Wig and a method of manufacturing the same

申请号 JP2006290558 申请日 2006-10-25 公开(公告)号 JP4989184B2 公开(公告)日 2012-08-01
申请人 株式会社アデランス; 发明人 慎一 丸山; 貴 佐藤; 康弘 近藤;
摘要
权利要求
  • かつらベースと該かつらベースに植設した毛材とを備えたかつらにおいて、
    上記かつらベースは、少なくとも、装着者の前額部の仮想ヘアラインから頭頂部へ向かうフロント部に人工皮膚部を備えており、
    上記人工皮膚部は、形態保持用ネットを一体化した合成樹脂皮膜で構成され、上記装着者の仮想ヘアラインに位置するフロントエッジから内側へ向かって所定幅の前縁領域とこの前縁領域に続く後方領域とを備え、該前縁領域が装着者の対応する頭部輪郭よりも急勾配に屈曲されることで反り防止構造を有することを特徴とする、かつら。
  • 前記かつらベースは、前記人工皮膚部で構成したフロント部とこのフロント部に連接されたトップ部とを含み、該トップ部がネット型で構成され、前記フロント部の前縁領域を除く後方領域及びトップ部が装着者の頭部形状にほぼ対応する湾曲状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のかつら。
  • 前記反り防止構造は、前記前縁領域とこれに続く後方領域との間の屈曲位置にて曲線状の稜線を呈するよう弧状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のかつら。
  • 前記反り防止構造の前縁領域は、幅方向に弧状に湾曲していることを特徴とする、請求項1に記載のかつら。
  • 前記フロント部の形態保持用ネットは、伸縮性をもたないネットで成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載のかつら。
  • 前記人工皮膚部のフロントエッジが波形に形成されると共に、装着者の仮想ヘアラインの位置に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のかつら。
  • 前記人工皮膚部の厚さが、0.08mm〜0.12mmであることを特徴とする、請求項1,2又は6に記載のかつら。
  • 前記人工皮膚部が、該人工皮膚部の裏面に剥離不能に接着して該人工皮膚部に植設した毛材の針足部を固定し且つ頭皮には再剥離可能に加圧接着される機能を持った接着層を有することを特徴とする、請求項1,2,6又は7に記載のかつら。
  • 前記接着層の再剥離機能が、前記接着層のゲル化反応終了後において発現されることを特徴とする、請求項8に記載のかつら。
  • 前記接着層が、ウレタンゲルからなることを特徴とする、請求項8又は9に記載のかつら。
  • 前記ウレタンゲルが、主剤及び硬化剤からなる2液混合型のウレタン樹脂系感圧型接着剤から成り、上記主剤はウレタン樹脂を主成分とするポリオール、上記硬化剤はポリイソシアネートを主成分とすることを特徴とする、請求項10に記載のかつら。
  • 装着者の前額部の仮想ヘアラインから頭頂部へ向かうフロント部に配置する人工皮膚部を備えるかつらベースと該かつらベースに取り付ける毛材とで構成するかつらを、頭部形状の雄型を用いて製造する方法であって、
    上記雄型が、装着者の前額部の仮想ヘアライン対応位置から下方へ向けて該前額部の輪郭よりも急勾配にカットされたカットオフ面を有し、
    上記カットオフ面を覆うように 形態保持用ネットを上記雄型に固定した後、熱可塑性エラストマーを上記形態保持用ネットに塗布し乾燥することで、該形態保持用ネットを一体化した人工皮膚部を得ることを特徴とする、かつらの製造方法。
  • 装着者の前額部の仮想ヘアライン対応位置から下方へ向けて該前額部の輪郭よりも急勾配にカットされたカットオフ面を有する頭部形状の雄型を用いて、フロント部に人工皮膚部を備えると共に該フロント部の後端縁に連接してネット型のトップ部を備えるかつらベースと該かつらベースに取り付ける毛材とで構成するかつらを製造する方法であって、
    上記カットオフ面を覆うように形態保持用ネットを上記雄型に固定した後、熱可塑性エラストマーを上記形態保持用ネットに塗布し乾燥することで、 該形態保持用ネットを一体的に備えると共に、装着者の仮想ヘアラインに位置するフロントエッジから内側へ向かった所定幅の前縁領域が装着者の対応する頭部輪郭よりも急勾配で屈曲されて反り防止構造を備えた人工皮膚部を得る第1工程と、
    ネット部材に頭部形状の型を付けてトップ部用のネット型を得る第2工程と、
    上記第2工程で得たネット型の上面又は下面に上記第1工程で得た人工皮膚部を重ね、予め設定したフロント部の後端縁で該人工皮膚部とネット型とを接合する第3工程と、
    接合後、フロント部となるべき人工皮膚部の余剰部分を切除すると共に、トップ部となるべきネット型の余剰部分を切除して所定形状のかつらベースを得る第4工程と、
    上記かつらベースに毛材を植設する第5工程と、
    を含むことを特徴とする、かつらの製造方法。
  • 前記人工皮膚部のフロントエッジから内側へ向かった所定幅の前縁領域が弧状に湾曲するように、前記雄型のカットオフ面の角を弧状に切除することで面取り部を形成したことを特徴とする、請求項12又は13に記載のかつらの製造方法。
  • 前記形態保持用ネットが伸縮性をもたないネットであることを特徴とする、請求項12又は13に記載のかつらの製造方法。
  • 前記人工皮膚部のフロントエッジを波形に形成する工程を含むことを特徴とする、請求項12又は13に記載のかつらの製造方法。
  • 前記人工皮膚部の厚さを、0.08mm〜0.12mmに成形することを特徴とする、請求項12又は13に記載のかつらの製造方法。
  • 前記毛材を植設した前記人工皮膚の裏面に単一層でなる接着層を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項12,13,14,16又は17に記載のかつらの製造方法。
  • 前記接着層が、ウレタンゲルからなることを特徴とする、請求項18に記載のかつらの製造方法。
  • 前記ウレタンゲルが、主剤及び硬化剤からなる2液混合型のウレタン樹脂系感圧型接着剤から成り、上記主剤はウレタン樹脂を主成分とするポリオール、上記硬化剤はポリイソシアネートを主成分とすることを特徴とする、請求項19に記載のかつらの製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、使用者の頭部の前頭部から後頭部にかけて頭部の少なくとも一部を覆うかつら及びその製造方法に関するものである。

