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ポリエステル系人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品、並びにその製造方法

申请号 JP2014515656 申请日 2013-05-15 公开(公告)号 JP5651270B2 公开(公告)日 2015-01-07
申请人 株式会社カネカ; 发明人 智一 樋上; 智一 樋上; 友道 橋本; 友道 橋本; 川村 光平; 光平 川村; 彌稼 ▲頼▼實; 彌稼 ▲頼▼實;
摘要
权利要求
  • ポリエステル樹脂組成物が溶融紡糸されたポリエステル系人工毛髪用繊維であり、
    前記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部と、臭素化エポキシ系難燃剤5重量部以上40重量部以下と、酸化アンチモン1.5重量部以上7重量部未満を含み、
    前記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、
    前記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、前記ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有することを特徴とするポリエステル系人工毛髪用繊維。
  • 前記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm あたりに、針状比が2以上20以下且つ対角幅が0.05μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を50個以上有する請求項1に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。
  • 前記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、3036μm あたりに、対角幅が0.15μm以上0.8μm未満且つ針状比が0超6未満である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を300個以上有し、並びに対角幅が0.8μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を20個以下有する請求項1又は2に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。
  • 前記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm あたりに、針状比が2.5以上100/7以下且つ対角幅が0.07μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を40個以上有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。
  • 前記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm あたりに、針状比が20/7以上100/9以下且つ対角幅が0.09μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を10個以上有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。
  • 繊維中に顔料又は染料を0.1重量%以上2重量%以下含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。
  • 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維を含むことを特徴とする頭飾製品。
  • 前記頭飾製品が、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー及びドールヘアーからなる群から選ばれる一種である請求項7に記載の頭飾製品。
  • ポリエステル樹脂組成物を用いてポリエステル系人工毛髪用繊維を製造する方法であって、
    前記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部と、臭素化エポキシ系難燃剤5重量部以上40重量部以下と、酸化アンチモン1.5重量部以上7重量部未満を含み、
    前記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、
    前記ポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸し、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、前記ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有するポリエステル系人工毛髪用繊維を得ることを特徴とするポリエステル系人工毛髪用繊維の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、人毛の代替品として使用できるポリエステル系人工毛髪用繊維に関し、詳細には、人毛に近似する光沢と触感を有するポリエステル系人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品、並びにその製造方法に関する。

    従来、ヘアーウィッグ、かつら、ヘアーエクステンション、ヘアーアクセサリー、ドールヘアー等の頭飾製品に用いられる毛髪用繊維材料としては、人毛が用いられていた。 近年においては、人毛の入手が困難になったため、人毛から各種人工毛髪用繊維、例えば、モダクリル繊維等のアクリル系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維等への代替が進んでいる。 ポリエステル系繊維等の人工毛髪用繊維は、その繊維表面の光沢が強く、頭飾製品、特にヘアーウィッグ、かつら等の人毛に取り付けるような頭飾製品に用いた場合、人毛との光沢の違いにより頭髪全体として違和感があるという問題があった。

    そこで、特許文献1では、光沢を調整する方法として、ポリエステル系人工毛髪用繊維に有機粒子や無機粒子を含有させることにより繊維の艶を調整する技術が提案されている。 これは、微粒子により、繊維表面に突起を形成する技術である。

    また、人工毛髪用繊維としては、より人毛に近似した黒系の濃色が望まれている。 しかし、濃色の場合、反射光とのコントラスト差によって、光沢がより高くなりやすいため、もっと光沢を下げる必要がある。

    特開2005−42234号公報

    従来の技術において、有機粒子や無機粒子の添加によって、人毛とはかけ離れた触感のがさつきが生じてしまい、人毛に近似した光沢と触感を有するポリエステル系人工毛髪用繊維を得るのは困難であった。

    本発明は、上記従来の問題を解決し、人毛に近似した光沢と触感を有するポリエステル系人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品、並びにその製造方法を提供する。

    本発明は、ポリエステル樹脂組成物が溶融紡糸されたポリエステル系人工毛髪用繊維であり、上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部と、臭素化エポキシ系難燃剤5重量部以上40重量部以下と、酸化アンチモン1.5重量部以上7重量部未満を含み、上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、上記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、上記ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有することを特徴とするポリエステル系人工毛髪用繊維に関する。

    本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm あたりに、針状比が2以上20以下且つ対幅が0.05μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を50個以上有することが好ましく、より好ましくは、360μm あたりに、針状比が2.5以上100/7以下且つ対角幅が0.07μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を40個以上有し、さらに好ましくは、360μm あたりに、針状比が20/7以上100/9以下且つ対角幅が0.09μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を10個以上有する。 本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、3036μm あたりに、対角幅が0.15μm以上0.8μm未満且つ針状比が0超6未満である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を300個以上有し、並びに対角幅が0.8μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を20個以下有することが好ましい。 また、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維中に顔料又は染料を0.1重量%以上2重量%以下含むことが好ましい。

