってA・が末端XからXを引き抜き、XAと末端ラジカルとなってそこにモノマーが反応して、すぐに末端ラジカルにXを与え安定化させる。 この繰り返しで重合が進行して、分子量や構造の制御ができる。 但し、場合によっては、副反応として、二分子停止反応や不均化を伴うことがある。

    本発明で行うリビングラジカル重合に使用する各成分について説明する。 リビングラジカル重合に使用する開始化合物は、従来公知の有機ヨウ化物であればよく、特に限定されない。 特に好ましくは、芳香環含有の2−アイオド−1−フェニルエタン、1−アイオド−1−フェニルエタンなどのアルキルヨウ化物や、2−シアノ−2−アイオドプロパン、2−シアノ−2−アイオドブタン、1−シアノ−1−アイオドシクロヘキサン、2−シアノ−2−アイオドバレロニトリルなどのシアノ基含有ヨウ化物などが挙げられる。

    また、これらの化合物は、市販品をそのまま使用することができるが、従来公知の方法で得ることもできる。 例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどの、アゾ化合物とヨウ素の反応によって得られる。 または前記した有機ヨウ化物のヨウ素の代わりにブロマイド、クロライドなどの他のハロゲン原子が置換した有機ハロゲン化物を、第4級アンモニウムアイオダイドやヨウ化ナトリウムなどのヨウ化物塩を使用し、ハロゲン交換反応させて本発明で用いる有機ヨウ化物を得ることができる。 それらは特に限定されない。

    特に、アゾ化合物とヨウ素との反応は、開始化合物をあらかじめ合成する必要がなく、重合時に、ヨウ素とアゾ化合物を加えて重合することで、in−situで開始化合物ができて重合が進行するので、非常に容易で好ましい。

    本発明で用いる触媒としては、前記した開始化合物のヨウ素原子を引き抜き、ラジカルとなる、例えば、有機リン化合物、有機窒素化合物、有機酸素化合物、活性な炭素を有する有機化合物などが用いられる。 リン化合物としては、ヨウ素原子を含むハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート系化合物が挙げられる。 また、窒素化合物としては、イミド系化合物、ヒダントイン系化合物が挙げられる。 また、酸素化合物としては、フェノール系化合物、アイオドオキシフェニル化合物、ビタミン類が挙げられる。 活性な炭素を有する有機化合物としては、シクロヘキサジエン又はジフェニルメタンまたはアセトアセチル系化合物などの有機化合物が挙げられる。 本発明では、これらの化合物から1種以上を選ぶとよい。

    これらの化合物は特に限定されないが、以下に具体的に例示する。 リン化合物では、ヨウ素原子を含むハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート系化合物が使用できる。 このようなものとしては、例えば、三ヨウ化リン、ジエチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、エトキシフェニルフォスフィネート、フェニルフェノキシフォスフィネートなどが挙げられる。

    窒素化合物ではイミド系化合物、ヒダントイン系化合物であり、例えば、スクシンイミド、2,2−ジメチルスクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、4−メチルフタルイミド、4−ニトロフタルイミド、N−アイオドスクシンイミド、ヒダントイン、ジアイオドヒダントインなどが挙げられる。

    酸素系化合物としては、芳香環に水酸基(フェノール性水酸基)を有するフェノール系化合物や、前記フェノール性水酸基のヨウ素化物であるアイオドオキシフェニル化合物、ビタミン類が使用できる。 例えば、フェノール系化合物として、フェノール、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t−ブチルフェノール、t−ブチルメチルフェノール、カテコール、レソルシノール、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、ジ−t−ブチルメトキシフェノールなどが挙げられる。 これらは、モノマーの保存として重合禁止剤として添加されているので、市販品のモノマーを精製せずそのまま使用することで、効果を発揮させることもできる。 また、アイオドオキシフェニル化合物としては、チモールジアイオダイドなどが挙げられる。 また、ビタミン類としては、ビタミンC、ビタミンEなどが挙げられる。

    活性な炭素を有する有機化合物としては、シクロヘキサジエン又はジフェニルメタン又はアセチルアセトンなどが挙げられる。

    これらの触媒の量としては、重合開始剤のモル数未満である。 このモル数が多過ぎると、重合が制御され過ぎて重合が進行しないので好ましくない。

    次に、本発明で使用される重合開始剤(ラジカル発生剤と称す場合もある)としては、従来公知のものが使用でき、特に限定されず、通常用いられている有機過酸化物やアゾ化合物を使用することができる。 具体例としては、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(イソブチレート)、2,2'−アゾビス(メトキシジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。

    重合開始剤は、モノマーのモル数に対して0.001〜0.1モル倍、さらに好ましくは0.002〜0.05モル倍使用するとよい。 これはあまりに少ないと重合が不十分であり、一方、多過ぎると付加重合モノマーだけのポリマーができてしまう可能性があるからである。

    上記に挙げたような、有機ヨウ化物である開始化合物、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマー、重合開始剤及び触媒を少なくとも使用して重合することによって、アクリル系ポリマー、例えば、本発明で使用するブロックコポリマー、さらには、本発明で規定するA−Bブロックコポリマーを容易に得ることができる。 上記重合は、有機溶剤を使用しないバルクで重合(塊状重合)を行ってもよいが、好ましくは溶剤を使用する溶液重合がよい。 この際に用いる有機溶剤は、特に限定されないが、下記のものを使用できる。 例えば、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、ハロゲン化溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤などが挙げられ、これらの1種の単独系または2種以上の混合溶剤として使用すればよい。 本発明で使用する有機ヨウ化物である開始化合物、触媒、付加重合性モノマー及び重合開始剤を溶解する溶剤であればよい。

    上記のような方法で得られる重合液の固形分(モノマー濃度)は、特に限定されないが、それぞれ質量基準で、好ましくは5〜80%、より好ましくは20〜60%である。 固形分が5%未満であると、モノマー濃度が低過ぎて重合が完結しない可能性があり、一方、80%超〜バルクの重合では、重合液の粘度が高くなり過ぎ、撹拌が困難になったり、重合収率が低下する可能性がある。