    従来より、頭部の毛髪が薄くなった場合に装着するかつらは、合成樹脂製の人工皮膚,網目状のネット又は人工皮膚とネットとを組み合わせたかつらベースを備え、このかつらベースを装着者の頭部形状に正確に対応又は類似するように成形し、人毛や人工毛髪等の毛材を植設して作製されている。
    このようなかつらを装着する場合の問題の一つとして、かつらを装着したときにかつらの前縁が使用者の前額部でライン状に視認され、周囲の人にかつらを装着していることが露見されてしまう虞があることである。 そこで、近年、前額部の皮膚とかつらとの境目を見分けにくくしてかつらの露見を防ぐ方法がいくつか提案されている。

    この種の問題を解決するために、従来のかつらは、例えば図17に示すように構成されている。 図17において、かつら1は、かつらベース2とこのかつらベース2に植設された毛材(図示せず)とから構成され、かつらベース2は、フロント部2aと、このフロント部2aに接合されてかつらベース2の後部領域を構成するネット部2bとから形成されている。

    フロント部2aは、例えばウレタン樹脂等の軟質合成樹脂から成り、極薄に、例えば厚さ0.08から0.12mm程度に形成されている。 また、ネット部2bは、細メッシュ状で構成され、接合部2cにて縫着,接着等により、フロント部2aと一体的に結合されている。 毛材は、図では省略されているが、上述したフロント部2a及びネット部2bに公知の方法で植設される。

    ここで、フロント部2a及びネット部2bで成るかつらベース2は、図18に示すように、装着者の頭部形状に模した雄型の石膏型3を使用して、上方へ膨出した湾曲形状を付与すると共に、かつらベースの周縁を形成する境界線3aに沿って切断することにより、全体が装着者の頭部形状に対応した所謂碗状に形成される。 これにより、装着時に、かつらベース2全体が装着者の頭部に密着し、特にフロント部2aの先端縁、即ちフロントエッジ2a'が装着者の前額部上端の、毛髪の生え際(ヘアライン)に沿って密着することにより、かつらの使用が露見しないようになっている。

    特許文献1及び特許文献2には、かつらベースの凹状の内面所定位置に、装着時におけるかつらベースの変態温度より高い変態温度を有する形状記憶合金又は形状記憶プラスチックから成る型保持部材を備えたかつらが開示されている。 この構成によれば、かつら装着時には、型保持部材を適宜に頭部形状に合わせて湾曲して変形させることにより、かつらベースを頭部形状にフィットさせることができる。 さらに、繰返しの使用により、型保持部材が波形等に変形してしまった場合には、かつらベースの型保持部材の領域に熱を加えることにより、型保持部材を構成する形状記憶合金又は形状記憶プラスチックが変態温度以上になって、記憶している直線状又は湾曲形状等に復元する。 これにより、型保持部材を新しいものと交換したと同様の効果が得られる。

    また、特許文献3には、かつらベースの端部を覆うように形状記憶合金から成る毛材を植設したかつらが開示され、風等によって毛材がめくれ上がっても、かつらベースの端部が露出しないかつらが提案されている。

    特許第2545240号公報

    特許第2549553号公報

    特開平05−009801号公報

    ところで、上述したかつら1によれば、装着者がかつら1の装着を繰返し行なうことによって、かつらベース2のフロント部2aのフロントエッジ2a'を含む前縁部に反り返りが発生し、装着時にかつらベース2の前縁部がめくれ上がる虞がある。 この場合には、装着者の頭部との密着性が低下して、かつらの見栄えが悪化すると共に、かつらの使用が露見してしまうことになりかねない。 また、かつらベース2のフロント部2a全体に皺が発生する虞がある。 この場合には、特にフロント部2aの前縁付近に発生する皺によって、上記同様に装着者の頭部との密着性が低下して、かつらの見栄えが悪化すると共に、かつらの使用が露見してしまうことになる。

    特許文献1及び特許文献2によるかつらは、型保持部材により、かつらベースの形状が適正に保持されるようにしているが、かつらベースの前縁のめくり上がり等による装着者の前額部との密着性を改善するものではない。 また、特許文献3によるかつらでは、形状記憶合金による毛材を使用することによって、かつらベースの前縁がめくれ上がっても、かつらベースの前縁が視認されにくくしているが、かつらベースの前縁部のめくり上がりを防止するものではない。

    本発明は、以上の点に鑑みて創作されたものであり、繰返しの使用による人工皮膚によるかつらベース前縁のめくれ上がりを防止するようにしたかつらを提供することを第1の目的としている。
    さらに、本発明は、かつらベース前縁のめくれ上がりを防止するようにしたかつらの製造方法を提供することを第2の目的としている。

    上記第1の目的を達成するために、本発明のかつらは、かつらベースとかつらベースに植設した毛材とを備え、かつらベースは、少なくとも、装着者の前額部の仮想ヘアラインから頭頂部へ向かうフロント部に人工皮膚部を備えており、この人工皮膚部は、形態保持用ネットを一体化した合成樹脂皮膜から構成されて装着者の仮想ヘアラインに位置するフロントエッジから内側へ向かって所定幅の前縁領域とこの前縁領域に続く後方領域とを備えており、前縁領域が装着者の対応する頭部輪郭よりも急勾配に屈曲されることで反り防止構造を有することを特徴とする。 ここで、勾配とは、かつらの縦断面において、平線に対するフロント部の前端部の傾きを示す度合いを言い、本発明では、フロント部の前端部の断面の形状は直線状に限らず湾曲状を含む。 また、フロント部の前端部が装着者の頭部の輪郭よりも急勾配になる形態には、フロント部の前端部が装着者の頭部の前額部の輪郭よりも大きな曲率で湾曲して形成されている形態を含む。

