かつら

申请号 JP2008500493 申请日 2007-02-13 公开(公告)号 JPWO2007094289A1 公开(公告)日 2009-07-09
申请人 株式会社アデランスホールディングス; 发明人 泰久 外川; 泰久 外川; 良枝 小川; 良枝 小川; 久美子 斉藤; 久美子 斉藤; 真貴子 鶴間; 真貴子 鶴間;
摘要 かつら(10,30)は、かつらベース(11,31)の各部に対してその部位に応じた曲げ剛性値を有する人工毛髪(12,13,32,33)を植設してなる。かつらベース(11,31)を複数の領域に区分し、左右側頭部側及び後頭部側の周縁部(11a)や全周縁領域(31A)に、平均的な天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有する毛髪(12,32)を植設してかつらの周囲に存する自毛と混ぜ合わせる。一方、かつらベース(11,31)の中心に向かう領域には、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有する毛髪(13,33)を植設する。人工毛髪(12,13,32,33)は上記各領域に応じて所定長及びカール径を有し、特に、周縁部(11a)に植設される毛髪(13)や全周縁領域(31A)に植設される毛髪(33)は装着者の頭皮から育成している毛髪と同程度のカール径及び/又は長さを有する。
权利要求
  • かつらベースと該かつらベースに植設される毛髪とを含むかつらであって、
    上記かつらベースの少なくとも縁周りに植設される毛髪が、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有することを特徴とする、かつら。
  • かつらベースと該かつらベースに植設される毛髪とを含むかつらであって、
    上記かつらベースが、左右側頭部側の周縁部及び後頭部側の周縁部を含んで複数の領域に区分され、
    上記かつらベースに区分された領域に植設される毛髪が、領域毎に設定した所定の曲げ剛性値を有し、
    上記周縁部に植設される毛髪が、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有することを特徴とする、かつら。
  • 前記かつらベース上に区分された領域のうち該かつらベースの中心領域となる天頂部に近くなるにつれて、前記周縁部に植設される毛髪より曲げ剛性値の高い毛髪が植設されることを特徴とする、請求の範囲2に記載のかつら。
  • 前記かつらベースが、少なくとも、かつらベースの中心領域となる天頂部と、前記周縁部と、該周縁部に沿って該天頂部と該周縁部との間に画成される中間領域とを含んで区分され、
    前記天頂部に植設される毛髪が、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有し、
    前記周縁部に植設される毛髪が、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有し、
    上記中間領域に、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有する毛髪と天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有する毛髪とが混ぜ合わせて植設されてなることを特徴とする、請求の範囲2に記載のかつら。
  • 前記かつらベースに区分された領域に植設される毛髪が、領域毎に設定した所定のカール径及び/又は長さを有し、
    前記周縁部に植設される毛髪が、装着者の頭皮から育成している自毛と同程度のカール径及び/又は長さを有することを特徴とする、請求の範囲2に記載のかつら。
  • かつらベースと該かつらベースに植設される毛髪とを含むかつらであって、
    上記かつらベースが、前頭部側の周縁、左右側頭部側の周縁及び後頭部側の周縁でなる全周縁部を含んで複数の領域に区分され、
    上記かつらベースに区分された領域に植設される毛髪が、領域毎に設定した所定の曲げ剛性値を有し、
    上記全周縁部に植設される毛髪が、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有することを特徴とする、かつら。
  • 前記かつらベースが、かつらベースの中心領域となる天頂部と、前頭部側の周縁、左右側頭部側の周縁及び後頭部側の周縁でなる全周縁部と、該全周縁部に沿って前記天頂部と該全周縁部との間に画成される中間領域を含んで区分され、
    上記天頂部に植設される毛髪が、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有し、
    上記全周縁部に植設される毛髪が、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有し、
    上記中間領域に、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有する毛髪と天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有する毛髪とが混ぜ合わせて植設されてなることを特徴とする、請求の範囲6に記載のかつら。
  • 前記かつらベースに区分された領域に植設される毛髪が、領域毎に設定した所定のカール径及び/又は長さを有し、
    前記全周縁部に植設される毛髪が、装着者の頭皮から育成している自毛と同程度のカール径及び/又は長さを有することを特徴とする、請求の範囲6に記載のかつら。
  • 前記毛髪が、芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる鞘/芯構造を有し、
    上記芯部がポリアミド樹脂からなり、上記鞘部が上記芯部より剛性の低いポリアミド樹脂からなり、上記鞘部と上記芯部との質量比で曲げ剛性値が制御されてなることを特徴とする、請求の範囲1又は2に記載のかつら。
  • 前記毛髪が、ポリアミド系樹脂でなる第1の人工毛髪とポリエステル系樹脂でなる第2の人工毛髪とを所定の割合で混ぜ合わせてなり、
    上記第1の人工毛髪が、芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる鞘/芯構造を有し、
    上記芯部がポリアミド樹脂からなり、上記鞘部が上記芯部より剛性の低いポリアミド樹脂からなり、上記鞘部と上記芯部との質量比で曲げ剛性値が制御されてなることを特徴とする、請求の範囲1又は2に記載のかつら。
  • 前記毛髪が、芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる鞘/芯構造を有し、
    上記芯部がポリアミド樹脂からなり、上記鞘部が上記芯部より剛性の低いポリアミド樹脂からなり、上記鞘部と上記芯部との質量比で曲げ剛性値が制御されてなることを特徴とする、請求の範囲6に記載のかつら。
  • 前記毛髪が、ポリアミド系樹脂でなる第1の人工毛髪とポリエステル系樹脂でなる第2の人工毛髪とを所定の割合で混ぜ合わせてなり、
    上記第1の人工毛髪が、芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる鞘/芯構造を有し、
    上記芯部がポリアミド樹脂からなり、上記鞘部が上記芯部より剛性の低いポリアミド樹脂からなり、上記鞘部と上記芯部との質量比で曲げ剛性値が制御されてなることを特徴とする、請求の範囲6に記載のかつら。
  • 说明书全文

    本発明は、かつらベースに取り付ける毛髪の曲げ剛性値を制御することにより、装着者の頭皮から生育している自毛となじみ易くすることで、かつら装着が露見され難いようにしたかつらに関する。

    かつらは、一般に、ネット素材をベースの主体としたかつらベース又はポリウレタンやシリコンなどの薄いシート若しくはフィルムで作った人工皮膚製のかつらベースと、このかつらベースに縫着、接着などにより植設した毛髪とで基本的に構成される。 かつらベースに取り付ける毛髪は、人毛で成る天然毛髪のほか、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、モダアクリルなどから加工した人工毛髪が知られている。 かつらの種類としては、装着者の前額部、側頭部及び後頭部のヘアラインに沿った周縁を有する帽状の全頭用かつらと、頭部の必要な部位のみを隠蔽して装着する部分かつらが一般に知られている。
    特許文献1には、頭部を複数の部位に区分し、各部位それぞれに部分かつらを装着し、複数の部分かつらの一部を別の部分かつらに取り替えたり、頭部への装着位置を入れ替えたり、装着する向きを変えることで、種々のヘアスタイルに変更することができることが示されている。

    ところで、かつらベースに植設する毛髪は、前述したように古くから天然毛髪が愛用されてきたが、近年天然毛髪素材の調達上の制約から、例えばアクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系の合成繊維をかつら用毛髪素材とすることが多くなった。 例えば、ポリアミド系繊維は、多くの点で天然毛髪に近い外観、物性を有するので、従来から実用に供されており、特に表面処理によって不自然な光沢などを消す本出願人による発明によって優れたかつらが提供されている(特許文献2参照)。
    これに対し、ポリアクリル系繊維は、融点が低く耐熱性が悪いためにパーマセット後の保持性が悪く、例えば温に曝すとカールなどの加工が崩れるなどの弱点があった。 ポリエステル系繊維は、強度、耐熱性に優れた素材であるが、天然毛髪に比べて吸湿性が極めて低いうえに、曲げ剛性値が高すぎるため、例えば高湿環境下で天然毛髪と異なる外観、触感、物性を示し、かつらとして用いる場合に著しい違和感を呈する。 この曲げ剛性値は、人工毛髪に単位の大きさの曲げモーメントを加えたとき、それによって生じた曲率変化の逆数で定義される。 人工毛髪の曲げ剛性値が大きいほど曲げに強くたわみずらい、つまり、硬く曲げにくい人工毛髪である。 逆にこの曲げ剛性値が小さい程曲げ易く、柔らかい人工毛髪であるといえる。

