【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、スプリング構造体を枠体に取付けてなる構造部品におけるスプリング構造体の取付構造に関する。 【0002】 【従来の技術】枠体にスプリング構造体を取付けてなる構造部品は各種の分野で使用されているが、その代表例としては、車両用シートや通常の椅子等の着座部であるシートクッションを構成するフレームや、背もたれ部であるシートバックを構成するフレーム等のシートフレームを挙げることができる。 当該構造部品を構成するスプリング構造体は、複数本の線状スプリングを互いの交差点で連結してなる方形状のもので、スプリング構造体における上下の左右各端部を枠体の対応するフレーム部に掛止するとともに、同スプリング構造体の四辺の少なくとも一辺の中間部を枠体の対応するフレーム部に掛止することにより同枠体に取付けられるものである。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで、当該構造部品を構成するスプリング構造体を枠体に取付ける手段としては、スプリング構造体の各被掛止部を枠体の対応するフレーム部にカシメて掛止する手段が一般である。 かかるカシメ手段は、スプリング構造体の被掛止部が多数ある場合には相当面倒な作業であり、また、枠体が軽合金を成形材料とする場合には、その材質に起因してカシメ手段を採れない。 【0004】例えば、近年、車両用シートの軽量化が図られているが、その一環として、枠体であるシートフレームを、マグネシウム合金やアルミニウム合金等の軽合金を成形材料として一体成形することが行われている。 かかるシートフレームを枠体とする場合には、成形材料の特性上カシメ手段を採ることができない。 【0005】従って、本発明の目的は、当該構造部品を構成する場合に、スプリング構造体を枠体に取付ける手段としてカシメ手段を採用することなく、スプリング構造体を枠体に容易に取付けることができるようにすることにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、複数本の線状スプリングを互いの交差点で連結してなる方形状のスプリング構造体を方形状の枠体に取付けてなる構造部品におけるスプリング構造体の取付構造に関する。 【0007】しかして、本発明は、前記スプリング構造体における上下の左右各端部を前記枠体の対応するフレーム部に掛止するとともに、同スプリング構造体の四辺の少なくとも一辺の中間部を前記枠体の対応するフレーム部に掛止することにより、同枠体に前記スプリング構造体を取付けてなる構造部品におけるスプリング構造体の取付構造を適用対象とするものである。 【0008】本発明に係る第1の取付構造においては、 前記スプリング構造体がその一辺に突出形状の被掛止部を備えるとともに、前記枠体の対応するフレーム部には前記被掛止部が挿入可能なスリット状の挿入孔を備え、 前記被掛止部が前記フレーム部の挿入孔に挿入されて同フレーム部の裏面側の部位に掛止されていることを特徴とするものである。 【0009】本発明に係る第1の取付構造において、前記被掛止部は前記スプリング構造体の下辺に形成されているとともに、前記挿入孔は前記枠体のロアフレーム部に形成されていて、前記スプリング構造体の下辺の中間部が前記枠体のロアフレーム部に掛止されていること、 前記ロアフレーム部の中間部がフレーム部の基壁部より前方へ所定量突出する下壁部を備えた段付き形状に形成されていて、前記挿入孔は前記フレーム部の基壁部と下壁部との連結部位に位置し、前記下壁部の裏面側が前記スプリング構造体の前記被掛止部を掛止する掛止部に形成されていること、前記スプリング構造体の被掛止部は前記ロアフレーム部に対して直交して前記挿入孔に挿入され、前記スプリング構造体を前記ロアフレーム部に対して垂直方向に回動して前記被掛止部が前記掛止部に掛止されること、等の構成とすることができる。 【0010】また、本発明に係る第2の取付構造においては、前記スプリング構造体の端部に同スプリング構造体を構成する1本の線状スプリングの先端部を折曲して形成された被掛止部を備えるとともに、前記枠体の対応するフレーム部には前記被掛止部が掛止される支持ブラケットを備え、前記被掛止部が前記支持ブラケットを介して前記フレーム部に掛止されている構成とすることができる。 