    フロント部の反り防止構造は、好ましくは、フロント部の前縁領域とこれに続く後方領域との間の屈曲位置にて曲線状の稜線を呈するよう弧状に形成され、また、その前縁領域は、幅方向に弧状に湾曲している。
    フロント部の人工皮膚部と一体化した形態保持用ネットは、好ましくは伸縮性をもたないネットで成る。
    かつらベースは、人工皮膚部で構成したフロント部とこのフロント部に連接されたトップ部とを含み、トップ部がネット型で構成され、フロント部の前縁領域を除く後方領域及びトップ部が装着者の頭部形状にほぼ対応する湾曲状に形成されていてもよい。 人工皮膚部のフロントエッジは、好ましくは波形に形成されると共に、装着者の仮想ヘアラインの位置に配置される。
    本発明のかつらにおいて、好ましくは、フロント部が、毛材を植設した人工皮膚部の裏面に剥離不能に接着して毛材の針足部を固定し且つ頭皮には再剥離可能に加圧接着される機能を持った接着層を有する。 この接着層の再剥離機能は、接着層のゲル化反応終了後において発現される。 接着層は、好ましくはウレタンゲルからなり、具体的には、主剤及び硬化剤からなる2液混合型のウレタン樹脂系感圧型接着剤から成り、主剤はウレタン樹脂を主成分とするポリオール、硬化剤はポリイソシアネートを主成分とする。

    さらに、上記第2の目的を達成するために、本発明は、装着者の前額部の仮想ヘアラインから頭頂部へ向かうフロント部に配置する人工皮膚部を備えるかつらベースとかつらベースに取り付ける毛材とで構成するかつらを、頭部形状の雄型を用いて製造する方法であって、上記雄型が、装着者の前額部の仮想ヘアライン対応位置から下方へ向けて前額部の輪郭よりも急勾配にカットされたカットオフ面を有し、このカットオフ面を覆うように形態保持用ネットを雄型に固定した後、熱可塑性エラストマーを形態保持用ネットに塗布し乾燥することで、形態保持用ネットを一体化した人工皮膚部を得ることを特徴とする。
    また、本発明の第2の構成は、装着者の前額部の仮想ヘアライン対応位置から下方へ向けて前額部の輪郭よりも急勾配にカットされたカットオフ面を有する頭部形状の雄型を用いて、フロント部に人工皮膚部を備えると共にフロント部の後端縁に連接してネット型のトップ部を備えるかつらベースとかつらベースに取り付ける毛材とで構成するかつらを製造する方法であって、雄型のカットオフ面を覆うように形態保持用ネットを雄型に固定した後、熱可塑性エラストマーを形態保持用ネットに塗布し乾燥することで、 形態保持用ネットを一体的に備えると共に、装着者の仮想ヘアラインに位置するフロントエッジから内側へ向かった所定幅の前縁領域が装着者の対応する頭部輪郭よりも急勾配で屈曲されて反り防止構造を備えた人工皮膚部を得る第1工程と、ネット部材に頭部形状の型を付けてトップ部用のネット型を得る第2工程と、第2工程で得たネット型の上面又は下面に第1工程で得た人工皮膚部を重ね、予め設定したフロント部の後端縁で人工皮膚部とネット型とを接合する第3工程と、接合後、フロント部となるべき人工皮膚部の余剰部分を切除すると共に、トップ部となるべきネット型の余剰部分を切除して所定形状のかつらベースを得る第4工程と、かつらベースに毛材を植設する第5工程と、を含むことを特徴としている。

    本発明のかつらによれば、かつらベースのフロント部が、形態保持用ネットを基材とした人工皮膚材で形成されているので、極薄のフロント部に対して形態保持用ネットによって剛性そして形態保持が高められ、前縁のめくれ上がりや伸びや皺の発生などが防止される。 これによりかつらベースが、特に装着者のヘアラインから天頂部側へ所定距離入ったフロント部の領域にて、装着者の頭部に密着した状態で装着されることができる。

    また、かつらベースのフロント部を、フロントエッジから内側へ所定幅を有する前縁領域とこの前縁領域に続く後方領域とに画成し、前縁領域が、装着者の前額部の輪郭よりも急勾配になるように形成されていることで、フロント部が装着者の前頭部に食い込むように湾曲した状態で装着されることになる。 従って、フロント部の前縁領域、とくにヘアラインに対応するフロントエッジが装着者の前額部上端に確実に密着すると共に、繰返しの使用によりフロント部の前縁が少しめくれ上がったとしても、内側に湾曲した状態からめくれ上がることにより、フロント部の前縁が反り返って装着者の頭部形状と合わなくなるほど浮き上がることはなく、頭部に確実に密着する。

    このようにして、本発明によれば、フロント部が形態保持用ネットを一体化した極薄の人工皮膚材で形成されると共に、前縁領域が頭部形状に対して頭部側に僅かに湾曲して形成されているので、繰返しの使用によっても、かつらベースの特にフロント部にめくれや皺或いは伸びなどが発生せず、よって装着者の頭部から浮き上がってしまうことがない。 従って、かつらベース、特にフロント部の装着者の頭部との密着性が保持されるので、かつらの見栄えが低下するようなこともなく、またかつらの使用が露見してしまうようなこともない。

    本発明に係るかつらの製造方法によれば、石膏型のカットオフ面とそれに接する前額部の輪郭との境界の稜線が切除されて丸めて形成される場合は、この稜線における曲率半径が比較的大きくなり、フロント部の前縁領域における曲率が緩和されるので、装着者の頭部に対する密着性が高められることになる。 これは、曲率を緩和することにより装着者の頭部形状により近似したフロント部を作ることができるからである。 稜線が、2〜5mmの幅で、好ましくは3mmの幅で、切除されて湾曲されている場合には、装着者の頭部に対する密着性が最適化される。

    以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
    図1は本発明の実施形態に係るかつら10を示す図であり、特に、かつら10の裏面を示している。 かつら10は、かつらベース11と、このかつらベース11に植設した複数の毛材12と、かつらベース11の裏面の所望の位置に取り付けたかつら用ストッパー等の止着部材(図示省略)と、から構成されている。 なお、図1では、かつらベース11の構造を分かり易く説明するために、かつらベース11に取り付けた毛材12の描写を僅か数本だけ描くに止め大部分を省略しているが、毛材12は実際には、かつらベース11の表面全体にわたって上方へ突出させて緻密に取り付けられている。

