【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、病人用ベッドマットの改良に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来の病人用ベッドマットとして、例えば特開平7−8522号公報に開示されたものがある。 ここに開示された病人用ベッドマットはマット素材を縦に二分割し、この二分割にしたマット素材をそれぞれ個別に外袋に包んで中間マットを形成し、この外袋の合わせ面にマジックテ−プ(商品名)を取りつけて、分割した中間マットを結合して病人用ベッドマット(以下完成マットという)にしている。 【0003】このように、完成マットを縦に二分割することにより、完成マットの上に寝ている病人を、片側の中間マットの上に寝返りさせるように移動し、病人が寝ていない側の中間マットを分割面から切り離して取りはずし、次に病人を逆の方向に寝返りさせて、中間マットを取り除いた側に移動させ、切り離されて残っている側の中間マットを取り除いて病人を寝返りさせる。 これにより、完成マットの上に寝ている病人を、完成マットを取り除いた床の上に移動して寝かせることができる。 したがって、完成マットの取り替えや病人を入浴させる時などにおいて、介護人の労力を軽減するようにしている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記従来の完成マットは、分割面をマジックテ−プ(商品名)などの結合手段によって結合していたので、次のような改良すべき問題がある。 すなわち、完成マットの縦方向の長さは略二メートルもあるので、この大きさの完成マットを合わせ面から切り離すには相当な力が必要になり、取扱上不便であるという問題がある。 また、マット素材を小さく分割して、分割したマット素材をそれぞれ外袋に包んで中間マットにし、それを結合部材で結合することも考えられるが、その都度分離し結合するのは手間がかかり問題である。 また、この労力を軽減するために、合わせ面から簡単に分離できるようにした場合には、病人が寝ている間に、中間マットが分離してしまうおそれがあり、若しも分離した場合には病人の寝ている姿勢が不自然になって、病人に無理な負担をかけるという問題がある。 【0005】また、マット素材は外袋で包まれているだけであるので、次のような改良すべき問題がある。 通常完成マットの上にはシーツをかけて、完成マットが汚れないようにするのであるが、寝たきり老人などでは寝たまま排泄物を排泄することがある。 このような場合には、シーツを透過して外袋を汚すことになる。 そこで、 外袋からマット素材を出して、外袋を清掃するのであるが、マット素材は滑りが悪く外袋からマット素材を出すのが困難であるという問題がある。 また、排泄物がマット素材まで透過したような場合には、マット素材をきれいにするのは極めて困難であり、かつ、乾燥などに時間がかかるので、病人に不測の負担をかけるという問題がある。 【0006】本発明は、マット素材までは排泄物が透過しないようにして、短時間に完成マットの清掃を可能にして、病人の負担を軽減すると共に、病人を移動して完成マットを取り外したり敷いたりする看護人の労力を軽減した、完成マットを提供するものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための請求項1の記載から把握される手段は、病人用ベッドの上に敷く完成マットにおいて、マット素材を複数に分割し、該分割したマット素材をそれぞれ個別に中袋で包んで中間マットを形成し、該中間マットを組み合わせて外袋に包んで、中間マットを一体にし、完成マットにしたことを特徴とする。 【0008】次に、請求項2の記載から把握される手段は、中袋を滑りの良い素材で形成したことを特徴とする。 【0009】次に、請求項3の記載から把握される手段は、中袋を滑りが良く、かつ、防水加工を施した素材で形成したことを特徴とする。 【0010】次に、上記各請求項から把握される本発明によって、課題がどのように解決されるかについて説明する。 先ず、請求項1の記載から把握される本発明において、マット素材を複数に分割し、この分割したマット素材をそれぞれ個別に中袋で包んで中間マットを形成し、この中間マットを組み合わせて外袋に包んで、中間マットを一体にしたので、外袋に包まれた中間マットは各個分離独立した状態にあり、かつ、中袋と外袋の二重袋構造になる。 【0011】次に、請求項2の記載から把握される本発明において、中袋を滑りの良い素材で形成することにより、外袋からの中間マットの出し入れが容易になる。 【0012】次に、請求項3の記載から把握される本発明において、中袋を滑りが良く、かつ、防水加工を施した素材で形成することにより、外袋からの中間マットの出し入れを容易にすると共に、マット素材への排泄物などの透過を防止する。 【0013】 【発明の実施の形態】次に、上記各請求項の記載から把握される本発明の実施の形態について説明する。 まず、 請求項1の記載から把握される本発明の実施の形態は、 図5に示すように、病人用ベッド1の上に敷く完成マット2であって、図3および図4に示すように、マット素材3、5のように複数に分割し、この分割したマット素材3、5をそれぞれ個別に中袋4、6で包んで図1に示すように中間マット7、8を形成する。 