かつら

申请号 JP2010549477 申请日 2010-02-02 公开(公告)号 JPWO2010090191A1 公开(公告)日 2012-08-09
申请人 株式会社アデランス; 发明人 泰久 外川; 泰久 外川; 早苗 佐久間; 早苗 佐久間; 真由美 関崎; 真由美 関崎;
摘要 頭部形状に成形されたかつらベース(2)に対し毛髪(3)を取り付ける。毛髪(3)は、脂肪族ポリアミド樹脂でなる第1の人工毛髪(3A)と、脂肪族ポリアミド樹脂及び半芳香族ポリアミド樹脂でなる第2の人工毛髪(3B)と、が30:50〜60:40の範囲での任意の割合で混合して含まれてなる。第1の人工毛髪(3A)と第2の人工毛髪(3B)とは同一径で換算して所定の範囲内の曲げ剛性値を有する。第1の人工毛髪(3A)及び第2の人工毛髪(3B)は、何れも、 温度 20℃、湿度40%の測定条件下において、直径80μmで換算して7.8×10−5N・cm2/本以下の曲げ剛性値を有し、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとの曲げ剛性値の差が1.5〜2.0×10−5N・cm2/本である。これにより、ポリアミド繊維の持つ柔軟性や高熱セット性を維持しながら、ボリューム感を向上させ、且つ集束性の改善を図ることができる。
权利要求
  • かつらベースに毛髪が取り付けられて成るかつらにおいて、
    上記毛髪が、脂肪族ポリアミド樹脂でなる第1の人工毛髪と脂肪族ポリアミド樹脂及び半芳香族ポリアミド樹脂でなる第2の人工毛髪とが重量比で30:70〜60:40の割合で混合してなることを特徴とするかつら。
  • 前記第2の人工毛髪は単層構造、鞘芯構造及び海島構造の組み合わせの何れかであることを特徴とする、請求項1に記載のかつら。
  • 前記第2の人工毛髪は鞘芯構造を有し、芯部が半芳香族ポリアミド樹脂でなり、鞘部が脂肪族ポリアミド樹脂でなることを特徴とする、請求項1に記載のかつら。
  • 前記第2の人工毛髪は海島構造を有し、海部が脂肪族ポリアミド樹脂でなり、島部が半芳香族ポリアミド樹脂でなることを特徴とする、請求項1に記載のかつら。
  • 前記第1の人工毛髪及び第2の人工毛髪は、何れも、温度20℃、湿度40%の測定条件下において、直径80μmで換算して7.8×10 −5 N・cm /本以下の曲げ剛性値を有することを特徴とする、請求項1に記載のかつら。
  • 前記第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差が1.5〜2.0×10 −5 N・cm /本であることを特徴とする、請求項5に記載のかつら。
  • 说明书全文

    本発明は、ポリアミド繊維からなる毛髪をかつらベースに取り付けてなるかつらに関する。

    かつらは頭部形状に成形したかつらベースに毛髪を取り付けて構成されている。 かつらベースは、一般に合成樹脂製の人工皮膚若しくはネット地又はそれらの組み合わせで構成される。 一方、毛髪としては、人毛やその他の動物から採取した天然毛髪か或いは合成繊維で作った人工毛髪が用いられている。 人工毛髪として、ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、アクリル樹脂などの合成樹脂を素材にした繊維が実用化され、人毛の欠点である低強度、退色、スタイルの保持性などを克服している。 合成樹脂を素材としたこれらの繊維の中でも、ポリアミド系繊維は、柔軟性、吸性を有するため人毛に近く、また熱によるセットをしやすいことから、かつら用毛髪により適している。

    しかしながら、ポリアミド繊維は、弾性率や曲げ剛性値が他の繊維と比べて相対的に低いため、ポリアミド繊維で構成した毛髪をかつらベースに取り付けた場合、かつらベースからの毛髪の立ち上がりが小さい。 よって、毛髪全体のボリューム感が生じ難く、立体感に劣るため、作製可能なヘアスタイルが限られてしまうという欠点がある。 その上ポリアミド繊維を束にした時に、繊維同士が引き付け合って束になってくっついてしまう性質(以下、「集束性」と呼ぶ)があり、そのため、かつらベースに満遍なく取り付けても、繊維同士が凝集して複数の線状又は束状の塊になってしまうことや、コーミング時にコームの櫛歯の跡がついたままの状態になって不自然な外観になり易い側面もある。

    ポリアミド繊維を毛髪とする場合の不利な点を解消するために、例えばポリエステル繊維など、ポリアミドとは異素材の繊維をポリアミド繊維に混合することが知られている。 特許文献1には、ナイロン繊維とポリエステル繊維とを混合した人工毛髪を備えたかつらが開示されており、特許文献2には、ポリアミド系人工毛髪に、モダアクリル、ポリ塩化ビニールなどの毛髪を併用したり人毛と併用してもよいことが開示されている。

    特開平9−324314号公報([要約]参照)

    特開2007−332507号公報([0067]参照)

    川端季雄、繊維機械学会誌(繊維工学)、26、10、pp. 721−728、1973 カトーテック株式会社、KES−SHシングルヘアーベンディングテスター取扱説明書

    公知の技術では、ポリアミド繊維に対しポリアミド繊維と異なる素材からなる繊維を混合することで、ボリューム感を向上させ、また集束性を解消することは可能であろう。 しかし一方では、異なる繊維を混合して毛髪とすることで下記の不利な点が生じてしまう。
    すなわち、第1に、異素材の繊維を混合させることでポリアミド特有の柔軟性が失われて風合いが変化すること、第2に、異素材の混合により溶融温度や軟化温度が異なるため、ヒーターでカール付けを行うと、適正温度以外では縮れが発生すること、第3に、カールの保持性に劣るためスタイルが崩れやすいこと、さらに第4に、素材の吸水性の違いにより付与したカールの挙動が異なることで不自然な外観になり易いことなど、別の課題が生じる。

    そこで、本発明は、上記の課題を解消して、ポリアミド繊維の持つ柔軟性や高熱セット性を維持しながら、ボリューム感を向上させ、且つ集束性の改善を図ることのできるかつらを提供することを目的とする。

    上記目的を達成するため、本発明の構成は、かつらベースとこのかつらベースに取り付けた毛髪を有するかつらにおいて、毛髪が、脂肪族ポリアミド樹脂でなる第1の人工毛髪と脂肪族ポリアミド樹脂及び半芳香族ポリアミド樹脂を配合してなる第2の人工毛髪とが重量比で30:70〜60:40の割合で混合してかつらベースに取り付けられていることを特徴とする。
    上記構成において、第2の人工毛髪は、脂肪族ポリアミド樹脂と半芳香族ポリアミド樹脂とが単層構造、鞘芯構造及び海島構造の組み合わせの何れかでなっていることが好ましい。
    上記構成において、第2の人工毛髪は鞘芯構造を有し、芯部が半芳香族ポリアミド樹脂でなり、鞘部が脂肪族ポリアミド樹脂でなることが好ましい。
    上記構成において、第2の人工毛髪は、好ましくは、海部が脂肪族ポリアミド樹脂、島部が半芳香族ポリアミド樹脂でなる海島構造を有する。
    上記構成において、第1の人工毛髪及び第2の人工毛髪は、何れも、温度20℃、湿度40%の測定条件下において、直径80μmで換算して、7.8×10 −5 N・cm /本以下の曲げ剛性値を有することが好ましい。
    上記構成において、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差は、1.5〜2.0×10 −5 N・cm /本であることが好ましい。

