事務用椅子

申请号 JP2015506361 申请日 2013-03-21 公开(公告)号 JP6002315B2 公开(公告)日 2016-10-05
申请人 タカノ株式会社; 发明人 菊地 賢; 岡本 功; 白鳥 陽介;
摘要
权利要求

膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子において、前記身体支持構造物は互いに直交する縦方向、横方向並びに深さ方向の3軸方向に展開する三次元の身体支持面を形作る三次元形状の枠部材と、無張下あるいは身体支持面として要求される張力よりも弱い張力で前記枠部材に周縁部分が固定されると共に前記縦方向と前記横方向とで熱収縮率が異なり、尚且つ固定後の加熱による熱収縮によって前記身体支持面として必要な張力が与えられる膜とを有し、前記膜は、前記縦方向と前記横方向のうち、深さ方向への変位量が小さい側の方向が深さ方向への変位量が大きい側の方向よりも収縮率が高く、前記縦方向と前記横方向との熱収縮の際の発生張力の差によって前記枠部材の三次元形状に沿って全体が縮むことで三次元的な前記身体支持面を形成したものであることを特徴とする膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子。膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子において、前記身体支持構造物は互いに直交する縦方向、横方向並びに深さ方向の3軸方向に展開する三次元の身体支持面を形作る三次元形状の枠部材と、無張力下あるいは身体支持面として要求される張力よりも弱い張力で前記枠部材に周縁部分が固定されると共に前記縦方向と前記横方向とで熱収縮率が異なり、尚且つ固定後の加熱による熱収縮によって前記身体支持面として必要な張力が与えられる膜とを有し、前記膜の熱収縮の際の発生張力の差によって前記枠部材の形状に沿った三次元的な身体支持面を形成し、前記膜は熱収縮性の経糸と緯糸で織られた織物であり、前記織物を構成する熱収縮性の糸より熱収縮率が高いエラストマー糸を織り込むことにより、当該膜の縦横で収縮率を異らせたものであることを特徴とする膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子。前記膜は熱収縮性の経糸と緯糸で織られた織物であり、前記織物を構成する熱収縮性の糸より熱収縮率が高いエラストマー糸を織り込むことにより、当該膜の縦横で収縮率を異らせたものである請求項1記載の椅子。前記膜は前記経糸あるいは緯糸のいずれか一方の糸として前記エラストマー糸が織り込まれたものである請求項2または3記載の椅子。前記エラストマー糸が前記経糸及び前記緯糸として織り込まれたものである請求項2または3記載の椅子。前記織物を構成する前記経糸及び前記緯糸とは別に、前記経糸あるいは緯糸のいずれか一方の糸に沿って前記エラストマー糸を織り込むことにより、当該膜の縦横で収縮率を異らせたものである請求項2または3記載の椅子。前記織物を構成する前記経糸及び前記緯糸とは別に、前記経糸及び緯糸の双方の糸に沿って前記エラストマー糸を織り込むことにより、当該膜の縦横で収縮率を異らせたものである請求項2または3記載の椅子。前記膜は熱収縮性の糸で編まれた編物であり、前記編物を構成する熱収縮性の糸より熱収縮率が高いエラストマー糸をコース方向に挿入して編み込むことにより、当該膜の縦横で収縮率を異らせたものである請求項1記載の椅子。前記膜は、同一加熱温度下での熱収縮率が同じ経糸と緯糸とで織られたものである請求項1から3のいずれか1つに記載の椅子。前記膜は、同一加熱温度下での熱収縮率が異なる少なくとも2種の弾性素材を経糸と緯糸とで織られたものである請求項1から3のいずれか1つに記載の膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子。前記エラストマー糸は前記身体支持構造物の部位に応じて配置密度が異なるものである請求項2から8のいずれか1つに記載の椅子。前記身体支持構造物は座であり、前記膜の前縁側の三次元面形状部分のエラストマー糸を他の領域よりも多く配置したことを特徴とする請求項11記載の椅子。前記身体支持構造物は背であり、前記膜のランバーサポート部の三次元面形状部分のエラストマー糸を他の領域よりも多く配置したことを特徴とする請求項11記載の椅子。前記膜はメッシュ状織物であり、前記枠部材との境界付近を含む周縁部分の織目が、それよりも内側の部分よりも細かくすることを特徴とする請求項1〜7,9〜13のいずれか1つに記載の椅子。前記膜はメッシュ状編物であり、前記枠部材との境界付近を含む周縁部分の編目が、それよりも内側の部分よりも細かくすることを特徴とする請求項1,8,11〜13のいずれか1つに記載の椅子。膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子において、前記身体支持構造物は互いに直交する縦方向、横方向並びに深さ方向の3軸方向に展開する三次元の身体支持面を形作る三次元形状の枠部材と、無張力下あるいは身体支持面として要求される張力よりも弱い張力で前記枠部材に周縁部分が固定されると共に前記縦方向と前記横方向とで熱収縮率が異なり、尚且つ固定後の加熱による熱収縮によって前記身体支持面として必要な張力が与えられる膜とを有し、前記膜の熱収縮の際の発生張力の差によって前記枠部材の形状に沿った三次元的な身体支持面を形成し、前記膜は熱収縮性の糸で編まれた編物であり、前記編物を構成する熱収縮性の糸より熱収縮率が高いエラストマー糸をコース方向に挿入して編み込むことにより、当該膜の縦横で収縮率を異らせたものであることを特徴とする膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子。膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子において、前記身体支持構造物は互いに直交する縦方向、横方向並びに深さ方向の3軸方向に展開する三次元の身体支持面を形作る三次元形状の枠部材と、無張力下あるいは身体支持面として要求される張力よりも弱い張力で前記枠部材に周縁部分が固定されると共に前記縦方向と前記横方向とで熱収縮率が異なり、尚且つ固定後の加熱による熱収縮によって前記身体支持面として必要な張力が与えられる膜とを有し、前記膜の熱収縮の際の発生張力の差によって前記枠部材の形状に沿った三次元的な身体支持面を形成し、前記膜はメッシュ状織物であり、前記枠部材との境界付近を含む周縁部分の織目が、それよりも内側の部分よりも細かくすることを特徴とする膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子。膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子において、前記身体支持構造物は互いに直交する縦方向、横方向並びに深さ方向の3軸方向に展開する三次元の身体支持面を形作る三次元形状の枠部材と、無張力下あるいは身体支持面として要求される張力よりも弱い張力で前記枠部材に周縁部分が固定されると共に前記縦方向と前記横方向とで熱収縮率が異なり、尚且つ固定後の加熱による熱収縮によって前記身体支持面として必要な張力が与えられる膜とを有し、前記膜の熱収縮の際の発生張力の差によって前記枠部材の形状に沿った三次元的な身体支持面を形成し、前記膜はメッシュ状編物であり、前記枠部材との境界付近を含む周縁部分の編目が、それよりも内側の部分よりも細かくすることを特徴とする膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子。前記膜は熱流体が吹き付けられることで加熱されて張力が付与されたものである請求項1〜18のいずれか1つに記載の椅子。

说明书全文

本発明は、膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子に関する。更に詳述すると、本発明は、枠部材と該枠部材によって周縁部分が支持される膜とで構成される座や背凭れ等として機能する身体支持構造物を備える椅子に関する。

従来から、枠部材と該枠部材によって周縁部分が支持される膜とで構成される座や背凭れ等として機能する身体支持構造物を備える椅子は存在する。この椅子は、膜が身体支持面を構成するように、膜とその周縁部分の全部又は一部を保持する枠部材とで身体支持構造物を構成するものである。例えば、座は、熱収縮性を有する膜を無張下あるいは身体支持構造物として必要な張力より弱い張力で枠部材に固定してから、膜に対して両面から加熱したアルミ板を押し当てて膜を加熱し、膜を縦横に収縮させて身体支持構造物として必要な弾力性を発揮させる張力を与え、平坦な座面を形成するようにしている(特許文献1参照)。