    本発明は、また、上記のポリエステル系人工毛髪用繊維を含むことを特徴とする頭飾製品に関する。

    本発明において、上記頭飾製品が、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー及びドールヘアーからなる群から選ばれるいずれの一種であってもよい。

    本発明は、また、ポリエステル樹脂組成物を用いてポリエステル系人工毛髪用繊維を製造する方法であって、上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部と、臭素化エポキシ系難燃剤5重量部以上40重量部以下と、酸化アンチモン1.5重量部以上7重量部未満を含み、上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、上記ポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸し、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、上記ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有するポリエステル系人工毛髪用繊維を得ることを特徴とするポリエステル系人工毛髪用繊維の製造方法に関する。

    本発明は、ポリエステル系人工毛髪用繊維において、特定の配合量の臭素化エポキシ系難燃剤と酸化アンチモンを併用して、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を形成することで、ポリエステル系人工毛髪用繊維の光沢を調整して人毛に近似させつつ、人毛に近似した柔らかい触感を保持したポリエステル系人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品を提供することができる。 また、人毛に近似した光沢を有し、人毛に近似した柔らかい触感を保持した濃色のポリエステル系人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品を提供することができる。 本発明の製造方法によれば、人毛に近似した光沢を有し、人毛に近似した柔らかい触感を保持したポリエステル系人工毛髪用繊維を得ることができる。

    図1は、本発明の実施例1のポリエステル系人工毛髪用繊維における繊維軸方向に対して平行方向の断面の走査電子顕微鏡写真(5000倍)である。

    図2は、本発明の実施例3のポリエステル系人工毛髪用繊維における繊維軸方向に対して平行方向の断面の走査電子顕微鏡写真(1000倍)である。

    図3は、本発明の実施例4のポリエステル系人工毛髪用繊維における繊維軸方向に対して平行方向の断面の走査電子顕微鏡写真(1000倍)である。

    図4は、本発明の実施例5のポリエステル系人工毛髪用繊維における繊維軸方向に対して平行方向の断面の走査電子顕微鏡写真(1000倍)である。

    図5は、本発明の実施例8のポリエステル系人工毛髪用繊維における繊維軸方向に対して平行方向の断面の走査電子顕微鏡写真(1000倍)である。

    図6は、本発明の比較例3のポリエステル系人工毛髪用繊維における繊維軸方向に対して平行方向の断面の走査電子顕微鏡写真(1000倍)である。

    図7は、本発明の比較例4のポリエステル系人工毛髪用繊維における繊維軸方向に対して平行方向の断面の走査電子顕微鏡写真(1000倍)である。

    図8は、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維の繊維軸方向に対して平行方向の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅と最大長を模式的に示した図である。

    本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル系繊維に、特定の配合量の臭素化エポキシ系難燃剤と酸化アンチモンを含ませると、酸化アンチモンが臭素化エポキシ系難燃剤同士の反応に触媒として作用し、臭素化エポキシ系難燃剤が一定の大きさの塊状(凝集体)となることで、ポリエステル系人工毛髪用繊維の表面に凹凸が形成され、人毛に近似した柔らかい触感を付与しつつ、光沢を抑制して人毛に近い光沢を実現できることを見出し、本発明に至った。

    本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、ポリエステル樹脂組成物が溶融紡糸されたものである。 上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂と、臭素化エポキシ系難燃剤と、酸化アンチモンを含む。

    上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上である。 上記ポリアルキレンテレフタレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。 上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレートを主体とし、他の共重合成分を含有する共重合ポリエステル等が挙げられる。 本発明において、「主体」とは、80モル%以上含有することを意味し、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを80モル%以上含有する共重合ポリエステルをいう。

    上記他の共重合成分としては、例えばイソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の多価カルボン酸及びそれらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチル等のスルホン酸塩を含むジカルボン酸及びそれらの誘導体、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテル等が挙げられる。

    上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルからなる群から選ばれる一種の化合物を共重合したポリエステル等が挙げられる。

    上記ポリアルキレンテレフタレート及び上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、又はポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、イソフタル酸を共重合したポリエステル、及びポリエチレンテレフタレートを主体とし、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステル等を単独又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。

    上記ポリエステル樹脂組成物は、上記ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5重量部以上40重量部以下含む。 好ましくは、上記ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を10重量部以上30重量部以下含み、15重量部以上25重量部以下含むことがさらに好ましい。 上記臭素化エポキシ系難燃剤の含有量が上記範囲内の場合には、酸化アンチモンの作用により互いに反応して上記ポリエステル樹脂中に島状に分散した凝集体を形成することができ、光沢調整効果に優れる。