この場合、前記支持ブラケットとして、前記スプリング構造体の被掛止部の先端側が挿入される挿入孔を有して前記フレーム部に回転可能に支持される筒状支持部と、同筒状支持部の前端から直交して延びて同筒状支持部を所定量回転させることにより前記被掛止部の後端側を受承する樋状受承部を備えている支持ブラケットや、前記スプリング構造体の被掛止部を固定する第1のアーム部と、前記枠体に位置調整可能に取付けられる第2のアーム部を備えている支持ブラケット等を採用することができる。 【0011】本発明に係るこれらの取付構造では、枠体として、左右一対のサイドフレーム部と、これら両サイドフレーム部の上方部を互いに連結するアッパフレーム部と、前記両サイドフレーム部の下方部を互いに連結するロアフレーム部を備え、軽合金を成形材料としてこれらのフレーム部を一体的に成形してなるシートフレームを採用することができる。 【0012】 【発明の作用・効果】本発明に係る第1の取付構造を採用すれば、スプリング構造体の中間部の被掛止部を、枠体の対応するフレーム部に設けた挿入孔に挿入することにより、同スプリング構造体の中間部を枠体に取付けることができる。 また、本発明に係る第2の取付構造を採用すれば、スプリング構造体の端部の被掛止部を、枠体の対応するフレーム部に設けた支持ブラケットに挿入すること、または、同被掛止部を支持した支持ブラケットを枠体の対応するフレーム部に取付けることにより、同スプリング構造体の各端部を枠体に取付けることができる。 【0013】このため、本発明に係る第1,第2の取付構造を採用すれば、スプリング構造体の枠体への取付手段としてカシメ手段を採用する必要は全くなく、枠体の成形材料等に起因してカシメ手段を採用し得ない場合でも、スプリング構造体を枠体に容易に取付けることができるとともに、カシメ手段を採用できる場合においても面倒な取付作業を解消することができて、取付作業の作業能率を向上させることができる。 【0014】 【発明の実施の形態】図1は、本発明が適用対象とする構造部品の一例が示されている。 当該構造部品は、車両用シートを構成するシートバックフレームであり、枠体であるフレーム10とスプリング構造体20とにより構成されている。 フレーム10は、高延性を有するマグネシウム合金、アルミニウム合金等、軽合金を成形材料として、金型鋳造法により一体的に成形されているものである。 金型鋳造法としては、軽合金である成形材料を半溶融状態として射出成形するチキソモールディング法や、ダイカスト法が採用される。 スプリング構造体20 は、複数本の線状スプリングを互いの交差点で連結してなるもので、方形状を呈している。 【0015】フレーム10は、中央部が大きく開口する枠状の正面形状を呈していて、左右一対のサイドフレーム部11,12と、これら両サイドフレーム部11,1 2の下方部を互いに連結するロアフレーム部13と、両サイドフレーム部11,12の上方部を互いに連結するアッパフレーム部14を主要構成部としている。 当該フレーム10においては、各サイドフレーム部11,12 とロアフレーム部13とがスプリング構造体20の取付部位になっている。 【0016】ロアフレーム部13の中間部の2箇所の部位には、スプリング構造体20の下辺の中間部に形成された第1被掛止部21を掛止するための掛止部15が形成されている。 各サイドフレーム部11,12には、スプリング構造体20の下側の左右の各端部に形成された第2被掛止部22を支持するための第1支持ブラケット30aと、スプリング構造体20の上側の左右の各端部に形成された第3被掛止部23を支持するための第2支持ブラケット30bが取付けられている。 【0017】スプリング構造体20において、第1被掛止部21は、図1〜図3に示すように、構造体を構成する線状スプリングを方形状に屈曲して形成されているもので、下端中央部が突起部21aを備えていて、突起部21aの両端が屈曲して被係合部位21b,21bとなっている。 第2被掛止部22は、図1および図4に示すように、構造体を構成する左右方向へ波形状に延びる線状スプリングの先端部である。 第3被掛止部23は、構造体を構成する左右方向へ凹凸形状に延びる線状スプリングの先端部であって、図5および図6に示すように、 L字状に屈曲形成されているもので、先端側が挿入部位23aに形成され、かつ後端側が受承部位23bに形成されている。 【0018】一方、フレーム10のロアフレーム部13 においては、掛止部15の形成部位は、図2および図3 に示すように、基壁部13aより前方へ所定量突出する下壁部13bを有する段付き形状に形成されていて、これら両壁部13a,13bの連結部位にスリット状の挿入孔13cが形成されており、下壁部13bの裏面がスプリング構造体20の第1被掛止部21の突起部21a を掛止するための掛止部15になっている。 