特開2001−78852

しかしながら、座面や背凭れ面などの身体支持面を単なる平面ではなく三次元的な曲面とすることが求められる場合、従来の膜は熱収縮によって縦横にほぼ均等に張られるため、枠状の枠部材を湾曲した形状とするだけでは、熱収縮によって膜をほぼ均等に縦横に引っ張るように張力を付与しても、意図した曲面を作り出すように張ることは難しい。例えば、座の前縁部付近では、下方へ垂れ下がるように湾曲された枠部材の形状に沿った曲面を膜の前縁部付近に作り出すことが望まれているが、枠部材の側辺の近くでは曲面を形成しながらも、側辺から離れるに従って漸次周辺よりも曲率半径を大きくして行って緩やかな斜面に近づき、横方向の中央付近で最も凹んだ平らな、全体として反り返ったような面となっていた。

そこで、本発明は、膜を意図した三次元形状に張ることができる身体支持構造物を有する椅子を提供することを目的とする。

かかる目的を達成するため、本発明の膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子は、身体支持構造物が互いに直交する縦方向、横方向並びに深さ方向の3軸方向に展開する三次元の身体支持面を形作る三次元形状の枠部材と、無張力下あるいは身体支持面として要求される張力よりも弱い張力で枠部材に周縁部分が固定されると共に縦方向と横方向とで熱収縮率が異なり、尚且つ固定後の加熱による熱収縮によって身体支持面として必要な張力が与えられる膜とを有し、膜の熱収縮の際の発生張力の差によって枠部材の形状に沿った三次元的な身体支持面を形成するようにしている。

ここで、膜は、縦方向と横方向のうち、深さ方向への変位量が小さい側の方向が深さ方向への変位量が大きい側の方向よりも収縮率が高く、縦方向と横方向との熱収縮の際の発生張力の差によって枠部材の三次元形状に沿って全体が縮むことで三次元的な身体支持面を形成することが好ましい。

さらに、膜は熱収縮性の経糸と緯糸で織られた織物であり、織物を構成する熱収縮性の糸より熱収縮率が高いエラストマー糸を織り込むことにより、当該膜の縦横で収縮率を異らせたものであることが好ましい。ここで、エラストマー糸は経糸あるいは緯糸のいずれか一方の糸として、あるいは経糸及び緯糸として双方に織り込まれても良い。また、エラストマー糸は織物を構成する経糸及び緯糸とは別に織り込まれても良く、経糸あるいは緯糸のいずれか一方に沿って、あるいは双方に沿って織り込まれても良い。

さらに織物は、同一加熱温度下での熱収縮率が同じ経糸と緯糸とで織られたものであっても、同一加熱温度下での熱収縮率が異なる少なくとも2種の弾性素材を経糸と緯糸とで織られたものであっても良く、いずれの場合においても経糸あるいは緯糸のいずれか一方あるいは双方に沿って配置されるエラストマー糸によって膜の縦横で収縮率を異らせることができる。

また、膜は熱収縮性の糸で編まれた編物であり、編物を構成する熱収縮性の糸より熱収縮率が高いエラストマー糸をコース方向に挿入して編み込むことにより、当該膜の縦横で収縮率を異らせるようにしても良い。

また、本発明において、エラストマー糸は身体支持構造物の部位に応じて配置密度が異なるものであることが好ましく、例えば身体支持構造物が座の場合には、膜の前縁側の三次元面形状部分のエラストマー糸を他の領域よりも多く配置し、あるいは身体支持構造物が背の場合には、膜のランバーサポート部の三次元面形状部分のエラストマー糸を他の領域よりも多く配置することが好ましい。

また、本発明において、織物あるいは編物から成るメッシュ状の膜は、枠部材との境界付近を含む周縁部分の織目あるいは編目が、それよりも内側の部分よりも細かくされていることが好ましい。

また、本発明において、膜は熱風あるいは過熱蒸気などの熱流体が吹き付けられることで加熱されて張力が付与されたものであることが好ましい。

本発明によれば、枠部材の三次元形状と、膜の縦方向と横方向の熱収縮量の差に起因する発生張力の差を利用して、膜を意図した三次元曲面形状の身体支持面を形作ることができる。

さらに、本発明において、膜の縦方向と横方向のうち深さ方向への変位量が小さい側の方向が深さ方向への変位量が大きい側の方向よりも収縮率が高くなるようにすれば、熱収縮量の大きい方向の膜の張りに熱収縮量の小さい方向の張りが制約されて、熱収縮量の小さい方向の張りは熱収縮量の大きい方向の張りの影響を大きく受ける。この結果、枠部材の三次元形状に沿って膜の全体が縮み、意図した三次元の身体支持面を容易に構成することができる。

さらに、本発明において、膜を熱収縮性の経糸と緯糸で織られた織物で構成し、織物を構成する熱収縮性の糸より熱収縮率が高いエラストマー糸を織り込む場合には、熱収縮率の差を縦横で大きく異ならせることができるので、膜の全体的な収縮に左右されることなく、任意の張力を与えることができる。したがって、膜そのものは縦横に等しく全体的に熱収縮させる一方、エラストマー糸は高い熱収縮を行って張力を得るので、十分な張力が得られると共に、エラストマー糸の両端を支持する枠部材の形状に沿って膜の身体支持面を構成することができる。

さらに、織物あるいは編物を構成する熱収縮性の糸より熱収縮率が高いエラストマー糸を織り込む膜によれば、エラストマー糸の織り込み方、例えばエラストマー糸を配置する方向やその本数、配置密度、太さなどを調整するだけで、容易に当該膜の収縮率を縦横で異らせることができる。したがって、膜そのものに必要な張力を与えつつ、膜の縦横の張力の差によって枠部材の形状に沿って三次元的に身体支持面を構成することができる。

また、本発明において、エラストマー糸の配置密度を身体支持構造物の部位に応じて異ならせる場合、エラストマー糸の配置密度を高くした部位の反発力を増すことができ、例えば座の場合の前縁側の三次元面形状部分あるいは背の場合のランバーサポート部の三次元面形状部分における使用者の身体のサポート性を向上できる。

また、本発明において、織物あるいは編物から成るメッシュ状の膜の枠部材との境界付近を含む周縁部分の織目をそれよりも内側の部分よりも細かくする場合、枠部材の射出成形時に樹脂が膜側に染み出てばりを発生させることがない。依って、ばりを取る作業工程が不要となり、作業工数とコストの削減を可能とする。

また、本発明において、枠部材に周縁が固定された膜に熱流体を吹き付けることで張りが与えられた身体支持構造物は、三次元方向の変位が顕著な形状のために加熱前の膜が大きく波打ったように弛んだ状態となっていても、局部的な温度差が発生することがないので、収縮に斑が生じて色が濃くなったり薄くなったりすることがなく、色むらが発生してしまう虞がない。

本発明にかかる膜によって身体支持面を形成する身体支持構造物を備える椅子の一実施形態を示す斜視図である。

座の膜の一実施形態を示す拡大図である。

図1のIII−III線に沿う座の端面図である。

図1のIV−IV線に沿う座の端面図である。

図1の座の二色成形の一次成形後の膜と枠部材との関係を示す横断面図である。

図1の座の二色成形の二次成形後の枠部材とカバー部材との関係を示す横断面図である。

図1の座のインサート成形による膜と枠部材との関係を示す横断面図である。

メッシュ状の織物の周縁部全体に亘って織目を細かく密にした座の一例を示す平面図である。

インサート成形による身体支持構造物の製造の一例を示す概略説明図である。

膜の加熱板を利用した加熱処理の原理を示す概略説明図で、加熱開始時の加熱板と膜との関係を示す。

加熱処理が完了した状態の加熱板と膜との関係を示す概略説明図である。

カバー部材の成形型に膜と枠部材との一体物を取り付ける状態を示す概略説明図である。

カバー部材の成形型に収容した膜と枠部材との一体物の周りに樹脂を射出した状態を示す概略説明図である。

型から取り外した直後の、膜と枠部材との接合部の上にカバー部材を成形した身体支持構造物の断面図である。

スライド型による二色成形を説明する図で、スライドブロックをスライドさせて一次成形品の膜と枠部材との接合部の上に設けたキャビティにカバー部材を成形した二次成形の状態を示す。

