首页 / 国际专利分类库 / 人类生活必需 / 服装 / 人造花;假发;面具;羽饰 / 假发(仅为玩偶用的入A63H3/44) / ポリエステル系人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品

ポリエステル系人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品

申请号 JP2014518760 申请日 2013-05-31 公开(公告)号 JPWO2013180281A1 公开(公告)日 2016-01-21
申请人 株式会社カネカ; 发明人 友道 橋本; 友道 橋本; 智一 樋上; 智一 樋上; 彌稼 ▲頼▼實; 彌稼 ▲頼▼實; 川村 光平; 光平 川村;
摘要 本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、ポリエステル樹脂組成物で形成されているポリエステル系人工毛髪用繊維であり、上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部、酸性化合物を0.05〜5重量部含み、上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、上記酸性化合物は、pHが3.5以下の酸性リン系化合物である。本発明の頭飾製品は、上記のポリエステル系人工毛髪用繊維を含む。
权利要求

ポリエステル樹脂組成物で形成されているポリエステル系人工毛髪用繊維であり、 前記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部、酸性化合物を0.05〜5重量部含み、 前記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、 前記酸性化合物は、pHが3.5以下の酸性リン系化合物であることを特徴とするポリエステル系人工毛髪用繊維。前記酸性リン系化合物が、酸基を1個以上有するリン酸化合物及び水酸基を1個以上有するホスホン酸化合物からなる群から選ばれる一種以上である請求項1に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂100重量部に対し、増粘剤を0〜5重量部含む請求項1又は2に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂100重量部に対し、アンチモン化合物を0〜5重量部含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記ポリアルキレンテレフタレートが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記臭素化エポキシ系難燃剤が、下記一般式(1)で表される難燃剤である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。 但し、上記一般式(1)において、mは1〜1000である。前記臭素化エポキシ系難燃剤は、重量平均分子量が2000〜40000である請求項6に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記ポリエステル系人工毛髪用繊維において、前記臭素化エポキシ系難燃剤中の分子量が50000以上の成分の比率が25%以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記ポリエステル系人工毛髪用繊維において、前記臭素化エポキシ系難燃剤は、下記一般式(2)で表される構造で存在している請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。 但し、上記一般式(2)において、mは1〜1000、R1及びR2は、下記一般式(3)〜(10)で表されるいずれか一つの官能基であり、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。また、下記一般式(7)〜(10)において、mは1〜1000であり、nは1〜200である。前記増粘剤が、水酸基、エステル基、エポキシ基及びカルボン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を分子内に3個以上有する有機化合物である請求項3〜9のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維を含むことを特徴とする頭飾製品。

ポリエステル樹脂組成物で形成されているポリエステル系人工毛髪用繊維であり、 前記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部、酸性化合物を0.05〜5重量部含み、 前記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、 前記酸性化合物は、pHが3.5以下の酸性リン系化合物であることを特徴とするポリエステル系人工毛髪用繊維。前記酸性リン系化合物が、水酸基を1個以上有するリン酸化合物及び水酸基を1個以上有するホスホン酸化合物からなる群から選ばれる一種以上である請求項1に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂100重量部に対し、増粘剤を0〜5重量部含む請求項1又は2に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂100重量部に対し、アンチモン化合物を0〜5重量部含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記ポリアルキレンテレフタレートが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記臭素化エポキシ系難燃剤が、下記一般式(1)で表される難燃剤である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。 但し、上記一般式(1)において、mは1〜1000である。前記臭素化エポキシ系難燃剤は、重量平均分子量が2000〜40000である請求項6に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記ポリエステル系人工毛髪用繊維において、前記臭素化エポキシ系難燃剤中の分子量が50000以上の成分の比率が25%以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。前記ポリエステル系人工毛髪用繊維において、前記臭素化エポキシ系難燃剤は、下記一般式(2)で表される構造で存在している請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。 但し、上記一般式(2)において、mは1〜1000、R1及びR2は、下記一般式(3)〜(10)で表されるいずれか一つの官能基であり、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。また、下記一般式(7)〜(10)において、mは1〜1000であり、nは1〜200である。前記増粘剤が、水酸基、エステル基、エポキシ基及びカルボン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を分子内に3個以上有する有機化合物である請求項3〜9のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維。請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリエステル系人工毛髪用繊維を含むことを特徴とする頭飾製品。

说明书全文

本発明は、人毛の代替品として使用できるポリエステル系人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品に関し、詳細には、人毛に近い光沢を有するポリエステル系人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品に関する。

かつら、ヘアーウィッグ、付け毛、ヘアーバンド、ドールヘアーなどの頭飾製品においては、従来、人毛が使用されてきた。しかしながら、近年、人毛の入手が次第に困難になってきており、人毛に代わって人工毛髪用繊維の重要性が高まってきている。人工毛髪用繊維素材として、難燃性の特長を生かしてモダクリル繊維が多く使用されてきたが、耐熱性の点では不十分であった。そこで、耐熱性に優れるポリエステル系繊維を人工毛髪用繊維として用いることが提案されるようになってきた。しかしながら、ポリエステル系繊維は、耐熱性は十分であるが、通常溶融紡糸で紡糸されるために繊維表面が極めて平滑であり、特有の鏡面光沢を有し、ヘアーウィッグ、かつらなどの人毛に取り付けるような頭飾製品に用いた場合、違和感があった。