    重合温度は特に限定されず、好ましくは0℃〜150℃、さらに好ましくは30℃〜120℃である。 重合温度は、それぞれの重合開始剤の半減期によって調整される。 また、重合時間は、モノマーがなくなるまで重合を続けることが好ましいが、特に限定されず、例えば、0.5時間〜48時間、実用的な時間として好ましくは1時間〜24時間、さらに好ましくは2時間〜12時間である。

    重合雰囲気は、特に限定されず、そのまま重合してもよい。 すなわち、系内に通常の範囲内で酸素が存在してもよいし、必要に応じて、酸素を除去するため窒素気流下で行ってもよい。 また、重合に使用する材料は、蒸留、活性炭やアルミナで不純物を除去してもよいが、市販品をそのまま使用することもできる。 また、重合は、遮光下で行ってもよいし、ガラスのような透明容器中で行っても何ら問題はない。

    以上のようにして、有機ヨウ化物を開始化合物として、該重合開始剤及び触媒を少なくとも使用し、紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーを用いて重合することによって、本発明で好適に用いることができるA−Bブロックコポリマーを容易に得ることができる。

    特に本発明では、重合に用いる紫外線吸収性基を有する付加重合性モノマーとして、より好ましくは、すべてメタクリレートを用いるとよい。 これは、本発明で使用する前記した重合方法では、メタクリレートの方が、分子量分布が狭くなり、ブロックの効率もよいからである。 このような構成は、本発明で使用する重合方法における、末端ヨウ素基の安定性に寄与するものと考えられる。

    次に、上記で説明した方法を適用した本発明のブロックコポリマーの重合方法について説明する。 本発明で使用する重合方法によるブロックコポリマーの合成は、1官能の有機ヨウ化物を開始化合物として、A鎖のポリマーブロックを構成するモノマーを重合する。 このようにして得られたポリマー末端は、ヨウ素基で置換されているため安定化しており、再度、モノマーを添加し、熱などによって解離させ、再び重合を開始することができる。 このため、所望する構造のブロックコポリマーとして得ることができる。

    本発明で使用する特定の構造を有するA−Bのブロックを形成させる方法としては、下記の方法がある。 例えば、本発明で規定する紫外線吸収性基を有するポリマーブロック(Bブロック)を先に重合した後、他のモノマーを重合してA−Bブロックコポリマーとしてもよいし、溶剤に溶解するポリマーブロック(Aブロック)を重合した後、紫外線吸収性基を有するモノマーを添加してA−Bブロックコポリマーとしてもよい。 また、前記したように、紫外線吸収する化合物と反応しうるモノマーを上記の順で重合して、後に、紫外線吸収化合物を添加、反応させてA−Bブロックコポリマーとしてもよい。

    また、一方のポリマーブロックを得た後、析出させたりして取り出して、次いで、他のモノマーを添加して重合してもよいし、一方のポリマーブロックが50%以上、より好ましくは70%以上重合した後、取り出さず、他のモノマーを添加して重合してもよい。 また、その添加は、一度に添加してもよいし、滴下装置で滴下して行ってもよい。 滴下することで、B鎖のポリマーブロックは、モノマーのポリマー中における濃度勾配、すなわち、容易にグラジエントポリマーとなることができる。 より具体的には、B鎖のポリマーブロックを、容易に所望する紫外線吸収性基が集中した構造にすることができる。 いずれにしても、本発明で使用する特定の構造を有するA−Bブロックコポリマーとするためには、紫外線吸収性基を有する全モノマーのうちの70%以上が、一方のポリマーブロックに選択的に入るようにする必要がある。

    本発明で用いる重合では、開始化合物の量によってポリマーの分子量をコントロールすることができる。 すなわち、開始化合物のモル数に対してモノマーのモル数を設定することで、任意の分子量、または分子量の大小を制御できる。 例えば、開始化合物を1モル使用して、分子量100のモノマーを500モル使用して重合した場合、1×100×500=50,000の理論分子量を与えるものである。 すなわち、設定分子量として、[開始化合物1モル×モノマー分子量×モノマー対開始化合物モル比]という式で算出することができる。

    しかし、本発明で用いる重合方法では、二分子停止や不均化の副反応を伴う場合があり、上記の理論分子量にならない場合がある。 これらの副反応がないポリマーが好ましいが、カップリングして分子量が大きくなっても、停止して分子量が小さくなっていてもよい。 また、重合率が100%でなくてもよい。 この場合は、反応させて顔料をカプセル化した後、樹脂処理顔料を得るときに、モノマーなどの不純物を除去すればよい。

    一方、所望のブロックコポリマーを得た後、重合開始剤や触媒を加えて残っているモノマーを重合して完結させてもよい。 本発明で用いるブロックコポリマーを生成、含有していればよく、それぞれのポリマーブロック単位を含んでいてもなんら問題はない。

    また、本発明の製造方法ではヨウ素原子を使用するものであるが、そのヨウ素が結合した状態で使用してもよいが、そのヨウ素を除去できるよう分子から脱離させておくことが好ましい。 その方法は従来公知の方法であって特に限定されないが、加熱によって脱離させたり、酸やアルカリを添加して脱離させてもよいし、チオ硫酸ナトリウムなどを添加して分解してもよい。 本発明では、使用したヨウ素原子は、顔料処理において洗浄工程をとるので、その洗浄工程で除去されてしまう。