    かつらベース11は、装着者の前額部の仮想ヘアラインから頭頂部へ向かうフロント部11aとこのフロント部11aに連接されベース主体を構成するネット型11bとで構成されている。 かつらベース11は、装着者の前額部のヘアラインLに沿ってフロント部11aの外形が形成されている。 ここで、本発明の実施形態におけるかつら装着者のヘアラインLについて説明する。 図2はかつら装着者の概略側面図であり、ヘアラインLとは、装着者の前額部Mの最上縁に位置し、両サイド部の前額髪際隅部から前頭部を横断して前額部と髪際とを分ける境界線である。 かつら装着者の前頭部の毛髪が脱毛してヘアラインが不明瞭な場合には、例えば、前頭部に毛髪が自然に存在していれば眉毛から3〜6cm程度上方に存在するであろうと推測できるヘアラインLを想定している。 この想定できるヘアラインを本発明では仮想ヘアラインL又は単にヘアラインLと称している。
    本発明のかつらベース11のフロント部11aは、かつら装着者を正面視した場合に毛髪内を透かして見える前頭部領域に対応し、例えば、図2に点線Bで囲んだ、装着者の仮想ヘアラインLから頭頂部側へ所定距離、例えば、2〜5cm程度の前頭領域αに対応するようにサイズが選定されている。 このフロント部11aは、装着者の仮想ヘアラインLに対応するフロントエッジ11a'から内側へ向かって所定幅の前縁領域111と、この前縁領域111に続く後方領域112とに画成されている。 前縁領域111は、上記ヘアラインLを構成するフロントエッジ11a'から頭頂部側へ1〜5mm程度入った幅の最先端部の領域である。

    さらに、本発明の実施形態に係るかつら10は、フロント部11aの前縁領域111が、図3に示すように、かつら装着者の前額部の上下方向の輪郭R、即ち、頭頂側から仮想ヘアラインLに至る湾曲した縦のラインよりも急勾配になるように形成されていることを特徴としている。 具体的には、図4に点線で示すように、かつらベース11のフロント部11aは、前縁領域111、即ちフロント部先端から後方領域112へ至る1〜5mm程度迄の領域がそれに対応するかつら装着者の頭部の形状、即ち、ヘアラインLから頭頂部側へ至る1〜5mmまでの輪郭R1よりも急勾配に形成され、反り防止構造110を構成している。 この反り防止構造110により、前縁領域111が装着者の対応する頭部輪郭よりも急勾配に屈曲されることで、かつらの繰り返しの着脱や強風などによってもフロントエッジが伸びたり緩んだりして、めくれるのを防止することができる。 本実施の形態では、反り防止構造110は、前縁領域111とこれに続く後方領域112との間の屈曲位置113にて曲線状の稜線を呈するよう弧状に形成され、前縁領域111と後方領域112との境界が横方向の線状を呈しないようにされている。 このために、作り方は後述するが、反り防止構造110の前縁領域111は幅方向、即ち上下方向にいわゆる面取りして弧状に湾曲して形成されている。

    フロント部11aは、形態保持用ネット(図13参照)を基材として、この形態保持用ネットを埋め込んだウレタン樹脂等の軟質合成樹脂皮膜から成り、極薄に、例えば厚さ0.08〜0.12mm程度に形成されている。 基材としての形態保持用ネットを構成する糸は、それがフロント部11aの表面から露出しないように、フロント部11aの厚さより細い径のものが使用される。

    形態保持用ネットは、伸縮性を持たない合成樹脂製のものが使用される。 これは、伸縮性を有するネットを基材として使用した場合、フロント部11aの作製過程で人工皮膚となる熱可塑性エラストマーをネットに塗布・乾燥させた際に、ネットの伸縮が起こり、完成したフロント部の形態が崩れてしまうからである。 また、形態保持用ネットは基布として適した剛性のものが使用される。 剛性が低過ぎる場合、フロント部11aのめくれや皺を防止する効果が弱く、また剛性が高過ぎる場合には、フロント部11aの柔軟性が損なわれてしまう。 さらに、形態保持用ネットのメッシュに関しては、その形状やメッシュ数は、従来かつらベースのネットとして使用されるものと同条件のものが使用される。 即ち、上述した糸の径や剛性の条件を満たすもので、且つかつら使用時に露見しやすい形状でない限り、一般的なメッシュのネットが使用可能である。

    具体的には、例えばナイロン(登録商標)などのポリアミド系合成繊維で構成されたネット(糸径43μm,メッシュ105(本/インチ),曲げ剛性0.0126(gf・cm /cm))のものが形態保持用ネットとして使用される。 これに対して、例えば市販のナイロン(登録商標)製ストッキング用ネット(糸径50μm)は、伸縮性が大きく形態安定性が低いので、これを形態保持用ネットとして使用した場合にはフロント部11aに伸縮が発生してしまうと共に、曲げ剛性が0.0012(gf・cm /cm)と比較的低いことから、フロント部11aにめくれや皺を防止するためには不適である。 また、ポリエステル製のネット(糸径50μm)は曲げ剛性が0.0896(gf・cm /cm)と著しく高いため、これを形態保持用ネットとしてフロント部11aを構成した場合、このフロント部11aは硬くなり、柔軟性が失われるので頭部に対する密着性が低くなり好ましくない。

    さらに、本実施形態に係るかつら10においては、図1に示すように、フロント部11aの裏面に、単一層でなるかつら用接着層(以下、適宜、接着層と呼ぶ)30がフロント部11aの前縁領域111又は前縁領域111及び後方領域112に沿って所定の幅で塗布されている。 図5は図1のA−A線断面図であり、本発明の実施形態に係るフロント部11aの前縁領域の構成を模式的に示す断面図である。

    図5に示すように、毛材12はフロント部11aの表面側から裏面に貫通して植設され、再びフロント部11aの表面側に引き抜くことによりV字状又はU字状に植設されている。 このフロント部11aの裏面に貫通し、裏面側に露出する点状又は線状の毛材を針足部12Aと呼ぶことにする。 なお、このような植設方法を通常、V植えと称している。

    単一層で成るかつら用接着層30は、フロント部11aの裏面に剥離不能に接着され、かつら装着者の頭部には再剥離可能に加圧接着され得る特質を有している。 また、接着層30はフロント部11aの裏面に貫通して植設される毛材12の針足部12Aを固定する毛髪固定機能を有している。 このように、本実施形態に係るかつら10のフロント部11aは、このフロント部11aとその裏面に接着された単一の層でなる接着層30の2層構造からなる。 なお、接着層30が塗布されていないフロント部11aの裏面には、毛止め用ウレタン溶液が塗布されて、毛材12の針足部12Aがフロント部11aに固定されている。