そこで、ポリエステル系繊維の光沢を改善する方法が種々検討されていた。例えば、特許文献1には、ポリエステル樹脂に臭素化エポキシ系難燃剤と有機微粒子及び/又は無機微粒子を添加することが提案されている。特許文献2には、ポリエステル樹脂に数平均分子量20000以上の臭素化エポキシ系難燃剤を添加することが提案されている。特許文献3には、ポリエステル樹脂に臭素化エポキシ系難燃剤と反応促進剤を添加することが提案されている。特許文献4には、ポリエステル樹脂に臭素化エポキシ系難燃剤とエステル交換抑制剤を添加することが提案されている。

特開2005−42234号公報

特開2005−264397号公報

国際公開公報2005/056894

特開2007−084952公報

しかしながら、特許文献1の提案では、臭素化エポキシ系難燃剤はポリエステル樹脂との相溶性が高く、繊維中で細かく分散しているために、繊維表面の凹凸にはあまり反映されず、光沢は主に有機微粒子や無機微粒子で抑制されることとなり、発色性を充分に確保することにまだ改善の余地があり、また、紡糸安定性を確保した上で光沢を抑制することにまだ改善の余地があった。特許文献2では、数平均分子量が20000以上の臭素化エポキシ系難燃剤を用いることでポリエステル中に臭素化エポキシ系難燃剤を微分散させて光沢を調整しているが、市場が要求するレベルに達するにはまだ改善の余地があった。特許文献3では、反応促進剤により臭素化エポキシ系難燃剤とポリエステル樹脂のエステル交換反応を促進させて相溶性を高めているが、臭素化エポキシ系難燃剤がより細かく分散するため、光沢を抑制する効果は必ずしも十分とは言えなかった。また、特許文献4では、エステル交換抑制剤により臭素化エポキシ系難燃剤とポリエステル樹脂の相溶性を低下させているが、相溶性の低下だけでは臭素化エポキシ系難燃剤の凝集サイズが小さく、光沢を下げる効果が低く、また、エステル交換抑制剤を添加し過ぎると、紡糸性が著しく低下する問題があった。

本発明は、上記従来の問題を解決するため、人毛に近い光沢を有するポリエステル系人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品を提供する。

本発明は、ポリエステル樹脂組成物で形成されているポリエステル系人工毛髪用繊維であり、上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部、酸性化合物を0.05〜5重量部含み、上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、上記酸性化合物は、pHが3.5以下の酸性リン系化合物であることを特徴とするポリエステル系人工毛髪用繊維に関する。

本発明は、また、上記のポリエステル系人工毛髪用繊維を含むことを特徴とする頭飾製品に関する。

本発明は、ポリエステル系人工毛髪用繊維に、臭素化エポキシ系難燃剤とpHが3.5以下の酸性リン系化合物を含ませることで、人毛に近い光沢を有するポリエステル系人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品を提供することができる。

図1は、本発明の一実施例及び一比較例のポリエステル系繊維における臭素化エポキシ系難燃剤のGPC測定による分子量分布を示したグラフである。

本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル樹脂に臭素化エポキシ系難燃剤とpHが3.5以下の酸性リン系化合物を併せて添加した樹脂組成物を用いることにより、通常のポリエステル系繊維の耐熱性、強伸度などの繊維物性を維持しつつ、人工毛髪用繊維として要求される光沢に優れ、難燃性及び紡糸性も良好であるポリエステル系人工毛髪用繊維が得られることを見出し、本発明に至った。また、増粘剤を添加することにより、くし通り、難燃性及び紡糸性がより向上することを見出した。なお、pHが3.5以下の非リン系酸性化合物の場合、酸性リン系化合物に対比して、ポリエステル樹脂の分解を促進する効果が非常に大きく、ポリエステル樹脂組成物の粘度が著しく低下することで紡糸時に正常に糸を得ることができなくなる。

通常、臭素化エポキシ系難燃剤は、ポリエステル樹脂と相溶性が高く、溶融混練時にポリエステル樹脂中に細かく分散されるため、ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤を含むポリエステル樹脂組成物を繊維化する際、臭素化エポキシ系難燃剤は、厚み0.02μm以下、アスペクト比10倍以上の紡錘形状に延伸されることとなり、繊維表層部の形状にほとんど影響を与えないことになる。そのため、得られるポリエステル系繊維は、繊維表面が平滑でプラスチック特有の高い光沢を有することになる。本発明では、臭素化エポキシ系難燃剤とpHが3.5以下の酸性リン系化合物を併用することにより、酸性リン系化合物が臭素化エポキシ系難燃剤の分子末端のエポキシ基の開環触媒として働き、臭素化エポキシ系難燃剤の分子同士をエポキシ基を介して重合させるとともに、リン系化合物と2分子以上のエポキシ基をエステル結合で連結させる効果が得られる。そのため、臭素化エポキシ系難燃剤の分子量が増加し、臭素化エポキシ系難燃剤の分散性が低下し、臭素化エポキシ系難燃剤が凝集して厚みが0.05μm以上になることで、繊維の表層部に起伏を発現させ、人毛に近いレベルまで光沢を低減することができると思われる。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、ポリエステル樹脂組成物で形成されている繊維である。通常、ポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸することにより、ポリエステル系人工毛髪用繊維を形成することができる。なお、ポリエステル樹脂組成物は、通常、溶融混練した後、溶融紡糸する。上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(以下において、A成分とも記す。)、臭素化エポキシ系難燃剤(以下において、B成分とも記す。)及びpHが3.5以下の酸性リン系化合物(以下において、C成分とも記す。)を含む。