    上記曲げ剛性値は、繊維の触感や質感などの風合いに関連する物性値を示すもので、川端式測定法で数値化できるものとして繊維織物産業で広く認知されている(非特許文献1参照)。 一本の繊維や毛髪の曲げ剛性値を測定できる装置も開発されている(非特許文献2参照)。

    ポリアミド繊維には、主鎖としてメチレン鎖のみがアミド結合でつながる直鎖飽和脂肪族ポリアミド、例えば、ナイロン6、ナイロン66などと、主鎖中にフェニレン単位が入る半芳香族系ポリアミド(例えば、東洋紡績(株)のナイロン6T、三菱ガス化学(株)のMXD6など)がある。 特許文献2には、ナイロン6繊維を素材として表面処理をした人工毛髪が開示されているが、ナイロン6繊維単独では触感や質感などの風合いなどに関連する物性である曲げ剛性値が天然毛髪より低く、このため天然毛髪と同質の人工毛髪を製造することが難しい。 なお、上記「ナイロン」はデュポン社の登録商標であるが、本発明の実施例では、ポリアミド繊維として「ナイロン」を用いているので、この用語を以下の説明でも使用する。

    一方、ナイロン6Tを用いた人工毛髪は、逆に曲げ剛性値が天然毛髪より高いため、天然毛髪と同質の毛髪を製造するのは困難である。 ナイロン6とナイロン6Tとの混練紡糸によって天然毛髪に近い曲げ剛性を示す繊維に加工しようとしても、これら2種の樹脂は融点差が大きいため、高融点のナイロン6Tに合わせた溶融温度を設定すると、低融点で耐熱性も相対的に低いナイロン6が溶融中に熱酸化して劣化してしまい、優れた人工毛髪は得られない。

    2種類の樹脂の特性をそれぞれ活かす方法として、鞘/芯構造の繊維が知られている。 芯になる繊維とそれを取り巻く鞘状の繊維から成り、それぞれの特性を活かす試みもあり、一般繊維として、また、かつら用人工毛髪素材としても発表されている(特許文献3及び4参照)。 特許文献3には、塩化ビニリデン、ポリプロピレンなどからなる鞘/芯構造の繊維が開示され、特許文献4には、ポリアミド系であるが、芯部に蛋白質架橋ゲルを配合することによって変性する繊維が開示されている。

    特開2000−303239号公報

    特開昭64−6114号公報

    特開2002−129432号公報

    特開2005−9049号公報

    川端季雄、繊維機械学会誌(繊維工学)、26、10、pp. 721−728、1973 カトーテック株式会社、KES−SHシングルヘアーベンディングテスター取扱説明書

    部分かつらを装着者の薄毛部分を覆うように頭部に装着する場合、薄毛部分の周囲に生育している自毛とかつらに取り付けた人工毛髪とが外観上分離しないでよく馴染むよう、装着者の自毛とかつらの人工毛髪の物性値をなるべく一致させることが重要である。 このため、かつらに使用する人工毛髪は、第一義的に天然毛髪に近い風合い(即ち、外観、触感、質感)及び物性値を有することが求められ、その上でさらに天然毛髪より優れた物性値を有することが理想である。 上述したように各種合成繊維素材はそれぞれの特徴と弱点を有し、その中では一定のポリアミド繊維がその特性が優れているため実用化されている。
    しかしながら、ポリアミド繊維素材でなる人工毛髪をかつらベースに植設してなるかつらの場合、かつら装着時に装着者の頭皮から生育した自毛とかつらベースに植設した人工毛髪とを馴染ませてヘアスタイルを整えても、ポリアミド繊維の曲げ剛性値が自毛と比べて低すぎることから、かつらを装着した時からの時間経過に伴い自毛とかつらに植設した人工毛髪とが分離し、かつらベース周縁部付近の自毛が立ち上がって、不自然なスタイルとなって、かつらの装着が視認され易い。 逆に、天然毛髪に比して曲げ剛性が高いポリエステル系繊維の場合は、かつらの毛髪が不自然に立ち上がって、自毛と馴染まず分離してしまう。 このため、自毛に対してかつらの毛髪の境界線が出現してかつら装着が露顕するおそれがある。

    また、かつらベースに植設した毛髪が、かつらベースの領域に依らず同一の長さに揃えられていたり、装着者の自毛と異なるカール径を有したりすると、かつらの毛髪全体がまとまらず、かつらを装着してもヘアスタイルを整えるのに手間がかかる。

    本発明は上記課題に鑑み、装着者の頭皮から生育している自毛とかつらに植設している毛髪とが容易に分離することなく、良く馴染むことでかつら装着を露見し難いかつらを提供することを一目的としている。
    本発明は、装着者の所望のヘアスタイルを簡単に形成することが可能であり、装着者の頭皮から育成している自毛とかつらに植毛した毛髪との見分けがつき難いかつらを提供することを他の目的としている。

    本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、かつらを必要とする人の頭皮から生育している自毛は総じてこしが弱くまた柔らかい傾向にあり、側頭部や後頭部などの薄毛部位周辺に生育する自毛も同様に曲げ剛性値が低い性状にあることを確認し、芯部を剛性の高いポリアミド繊維としかつ鞘部を芯部よりも剛性の低いポリアミド繊維とする鞘/芯構造を採用することで、人工毛髪の曲げ強度に対する変形の度合、即ち、曲げ剛性値を天然毛髪と同程度に制御した人工毛髪を開発した。 本発明は、この新規な人工毛髪をさらに改良すると共に、かつらベースへ取り付けた際に、恰も自毛が頭皮から生育しているかのような自然な外観を呈するかつらを完成するに至った。

    上記目的を達成するため、本発明の一態様は、かつらベースとかつらベースに植設される毛髪とを含むかつらであって、かつらベースの少なくとも縁周りに植設される毛髪が、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有することを特徴とする。
    本発明の他の態様は、かつらベースが、左右側頭部側の周縁部及び後頭部側の周縁部を含んで複数の領域に区分され、かつらベースに区分された領域に植設される毛髪が、領域毎に設定した所定の曲げ剛性値を有し、周縁部に植設される毛髪が、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有することを特徴とする。

    上記構成において、かつらベース上に区分された領域のうちこのかつらベースの中心領域となる天頂部に近くなるにつれて、周縁部に植設される毛髪より曲げ剛性値の高い毛髪が植設されることが好ましい。

    上記かつらベースが、少なくとも、かつらベースの中心領域となる天頂部と、周縁部と、この周縁部に沿って天頂部と周縁部との間に画成される中間領域とを含んで区分され、天頂部に植設される毛髪が、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有し、周縁部に植設される毛髪が天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有し、中間領域には、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有する毛髪と天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有する毛髪とが混ぜ合わせて植設されるようにしてもよい。 かつらベースに区分された領域に植設される毛髪は、領域毎に設定した所定のカール径及び/又は長さを有し、周縁部に植設される毛髪が、装着者の頭皮から育成している自毛と同程度のカール径及び/又は長さを有することが好ましい。

    本発明の他の態様のかつらは、かつらベースが、前頭部側の周縁、左右側頭部側の周縁及び後頭部側の周縁でなる全周縁部を含んで複数の領域に区分され、区分された領域に植設される毛髪が領域毎に設定した所定の曲げ剛性値を有し、全周縁部に植設される毛髪が天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有することを特徴とする。
    好ましくは、上記領域は、かつらベースの中心領域となる天頂部と、前頭部側の周縁、左右側頭部側の周縁及び後頭部側の周縁でなる全周縁部と、全周縁部に沿って天頂部と全周縁部との間に画成される中間領域を含んで区分され、天頂部に植設される毛髪は天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有し、全周縁部に植設される毛髪は天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有し、中間領域には、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有する毛髪と天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有する毛髪とが混ぜ合わせて植設される。

    上記構成において、好ましくは、かつらベースに区分された領域に植設される毛髪は領域毎に設定した所定のカール径及び/又は長さを有し、全周縁部に植設される毛髪は装着者の頭皮から育成している自毛と同程度のカール径及び/又は長さを有する。

    毛髪は、好ましくは、芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる鞘/芯構造を有し、芯部がポリアミド樹脂からなり、鞘部が芯部より剛性の低いポリアミド樹脂からなり、鞘部と芯部との質量比で曲げ剛性が制御されてなる。

    或いは、毛髪は、ポリアミド系樹脂でなる第1の人工毛髪とポリエステル系樹脂でなる第2の人工毛髪とを所定の割合で混ぜ合わせて形成されていてよく、第1の人工毛髪が、芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる鞘/芯構造を有し、芯部がポリアミド樹脂からなり、鞘部が芯部より剛性の低いポリアミド樹脂からなっており、鞘部と芯部との質量比で曲げ剛性が制御されてなる。