    以上のようにして、本発明で用いるブロックコポリマーを得ることができ、析出させて粉末として、または重合が終了した後の樹脂溶液として使用することができる。

    本発明の耐光性や分散性が向上した樹脂処理顔料は、上記した製造方法によって容易に得られる紫外線吸収性基を含むブロックコポリマーで、前記に列挙したような顔料を処理することで得ることかできる。 その質量比率については、使用するブロックコポリマーに含まれる紫外線吸収性基の量によって異なるが、顔料:重合体=50〜95:5〜50の範囲とする。 顔料の量が95%よりも多いと、仮に、使用するブロックコポリマーがすべて紫外線吸収モノマーで構成されていたとしても、顔料の耐光性を向上させることができない。 一方、顔料の量が50%よりも少ない樹脂処理顔料では、ポリマーに対して顔料分が少な過ぎて、製品に適用した場合に、本発明を特徴づけるブロックコポリマーのポリマーとしての性質が製品の性能を低下させてしまう可能性がある。 より好ましくは、顔料:重合体=60〜95:5〜40、更には、顔料:重合体=75〜95:5〜25である。 本発明では、このように少ないポリマー量で顔料を処理することで、顔料の耐光性を効果的に向上させることができる。

    次に、本発明を特徴づける上記で説明したブロックコポリマーによって処理されてなる樹脂処理顔料について説明する。
    本発明の加工顔料である樹脂処理顔料を得る方法としては、例えば、下記の2つが挙げられる。
    [1]顔料を、必要に応じて不活性塩などを使用して、ミリングやニーディングを行って顔料化や微細化する工程において、同時に又はある程度微細化した後に、前記したブロックコポリマーの粉末や溶液、中和された水溶液を加えて、顔料化や微細化工程を行う。 次いで、水又は酸性水溶液などに析出させ塩の除去をし、同時に樹脂が水に不溶の場合は水に析出させるだけで、または、樹脂が中和されている場合はpHの変化により樹脂が析出して、顔料を被覆する方法である。

    [2]微細化された顔料又はその水ペーストを使用して、前記した構成のブロックコポリマーを共存させて液媒体中で混合、撹拌、分散させた後、ブロックコポリマーの貧溶剤に添加して、または、前記した構成のブロックコポリマーが、カルボキシル基を有し、アルカリ性物質で中和されている場合は、pHを中性〜酸性に調整することで、樹脂を析出させて、顔料を被覆、処理する方法である。

    それぞれ個別に説明する。 上記[1]の方法において行う顔料の顔料化や微細化工程は、従来の方法によって行う。 微細化する方法は特に限定されない。 例示すると、ニーダー、押出し機、ボールミル、二本ロール、三本ロール、フラッシャーなどの従来公知の混練機によって、常温でまたは加熱して30分〜60時間、好ましくは、1時間から12時間混練する。 また必要に応じて、その系中に微細化するための微細なメディアとして、炭酸塩、塩化物塩などを併用して、さらに潤滑的に行うために、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの粘性のある溶剤を併用して行うことが好ましい。 上記したような塩は、顔料に対して1倍〜30倍、好ましくは2倍〜20倍の量を使用するとよい。 このミリング時に、本発明を特徴づける前記したブロックコポリマーを添加して同時に微細化を行うことができる。 また、微細化された後に、前記したブロックコポリマーを添加して混合することもできる。

    その後、目的の微粒子形状にした後、または十分均一に混合できた後、水に出して塩を除去したり、酸性水やアルカリ水に出して樹脂を析出させつつ塩を除去したりすることを行う。 このような処理を行ったとき、本発明を特徴づける前記したブロックコポリマーが析出して、顔料を処理することができる。

    [2]の方法においては、粉末の顔料または水ペーストの顔料を、液媒体、ブロックコポリマー、必要に応じて顔料分散剤、さらに必要に応じて消泡剤などの添加剤を加え、従来公知の方法で分散して顔料液媒体分散液とする。 このときの顔料濃度は、それぞれ質量基準で、1〜50%、好ましくは5〜30%とするとよい。 1%未満であると低濃度のため粘度が低過ぎてしまい、分散のエネルギーが伝わらず分散が進まず、一方、50%よりも多いと、液の流動性に劣るため、あまりよくない。

    混合、撹拌、分散させる際には、従来公知の撹拌装置や分散装置を用い、従来公知の分散方法をとることができ、特に限定されない。 撹拌機としては、ディゾルバーやホモジナイザーなどが挙げられ、分散方法としては、ビーズミル分散、超音波分散、乳化装置を使用した分散などが挙げられる。 本発明において使用できる分散機としては、例えば、ニーダー、アトライター、ボールミル、ガラスやジルコンなどを使用したサンドミルや横型メディア分散機、コロイドミル、超音波分散機などが使用できる。

    本発明において、特に好ましくは、ビーズ分散と超音波分散であり、非常に微小なビーズを使用して分散する方法や、高出力で超音波分散する方法を用いるとよい。 分散状態の確認は、従来公知の方法、例えば、顕微鏡で観察したり、粒度分布計にて粒子径を測定するなどして確認すればよい。 この際の平均粒子径は特に制限はないが、好ましくは300nm以下、さらに好ましくは150nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。

    また、この後に遠心ろ過やフィルターろ過をすることによって、顔料液媒体分散液から粗大粒子を取り除いてもよい。 以上のようにして顔料の液分散体を得、これを前記したように貧溶剤に析出させたり、pHを調整することで、顔料を、本発明を特徴づける前記したブロックコポリマーで処理する。

    pHを中性〜酸性に調整することでブロックコポリマーを析出させる場合は、上記で得られた顔料の液分散体を希釈して行ってもよく、好ましくは、顔料濃度を5〜10質量%程度にする。 これは酸で析出させていくと著しく増粘するためであり、このようにすれば撹拌をスムーズに行うことができる。 また、pHを調整するための酸性物質としては、従来公知のものが使用でき、特に限定されない。 例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などの有機酸が使用できる。

    また、析出した後、ろ過する場合、粒子径が小さいと、ろ過に時間がかかるので、粒子を凝集させるため、また強く顔料表面にブロックコポリマーを吸着させるために、例えば、50〜80℃に加温してもよい。