上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上である。上記ポリアルキレンテレフタレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが挙げられる。上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートを主体とし、他の共重合成分を含有する共重合ポリエステルが挙げられる。本発明において、「主体」とは、80モル%以上含有することを意味し、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを80モル%以上含有する共重合ポリエステルをいう。

上記他の共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スべリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸及びそれらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸及びそれらの誘導体、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。

上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルからなる群から選ばれる一種の化合物を共重合したポリエステルなどが挙げられる。

上記ポリアルキレンテレフタレート及び上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、イソフタル酸を共重合したポリエステル、及びポリエチレンテレフタレートを主体とし、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステルなどを単独又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。

上記ポリエステル樹脂の固有粘度(IV値)は、特に限定されないが、0.3〜1.2であることが好ましく、0.4〜1.0であることがより好ましい。固有粘度が0.3以上であると、得られる繊維の機械的強度が低下せず、燃焼試験時にドリップする恐れもない。また、固有粘度が1.2以下であると、分子量が増大しすぎず、溶融粘度が高くなり過ぎることがなく、溶融紡糸が容易となるうえ、繊度も均一になりやすい。

本発明において、臭素化エポキシ系難燃剤は、上記のとおり、ポリエステル系人工毛髪用繊維の光沢を人毛に近いレベルまで低減させる効果を有するとともに、難燃性を向上させる効果も有する。

上記臭素化エポキシ系難燃剤は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。

但し、上記一般式(1)において、mは1〜1000である。

上記臭素化エポキシ系難燃剤は、上記一般式(1)で表される化合物であり、重量平均分子量が2000〜40000であることがより好ましく、5000〜30000であることがさらに好ましい。本発明において、ポリエステル系人工毛髪用繊維の光沢を低減させるために、上記臭素化エポキシ系難燃剤は繊維中では高分子量である必要があるが、ポリエステル樹脂と溶融混練する前の段階から粘度が高いと、ポリエステル樹脂中に臭素化エポキシ系難燃剤が均一に分散することが困難となり、厚さ10μm以上の臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体が形成され、紡糸時の糸切れやノズル詰まりの原因となる恐れがある。このため、A成分と溶融混練する前のB成分は、マトリックスであるA成分と粘度が同じか低いことが好ましい。B成分の粘度をA成分の粘度と同じか低くするという観点から、B成分は、重量平均分子量が2000〜40000であることが好ましく、5000〜30000であることがより好ましい。B成分の重量平均分子量が2000以上であると、ポリエステル樹脂組成物の溶融混練中に分子量が50000以上の成分を25%以上に増やすことができ、光沢を充分に低減しやすい。また、B成分の重量平均分子量が40000以下であると、混練中にA成分中でB成分が不均一な大きさで凝集して10μmを超える大きさになることがなく、糸切れやノズル詰まりが発生して紡糸安定性が低下する恐れもない。

本発明では、好ましくは、上記一般式(1)で表される構造の臭素化エポキシ系難燃剤を原料として用いるが、溶融混練後の臭素化エポキシ系難燃剤の構造は、特に限定されず、例えば、分子末端がエポキシ基、酸基、リン酸又はホスホン酸に置換されてもよく、或いは、分子末端がA成分とエステル基で結合してもよい。

上記臭素化エポキシ系難燃剤は、C成分の酸性リン系化合物の触媒及び/又は架橋剤としての作用により、溶融混練中に分子量が増加する。例えば、B成分の分子間でエポキシ基の開環、縮合反応を経て高分子量化する場合と、C成分のリン系化合物1分子と1〜3分子のB成分がリン酸基とエポキシ基のエステル結合で縮合して高分子量化する場合と、B成分とA成分がエステル結合で縮合する場合と、B成分のエポキシ基が未反応で残存する場合、B成分のエポキシ基が開環して水酸基として存在している場合などがある。

具体的には、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維において、上記臭素化エポキシ系難燃剤は、例えば、下記一般式(2)で表される形態(構造)で存在してもよい。