編物によって構成される膜の一実施形態を示す拡大図である。

編物によって構成される膜の他の実施形態を示す拡大図である。

加熱板を利用した張力付与装置の一例を示す側面図である。

同装置の正面図である。

熱流体を利用した張力付与装置の一例を示す斜視図である。

同装置の側面図で、炉体の断熱壁の図示を省略して加熱室を図示している。

同装置の平面図で、炉体の断熱壁の図示を省略して加熱室を図示している。

同装置の正面図で、扉の図示を省略して加熱室内を図示している。

同装置における熱流体を吹き付けるダクトと膜との相対移動の軌跡を示す概略説明図である。

以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。

図1に、本発明の椅子の一実施形態として、膜によって使用者の身体を支持する身体支持面を形成する身体支持構造物を座及び背として備えるパイプ椅子を示す。この椅子8は、膜2と、この膜2の周縁を支持する枠部材3とで構成される身体支持構造物1によって座5及び背6が構成され、パイプフレーム7で支えられたものである。尚、本明細書において、上下、前後、左右の方向は椅子の座5に着座した使用者を基準に定め、三次元座標を定める互いに直交する縦方向(Y軸)、横方向(X軸)並びに深さ方向(Z軸)の3軸方向は各身体支持構造物の身体支持面をXY平面とすることを基準に定め、三次元座標の縦方向(Y)軸方向は椅子の前後あるいは上下方向と一致するものとして定義される。

身体支持構造物1は、互いに直交する縦方向、横方向並びに深さ方向の3軸方向に展開する三次元の身体支持面4を形作る三次元形状の枠部材3と、無張力下あるいは身体支持面4として要求される張力よりも弱い張力で枠部材3に周縁部分が固定され、尚且つ固定後の加熱による熱収縮によって身体支持面4として必要な張力が与えられる膜2とを有し、膜2の縦方向と横方向とで熱収縮率を異ならせ、熱収縮の際の発生張力の差によって枠部材3の形状に沿った三次元的な身体支持面4を形成するようにしている。

ここで、枠部材3は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂などの熱可塑性合成樹脂あるいは膜2よりも低い温度で硬化する熱硬化性合成樹脂によって、それ自体で膜2の張力を保持できる剛性を有しているものとして、所望の三次元形状に成形されている。例えば、図1に示す椅子の座5を構成する身体支持構造物1の場合、使用者の膝の近くの大腿部の裏に作用する圧力を最小にするため、座5の前部付近5aは、図1及び図3に示すように、下方に湾曲し、それに沿って膜2の前縁部付近2aも下方に湾曲した曲面を形成するように設けられている。また、図1に示す椅子の背6を構成する身体支持構造物1の場合、背6の腰部付近6aではY軸方向において前方へ僅かに湾曲し、X軸方向においては全体的に後方へ突出するように僅かに湾曲するように成形され、それに沿って使用者の腰部を支持する腰部領域4aを有する身体支持面4を形成するように設けられている。本実施形態では、枠部材3をオレフィン系樹脂製とすると共に膜2をポリエステル製とし、これらをビス等の金属を使わずに接合するように設けることにより、身体支持構造物1を分別廃棄することなくそのままリサイクルすることができるようにしている。しかし、このことは膜2と枠部材3の材料が本実施形態の例に限定されることを意味していない。さらには、枠部材3は、全体が単一材質である必要はなく、場合によっては強度が必要とされる箇所に部分的にグラスファイバーや炭素繊維などの補強材を充填するようにしても良い。

また、膜2は、椅子の座5あるいは背6などの身体支持構造物1として必要とされる強度、弾力性を発揮させる張力を生じる柔軟性を有する熱収縮性素材によって構成される全ての膜状物を含むものであり、例えば織物、編物、織物あるいは編物から成るメッシュ、不織布あるいはフィルム等のいずれの形態をとるものであっても使用可能であるが、好ましくはポリエステル糸やナイロン糸などの熱可塑性樹脂繊維による織物あるいは編物、さらには織物あるいは編物から成るメッシュ(本明細書ではこれらを総称して単にメッシュと呼ぶ)を用いることであり、より好ましくはメッシュの形態を採ることである。膜2をメッシュとする場合、高い通気性が得られることから座り心地の良い快適な身体支持構造物1が得ることができる。勿論、膜2としては、熱収縮性を有し尚且つ身体支持構造物1として必要な弾力性及び強度を備えた膜状物であれば良く、メッシュには限られず、例えば織物や編物、不織布、あるいはフィルム等の他の素材からなる膜状物でも良い。

この膜2は、熱収縮性を有する弾性材料から成り、その縦方向と横方向とで熱収縮率を異ならせるようにしている。例えば、本実施形態における膜2は、図2に示すように、ポリエステル糸を撚り合わせて成る複数本のストランド(以下、ポリエステルストランドあるいは単にポリエステル糸と呼ぶ)12から成る経糸10と緯糸11とでベース織地が織られたメッシュで構成され、加熱処理により経糸方向と緯糸方向ともに僅かに収縮するようにされている。そして、より収縮することが必要とされる方向、即ち、膜2の縦方向(Y軸方向)と横方向(X軸方向)のうち、深さ方向への変位量が小さい側の方向が深さ方向への変位量が大きい側の方向よりも熱収縮率が高くなるように縦方向と横方向とで熱収縮率が異ならされており、熱収縮の際に縦方向と横方向との間で発生張力に差が生じるように設けられている。例えば、図1の実施形態の椅子における座5の例を挙げると、図4の横方向(X軸方向)に、モノフィラメントから成るエラストマ性ポリエステル糸(以下、単にエラストマー糸と呼ぶ)13がポリエステルストランドの緯糸11に沿って織り込まれ、加熱処理により横方向即ち緯糸11の方向により強い張力を付与するように設けられている。即ち、ポリエステル糸12で縦横の双方に等しく熱収縮するメッシュ状のベース織地部分が織られ、このベース織地の地糸の一方の糸に沿って地糸即ちポリエステル糸12より熱収縮率が高いエラストマー糸13を織り込むことにより、膜2としての全体的な収縮において縦横で収縮率を異ならせるようにしている。具体的には、5本のポリエステルストランド12から成る経糸10と、ポリエステル糸12よりも熱収縮率が高い3本のエラストマ性ポリエステルモノフィラメント13の間に2本のポリエステルストランド12を交互に並べて成る緯糸11とで、メッシュが織られている。依って、図1の実施形態の椅子における座5の例を挙げると、枠部材3の湾曲部5aにおいては、横方向のエラストマ性ポリエステル糸13は当該湾曲部5a間を直線的に結び(図4参照)、縦方向のポリエステル糸12はエラストマ性ポリエステル糸13の張りに制約されてエラストマ性ポリエステル糸13の並びに沿った形状、即ち枠部材3の側方の辺3aに沿った形状を描く。この結果、図3に示すように、枠部材3の湾曲部5aに対応して膜2が曲面2aを形成する。ここで、エラストマー糸13としては、ベース織地を構成する熱収縮性を有する弾性糸即ち地糸よりも熱収縮率が高い素材、例えばポリエステル系、ウレタン系、ナイロン系、オレフィン系、スチレン系、塩化ビニル系などの熱可塑性エラストマー材料が使用可能であり、中でもポリエステル系やウレタン系の熱可塑性エラストマーの使用が好ましい。