    本発明の実施形態に係る接着層30は、フロント部11a裏面に塗布した接着剤溶液のゲル化反応により、フロント部11a裏面に化学的結合により接着している。 そして、毛材12の針足部12Aは、接着層30がフロント部11aへ接着されるときにフロント部11aと接着層30との間に針足部12Aが挟まれて、この毛材12の針足部12Aも同時にフロント部11a裏面に固定される。 なお、図5に示すように、接着層30には装着者が手で容易に剥がすことができる塩化ビニルシートなどの剥離シート40を設けてもよい。

    一方、接着層30の頭部に当接する面は、頭部へ再剥離可能に加圧接着され得る。 この接着層30の頭部への再剥離機能は、上記接着剤のゲル化反応後において発現される。 このため、ゲル化反応終了後の接着層30は頭部に対しては、常温で、短時間、わずかな力を加えるだけで接着できる。 即ち、加圧接着できる感圧型接着層(所謂粘着層)の性質を有している。 さらに、ゲル化反応終了後の接着層30は、微量の水や有機溶剤などでその表面を拭うことにより、頭皮への繰り返し貼着ができる。 この繰り返し貼着ができることを、本発明において再剥離機能或いは単に剥離機能と称している。

    次に、本発明のかつら用接着層30の材料について説明する。
    接着層30の形成に用いられるかつら用接着剤としては、大別すると、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、ゴム系が挙げられる。 ウレタン樹脂系のかつら用接着剤は、毛材12の針足部12Aをフロント部11aに固定するためにフロント部を構成する人工皮膚部との接着性が良好であり、接着層30とフロント部11aとの間を剥離不能に接着できる性質を有している。 また頭部に貼着する場合の再剥離性能が良好であり、低皮膚刺激性である。 このため、ウレタン樹脂系のかつら用接着剤は、本発明の接着層30を形成するかつら用接着剤として好適に使用することができる。

    一方、アクリル樹脂系の接着剤は、粘着性は優れるが、再剥離性能が弱く皮膚刺激性も強いことがある。 ゴム系は、初期の粘着性は優れているが、時間の経過と共に再剥離性能が著しく低下する問題がある。

    さらに上記かつら用接着層30をアクリル樹脂系及びゴム系の接着剤により形成すると、樹脂自体の硬さから、頭皮に貼着したときに皮膚の動きに追従できず頭部との密着性が低下して剥離しやすいこと、毛材12の針足部12Aをフロント部11aに固定する接着力が弱いこと、接着層30とフロント部11aとの間の接着力が弱く剥離も容易に起こることから使用に適さない。

    次に、ウレタン樹脂系のかつら用接着剤を用いて接着層30を形成する場合について、さらに詳しく説明する。 ウレタン樹脂系のかつら用接着剤としては、主剤及び硬化剤からなる2液混合型の接着剤を好適に使用することができる。 主剤はウレタン樹脂を主成分とするポリオール、硬化剤はポリイソシアネートを主成分とすることができる。 これら2液を混合してゲル化反応させ、ゲル化反応終了後にゲルとなるものが好適である。 このゲル化は加熱により促進できる。 これにより、ゲル化の過程において、硬化剤中に含まれているイソシアネートの作用により表面張力などの物理的な結合力だけでなく化学的な結合力が加わる。 このため、フロント部11aを構成する人工皮膚と接着層30との間の接着力に優れ、植設した毛材12の針足部12Aとの固着力が著しく向上して、従来の接着剤による毛止め工程と同程度の固着力が得られる。 なお、固着力とは、本発明の接着層30において、人工皮膚に植設した毛材12の針足部12Aへの接着力と定義し、通常の熱賦活型接着剤による接着力とは区別するために用いる。

    さらに、2液混合型ウレタン樹脂系のかつら用接着剤は反応後にゲル状構造の接着層、即ち、粘着層となるので、前額部にフロント部11aを配置したときに頭部の動きに追従するという優れた反応を示し、頭皮との密着性が低下せずに、十分なかつら粘着力が発現する。

    次に、植設した毛材12の針足部12aのフロント部11aへの固着力を付与する方法について説明する。 この方法は、2液混合型ウレタン樹脂系のモノマーからなる接着剤を混合し、この2液中にフロント部11aの材質の有機溶剤を少量添加した接着剤をフロント部11aに塗布し、乾燥することにより実施できる。 このような有機溶剤としては、フロント部11aの材料がウレタンエラストマーの場合には、ジメチルホルムアミド(DMF)やメチルエチルケトン(MEK)などを使用できる。

    接着層30の毛材12の針足部12Aの固着力及び頭部への粘着力の強さは、2液混合型ウレタン樹脂系のかつら用接着剤の主剤及び硬化剤の混合割合の調整と、塗工粘度の調整と、2液混合した後に毛材12を植設したフロント部11aに塗布するまでの静置時間の調整などにより、調節できる。

    さらに、本実施形態に係るかつらは、フロント部11aのフロントエッジが波形に形成されている。 図6は、フロント部11aのフロントエッジに実施する形状加工の模式図である。 図中の波形形状について、長手方向に対して凸型部分の頂上を頂点51、両側の山の間にある谷の底部分を谷間52と表記する。

    図7〜図12は図6で示した波形形状との比較を行うための模式図である。 まず、切り込みを波形とする理由は、フロントエッジの形状を図7,図8のような三形や四角形等の多角型にすると、かつらを装着した場合にフロント部11aのフロントエッジの突出している部分53がめくれて、かつらの露見につながる可能性がある。 このため、切り込みの形状は先端部に丸みを帯びた波形が適している。

    また波形形状の寸法について、図6における頂点51から谷間52までの長手方向に対する垂直方向の長さ、即ち深さAは1.0mm〜3.0mm程度とすることが好ましい。 深さAが図9に示すように3.0mmよりも大きい場合、かつら装着の際に頂点51を含んだ突片にめくれが生じて露見につながる可能性がある。 また、深さAが図10に示すように1.0mmよりも小さい場合、フロント部外縁に波形形状の切り込みを入れず直線状に処理したものと比べてフロントエッジの形状の差がほとんど無く、十分な迷彩効果を持たせることができない。