また、両壁部13a,13bの連結部位における挿入孔13cの左右両側は、前方に開口する凹所13d,13dに形成されていて、各凹所13d,13dが第1被掛止部21の各被係合部位21b,21bを受承する係合部になっている。 また、下壁部13bの先端部には、裏面側へ所定長さ突出する突起部13eが形成されている。 【0019】スプリング構造体20の下側の左右の各端部に形成された第2被掛止部22を支持するための第1 支持ブラケット30aは、図1および図4に示すように、平板状の基板部31と、基板部31の後端縁から円弧状に延びる筒状の第1アーム部32と、基板部31の後方の上下から屈曲して前方へ延びるフック状の第2アーム部33からなり、基板部31の側面にナット34が固着されている。 【0020】第1支持ブラケット30aにおいては、各第2アーム部33を各サイドフレーム部11,12の内面側から、各サイドフレーム部11,12に設けた上下の各取付孔16a,16bに挿入して前後に位置調整をした後、ビス35を各サイドフレーム部11,12の外面側から挿入してナット34に螺着することにより、各サイドフレーム部11,12に取付けられる。 スプリング構造体20の第2被掛止部22は、第1支持ブラケット30aを各サイドフレーム部11,12の取付ける前または後に、第1アーム部32に挿入して支持され、または、第1アーン部32にてカシメられて支持される。 第1支持ブラケット30aのかかる構成では、各第2アーム部33が各サイドフレーム部11,12に当たって作業時の上下方向の回転を規制し、かつ、基板部31および各第2アーム部33が各サイドフレーム部11,1 2に当たって作業時の左右方向の回転を規制する。 【0021】スプリング構造体20の上側の左右の各端部に形成された第3被掛止部23を支持するための第2 支持ブラケット30bは、図5および図6に示すように、筒状支持部36と、筒状支持部36の前端から直交して延びる樋状の受承部37からなるもので、受承部3 7の背部には操作部38が設けられている。 筒状支持部36は、各サイドフレーム部11,12の取付用のボス部16に挿入されて先端部に掛止爪部にてボス部16の裏面側に掛止され、抜止めされた状態で回転可能に取付けられるもので、第3被掛止部23の挿入部位23aが挿入可能で、かつ、受承部37は第3被掛止部23の受承部位23bを受承可能に形成されている。 【0022】スプリング構造体20の第3被掛止部23 の挿入部位23aは、各サイドフレーム部11,12に取付けた第2支持ブラケット30bの筒状支持部36に挿入することにより、第2支持ブラケット30bを介して各サイドフレーム部11,12に掛止されるが、第2 支持ブラケット30bを略90度回転させて受承部37 を水平状態にすることにより、受承部位23bは受承部37に受承されて抜け止めされる。 【0023】なお、第2支持ブラケット30bにおいては、筒状支持部36の前端面が図5に示すように、下方に突出する突部および上方に突出する突片部を有する形状に形成されていて、これらの突部および突片部と各サイドフレーム部11,12との当接により第2支持ブラケット30bの所定量以上の回転が規制されるようなっている。 また、筒状支持部36の前端面の下方の突部と受承部37および操作部38との間に、指が挿入可能な隙間が確保されている。 これにより、第2支持ブラケット30bの取付作業、第3被掛止部223の掛止作業の作業能率の向上が図られている。 【0024】当該シートバックフレームは、スプリング構造体20をフレーム10に取付けることにより構成されるが、スプリング構造体20をフレーム10に取付けるには、先ず、スプリング構造体20の各第2被掛止部22に、第1支持ブラケット30aをその第1アーム部32にてカシメにより取付け、次いで、スプリング構造体20をフレーム10に対して水平状にして各第1被掛止部21の突起部21aをロアフレーム部13の各挿入孔13cに挿入し、この挿入状態を保持してスプリング構造体20を上方(垂直方向)へ回動してフレーム10 に対して並列状態とする。 その後、並列状態に保持されたスプリング構造体20の各第3被掛止部23の挿入部位23aを、各第2支持ブラケット30bの筒状支持部36に挿入し、操作部38を持って第2支持ブラケット30bを略90度回転して受承部37を水平状態に位置させて、第3被掛止部23の受承部位23bを受承する。 最後に、スプリング構造体20の各第2被掛止部2 2に取付けた各第1支持ブラケット30aを各サイドフレーム部11,12に取付ける。 