因みに経糸10と緯糸11の本数は上述の5本対5本に限定されず、必要に応じて任意の本数を組み合わせて成り、例えば、5本のポリエステルストランド12から成る経糸10と2本のエラストマ性ポリエステルモノフィラメント13の間に1本のポリエステルストランド12を並べて成る緯糸11とでメッシュが織られることによって、縦横で収縮率を異ならせるようにしても良い。なお、エラストマー糸13はモノフィラメントである必要はなく、場合によってはストランドでも良い。さらに、エラストマー糸13は、ベース織地の地糸即ち緯糸11あるいは経糸10の一部として織り込まれる必要はなく、場合によってはベース織地部分とは別に、挿入糸として例えばメッシュの目9の部分にエラストマ性ポリエステルモノフィラメント13だけを織り込むようにしても良い。また、本実施形態では、メッシュ状の織物から成る膜2の経糸10が身体支持構造物1の縦方向(Y軸方向)に、緯糸11が身体支持構造物1の横方向(X軸方向)にそれぞれ対応するように枠部材3に対して配置されているが、この対応関係に限定されるものではない。図示のものとは逆の関係で、経糸10が身体支持構造物1の横方向(X軸方向)に、緯糸11が身体支持構造物1の縦方向(Y軸方向)にそれぞれ対応するように配置されていても良い。

膜2の構成は、必ずしも上記実施形態には限定されない。例えば、経糸10と緯糸11の素材を異なるものとすること、例えば同一加熱温度下での熱収縮率が異なる少なくとも2種の弾性素材を経糸10と緯糸11として採用し、メッシュを織ることも好ましい実施の一形態である。また、経糸10と緯糸11のいずれか一方をストランドであるかモノフィラメントであるかを問わずに全てエラストマ性ポリエステル糸13で構成すると共に、他方をポリエステル糸12で構成し、これら経糸10と緯糸11とで織物あるいは織物から成るメッシュを織っても良い。また、全ての経糸10あるいは緯糸11にエラストマー糸13を含める必要はなく、場合によっては間引いて一部の経糸10あるいは緯糸11に含めるようにしても良いし、さらにはベース織地の地糸とは別にエラストマ性ポリエステルモノフィラメント13を単独でメッシュの目9の部分に織り込む場合にも全ての目9の部分に通さずに間引いて織り込むようにしても良い。

また、経糸10と緯糸11の双方にエラストマー糸13を採用し、織物あるいは織物から成るメッシュの膜2を織るようにしても良い。エラストマー糸13は、緯糸11及び経糸10の一部として織り込まれる場合だけでなく、場合によっては経糸10と緯糸11の全てをエラストマ性ポリエステル糸13で構成するようにしても良い。この場合、緯糸11としてのエラストマー糸13と経糸10としてのエラストマー糸13とでは、互いに熱収縮率が異なる熱可塑性エラストマー糸を採用することにより、縦横で収縮率が異なる膜2を得ることができる。また、ベース織地を構成する経糸10及び緯糸11の地糸とは別に、経糸10あるいは緯糸11の双方の糸に沿ってエラストマー糸13をそれぞれ織り込むことにより、縦横で収縮率が異なる膜2を得るようにしても良い。いずれにしても、エラストマー糸13は、ストランドであるかモノフィラメントであるかを問わずに、経糸10及び緯糸11としてあるいはこれらとは別の挿入糸として織り込むことができる。また、同じ熱収縮率のエラストマー糸13を経糸10及び緯糸11としてあるいは経糸10及び緯糸11の双方に沿って配置される挿入糸として用いる場合でも、使用本数や、太さを調整することにより、膜2の縦方向と横方向とで発生する張力に差を設けることも可能である。さらに、膜2として縦方向と横方向とで熱収縮量が異なるフィルム、例えばポリ塩化ビニリデン製のフィルムを使用することもできる。

さらに、同じ熱収縮率の経糸10と緯糸11で膜2を構成する場合においても、例えば経糸10と緯糸11とでストランドあるいはモノフィラメントの数を異にしたり、即ち経糸10と緯糸11の密度すなわち打ち込み本数を異ならせることによっても、膜2の縦方向と横方向とでその収縮量・張力を異ならせることができる。この場合、膜2の全域において経糸10あるいは緯糸11の本数を異ならせるか、膜2における一部分とその他の部分との熱収縮量を異ならせるようにしても良い。また、場合によっては、経糸10と緯糸11とで異なる本数のエラストマー糸13をそれぞれ織り込むことにより、縦横で収縮率を異らせるようにしても良い。

さらに、モノフィラメントあるいはストランドから成るエラストマ性ポリエステル糸13を織り込む本数を、身体支持構造物1の部位に応じて配置密度を異ならせることによって、身体支持面の部位によって張力を異ならせるようにしても良い。例えば、身体支持構造物1が座5の場合、膜2の前縁部付近2a即ち前縁側の三次元面形状部分のエラストマー糸13を他の領域よりも多く配置することが使用者の膝の近くの大腿部を支える上で好ましい。また、身体支持構造物1が背6の場合、膜2のランバーサポート部4aの三次元面形状部分のエラストマー糸13を他の領域よりも多く配置することが、使用者の腰部付近を支持する上で好ましい。

また、膜2は熱収縮性の弾性糸で編まれた編物あるいは編物から成るメッシュであることも好ましい実施の一形態である。例えば図11Aあるいは図11Bに示すように、熱収縮性の弾性素材を地糸28として採用し、編地全体に地糸28とは異なるエラストマー糸13をコース方向(横方向)に挿入して編み込むようにしても良い。この場合、編地を構成する熱収縮性の地糸28より熱収縮率が高いエラストマー糸13により、膜2の熱収縮率が縦横で異る編物構造となる。エラストマー糸13は、地糸28で構成されるベース編地を貫くように、ウェール方向(縦方向)に並列される。エラストマー糸13の配置は、ウェール方向に一定ピッチでも良いし、必要に応じて密にあるいは粗に配置されても良い。さらには、ベース編地の編み方は特定の編み方に限定されるものではない。

また、同じ素材から成る糸であっても製法によって縦横の間で収縮量を異ならせることも可能である。例えば、エラストマー糸13の収縮量には上限があるので、膜2を枠部材3に固定する前、例えば膜2の製造段階における織り工程での仕上げ時に一旦加熱処理することでポリエステル糸12及びエラストマー糸13を熱収縮させる。この時のエラストマー糸13の収縮量が大きくなるので、膜2を枠部材3に取り付けた後に行なう膜2への張力付与工程でのエラストマー糸13の収縮量が少なくなる。この性質を利用すれば、膜2の製造時における温度を調整することで、膜2への張力付与工程時におけるエラストマー糸13の収縮量を所望のものに調整することができる。さらに例えばポリエステル糸12は、染色時に糸を加熱する温度や加熱を行なう回数などの染色方法によっても収縮量が異なるので、当該染色方法を選択することによって、膜2への張力付与工程時におけるポリエステル糸12の収縮量を所望のものに調整することができる。さらに、膜2を構成する糸の断面形状や糸の太さ等を適宜選択することによっても、膜2への張力付与工程時における当該糸の収縮量を所望のものに調整できる。

ここで、膜2として織物あるいは編物によって構成されるメッシュを用いる場合、一般的には通気性を重視することをコンセプトとしているため、メッシュ自体の織り方・編み方は使用者を支持可能な十分な強度を確保した上で密度の粗いもの、言い換えると、織目・編目が粗いものになっている。このため、メッシュ状の膜2をインサートとして射出成形用金型内にセットした状態で枠部材3を射出成形する場合に、メッシュ状の膜2を挟んだ上下の金型の型当り面部分から樹脂が漏れ出しメッシュ状の膜2の織目・編目に樹脂が滲み出す虞がある。この場合、枠部材3の内側のメッシュ状の膜2の枠部材3との際に樹脂のばりができてしまう問題が起こり得る。特に、金型の型当り面部分からの樹脂の漏れ出しを完全に防止するために型締力を強くすると、金型に挟まされたメッシュが押し潰されて損傷したり破れてしまったりするので、樹脂の漏れ出しを完全に防止するほどには型締力を大きくすることができないという事情もある。射出成形時に発生した樹脂の漏れ出し(メッシュへの滲み出し)によって生成されたばりは、時には使用者の太ももや背中などに当たってちくちくするといった不快感を与えてしまったり、皮膚を傷付けてしまったり、ストッキングを伝線させてしまったり、着衣を引っ掻いてしまったりすることがある。そこで、従来のメッシュでの製造工程では、最後にばりを取る作業工程が必要であり、作業工数とコストの増加を招いていた。