    上記臭素化エポキシ系難燃剤は、原料としては分子末端がエポキシ基又はトリブロモフェノールからなる臭素化エポキシ系難燃剤を用いることができるが、臭素化エポキシ系難燃剤の溶融混練後の構造は、特に限定されず、下記化学式(1)に示す構成ユニットと下記化学式(1)の少なくとも一部が改変した構成ユニットの総数を100モル%とした場合、80モル%以上が化学式(1)で示す構成ユニットであればよい。 上記臭素化エポキシ系難燃剤は、溶融混練後に、構造が分子末端で変化してもよい。 例えば、上記臭素化エポキシ系難燃剤の分子末端がエポキシ基又はトリブロモフェノール以外の酸基、リン酸、ホスホン酸等に置換されていてもよく、分子末端がポリエステル成分とエステル基で結合していてもよい。 また、臭素化エポキシ系難燃剤の分子末端以外の構造の一部が変化してもよい。 例えば、臭素化エポキシ系難燃剤の二級水酸基とエポキシ基が結合して分岐構造となっていてもよく、臭素化エポキシ系難燃剤分子中の臭素含有量が大きく変化しなければ、下記化学式(1)の臭素の一部が脱離又は付加してもよい。

    上記臭素化エポキシ系難燃剤としては、例えば、下記一般式(2)に示しているような高分子型の臭素化エポキシ系難燃剤が好ましく用いられる。 下記一般式(2)に示しているような高分子型の臭素化エポキシ系難燃剤としては、例えば、阪本薬品工業株式会社製の臭素化エポキシ系難燃剤(商品名「SR−T2MP」)等の市販品を用いてもよい。

    但し、上記一般式(2)において、mは1〜1000である。

    上記ポリエステル樹脂組成物は、上記ポリエステル樹脂100重量部に対し、酸化アンチモンを1.5重量部以上7重量部未満含む。 上記酸化アンチモンの含有量が上記範囲内の場合、酸化アンチモンが臭素化エポキシ系難燃剤同士の反応の触媒として作用しやすく、臭素化エポキシ系難燃剤がポリエステル樹脂中に島状に分散して後述するような適切な大きさと個数の凝集体を形成されやすい。 上記ポリエステル樹脂100重量部に対する酸化アンチモンの含有量が1.5重量部未満であると、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、臭素化エポキシ系難燃剤は、ポリエステル樹脂中に島状に分散した凝集体を形成し難く、光沢抑制効果が得られにくい。 一方、上記ポリエステル樹脂100重量部に対する上記酸化アンチモンの含有量が7重量部以上であると、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体が大きくなりすぎ、光沢が過度に抑制されやすく、且つ発色性も低下しやすく、人毛に比べて、自然感が格段に低下する。 また、上記ポリエステル樹脂100重量部に対する上記酸化アンチモンの含有量が7重量部以上であると、触感やくし通り性も悪化する。 光沢調整効果に優れるという観点から、上記ポリエステル樹脂100重量部に対し、酸化アンチモンを1.5重量部以上5重量部以下含むことが好ましく、1.5重量部以上4重量部以下含むことがより好ましく、1.5重量部以上3重量部以下含むことがさらに好ましい。

    上記酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。 これらは1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 上記ポリエステル系人工毛髪用繊維において、上記臭素化エポキシ系難燃剤及び酸化アンチモンは、光沢を調整する効果を発揮する。 なお、上記臭素化エポキシ系難燃剤及び酸化アンチモンは、光沢調整効果に加えて、それぞれ、難燃剤及び難燃助剤としての機能を発揮してもよい。 また、上記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、臭素化エポキシ系難燃剤以外の他の難燃剤、酸化アンチモン以外の他の難燃助剤を含んでもよい。

    他の難燃助剤としては、アンチモン酸金属塩が挙げられる。 上記アンチモン酸金属塩としては、特に限定されないが、例えば、アンチモン酸ナトリウム(アンチモン酸ソーダ)、アンチモン酸カリウム等を用いることができる。 他の難燃剤としては、例えば、リン含有難燃剤、臭素化エポキシ系難燃剤以外の他の臭素含有難燃剤を用いることができる。 上記リン含有難燃剤としては、例えば、リン酸エステルアミド化合物、有機環状リン系化合物等が挙げられる。 上記他の臭素含有難燃剤としては、例えば、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等の臭素含有リン酸エステル類、臭素化ポリスチレン類、臭素化ポリベンジルアクリレート類、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリカーボネートオリゴマー類、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ヒドロキシエチルエーテル)等のテトラブロモビスフェノールA誘導体、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン等の臭素含有トリアジン系化合物、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の臭素含有イソシアヌル酸系化合物等が挙げられる。 中でも、リン酸エステルアミド化合物、有機環状リン系化合物、臭素化フェノキシ樹脂系難燃剤が難燃性に優れている点で好ましい。