    本発明のかつらは、かつらベースの周縁部に植設される毛髪が、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有すること、また、装着者の頭皮から育成している自毛は天然毛髪の曲げ剛性と同等かそれより低い剛性であることから、かつらベースの左右側頭部側の周縁及び後頭部側の周縁に、装着者の自毛と同程度の曲げ剛性を有する毛髪が植設されていることにより、この毛髪と装着者の自毛とが馴染みあい、両者とも同様な立ち上がりや曲性を示す。 よって、自毛とかつらの毛髪とが分離せず同様の挙動を示す。 また、本発明のかつらにおいては、かつらベースの領域毎に所定の長さ及び/又はカール径を有する毛髪が植設されているので、このかつらを装着する際には、部分的な微調整のみ行なえばよいので、装着者の好みのヘアスタイルを簡単に形成することができる。
    かつらベースに植設される毛髪として、ポリアミド系素材で鞘芯構造の質量比を調整したり、ポリエステル系素材で断面寸法のサイズを調整し、或いは原料として混入させるポリブチレンテレフタレートの混入割合を調整することで、曲げ剛性値を制御したものを用いることができる。

    通常、装着者の頭皮から育成している自毛、即ち、脱毛部又は薄毛部以外の周囲に生えている残毛は平均して天然毛髪よりも曲げ剛性値が低い。 本発明によれば、かつらベースの縁周りに植設されている毛髪が天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有するので、結果として、装着者の頭皮から生育している自毛と同程度の曲げ剛性値を有する毛髪をかつらベースの周縁部や全周縁領域に植設していることになる。 このため、かつらを装着し周縁部や全周縁領域に植設された毛髪をそれに隣接する自毛の上から被せて自毛と共にブレンドすると、かつらの毛髪が自毛と同様の挙動を示して共に良く馴染みあって容易に分離しない。 よって、かつら装着が露見され難い。
    本発明に従い、かつらベースを周縁部や全周縁領域を含んで複数の領域に分割し、領域毎に曲げ剛性値の異なる毛髪が植設されていれば、装着者がこれまでなし得なかったボリューム感のあるヘアスタイルを形成することができる。 かつらベースの周縁部や全周縁領域に植設する毛髪が装着者の自毛と同程度のカール径や長さを有していると、自毛がかつらの毛髪と馴染み易くなり、かつら装着が一層露見され難くなる。 しかも簡単な調整を行なうだけで装着者が所望するヘアスタイルを容易に短時間で形成することができる。

    使用者の頭部に本発明のかつらを装着した状態の模式図である。

    かつらベースの平面図である。

    (A)は本発明のかつらを、(B)は比較例としてのかつらをそれぞれ模式的に示した図である。

    フロント隠蔽型のかつらベースを含むかつらを装着者に装着した状態をイメージとして示しており、(A)は装着状態の斜視図、(B)は装着状態の平面図である。

    トップ装着型のかつらベースを含むかつらを装着者に装着した状態をイメージとして示した平面図である。

    複数の領域に区分されたかつらベースを模式的に示す平面図である。

    図6に示すかつらベースにおいて5分割された領域に基づいて3つの領域に分割される様子を示す平面図である。

    図6に示すかつらベースの第1帯体、第2帯体及び周縁部の部分拡大図である。

    トップ装着型のかつらベースを模式的に示す平面図である。

    かつらベースの各領域の最適な寸法設定を説明するための模式図である。

    かつらベースの領域区分に関する第1の比較例を示す図である。

    かつらベースの領域区分に関する第2の比較例を示す図である。

    植設パターンの第1乃至第4形態におけるかつらベースに植設する毛髪の特性を示す図表である。

    植設パターンの第5形態におけるかつらベースに植設する毛髪の特性を示す図表である。

    植設パターンの第6形態におけるかつらベースに植設する毛髪の特性を示す図表である。

    植設パターンの第7形態におけるかつらベースに植設する毛髪の特性を示す図表である。

    植設パターンの第8形態におけるかつらベースに植設する毛髪の特性を示す図表である。

    植設パターンの第9形態におけるかつらベースに植設する毛髪の特性を示す図表である。

    植設パターンの第10形態におけるかつらベースに植設する毛髪の特性を示す図表である。

    植設パターンの第11乃至第13形態におけるかつらベースに植設する毛髪の特性を示す図表である。

    植設パターンの第14形態におけるかつらベースに植設する毛髪の特性を示す図表である。

    植設パターンの第15形態におけるかつらベースに植設する毛髪の特性を示す図表である。

    符号の説明

    1:自毛 2:剃り込み部10,20:かつら11,21,31:かつらベース11A:周縁領域11B,31B:主要領域11C,31C:調整領域11D:切り返し部11a,21a:周縁部11b,31a,32a,33a:前頭部11c,31e,32e,33e:天頂部11d:第1帯部11e:第2帯部11f,11h,11j:内側部11g,11i,11k:外側部12,13,22,32,33:毛髪31A:全周縁領域31b,32b,33c:左側頭部31c,32c,33c:右側頭部31d,32d,33d:後頭部35a〜35h,36a〜36h,37a〜37h:境界線

    以下、図面を参照して本発明を実施するための好ましい幾つかの形態を説明する。
    図1は、本発明のかつら10を装着者の頭部に装着した状態を模式的に示す図である。 本発明のかつら10は、かつらベース11に毛髪12及び13が植設されてなる。 特に、かつらベース11の各部に対しその部位に応じて好ましい曲げ剛性に調整した人工毛髪12及び13が植設されている。 かつらベース11は複数の領域に区分され、かつらベース11で左右側頭部側の周縁部及び後頭部側の周縁部11aには、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有する毛髪12が植設されている。 一方、かつらベース11の周縁部11a以外の天頂部に向かう領域には、例えば天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有する毛髪13が植設されている。

    なお、曲げ剛性値とは、本明細書の「背景技術」の項中で述べたように、繊維の触感や質感などの風合いに関する物性値であり、繊維を曲げるときに必要となるの大きさ、即ち繊維を曲げた際に繊維に作用する力を示し、この値が高い繊維が硬質であり、曲げ難いことを示している。 本明細書で記述する曲げ剛性値は、上記川端式測定法により測定したものである。

    このような曲げ剛性の分布パターンで毛髪を植設したかつら10を装着すると、かつら周辺に隣接して育成している自毛1上に、かつら周縁部11aに植設した毛髪12が覆いかぶさるように配置される。 このため、自毛1と同程度の曲げ剛性値を有するかつらの毛髪12と当該自毛1とがブラッシングにより良く混ざり合うことができる。 一般に、部分かつら10は薄毛又は脱毛部位を隠蔽するサイズに作られており、図1を参照すると、前頭部及び天頂部を中心にした薄毛又は脱毛部位の周辺、例えば左右側頭部及び後頭部に育成している自毛1は、一般的な天然毛髪に比べて曲げ剛性値が低いのが通常である。 そのため、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値の毛髪12をかつらベースの周縁部11aに植設すると、毛髪12は部分かつら10に隣接して育成している使用者の低い曲げ剛性の自毛1と同等程度の剛性値を有するため、かつらの毛髪12と自毛1とが良く馴染むことができる。 なお、かつらの毛髪12はかつら使用者の自毛1より若干低い曲げ剛性値を示すものであってもよい。 自毛1より曲げ剛性値が若干低くても、かつらの毛髪12は自毛1より上流側に位置しているので、自毛1の上から覆いかぶさって配置されるため、ブラッシングにより両者が程よく混ざり合ってかつらの毛髪12の境界をぼかすことができる。 ただし、かつらの毛髪12の曲げ剛性値が自毛のそれに比べて低すぎると境界が現れるため適さない。

    典型的な部分かつらのかつらベース11の平面図を示す図2において、矢印の方向はかつらの前側、即ち装着者の目線方向を示している。 かつらベース11は、装着者の頭部の形状及び寸法並びに自毛1の分布及び量に応じて、ネットベース若しくは人工皮膚ベース又はそれらの組合せで構成されている。 かつらベース11の、少なくとも左右側頭部側及び後頭部側の周縁部11aには、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有する毛髪12(図1参照)が植設されている。 一方、その他の領域、すなわち周縁部11a以外の中心部に至る領域に植設する毛髪13は、好ましくは、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有するものを植設する。 これにより、今まで装着者の自毛ではなし得なかった所望のヘアスタイルを形成することができる。