そこで、本実施形態にかかる椅子の身体支持構造物では、ばりができると困る箇所、例えば膜2の周縁部であって枠部材3との境界部分における膜2の織目・編目を内側の他の領域よりも細かくするようにしている。特に、使用者の身体と接触する可能性の高い、身体支持面の枠部材との境界部分における織目・編目を他の部分よりも細かくすることが好ましい。具体的には、図1の実施形態の椅子の座5の場合、座5の前縁部付近5aに設定されている枠部材3の下方へ湾曲した部分と、それに沿って曲面を成す膜2との境界部分には、枠部材3の射出成形時に樹脂漏れが起こりうるので、この曲面部分2aの膜2の織目を細かく密にしている。同時に、座5の前縁付近5aの膜2の曲面部分2aには、使用者の膝の近くの大腿部の裏が座5の枠部材3の前方側の辺3bに当たらないように支持するため、強い張力を必要とすることから、曲面部分2aにおけるエラストマー糸13の密度も高くすることが望まれる。そこで、膜2の織目を細かくして密度を密にすると共に、横方向に織り込まれるエラストマー糸13の数もその他の領域よりも増やすことにより、曲面部分2aの膜2の張力と織目の密度の双方を高くしてへたり難くしている。つまり、膜2の撓み量を部分的に変更して使用者が感じる枠部材3への当たり感を減少させることができる。

射出成形時の膜2への樹脂の滲み出しを防ぐには、メッシュ状の膜2の枠部材3との際に樹脂が漏れ出す方向と直交する方向の織り糸同士の間隔、若しくは膜2の枠部材3との際に樹脂が漏れ出す方向と同じ方向の織り糸同士の間隔、あるいは双方の間隔を同時に狭くすることによって、織目を細かく密にすることが好ましい。具体的には、織り糸の本数を他の部分よりも多くしたり、断面円形の織り糸を平らに潰したり、一束となっている複数のストランドを分け広げることにより、経糸10あるいは緯糸11同士の間隔を狭くあるいは無くすようにする。尚、膜2を編物によって構成する場合には、編みのループを細かくすることによって膜2の目を細かくすることができる。

メッシュ状の膜2の織目を細かく密にする領域は、枠部材3のやや内側を占める部分を含め、それよりも外の周縁までの領域である。勿論、枠部材3から内側にはみ出る織目を細かくする領域の幅は、特定の大きさに限定されるものではない。すなわち、膜2と枠部材3との一体成形の際に膜2への枠部材3成形のための樹脂の漏れ出しを防ぎ、膜2の枠部材3との際におけるばりの生成を防ぐのに必要な大きさを少なくとも確保するように適宜設定される。

また、メッシュ状の膜2の織目・編目を他の部分よりも細かくする場所即ち稠密部は、図1に示すような座5の前縁部分2aに限られるものではなく、枠部材3との境界付近の膜2の周縁部の他の部分あるいは全域の使用者と直接接触する可能性がある位置であれば設けるようにしても良い。具体的には図7に示すように、膜2の前縁部2a,後縁部2c及び左右の側縁部2dの全周に亘って上述の稠密部を設けても良いし、場合によっては図示していないが前縁部2aと後縁部2cの双方、あるいは後縁部2cだけ、若しくは左右の側縁部2dだけに上述の稠密部を設定しても良い。この場合、前縁2a及び後縁2cにおいては緯糸11同士の間隔を狭くすることによって、左右側縁においては経糸10同士の間隔を狭くすることによって、あるいは緯糸11同士の間隔と経糸10同士の間隔とを同時に狭くすることによって、樹脂の漏れ出しを防ぐようにしている。また、背6に適用する場合も同様である。

以上のように構成された膜の身体支持面を有する身体支持構造物を備える椅子によれば、枠部材3に膜2を固定した後の加熱によって、枠部材3の三次元形状と膜2の熱収縮の際の縦横での発生張力の差とが相俟って、枠部材3の形状に沿った三次元的な身体支持面4に張られる。特に、膜2の縦方向と横方向のうち深さ方向への変位量が小さい側の方向が深さ方向への変位量が大きい側の方向よりも収縮率が高くなる膜を張ることで、より一層、枠部材の三次元形状に沿って三次元的な身体支持面4を形成する。

次に、身体支持構造物の製造方法並びに張力付与方法について説明する。

膜2と枠部材3との固定は、必要な張力を膜2にかけずに膜2と枠部材3とを一体化するため、接着やビス止め、ステープル止め、縫い付け、凹凸の嵌め込み、膜2の面に沿って2つ割された枠部材3の間で挟み付けるなどの様々な固定手法によっても可能である。しかし、枠部材3を射出成形によって成形する際に、予め所定の形状・寸法に裁断された膜2を型内にインサートとして組み込むインサート成形あるいは二色成形などによって一体化する手法は、作業工程を簡略化すると共に見栄えを良くすることができるので好ましい。しかしながら、このことは膜2と枠部材3の固定方法がインサート成形や二色成形などに限定されることを意味しない。

インサート成形による場合には、例えば図8Aに示すように、上金型14および下金型15より成る枠部材3を射出成形するための型16に対して、熱収縮性を有する膜2を無張力下にあるいは身体支持構造物1として必要な張力より弱い張力をかけた状態のままでインサートとして配置してから型を閉じ、膜2の周縁が収められたキャビティ18に熱可塑性樹脂を射出して固化させることにより枠部材3の成形を行う。キャビティ18内にある膜2の周縁部分は、射出成形された枠部材3に巻き込まれるようにして、あるいは射出成形品の表面に付着するようにして、射出成形品即ち枠部材3と固着されて一体化される。例えば、メッシュから成る膜2の場合、枠部材3の射出成形時にメッシュの織地の糸と糸の隙間を樹脂が通過して膜2を覆うようにキャビティ18内を樹脂が流れる。これによって、予め形成されている膜2が、射出成形により形成される枠部材3に一体化され固着される。したがって、枠部材を成形する際に、膜2を引っ張って必要な張力を予め付与しておく装置を必要とせず、製造装置を簡素化することができる。また、膜2の縁がキャビティ18内からはみ出すことなく枠部材3と一体化されるので、枠部材3から膜2を切り取るトリミング作業が不要になり、作業工程数を削減できるし、身体支持構造物1を製造するのに必要な膜2の量を減らすことができる。

キャビティ18内における膜2の固定は、必須では無く、場合によっては上下の金型14,15の型当り面部分でメッシュを挟んだだけとすることも可能であるが、例えば図8Aに示すように枠部材3に上下方向の貫通孔19を形成するための中子ピン17などが存在する場合にはその中子ピン17を利用して膜2の縁を突き刺して仮固定したり、膜2を固定するための中子ピンや突起などの固定手段を別途準備したり、溶融樹脂の射出ゲート20の位置を工夫してキャビティ18内に噴き出される溶融樹脂そのものの噴射力で型面の一方に押しつけることにより固定させるようにしても良い。

ここで、キャビティ18の中央に膜2を配置する場合、例えば上型14と下型15の双方から突出する図示していない中子ピンによって膜2を挟持してキャビティ18内で膜2を浮かせて固定させる場合などには、膜2を枠部材3の中に完全に埋設させて一体化した図6に示すような一層構造の枠部材3をインサート成形で得ることができる。