    本発明によれば、毛髪素材として、ポリアミド樹脂のうち異なる種類のポリアミド樹脂から組成して人工毛髪を成形し、この同種のポリアミド樹脂だけで作った人工毛髪をかつらベースに取り付けることでかつらを作製している。 従って、これらの人工毛髪をひとつのかつらに混合して取り付けてもポリアミドの持つ基本的な性質は変わらないので、カールの付与においても縮れの発生が起こらずに一つの温度で適正なカール付けが可能で、且つ、カールの保持性が高くヘアスタイルが崩れ難い。 また混合する人工毛髪の曲げ剛性値の上限値、及び混合する人工毛髪同士の剛性値の差の適正範囲を見出し、この適正範囲内の第1及び第2の人工毛髪をかつらに取り付けることで、ポリアミド繊維の持つ柔軟性を失うことなくボリューム感を向上することができ、作製可能なヘアスタイルの多様性が実現する。 さらに混合する人工毛髪それぞれの組成が異なっていることで異素材からなる繊維を混合した場合と同様に集束性が改善され、自然な外観が生じ、コーミングなどの扱いも容易になる。

    本発明の実施形態に係るかつらを模式的に示す図である。

    図1に示す毛髪の構造を示し、(A)は単層構造を有する毛髪、(B)は鞘芯構造を有する毛髪、(C)は海島構造を有する毛髪をそれぞれ模式的に示す図である。

    紡糸装置における吐出部近傍を模式的に示し、(A)は模式図、(B)はノズルの平面図である。

    人工毛髪の製造システムを概念的に示し、(A)は単層構造を有する人工毛髪の製造システム、(B)は鞘芯構造を有する人工毛髪の製造システムの概念図である。

    作製した毛材にカールを施す工程を模式的に示す図である。

    人工毛髪をかつらベースに取り付ける工程を模式的に示す図である。

    柔軟性の評価手順を模式的に示す図である。

    スタイルセット性の評価手順を模式的に示す図である。

    スタイル保持性の評価手順を模式的に示す図である。

    集束性の評価方法を模式的に示す図である。

    柔軟性を示す毛束の回復率の結果を示すグラフである。

    スタイルセット性に関する毛束高さアップ率の結果を示すグラフである。

    スタイル保持性を示す毛束高さアップ率の結果を示すグラフである。

    集束性を示す毛束幅拡大率の結果を示すグラフである。

    カールセット性を示す毛束カール径の結果を示すグラフである。

    カール保持性を示すカール径伸び率の結果を示すグラフである。

    1:かつら 2,41:かつらベース 3,4,5,6,43,62:人工毛髪(毛髪)
    3A:第1の人工毛髪 3B:第2の人工毛髪 5a:芯部 5b:鞘部 6a:海部 6b:島部 7a:シリンダー 7b:ノズル 7c、7d:樹脂 7e:開孔 11,26A,26B:溶融槽 12,27A、27B:ギアポンプ 13,28:吐出部 14:温水浴 15:第1延伸ローラ 16:第1乾熱槽 17:第2延伸ローラ 18:第2乾熱槽 19:第3延伸ローラ 20:第3乾熱槽 21:オイリング装置 22:第4延伸ローラ 23:ブラスト機 24:巻取機 30:毛束 31:毛髪 32:縫糸 33:アルミパイプ 41:かつらベース 42:鉤針 42A:先端鉤部 43:毛髪 51:フィラメント 60:スワッチ 61:仮想かつらベース 62:毛髪 63:負荷用板 64:櫛

    以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態について説明する。
    図1は、本発明の実施形態に係るかつらを模式的に示す図である。 本発明の実施形態に係るかつら1は、頭部形状に形成されたかつらベース2と、このかつらベース2に取り付けられた毛髪(「人工毛髪」ともいう。)3と、を有する。 図1ではかつらベース2に数本の毛髪3しか図示していないが、実際にはかつらベース2の全体に所定の密度で取り付けられている。
    毛髪3は、種類の異なるポリアミド樹脂を素材とした複数の人工毛髪3A、3Bとが所定の割合で混合されている。 この実施形態では、脂肪族ポリアミド樹脂でなる第1の人工毛髪3Aと、脂肪族ポリアミド樹脂と半芳香族ポリアミド樹脂とを一体化してなる第2の人工毛髪3Bと、を所定の割合で混ぜ合わせてかつらベース2に取り付けられている。 第1の人工毛髪3A及び第2の人工毛髪3Bの何れもポリアミド樹脂に属するものであるので、ポリアミド樹脂の基本的な性質が毛髪毎に変らない。 よって、第1の人工毛髪3A及び第2の人工毛髪3Bとしてかつらベース2に取り付ける前に、カールを毛材に付与する際の熱によっても縮みが生じ難い。

    本発明に適用する毛髪、即ち、人工毛髪3は、天然毛髪の曲げ剛性に近似させるために、天然毛髪における曲げ剛性値の上限値以下、具体的には、7.8×10 −5 N・cm /本以下の曲げ剛性値を有するとよい。 この値は温度20℃、湿度40%の環境下で測定し、その測定値を断面直径が80μmとした場合の換算した値である。 以下、特に断らない限り、曲げ剛性値はこの環境下で測定して換算した値で示すものとする。

    ここで、曲げ剛性値とは、繊維の触感や質感など風合いに関連する物性値で、曲げるときに必要なの大きさを示しており、川端式測定法により数値化できるものとして繊維織物産業で広く認知されている物性値である(非特許文献1)。 一本の繊維や毛髪の曲げ剛性値を測定できる装置も開発されている(非特許文献2)。 この曲げ剛性値は曲げ剛さとも呼ばれ、人工毛髪に単位の大きさの曲げモーメントを加えたとき、それによって生じた曲率変化の逆数で定義される。 人工毛髪の曲げ剛性値が大きいほど、曲げに強く撓み難い、つまり、硬く曲げにくい人工毛髪である。 逆にこの曲げ剛性値が小さい程、曲げ易く、柔らかい人工毛髪であるといえる。

    毛髪3の組成としては、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドの単一成分、種類の異なる脂肪族ポリアミド同士のブレンド、種類の異なる半芳香族ポリアミド同士によるブレンド、又は、脂肪族ポリアミドと半芳香族ポリアミドとのブレンドが考えられる。 本発明の実施形態において、毛髪3の素材としては、特に、第1の人工毛髪3Aでは脂肪族ポリアミド樹脂を用い、第2の人工毛髪3Bでは脂肪族ポリアミド樹脂と半芳香族ポリアミド樹脂を用いる。 ポリアミド樹脂であっても全芳香族ポリアミド樹脂を用いた繊維では曲げ剛性値が高く天然毛髪の曲げ剛性値の上限値を上回ってしまうので好ましくない。 脂肪族ポリアミド樹脂としては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン12などがあり、半芳香族ポリアミド樹脂としてはナイロン6T、ナイロン9T、ナイロンMXD6などがあり、何れも本発明で使用可能である。

    毛髪3の構造に関しては、後述するように単層構造、海島や鞘芯などの複合構造が考えられるが、曲げ剛性値の上限値7.8×10 −5 N・cm /本以内で、且つ混合する人工毛髪同士の曲げ剛性値の差が1.50〜2.0×10 −5 N・cm /本の範囲内であれば毛髪3の構造は特に問わない。

    図2は、図1に示す毛髪3の構造を示し、(A)は単層構造を有する毛髪4、(B)は鞘芯構造を有する毛髪5、(C)は海島構造を有する毛髪6を模式的に示す図である。 各毛髪4、5、6は、図示を省略するが、何れも表面に凹凸を有する。
    毛髪3の一つとして例えば図2(A)に模式的に示すように単層構造を有する毛髪4が挙げられ、毛髪3は単一の成分又は複数の成分の何れから成っていてもよい。
    毛髪3の一つとして、図2(B)に模式的に示すように例えば鞘芯構造を有する毛髪5が挙げられ、毛髪5は芯部5aの周りに鞘部5bを有し、芯部5aと鞘部5bとがそれぞれ別の素材でなっている。 芯部5aの素材、鞘部5bの素材は何れも、単一の成分でも、複数の成分でもよい。
    毛髪3の一つとして例えば図2(C)に模式的に示すように海島構造を有する毛髪6が挙げられる。 毛髪6は、海部6aと複数の島部6bとが遊離状に点在してなる径断面海島構造を有する。 この海島構造はシリンダー構造とも呼ばれる。
    もちろん、毛髪3は、鞘芯構造、海島構造以外の複合構造、例えばラメラ構造を有してもよいが、曲げ剛性値及びカール特性などの毛髪の性質を考慮すると、鞘芯構造や海島構造が好ましい。