【0025】これにより、スプリング構造体20の第1 被掛止部21においては、その突起部21aがロアフレーム部13の下壁部13bの裏面である掛止部15に掛止されるとともに、その各被係合部位21bがロアフレーム部13の各凹所13dに係合する。 このため、スプリング構造体20は、その第1被掛止部21にてロアフレーム部13に取付けられる。 この取付状態においては、各被掛止部21は、ロアアーム部13に設けた突起部13eにて抜け止めが図られている。 【0026】また、スプリング構造体20の第2被掛止部22においては、第1支持ブラケット30aに掛止され、スプリング構造体20の第3被掛止部23においては、その挿入部位23aが第2支持ブラケット30bの筒状支持部36に支持されるとともに、その受承部位2 3bが第2支持ブラケット30bの第2支持ブラケット30bの受承部37に受承されて抜止めされて、第2支持ブラケット30bに掛止される。 これにより、スプリング構造体20は、その各第2被掛止部22および各第3掛止部23にて、各サイドフレーム部11,12に取付けられる。 【0027】このように、本発明に係る取付構造を採用すれば、スプリング構造体20をフレーム10に取付ける手段としてカシメ手段を採用する必要がなくて、フレーム10の成形材料に起因してカシメ手段を採用し得ない場合でも、スプリング構造体20をフレーム10に容易に取付けることができるとともに、カシメ手段を採用できる場合においても、面倒な取付作業を解消することができて、取付作業の作業能率を向上させることができる。 【0028】なお、当該スプリング構造体の取付構造においては、スプリング構造体20の第1被掛止部21を掛止する手段、第2被掛止部22を掛止する手段、および、第3被掛止部23を掛止する手段を下記のごとく変更することができる。 【0029】すなわち、スプリング構造体20の第1被掛止部21を掛止する手段においては、掛止部15への掛止後の抜け止めを図るべく突起部13eを設けているが、第2、第3被掛止部22,23の掛止状態によっては、突起部13eを省略することができる。 【0030】スプリング構造体20の第2被掛止部22 を掛止する手段としては、第1支持ブラケット30aを採用している。 第1支持ブラケット30aにおいては、 第2アーム部33を2本設けて、各サイドフレーム部1 1,12に設けた上下の各取付孔16a,16bに挿入して取付けているが、第2アーム部33を基板部31の裏面の中央部に1本設けて、各サイドフレーム部11, 12に設けた1個の取付孔に挿入して取付けるようにすることができる。 【0031】スプリング構造体20の第3被掛止部23 を掛止する手段としては、サイドフレーム部11,12 に取付けるための筒状支持部36、第3被掛止部23を受承するための受承部37、および、ブラケット30b を回動操作するための操作部38を備えた構成の第2支持ブラケット30bを採用しているが、これに換えて、 第3被掛止部23を左右方向および前後方向に掛止するフック状の掛止部材を備えた支持ブラケットを採用することができ、同支持ブラケットでは、掛止部材と各サイドフレーム部11,12の裏面間に第3被掛止部23の先端部が挿入できる隙間が確保し得るように、各サイドフレーム部11,12の裏面側に取付けるようする。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明が適用対象とする構造部品の一例であるシートバックフレームの斜視図である。 【図2】同シートバックフレームを構成するロアフレーム部の部分斜視図である。 【図3】同ロアフレーム部における図2の3−3線に沿う縦断面図である。 【図4】同シートバックフレームを構成するスプリング構造体の一部を取付けるための第1支持ブラケットの斜視図である。 【図5】同スプリング構造体の他の一部を取付けるための第2支持ブラケットの正面図である。 【図6】同第2支持ブラケットの側面図(a)、および同支持ブラケットの90度回転した状態の側面図(b) である。 【符号の説明】 10…フレーム、11,12…サイドフレーム部、13 …ロアフレーム部、13a…基壁部、13b…下壁部、 13c…挿入孔、13d…凹所、13e…突起部、14 …アッパフレーム部、15…掛止部、16…ボス部、2 0…スプリング構造体、21…第1被掛止部、21a… 突起部、21b…被係合部位、22…第2被掛止部、2 3…第3被掛止部、23a…挿入部位、23b…受承部位、30a…第1支持ブラケット、30b…第2支持ブラケット、31…基板部、32…第1アーム部(第1のアーム部)、33…第2アーム部(第2のアーム部)、 34…ナット、35…ビス、36…筒状支持部、37… 受承部、38…操作部。 |