    析出処理させた際、塩を生じるので、この塩を十分除去することが好ましく、次いで、ろ過・洗浄することが好ましい。 得られた顔料のペーストは、そのまま使用してもよいし、乾燥してチップ化し、さらには粉砕してパウダー化して使用する。 以上の2つの方法で、本発明の樹脂処理顔料を得ることができる。

    次に、本発明の樹脂処理顔料を使用して得られる本発明の顔料分散体について説明する。
    本発明の顔料分散体は、少なくとも本発明の樹脂処理顔料、分散媒体からなり、分散媒体は、液媒体または固体媒体である。 液媒体としては、水、有機溶剤、モノマーなどが挙げられ、固体媒体としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線・電子線硬化性樹脂などが挙げられる。

    まず、分散媒体が液媒体である場合について説明する。 この液媒体が水や水可溶性有機溶剤の場合は、水性の顔料分散体となり、有機溶剤の場合は、油性の顔料分散剤となる。 モノマーの場合は、UV硬化性塗料などに使用できるモノマーの顔料分散体である。 それら液媒体の化学物質は限定されない。

    これらは、少なくとも、本発明の樹脂処理顔料、液媒体からなり、必要に応じて、顔料分散剤を使用することができる。 この顔料分散剤としては、下記に挙げるような従来公知のものが使用できる。 例えば、ポリアクリル系、ポリスチレン系、ポリスチレンアクリル系、ポリアクリルポリウレタン系、ポリエステルポリウレタン系、ポリエーテルポリウレタン系、ポリエステルポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテルリン酸エステル系、ポリエステルリン酸エステル系が使用できる。 また、各種の添加剤を加えることができる。 例えば、抗酸化剤などの耐久性向上剤;沈降防止材;剥離剤又は剥離性向上剤;芳香剤、抗菌剤、防黴剤;可塑剤、乾燥防止剤などが使用でき、さらに必要であれば、分散助剤、染料などを添加することもできる。

    液媒体の顔料分散体を得る分散方法は、前記した方法で分散して得ることができる。 この際の平均粒子径は特に制限はないが、好ましくは、300nm以下、さらに好ましくは150nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。 これは、微細化された顔料の粒子径と同様になることができるし、そのほうが好ましい。

    以上のようにして液媒体の顔料分散体を得ることができ、その顔料分散体は、従来公知の油性の各種の製品の着色剤として使用される。 具体的には、インキ、塗料、コーティング剤、IT関連コーティング・インキなどの着色剤として適用できる。 より具体的には、自動車塗装用、金属塗装用、建材塗装用などの塗料;グラビアインキ、オフセットインキ、フレキソインキ、UVインクなどのインキ;油性インクジェットインク、UVインクジェットインク、画像表示ディスプレー用カラー、湿式トナーなどのIT関連コーティング剤やインク;プラスチック表面コート剤、UVコーティング剤などのコーティング剤;油性文具ペン用インク;繊維の原液着色用着色剤などが挙げられ、それぞれの用途に合わせた顔料濃度で使用される。

    次に、分散媒体が固体媒体の場合について説明する。 固体媒体としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線・電子線硬化性樹脂が挙げられる。 さらに具体的には、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。 熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。 紫外線・電子線硬化性樹脂としては、上記の熱可塑性樹脂に不飽和結合を有する基を結合させた樹脂が挙げられる。

    これらの個体媒体に対しては、本発明の樹脂処理顔料を下記のようにして適用して各種の製品とする。 まず、少なくとも、本発明の樹脂処理顔料と、固体媒体と、必要に応じて、加工助剤や上記添加剤を添加して、従来公知の方法で、混練する。 混練方法は特に限定されず、例えば、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ニーダールーダー、単軸押出機或いは多軸押出機などで所定の顔料濃度で混練、分散される。 顔料分はそれぞれの用途によって異なる。 以上のような方法で固体媒体の顔料分散体を得、さらに、それぞれの樹脂で希釈されて各種製品の着色剤として使用される。

    固体媒体が熱可塑性樹脂である場合は、シート状のマスターバッチに裁断されるか、ペレタイザーでマスターバッチのペレットとされ、得られる顔料分散体を着色剤として用いる。 この場合には、得られたこれらのマスターバッチを、上記に挙げたような樹脂と共に常法に従って、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーなどにて混合し、ミキシングロール、射出成形機、押出し成形機、ブロー成形機、インフレーション成形機、圧縮成形機、回転成形機、熱硬化性樹脂成形機などで成形して各種の製品とする。 また、固体媒体の顔料分散体は、情報記録材料として粉砕トナーに使用できるが、この場合も基本的には上記の方法で得ることができる。

    上記の方法で成形される着色されたプラスチック製品としては、容器(食品容器、化粧品容器、医薬品容器など)、フィルム、シート、ブリスター、パイプ、ホース、チューブ、ビーズ、繊維、自動車部品(車両内装品など)、電気機器部品(電気器具のハウジングなど)、文具、おもちゃ、家具(衣装収納製品など)、日用品(台所用品、浴用製品など)などが挙げられる。 特に本発明の樹脂処理顔料は、耐光性に劣るため従来使用できなかった分野に適用することができることを特徴とし、屋外に使用される製品とした場合に、より大きな効果が発揮される。

    次に、合成例、実施例、比較例及び応用例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。 しかし、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではなく、本文に含まれる内容にあわせて任意に実施できる。 なお、文中に「部」または「%」とあるのは質量基準である。

    <ポリマーの合成>
    [合成例1]
    1Lのセパラブルフラスコに、撹拌装置、窒素導入管、温度計、冷却管を装着した。 そして、該フラスコに、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す)217.5部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、DMDGと略す)217.5部、ヨウ素4.0部、2,2'−アゾビス(2−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製、以下、V−70と記載する)19.7部、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]フェノール(大塚化学社製、以下、RUVA−93と記載する)169.3部、触媒として、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン(以下、BHTと略す)0.88部を仕込んで撹拌して、溶解させた。 次いで、40℃に加温して、そのまま6時間重合した。 一部をサンプリングし、GPCにて分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)は3,500、分子量分布(PDI)は1.24であった。 また、分光光度計による分光カーブの測定では紫外線吸収能を有するモノマーであるRUVA−93由来のピークは見られなかった。 これにより、紫外線吸収性基を有する紫外線吸収ポリマーブロック(以下、単に紫外線吸収ポリマーブロックという場合がある)が形成されたことを確認した。