但し、上記一般式(2)において、mは1〜1000、R1及びR2は、下記一般式(3)〜(10)で表されるいずれか一つの官能基であり、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。また、下記一般式(7)〜(10)において、mは1〜1000であり、nは1〜200である。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維において、臭素化エポキシ系難燃剤は、上記のいずれの構造で存在してもよいが、B成分を高分子量化する観点から、C成分の酸性リン系化合物を架橋点とする構造が多いことが好ましい。C成分の酸性リン系化合物とB成分の結合は、例えば、以下のように確認することができる。上記ポリエステル系人工毛髪用繊維を、ヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムの混合溶媒で溶解し、不溶分を除去、乾燥した後、再度クロロホルムで溶解させた可溶分(B成分)にC成分のリン系化合物が残存していれば、C成分がB成分と結合して溶出分離しなくなっているものと考えられる。同分析法におけるB成分中のリン系化合物の含有量は200ppm以上が好ましく、300ppm以上がより好ましい。また、B成分とA成分がエステル結合した構造は、紡糸における延伸工程で、B成分がA成分と剥離して空隙を生じさせないために一定量存在することが望ましい。B成分とA成分がエステル結合した分子において、B成分に対するA成分の比率が多すぎると、相溶性が過剰に増加し、B成分の凝集体を大きくすることが難しくなり、光沢の低減効果が充分に得られない場合がある。このため、B成分とA成分がエステル結合した分子において、A成分はB成分の50重量%未満であることが好ましい。より好ましくは、B成分とA成分がエステル結合した分子において、B成分とA成分の合計重量を100重量%とした場合、B成分が90重量%以上であり、95重量%以上であることがさらに好ましい。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維において、上記臭素化エポキシ系難燃剤中の分子量が50000以上の成分の比率は25%以上であることが好ましい。本発明において、臭素化エポキシ系難燃剤中の分子量が50000以上の成分の比率は、下記のように測定したものをいう。 (1)試料約0.5gにヘキサフルオロイソプロパノール:クロロホルム=1:3の混合溶剤を2mL加え、室温で12時間振とうさせる。 (2)溶解した試料にヘキサフルオロイソプロパノール:クロロホルム=1:7の混合溶剤を10mL加えて希釈し、ナスフラスコに全量移送する。 (3)試料の希釈液をエバポレーターでフィルム状に乾燥させた後、さらに真空乾燥を加える。得られるフィルム状試料にクロロホルムを14mL加え、30分間超音波抽出を実施する。 (4)クロロホルム抽出液を分別する。 (5)ナスフラスコにさらにクロロホルムを7mL加え、10分間超音波抽出を実施する。 (6)クロロホルム抽出液を分別する。 (7)(5)及び(6)の操作を5回繰り返す。 (8)得られる全てのクロロホルム抽出液を混合し、ろ過した後、GPC(Gel Permeation Chromatography、ゲル浸透クロマトグラフ)測定装置にて分子量の測定を行い、得られるチャートより、分子量が50000以上の成分の比率を求める。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維において、B成分の臭素化エポキシ系難燃剤は、ポリエステル系人工毛髪用繊維の光沢を低減させるために、A成分のポリエステル樹脂内で凝集体として存在する必要があり、該効果はB成分を高分子量化して粘度を高くすることで発現すると推測される。本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維において、B成分中の分子量が50000以上の成分の比率が25%以上であると、充分に高い粘度が得られ、人毛に近いレベルまで光沢を低減しやすい。光沢低減効果に優れるという観点から、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維において、臭素化エポキシ系難燃剤中の分子量が50000以上の成分の比率は28%以上であることがより好ましく、32%以上であることがさらに好ましい。なお、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維において、B成分の粘度の増加には一定量の高分子成分が存在していればよく、B成分全体としての重量平均分子量は30000未満でもよい。

上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部含む。好ましくは、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5〜30重量部含み、6〜25重量部含むことがより好ましく、7〜20重量部含むことがさらに好ましい。臭素化エポキシ系難燃剤の含有量が上記範囲内であれば、ポリエステル系人工毛髪用繊維の光沢を人毛に近似させることができるとともに、難燃性、くし通り、発色性及び紡糸性にも優れる。

本発明において、C成分の酸性リン系化合物は、上述のとおり、B成分の臭素化エポキシ系難燃剤を高分子量化するための触媒及び/又は架橋剤として用いられる。例えば、C成分としてステアリルアシッドホスフェート(リン酸モノステアリルとリン酸ジステアリルの混合物)を含む実施例2のポリエステル系繊維と、C成分を含んでいない比較例1のポリエステル系繊維における、臭素化エポキシ系難燃剤のGPC測定による分子量分布を図1に示している。図1から分かるように、pHが3.5以下の酸性リン系化合物を含む実施例2のポリエステル系繊維において、臭素化エポキシ系難燃剤中の高分子量の成分が増加している。

本発明において、C成分はpHが3.5以下であることにより、B成分のエポキシ基を開環する活性(以下において、単に開環活性と記す。)を有する。開環活性に優れるという観点から、C成分は、pHが3以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。pHが3.5以下であると、開環活性が高く、開環したB成分のエポキシ基による縮合反応が進行しやすく、B成分の分子量が十分な大きさになりやすく、光沢の低減効果を充分に得ることができる。本発明において、「pHが3.5以下」とは、室温(20±5℃)及び/又は280℃において、pHが3.5以下であることを意味する。また、本発明において、pHは、所定の温度で、測定サンプル1gを10gの純水に分散させた後測定した値である。酸性リン系化合物は、室温でpHが3.5以下でなくても、280℃でpHが3.5以下であると、ポリエステル樹脂組成物の溶融混練中には、B成分のエポキシ基を開環する活性を有する。また、C成分が水に溶解しない化合物の場合も、粉体を水に投入して撹拌により分散させた状態でpHを計測することができる。