    ここで、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとの曲げ剛性値の差が1.50×10 −5 N・cm /本未満であると、かつらベース2に植設した時に毛髪全体にハリやコシがなくボリューム感が出なくなり、一方、その差が2.0×10 ―5 N・cm /本以上であると第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとが相互に馴染まず、曲げ剛性値の高い方の毛髪が浮き上がったり、曲げ剛性値の低い方の毛髪が絡み付いて集束性を助長するので、1.50〜2.0×10 −5 N・cm /本の範囲が好ましい。

    本発明の実施形態においては、第1の人工毛髪3A,第2の人工毛髪3Bは何れも同一の断面形状を有するのがよい。 一般に、かつらベース2に人工毛髪3が取り付けられる場合、断面形状が異なる異形断面繊維を混合させることが広く行われている。 これはかつらベース2に取り付けた毛髪の嵩高さ、つまりボリューム感を向上させたり、毛髪に当った光の反射光の度を変えて毛髪表面の光沢を抑制することができるからである。 しかし、一般的に採用されているこの手法では異形断面を有する繊維を混合させることでヨレやクセが付き易く、断面形状が異なることによる特有の表面光沢が出てしまうので、好ましくない。

    ところで、ポリアミドから成る繊維そのものは特有の鏡面光沢があり、そのままではかつら用の毛髪には適さないので、人工毛髪としては光沢を抑えるために繊維表面が粗面化されていることが必要である。 光沢を抑える手法としては多種あるが、研磨材などを繊維表面に噴射して粗面化する所謂ブラスト方法が、無機物などの異物を混入して繊維表面に凹凸を付ける方法と比較してポリアミド特有の柔軟性が損なわれないので好ましい。

    人工毛髪は、かつら使用者の残っている頭髪の色になるべく一致する色に着色されるか或いは使用者の所望の毛髪の色に着色される。 かつら着色方法としては人工毛髪の製造時に染料又は/及び顔料をポリアミド樹脂に混練する原着方法、人工毛髪の製造後に染料による染色がある。 着色後の耐久性や仕上がり後の寸法安定性を考慮すると、原着方法が好ましい。 原着方法としては、溶融紡糸する繊維と同一の樹脂に2〜6%の顔料を含有させたマスターバッチチップを溶融する樹脂に10〜20%ブレンドした状態で紡糸することで着色された人工毛髪が製造できる。

    人工毛髪の製造について説明する。
    人工毛髪は合成繊維を所定長にカットして作製される。 合成繊維は一般的に熱可塑性樹脂を原料とする。 熱可塑性樹脂を加熱すると固体から液体状に変化する性質を利用して繊維に成形する。 熱可塑性樹脂から繊維への成形は、紡糸と延伸の2工程を経て行う。 紡糸工程と延伸工程とは連続して行っても、別々に行ってもよい。 原料や繊維の太さ及び強度に応じて選択する。
    紡糸工程では、ペレット状の熱可塑性樹脂を加熱して溶解、即ち溶融したものをノズルに圧力を加えて送り込む。 すると、樹脂がノズルの外側に設けた開孔から押し出されて繊維状となる。 その際、ノズルに多数の開孔を設け、一度に10〜20本の繊維を押し出してもよい。
    延伸工程では、延伸ローラの回転により一定のテンションを掛けながら連続的に熱を加えて引き延ばしながら繊維を巻き取る。 これにより、紡糸された繊維を所望の太さや強度とすることができる。 延伸の際においても、紡糸と同様、一度に紡糸済の繊維数十本を引き延ばしてもよい。

    図3は、紡糸装置における吐出部近傍を模式的に示しており、(A)は模式図、(B)はノズルの平面図である。 溶解したポリアミド樹脂7cをシリンダー7aに流し、ノズル7bに圧力を加えて送り込む。 すると、ノズル7bにおける開孔7eから溶融樹脂が吐出し、符号7dで示すように繊維が押し出される。 ここで、繊維の構造、即ち単層構造、鞘芯構造、海島構造又はその他の複合構造の何れとなるかは、主に、紡糸工程で使用するノズル7bの形状により、決定される。 ノズルは分配板と呼ばれる第1のプレートの下に隙間を開けて第2のプレートを配置した構造を有しており、第1のプレートには樹脂を分配するために溝、突起、開孔の何れかが形成されており、第2のプレートには樹脂を吐出するための開孔が形成されている。 この第1のプレートに対して溶解した樹脂を流し、第1のプレートにおける溝、突起、開孔の形状や配置関係、第2のプレートにおける開孔の形状や配置関係により、単層構造、特定の複合構造の何れの繊維を作製することができる。 また、第2のプレートにおける開孔の形状を選択することで、繊維の断面形状を円、繭、馬、十字状などにすることができる。

    さらに単層構造、鞘芯構造の場合を例に挙げて具体的に説明する。
    図4は、人工毛髪の製造システムを概念的に示し、(A)は単層構造を有する人工毛髪の製造システム、(B)は鞘芯構造を有する人工毛髪の製造システムの概念図である。
    単層構造からなる人工毛髪の場合、図4(A)に示す溶融紡糸及び延伸装置によって製造される。
    具体的には、ポリアミド樹脂チップ及び顔料を所定量混練したポリアミド樹脂チップを溶融槽11に投入し、溶融した樹脂をギアポンプ12で口径が0.3〜1.0mmのノズルをセットした吐出部13の送入口金に送出し、排出口金を出た繊維状の樹脂を40〜80℃の温水浴14を通過させる。 その後、第1延伸ローラ15と第1乾熱槽16を通過させて延伸を行い、第2延伸ローラ17及び第2乾熱槽18を通してさらに延伸を行い、第3延伸ローラ19及び第3乾熱槽20を通して繊維の寸法安定のための熱処理、つまりアニーリングをした後、静電気防止のためのオイリング装置21に通す。 最終工程として、第4延伸ローラ22及びブラスト機23中で繊維表面に微細なアルミナ粉を吹き付けて繊維表面を粗面化した後に巻取機24に巻き取る。
    この工程により、延伸倍率を3.5〜5.5の範囲で第1乃至第4の延伸ローラ15、17、19、22の速度を調整し、かつ第1乃至第3の乾熱槽16、18、20の温度を150〜180℃の範囲で調整することにより、繊維の直径が80μm程度前後で所定の曲げ剛性値を有するポリアミド繊維を得ることができる。

    複合構造を有する人工毛髪の場合、図4(B)に示す溶融紡糸及び延伸装置によって製造される。
    具体的には、第1の成分であるポリアミド樹脂チップ及び顔料を所定量混練したポリアミド樹脂チップを溶融槽26Aに投入し、第2の成分であるポリアミド樹脂チップ及び顔料を所定量混練したポリアミド樹脂チップを溶融槽26Bに投入し、溶融した第1の成分樹脂をギアポンプ27Aで吐出部28の第1の送入口金に送出し、溶融した第2の成分樹脂をギアポンプ27Bで吐出部28の第2の挿入口金に送出し、所望の複合構造が得られかつ口径が0.3〜1.0mmのノズルを有する送出口金から繊維状の樹脂を送り出す。 それ以降は、単層構造を有する人工毛髪の場合と同様の工程を行う。