    次いで、上記で得られた重合物に、メタクリル酸メチル(以下、MMAと略す)を280部添加し、40℃で5時間重合し、さらに、70℃で2時間重合してポリマー溶液を得た。 この溶液の固形分を測定したところ、48.6%であり、殆どのモノマーが重合していることが確認された。 次いで、得られた重合物(固形分)について、GPCにて分子量を測定したところ、Mnは6,800、PDIは1.36であった。 また、分子量のピークは、MMA重合前に比べて高分子量側にずれていることが確認された。 これらのことから、上記で得られた重合物は、紫外線吸収ポリマーブロックと、ポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと略す)とからなるブロックコポリマーであると考えられる。 上記PMMAは、分散媒体に相溶するポリマーブロックであり、このPMMAの分子量は、ブロックコポリマー全体の数平均分子量から、紫外線吸収ポリマーブロックの数平均分子量を引いた値であるので、PMMAのMnは、3,300である。 また、全体に占める紫外線吸収モノマーの量(表1中、「RUVA含有量」と表記する)は28%であり、そのほぼ100%がブロックコポリマーの紫外線吸収ポリマーブロックに集中している。 なお、以下、上記のPMMAのような、紫外線吸収ポリマーブロックのもう一方のポリマーブロックを、相溶ポリマーブロックと称す。

    次いで、上記で得たポリマー溶液を、水2,000部とメタノール2,000部の混合溶液に、ディスパーで撹拌しながら添加し、ポリマーを析出させ、ろ過し、水でよく洗浄した。 その後、70℃の送風乾燥機にて24時間乾燥させ、粉砕機にて粉砕した。 以下、これをB−UVA−1と称する。 このB−UVA−1は、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収性基を有するブロックコポリマーである。 また、B−UVA−1のクロロホルム0.5ppm溶液を作製し、分光光度計で吸収波長を測定したところ、紫外線領域のλmax=304nm、344nmに、2コブの吸収ピークを示した。

    [合成例2〜4]
    合成例1と同様の操作を行い、各種モノマー組成で、紫外線吸収性基を有するブロックコポリマーを得、これを表1にまとめた。 合成例1についても併せて示した。 溶剤は同様のものを使用し、ブロックコポリマーになった時点で、固形分が50%になるように調整した。 なお、表中の数字は部数である。 また、中間で得られた紫外線吸収ポリマーブロックの重合率は、GPCで観測されるRUVA−93のピークと、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと略す)による揮発性モノマーの量を測定し、その値から求めたものを示した。 表1から、すべての合成例において殆どモノマーがなく、重合率は良好であったことが示された。 相溶ポリマーブロックの分子量は、先に述べたように、全体としてのブロックコポリマーの数平均分子量から、紫外線吸収ポリマーブロック部分の数平均分子量を引いた値を記載した。 また、紫外線領域における吸収波長は、合成例1の場合とほぼ同じ値であった。 いずれの合成例でも、合成例1と同様に、ブロックコポリマー全体に占める紫外線吸収モノマーの量(RUVA含有量)のほぼ100%が、一方の紫外線吸収ポリマーブロックに集中していた。 なお、表1中の略号は以下の通りである。

    SI:スクシンイミドNIS:N−アイオドスクシンイミドBzMA:メタクリル酸ベンジルCHMA:メタクリル酸シクロヘキシルBMA:メタクリル酸ブチル2EHMA:メタクリル酸2−エチルヘキシルMAA:メタクリル酸DPM:ジフェニルメタン

    [比較合成例1]
    合成例1と同様の装置に、2つの滴下ロートを装着した装置を使用して、THFを167.5部、DMDGを167.5部添加して、50℃に加温した。 別容器に、MMAを280部、RUVA−93を169.3部混合して、50℃に加温してRUVA−93を溶解させ、モノマー混合液とした。 また、さらに別容器に、THFを50部、DMDGを50部、V−70を19.7部仕込んで、撹拌して均一溶液にし、開始剤溶液とした。 そして、滴下ロートに、上記で得たモノマー混合液を、別の滴下ロートに、上記で得た開始剤混合液を装填し、2時間にわたって滴下した。 滴下終了後、6時間重合した。

    これをサンプリングしたところ、固形分は49.1%であり、また、GPCではRUVA−93のピークは見られないことから、殆どのモノマーが重合していることを確認した。 また、GPCによるMnは6,300であり、PDIは2.13であった。 次いで、合成例1と同様にして、析出、ろ過、乾燥、粉砕を行った。 これをR−UVA−1と称す。
    これは、合成例1と同じ組成、組成比であるランダムコポリマーの紫外線吸収コポリマーであった。 その紫外線吸収モノマーはポリマーにランダムに重合しているものであり、全体で28%の紫外線吸収モノマーを有していた。

    [合成例5]
    合成例1のRUVA−93の代わりに、ベンゾフェノン系の紫外線吸収モノマーである、2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルメタクリレートを使用して同様に行った。 紫外線吸収ポリマーブロックのMnは3,200、PDIは1.44であり、相溶ポリマーブロックの分子量は3,000であり、全体のブロックコポリマーとしてMnは6,200、PDIは1.50であった。 全体のブロックコポリマーに占める紫外線吸収モノマー量は28%であり、分光光度計によって分光カーブを測定したところ、紫外線領域に2コブのピークを示し、λmaxは、325nm、280nmであった。 これらのことから、得られた重合物を、ベンゾフェノン系の紫外線吸収ブロックコポリマーであると判断した。 ブロックコポリマー全体に占める紫外線吸収モノマーの量のほぼ100%が、一方の紫外線吸収ポリマーブロックに集中している。 これをB−UVA−5と称す。