C成分は、pHが3.5以下の酸性リン系化合物であればよく、特に限定されない。例えば、リン酸モノアルキルエステル、リン酸モノアリールエステル、リン酸ジアルキルエステル、リン酸ジアリールエステル、亜リン酸モノアルキルエステル、亜リン酸モノアリールエステル、亜リン酸ジアルキルエステル、亜リン酸ジアリールエステル、ホスホン酸モノアルキルエステル、ホスホン酸モノアリールエステル、ホスホン酸アルキル、ホスホン酸アリール、多価ホスホン酸化合物、リン酸金属塩などが挙げられる。この中で、リン酸金属塩は、アルカリ金属の場合は酸強度の低い場合が多く、例えば、リン酸2水素1ナトリウムやピロリン酸2水素2ナトリウムなどはpHが3.5を超えており、酸強度が不足することから本発明には適さない。具体的には、C成分として、リン酸モノメチル、リン酸モノエチル、リン酸モノイソプロピル、リン酸モノ−n−ブチル、リン酸イソブチル、リン酸モノ−2エチルヘキシル、リン酸モノラウリル、リン酸モノステアリル、リン酸モノオレイル、リン酸モノテトラコシル、リン酸モノフェニル、リン酸モノクレジル、リン酸モノ2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジイソプロピル、リン酸ジ−n−ブチル、リン酸ジブチル、リン酸ジ−2エチルヘキシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジオレイル、リン酸ジテトラコシル、リン酸ジフェニル、リン酸ジクレジル、亜リン酸モノメチル、亜リン酸モノエチル、亜リン酸モノイソプロピル、亜リン酸モノ−n−ブチル、亜リン酸イソブチル、亜リン酸モノ−2エチルヘキシル、亜リン酸モノラウリル、亜リン酸モノステアリル、亜リン酸モノオレイル、亜リン酸モノテトラコシル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸モノクレジル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジ−n−ブチル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジ−2エチルヘキシル、亜リン酸ジラウリル、亜リン酸ジステアリル、亜リン酸ジオレイル、亜リン酸ジテトラコシル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジクレジル、ホスホン酸メチル、ホスホン酸エチル、ホスホン酸イソプロピル、ホスホン酸−n−ブチル、ホスホン酸イソブチル、ホスホン酸−2−エチルヘキシル、ホスホン酸ラウリル、ホスホン酸ステアリル、ホスホン酸オレイル、ホスホン酸テトラコシル、ホスホン酸フェニル、ホスホン酸クレジル、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ピロリン酸2水素1カルシウム、ピロリン酸2水素1マグネシウム、ピロリン酸2水素1亜鉛、トリポリリン酸、トリポリリン酸2水素1アルミニウムなどが挙げられる。この中でも、C成分は、水酸基を1個以上有するリン酸化合物及び水酸基を1個以上有するホスホン酸化合物からなる群から選ばれる一種以上であることが好ましい。本発明の繊維に後述するようにアンチモン化合物を含ませる場合やA成分のポリエステル樹脂がアンチモン触媒で合成されている場合、C成分が3価の亜リン酸化合物であると、アンチモン化合物から還元反応でアンチモンを析出させ、繊維が灰色に着色する恐れがある。

C成分は、分子量が200以上であることが好ましい。C成分の分子量が200以上であると、ポリエステル樹脂組成物を溶融混練する際、C成分が気化して除去されることがなく、C成分の実質的な有効成分が減少せず、光沢が変動しにくい。また、C成分は、融点が280℃未満或いは平均分散粒子径が2μm以下であることが好ましい。ここで、融点は、DSC(示差走査熱量測定計)やDTA(示差熱分析計)で測定したものをいい、平均分散粒子径はレーザー回折式粒度分布測定法で測定したメジアン径(d50)をいう。融点が280℃未満或いは平均分散粒子径が2μm以下であると、B成分との接触面積が減少して反応効率が低下することがなく、B成分の高分子量化が進みやすく、充分な光沢低減効果を得やすい。以上の観点から、C成分としては、リン酸モノラウリル、リン酸モノステアリル、リン酸モノオレイル、リン酸モノテトラコシル、リン酸モノフェニル、リン酸モノクレジル、リン酸モノ2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ、リン酸ジ−2エチルヘキシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジオレイル、リン酸ジテトラコシル、リン酸ジフェニル、リン酸ジクレジル、ホスホン酸ラウリル、ホスホン酸ステアリル、ホスホン酸オレイル、ホスホン酸テトラコシル、ホスホン酸フェニル、ホスホン酸クレジル、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ピロリン酸2水素1カルシウム、ピロリン酸2水素1マグネシウム、ピロリン酸2水素1亜鉛、トリポリリン酸、トリポリリン酸2水素1アルミニウムなどを用いることが好ましい。C成分としては、上述した化合物を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、pHが3.5以下の酸性リン系化合物を0.05〜5重量部含む。好ましくは、ポリエステル樹脂100重量部に対し、pHが3.5以下の酸性リン系化合物を0.1〜2重量部含み、0.2〜1.5重量部含むことがより好ましく、0.4〜1.5重量部含むことがさらに好ましい。pHが3.5以下の酸性リン系化合物の含有量が上記範囲内であれば、ポリエステル系人工毛髪用繊維の光沢を人毛に近似させることができるとともに、難燃性、発色性及び紡糸性にも優れる。

上記ポリエステル樹脂組成物は、さらに、ポリエステル樹脂100重量部に対し、増粘剤(以下において、D成分とも記す。)を0〜5重量部含むことが好ましい。上記ポリエステル樹脂組成物において、増粘剤の添加量の下限値は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、より好ましくは0.1重量部であり、さらに好ましくは0.2重量部であり、さらにより好ましくは0.4重量部であり、特に好ましくは0.8重量部である。また、上記ポリエステル樹脂組成物において、増粘剤の添加量の上限値は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、より好ましくは4重量部であり、さらに好ましくは3重量部であり、さらにより好ましくは2重量部である。本発明において、D成分は、A成分のポリエステル樹脂の粘度を増加させる効果を有し、紡糸性、難燃性及びくし通りをより向上させるために用いる。