    ここで、何れの人工毛髪の断面形状も、吐出部13,28の送出口金のノズル形状で決まるが、ノズルの形状は円、楕円、繭型、星型など何れでもよい。

    以上のように作製した繊維は所定の長さにカットされて毛材が完成するが、以下説明するようにこの毛材にカールを付しておくとよい。 図5は、作製した毛材にカールを付す工程を模式的に示す図である。 図5(A)に示すように毛材31を適宜の長さ例えば30〜80cm程度に切り揃えたもの多数本例えば400〜700本程度を1セットとして横に並べ、バラけないようにその中央部を縫糸32で縫着することにより、みの毛(ウエフト)状の毛束30に揃える。 その後、図5(B)に示すように毛束30をアルミパイプ33などに巻き付けた後、加熱処理によりカールを付す。 これにより人工毛髪3が完成する。 ここで、かつらベースに人工毛髪を取り付ける前に行う理由について説明する。 かつらベースに人工毛髪を取り付けた後にカーリング付用アイロンやロッドを使ってカール付けを行う場合と、予めカールを付した人工毛髪をかつらベースに取り付ける場合と、を比較すると、後者の場合の方が所望のカール径を得ることができ、またカール保持性が高いからである。

    かつらの製造方法について説明する。
    先ず、かつらベースを次の手順で作製する。
    かつらベースが合成樹脂製のシート材を素材とする場合、かつら装着者における頭部形状雄型の石膏の上に有機溶剤で溶解した樹脂溶液を塗布して乾燥後に石膏から樹脂を外して頭部形状に成形する。 またはシート状の合成樹脂を石膏の上から被せて固定して加熱した後に、石膏から樹脂を外して頭部形状に成形する。 この時に使用される樹脂としては、柔軟性があるポリウレタンやシリコーンなどの熱可塑性エラストマーが良い。
    かつらベースがネット地を素材とする場合、石膏の上にネットを張って固定して、その上から石膏の形状が付き易く、保持性を良好にするためにウレタンを有機溶剤で溶解した樹脂溶液を塗布した後に乾燥させて、石膏から樹脂を外して頭部形状に成形する。

    上記のようにして製造した人工毛髪はかつらベースに次の要領で取り付けられる。
    図6は人工毛髪をかつらベースに取り付ける工程を模式的に示す図である。 なお、図6では人工皮膚のかつらベース41やネットベースを構成するフィラメント51は部分的にしか示していない。
    かつらベースが人工皮膚でなる場合、図6(A)で示すようにかつらベース41に鉤針42を挿通し、図6(B)に示すように鉤針の先端鉤部42Aにループ状の毛髪43を引っ掛け鉤針42旋回してループとの係合が解けない状態で、先端鉤部42Aを毛髪43のループ解放端部側に引っ掛けてループ中から抜き出すことで図6(C)に示すようにかつらベース41に毛髪43を結び付ける。
    かつらベースがネットの場合には図6(D)に示すようにネットを構成するフィラメント51に鉤針42を挿通して、図6(E)に示すように鉤針の先端鉤部42Aにループ状の毛髪43を引っ掛け鉤針42を旋回してループとの係合が解けない状態で、先端鉤部42Aを毛髪43のループ解放端部側に引っ掛けてループ中から抜き出すことで図6(F)に示すようにフィラメント51に毛髪43を結び付ける。
    何れの場合も毛髪43の結び方はかつらの製造で行われている公知の方法で行う。

    かつらベースに取り付ける第1及び第2の人工毛髪の混合割合は、[対的に曲げ剛性値の低い毛髪]/[対的に曲げ剛性値の高い毛髪]が、質量比で、30/70〜60/40となる範囲で混合するのが好ましい。 この範囲外になると混合割合の低い毛髪の効果が出なくなることで、混合割合の高い毛髪単体で構成したかつらにおける毛髪の挙動との違いがなくなり、本発明の課題が解決出来ない。
    本発明では、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪とを上記の混合割合で、かつらベースの全面に満遍なく植設していけばよい。
    さらに、かつらベースの特定部位のみを特にボリューム感を出したいときや、特定のカールを保持させてヘアスタイルを長期に保持したい場合などに、かつらベースの特定の領域を指定することで、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との上記した混合割合の範囲外とすることも可能であり、このようなアレンジも本発明の範囲内である。 例えば、頭頂部や髪の分け目の領域のみを特に立ち上がらせてボリューム感を出したいときは、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との割合を質量比で例えば5〜20対95〜80に調整するなど、適宜に調整することができる。 この場合であっても、かつらベース全体に植設する第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との混合割合は、上記のように、質量比で、30/70〜60/40となる範囲で混合するのが好ましい。 このような混合割合とすることで、頭頂部や髪の分け目などの局部的な領域が所望のカール付けと共に所望のボリューム感を呈し得るともに、かつら全体のカールの保持性が高くヘアスタイルが崩れ難い。 また、ポリアミド繊維の持つ柔軟性を失うことなくボリューム感を向上することができ、作製可能なヘアスタイルの多様性が実現することができる。 さらに、混合する人工毛髪それぞれの組成が異なっていることで異素材からなる繊維を混合した場合と同様に集束性が改善され、自然な外観が生じ、コーミングなどの扱いも容易である。

    ここで、前述のように、第1の人工毛髪の素材には脂肪族ポリアミド樹脂を用い、第2の人工毛髪の素材には脂肪族ポリアミド樹脂と半芳香族ポリアミド樹脂を用い、第2の人工毛髪は単層構造又は鞘芯や海島等の複合構造を有している。 第2の人工毛髪が鞘芯構造を有する場合には、芯部5aの素材としては半芳香族ポリアミド樹脂、鞘部5bの素材としては脂肪族ポリアミド樹脂とすることが好ましい。 第2の人工毛髪が海島構造を有する場合には、海部6aの素材としては脂肪族ポリアミド樹脂、島部6bの素材としては半芳香族ポリアミド樹脂とすることが好ましい。 詳細については実施例で説明する。
    以上の手順により、かつらが完成する。

    以下に実施例を説明して本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
    何れの実施例及び比較例においても、直径が大体80μm前後になるように製造条件を設定して第1の人工毛髪3A、第2の人工毛髪3Bを準備し、第1、第2の人工毛髪3A,3Bの各曲げ剛性値を測定した。 第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを各実施例及び比較例で異なる割合で混ぜて人工毛髪束を作製し、予め直径25mmのアルミパイプに長さが20cmの毛束を捲いて加熱処理によりカールを付与し、長さ10cmを有するように毛髪の束を半折にし、それぞれの毛髪を一本ずつ5cm×5cmのネット地に結着することによりスワッチを作製した。 そのスワッチを用いて毛髪としての特性評価を行った。

    実施例1では、第1の人工毛髪3Aとして断面形状が真円で単層構造を有するナイロン6(PA6)の繊維を作製した。 詳細には、原料チップとして三菱エンジニアプラスチック社製でグレードNOVAMID1020のナイロン6(PA6)のチップを用い、図4(A)における第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した。 その結果、繊維断面直径が83.7μmとなった。
    第2の人工毛髪3Bとして断面形状が真円の単層構造の繊維を作製した。 詳細には、原料チップとして、三菱ガス化学社製でグレードMXナイロンのナイロンMXD6(PAMXD6)のチップと三菱エンジニアプラスチック社製でグレードNOVAMID1020のナイロン6(PA6)のチップとを重量比率で70:30で混ぜたものを用い、図4(A)における第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した。 繊維の断面直径は82.1μmとなった。
    実施例1では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例2では、第1の人工毛髪3Aには実施例1で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。
    第2の人工毛髪として、断面形状が真円で鞘芯構造を有する繊維を作製した。 詳細には、芯となる部分の原料チップとして三菱ガス化学社製でグレードMXナイロンのナイロンMXD6(PAMXD6)のチップを用い、鞘となる部分の原料チップとして三菱エンジニアプラスチック社製でグレードNOVAMID1020のナイロン6(PA6)のチップを用い、ナイロンMXD6のチップとナイロン6のチップとの重量比率を72:25とした。 図4(B)の製造システムを用いて第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した結果、繊維の断面直径が81.6μmとなった。 ここで、芯部の直径は72.9μmであったので、第2の人工毛髪の断面寸法は毛髪直径1に対し芯部が0.89であった。
    実施例2では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例3では、第1の人工毛髪3Aには実施例1で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。
    第2の人工毛髪として、断面形状が真円で海島構造を有する繊維を作製した。 詳細には、母材となる部分即ち海部の原料チップとして三菱ガス化学社製でグレードMXナイロンのナイロンMXD6(PAMXD6)のチップを用い、島部となる部分の原料チップとして三菱エンジニアプラスチック社製でグレードNOVAMID1020のナイロン6(PA6)のチップを用い、ナイロンMXD6のチップとナイロン6のチップとの重量比率を65:35とした。 実施例1及び実施例2と同様に各延伸ローラの速度を調整した結果、繊維の断面直径が83.2μmとなった。 ここで、第2の人工毛髪の軸方向の断面構造は、断面のほぼ中央に一つの島部があり、その中央の島部を囲むように周状に6つの島部がほぼ均等に並んでいる構造である。 各島部は何れも断面円形であり、島部の直径は24.2μmであったので、島部と海部の面積比は1.45:1であった。
    実施例3では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例4では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第1の実施例で作製した、ナイロン6及びナイロンMXD6からなる単層構造を有する繊維を用いた。 第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを30:70の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例5では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第1の実施例で作製した、ナイロン6及びナイロンMXD6からなる単層構造を有する繊維を用いた。 第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを60:40の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例6では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第2の実施例で作製した鞘芯構造の繊維を用いた。 第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを30:70の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例7では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第2の実施例で作製した鞘芯構造の繊維を用いた。 第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを60:40の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例8では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第3の実施例で作製した海島構造の繊維を用いた。 第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを30:70の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例9では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第3の実施例で作製した海島構造の繊維を用いた。 第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを60:40の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    (比較例1)
    比較例1では、第2の人工毛髪を用いないで実施例1で作製したナイロン6(PA6)の繊維のみを用いて人工毛髪束を作製した。