    図3(A)は本発明のかつら10を、図3(B)は比較例としてのかつら20をそれぞれ模式的に示している。 本発明のかつら10は、図3(A)に示すように、かつらベース11のうち、左右側頭部側の周縁部及び後頭部側の周縁部11aに植設される毛髪12が、天然毛髪より低い曲げ剛性値を有する。 よって、自毛1と毛髪12とをコーミングして自毛1に毛髪12を馴染ませることで、周縁部11aに植設された毛髪だけが立ち上がることなく、さらに自毛1と毛髪12とが分離せず両者を峻別することができないため、かつらを装着していることを露見され難い。
    ところで、装着者の自毛はかつらを必要としない者の自毛と比べると、一般に柔らかく曲げ剛性が低い。 そのため、図3(B)に示すように、かつらベース20のうち左右側頭部側及び後頭部側の周縁部21aに植設される毛髪22が、装着者の自毛1よりも高い曲げ剛性値を有すると、かつらベースの周縁部21aに植設される毛髪22は立ち上がり易く、それに隣接する装着者の自毛1は倒伏しているため、毛髪22と自毛1とで毛並びが異なり、それぞれ異なった挙動を示すことになる。 このため、自毛とその上に被さるかつらの毛髪との境界線が横線状に現れて、かつらを装着していることが露見されやすくなる。

    ここで、本発明のかつらにおけるかつらベースについて説明する。 かつらベースの形状及びその仮想区分として幾つかの種類が存在する。 例えば、装着者の頭部全体が薄毛である場合に採用されるフロント隠蔽型と、装着者の頭部のうちトップの領域が部分的に薄毛である場合に採用されるトップ装着型とに大別される。 前者のフロント隠蔽型はヘアラインが後退している者に対応するタイプであるのに対し、後者のトップ装着型はヘアラインが後退しておらず頭部の天頂部周辺が部分的に薄くなっている者に対応するタイプであり、特にお洒落感覚で増毛させたいという要望に応じるタイプである。 比較的前者は男性からの要望が多く、後者は女性からの要望が多い。

    図4は、フロント隠蔽型のかつらベース11を含むかつら10を装着者に装着した状態をイメージとして示した図で、(A)は装着状態の斜視図、(B)は装着状態の平面図である。 図4(A)では自毛1や毛髪12,13は一部しか図示しておらず、(B)では自毛1及び毛髪12,13は図示していない。 フロント隠蔽型のかつらベース11は、図4に示すように、装着者の額を一部覆うようにトップから前側に張り出す前頭部11bと、装着者の脱毛周辺領域で左右両側部及び後頭部の周縁で形成される周縁部11aとで、かつらベース11の全周縁が形成されており、周縁部11aの曲率が前頭部11bのそれより大きいため、あるべき剃り込み部2に宛がわれる切り返し部11Dが形成されている。

    図5は、トップ装着型のかつらベース31を含むかつら30を装着者に装着した状態をイメージとして示した図である。 トップ装着型のかつらベース31では、装着者の頭部のトップ及びその近傍に装着される。

    図6はフロント隠蔽型のかつらベース11を模式的に示す平面図である。 このかつらベース11は仮想線により複数の領域に区分され、矢印の方向がかつらの前方を示している。 図6に示すように、このかつらベース11は、装着者の頭部の形状及び寸法に合わせて略左右対称に構成され、前髪が植設されて頭部のフロントに対応する前頭部11bと、かつらベース11の中心領域を画成し頭部のトップに対応する天頂部11cと、天頂部11cの左右両端及び後端と隣接する略U字形状の帯状の第1帯部11dと、第1帯部11dの左右両端及び後端並びに前頭部11bの左右両端と隣接する第2帯部11eと、前頭部を除いて第2帯部11eの左右両端及び後端に隣接してかつらベース11の左右側頭部側及び後頭部側の縁取りとなる周縁部11aとに、仮想的に区分される。

    即ち、上記かつらベース11は、天頂部11cと、その前側に前頭部11bと、天頂部11cから後頭部側及び左右の側頭部側に亙って略U字型に3段階に画成された第1帯部11d,第2帯部11e及び周縁部11aとに区分されている。 天頂部11cは、その前端で前頭部11bと隣接し、かつその左右両端及び後端で第1帯部11dと隣接している。 そして、略U字形状の帯状の第2帯体11eは、前頭部11b及び第1帯部11dを左右両端及び後端から部分的に囲んでいる。 周縁部11aは、第2帯体11eの外側、即ち左右両端及び後端に隣接して、かつらベース11の左右側頭部側及び後頭部側の縁取りをなしている。

    このように、図6に示すフロント隠蔽型のかつらベース11は、領域毎に設定した所定のカール径及び/又は長さの毛髪を植設するために、5つの領域に分割される。 その理由は以下の通りである。 前頭部11bは、装着者以外の第三者にとって最も目に付きやすい領域であるため、前頭部11bの左右対称線から左右両側方向に延設され、装着者のあるべき剃り込み部2を被覆する。 天頂部11cは、装着者の髪型や外観及び第三者の抱く印象を左右する重要な領域となる。 周縁部11aは、後頭部から左右側頭部に延設されて略U字状を呈しており、装着者の自毛1に馴染む毛髪を植設し、かつら装着の露見を防止するための領域となる。 本発明のかつらは、後述するように、領域毎に設定した所定のカール径及び/又は長さの毛髪を植設して構成されるところ、前頭部11b、天頂部11c及び周縁部11aにそれぞれカール径及び/又は長さが異なる毛髪を植設すると、それぞれの境界で、カール径及び/又は長さの違いにより段差が生じる。 特に、天頂部11cと周縁部11aとの間においては、それぞれに植設した毛髪が馴染まないために段差が生じやすい。 そこで、天頂部11cの外縁に天頂部側の緩衝領域として第1帯部11dを画成し、かつ周縁部11aの内縁に周縁部側の緩衝領域として第2帯部11eを画成する。 これにより、周縁部11aに植設した毛髪と天頂部11cに植設した毛髪のカール径及び/又は長さに差があっても、周縁部11aと天頂部11cとにそれぞれ植設した毛髪の中間的なカール径及び/又は長さを有する毛髪を、第1帯部11dと第2帯部11eとに段階的に植設することができ、かつらベース11に植設した毛髪同士による段差が生じなくなる。 周縁部11aに植設した毛髪は、更に、装着者の頭皮から育成している自毛と同程度のカール径及び/又は長さを有することで、このかつらを装着する際には、部分的に毛髪をカットするなどの微調整のみを行なえばよく、装着者の好みのヘアスタイルを簡単に短時間で形成することができる。

    図7は、図6に示すかつらベースにおいて5分割された領域に基づいて3つの領域に分割される様子を示す平面図である。 図6に示すフロント隠蔽型のかつらベース11は、曲げ剛性値の異なる毛髪を植設するために、図7に示すように3つの領域に分割される。 3つの領域への分割は、図6に示した5分割した領域に基づいて定められる。 即ち、図6に示すかつらベース11は、領域毎に設定した所定のカール径及び/又は長さの毛髪を植設するために、前頭部11b、天頂部11c、第1帯部11d、第2帯部11e及び周縁部11aと5分割したものであるところ、所定の曲げ剛性値を持ち、かつ、所定のカール径及び/又は長さの毛髪を植設するために、5分割した領域に基づいて、前頭部11bから天頂部11cにかけて第1帯部11dを含めた主要領域11Bと、周縁部11aの領域11Aと、主要領域11Bと周縁領域11Aとの間の調整領域11Cとの、3つの領域に分割される。

    このように曲げ剛性値の異なる毛髪を植設するために3領域に分ける理由は、以下の通りである。 前述したように、前頭部11b及び天頂部11cは、装着者以外の第三者にとって最も目に付きやすい領域であり、かつ、装着者の髪型や外観及び第三者の抱く印象を左右する重要な領域となる。 周縁部11aは、装着者の自毛1に馴染む毛髪を植設し、かつら装着の露見を防止するための領域となる。 本発明ではかつらベース11の各領域に曲げ剛性値の異なる毛髪を植設して構成されるので、調整領域11Cを設けないで、かつらベース11の天頂部11cとそれに隣接する前頭部11b及び第1帯部11dとからなる主要領域11Bと周縁部11aの領域(「周縁領域」という。)11Aとにそれぞれ曲げ剛性値の異なる毛髪を植設すると、主要領域11Bと周縁領域11Aとのそれぞれの境目において毛髪の曲げ剛性値の違いにより毛髪のかつらベース11からの立ち上がり方が異なる。 そのため、主要領域11Bに植設した毛髪と周縁領域11Aに植設した毛髪とがそれぞれ馴染まず段差が生じてしまう。 特に毛髪全体にボリュームを出させるために、後述するように前頭部11bから天頂部11cにかけての主要領域11Bには天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有する毛髪を植設するのに対し、周縁領域11Aには天然毛髪の平均的な曲げ剛性値より低い値を持つ毛髪を植設する。 この場合、主要領域11Bに植設した毛髪が後方及びサイド方向に流れても、周縁領域11Aに植設した毛髪ほど頭皮に沿って平伏することなく立ち上がってしまう。 そこで、前頭部11bから天頂部11cにかけての主要領域11Bと周縁領域11Aとの間に調整領域11Cを設ける。 この調整領域11Cは、図6に示した第2帯部11eの領域に該当する。 このように、かつらベース11を3領域に分ける。