上記増粘剤は、水酸基、エステル基、エポキシ基及びカルボン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を分子内に3個以上有する有機化合物であることが好ましい。このようにD成分が分子内に3個以上の官能基(反応点)を有することによって、溶融混練中に、A成分とD成分のエステル交換反応が進行し、ポリエステル樹脂の分子が分岐構造となり、通常の直鎖分子よりも粘度を大きく増加させることができる。上記増粘剤としては、例えば、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンニ塩基性酸エステル、グリセリンニ塩基性酸脂肪酸エステル、グリセリンリン酸エステル、エリスリトール、エリスリトール脂肪酸エステル、エリスリトールニ塩基性酸エステル、エリスリトールニ塩基性酸脂肪酸エステル、エリスリトールリン酸エステル、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールニ塩基性酸エステル、ペンタエリスリトールニ塩基性酸脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールリン酸エステル、キシリトール、キシリトール脂肪酸エステル、キシリトールニ塩基性酸エステル、キシリトールニ塩基性酸脂肪酸エステル、キシリトールリン酸エステル、ソルビトール、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビトールニ塩基性酸エステル、ソルビトールニ塩基性酸脂肪酸エステル、ソルビトールリン酸エステル、ソルビタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンニ塩基性酸エステル、ソルビタンニ塩基性酸脂肪酸エステル、ソルビタンリン酸エステル、トリメチロールプロパン、リンゴ酸、リンゴ酸エステル、クエン酸、クエン酸エステル、酒石酸、酒石酸エステル、トリメリット酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル、無水トリメリット酸エステル、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ピロメリット酸エステル、無水ピロメリット酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、ポリアクリレート、ポリアクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、ポリグリシジルメタクリレート共重合体、トリグリシジルトリアジン、多価エポキシ樹脂などが挙げられる。この中でも、多価アルコールを、カルボン酸、リン酸及びホスホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸成分でエステル化した多価アルコール化合物が好ましい。D成分が多価アルコール化合物の場合、主としてA成分とエステル交換反応が進むため、ポリエステル樹脂の粘度を効率的に増加させることができる。一方、D成分が多価カルボン酸又は多価エポキシ基含有化合物の場合、B成分との反応も進行し、A成分とB成分の混合分子が増加することとなるため、A成分とB成分の相溶性が増加して、充分な光沢の低減効果が得られない場合がある。また、D成分の末端が水酸基の場合には、A成分分子の分岐化と並行して加水分解も進行するため、粘度が低下する場合もある。このため、D成分は、多価アルコールを、カルボン酸、リン酸、ホスホン酸などの酸成分でエステル化した多価アルコール化合物であることが好ましく、加熱中にエステル結合部が容易に外れるという観点から多価アルコールをリン酸でエステル化した多価アルコール化合物がより好ましい。さらに好ましくは、D成分としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンリン酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールニ塩基酸脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールリン酸エステル、ペンタエリスリトールジホスフェート、ペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルペンタエリスリトールジホスフェート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアリールペンタエリスリトールジホスフェート、ジアリールペンタエリスリトールジホスファイト、ソルビタン脂肪酸エステルを用いる。上記ペンタエリスリトールジホスファイトとしては、例えば、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイトなどを用いることができ、上記ペンタエリスリトールニ塩基酸脂肪酸エステルとしては、例えば、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステルなどを用いることができる。

上記ポリエステル樹脂組成物は、さらに、ポリエステル樹脂100重量部に対し、アンチモン化合物(以下において、E成分とも記す。)を0〜5重量部含むことが好ましい。本発明において、E成分は、ポリエステル系人工毛髪用繊維の難燃性をより向上させる効果を有し、難燃性を高める必要がある場合に適宜用いられる。

E成分のアンチモン化合物は、アンチモン原子を有する化合物であればよく、特に限定されないが、粉体原料としての取り扱いの容易さから酸化物が一般に用いられる。上記アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、E成分のアンチモン化合物は、溶融混練中にハロゲン元素やリン元素と反応して、別の化合物に変化しても問題はない。また、E成分は、紡糸性や発色の観点から、粒子径は小さいことが好ましく、平均粒子径が5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。ここで、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定法で測定したメジアン径(d50)をいう。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、上記ポリエステル樹脂組成物を通常の溶融紡糸法で溶融紡糸することにより得られる。上記ポリエステル樹脂組成物は、上述した各成分をドライブレンドした後、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練することにより得ることができる。上記混練機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが挙げられる。中でも、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維を、通常の溶融紡糸法で溶融紡糸する場合には、例えば、押出機、ギアポンプ、口金などの温度を250〜310℃とし、上記ポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒に通過させた後、ポリエステル樹脂のガラス転移点以下に冷却し、50〜5000m/分の速度で引き取ることにより紡出糸条(未延伸糸)が得られる。また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。加熱筒の温度と長さ、冷却風の温度と吹付量、冷却水槽の温度、冷却時間及び引取速度は、ポリマーの吐出量及び口金の孔数によって適宜調整することができる。