    [合成例6]
    合成例4のRUVA−93の代わりに、3−(4−(5'−クロロ−ベンゾトリアゾール)−3−ヒドロキシフェノキシ)−ヒドロキシプロピルメタクリレート[これはメタクリル酸グリシジルと、5'−クロロ−2−(2',4'−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを反応させたものである。 以下、MHBPと称す]を使用して、合成例4と同様に重合した。 得られた紫外線吸収ポリマーブロックのMnは3,100、PDIは1.53であり、相溶ポリマーブロックの分子量は1,900であり、全体のブロックコポリマーとしてMnは5,000、PDIは1.57であった。 また、全体のブロックコポリマーに占める紫外線吸収モノマー量は34.7%であり、分光光度計によって分光カーブを測定したところ、ピークは1つで、その波長は、λmax=350nmであった。 ブロックコポリマー全体に占める紫外線吸収モノマーの量のほぼ100%が、一方の紫外線吸収ポリマーブロックに集中している。

    この重合後、ブチルカルビトールを46.5部、28%アンモニア水を4.6部、水を41.9部の混合液を添加して、カルボキシル基を中和した。 溶液は、殆ど透明の黄色い溶液となった。 また、固形分は33.4%であった。

    上記溶液の一部を大量の水に添加したところ、透明感のある青っぽい分散液となった。 これは、紫外線吸収ポリマーブロックが水に溶解せず、粒子化し、相溶ブロックポリマーが水可溶となって、水分散体となったものと考えられる。 これをB−UVA−6と称す。

    [合成例7]
    合成例1と同様の装置を使用して、DMDGを329.1部、ヨウ素を3.0部、V−70を14.7部、BzMA211.2部、BHTを0.66部添加して、40℃で、7時間重合した。 サンプリングしたところ、固形分が38.8%であって、収率は94%であった。 GPCによって測定したMnは5,000であり、PDIは1.43であった。
    次いで、BzMAを52.8部、メタクリロキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、以下、MOIと略す)46.5部添加して、40℃の温度で、5時間重合した。 得られたものは、ポリBzMA−ブロック−ポリ(BzMA/MOI)のブロックコポリマーである。 そのMnは6,500であり、PDIは1.39であった。

    次に、別容器に紫外線吸収化合物として、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとの混合物(チヌビン400、チバ社製のものを脱溶剤化したもの)を90部用い、これに、DMDGを90部、ジブチル錫ジラウレートを0.09部、混合したものを添加して、80℃で、3時間反応させた。 GPCを測定したところ、原料の紫外線吸収化合物のピークは確認できなかった。 次いで、ブチルアミンを3g添加して残存するイソシアネート基を反応させた。 得られたもののMnは、10,000、PDIは2.01であった。 合成例7は、合成例1〜6の場合とは異なり、相溶ポリマーブロックを形成させてから、紫外線吸収ポリマーブロックを形成させたものである。 また、紫外線吸収ポリマーブロックの分子量は、5,000であった。

    次いで、合成例1と同様にして、析出、ろ過、乾燥、粉砕を行った。 但し、析出の際は、水の半量に氷を使用して5℃以下に冷却し、また、粉砕は、ドライアイスと共に粉砕した。 全体のブロックコポリマーに占める紫外線吸収モノマー量は、22.4%であり、分光光度計によって分光カーブを測定したところ、2つのピークで、それぞれλmaxは299nm、342nmであった。 これは、トリアジン系の紫外線吸収ブロックコポリマーであることを示している。 該コポリマー全体に占める紫外線吸収モノマーの量のほぼ100%が、一方の紫外線吸収ポリマーブロックに集中している。 これをB−UVA−7と称す。

    [実施例1〜7]
    市販のε型フタロシアニン系青色顔料(C.I.PB 15:6)を100部、ジエチレングリコールを200部、食塩を700部、3Lのニーダーに投入し、温度を100℃〜120℃に保つように調整し、8時間磨砕して、混練物を得た。 次いで、別容器に、合成例1で作製したB−UVA−1を10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10部を混合して均一化させた。 これを上記の混合物に添加し、そのまま2時間混練りした。

    次いで、得られた混練物の800部を2,000部の水に投入し、4時間、高速撹拌した。 次いで、ろ過、洗浄を行い、混合顔料の水ペースト(顔料純分35.2%)を得た。 さらに、送風乾燥機、100℃で24時間乾燥し、粉砕機で粉砕した。 これを樹脂処理顔料B−1(質量比率 顔料:重合体=90.9:9.1)と称す。

    以下、実施例1と同様にして、各種顔料と紫外線吸収ブロックコポリマーを使用して、実施例2〜7の樹脂処理顔料を作製した。 これらを表2にまとめて示した。 なお、表2中に実施例1についても併せて示した。

    [比較例1]
    実施例1で用いたB−UVA−1を比較合成例1で得たR−UVA−1に変えた以外は実施例1と同様にして、比較用の樹脂処理顔料を得た。 得られたものを比較樹脂処理顔料B−1(質量比率 顔料:重合体=90.9:9.1)と称す。

    [実施例8]
    合成例6で得たB−UVA−6を210部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル70部、純水388部を混合して均一溶液とした。 溶液は透明で析出や濁りはなかった。
    これにアゾ系黄色顔料(C.I.PY−74)の水ペースト(平均粒子径98nm、固形分35%)を1,000部添加して、ディスパーで30分間解膠して、次いで、横型メディア分散機を用いて十分に顔料を分散させてミルベースを得た。 このミルベースに純水を添加して、顔料分が18%になるよう調整して、水性顔料分散液を得た。

    次に、純水5,000部に、上記で得たミルベースを注ぎ、高速撹拌しながら5%酢酸水溶液を滴下してB−UVA−6を析出させた。 このとき、初期のpHは9.5であり、これに酸を添加してpHを4.1まで下げた。
    次いで、この水性顔料分散液をろ過して、純水でよく洗浄して得られた顔料ペースト固形分30.5%を得た。 これを樹脂処理顔料Y−3(質量比率 顔料:重合体=76.9:23.1)と称す。