    図6における頂点51aからそれに隣接する頂点51bまでの長手方向の長さBは7.0mm〜30.0mm程度が望ましい。 長手方向の波形の長さBが30.0mmよりも大きい場合、図11に示すように、フロントエッジの形状を直線状として処理したものと変わりが無く、迷彩効果を持たせることができない。 長手方向の波形の長さBが7.0mmよりも小さいと、フロントエッジの形状は図12に示すように鋸刃状になって頂点51を含む山型部分が突出する形状となるため、装着時にめくれが生じる可能性がある。

    ネット型11bは、上記フロント部11aと接合していて、かつら装着者の頭部形状と一致する又は類似の型を有する。 このネット型11bは、例えば、上述したフロント部11aの基材として使用される形態保持用ネットとは異なる剛性、糸径、メッシュのもので成り、接合部11cにて縫着,接着等によりフロント部11aと一体的に結合される。 ネット型11b及び接合部11cには、公知の毛材の植設方法、例えば、ひばり結び、巻き結びなどによって、毛材12が取り付けられている。 毛材12としては、人毛の他に、ナイロン(登録商標),ポリエステル等で作った、例えば直径0.05乃至0.2mm程度の人工毛髪が好適である。 さらに、かつら10においては、ネット型11bの裏面の所望の部位に、好ましくは、かつら10を装着者の頭部に固定するために、公知のかつら用ストッパーや接着剤等の固着部材が配設される。
    本発明の実施形態に係るかつら10は以上のように構成されている。

    次に、かつら10の製造方法について説明する。
    第1工程として、フロント部を構成する人工皮膚の製造方法について説明する。
    先ず、図13(A)において、装着者の頭部形状を模した雄型20の石膏型22に対して、平坦な合成樹脂製の形態保持用ネット23を皺がよらないよう展張して密着し、図13(B)に示すように、形態保持用ネット23を固定用針具24a,24bを使用して雄型20の石膏型22に対して固定する。

    続いて、形態保持用ネット23を固定した雄型20の石膏型22の表面に対して、形態保持用ネット23の上から、熱可塑性エラストマー溶液、例えばウレタンエラストマーをDMF及びMEKに溶解させると共に防黴剤を添加した溶液を塗布し、加熱温度60℃で約1時間乾燥させる。

    その後、上記ウレタンエラストマー溶液に対して、ウレタンエラストマー濃度を3%程度低くしたウレタンエラストマー溶液を、この人工皮膚に塗布し、同様に加熱温度60℃で約30分間乾燥させる。 これにより、形態保持用ネット23はネット及びその網目の全体がウレタン皮膜で覆われ、厚さ約0.07mm程度の人工皮膚材、即ちフロント部11aが形成される。 この場合、人工皮膚材の表面には、内部の形態保持用ネット23の格子状の凹凸部が現われることにより艶消し効果が得られるが、艶消し効果をさらに高めるために、ウレタンエラストマー溶液に艶消し剤として粉状シリカ(平均3.1〜4.2μm)を約8重量%で添加すると共に、紫外線吸収剤及び酸化防止剤を添加した艶消し用溶液を、さらに人工皮膚材に塗布して、加熱温度60℃で約2〜4時間程度乾燥させる。 このように艶消し用溶液の塗布厚約0.03〜0.035mm程度が加えられることにより、厚さ約0.09〜0.11mm程度の人工皮膚材が形成される。

    以上の第1工程における人工皮膚材の作製にあたっては、次のような雄型20を用いることを特徴としている。 具体的には、図14に示す装着者の頭部形状の雄型20を使用する。 この雄型20は台座21上に設けられた石膏型22から構成されており、数種類の典型的な頭部形状の石膏型を準備しておいて、装着者の頭部形状に最も近似する型を選択して用いてもよいが、より好ましくは、装着者個々人の頭部形状を厳密に型取りした石膏雄型が用いられる。 この雄型の表面には、予め設定したフロント部11aとネット型11bの領域を示す境界線20aが描かれる。 さらに、本実施形態に係る雄型20は、装着者の頭部形状(点線図示)に対して、かつらベース11の輪郭を形成する境界線20aの、前額部に相当する位置から下方がカットオフされている。

    具体的には、装着者の仮想ヘアラインに相当する前額部の上端から石膏型の下方へ向けて装着者の前額部の輪郭よりも急勾配にカットされたカットオフ面22aを有する。 このカットオフ面22aは、仮想ヘアラインの左右の前額髪際隅部にわたって切除されると共に、水平面に対して所定の角度θ1を有している。 この角度θ1は、好ましくは75〜90度、最適には90度に選定される。 なお、角度θ1が75度未満の場合には、十分なめくれ防止又は反り防止効果が得られず、また90度を超える角度の場合には、反り防止効果は得られるものの、雄型20がアンダーカットを備えることになるため、人工皮膚の離型がうまく行なわれず、基材となる形態保持用ネットを皺なく雄型に被せることが困難である。

    このようにして形成されたカットオフ面22aと、石膏型22の頭部形状の表面との間に境界としての稜線22bが形成され、カットオフ面22aは石膏型22の表面に対して所定の角度θ2を有する。 例えば、150度以上の角度θ2を備えた稜線22bが形成される。 本実施形態において、好ましくは、この稜線22bは、図15にて符号22cに示すように、所定幅wで曲線状に面取りされて丸められる。 この面取り幅wは、好ましくは2〜5mmに、最適には3mmに選定されている。 なお、面取り幅wが2mm未満の場合には、稜線22bを丸めることによる反り防止効果の向上が見られない。 面取り幅wが5mmを超える場合には、面取りされた部分の形状が、頭部形状から大きく外れることになるため、装着者の頭部に対する密着性が損なわれることになってしまう。 このように石膏型22の稜線22bが曲線状に面取りされて湾曲されることで、成形されるかつらベース11のフロント部11aの前縁領域111と後方領域112との間で左右に横断する屈曲線が消失して、フロント部11aの部分が弧状に湾曲形成されることができる。

    上記雄型20を使用して、かつらベース11を作製する場合、雄型20の石膏型22に形態保持用ネット23を被せて、特に、カットオフ面22aに形態保持用ネット23が皺やたるみが発生しないように固定した後、熱可塑性エラストマーを塗布し、乾燥させる。 これにより、人工皮膚と該人工皮膚と一体化した形態保持用ネットとから構成された人工皮膚部110aが形成され得る。