    (比較例2)
    比較例2では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして断面形状が真円の単層構造の繊維を作製した。 詳細には、原料チップとしてナイロン46(PA46)のチップを用い、図4(A)における第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した。 繊維の断面直径が82.4μmとなった。
    比較例2では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    (比較例3)
    比較例3では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして断面形状が真円の単層構造の繊維を作製した。 詳細には、原料チップとして三菱ガス化学社製でグレードMXナイロンのナイロンMXD6(PAMXD6)のチップと三菱エンジニアプラスチック社製でグレードNOVAMID1020のナイロン6(PA6)のチップとを重量比率で25:75で混ぜたものを用い、図4(A)における第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した。 繊維の断面直径が82.1μmとなった。
    比較例3では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    (比較例4)
    比較例4では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして断面形状が真円の単層構造の繊維を作製した。 詳細には、原料チップとして三菱ガス化学社製でグレードMXナイロンのナイロンMXD6(PAMXD6)のチップと三菱エンジニアプラスチック社製でグレードNOVAMID1020のナイロン6(PA6)のチップとを重量比率で85:15で混ぜたものを用い、図4(A)における第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した。 繊維の断面直径が83.1μmとなった。
    比較例4では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    (比較例5)
    比較例5では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして断面形状が真円の単層構造の繊維を作製した。 詳細には、原料チップとして東洋紡社製のグレードRE530Aのポリエチレンテレフタレート(PET)のチップを用い、図4(A)における第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した。 繊維の断面直径が80.1μmとなった。
    比較例5では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを70:30の割合で混合して人工毛髪束を作製した。 比較例5では第2の人工毛髪としてポリエステル系であるポリエチレンテレフタレート樹脂という硬い繊維を第1の人工毛髪に混入しているため、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との混合比を50:50ではなく70:30とした。

    (比較例6)
    比較例6では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第1の実施例で作製した、ナイロン6(PA6)及びナイロンMXD6(PAMXD6)からなる単層構造を有する繊維を用いた。
    第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを15:85の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    (比較例7)
    比較例7では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第1の実施例で作製した、ナイロン6(PA6)及びナイロンMXD6(PAMXD6)からなる単層構造を有する繊維を用いた。
    第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを85:15の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    (比較例8)
    比較例8では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第2の実施例で作製した鞘芯構造の繊維を用いた。 第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを15:85の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    (比較例9)
    比較例9では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第2の実施例で作製した鞘芯構造の繊維を用いた。 第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを85:15の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    (比較例10)
    比較例10では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第3の実施例で作製した海島構造の繊維を用いた。 第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを15:85の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    (比較例11)
    比較例11では、第1の人工毛髪3Aとして第1の実施例で作製したナイロン6(PA6)の繊維を用いた。 第2の人工毛髪3Bとして第3の実施例で作製した海島構造を有する繊維を用いた。 第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを85:15の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    各実施例及び比較例で作製準備した毛髪の曲げ剛性値を測定した。 各毛髪の曲げ剛性値については、川端式測定法を改良したシングルヘアーベンディングテスター(カトーテック(株)製、品名:KES−FB2−SH)を用いて、下記に示す測定条件で1本の毛髪を一定曲率まで円弧状に等速度で曲げ、それに伴う微小な曲げモーメントを検出して、曲げモーメントと曲率との関係を測定した。 この測定により曲げモーメント/曲率変化によって曲げ剛性値を求めた。 測定は温度20℃、湿度40%の環境下で行った。
    (測定条件)
    チャック間距離:1cm
    トルク検出器:トーションワイヤー(スチールワイヤー)のねじれ検出方式 曲率:±2.5cm −1
    曲げ変位速度:0.5cm −1 /秒 測定サイクル:1往復

    曲げ剛性値の測定結果について説明する。
    表1に各実施例及び比較例の曲げ剛性値の測定結果を示す。 表1には第1及び第2の人工毛髪の作製条件等も合わせて示している。 また、表1には、各実施例、比較例の各毛髪の曲げ剛性値の実測値のほか、断面直径80μmに換算した値も示した。 第1の人工毛髪の曲げ剛性値と第2の人工毛髪の曲げ剛性値の差を求めた。 断面直径80μmにおける数値換算は次の通りである。 曲げ剛性値は、繊維半径の4乗に比例すると言われていることから、一般的に曲げ剛性と繊維の太さは比例関係にあると考えられている。 そこで、実際にテスターでの曲げ剛性測定値を、実測した毛髪の直径から計算した断面積で割り単位面積当たり(mm )を求め、毛髪の直径が80μmでの断面積を乗じた値とした。

    第1の人工毛髪については、実施例1乃至9、比較例1乃至11の何れも、同じ工程で作製したものを用いているので、曲げ剛性値は3.43×10 −5 N・cm /本であった。 温度20℃、湿度40%での糸径80μmに換算した値は、3.13×10 −5 N・cm /本であった。
    第2の人工毛髪については、実施例1乃至3、比較例2乃至5でそれぞれ作製しているので、各毛髪の曲げ剛性値は、順に、5.33×10 −5 N・cm /本、4.86×10 −5 N・cm /本、5.28×10 −5 N・cm /本、4.96×10 −5 N・cm /本、4.72×10 −5 N・cm /本、5.66×10 −5 N・cm /本、8.11×10 −5 N・cm /本であった。

    第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差は次のようになった。
    実施例1、実施例4、実施例5、比較例6及び比較例7では、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差は1.93×10 −5 N・cm /本であった。
    実施例2、実施例6、実施例7、比較例8及び比較例9では、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差は1.54×10 −5 N・cm /本であった。
    実施例3、実施例8、実施例9、比較例10及び比較例11では、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差は1.75×10 −5 N・cm /本であった。
    比較例2では、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差は1.54×10 −5 N・cm /本であった。
    比較例3では、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差は1.35×10 −5 N・cm /本であった。
    比較例4では、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差は2.11×10 −5 N・cm /本であった。
    比較例5では、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差は4.96×10 −5 N・cm /本であった。