本発明において、得られた紡出糸条(未延伸糸)は熱延伸されることが好ましい。延伸は、紡出糸条を一旦巻き取ってから延伸する2工程法と、紡出糸条を巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によって行ってもよい。熱延伸は、1段延伸法又は2段以上の多段延伸法で行なわれる。熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維には、必要に応じて、B成分以外の難燃剤、耐熱剤、光安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、可塑剤、潤滑剤などの各種添加剤を含有させることができる。顔料を含有させることにより、原着繊維を得ることができる。さらに、繊維表面処理剤、柔軟剤などの油剤を使用し、触感、風合を調整して、より人毛に近づけることができる。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、非捲縮生糸状の繊維であることが好ましい。また、人工毛髪に適するという観点から、繊度が10〜100dtexであることが好ましく、より好ましくは20〜90dtexであり、さらに好ましくは35〜80dtexである。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、人毛に近似する光沢を有し、難燃性、紡糸性、発色性も良好である。また、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、好ましくは、くし通りも良好である。また、美容熱器具(ヘアーアイロンなど)を用いたカールセット性に優れ、カールの保持性にも優れる。また、160〜240℃で美容熱器具(ヘアーアイロンなど)が使用できる耐熱性を有しており、着火しにくく、自己消火性を有していることが好ましい。また、必要に応じてダル化剤を添加することで、繊維表面に凹凸を付与することが可能であり、適度に艶消され人工毛髪としてより好適に使用することができる。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維が原着されている場合、そのまま使用することができるが、原着されていない場合、通常のポリエステル系繊維と同様の条件で染色することができる。染色に使用される顔料、染料、助剤などとしては、耐候性及び難燃性を有するものが好ましい。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維は、そのまま単独で人工毛髪として用いることができる。或いは、モダアクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ナイロン繊維などの他の人工毛髪用繊維素材、人毛、獣毛などの天然繊維と組み合わせて人工毛髪として用いることができる。

本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維を用いて形成した頭飾製品は、光沢、難燃性及び発色性に優れる。また、好ましくは、くし通りも良好である。上記頭飾製品としては、特に限定されないが、例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー、ドールヘアーなどが挙げられる。

上記頭飾製品は、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維のみで形成されていてもよい。また、上記頭飾製品は、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維に、モダアクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ナイロン繊維などの他の人工毛髪用繊維、人毛、獣毛などの天然繊維などを組み合わせて形成してもよい。

かつら、ヘアーウィッグ、ヘアーエクステンションなどの頭飾製品に使用される人毛は、一般に、キューティクルの処理、脱色、染色されており、触感、くし通りを確保するために、シリコーン系の繊維表面処理剤、柔軟剤を使用しているため、未処理の人毛とは異なり易燃性であるが、本発明のポリエステル系人工毛髪用繊維と人毛とを人毛混率60%以下で混合した場合、良好な難燃性を示す。

次に、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

実施例及び比較例で用いたリン系化合物、並びに比較例で用いた非リン系酸性化合物を下記表1に示した。その他の原料は、以下のとおりである。なお、下記において、特に入手先を指定していない試薬については一般の市販の試薬を使用した。 ポリエチレンテレフタレート:三菱化学株式会社製、商品名「BK−2180」、IV値=0.83 臭素化エポキシ系難燃剤:阪本薬品工業株式会社製、商品名「SR−T2MP」、重量平均分子量約30000、末端エポキシ基型臭素化エポキシ系難燃剤 アンチモン酸ナトリウム:日本精鉱株式会社製、商品名「SA−A」 増粘剤1:ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、ADEKA社製、商品名「PEP36」 増粘剤2:ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ADEKA社製、商品名 「PEP8」 増粘剤3:ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル、理研ビタミン社製、商品名「EW100」

上記表1において、リン系化合物2は株式会社キレスト製であり、リン系化合物3は、城北化学株式会社製であり、リン系化合物1、5及び6は、ADEKA社製であり、その他のリン系化合物は一般に販売されている試薬を用いた。非リン系酸性化合物は、和光純薬製である。リン系化合物及び非リン系酸性化合物のpHは、室温(20±5℃)で、対象化合物1gを10gの純水に分散させた後測定した値である。

(実施例1〜8) 上述した各原料を水分量100ppm以下に乾燥し、下記表2に示す配合割合でドライブレンドした。得られたポリエステル樹脂組成物を二軸押出機に供給して、280℃で溶融混練し、ペレット化したのちに、水分量100ppm以下に乾燥させた。次いで、乾燥したペレットを溶融紡糸機に供給し、280℃でノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融したポリマーを吐出し、加熱筒に通過させたのちポリエステル樹脂のガラス転移温度以下に冷却し、60〜150m/分の速度で巻き取って紡出糸条を得た。得られた紡出糸条を80℃で延伸を行ない、3倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、熱処理を行ない、単繊維繊度が約60dtex程度のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。

(比較例1〜7) 上述した各原料を水分量100ppm以下に乾燥し、下記表3に示す配合割合でドライブレンドした以外は、実施例1〜8と同様にして、単繊維繊度が約60dtex程度のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。

(比較例8) 上述した各原料を水分量100ppm以下に乾燥し、下記表3に示す配合割合でドライブレンドした。得られたポリエステル樹脂組成物を二軸押出機に供給して、280℃で溶融混練し、ペレット化したのちに、水分量100ppm以下に乾燥させた。次いで、乾燥したペレットを溶融紡糸機に供給し、280℃でノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融したポリマーを吐出して紡糸したが、紡糸ができなかった。

実施例及び比較例のポリエステル系繊維において、臭素化エポキシ系難燃剤中の分子量が50000以上の成分の比率(以下において、難燃剤中の分子量50000以上の比率とも記す。)、光沢、くし通り、難燃性(耐ドリップ性)及び着色性を以下のように評価し、その結果を下記表2及び表3に示した。また、実施例及び比較例におけるポリエステル樹脂組成物の溶融粘度及び紡糸性を以下のように評価し、その結果を下記表2及び表3に示した。