そして、図1に示すようにこの中間マット7、8を組み合わせて外袋9 に包んで、中間マット7、8を一体にすることにより、 図2に示すような完成マット2にする。 【0014】次に、請求項2の記載から把握される本発明の実施の形態は、図3および図4における中袋4、6 を滑りの良い素材で形成する。 【0015】次に、請求項3の記載から把握される本発明の実施の形態は、図3および図4における中袋4、6 を滑りが良く、かつ、防水加工を施した素材にする。 【0016】以下本発明の実施の形態を更に詳しく説明する。 図1に示す実施の形態はマット素材を四分割にした例を示す。 図3および図4に示すマット素材3および5は、発泡ウレタンなどで成形加工したものである。 そして、この四分割したマット素材3および5をそれぞれ独立に中袋4および6で包み、図1に示すように中間マット8と7にする。 中袋4および6は滑りがよく、かつ、通気性のよい素材、例えばナイロンをタフタ加工した布地(ナイロンタフタ)などを使用する。 また、この中袋4および6を防水加工する。 【0017】あるいは、中間マット7、8を更に外袋9 に入れるので、中袋4および6の肌触りが、直接伝わらないことから、この中袋4および6にビニール製の袋を使用してもよい。 これにより、マット素材3、5への排泄物の透過を確実に防止し、かつ、滑りもよい。 また、 中間マット7、8は分割されていて通気性があり、かつ、中袋4、6と外袋9との間に空気層ができるので、 中袋4、6にビニール製の袋を使用しても、通気性の点で問題はなく、上記空気層によって保温性もよい。 【0018】図1において、中袋4および6はマット素材3と5の形状に合わせた形に縫製されているが、この中袋4および6を大きめに作り、マット素材3および5 の出し入れを容易にすると共に、外袋9に中間マット7、8を入れた時に、中間袋4、6の余分な部分を中間マット7と8、7と7、8と8の合わせ面に充填物として作用させ、マット2の外形に合わせて縫製した外袋9 に中間マット7、8を詰めた状態で、外袋9の外側から合わせ面の感触をなくすようにしてもよい。 また、外袋9にも防水加工を施してもよい。 外袋9に防水加工を施した場合には、外袋9と中袋4、6により二重に防水されるので、排泄物がマット素材3、5に透過するのを確実に防止することができる。 【0019】図1、図2および図5において、完成マット2には排泄口10が設けられており、病人が寝たきりで排泄できるようになっている。 また、介護人の助けによって自分で排泄できる程度の病人の場合にはこの排泄口 10は不要であるので、図2に示すように排泄口10を蓋するための排泄口蓋11が設けられている。 また、図1に示すように中袋4と6にはファスナ12があり、マット素材3、5が出し入れできるようになっている。 【0020】また、図2に示すように外袋9にもファスナ12が設けられており、このファスナ12は外袋9の両側面に設けられていて、両側から中間マット7、8の出し入れができるようになっている。 図6において、完成マット2は背の部分2a と床の部分2b に別れており、背の部分2a が所定の角度で起倒動できるようになっている。 この背の部分2a の起倒動を可能にするために、外袋9は背の部分2a と床の部分2b との間の繋ぎ目9a で、外袋9の表面で繋がった状態で仕切られており、図に示すように表面下では分離された状態になっている。 【0021】次に、作用について説明する。 先ず、排泄物の透過について説明すると、図3および図4において、マット素材3および5を中袋4および6に入れて、 図1に示す中間マット7および8とし、この中間マット7および8を外袋9に入れて、完成マット2を形成するので、外袋9と中袋4および6の二重構造になり、排泄物がマット素材3および5まで透過しないようにすることができる。 【0022】また、中袋4および6を防水加工した場合には、マット素材3および5への排泄物の透過を確実に防止することができる。 そして、上記のように二重構造にすることにより、中袋4および6にビニール袋を使用しても、外袋9によってビニール袋の肌ざわりが感じられないことから、中袋4および6にビニール袋の使用が可能になり、マット素材3および5への排泄物の透過を確実に防止することができる。 更に、外袋9を防水加工した場合には、中袋4および6への排泄物の透過を防止し、マット素材3および5への排泄物の透過を更に確実に防止することができる。 【0023】次に、病人を移動してマットを取り外したりマットを敷いたりする時の作用について説明する。 図3および図4において、マット素材3および5を中袋4 および6に入れて、図1に示す中間マット7および8とし、この中間マット7および8を外袋9に入れて、完成マット2を形成するので、外袋9に入れられた中間マット7および8は互いに結合されない状態で分離独立しており、外袋9から中間袋7、8を容易に取り出すことができ、かつ、入れることができる。 【0024】そして、中袋4および6に滑りの良い素材を使用(ビニール袋も滑りが良い)することにより、外袋9から各個独立している中間マット7および8を出したり、外袋9に入れたりする作業を容易に行うことができる。 