    上記ポリエステル系人工毛髪用繊維において、上記臭素化エポキシ系難燃剤は、ポリエステル樹脂中に島状に分散している凝集体を形成する。

    上記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm あたりに、針状比が2以上20以下且つ対角幅が0.05μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を50個以上有することが好ましい。 これにより、上記ポリエステル系人工毛髪用繊維の表面に適度に凹凸を形成することができ、柔らかい触感を付与しつつ、光沢を人毛に近似するように調整することができる。 また、良好なくし通り性も維持することができる。 より好ましくは、上記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm あたりに、針状比が2.5以上100/7以下且つ対角幅が0.07μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を40個以上有し、さらに好ましくは、360μm あたりに、針状比が20/7以上100/9以下且つ対角幅が0.09μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を10個以上有する。 なお、上記において、針状比が2以上20以下ということは、扁平比が0.05以上0.5以下ということと同じであり、針状比が2.5以上100/7以下ということは、扁平比が0.07以上0.4以下ということと同じであり、針状比が20/7以上100/9以下ということは、扁平比が0.09以上0.35以下ということと同じである。

    上記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、3036μm あたりに、対角幅が0.15μm以上0.8μm未満且つ針状比が0超6未満である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を300個以上有し、並びに対角幅が0.8μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を20個以下有することが好ましい。 これにより、上記ポリエステル系人工毛髪用繊維の表面に適度に凹凸を形成することができ、柔らかい触感を付与しつつ、光沢を人毛に近似するように調整することができる。 また、良好なくし通り性も維持することができる。 より好ましくは、上記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、3036μm あたりに、対角幅が0.15μm以上0.8μm未満且つ針状比が0超6未満である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を350個以上有し、並びに対角幅が0.8μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を15個以下有することが好ましい。 さらに好ましくは、上記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、3036μm あたりに、対角幅が0.15μm以上0.8μm未満且つ針状比が0超6未満である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を400個以上有し、並びに対角幅が0.8μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を10個以下有する。 対角幅が0.15μm以上0.8μm未満且つ針状比が0超6未満である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体が300個未満である場合は、十分な光沢抑制効果が得られにくく、対角幅が0.8μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体が20個を超えると、光沢を過度に抑制する恐れや触感とくし通り性が低下する場合がある。

    本発明において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅とは、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の繊維軸方向に対して垂直方向における最大長さをいう。 また、本発明において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の最大長とは、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の繊維軸方向に対して平行方向における最大長さをいう。 また、本発明において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の針状比とは、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の最大長と対角幅の比をいう。 なお、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅と最大長の比は扁平比となる。 以下、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維の繊維軸方向に対して平行方向の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅と最大長を模式的に示した図8に基づいて具体的に説明する。 図8に示しているように、繊維軸方向Dに対して平行方向の断面100において、ポリエステル樹脂10中に臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体20が島状に分散している。 繊維軸方向Dに対して平行方向の断面100において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体20の繊維軸方向Dに対して垂直方向における最大長さWが対角幅Wであり、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体20の繊維軸方向Dに対して平行方向における最大長さLが最大長Lである。 そして、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体20の針状比は、最大長L/対角幅Wで示され、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体20の扁平比は、対角幅W/最大長Lで示される。

    上記ポリエステル系人工毛髪用繊維における臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体は、繊維軸方向に対して平行方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)等で観察することで確認することができる。 図1に、本発明の一実施例(実施例1)のポリエステル系人工毛髪用繊維における繊維軸方向に対して平行方向の断面のSEM写真(5000倍)を示している。 図1において、ポリエステル樹脂中に島状に分散している扁平体が、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体である。 また、本発明において、繊維軸方向に対して平行方向の断面のSEM写真を用いて、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の針状比、対角幅及び一定面積あたりの個数を測定することができる。 本発明において、繊維軸方向に対して平行方向の断面の作製は、例えば、クロスセクションポリッシャー(CP)装置を使用した断面作製(イオンミリング加工)により行うことができる。

    上記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、着色されてもよく、市場の需要の観点から、黒系の濃色に着色されていることが好ましい。 本発明において、「濃色」とは、Lab表色系によるL値(以下において、単にL値とも記す。)が40未満の色を意味する。 L値は、一般的な測色計を用いて測定することができ、具体的には、例えばコニカミノルタ製の分光測色計「CM−2600d」等を用いることができる。 上記ポリエステル系人工毛髪用繊維の着色は、原着法又は後染色法により行うことができる。

    原着法により着色する場合には、上記ポリエステル樹脂組成物を作製する際に、着色剤をポリエステル樹脂や臭素化エポキシ系難燃剤等のポリエステル樹脂組成物の成分とともに溶融混練し、溶融混練後の着色剤を含むポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸することにより着色された繊維を得ることができる。 着色剤としては、例えば、顔料又は染料を用いることができる。 顔料としては、分散剤等により加工された加工顔料、マスターバッチ化された顔料等を用いてもよい。 染料としては、分散剤等により加工された加工染料、マスターバッチ化された染料等を用いてもよい。 これらの着色剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。