    〔人工毛髪束の評価〕
    実施例及び比較例でそれぞれ作製した人工毛髪束を評価するために、予め直径25mmのアルミパイプに毛髪の長さが20cmの毛束を捲いて加熱処理により毛髪にカールを付与した後に、毛髪の半折り位置を5cm×5cmの仮想かつらベースとしてのネット地に植設することにより毛髪の長さが10cmのスワッチ60を作製した(図7乃至図10参照)。 そのスワッチ60を用いて毛髪としての特性評価を行った。 特性評価項目は、柔軟性、スタイルセット性、スタイル保持性、集束性、カールセット性及びカール保持性とし、それぞれ以下のように評価した。

    <柔軟性>
    柔軟性の評価を次の要領で行った。 図7は柔軟性評価手順を模式的に示す図である。 図7(A)に示すように仮想かつらベース61に結着した毛髪62をセットしてカール高さを測定し、図7(B)に示すように50gの負荷として負荷用板63を毛髪62上に載せ、5分間経過した後、負荷用板63を取り除いて1分間放置した後のカールの高さを図7(C)に示すように測定した。 図7(A)に示すように負荷を与える前のカールの高さをh1とし、図7(C)に示すように負荷を与えた後のカールの高さをh1'とし、(h1'/h1)×100から回復率を算出し、数値が高い程硬さがあり柔軟性が劣ると判断した。

    <スタイルセット性>
    スタイルセット性の評価を次の要領で行った。 図8はスタイルセット性の評価手順を模式的に示す図である。 図8(A)に示すように、仮想かつらベース61に結着した毛髪62をスチーマーで伸ばしてカールの高さを測定し、図8(B)に示すように毛髪62に櫛64を差し込んで矢印の方向に移動した後、図8(C)に示すように櫛64を半回転させてその状態を10秒間維持後、櫛64を外して10秒間放置した後に図8(D)に示すようにカールの高さを測定した。 図8(A)に示す状態でのカールの高さをh2とし、図6(D)に示す状態でのカールの高さをh2'とし、(h2'−h2)/h2×100からカールの高さアップ率を算出し、数値が高い程コームなどでスタイルが変りやすいのでセット性が高いと判断した。

    <スタイル保持性>
    スタイル保持性の評価を次の要領で行った。 図9はスタイル保持性の評価手順を模式的に示す図である。 図9(A)に示すように仮想かつらベース61に結着した毛髪62をセットした後にカール高さを測定し、その後図9(B)のように毛髪62幅の中心部に鉤針65を挿入して毛髪62を引っ掛けて、次に図9(C)(D)のように鉤針65を毛髪62が鉤針65から外れるまで垂直に引き上げた後の高さを測定した。
    図9(A)に示す状態でのカールの高さをh3とし、図9(D)に示す状態でのカールの高さをh3'とし、(h3'−h3)/h3からカールの高さアップ率を算出し、数値が高い程外的要因でスタイルが崩れ易いと判断した。

    <集束性>
    集束性の評価について説明する。 集束性とは、毛髪を濡らした時に毛髪一本一本同士がくっ付いて凝集するような状態を意味する。 天然毛髪の場合通常水分を取り除くと毛髪同士は離れて凝集状態は解消される。 これに対して、合成樹脂から成る繊維の場合には集束した状態から、水分を取り除いても集束状態が解消せずにその状態を保持し、または水分がない状態でもあっても凝集する性質がある。 この集束性の現象により、同本数の毛髪を横に並べた時に、集束している状態では並べた毛束全体の幅が小さくなり、集束していない状態では毛束全体の幅が大きくなる。 そこで、湿度が高いと集束が起こり易いので、高湿度環境下に毛髪を放置して集束を発生させた状態から、低湿度環境下に移して集束の解消程度を測定した。

    具体的な集束性の評価方法を説明する。
    図10は集束性の評価方法を模式的に示す図である。 図10(A)に示すように温度25℃、湿度50±5%の環境下でスワッチ60をセットする。 その後、温度25℃、湿度80±5%の環境下で移して30分間放置する。 すると、図10(B)に示すように毛髪62同士が絡み合う。 その後、温度25℃、湿度50±5%の環境下に戻すと、図10(C)に示すように集束状態がほぼ解消する場合と図10(D)に示すように集束状態が解消せず保持している場合とがある。
    毛髪のカール部分は櫛などでセットして整えても、かつらベースに毛髪を手作業で取り付けるため、毛髪のカールの絡み合いがスワッチにより異なる。 そのため、なるべく誤差をすくなくするために、各環境下で、カールの起点の位置を基準に毛髪束の幅W1、W2、W3、W4を定めることにより集束性を定量化した。 図10(A)に示す幅W1と比べ図10(B)に示す幅W2は小さくなる。 図10(B)に示す幅W2よりも図10(C)に示す幅W3及び図10(D)に示す幅W4の方が大きくなる傾向にある。 よって、幅W1と幅W3との関係、幅W1と幅W4との関係から集束性を定量化した。

    具体的には、図10(A)に示すように仮想かつらベース61に植設された毛髪62をセットし、温度25℃、湿度80±5%の環境下で30分間放置する。 図10(B)に示すように毛髪62のカールが始まる起点の位置で毛束幅W2を測定した。 その後、温度25℃、湿度50±5%の環境下で移して30分間放置した後に毛髪に1回コーミングを行い一時的に集束状態を解消させ、毛髪のカールが始まる起点の位置で毛束幅W3、W4を測定する。 (W3−W2)/W2×100又は(W4−W2)/W2×100で拡大率を算出した。 この数値が高いほど毛髪がバラけているので集束性は低いと判断した。

    <カールのセット性>
    カールのセット性の評価を次の要領で行った。 毛髪束を図5(A)に示すように毛材31を20cmの長さに切り揃えたもの多数本例えば450〜500本程度を1セットとして横に並べ、バラけないようにそのほぼ中央部を縫糸32で縫着することにより、幅が13〜15cmのみの毛(ウエフト)状の毛束30に揃え、この毛束30を水に浸漬することにより濡らし、その後、図5(B)に示すように毛束30を直径25mmのアルミパイプ33に巻き付けてその上からナイロン製の不織布を巻きつけて180℃、1時間の加熱処理を施し、このカール付けした毛束における毛髪のカール径を測定した。 測定したカール径の値がアルミパイプの直径25mmに近い程カールセット性が良いと判断した。

    <カール保持性>
    カールの保持性の評価を次の要領で行った。 カールのセット性の評価で使用した毛束30であってカールが付与された毛束30を用い、温度25℃、湿度65±5%の環境下でカール径F1を測定し、シャンプー、ドライヤーでの乾燥、ブラッシングを50回繰り返した後の毛髪のカール径F2を測定した。 各測定した値から、式(F2−F1)/F1×100により、カール径の伸び率を求め、カール径の伸び率の数値が大きいほどカール径の保持性が悪いと判断した。

    表2は実施例1乃至実施例9並びに比較例1乃至比較例11の評価結果を示す図表である。 なお、表2には、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪の素材、構造のほか第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差の値も併せて示している。

    図11乃至図16は各評価項目の値を昇順に並べ替えてグラフ化したものであり、図11は柔軟性に関する毛束の回復率、図12はスタイルセット性に関する毛束高さアップ率、図13はスタイル保持性に関する毛束高さアップ率、図14は集束性に関する毛束幅拡大率、図15はカールセット性に関する毛束カール径、図16はカール保持性に関するカール径伸び率に関するものある。

    柔軟性を示す毛束の回復率については、図11に示すように、実施例1乃至実施例9における値は、比較例1、2、3、9、11、7における値(48.8%、49.7%、50.5%、51.0%、51.3%、51.5%)と比較例4、8、10、6、5における値(65.1%、65.6%、65.9%、66.4%、72.3%)との間にある。 実施例1乃至実施例9における人工毛髪束は、比較例1のように一種類のポリアミド繊維のみから成る人工毛髪束よりも硬く剛性があり、かつ、比較例5のようにポリアミド以外であるポリエステル系繊維を混合した人工毛髪束よりも軟らかさがあることが分かった。 換言すれば、比較例1、2、3、9、11、7における人工毛髪束では、回復率が52%よりも低く、毛髪束として柔らかすぎて十分なボリューム感を出すことができない。 逆に、比較例4、8、10、6、5における人工毛髪束では、回復率が65%よりも高く、ボリューム感が出すぎてしまい、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との何れもポリアミド繊維で構成したことによるポリアミド繊維特有の柔らかさが失われてしまうので好ましくない。
    以上の結果から、人工毛髪束の回復率としては、実施例1乃至実施例9で示す第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との組み合わせが好ましく、ポリアミド繊維特有の柔軟性を失うことなく適度な柔軟性が付与されていることが分かった。