(難燃剤中の分子量50000以上の比率) (1)試料(繊維)約0.5gにヘキサフルオロイソプロパノール:クロロホルム=1:3の混合溶剤を2mL加え、室温で12時間振とうさせた。 (2)溶解した試料にヘキサフルオロイソプロパノール:クロロホルム=1:7の混合溶剤を10mL加えて希釈し、ナスフラスコに全量移送した。 (3)試料の希釈液をエバポレーターでフィルム状に乾燥させた後、さらに真空乾燥を加えた。得られたフィルム状試料にクロロホルムを14mL加え、30分間超音波抽出を実施した。 (4)クロロホルム抽出液を分別した。 (5)ナスフラスコにさらにクロロホルムを7mL加え、10分間超音波抽出を実施した。 (6)クロロホルム抽出液を分別した。 (7)(5)及び(6)の操作を5回繰り返した。 (8)得られた全てのクロロホルム抽出液を混合し、ろ過した後、GPC(Gel Permeation Chromatography、ゲル浸透クロマトグラフ)測定装置にて分子量の測定を行い、得られたチャートより、難燃剤中の分子量が50000以上の成分の比率を求めた。

(光沢) 長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを用い、太陽光の下、目視にて以下の基準で光沢の判定を行った。 A:人毛の光沢と同等である。 B:人毛の光沢とほぼ同等である。 C:人毛の光沢と若干差があるが、違和感はない。 D:人毛の光沢と差があり、違和感がある。 E:人毛の光沢との差が顕著である。

(耐ドリップ性) 150mmの長さに切断したフィラメント0.7g分を束ね、一方の端をクランプで挟んでスタンドに有効長120mmになるように固定して垂直に垂らした。固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎し、火炎を遠ざけた後の燃焼時間を測定し、以下の基準により判定した。 A:燃焼時間が2秒未満で、ドリップは発生しない。 B:燃焼時間が2秒以上5秒未満で、ドリップは発生しない。 C:燃焼時間が5秒未満で、ドリップが1回発生する。 D:燃焼時間が5秒以上、又は、ドリップが2回以上発生する。

(くし通り) 長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを、繊維表面処理剤であるPO/EOランダム共重合体(ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドランダム共重合体、丸菱油化工業社製、商品名「Conditioner Type−Q」、分子量20000)とカチオン系帯電防止剤(丸菱油化工業社製、商品名「加工油剤 No.29」)(重量比75:25)を3重量%含む水溶液に浸漬し、それぞれ0.1重量%が付着するようにし、80℃で5分間乾燥させた。処理されたトウフィラメントにポリアセタール樹脂製くし(株式会社植原セル製、商品名「ニューデルリンコーム#826)を0.3m/sの速さでトウフィラメントの上部3cmの所から下へ、完全に30回以上通過させ、くしの通り易さを評価した。 A:ほとんど抵抗ない(軽い)。 B:若干抵抗がある(若干重い)。 C:かなり抵抗がある、又は、途中で引っかかる(重い)。 D:くしが通らない。

(着色性) 長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを用い、太陽光の下、目視にて以下の基準で判定を行った。 A:白色で全ての色に適用できる。 B:若干変色しているが顔料の調整で全ての色に適用できる。 C:着色して淡色への適用は難しいものの、濃色であれば適用できる。 D:着色が著しく、頭髪用繊維として適用できない。

(溶融粘度) キャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製、型番「キャピログラフ3B」)を用い、テストスピード50mm/min、オリフィス0.05cm、バレル半径0.4775cm、バレル温度280℃の条件にてポリエステル樹脂組成物(ペレット)の溶融粘度(poise)の測定を行った。

(紡糸性) 紡糸時の糸切れの状況と繊度の斑から、以下の基準で紡糸性の判定を行った。 A:安定に紡糸ができ、繊度の斑も小さい。 B:安定に紡糸はできるが、繊度斑が大きい、或いは、ノズル詰まりが若干発生する。 C:糸切れ、融着、ノズル詰まりが発生して安定して紡糸ができず、繊度斑が著しく大きい。

上記表2の結果から分かるように、pHが3.5以下の酸性リン系化合物を含む実施例では、人毛に近い光沢を有し、難燃性(耐ドリップ性)及び紡糸性も良好であるポリエステル系人工毛髪用繊維が得られた。また、増粘剤を併用した実施例5〜8では、くし通り、難燃性(耐ドリップ性)及び紡糸性がより向上することが確認された。一方、上記表3の結果から分かるように、pHが3.5以下の酸性リン系化合物を含まず、pHが3.5を超える酸性リン系化合物を含む比較例では、人毛に近似する光沢を有するポリエステル系人工毛髪用繊維が得られていなかった。また、pHが3.5以下の非リン系酸性化合物を含む比較例8では、紡糸することができなかった。非リン系の酸性化合物を用いた場合、酸性リン系化合物と比較して、ポリエステル樹脂の分解を促進する効果が非常に大きく、粘度が著しく低下することで紡糸時に正常に糸を得ることができなかった。

本発明によると、人毛に近い光沢を有し、発色性、難燃性(耐ドリップ性)及び紡糸性に優れるポリエステル系人工毛髪用繊維及び頭飾製品を提供することができる。

QQ群二维码
意见反馈