他方、インサート成形の際にキャビティ18内の膜2を固定しておかない場合や型面に押しつけている場合には、枠部材3の表面に膜2が露出してしまうことがある。この場合、デザイン上の要請などから、枠部材3と膜2との接合部分3Cをカバー部材3Bで覆い隠して見栄えを良くすることが望まれる。また、一次成形品3Aの上にカバー部材3Bを成形して一体化し二層構造の枠部材3とする場合には、膜2と枠部材3との接合強度を補強できる。しかも、二色成形によれば、図5A,5Bに示すように、膜2を固定した枠部材3の一次成形品3Aとその外側を覆うカバー部材3Bとの複数層構造とすることにより、見栄えの良い膜2と枠部材3との一体成形品が簡易に得られる。このとき、カバー部材3Bはオレフィン系樹脂製あるいはポリエステル製とすることが、身体支持構造物1の全体をそのままリサイクル可能とする上で好ましい。また、カバー部材3Bを例えばエラストマ性の樹脂製にすることにより、硬質の部材が使用者の体に直接当たることを防ぎ、使用者が痛みや不快感を与えることを防止し、使い心地を良好にできる。一方、カバー部材3Bを例えば硬度の高い樹脂製にすれば、身体支持構造物1としての強度を高めることができる。

枠部材3へのカバー部材3Bの形成は、例えば図9A〜9Cに例示する二色成形、あるいは図10に例示するスライド型を使ったインサート成形と連続した二色成形によって行われる。二色成形による場合は、図9Aに示すように、別の金型を使ったインサート射出成形によって得られた枠部材3と膜2が一体化された加熱処理前の一次成形品3Aを、例えばピン22などを利用して位置決めしながらカバー部材3Bの射出成形用金型21のキャビティ23に収め、一次成形品3Aの接合面3cの周りに、PETやPPといった熱可塑性樹脂を射出すると(図9B参照)、カバー部材3Bが二層構造の枠部材3に一体化された図9Cあるいは図5Bに例示するような身体支持構造物1を得ることができる。また、図10に示すような、二次成形用のキャビティ27を形成可能なスライドブロック26を備えるスライド型24,25を利用して、枠部材3の射出成形とカバー部材3Bの射出成形とを型24,25を開かずに連続して実施することも可能である。この場合、枠部材3を射出成形するときは、スライドブロック26を内側の閉位置に固定してからキャビティ内へ樹脂を射出して枠部材3を成形する。その後、スライドブロック26を外側の開位置に後退させて固定し、枠部材3とブロック26との間でキャビティ27を作りだし、そこへ樹脂を射出して図10に示すようにカバー部材3Bを成形する。また、カバー部材3Bの材料として熱硬化性樹脂を採用し、圧縮成形やトランスファー成形によりカバー部材3Bを成形するようにしても良い。

尚、上述の例では膜2をインサートとして枠部材3を射出成形した後に、別の型に移してあるいは同じ型内でスライドブロック26をシフトさせてカバー部材3Bを二色成形で枠部材の周りに一体成形するようにしているが、これには特に限られず、枠部材3の射出成形の後に、上型だけを取り替え、枠部材と膜2との一体成形品をインサート部材としカバー部材3Bを連続して枠部材の周りに一体成形するようにしても良い。また、加熱処理を行った後の枠部材と膜2との一体成形品をインサート部材とした二色成形によりカバー部材3Bを成形するようにしても良い。更に、図示していないが、予め射出成形等により作製したカバー部材3Bを、枠部材3と膜2との接合面3cを覆うように、ビス止めや接着あるいは溶着により固着して一体化しても良い。また、カバー部材3Bは、少なくとも膜2と枠部材3の固着部分3Cを覆っていれば良いが、場合によっては例えば図5Bに示すように枠部材3の上面から外側面まで全体を覆うように一体化しても良い。この場合、枠部材3と膜2との接合部分3cを隠して外観を良好にできる上に、身体支持構造物1があたかも一部材であるかのような外観を呈するので見栄えを良くすることができる。

また、膜2と枠部材3とは、図示していないが、枠部材3を身体支持面4に沿って厚み方向に2分割したものを別々に射出成形し、それらの間に膜2の周縁を挟み込んでから分割したフレームを接着やねじ止め、嵌合あるいは縫製等により一体化することにより、枠部材と膜とを一体化するようにしても良い。この場合、各半割部材の分割面に嵌合部や細かい凹凸を設ければ、膜を挟み付ける力をより強くすることができる。

以上のようにして枠部材3に弛んだ状態で固定された膜2は、その後の加熱処理によって所望の張力が付与される。この加熱処理は、枠部材3の変形を招かずに膜2のみを熱収縮させる必要がある。例えば、熱可塑性材料によって構成される枠部材3の場合、その溶融温度よりも低温の状態に維持しながら膜2を熱収縮するに十分な温度に加熱することによって行われる。

加熱処理を実施する張力付与装置としては、枠部材の内側の膜が平坦な面が大部分を占める座のような形態では、図12及び図13に示すような、電熱ヒーターを熱源とする加熱板を利用する張力付与装置の使用が手軽である。一方、曲面が大きくあるいは変化に富んで形作られた枠部材3によって囲われた加熱前の膜は大きく波打ったように弛んだ状態となるため、加熱した板を膜に接近させ更には押し当てることによって膜を加熱しようとする場合、局部的な加熱によって収縮に斑が生じて色が濃くなったり薄くなったりすることにより色むらが発生してしまう虞がある。そこで、三次元的な曲面が比較的多く占める背の場合には、図14〜図17に示すような熱風あるいは過熱蒸気のような熱流体を吹き付ける非接触加熱方式の張力付与装置の利用が好ましい。

まず、図12及び図13に示す加熱板を利用する張力付与装置について説明する。この張力付与装置は、シリンダ装置36,38並びに昇降ガイド手段37,39によって昇降自在に架台30に取り付けられた上下一対の加熱板34,35の間に、受け治具31によって膜状支持枠3が拘束された身体支持構造物1をセットし、加熱板34,35を接近させて加熱するようにしたものである。膜状支持枠3を拘束する受け治具31は、ガイドレール33に沿って身体支持構造物1の取り外し位置と加熱位置との間を移動する送りテーブル32に搭載されている。そこで、身体支持構造物1は、加熱板34,35の手前側の取り外し位置で送りテーブル32の上の受け治具31にセットされ、上下の加熱板34,35の間の加熱位置に送り込まれて加熱処理が行われ、加熱処理後に上下の加熱板34,35の退避を待ってから取り出し位置まで後退させてから取り出される。

ここで、加熱板34,35は、好ましくは上から見て枠部材3の内側の輪郭形状よりも小さな相似形状を成し、かつ側方から見て熱収縮によって張り詰める膜2とほぼ平行となる加熱面を有している。例えば、枠部材3の前部5aが湾曲し、それに沿って膜2の前縁部付近2aも下方に湾曲した図1の実施形態の椅子の座5の場合、上から見て四隅が丸まった矩形状に形成され、側方から見て全体に平でかつ座5の前縁部5aの曲面部分2aに対応する湾曲部34a,35aを有する加熱面が形成されている。加熱板34,35には、図示していないが、温度分布が均一に保たれるように配慮されてヒーターが備えられている。尚、本実施形態では、加熱板を膜2の表面側と裏面側との双方に配置して膜2の両面を同時に加熱・収縮させることにより、歪みや反りを防ぎかつ短時間で膜2に必要な張力を付与できようにしているが、場合によっては加熱板34,35のいずれか一方のみを配置し、他方側には熱反射板等を配置するようにしても良い。また、加熱板34,35の形状は枠部材3の内側の輪郭形状や曲面の形状に左右されることから、図示の形状に限定されない。