    周縁領域11Aに植設した毛髪と主要領域11Bに植設した毛髪とで曲げ剛性値に差があっても、周縁領域11Aに植設する毛髪と主要領域11Bに植設する毛髪のそれぞれの曲げ剛性値の中間の値を有する毛髪を、周縁領域11Aと主要領域11Bとの間に介在させた調整領域11Cに植設することで、かつらベース11に植設した毛髪による段差が生じなくなる。 よって、かつら10を装着しても、自毛1とかつらベース11の周縁領域11Aに植設した毛髪12とが分離せず、かつ、かつらベース11内での曲げ剛性値の違いによる毛髪の分かれ目が生じないため、かつら装着を露見され難い。

    以上のように、図6に示すフロント隠蔽型のかつらベース11は、領域毎に設定した所定のカール径及び/又は長さの毛髪を植設するために、5領域に分割されている。 しかし、植設された毛髪のカール径及び/又は長さに変化を持たせるだけでは、ボリューム感のあるヘアスタイルを構成することができない。 そこで、図7に示すようにかつらベース11の5領域に基づいて3領域に再編成し、3つに分割した領域毎に曲げ剛性値の異なる毛髪を植設することで、5つに分割した領域毎に設定したカール径及び/又は長さの毛髪の効果と相俟って、更に、装着者の所望の髪型を形成することができる。

    ここで、かつらベース11は、装着者の頭部の形状及び寸法並びに脱毛又は薄毛状態に応じて適宜のサイズに決定されるところ、前頭部11bの中心軸上での長さL 1及び左右両端の長さL 2や、第1帯部11dの幅L 3 ,第2帯部11eの幅L 4及び周縁部11aの長さL 5を所定の値に設定して、天頂部11cの寸法を適宜に調整することにより、かつらベース11のサイズを装着者の頭部の大きさや寸法に適合するようにする。 なお、本明細書中において、長さや幅は、かつらベース11の大きさを示す場合も含め、かつらベース11の曲面に沿った長さである。

    かつらベース11の前頭部11b、天頂部11c、第1帯部11d、第2帯部11e及び周縁部11aの各領域は、装着者の頭部におけるかつら装着領域の大きさにかかわらず略均等に配置されることが必要である。 かつらベース11の大きさがある一定以上の場合について説明する。 かつらベース11の大きさがある一定以上とは、例えばかつらベース11の前後長Lが15cm以上であり、左右長Dが15cm以上のサイズをいう。 天頂部11cの大きさは、装着者の頭部の形状及び大きさ並びに脱毛状態などを考慮して装着者毎に決定する。 かつらベース11の周縁部11aは中心の左右対称線上での幅L 5が、2cmとなるよう略U字状の帯状に画成される。 前頭部11bは、中心の左右対称線上での前後幅L 1が5cmで、左右で第2帯部11eと隣接する側部の前後幅L 2が3cmのように、左右の両側になるに従い前後幅が狭くなるように画成される。 第1帯部11dは、第2帯部11eの内周に沿い、かつ中心の左右対称線上での幅L 3が1.5cmとなるよう略U字状の帯状に画成される。 第2帯部11eは、周縁部11aの内周に沿い、かつ中心の左右対称線上での幅L 4が1.5cmとなるよう略U字状の帯状に画成される。

    上記各幅L 1 〜L 5の値について説明する。
    前頭部11bに植設した毛髪の一部は生え際の露見を防止するため前方向に流す必要があり、かつ、かつらベースに曲げ剛性値の異なる毛髪を植毛しても段差が生じないよう前頭部11bに隣接する天頂部11c、第1帯部11d、第2帯部11e及び周縁部11aの各方向に流す必要がある。 従って、前頭部11bにおける左右対称線上での前後幅L 1が5cm未満であると、前頭部11bに植設した毛髪を前方向に流しつつ、かつ天頂部11c、第1帯部11d、第2帯部11e及び周縁部11aの各方向に流すことが困難となる。 そのため、生え際が露見したり、かつらベースに植設した毛髪全体が段差を生じ、結果としてかつら装着を露見されるため好ましくない。 逆に、前後幅L 1が5cmより大きいと、第1に、前頭部11bの領域が広くなり、装着者以外の第三者の目から見て、前頭部11bが極端に目立ちすぎ不自然感が生じてしまう。 第2に、天頂部11cの領域が小さくなり、装着者の所望の髪型を形成することができなくなる。 よって、前頭部11bにおける左右対称線上での前後幅L 1は5cmが好ましい。
    前頭部11bにおける第2帯部11eに隣接する両側の前後幅L 2が3cm未満であると、前頭部11bに植設された毛髪と天頂部11c、第1帯部11d及び第2帯部11eにそれぞれ植設された毛髪とが馴染み難くなるほか、前頭部11bに植設された毛髪を前後左右の各方向に分けると、切り返し部11Dが外部から視認され、かつら装着が露見されてしまうため好ましくない。 よって、前頭部11bにおける第2帯部11eに隣接する両側の前後幅L 2は3cmとなる。 この前後幅L 2が、前頭部11bにおける左右対称線上での前後幅L 1の幅と同等又は前後幅L 1の幅よりも長いと、第1帯部11dの部位が狭くなり、第1帯部11dに植設した毛髪と天頂部11cに植設した毛髪とで段差が生じ毛髪が分かれてかつらを装着していることが外部から視認されてしまうので、好ましくない。

    第1帯部11dの左右対称線上での幅L 3 、第2帯部11eの左右対称線上での幅L 4及び周縁部11aの左右対称線上での幅L 5について説明する。 図8は、図6に示すかつらベース11の第1帯体11d、第2帯体11e及び周縁部11aの部分拡大図である。 第1帯部11dは、天頂部11cに植設した毛髪と馴染ませるための毛髪を植設する内側部11fと、第2帯部11eに植設した毛髪と馴染ませるための毛髪を植設する外側部11gとでなる。 内側部11fの幅L 31は1cm必要であり、外側部11gの幅L 32は0.5cmがよい。 第1帯部11dは、天頂部11cに植設する毛髪と周縁部11aに植設する毛髪とのカール径及び/又は長さが異なることに起因する不都合を解消する緩衝領域の一部を構成する。 よって、内側部11fの幅L 31が1cmより短いと、天頂部11cに植設した毛髪と馴染ませる毛髪が植設される領域が小さいので、かつらベース11に植設した毛髪同士で段差が生じる。 一方、外側部11gは、この外側部11gに植設される毛髪と第2帯部11eに植設される毛髪とのカール径及び/又は長さの差が小さいので、内側部11fの幅の略半分あれば隣接する毛髪同士が馴染みあう。 以上のことから、第1帯部11dの幅L 3は1.5cm必要となる。 逆に、第1帯部11dの幅L 3を2cmより長くすると、天頂部11cの領域が狭くなり、自由なヘアスタイルを構成することができないので好ましくない。 また、第1帯部11dの幅L 3が広くなると、内側部11fと外側部11gの境目付近に天頂部11cと第2帯部11eに植設した毛髪に馴染み合わない部分が生じ、その結果、第1帯部11dに植設した毛髪が分かれてしまうことで、かつらの装着が外部から露見するので好ましくない。

    第2帯部11eの左右対称線上での幅L 4について説明する。 第2帯部11eは、第1帯部11dに植設した毛髪と馴染ませるための毛髪を植設する内側部11hと、周縁部11aに植設した毛髪と馴染ませるための毛髪を植設する外側部11iとでなる。 外側部11iの幅L 42は1cm必要であり、内側部11hの幅L 41は0.5cmがよい。 第2帯部11eは、天頂部11cに植設する毛髪と周縁部11aに植設する毛髪との曲げ剛性値の緩衝領域の他部を構成する。 よって、外側部11iの幅L 42が1cmより短いと、周縁部11aに植設した毛髪と馴染ませる毛髪が植設される領域が小さいので、かつらベース11に植設した毛髪同士で段差が生じる。 一方、内側部11hは、この内側部11hに植設される毛髪と第1帯部11dに植設される毛髪とのカール径及び/又は長さの差と曲げ剛性値の差の双方が小さいので、外側部11iの幅の略半分あれば隣接する毛髪同士が馴染みあう。 以上のことから、第2帯部11eの幅L 4は1.5cm必要となる。 逆に、第2帯部11eの幅L 4を2cmより長くすると、天頂部11cの領域が狭くなり、自由なヘアスタイルを構成することができないので好ましくない。 第2帯部11eの幅L 4が広くなると、内側部11hと外側部11iの境目付近に第1帯部11dと周縁部11aに植設した毛髪に馴染み合わない部分が生じ、その結果、第2帯部11eに植設した毛髪が分かれてしまうことで、かつらの装着が外部から露見するので好ましくない。