    上記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維中に顔料又は染料を0.1重量%以上2重量%以下含むことが好ましい。 上記顔料又は染料が0.1重量%未満では十分に着色されず、くすんで見える場合があり、2重量%を超えると、触感が悪化する場合がある。 上記顔料又は染料の濃度(含有量)は、ポリエステル樹脂組成物に対して0.1重量%以上2重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以上1.5重量%以下であることがより好ましい。 上記顔料又は染料の濃度が0.1重量%未満では十分に着色されず、くすんで見える場合があり、2重量%を超えると、触感が悪化する場合がある。

    上記顔料としては、一般的に使用されるものであればよく、特に限定されない。 例えば、有機系の黒色、黄色、赤色、褐色等の顔料、及び無機系黒色、黄色、赤色、褐色等の顔料を用いることができる。 また、上記染料としては、一般的に使用されるものであればよく、特に限定されない。 例えば、有機系の黒色、黄色、赤色、褐色等の染料、及び無機系の黒色、黄色、赤色、褐色等の染料等を用いることができる。 また、二種以上の顔料及び染料を混合して調色して用いてもよい。

    上記顔料の具体例としては、例えば、カーボンブラック、アンスラキノン系、ペリノン系等の顔料が挙げられる。

    後染色法により着色する場合には、通常のポリエステル系繊維を染色する場合の染色方法と同様の方法により染色することができる。

    後染色法に用いられる染料としては、黒色、黄色、赤色、褐色等の染料を任意に用いることができ、また、二種以上の染料を混合して調色して用いてもよい。

    上記染料の具体例としては、例えば、ベンゼンアゾ系(モノアゾ、ジスアゾ等)、複素環アゾ系(チアゾ−ルアゾ、ベンゾチアゾールアゾ、チオフェンアゾ等)、アントラキノン系、縮合系(キノフタリン、スチリル、クマリン等)の分散染料が好ましく用いられる。

    染色は、好ましくは90℃以上150℃以下、さらに好ましくは100℃以上140℃以下の温度で行なう。 また、染料を含む染色浴を適切なpHに調整して行うことが好ましい。

    また、上記後染色法においては、染料とともに、定着性や分散性を高める目的で染色助剤を用いてもよい。 上記染色助剤としては、分散剤、均染剤、オリゴマー除去剤等が挙げられる。

    上記染色助剤としては、具体的には、ナフタリンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリールエーテル硫酸エステル塩等を使用することができる。 上記染色助剤は、染色浴に対して好ましくは0.5g/L以上2g/L以下の範囲で使用される。

    また、pH調整剤としては、例えば、酢酸と酢酸ナトリウムの組合せ、酢酸とピロリン酸ナトリウムの組合せ、リン酸二水素ナトリウム又は有機リン化合物とポリカルボン酸の組み合わせ等を使用することができる。 上記pH調整剤は、染色浴に対して好ましくは0.5g/L以上2g/L以下の範囲で使用される。

    後染色法における染料は、ポリエステル系人工毛髪用繊維中に0.1質量%以上吸尽されるのが好ましい。 ポリエステル系人工毛髪用繊維においては、黒髪のような濃色から、褐色及び赤毛のような中間色、金髪及び白髪(グレー)のような淡色までの色のバリエーションが多いため、色に合わせて、染料の吸尽量を適宜調整する必要がある。 染料の吸尽量は、染色浴の濃度、染色温度、時間によって調整することができる。

    上記ポリエステル系人工毛髪用繊維の着色に使用される顔料、染料、染色助剤等としては、耐候性及び難燃性を有するものが好ましい。

    上記ポリエステル系人工毛髪用繊維は、必要に応じて、耐熱剤、安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤等の各種添加剤を含有してもよい。 上記安定剤としては、例えば、ステアリルアシッドフォスフェート等を用いることができる。

    本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、上述したポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸し、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、上記ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を形成することで製造することができる。 例えば、上述したポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤、酸化アンチモン等の各成分をドライブレンドしたポリエステル樹脂組成物を、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練してペレット化した後、溶融紡糸することにより作製することができる。 上記混練機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等が挙げられる。 中でも、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。

    本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維を、通常の溶融紡糸法で溶融紡糸する場合には、例えば、押出機、ギアポンプ、口金等の温度を250℃以上300℃以下とし、溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒に通過させた後、ポリエステル樹脂のガラス転移点以下に冷却し、50m/分以上5000m/分以下の速度で引き取ることにより紡出糸条(未延伸糸)が得られる。 また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。 加熱筒の温度と長さ、冷却風の温度と吹付量、冷却水槽の温度、冷却時間及び引取速度は、ポリマーの吐出量及び口金の孔数によって適宜調整することができる。