また、枠部材3に加わる温度を当該枠部材3の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら膜2を加熱するため、例えば図8Bに示すように、加熱板34,35と枠部材3との間に空隙L1を設けることにより枠部材3に加熱板34,35の熱が伝わり難くしたり、上側の加熱板34の周縁部から膜2に向かって突出する遮熱板40を設けて加熱板34の熱が自然対流伝熱によって枠部材3に伝わってしまうことを防ぐようにしても良い。特に、加熱板に遮熱板40を備える場合、加熱板34の周縁から枠部材3側に熱が逃げてしまうことを抑えるのと同時に、周囲からの冷気の進入も遮熱板40が防ぐので、遮熱板40の囲いの内側の加熱板34の温度を均一にでき、膜2を均一に加熱できる。

膜2の加熱は、膜2が加熱板34,35との直接接触により溶けてしまったり、あるいは加熱斑に伴ってメッシュ模様に斑が生じてしまうことを未然に防ぐため、膜2から離れた位置より行なうことが好ましく、より好ましくは膜2の収縮変形に追従するように間隔を調整可能とすることである。この場合、加熱板34,35と膜2との距離をなるべく近づけて、短時間で膜2に必要な張力を付与できる。そこで本実施形態では、膜2に向けて伸縮するシリンダ装置36,37を用いて、膜2の弛みが突出している側の加熱板、図8Bに示すような場合には膜2の表面側に配置される上側加熱板34を昇降可能に支持している。勿論、膜2の裏面(内)側に弛むような場合には、下側加熱板35をシリンダ39で昇降させるようにしても良い。このシリンダ装置39は、図8Bに示すように、膜2が弛んでいる加熱初期の段階では、膜2と触れないように膜2から離れた位置で加熱板34,35を支持し、加熱が進み膜2の弛みが除去されるに従って、図8Cに示すように、加熱板34,35を膜2に近づけるように伸長する。例えば本実施形態では、熱収縮後に膜2が形成する面と上側加熱板34の加熱面との距離が、40mm→30mm→15mmと段階的に変化するように、上側加熱板34を移動させるようにしている。尚、図12,13に示す本実施形態の装置は、上側加熱板34と下側加熱板35の双方を昇降させるようにしているが、これに特に限られるものではなく、図8Bの例のように、上側加熱板34のみを移動させるようにしたり、あるいは下側加熱板35のみを移動させるようにしても良い。尚、加熱板34,35の移動の制御、即ちシリンダ39の伸縮の制御は、通常温度センサーや距離センサーなどの各種センサーやタイマーなどを利用して自動制御されているが、リレーシーケーンス制御や手動制御によっても良い。

膜2としてポリエステル糸12とエラストマ性ポリエステル糸13との織物から成るメッシュを採用した本実施形態の場合、膜2を加熱する際の温度および加熱時間は、以下に例示する範囲に制御される。即ち、下側加熱板35のように膜2にほぼ接触する加熱板34,35の場合の温度は、例えば120〜250℃程度の範囲とすることが好ましく、180〜190℃程度の範囲とすることがより好ましい。上側加熱板34のように膜2と非接触となる加熱板34,35の場合の温度は、例えば180〜300℃程度の範囲とすることが好ましく、190〜240℃程度の範囲とすることがより好ましい。加熱時間は例えば40〜120秒程度とすることが好ましい。また、膜2の加熱中における枠部材3の温度は常温または常温に近い温度であることが望ましく、また、当該加熱中における膜2と枠部材3との温度差は5〜200℃程度あることが好ましく、150℃以上あることがより好ましい。但し、最適な加熱条件は選択される膜2の素材等によって変わり得るものであり、必ずしも上記の条件には限定されない。

次に、図14〜図17に熱流体を利用した張力付与装置の例を示す。この張力付与装置は、身体支持構造物1の膜状支持枠3を拘束する受け治具41と、熱流体をスポット的に膜2に向けて吹き出すダクト42と、受け治具41あるいはダクト42のいずれかを搭載しx軸方向とy軸方向とに送る軸送り機構43,44を備えるXYテーブル45と、受け治具41とダクト42及びXYテーブル45とを収容する加熱室46を区画すると共に身体支持構造物1を搬入・搬出するための開閉可能なワーク出入り口47と、膜2を加熱した後の熱流体を加熱室外へ排気するための排気口(ダクト)53とを有する炉体40と、熱流体を発生させダクト42を介して加熱室46へ熱流体を供給する熱流体発生源49とを備え、熱流体発生源49で生成した熱流体を加熱室46の天井に固定したダクト42から下へ向けて吹き出す一方、加熱室46の隅に配置した排気用ダクト53から炉内の熱流体を炉体40の外へ排気するようにしたものである。因みに、熱流体としては、熱風あるいは過熱蒸気の採用が好ましく、より好ましくは熱風の使用である。尚、炉体40は断熱カバーで覆われている。

熱流体として熱風を採用している本実施形態の装置の場合、熱風は、熱流体発生装置49の出口温度で約220℃程度となるように調整されて供給され、ダクト42から190℃から200℃程度に温度が下がった状態で吹き出れるように設けられている。そして、このダクト42は炉体40の中央、即ち加熱室46のXYテーブル45の座標軸原点に位置するように固定されており、受け治具41によって位置決めされた身体支持構造物1の膜状支持枠3に対して、相対的に吹きつけ位置を移動させるように設けられている。尚、この装置では押し込み通風によって排気用ダクト53から膜の加熱に使われた後の熱風が炉外に排出される。尚、熱風による加熱は、200℃、45秒程度とし、熱風を吹き出すダクト42と枠部材3との最接近時における隙間が約30mm程度に収められるように制御されている。

XYテーブル45は、三次元形状の枠部材3を位置決めのために保持する受け治具41を備え、直交する二方向の送りねじ機構43,44によって、熱風を吹き出すダクト42と膜2との間に縦方向(Y軸方向)と横方向(X軸方向)への相対移動を自在に与えられるように設けられている。因みに、各送りねじ機構43,44のねじ軸は炉体40の外に設置されている駆動モータ50,51によってそれぞれ回転駆動される。また、枠部材3を位置決めのために保持する受け治具41は、例えば枠部材3をその周りから90°置きに四方から把持する4箇所の爪から成り、枠部材3をワンタッチで簡単に装着可能としている。

炉体40の正面には、身体支持構造物1を搬入・搬出するためのワーク出入り口47が備えられ、その手前に装備されているエアシリンダ52で昇降駆動可能な扉48によって開閉可能とされている。通常、扉48の開閉と熱風の吹き出しとは連動するように制御され、身体支持構造物1が受け治具41にセットされて扉48が閉じられた後に熱風が吹き出し、所定の加熱タクト時間の間だけ吹き出し続け、扉48が開けられる前に熱風吹き出しを停止するか、その吹き出し量を絞るように設けられている。

ここで、膜2とダクト42との間の相対移動は、図18に示すように、膜(図示省略)の端から端までの縦方向移動と、横方向へのトラバースとを交互に繰り返しながら、膜の中央から開始して一方の端、さらに他方の端へと移動するように、XYテーブル45の制御により与えられる。より具体的には、図18に丸で囲まれた数字1−9で示される順序で熱風を吹き出す位置即ちダクト42の位置が相対的に移動させられることで、枠部材3の内側の膜の全域を加熱しながら全体的に収縮させて張力を付与するようにしている。尚、図18において記号△で示される側が作業者側、即ち扉48の側となる。

以上のように構成された張力付与装置によると、ワーク出入り口47の扉48を開けて、身体支持構造物1を加熱室46内の受け治具41の上にセットし、扉48を閉じるだけで加熱処理を開始できる。加熱処理は、身体支持構造物1の膜状支持枠3を拘束した状態で、スポット的に吹き出される熱風または過熱蒸気の吹きつけ位置を縦方向移動と横方向移動とを交互に繰り返しながら中央から周辺へ相対移動させることにより、膜の全域に対して行われる。これにより、三次元形状の枠部材3に弛んだ状態で固定された膜2は、きれいに張り詰め、尚且つ膜の縦方向と横方向との熱収縮に伴う張力の差によって枠部材の形状に沿った三次元的な身体支持面4を形成する。