    [実施例9]
    本実施例では、実施例8で使用したアゾ系黄色顔料(C.I.PY−74)に代えて、キナクリドン顔料(C.I.PR−122、平均粒子径89nm、固形分25%)を使用し、B−UVA−6に代えてB−UVA−9を使用した以外は実施例8と同様にして顔料ペーストを得た。 上記で使用したB−UVA−9は、合成例6と同様の操作で得たが、アンモニア水の代わりに、中和剤として水酸化ナトリウム(カルボキシル基モル当量)を溶解させた水溶液(固形分35.3%)を使用した。 得られた顔料ペーストの固形分29.3%であった。 これを樹脂処理顔料M−1(質量比率 顔料:重合体=76.9:23.1)と称す。

    [応用例1]塗料製品への応用 実施例1及び2で得た樹脂処理顔料B−1、B−2、比較例1で得た比較樹脂処理顔料B−1、それらの製造の際に使用した未処理の顔料を使用して、下記のようにして塗料を作製した。
    まず、各樹脂処理顔料(または、未処理の顔料)12部、アクリル樹脂(トルエン/MEK溶液、固形分40%)24部、トルエン5部、キシレン5部、イソブチルアセテート5部を配合して、250mlのポリビンに仕込み、ジルコニアビーズを装填して、ペイントシェーカーにて2時間分散した。
    次いで、これにウレタン系樹脂溶液(固形分30%)を40.1部、シンナー45部を加え、さらに30分混合した後、ビーズを除去して、アクリルウレタン塗料を作製した。
    この塗料をバーコーダーNo. 3にて合板に塗布し、スーパーUVにて、100時間紫外線を照射し、その照射前と照射後の色差を測定した。 その結果を表3にまとめて示した。

    未処理の顔料は、そのε型の結晶構造が紫外線にて壊れ、色が変化したが、本発明の樹脂処理顔料であるB−1、B−2は、いずれも色の変化が小さかった。 比較樹脂処理顔料B−1では、その色変化は、紫外線吸収ポリマーが入っていても、比較的大きいことがわかった。 これは、比較樹脂処理顔料B−1では、顔料を処理した樹脂は紫外線吸収コポリマーであるものの、その構造がランダムコポリマーであるため、その溶剤系で溶解してしまって塗膜中に拡散してしまい、結果として、処理した樹脂による顔料の紫外線劣化を防止する効果が薄れてしまったものと考えられる。 これに対し、本発明では、ブロックコポリマーを構成している紫外線吸収ポリマーブロックが、顔料をカプセル化し、又は近傍に存在することによって、顔料の近傍で紫外線を吸収し、これによって、顔料の紫外線劣化を有効に防止できたものと考えられる。 このように、本発明で規定する特定の紫外線吸収ブロックポリマーを顔料の処理に用いると、顔料の耐光性を、有意差をもって向上させることができる。 このため、顔料種によっては、その耐光性が十分でないといった理由で、今までは使用することができなかった分野までも使用可能になると考えられ、その用途拡大が期待される。

    また、他の実施例の樹脂処理顔料であるY−2、R−1、R−2とも、同様に色差が0.5以下であって、耐光性がよいことがわかった。 これに対し、未処理顔料を使用した場合は、色差2.00以上であった。 さらに、本発明の実施例の樹脂処理顔料を使用して得られた塗膜は、いずれも、光沢がよく、発色性に優れていた。

    [応用例2]プラスチック製品への応用 実施例1で得た樹脂処理顔料B−1、実施例3で得た樹脂処理顔料Y−1、実施例5で得た樹脂処理顔料R−1を、それぞれ5部、可塑剤としてフタル酸ジオクチルを10部加えて、50℃で3本ロールにて十分分散するまで混練して、3種類の可塑剤ペーストを得た。
    ついで、顔料分が0.5%になるようにポリ塩化ビニル樹脂の透明コンパウンドと、155〜160℃でロール混練して、3種類のシートを作製した。 次いで、これらのシートをそれぞれ、170℃で50kg/cm 2の圧力で厚さ5mmにプレス成型して、3種類の濃色着色シートを作製した。

    また、さらに、それぞれの顔料分が0.05%となるように、ポリ塩化ビニル樹脂の白色コンパウンドと混練し、3種類の淡色着色シートを作製した。
    さらに、比較のために、樹脂処理されていない未処理の状態の顔料についても同様に、濃色及び淡色の着色シートをそれぞれ作製した。

    上記のようにして得た、濃色及び淡色の各着色シートを、フェードメーターにて1,000時間紫外線を照射して、耐光試験をしたところ、未処理の顔料を使用したものは、見た目で明らかに色が退色して薄くなっていた。 一方、本発明の紫外線吸収ブロックコポリマーで処理されたものは、いずれも見た目でも色の変化がなく、その照射前と照射後の色差は、すべて、濃色で1.00以内、淡色で2.00以内であった。
    上記の試験によって、樹脂処理顔料を着色剤として使用した場合は、未処理の顔料を使用した場合に比べ、耐光性が向上していることが確認された。 加えて、各製品は、色相、着色力、透明性及び分散性において、共に優れた結果を示した。

    [応用例3]インクジェットインクへの応用 実施例4で得た樹脂処理顔料Y−2、実施例8で得た樹脂処理顔料Y−3、実施例9で得た樹脂処理顔料M−1をそれぞれ着色剤に使用し、下記のようにして3種類のインクジェット用インクを製造した。 すなわち、まず、上記した各樹脂処理顔料中の樹脂由来のカルボキシル基と、モル当量の水酸化ナトリウムを含む水溶液を使用して、樹脂処理顔料分が20%になるように配合し、撹拌しながらブチルカルビトールにて、顔料分が19%になるように希釈して、続けてディスパーで撹拌した。
    次いで、0.5mmのジルコニアビーズが装填された横型ビーズミルにて十分分散させ、イオン交換水にて顔料分が15%になるように希釈し、フィルターにて粗大粒子を除去して各顔料分散液を調製した。