    本発明において、得られた紡出糸条(未延伸糸)は熱延伸されることが好ましい。 延伸は、紡出糸条を一旦巻き取ってから延伸する2工程法と、紡出糸条を巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によって行ってもよい。 熱延伸は、1段延伸法又は2段以上の多段延伸法で行なわれる。 熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽等を使用することができ、これらを適宜併用することもできる。

    さらに、上記ポリエステル系人工毛髪用繊維に繊維処理剤、柔軟剤等の油剤を付与し、触感、風合いをより人毛に近づけることができる。 上記繊維処理剤としては、例えば、触感やくし通り性を向上させるためのシリコーン系繊維処理剤や非シリコーン系繊維処理剤等が挙げられる。

    本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、人工毛髪に適するという観点から、繊度が10dtex以上100dtex以下であることが好ましく、より好ましくは20dtex以上90dtex以下である。

    本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、人毛に近似した光沢と柔らかい触感を有し、人工毛髪として好適に使用することができる。 また、発色性及びくし通り性も良好である。 本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、単独又は他の人工毛髪用繊維、人毛や獣毛等の天然繊維と組み合わせて人工毛髪として用いることができる。

    本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維を用いて形成した頭飾製品は、光沢と触感に優れる。 また、発色性及びくし通り性に優れる。 上記頭飾製品としては、特に限定されないが、例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー、ドールヘアー等が挙げられる。

    上記頭飾製品は、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維のみで構成されていてもよい。 また、上記頭飾製品は、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維に、他の人工毛髪用繊維、人毛や獣毛等の天然繊維を組み合わせてもよい。

    以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。 なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

    実施例及び比較例において使用した原料は、以下のとおりである。
    ポリエチレンテレフタレート:三菱化学株式会社製、商品名「BK−2180」
    臭素化エポキシ系難燃剤:阪本薬品工業株式会社製、商品名「SR−T2MP」
    三酸化アンチモン:日本精鉱株式会社製、商品名「PATOX−M」
    アンチモン酸ナトリウム:日本精鉱株式会社製、商品名「SA−A」
    黒色顔料:大日精化工業株式会社製、商品名「PESM22367BLACK(100)D」
    黄色顔料:大日精化工業株式会社製、商品名「PESM1001YELLOW(100)D」
    赤色顔料:大日精化工業株式会社製、商品名「PESM3005RED(100)D」

    (実施例1〜2、比較例1〜2)
    各原料を水分量100ppm以下に乾燥し、下記表1に示す配合量でドライブレンドした。 得られたポリエステル樹脂組成物を二軸押出機(日本製鋼所株式会社製、商品名「TEX44」)に供給し、バレル設定温度270℃で溶融混練し、ペレット化した。 得られたペレットを水分率100ppm以下に乾燥させた。 次いで、乾燥したペレットを、溶融紡糸機(シンコーマシナリー株式会社製、商品名「SV30」)に供給し、バレル設定温度270℃で、扁平比が1.4:1の繭形断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、20℃の冷却風により空冷し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。 得られた未延伸糸を、75℃に加熱したヒートロールを用いて3.5倍に延伸し、180℃に加熱したヒートロールで熱処理し、30m/分の速度で巻き取り、単繊維繊度が約60dtex程度のポリエステル系人工毛髪用繊維(マルチフィラメント)を得た。

    (実施例3〜5、比較例3〜6)
    各原料を下記表1に示す配合量で混合した混合物を水分量100ppm以下に乾燥し、該混合物に上述した顔料を顔料のトータル濃度(含有量)が0.7重量%になるとともに、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料の重量割合が60:25:15になるように添加してドライブレンドした。 得られたポリエステル樹脂組成物を二軸押出機(日本製鋼所株式会社製、商品名「TEX44」)に供給し、バレル設定温度270℃で溶融混練し、ペレット化した。 得られたペレットを水分率100ppm以下に乾燥させた。 次いで、乾燥したペレットを、溶融紡糸機(シンコーマシナリー株式会社製、商品名「SV30」)に供給し、バレル設定温度270℃で、扁平比が1.4:1の繭形断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、20℃の冷却風により空冷し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。 得られた未延伸糸を、75℃に加熱したヒートロールを用いて3.5倍に延伸し、180℃に加熱したヒートロールで熱処理し、30m/分の速度で巻き取り、単繊維繊度が約65dtex程度のポリエステル系人工毛髪用繊維(マルチフィラメント)を得た。

    (実施例6)
    各原料を下記表1に示す配合量で混合した混合物を水分量100ppm以下に乾燥し、該混合物に上述した顔料を顔料のトータル含有量が0.7重量%になるとともに、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料の重量割合が75:20:5になるように添加してドライブレンドした以外は、実施例3〜5、比較例3〜6の場合と同様の方法でポリエステル系人工毛髪用繊維(マルチフィラメント)を得た。