    次に、第2工程として、合成樹脂製のネットを用意し、このネットに装着者の頭部の形状に合わせた型を付け、トップ部となるべきネット型11bを得る。 具体的には、ネットを装着者の頭部形状に成形するために、頭部形状の雄型の上にネットを張り樹脂加工を行う。 この樹脂加工は、用意したかつら装着者の頭部形状の雄型にナイロン(登録商標)などのポリアミド繊維からなるネットを張って固定した後、そのネットの上から熱硬化性ウレタン樹脂溶液を塗布し、加熱温度100℃で8時間乾燥させて成形を行う。 次に、雄型からネットを剥がして超音波加工を行う。 この超音波加工とは、ネットを構成する糸が交差する部分を超音波と加圧によって溶着し、交差する部分を固定する処理である。 超音波加工を行った後に、石膏型の上に超音波加工を行ったネットを前額部から後頭部へ、そして左右側頭部の位置に合わせて張って固定し、熱硬化性ウレタン樹脂溶液をその上から塗布し、加熱温度100℃で4時間乾燥させて成形を行う。 本例ではネットとしてポリアミド製ネットを用いたので、熱硬化性ウレタン樹脂溶液による樹脂加工後に超音波加工及び再成形処理工程を行ったが、これはポリアミド樹脂の吸水性が高いために寸法安定性が悪く、また頭部形状に成形した形状が崩れ易いので、それを防止する目的である。 ポリアミド繊維以外のネットの場合は、吸水性が低く寸法安定性が良好なので、熱硬化性ウレタン樹脂溶液による樹脂加工だけでも特に問題ない。 なお、成形に用いるネットの糸径は220D、メッシュは25メッシュ程度(本/インチ)のネットを用いるのが好適であるが、成形に用いるネットは頭部形状の型を付けることができる素材であればよく、糸径やメッシュの数値は適宜変更可能である。

    次に、第3工程として、第1工程で作製した人工皮膚部110aの上に、第2工程によって予め装着者の頭部形状に合わせたネット型11bを重ね合わせ、接合部11cの位置で縫着又は接着して人工皮膚部110aとネット型11bを接合して一体化を行う。

    接合後、第4工程として、フロント部11aとなるべき人工皮膚材の余剰部分を切除すると共に、トップ部となるべきネット型の余剰部分を切除して所定形状のかつらベース11を得る。 具体的には、人工皮膚材の余剰部分としては接合部11cから後方の部位を切除し、ネット型の余剰部分としては接合部11cから前方の部位を切除する。 これにより、図1に示すフロント部11aとネット型11bとが画成されたかつらベース11の基本形状が形成される。 なお、この切除の際に、かつら前額部側に設けているフロント部11aのフロントエッジ11a'の波形形状加工を行う。 このようにして、かつらベース11が完成する。

    このかつらベース11の全面に、第5工程として、所望又は所定の毛量と毛流になるように公知の植毛方法で毛材12を植設する。

    第6工程では、毛材12を植設したフロント部11aの裏面にかつら用接着層30を形成する。 かつら用接着層30は、植設されて人工皮膚部の裏面に出ている毛材12の針足部12Aをフロント部11aに固定する機能と、頭部に貼着する機能を兼ね備えたかつら用接着剤を塗布し、乾燥させることにより形成することができる。 このかつら用接着剤の塗布方法としては、スプレー法や刷毛を用いた方法が使用できる。

    ここで、かつら用接着層30の具体的な製造工程について説明する。
    最初に、毛材12を植設した人工皮膚材を裏返してかつら装着者の頭部形状雄型に固定する。 この頭部形状雄型は、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂から形成される。 主剤はウレタン樹脂を主成分とするポリオール、硬化剤はポリイソシアネートを主成分とする2液混合型の接着剤を混合攪拌する。 必要に応じて、有機溶剤であるDMF及びMEKを適量加えても良い。

    この溶液を常温で所定時間静置して反応を進めて、かつら用接着剤溶液とする。 所定時間静置するのは、混合攪拌した上記溶液中の分子同士の架橋反応をある程度進ませるためである。 所定の時間静置したかつら用接着剤溶液を、人工皮膚の裏面にハケで所望の厚みになるよう塗布し、常温以上の加熱温度で所定時間乾燥させ、乾燥後室温まで冷却することにより、かつら用接着層30を形成することができる。 所望の厚さの接着層30を得るために、上記かつら用接着剤溶液の塗布及び加熱による乾燥を繰り返してもよい。 なお、接着層30が塗布されない人工皮膚部の裏面には、毛止め用ウレタン溶液を塗布して、毛材12の針足部12Aを人工皮膚に固定する。

    ここで、形態保持用ネット23を固定したフロント部11aの曲げ剛性を測定した。 比較例として、上述したフロント部11aと同様に、形態保持用ネット23を含まない人工皮膚だけで成るフロント部を作製した。 曲げ剛性の測定は、試料として、人工皮膚のサンプル全体を一定曲率まで円弧状に等速度で曲げて、それに伴う微小な曲げモーメントを検出し、この曲げモーメントと曲率の関係を測定することとした。 測定条件としては、チャック間距離:1cm,トルク検出器:トーションワイヤー(スチールワイヤー)の捩れ検出方式,トルク感度:1.0gf・cm(フルスケール10Vにて),曲率:±2.5cm×10 −1 ,曲げ変位角度:0.5cm×10 −1 /秒,測定サイクル:1往復,サンプル幅:1cm,サンプル膜厚:ネット有り・ネット無し共に100〜110μm,温度:22℃,湿度:60%RHであった。

    このような測定実験の結果、図16に示すように、ネット有りの場合、曲げ剛性値(gf・cm /cm)は、0.03215であり、ネット無しの場合の0.01388と比較して、高い曲げ剛性値が得られることが分かった。 これにより、ネット(形態保持用ネット)有りの人工皮膚、即ち本発明によるフロント部11aは、ネット無しの場合と比較して曲げ剛性が高い。 曲げ剛性が高ければ高いほど、折り曲げ等の外部から加えられた力に対する耐性が高いため、めくれや皺が発生しにくく、従って反りが発生し難いことが分かる。