【0025】図5および図6を用いて具体的に説明すると、例えば病人Mを入浴させる場合に、病人Mを図のように分割されている中間マットC、Dに寝返りさせた後に、外袋9のファスナ12をあけて、中間マットAとBを外袋9から取り出す。 この中間マットA、Bの取り出しにおいて、中間マットA、Bは分離独立していて小さくなっており、かつ、中袋4と6は滑りがよいので、その取り出しを容易に行うことができる。 次に、中間マットA、Bを取り出した後の外袋9を中間マットC、D側に寄せ集めて、病人Mを逆の方向に寝返りさせ、病人Mをベースマット13の上に載せ、中間マットC、Dを外袋9 から出さないでそのまま外袋9と共に、ベースマット13 から取り除き、病人Mをベースマット13の上に寝かせる。 【0026】そして、図6に示すように背の部分2a を起こして病人の上半身を立てた後に、図5に示す下降スイッチSWを押して、ベルト14にて支持されている枠体16 を浴槽15内に降ろすことにより、ベースマット13に病人Mを寝かせた状態で入浴させる。 入浴終了後に枠体16を元の位置に上昇して、ベースマット13と病人Mを温風で乾燥した後に、背の部分2a を倒して中間マットC、D を元の位置に載せ、病人Mをその上に寝返りさせた後に、外袋9をベースマット13の上に伸ばし、中間マットA、Bを外袋9の中に入れて、病人Mを寝返りさせる。 このように、病人Mを寝返りさせるだけであるので、看護人の労力を軽減することができる。 【0027】また、完成マット2を清掃したりする時も同様に、病人Mを寝返りさせながらベースマット13から完成マット2を取り除くことができる。 そして、通常は完成マット2にはシーツがかけられていて、そのシーツを洗濯または取り替えればよいのであるが、若しも排泄物がシーツを透過して外袋9が汚れた場合には、中間マット7、8を外袋9から取り出して外袋9をきれいにすればよい。 また、中袋4、6まで排泄物が透過して汚れた場合には、排泄物はマット素材3、5までは透過しないので、中間マット7、8の状態で汚れを拭き取ればよい。 【0028】また、完成マット2は外袋9と中袋4、6 とで二重構造になっているので、中袋4、6に直に接することはなく、中袋4、6の汚れを拭き取るだけでも違和感はない。 また、中間マット7、8を小さく分割しているので、汚れている中間マットのみをきれいにすればよい。 例えば一番汚れる可能性が高い排泄口10の部分を、図2に示すように更に中間マットA′とD′に分割し、この中間マットA′とD′をきれいにするようにしてもよい。 これにより介護人の労力を更に軽減することができる。 【0029】以上の説明は、四分割および六分割について説明したが、中袋4、6を滑りやすい素材にして、外袋9への出し入れを容易にした点、中間マット7、8を小さく分割して外袋9への出し入れを容易にすると共に、洗濯などを容易にした点、については、マット素材を縦に二分割にした場合も同様の作用がある。 【0030】 【発明の効果】以上詳述した通り請求項1の記載に基づいて、発明の詳細な説明から把握される本発明によれば、マット素材を複数に分割し、この分割したマット素材をそれぞれ個別に中袋で包んで中間マットを形成し、 この中間マットを組み合わせて外袋に包んで完成マットにして、外袋に包まれた中間マットは各個分離独立した状態にしたので、外袋への中間マットの出し入れを容易にして、病人を移動しながらマットを取り外したりマットを敷いたりする看護人の労力を軽減すると共に、中袋と外袋の二重構造にすることにより、マット素材までは排泄物が透過しないようにして、短時間にマットの清掃を行うことができ、病人の負担を軽減し、看護人の労力を軽減することができる。 【0031】次に、請求項2の記載に基づいて、発明の詳細な説明から把握される本発明によれば、中袋を滑りの良い素材で形成し、外袋からの中間マットの出し入れを容易にしたので、病人を移動しながらマットを取り外したりマットを敷いたりする看護人の労力を更に軽減することができる。 【0032】次に、請求項3の記載に基づいて、発明の詳細な説明から把握される本発明によれば、中袋を滑りが良く、かつ、防水加工を施した素材で形成し、外袋からの中間マットの出し入れを容易にすると共に、マット素材への排泄物などの透過を確実に防止するようにしたので、外袋への中間マットの出し入れを容易にして、病人を移動しながらマットを取り外したりマットを敷いたりする看護人の労力を軽減すると共に、マット素材への排泄物の透過を皆無にして、短時間にマットの清掃を行い病人の負担を軽減し、看護人の労力をも軽減することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施例を示す斜視図である。 【図2】図1において、外袋に中間マットを詰めて完成させた完成マットの斜視図である。 【図3】中袋にマット素材を入れて、図1における中間マット(背の部分)にする状態を示す斜視図である。 【図4】中袋にマット素材を入れて、図1における中間マット(床の部分)にする状態を示す斜視図である。 【図5】図1における完成マットを病人用ベッドに使用している状態を示す斜視図である。 【図6】図5の側面図である。 【符合の説明】 1 病人用ベッド 2 完成マット 3 マット素材 4 中袋 5 マット素材 6 中袋 7 中間マット 8 中間マット 9 外袋 |