    (実施例7)
    各原料を下記表1に示す配合量で混合した混合物を水分量100ppm以下に乾燥し、該混合物に上述した顔料を顔料のトータル含有量が0.7重量%になるとともに、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料の重量割合が45:25:30になるように添加してドライブレンドした以外は、実施例3〜5、比較例3〜6の場合と同様の方法でポリエステル系人工毛髪用繊維(マルチフィラメント)を得た。

    (実施例8)
    各原料を下記表1に示す配合量で混合した混合物を水分量100ppm以下に乾燥し、該混合物に上述した顔料を顔料のトータル含有量が0.02重量%になるとともに、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料の重量割合が10:80:10になるように添加してドライブレンドした以外は、実施例3〜5、比較例3〜6の場合と同様の方法でポリエステル系人工毛髪用繊維(マルチフィラメント)を得た。

    実施例1〜8及び比較例1〜6のポリエステル系繊維において、繊維軸方向に対して平行方向の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅、針状比、360μm あたりの個数(基準1)、3036μm あたりの個数(基準2)を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。 また、実施例1〜8及び比較例1〜6のポリエステル系繊維の光沢、発色性、触感、くし通り性を下記のように評価し、その結果を下記表1に示した。 光沢については、実施例1〜2及び比較例1〜2の無着色の白色の繊維については、白髪の中国人頭髪を基準とし、光沢評価1に基づいて評価した。 実施例3〜8及び比較例3〜6の着色繊維については、光沢評価1及び光沢評価2に基づいて評価した。 まず、黒色の中国人頭髪、栗色の中国人頭髪、金髪の中国人頭髪、白髪の中国人頭髪のLab表色系によるL値を下記のように測定した結果、それぞれ、15、28、42、85であった。 そして、実施例3〜8及び比較例3〜6の着色繊維のL値を測定し、上述した人毛のL値の結果を参酌し、L値が40未満の繊維については、黒色の中国人頭髪を基準とし、光沢評価2に基づいて光沢を評価し、L値が40以上の繊維については、白髪の中国人頭髪を基準とし、光沢評価1に基づいて光沢を評価した。 また、実施例3〜8、比較例3〜6の着色性を下記のように評価し、その結果を下記表1に示した。

    (臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の評価)
    臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅、針状比及び一定面積あたりの個数は、下記分析方法で観察・測定した。 繊維軸方向に対して平行方向の断面の断面作製(イオンミリング加工)は、クロスセクションポリッシャー(CP)装置(日本電子株式会社製「SM−09020CP」)を用い、加速電圧6kVの加工条件で行った。 形態観察は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)装置(カールツァイス製「ULTRA plus」を用い、加速電圧2kV下で観察した。試料の組成像は平均原子番号に依存するため、重元素がある部分では明るく、軽元素がある部分では暗い像が得られる。今回、試料はポリエチレンテレフタレート、臭素化エポキシ系難燃剤、アンチモン化合物を含むため、組成像は、(1)アンチモン化合物、(2)臭素化エポキシ系難燃剤、(3)ポリエチレンテレフタレートの順で明るい像が得られる。例えば、図1に示したように、臭素化エポキシ系難燃剤は、ポリエチレンテレフタレート中に島状に分散した凝集体であることが確認できた。得られた画像から、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製「winROOF」)を用い、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅、針状比、360μm あたりの個数(基準1)、3036μm あたりの個数(基準2)を測定した。なお、基準1の場合、画像解析ソフトを使わず、画像に基づいて360μm あたりの臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の個数を直接数えてもよいが、画像解析ソフトを使った方が精度が高く、好ましい。

    (光沢評価1)
    長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを用い、太陽光のもと、目視により、以下の基準で光沢を評価した。 人毛として、中国人の頭髪(白髪)を用いた。
    A:人毛の光沢と同等である。
    B:人毛の光沢とほぼ同等である。
    C:人毛の光沢とやや差がある。
    D:人毛の光沢とかなり差がある。

    (光沢評価2)
    Bossa Nova Tech社製のSAMBA Hair Systemを用いて光沢測定を行った。 長さ25cm、重さ5gのトウフィラメントを試料とし、BNTを測定した。 nを5とし、BNT値の平均値を光沢値とした。 人毛として、黒色の中国人頭髪(BNT値26)を用いた。
    A:人毛の光沢と同等である(BNT値が15以上37以下)。
    B:人毛の光沢とほぼ同等である(BNT値が12以上15未満、或いは、BNT値が37超40以下)。
    C:人毛の光沢とやや差がある(BNT値が10以上12未満、或いは、BNT値が40超43以下)。
    D:人毛の光沢とかなり差がある(BNT値が10未満、或いは、BNT値が43超)。

    (発色性)
    長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを用い、太陽光のもと、目視により、以下の基準で評価した。
    A:透明感があり、色の深み(鮮やかさ)がある。
    B:若干不透明感があるが、色の深み(鮮やかさ)は低下していない。
    C:不透明感(曇り)があり、若干色の深み(鮮やかさ)が低下している。
    D:不透明感があり、色の深みがない。