    このように構成された本発明によるかつら10は、かつらベース11のフロント部11aの前縁領域111が装着者の対応する頭部輪郭よりも急勾配に屈曲されることで反り防止構造110を有している。 この反り防止構造110は、フロント部11aのフロントエッジ11a'から内側へ所定幅を有する前縁領域111とこれに続く後方領域112との間の屈曲位置にて曲線状の稜線を呈するよう弧状に形成されている。 この曲線状の屈曲部は、石膏雄型20に形成された面取り部22cの湾曲形状が忠実に転写されることで形成される。 従って、かつら装着時にフロント部11a自体が装着者の前頭部に食い込むように湾曲した状態で密着すると共に、繰返しの使用によりフロント部11aの前縁がめくれ上がろうとしても、フロント部11a自体が内側に湾曲した状態に形成されているため、フロント部11aの前縁領域が反り返って装着者の頭部形状と合わなくなるほど浮き上がるのを防止できる。

    さらに、本発明によれば、かつらベース11の前額部を構成するフロント部11aが形態保持用ネット23を基材としてこれをウレタン樹脂に埋入して形成されているので、極薄のフロント部11aに対して形態保持用ネット23により剛性そして形態保持力が高められ、前縁のめくれ上がりや皺の発生が防止される。 これにより、かつらベースが、特に前額部の領域にて、装着者の頭部に一層密着した状態で装着されることになる。

    以上のように、本発明によれば、ネット型11bの前方部に設けたフロント部11aが形態保持用ネットを基材として形成されると共に、前縁が頭部形状に対して内側に僅かに湾曲して形成されているので、繰返しの使用によって、かつらベース11の特にフロント部11aにめくれや皺により反りが発生して装着者の頭部から浮き上がってしまうようなことがない。 従って、かつらベース11、特にフロント部11aの装着者の頭部との密着性が保持されるので、かつら10の見栄えが低下するようなこともなく、またかつら10の使用が露見してしまうようなこともない。

    さらに、かつら10はフロント部11aの裏面の例えば前端部側に接着層30を備えていることから、この接着層30によってフロント部11aが装着者の頭部に密着して浮き上がりが防止できる。 この単一層でなる接着層30は、毛材12の針足部12Aを固着できる程度の厚さでよく、例えば植設する毛材12の太さが0.08〜0.09mmであれば0.05mm程度で済むので、前額部の極薄のフロント部11aを軽量化することができる。 また、頭部側に貼着する側の接着層30は再剥離性を有し、接着層部分を水や有機溶剤で洗うだけで粘着力が回復して繰り返し使用ができる。 このため、低コストなかつら10を実現することができ、装着者への負担が少なくて済むことになる。

    さらに、かつらベース11は、装着者の前額部に対応する領域、即ちフロント部11aのフロントエッジ11a'が波状に形成されていることで、かつら装着時に、フロント部11aが装着者の前額部に対する密着性が向上し、前額部の生え際における迷彩効果が高められている。

    以上詳述したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。 例えば、接着層30をフロント部11aの裏面の全端部側に塗布する場合、フロント部11aのフロントエッジの輪郭に沿って、所定の間隔を置いて散点状に複数の接着層30を塗布しても、或いはフロント部11aの裏面全体に塗布してもよい。 なお、フロント部11aへの接着層30の形成は必ずしも不可欠ではない。 他の接着手段、例えば医療用の瞬間接着剤を用いて固着することもできる。

    フロント部11aは、前額部に対応する全領域にのみ設けられなければならないものではなく、例えば装着者の分発部相当位置だけに設けられていてもよい。

    上述した実施形態では、フロント部11aは、形態保持用ネットを人工皮膚に埋入した例で説明したが、人工皮膚と形態保持用ネットとのいずれかを上下に積層して構成されていてもよい。

    また、上記実施例ではフロント部11aのエッジのみに波形状の切り込みを入れているが、側部や後頭部等の前額部以外の外縁部にも同様の切り込みを入れて迷彩効果を持たせてもよい。 例えば、トップ部に配置するネット型11bの外縁を波形に形成してもよい。 なお、この波形の切り込みは、本発明の構成上必ずしも必須ではない。

    単一層でなる接着層30として、ウレタンゲルについて説明したが、フロント部11aに植設した毛材12の針足部12Aとの固着力と、頭皮への再剥離性を備えていれば、接着剤の種類は適宜に選定できる。 艶消し剤はシリカに限らずその他の艶消し剤でもよい。 さらに、上記実施形態で説明した具体的数値等は、必要に応じて適宜変更可能である。

    本実施形態ではフロント部とトップ部とに画成し、トップ部をネット型で形成する例を示したが、かつらベース全体をフロント部と同様の人工皮膚で構成してよいことは言うまでもない。

    本発明によるかつらの一実施形態の構成における裏面を示す平面図である。

    図1のかつらの構成を説明するための図である。

    図1のかつらを示す部分側面図である。

    図1のかつらの構成を説明するための図である。

    図1のA−A線断面図である。

    本発明の実施形態に係るかつらにおけるフロント部の外縁の形状処理の模式図である。

    図6で示した波形形状と比較を行うための模式図である。

    図6で示した波形形状と比較を行うための模式図である。

    図6で示した波形形状と比較を行うための模式図である。

    図6で示した波形形状と比較を行うための模式図である。

    図6で示した波形形状と比較を行うための模式図である。

    図6で示した波形形状と比較を行うための模式図である。

    (A)及び(B)は図1のかつらにおける人工皮膚の製造工程を順次に示す図である。

    図1のかつらにおける人工皮膚を成形するための頭部形状の雄型を示す概略側面図である。

    図14の頭部形状の雄型における稜線の丸めを詳細に示す部分拡大図である。

    図1のかつらに使用される人工皮膚と形態保持用ネット無しの人工皮膚の曲げ剛性の比較を示すグラフである。

    従来のかつらの一例の構成における裏面を示す平面図である。

    図17のかつらにおけるかつらベースを成形するための頭部形状の雄型を示す概略側面図である。

    符号の説明

    10 かつら 11 かつらベース 11a フロント部 11a' フロントエッジ 11b ネット型 11c 接合部 12 毛材 12A 針足部 20 雄型 20a 境界線 21 台座 22 石膏型 22a カットオフ面 22b 稜線 23 形態保持用ネット 24a,24b 固定用針具 30 接着層 40 剥離シート 51,51a,51b 頂点 52 谷間 110 反り防止構造 110a 人工皮膚部 111 前縁領域 112 後方領域

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