    周縁部11aの左右対称線上での幅L 5について説明する。 周縁部11aは、第2帯部11eに植設した毛髪と馴染ませるための毛髪を植設する内側部11jと、装着者の残毛と馴染ませるための毛髪を植設する外側部11kとでなる。 この周縁部11aに植設される毛髪とその内側の第2帯部11eに植設される毛髪とのカール径及び/又は長さと、曲げ剛性値との双方が異なることから、内側部11jの幅L 51は1cm必要となる。 外側部11kはこの外側部11kに存在する装着者の自毛に馴染ませるための毛髪を植設するため、外側部11kは1cm必要となる。 よって、周縁部11aの幅L 5は2cm必要となる。 周縁部11aの幅L 5が2cmより短いと、装着者の自毛と周縁部11aに植設した毛髪と第2帯部11eに植設した毛髪とが馴染まず毛分かれした状態となり、装着者の頭部におけるかつらベースの周縁が外部から視認されるので好ましくない。 逆に、周縁部11aの幅L 5が2cmより長いと、天頂部11cの領域が狭くなり、装着者の所望の髪型を形成できないので好ましくない。 周縁部11aの幅L 5が広くなると、内側部11jと外側部11kの境目付近に、第2帯体11eを植設した毛髪と装着者の自毛とに馴染みあわない部分が生じ、その結果、周縁部11aに植設した毛髪が分かれてしまうことで、かつらの装着が外部から露見されるので好ましくない。

    以上の寸法設定はかつらベース11の大きさがある一定サイズ以上である場合に適用されるが、装着者の頭部が小さい場合、即ち、かつらベース11の大きさがある一定サイズより小さい場合に上記寸法設定を適用すると、天頂部11cの大きさがかつらベース11の他の領域よりも小さくなる。 これは、装着者のかつら装着領域で天頂部11cが最も広くなるという調査事実に反し、天頂部11cが狭すぎるとかつら全体のバランスが悪くなり自然なヘアスタイルを形成することができないことになる。 そこで、天頂部11cの前後左右の各幅が、前頭部11bの前後幅L 1の5cmより小さい場合又は第1帯部11dから周縁部11aの左右対称線上での前後幅5cmより小さい場合には、次のように寸法設定を行なう。

    かつらベース11の大きさがある一定サイズより小さい場合には、かつらベース11の前頭部11bから周縁部11aまでの前後幅Lに対し、かつらベース11の前頭部11bの前後幅L 1がL/3となるようにし、第1帯部11dから周縁部11aの左右対称線上での前後幅L 3 +L 4 +L 5がL/3となるようにする。 そして第1帯部11dの左右対称線上での前後幅L 3と第2帯部11eの左右対称線上での前後幅L 4と周縁部11aの左右対称線上での前後幅L 5とが、1.5:1.5:2となるように配分する。

    以上のように、かつらベース11の各領域の寸法設定を、かつらベース11の前後左右の各幅が15cm以上の場合には、前頭部11b、第1帯部11d、第2帯部11e及び周縁部11aの左右対称線上の幅をそれぞれ5cm、1.5cm、1.5cm、2cmとし、残りを天頂部11cの領域として割り当てるのに対し、かつらベース11の前後左右の各幅が15cm未満の場合にはかつらベース11を3等分し、前頭部11b、天頂部11cの左右対称線上の幅を何れもかつらベース11の前後幅LのL/3とし、残りを第1帯部11dと第2帯部11eと周縁部11aに割り当てて各幅が1.5:1.5:2の比率となるように配分する。

    このように複数の領域に区分されたかつらベース11に植設される毛髪は、その領域毎に決められた所定の曲げ剛性値を有する。 かつらベース11の周縁部11aに植設される毛髪12は、装着者の脱毛部又は薄毛部の周辺領域に自毛と混ぜ合わせて配置されるため、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有する。
    これに対し、かつらベース11のうち周縁部11aから天頂部に向かう領域、例えば、前頭部11b、天頂部11c、第1帯部11dにかけての主要領域11Bに植設される毛髪は、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有するように設定する。 そして、かつらベース11のうち周縁部11aと前頭部から天頂部にかけての領域11Bとの境界領域となる調整領域11Cに植設される毛髪は、周縁部11aに植設される毛髪と主要領域11Bに植設される毛髪との中間的な曲げ剛性を有するようにする。
    ここで、上記毛髪を中間的な曲げ剛性を有するようにするため、後で詳述するが、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有する毛髪と天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有する毛髪とを所定の本数の割合で混ぜたり、周縁領域11Aに植設される毛髪の曲げ剛性値と主要領域11Bに植設される毛髪の曲げ剛性値との間の所定の値を有するよう構造や寸法を調整する。

    以上のように、かつらベース11において周縁部11aの領域11Aに植設する毛髪は、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有しており、好ましくは装着者の自毛1と同程度の曲げ剛性値を有し、さらに好ましくは頭部の自毛1から遠ざかるにつれて、曲げ剛性値が徐々に高い毛髪が植設され、かつらベース11の主要領域15Bに植設する毛髪は、周縁領域11Aに植設される毛髪よりも曲げ剛性値が高く、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有する。 これにより、装着者の頭皮から生育している自毛1とかつらベースの周縁部11aに植設される毛髪12とが馴染みやすく、それぞれ同じように立ち上がり、同じように湾曲するなどして、同様の挙動を示す。 その一方、かつらベースの主要領域11Bに植設される毛髪は、自毛1より高い曲げ剛性値を有するので、その毛髪の硬さや曲げ強度により、従来装着者がなし得なかった独自のヘアスタイルを形成することができる。

    以上説明したかつらは、かつらベースを複数の領域に区分し、各領域にその領域に対応した曲げ剛性値を有する毛髪を植設してなるが、図6に示すかつらベース11の領域毎に、毛髪の長さを調整したり、カール付けの有無や付されるカールの曲率の大きさを調整したり、色を調整するなど、任意に形成した人工毛髪を用いることができる。 装着者の残毛の分布状態や残毛の色に応じて上記各種の人工毛髪をかつらベース11の各領域に植設することで、装着者のニーズに応じたヘアスタイルを形成することができる。

    図7に示すかつらベース11の領域毎、即ち、周縁領域11A、主要領域11B及び調整領域11Cのそれぞれに植設される毛髪は、所定の曲げ剛性値を有するだけでなく、周縁部11a、前頭部11b、天頂部11c、第1帯部11d、第2帯部11e毎に所定のカール径及び/又は長さを有することが好ましい。 即ち、フロント隠蔽型のかつらにおいて、かつらベース11の周縁部11aに植設する毛髪12は、かつらの周縁部近傍の自毛と同等の曲げ剛性値を有するだけでなく、カール径や長さが同等であることが好ましい。 かつらベース11の天頂部11cに植設する毛髪13のカール径や長さと、周縁部11aに植設する毛髪12のカール径や長さとが異なる場合には、徐々に、カール径及び/長さを変化させることで、かつらベース11に植設した毛髪により段差が生ぜず、かつら装着を露見されない。 また、かつらベース11における前頭部11bから天頂部11cにかけての主要領域11Bに植設する毛髪13の曲げ剛性値と、周縁部11aの領域11Aに植設する毛髪12の曲げ剛性値とが異なる場合には、調整領域11Cに中間的な曲げ剛性値を有する毛髪を植設するので、かつら装着が露見され難くなる。