    スタイルセット性に関する毛束高さアップ率については、図12に示すように、実施例1乃至9における値は、比較例1、2、5、9、11、7、3における値(20.6、21.1%、23.0%、24.2%、24.3%、24.5%、25.1%)と、比較例4、8、10、6における値(46.8%、47.4%、48.1%、48.8%)との間にある。 人工毛髪束高さアップ率が小さいとブラシやコームでスタイルをセットしようとしても毛髪の動きの変化が小さく、所望のスタイルを呈することが困難となり好ましくない。 逆に、人工毛髪束高さアップ率が高いと少しのブラッシングにより毛髪が大きく変化してしまい微調整が困難となる。
    以上の結果から、人工毛髪束の高さアップ率としては、実施例1乃至実施例9で示す第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との組み合わせが好ましく、何れの実施例においても一種類のポリアミド繊維で構成した人工毛髪束よりも所望のヘアスタイルをセットし易くなることが分かった。

    スタイル保持性に関する毛束の高さアップ率は、図13に示すように、実施例1乃至実施例9の集合のあとに各比較例が並ぶ昇順になっている。 よって、各実施例は一連の比較例と比べて、スタイルセットした後スタイルが壊れ難く保持され易いことが分かった。

    集束性に関する毛束幅拡大率については、図14に示すように、各実施例の結果は比較例1乃至比較例3及び比較例6乃至比較例11と比べて高いことから、第1の人工毛髪を構成するポリアミド樹脂と異なる素材で第2の人工毛髪を構成し、所定の条件を満たすように第1の人工毛髪に対し第2の人工毛髪を混ぜると、集束性を改善できることが分かった。 なお、比較例5では、何れの実施例と比べても毛束幅拡大率が若干高い結果となったが、これは第2の人工毛髪をPET繊維としたためと考えられる。 比較例4では第2の人工毛髪として実施例1、実施例4及び実施例5と同じ素材を用いているわけであるが、素材の混合割合を、ナイロンMXD6(PAMXD6)とナイロン6(PA6)との割合が85:15であり、ナイロンMXD6の割合を高くし、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差を大きくしたためと考えられる。 比較例4及び比較例5については、集束性以外の評価結果、特に、回復率、スタイルセット性及びスタイル保持性に関する毛束高さアップ率の結果から総合判断すると、本発明の目的を達成するには相応しくない。

    カールセット性に関する毛束カール径については、図15に示すように、各実施例の後に比較例が並ぶことから、各実施例の何れも各比較例と比べ、カール径の値がアルミパイプの直径25mmに近い。 よって、実施例1乃至9では、カールセット性が良いことが判った。

    カール保持性に関するカール径伸び率については、図16に示すように、毛束カール径に関する結果と同様、各実施例の後に比較例が並び、前述したように各比較例と比べ、実施例1乃至実施例9のカール径伸び率が小さい。 よって、実施例1乃至実施例9では、カール径保持性は良いことが判った。

    以上の評価結果により、例えば毛束幅拡大率で評価した集束性の結果からすると一番改善効率が優れているのは比較例5であるところ、比較例5では柔軟性で評価した回復率の数値が高く柔軟性に乏しい。 つまりある比較例では特定の評価においては実施例を上回っているが、総合的に判断すると、何れの実施例も比較例と比べて優れていることが分かった。

    即ち、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との組み合わせ、即ち、ポリアミド繊維の種類の組み合わせとしては、表1に示す各実施例から、ナイロン6の単層構造を有する第1の人工毛髪に対して、第2の人工毛髪としてはナイロン6とナイロンMXD6とを混ぜた単層、鞘部の素材をナイロン6とし芯部の素材をナイロンMXD6とした鞘芯構造、島部の素材をナイロンMXD6とし母材の素材をナイロン6とした海島構造とすることが好ましいことが判った。

    実施例1乃至3を比較例1乃至4と比較した結果、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差が、1.54×10 −5 Ncm /本以上1.75×10 −5 Ncm /本以下がよく、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との混合割合を50:50で混合して人工毛髪束とし、この人工毛髪束を用いて第1の人工毛髪と第2の人工毛髪とが単位領域当たり均等に分布するようにかつらベースに取り付けることが好ましいことが判った。

    実施例1、実施例4及び実施例5と比較例6及び比較例7とを比較すると、何れも、ナイロン6の単層構造の繊維を第1の人工毛髪として採用し、ナイロンMXD6とナイロン6とを70:30の重量比で混ぜた単層構造の繊維を第2の人工毛髪として採用しているところ、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪の混合比が30:70〜60:40が好ましいことが判った。

    実施例2、実施例6及び実施例7と比較例8及び比較例9とを比較すると、何れも、ナイロン6の単層構造の繊維を第1の人工毛髪として採用し、芯部の素材をナイロンMXD6とし鞘部の素材をナイロン6としかつ芯部の素材と鞘部の素材との重量比を75:25の重量比とした鞘芯構造の繊維を第2の人工毛髪として採用しているところ、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪の混合比が30:70〜60:40が好ましいことが判った。

    実施例3、実施例8及び実施例9と比較例10及び比較例11とを比較すると、何れも、第1の人工毛髪をナイロン6の単層構造の繊維を採用し、島部の素材をナイロンMXD6とし海部の素材(母材)をナイロン6としかつ島部の素材と海部の素材との重量比を65:35の重量比とした海島構造の繊維を第2の人工毛髪として採用しているところ、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪の混合比が30:70〜60:40が好ましいことが判った。

    実施例1乃至実施例9と比較例1乃至比較例11においては全て第1の人工毛髪が同種類の場合で比較している。 そこで、第1の人工毛髪をナイロン6(PA6)以外の脂肪族ポリアミド繊維とした場合でも同様のことがいえるか検討した。