    (触感)
    人毛との比較で官能評価を行い、以下の基準で評価した。
    A:人毛と同等の非常に柔らかな風合い。
    B:人毛に似た柔らかな風合い。
    C:人毛に比べやや硬い風合い。
    D:人毛に比べ硬い風合い。

    (くし通り性)
    長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを、繊維表面処理剤であるPO/EOランダム共重合体(丸菱油化工業社製、商品名「Conditioner Type−Q」、分子量20000)とカチオン系帯電防止剤(丸菱油化工業社製、商品名「加工油剤 No.29」)(重量比75:25)を3重量%含む水溶液に浸漬し、それぞれ0.1重量%が繊維に付着するようにし、80℃で5分間乾燥させた。 処理されたトウフィラメントにポリアセタール樹脂製くし(株式会社植原セル製、商品名「ニューデルリンコーム#826)を0.3m/sの速さでトウフィラメントの上部3cmの所から下へ、完全に30回以上通過させ、くしの通り易さを評価した。
    A:ほとんど抵抗ない(軽い)。
    B:若干抵抗がある(若干重い)。
    C:かなり抵抗がある、又は、途中で引っかかる(重い)。
    D:くしが通らない。

    (Lab表色系によるL値の測定)
    得られた繊維を、コニカミノルタ製の分光測色計「CM−2600d」(SCI方式)で測色し、L値を測定した。

    (着色性)
    濃色:L値40未満 淡色:L値40以上

    実施例1のポリエステル系人工毛髪用繊維における繊維軸方向に対して平行方向の断面の電界放出型走査電子顕微鏡写真(5000倍)を図1に示した。 また、実施例3〜5、8及び比較例3〜5のポリエステル系人工毛髪用繊維における繊維軸方向に対して平行方向の断面の電界放出型走査電子顕微鏡写真(1000倍)を図2〜図7に示した。 図1〜図5から分かるように、実施例のポリエステル系人工毛髪用繊維において、臭素化エポキシ系難燃剤は、ポリエステル樹脂中に島状に分散した凝集体を形成していた。

    上記表1の結果から分かるように、ポリエステル樹脂100重量部と、臭素化エポキシ系難燃剤5重量部以上40重量部以下と、酸化アンチモン1.5重量部以上7重量部未満を含むポリエステル樹脂組成物が溶融紡糸され、ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を形成した実施例のポリエステル系人工毛髪用繊維は、人毛に近似した光沢及び触感を有していた。 また、実施例のポリエステル系人工毛髪用繊維は、発色性及びくし通り性も良好であった。

    一方、酸化アンチモンを含まない比較例3(図6)と臭素化エポキシ系難燃剤を含まない比較例6のポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有しておらず、光沢と触感のいずれも人毛とかなりの差があった。 また、アンチモン酸ナトリウムを含むが酸化アンチモンを含まない比較例4(図7)のポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有しておらず、光沢が人毛とかなりの差があった。 また、酸化アンチモンが1.5重量部未満の比較例1の場合も、光沢が人毛とかなりの差があった。 また、酸化アンチモンが7重量部以上の比較例2と比較例5の場合は、光沢と触感のいずれも人毛とかなりの差があった。

    ポリエステル樹脂100重量部と、臭素化エポキシ系難燃剤5重量部以上40重量部以下と、酸化アンチモン1.5重量部以上7重量部未満を含むポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸した実施例1〜8のポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm あたりに、針状比が2以上20以下且つ対角幅が0.05μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を50個以上有していた。 また、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm あたりに、針状比が2.5以上100/7以下且つ対角幅が0.07μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を40個以上有していた。 また、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm あたりに、針状比が20/7以上100/9以下且つ対角幅が0.09μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を10個以上有していた。 これにより、人毛に近似した光沢を有するとともに、触感も良好である。

    また、実施例1〜8のポリエステル系人工毛髪用繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、3036μm あたりに、対角幅が0.15μm以上0.8μm未満且つ針状比が0超6未満である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を300個以上有するとともに、対角幅が0.8μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を20個以下有する。 これにより、人毛に近似した光沢を有するとともに、触感も良好である。 特に、濃色に着色した場合も、人毛に近似した光沢を有するとともに、触感も良好である。

    一方、比較例1〜6のポリエステル系繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm あたりに、針状比が2以上20以下且つ対角幅が0.05μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を50個未満有していた。 また、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、3036μm あたりに、対角幅が0.15μm以上0.8μm未満且つ針状比が0超6以下である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を300個より少なく有し、或いは、対角幅が0.8μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を20個より多く有していた。 比較例では、人毛に近似した光沢と触感を兼ね備えたポリエステル系人工毛髪用繊維が得られなかった。

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