    次に、図5に示すトップ装着型のかつらの場合について説明する。 図9は、トップ装着型のかつらベース31を模式的に示す平面図である。 図中の矢印は、装着者の前方を示す。 このかつらベース31は、仮想線により複数の領域に区分されている。 かつらベース31は、装着者の頭部の形状及び寸法に合わせて略左右対称に構成され、植設する毛髪のカール径及び/又は長さを領域毎に異なるようにするために、図9に示すように、5つの領域に分割されている。 即ち、かつらベース31は、その中心領域となる天頂部31eと、この天頂部31eに前側で隣接する前頭部31a,天頂部31eに左側で隣接する左側頭部31bと、天頂部31eの右側で隣接する右側頭部31cと、天頂部31eの後側で隣接する後頭部31dとに仮想的に分割される。 上記トップ装着型のかつらベース31は、図6に示すフロント隠蔽型のかつらベース11とは異なり、かつら装着領域が装着者のトップのみであるため、装着者のあるべき剃り込み部や額を部分的に覆うよう形成されない。 また、かつらベース31は、植設する毛髪の曲げ剛性値を領域毎に異ならせるために、前頭部31a、左右の側頭部31b,31c及び後頭部31dの外周縁に沿ってなる全周縁領域31Aと、かつらベース31の中心領域を画成し頭部のトップに対応する主要領域31Bと、全周縁領域31Aと主要領域31Bとの間の環状の調整領域31Cとに、別途仮想的に3分割される。 ここで、主要領域31eは5分割した領域のうち天頂部31eに該当し、全周縁領域31Aは装着者のかつら装着領域の内周縁に隣接される領域である。

    かつらベース31の各領域の最適寸法について以下に説明する。 なお、かつらベース31の前頭部31aの前端と後頭部31dの後端との間でかつらベース31の曲面に沿った長さをLとし、かつら31の左側頭部31bと右側頭部31cの両端間でかつらベース31の曲面に沿った長さをDとする。
    かつらベース31の前頭部31a及び後頭部31dの幅であるL 6及びL 7は、かつらベース31の前後長Lのそれぞれ1/4となる長さとなるようにする。 また、左右両側頭部31b及び31cの長さであるD 6及びD 7は、左右長Dのそれぞれ1/4となるようにする。 それによって、かつらベース31の天頂部31eは、かつらベース31の中心領域において、かつらベース31の前後長Lの1/2の前後長を有し、かつ、かつらベース31の左右長Dの1/2の左右長を有するよう画成される。 さらに、前頭部31a、左側頭部31b、右側頭部31c、後頭部31dの各領域をほぼ等分する位置を境界線とし、かつらベース31の全周縁領域31Aと主要領域31Bとの間に植設した毛髪が毛分かれしてかつら装着が露見してしまうことを防止するために、調整領域31Cを画成する。 この境界線は、かつらベース31の外周縁と天頂部31eの境界線との中間位置にかつらベースの外周縁全周に沿って設けられる。

    図10は、かつらベース31の各領域の最適な寸法設定を説明するための模式図である。 かつらベース31の前頭部31aの前端から後頭部31dの後端までのかつらベース31に沿った前後方向の長さをLとし、左側頭部31bの左端と右側頭部31cの右端の間のかつらベース31に沿った左右方向の長さをDと定義する点は図9の場合と同様である。 この前後の長さLを4等分した長さ、区域を前頭部側から順にL 11 〜L 14とし、左右の長さDを4等分した長さ、区域を左側頭部側から順にD 11 〜D 14とし、縦横それぞれ4等分した仮想線を図面上に示している。

    天頂部31eは、装着者の外観やヘアスタイルを左右する重要な領域であるため、かつら中心付近にできるだけ広く確保する必要がある。 そこで、天頂部31eは、図10に示すように、前頭部31aとの境界線35a、左側頭部31bとの境界線35b、右側頭部31cとの境界線35c及び後頭部31dとの境界線35dにより画成される。 天頂部31eは、左側頭部31bとの境界線35b及び右側頭部31cとの境界線35cがL 12 +L 13の長さでなる区間となり、前頭部31aとの境界線35a及び後頭部31dとの境界線35dがD 12 +D 13の長さでなる区間となるよう、かつらベース31の中心領域に画成される。 即ち、天頂部31eの領域は、かつらベース31の前後長L及び左右長Dのそれぞれ1/2の長さで画成される。

    前頭部31aは、天頂部31eとの境界線35a及び左右の側頭部31b,31cとの境界線35e,35fで画成される。 天頂部31eとの境界線35a上で左右の長さがD 12 +D 13となり、天頂部31eとの境界線35aからかつらベース31の前縁までの長さが、かつらベース31の前後長Lの1/4の比率となるL 11となるよう、寸法設定される。 前頭部31aの左右の側頭部31b,31cとの境界線35e,35fは、天頂部31eとの境界線35aの左右の両端からそれぞれ左右斜め方向、即ち図中の矢印をそれぞれ略45度左右に回転した方向に延設される。 境界線35e,35fがそれぞれ左右斜め方向に延びていることで、前頭部31aと左側頭部31b及び右側頭部31cとにそれぞれ植設した毛髪に不適切な髪の分け目ができない。 それゆえ、かつら装着が露見しまうことを防止することができる。

    左側頭部31bは、前頭部31aとの境界線35e、天頂部31eとの境界線35b及び後頭部31dとの境界線35gで画成される。 天頂部31eとの境界線35b上で前後の長さがL 12 +L 13となり、天頂部31eとの境界線35bからかつらベース31の左縁までの長さが、かつらベース31の左右長Dの1/4の比率となるD 11で、寸法設定される。 ここで、前頭部31aとの境界線35eは、天頂部31eとの境界線35bの前端から左斜め方向に延設される一方、後頭部31dとの境界線35gは、天頂部31eと後頭部31dとの境界線35dの左端をその境界線35dに沿って延設している。

    右側頭部31cは、前頭部31aとの境界線35f、天頂部31eとの境界線35c及び後頭部31dとの境界線35hで画成される。 天頂部31eとの境界線35c上で前後の長さがL 12 +L 13となり、天頂部31eとの境界線35cからかつらベース31の右縁までの長さが、かつらベース31の左右長Dの1/4の比率となるD 14で、寸法設定される。 ここで、前頭部31aとの境界線35fは、天頂部31eとの境界線35cの前端から右斜め方向に延設される一方、後頭部31dとの境界線35hは、天頂部31eと後頭部31dとの境界線35dを右側にその境界線35dに沿って延設している。

    後頭部31dは、天頂部31eとの境界線35d及び左右の側頭部31b,31cとの境界線35g,35hで画成される。 天頂部31eとの境界線35d上で左右の長さはD 12 +D 13であるが、左右の側頭部31b,31cの外周縁まで延設される。 また、天頂部31eとの境界線35dからかつらベース31の後縁までの長さが、かつらベース31の前後長Lの1/4の比率となるL 14で寸法設定される。 ここで、後頭部31dの左右の側頭部31b,31cとの境界線35g,35hは、天頂部31eと後頭部31dとの境界線35dを左右にそれぞれ延設している。 そのため、後頭部31dに植設される毛髪は、装着者の自毛と共に頭皮に平伏して、自毛と毛髪とが馴染む。 よって、髪が不適切に分かれないので、かつら装着の露見を防止する。

    以上のように、天頂部31eは、装着者の外観やヘアスタイルを左右する重要な領域であるために、できるだけ広く確保する必要があるので、縦Lの1/2の比率と横Dの1/2の比率の各寸法を有するよう構成される。 一方、装着者の自毛のカール径や長さを配慮して選択された毛髪が植設される前頭部31a,左右の側頭部31b,31c及び後頭部31dは、前頭部31a、左右の側頭部31b,31c、後頭部31dとの境界線35a〜35dから外方向に概略縦Lの1/4の比率と横Dの1/4の比率の寸法を有するよう、バランスよく区分配置される。 これにより、装着者の外観やヘアスタイルを左右する重要な領域である天頂部33eをできるだけ広く確保することができ、しかも、装着者の自毛のカール径や長さに合わせた毛髪を植設する前頭部31a、左右の側頭部31b,31c、後頭部31dの各領域には、装着者の自毛と十分馴染むだけの毛髪を植設することができる。 よって、装着者の好みのヘアスタイルを形成することができ、かつ、かつらに植設した毛髪が自毛と馴染みかつら装着が露見されない。

    次に、図10と異なる比率で分割された比較例を説明する。
    図11は、かつらベースの領域区分に関する第1の比較例を示す図である。 図中のL、D及び矢印は図10の場合と同様である。 図11に示すかつらベース32は、図10と同様、前頭部32a、左右の側頭部32b,32c、後頭部32d及び天頂部32eの5つの領域に区分される点で共通しているが、かつらベース32の前後長Lを3等分した長さ、区域を前頭部側から順にL 15 〜L 17とし、左右の長さDを3等分した長さ、区域を左側頭部側から順にD 15 〜D 17とし、縦横それぞれ3等分した仮想線を図面上に示している点で図10とは異なる。 即ち、天頂部32eは、左側頭部32bとの境界線36b及び右側頭部32cとの境界線36cがL 16の長さでなる区間となり、前頭部32aとの境界線36a及び後頭部32dとの境界線36dがD 16の長さでなる区間となるよう、かつらベース32の中心領域に画成される。 つまり、天頂部32eの領域は、かつらベース32の前後長L及び左右長Dのそれぞれ1/3の長さで画成される。