尚、加熱処理は、上述の張力付与装置のように受け治具41に取り付けて拘束しながら行う必要はなく、膜2の熱収縮に必要な温度よりも枠部材3の溶融温度が十分に高い場合には、型から取り出した張力付与前の身体支持構造物1を遠赤外線炉などの連続式あるいはバッチ式の加熱炉に流し、炉内雰囲気によって枠部材3における温度を枠部材3の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら膜2を加熱し、膜2を熱収縮させて該膜2に身体支持構造物1として必要な弾力性を発揮させる張力を与えるようにしても良い。因みに、炉内温度は、例えば約120〜250℃の範囲、より好ましくは約180〜190℃の範囲であり、加熱時間は例えば40〜120秒程度とすることである。また、図示していないが、枠部材3の部分だけを覆う断熱性のケースを利用し、膜2の部分だけを露出させた状態で加熱炉で加熱処理すれば、枠部材3が拘束され尚且つ加熱されないように遮熱されながら膜2のみを加熱することが可能である。更には断熱性ケース内に冷却水が流れる冷却水路を形成して、枠部材3の周囲の温度を積極的に下げるようにしても良い。

次に、図1〜図4に示す椅子の座について、図12及び図13に示す張力付与装置を用いて材料評価を行った。膜2の張力付与処理における加熱時間は、加熱板温度200℃で30秒以下であると斑が発生することから好ましくなく、45秒程度が適当であった。45秒を超えて長過ぎても生産性を悪化させる。また、メッシュ張り張り具合は、2kgのおもりを載せたときの沈み込み量が12mm以下であることが必要とされるが、200℃、45秒の加熱の場合、6〜7mm程度の範囲に収まった。また、加熱板の温度は、220℃であると、35秒の加熱時間で膜に強く当たっているところの弾性糸が変色するため、220℃未満、好ましくは200℃〜190℃の範囲にすることであることが判明した。

また、図1に示す椅子の座に用いたメッシュを評価対象試料とするメッシュ収縮率評価試験を行った。ここで、評価対象試料Aは、太さ300デニールのポリエステル糸を撚り合わせて成る2本のストランドから成る経糸10と緯糸11でメッシュ状に織られた織物で構成され、さらに経糸10と緯糸11とで織られるメッシュの目9を通過するように縦方向と横方向の双方に太さ1850デニールのエラストマ性ポリエステル糸のモノフィラメントを、格子状に配置するように織り込んだものである。評価対象試料Bは、図1に示す椅子の座に用いたものであり、図2に示すように、太さ300デニールのポリエステル糸を撚り合わせて成る5本のストランド12から成る経糸10と同ポリエステル糸の2本のストランド12と3本の太さ1850デニールのエラストマ性ポリエステル糸13のモノフィラメントから成る緯糸11でメッシュ状に織られた織物で構成され、さらに前縁部2aではメッシュの織目・編目が詰められたものである。

これら評価対象試料A及びBを膜とした座を作製し、図12及び図13の装置を用いて、加熱板温度200℃で45秒加熱して、膜を張った。この結果、評価対象試料Aについては前縁部の曲面部分において枠部材の両側辺から離れるに従って曲面の曲率が漸次変化し、横方向の中央で最も凹むような反り返った曲面を形成した。これに対し、評価対象試料Bについては、前縁部の曲面部分は横方向に全く凹みの無い、枠部材の両側辺は勿論のこと、そこから離れた横方向の中央付近でも同じ曲率の湾曲面を形成した。

そこで、この評価対象試料A,Bについてのメッシュ収縮率評価試験を行った。評価試験は、座の前縁部分2aの部位のメッシュであり、それぞれ約100×100mmの3つのサンプル片を作成し、190℃の熱風を110秒かけることによって行った。そして、熱風を当てる前と後との間での収縮率を求めた。評価試験の結果を表1に示す。

この結果から、評価対象試料Aについては、横の収縮率に対して縦の収縮率はほぼ87%程度と、縦の収縮率と横の収縮率とがほとんど変わらなかった。

座5の前部付近5aの湾曲部分においては、横方向の糸は枠部材3の側方の辺3aの間を直線的に結び、深さ方向(Z軸方向)の変位量が0であるのに対し(図4参照)、縦方向の糸は深さ方向(Z軸方向)の変位量が大きく(図3参照)、横方向の糸の存在がなければ両端を結ぶ最短距離を斜めに直線的に張られこととなる。このため、縦方向と横方向との収縮率がほとんど変わらない評価対象試料Aの場合には、枠部材3の側方の辺3aの近くでは横方向の糸の張りに縦方向の糸が制約されて横方向の糸の並びに沿って張られて枠部材3の前部付近5aの湾曲に応じた曲線を描くが、横方向の中央付近では縦方向の糸の張力の影響を最大限に受けて、縦方向の両端を結ぶ斜めの直線に近づくこととなる。結果として、膜2の前縁部付近2aの曲面は、枠部材3の側方の辺3aの近くでは湾曲部5aに対応して膜2が曲面を形成しながらも、側辺3aから離れるに従って漸次周辺よりも曲率半径を大きくして行って緩やかな斜面に近づき、横方向の中央付近で最も凹んだ平らな、全体として反り返ったような面を形成したことが判明した。

これに対し、一方の側方の辺3aから他方の側方の辺3aの間で、同じ曲率の湾曲面が形成された評価対象試料Bについては、縦の収縮率と横の収縮率とが大きく異なり、横の収縮率に対して縦の収縮率はほぼ40%程度であった。結果として、枠部材3の側方の辺3aの間に張られる横方向の糸で形成される面に沿って縦方向の糸も張られるので、膜2の前縁部付近2aの曲面は、枠部材3の側方の辺3aの近くは勿論のこと、側辺3aから離れた横方向の中央付近でも同じ曲率の湾曲面を形成した。このことは、収縮率の高い方向の膜の張り縦方向の収縮率よりも横方向に張られた糸、即ち深さ方向(Z軸方向)の変位量が小さい方向の熱収縮率が深さ方向の変位量が大きい方向の熱収縮率よりも高い場合には、深さ方向の変位量が小さい方向の形状が支配的となることを意味している。

このことから、膜2の縦方向と横方向との収縮率の差が大きいほど、枠部材3のY軸方向あるいはX軸方向のいずれか一方の辺の形状に沿った身体支持面4を構成できる。即ち、枠部材3の形状を意図した三次元形状に近づけることにより、身体支持面4の形状をより好ましい形状に近づけられることが判明した。但し、メッシュ素材に要求される収縮率の最適値は、椅子の形状や膜2が形成する面に要求される弾性力などによって変わり得るものであり、必ずしも上記例には限定されない。

なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述の実施形態では、身体支持構造物として主に座や背として構成したものを例に挙げて本発明を説明したが、これに特に限定されるものではなく、ヘッドレストや肘掛けなどにも適用可能であることは言うまでも無い。また、本発明が適用できる椅子は、一般用椅子、事務用椅子、作業用椅子、看護用椅子等の椅子全般であることは勿論である。さらに、本発明にかかる椅子は、身体支持構造物1は、そのままで椅子の座や背凭れ等として使用することができるが、場合によってはその上から表皮部材を取り付けたり、クッション材などを併用するようにしても良い。

1 身体支持構造物 2 膜 2a 膜の前縁部付近の曲面 3 枠部材 4 身体支持面 5 座 5a 枠部材の前縁部付近の湾曲部 6 背 8 椅子 10 経糸 11 緯糸 12 ポリエステル糸(ストランド) 13 エラストマー糸(モノフィラメント) 34,35 加熱板 42 熱流体を噴き出すダクト

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