    このようにして得た顔料分散液を100部、イオン交換水275部、1,2−ヘキサンジオール40部、グリセリン80部、サーフィノール465(エアープロダクト社製)5部を加えて、遠心分離処理(8,000rpm、20分)して粗大粒子を除去した。 その後、5μmのメンブランフィルターでろ過を行い、各色インクを得た。 これらのインクをインクカートリッジに充填し、これをインクジェットプリンターに搭載させ、インクジェットプリンターで、インクジェット用光沢紙Photolike QP(コニカ社製)にベタ印刷を行った。

    上記のようにして得られた各印刷物を、スーパーUVにて、10時間紫外線照射を行って耐光性試験をしたところ、その照射前と照射後の色差は、すべて1.00以内であって、耐光性に優れたものであることが確認できた。 これに対し、比較のため、未処理の各顔料をアクリル系顔料分散剤にて分散して、同様にインクジェットインク用の顔料分散液及びインクを作製した。 そして、実施例の場合と同様に印刷して印刷物を得、スーパーUVにて紫外線照射試験を行った。 その結果、色差は2.00以上であり、特に、エロー顔料(すなわち、PY−74、PY−180)は、殆んど発色していない状態になった。
    これらのことから、本発明の樹脂処理顔料は、明らかに耐光性が向上したものになっていることが確認できた。 加えて、発色性、分散安定性、グロス及び色濃度が優れていた。

    [応用例4]カラーフィルター製品への応用 以下、実施例6の樹脂処理顔料R−2を着色剤に使用したものを例にとって説明する。
    アクリル樹脂ワニス50部に、実施例6で得たR−2を15部、ポリエステルポリアミド系分散剤10部、及びPGMAcを25部配合し、プレミキシングの後、横型ビーズミルで分散して顔料分散体を得た。 上記のアクリル樹脂ワニスには、メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=70/15/15/のモル比で重合させた、分子量12,000、酸価100、固形分40%のPGMAc溶液を用いた。 また、上記のポリエステルポリアミド系分散剤には、固形分46%の、12−ヒドロキシステアリン酸を開始剤とするポリカプロラクトンとポリエチレンイミンの反応生成物を用いた。
    上記で得られた顔料分散体の顔料の平均粒子径を測定したところ、平均粒子径は凡そ45nmであった。 その粘度は6.6mPa・sであった。 また、比較のために、上記と同様にして、R−2の作製の際に用いた未処理の顔料を使用して顔料分散体を得た。

    上記で得た2種類の顔料分散体を、それぞれ画像表示用ディスプレー用カラーとして使用した。 すなわち、上記の顔料分散体を100部、前記したアクリル樹脂ワニスを50部、トリメチロールプロパントリアクリレートを10部、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを2部、2,2−ジエトキシアセトフェノンを1部、PGMAcを37部配合し、それぞれ、樹脂処理顔料、未処理顔料を含有した顔料分散体を用いてなる2種類のR(レッド)のレジストカラーを得た。
    次いで、シランカップリング剤処理を行ったガラス基板をスピンコーターにセットし、上記で得た各レジストカラーを、最初300rpmで5秒間、次いで1,200rpmで5秒間の条件でスピンコートした。 次いで、90℃で5分間プリベークを行った。

    このガラス基板に、スーパーUVにて1,000時間紫外線を照射して、その照射前と後の色差を測定して耐光性試験を行った。 その結果、未処理顔料を含有したレジストカラーを用いたものでは、目視で色が薄くなっていることが確認され、その色差は3.1であった。 本発明の樹脂処理顔料を含有したレジストカラーを用いたものでは、その色差は1.1であり、明らかに耐光性が向上していた。

    カラーフィルターが使用される液晶テレビなどでは、その光源から出る紫外線があり、紫外線カットされるといえども、光が随時照射され、テレビ画像が薄くなったり、黄色くなったりすることがある。 これに対し、上記したように耐光性が明らかに向上した本発明の樹脂処理顔料を使用することで、カラーフィルターの寿命が向上すると考えられる。
    得られたガラス板を用いて、本発明の樹脂処理顔料を使用した場合のカラーフィルターとしての特性を調べたところ、未処理顔料を使用した場合と比較して遜色のない優れた分光カーブ特性を有し、加えて、耐光性、耐熱性などの堅牢性に優れ、コントラストや光透過性にも優れた性質を有し、画像表示として優れた性質を示すことを確認した。 特に、本発明の応用例のカラーフィルター板を270℃、10分加温したところ、その加温前と加温後のコントラストの保持率は90%であり、優れた耐熱性を示した。 このことから、本発明の樹脂処理顔料は、熱にも耐えうる顔料となっていることが確認された。

    同様にして、実施例2の樹脂処理顔料B−2、実施例5の樹脂処理顔料R−1、実施例7の樹脂処理顔料G−1を着色剤に使用した以外は上記と同様の試験を行なったところ、これらを使用することで耐光性や耐熱性が向上したことが確認できた。

    本発明の活用例としては、顔料を紫外線吸収ブロックコポリマーで処理された樹脂処理顔料は、特に、屋外で日光にさらされる用途に最適なものとなるので、例えば、建材、自動車用塗料、屋外ディスプレーなどの製品に有用な着色剤とできる。 加えて、原料とした処理しない状態の顔料よりも耐光性を明らかに向上させることができるので、耐光性が十分でなく、このことを理由として今までその分野で使用できなかった顔料が、本発明の樹脂処理顔料とすることによって、使用可能になる。 この結果、本発明の樹脂処理顔料を使用することで、製品の色の表現範囲が広がり、または、製品の耐久性が向上して、省エネルギーにも繋がるので、広範な用途への適用が期待される。

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