    実施例10では、第1の人工毛髪3Aとして断面形状が真円で単層構造を有するナイロン66(PA66)の繊維を作製した。 詳細には、原料チップとしてナイロン66(宇部興産社製UBEナイロン6、6 2020B)のチップを用い、図4(A)における第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した。 その結果、繊維断面直径が83.1μmとなった。
    第2の人工毛髪3Bには、実施例1で作製した、ナイロン6(PA6)とナイロンMXD6(PAMXD6)からなる単層構造を有する繊維を用いた。
    実施例10では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例11では、第1の人工毛髪3Aとして、実施例10で作製したナイロン66の繊維を用いた。
    第2の人工毛髪3Bとして、実施例3で作製した、海部がナイロンMXD6(PAMXD6)で島部がナイロン6(PA6)となる海島構造を有する繊維を用いた。
    実施例11では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例12では、第1の人工毛髪3Aとして、断面形状が真円で単層構造を有するナイロン610(PA610)の繊維を作製した。 詳細には、原料チップとしてナイロン610(東レ社製アミランCM2001)のチップを用い、図4(A)における第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した。 その結果、繊維断面直径が82.8μmとなった。
    第2の人工毛髪3Bとして、実施例1で作製した、ナイロン6(PA6)とナイロンMXD6(PAMXD6)からなる単層構造を有する繊維を用いた。
    実施例12では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例13では、第1の人工毛髪3Aとして、断面形状が真円で単層構造を有するナイロン612(PA612)及びナイロン46(PA46)の繊維を作製した。 詳細には、原料チップとしてナイロン612(デュポン社製Zytel 158)のチップとナイロン46(DSMジャパン社製TS300)とを質量比で70:30に混ぜたものを用い、図4(A)における第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した。 その結果、繊維断面直径が82.5μmとなった。
    第2の人工毛髪3Bとして、実施例1で作製した、ナイロン6(PA6)とナイロンMXD6(PAMXD6)からなる単層構造を有する繊維を用いた。
    実施例13では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例14では、第1の人工毛髪3Aとして、断面形状が真円で単層構造を有するナイロン612(PA612)及びナイロン46(PA46)の繊維を作製した。 詳細には、原料チップとしてナイロン612(デュポン社製Zytel 158)のチップとナイロン46(DSMジャパン社製TS300)とを質量比で80:20で混ぜたものを用い、図4(A)における第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した。 その結果、繊維断面直径が83.0μmとなった。
    第2の人工毛髪3Bとして、実施例2で作製した鞘芯構造の繊維を用いた。
    実施例14では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例15では、第1の人工毛髪3Aとして、実施例14で作製したナイロン612(PA612)及びナイロン46(PA46)の単層構造を有する繊維を用いた。
    第2の人工毛髪3Bとして、実施例3で作製した海島構造の繊維を用いた。
    実施例15では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例16では、第1の人工毛髪3Aとして、断面形状が真円で単層構造を有するナイロン612(PA612)の繊維を作製した。 詳細には、原料チップとしてナイロン612(デュポン社製Zytel 158)のチップを用い、図4(A)における第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した。 その結果、繊維断面直径が80.3μmとなった。
    第2の人工毛髪3Bとして、断面形状が真円で鞘芯層構造を有する繊維を作製した。 詳細には、芯となる部分の原料チップとしてナイロンMXD6(三菱ガス化学社製MXナイロン PAMXD6)のチップを用い、鞘となる部分の原料チップとしてナイロン6(三菱エンジニアリングプラスチックス社製NOVAMID1020)のチップを用い、ナイロン6のチップとナイロンMXD6のチップとの重量比率を45:55とした。 図4(B)の製造システムを用いて第1延伸ローラ乃至第4延伸ローラ15、17、19、22の各ローラの速度を調整した結果、繊維の断面直径が82.2μmとなった。 ここで、毛髪直径を1とすると芯部は0.70であった。
    実施例16では、第1の人工毛髪3Aと第2の人工毛髪3Bとを50:50の割合で混合して人工毛髪束を作製した。

    実施例10乃至実施例16で新たに作製準備した毛髪の曲げ剛性値を前述と同様に測定した。 測定条件等については前述と同じとした。 曲げ剛性値の測定結果について説明する。 表3に実施例10〜実施例16の測定結果のほか、断面直径80μmに換算した値と、第1及び第2の人工毛髪の作製条件等も併せて示している。

    第1の人工毛髪については、実施例10、12、13、14、16でそれぞれ作製しているので、各曲げ剛性値は、順に、3.64×10 −5 N・cm /本、3.67×10 −5 N・cm /本、3.40×10 −5 N・cm /本、3.38×10 −5 N・cm /本、3.02×10 −5 N・cm /本であった。
    第2の人工毛髪については、実施例16で新たに作製しており、その曲げ剛性値は5.01×10 −5 N・cm /本であった。

    第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値(換算値)の差は次のようになった。
    第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差は、実施例10、実施例11、実施例12、実施例13、実施例14、実施例15、実施例16の順に、1.69×10 −5 N・cm /本、1.51×10 −5 N・cm /本、1.64×10 −5 N・cm /本、1.86×10 −5 N・cm /本、1.53×10 −5 N・cm /本、1.74×10 −5 N・cm /本、1.74×10 −5 N・cm /本であった。

    実施例10〜16についても、前述と同様に、人工毛髪束の評価をそれぞれ行った。 表4は実施例10乃至実施例16の評価結果を示す図表である。 なお、表4には、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪の素材、構造のほか第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との曲げ剛性値の差の値も併せて示している。

    実施例10〜16における人工毛髪束について、前述の実施例及び比較例と同様、評価をした。
    柔軟性を示す毛束の回復率については、実施例10〜16の順に、59.4%、58.0%、58.1%、56.5%、54.5%、53.6%、52.4%であった。 これらの値は、図11に示したように、比較例7の値51.5%と比較例4の値65.1%との間にあり、実施例10〜16についても実施例1乃至実施例9と同様、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との組み合わせとして好ましく、ポリアミド繊維特有の柔軟性を失うことなく、適度な柔軟性が付与されていることが分かった。

    スタイルセット性に関する毛束高さアップ率については、実施例10〜16の順に、38.9%、39.0%、39.2%、38.0%、38.8%、39.1%、41.9%であった。 これらの値は、図12に示したように、比較例3の値25.1%と比較例4の値46.8%との間にあり、実施例10〜16についても実施例1乃至実施例9と同様、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との組み合わせとして、一種類のポリアミド繊維で構成した人工毛髪束よりも所望のヘアスタイルをセットし易くなることが分かった。

    スタイル保持性に関する毛束高さアップ率については、実施例10〜16の順に、19%、19.5%、19.6%、20.1%、19.7%、19.0%、16.2%であった。 これらの値は、図13に示したように、比較例1の値26.2%よりも低く、実施例10〜16についても実施例1乃至実施例9と同様、一連の比較例と比べて、スタイルセットした後スタイルが壊れ難く保持され易いことが分かった。

    集束性に関する毛束幅拡大率については、実施例10〜16の順に、34.4%、34.1%、34.9%、35.4%、35.2%、34.7%、35.1%であった。 これらの値は、図14に示すように、比較例3の値27.8%と比較例5の値36.0との間にあり、実施例10〜16についても実施例1乃至実施例9と同様、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との組み合わせとして、第1の人工毛髪を構成するポリアミド樹脂と異なる素材で第2の人工毛髪を構成し、所定の条件を満たすように第1の人工毛髪に対し第2の人工毛髪を混ぜると、集束性を改善できることが分かった。

    カールセット性に関する毛束カール径については、実施例10〜16の順に、31.2mm、31.4mm、30.7mm、30.5mm、31.9mm、31.8mm、30.6mmであった。 これらの値は、図15に示すように、比較例5の値36.6mmよりも小さく、カール径の値がアルミパイプの直径に近い範囲(約31mm〜35mm)であることから、実施例10〜16では、カールセット性が良いことが判明した。

    カール保持性に関するカール径伸び率については、実施例10〜16の順に、6.1%、6.0%、5.8%、5.7%、6.3%、6.2%、5.7%であった。 これらの値は図16に示すように、比較例5の値9.4%より小さい。 よって、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との組み合わせにおいては、実施例1乃至実施例9と同様、実施例10乃至実施例16であっても、カール径保持率が良いことが分かった。

    実施例10〜実施例16の評価結果を前述の実施例1〜実施例9及び比較例1〜比較例11と対比すると、第1の人工毛髪が脂肪族ポリアミド樹脂でなっており、換算した値で曲げ剛性値が3.00×10 −5 〜3.42×10 −5 N・cm /本であれば、第1の人工毛髪としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などで、一種類又はそれらの組み合わせでなっていればよいといえる。 第2の人工毛髪としては脂肪族ポリアミド樹脂と半芳香族ポリアミド樹脂とからなり、単層構造でなくても、鞘芯や海島などの複合構造を有していても良いといえる。

    以上のことから、第1の人工毛髪を脂肪族ポリアミド繊維で構成し、第2の人工毛髪を第1の人工毛髪とは異なる素材、即ち、脂肪族ポリアミドと半芳香族ポリアミドとを単層、複合構造として含んで構成することで、第1に、第1及び第2の人工毛髪を何れもポリアミド繊維とするのでポリアミド繊維の有する基本的な毛髪としての特性、即ち、柔軟性、高熱セット性を維持しつつ、第2に、ボリューム感を向上させることができ、第3に、同種類の繊維同士が収束しあう状態を異種のポリアミド繊維を分散することで、ポリアミド繊維が収束しないで、自然な風合いのかつらを提供することができる。

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