    左側頭部32bは、前頭部32aとの境界線36e、天頂部32eとの境界線36b及び後頭部32dとの境界線36gで画成される点で図10の場合と同じであるが、天頂部32eとの境界線36b上で前後の長さがL 16となり、天頂部32eとの境界線36bからかつらベース32の左縁までの長さがかつらベース32の左右長Dの1/3の比率となるD 15となるよう寸法設定される点で図10の場合と異なる。 右側頭部32cは、前頭部32aとの境界線36f、天頂部32eとの境界線36c及び後頭部32dとの境界線36hで画成される点で図10の場合と同じであるが、天頂部32eとの境界線36c上で前後の長さがL 16となり、天頂部32eとの境界線36cからかつらベース32の右縁までの長さがかつらベース32の左右長Dの1/3の比率となるD 17となるよう寸法設定される点で異なる。 左右の側頭部32b,32cにおいて、前頭部32aとの境界線36e,36fが天頂部32eとの境界線36cの前端から左右斜め方向に延設され、後頭部32dとの境界線36g,36hが天頂部32eと後頭部32dとの境界線35dを左右側に延設される点は図10と同じである。

    図11に示す領域区分では、天頂部32eを前後長Lの1/3の比率と左右長Dの1/3の比率で寸法設定するので、第1に、装着者の外観やヘアスタイルを左右する重要な領域である天頂部32eを広く確保することができず、装着者が所望するヘアスタイルを形成することができなくなるので好ましくない。 第2に、天頂部32eと比べ前頭部32a、左右の側頭部32b,32c、後頭部32dの各領域の面積が広くなり、かつらベース32全体に植設された毛髪のバランスがとれず、かつら装着を視認されてしまうので好ましくない。

    図12は、かつらベースの領域区分に関する第2の比較例を示す図である。 図中のL、D及び矢印は図10の場合と同様である。 図12に示すかつらベース33は、図10と同様、前頭部33a、左右の側頭部33b,33c、後頭部33d及び天頂部33eの5つの領域に区分される点では共通しているが、かつらベース33の前後長Lを5等分した長さ、区域を前頭部側から順にL 18 〜L 22とし、左右の長さDを5等分した長さ、区域を左側頭部側から順にD 18 〜D 22とし、縦横それぞれ5等分した仮想線を図面上に示している点で図10とは異なる。 即ち、天頂部33eは、左側頭部33bとの境界線37b及び右側頭部33cとの境界線37cがL 19 +L 20 +L 21の長さでなる区間となり、前頭部33aとの境界線37a及び後頭部33dとの境界線37dがD 19 +D 20 +D 21の長さでなる区間となるよう、かつらベース33の中心領域に画成される。 つまり、天頂部33eの領域は、かつらベース33の前後長L及び左右長Dのそれぞれ3/5の長さで画成される。

    左側頭部33bは、前頭部33aとの境界線37e、天頂部33eとの境界線37b及び後頭部33dとの境界線37gで画成される点で図10の場合と同じであるが、天頂部33eとの境界線37b上で前後の長さがL 19 +L 20 +L 21となり、天頂部33eとの境界線37bからかつらベース33の左縁までの長さがかつらベース33の左右長Dの1/5の比率となるD 18となるよう寸法設定される点で図10の場合と異なる。 右側頭部33cは、前頭部33aとの境界線37f、天頂部33eとの境界線37c及び後頭部33dとの境界線37hで画成される点では図10の場合と同じであるが、天頂部33eとの境界線37c上で前後の長さがL 19 +L 20 +L 21となり、天頂部33eとの境界線37cからかつらベース33の右縁までの長さが、かつらベース33の左右長Dの1/5の比率となるD 22となるよう寸法設定される点で異なる。 左右の側頭部33b,33cにおいて、前頭部33aとの境界線37e,37fが天頂部33eとの境界線37cの前端から左右斜め方向に延設され、後頭部33dとの境界線37g,37hが天頂部33eと後頭部33dとの境界線37dを左右側に延設される点は図10と同じである。

    図12に示す領域区分では、天頂部33eを前後長Lの3/5の比率と左右長Dの3/5の比率で寸法設定するので、装着者の外観やヘアスタイルを左右する重要な領域である天頂部33eを広く確保することはできる。 しかしながら、装着者の自毛のカール径や長さに合わせた毛髪を植設する前頭部33a、左右の側頭部33b,33c、後頭部33dの各領域が狭まってしまうため、装着者の自毛と植設されている毛髪が十分馴染まないので、好ましくない。

    ところで、図5に示すトップ装着型のかつらベース31に植設される毛髪は、図9に示すように、全周縁領域31A、主要領域31B及びその間の調整領域31C毎に決められた所定の曲げ剛性値を有する。 かつらベース31の全周縁領域31Aに植設される毛髪32は、装着者の脱毛部又は薄毛部の周辺領域に自毛と混ぜ合わせて配置されるため、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有する。 これに対し、かつらベース31のうち天頂部31eの領域31Bに植設される毛髪は、天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有する。 そして、かつらベース31の全周縁領域31Aと天頂部31eの領域31Bとの間の調整領域31Cに植設される毛髪は、全周縁領域31Aに植設される毛髪と天頂部31eの領域31Bに植設される毛髪との中間的な曲げ剛性値を有するようにする。 ここで、中間的な曲げ剛性を有するようにするため、後述するように、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値を有する毛髪と天然毛髪と同程度の曲げ剛性値を有する毛髪とを所定の本数の割合で混ぜたり、全周縁領域31Aに植設される毛髪の曲げ剛性値と天頂部31eの領域31Bに植設される毛髪の曲げ剛性値との間の所定の値を有するよう構造や寸法を調整する。 これにより、フロント隠蔽型のかつらと同様、トップ装着型のかつらにおいても、脱毛部周辺の自毛とかつらベース31の全周縁領域31Aに植設した毛髪とが馴染み、かつ、かつらベースに植設した毛髪同士で段差が生じることなく馴染むことから、かつら装着が露見されにくい。

    かつらベース31の領域毎に植設される毛髪は、所定の曲げ剛性値を有するだけでなく、領域毎に所定のカール径及び/又は長さを有することが好ましい。 即ち、トップ装着型のかつらでは、全周縁領域31Aに植設する毛髪32は、かつら装着領域周辺の自毛と同等の曲げ剛性値を有するだけでなく、カール径や長さが同等であることが好ましい。 天頂部31eの領域31Bに植設する毛髪33と全周縁領域31Aに植設する毛髪32とがカール径や長さの点で異なる場合には、徐々に、カール径及び/長さを変化させることで、かつらベース31に植設した毛髪により段差が生ぜず、かつら装着を露見されない。 かつらを装着する前、又はかつらを装着した際に、かつらベース31に植設した毛髪にカールを付け、かつ長さを調整することは可能ではあるが、作業工程が複雑となり好ましくない。

    ここで、かつらベースに対し領域毎に長さやカール径が異ならない毛髪を植設したかつらと比較すると、この比較例のかつらでは一本毎の長さやカール径が同一であるため、全体的に毛髪が揃いすぎ、自由なヘアスタイルを形成することができないので好ましくない。 このような毛髪が揃いすぎたかつらを装着しても、ヘアスタイル調整のため、かつらベースに植設した毛髪をカットする必要がある。 逆に、かつらベースに対しランダムに長さ及びカール径の異なる毛髪を植設してなるかつらと比較すると、この比較例のかつらではヘアスタイル自体に自由度が生じるが、ばらばらになり過ぎ、ヘアスタイルとしてのまとまりに欠け好ましくない。 それに対し、本発明のかつらのようにかつらベースの領域毎に、所定の長さ及びカール径の毛髪を植設することで、自由なヘアスタイルを形成することができる。

    次に、かつらベース11,31に植設される毛髪について説明する。 かつらベース11,31に植設する毛髪は、かつらベース11,31の区分領域毎に、異なる曲げ剛性値を有するように形成することができる。 毛髪として例えば鞘/芯構造のポリアミド系繊維でなる人工毛髪を用いることができる。

    このような鞘/芯構造のポリアミド系繊維でなる人工毛髪は、ポリアミド繊維の特質を活かし、芯部を曲げ剛性の高いポリアミド繊維とし、鞘部を芯部よりも曲げ剛性の低いポリアミド繊維とし、鞘部と芯部との質量比を調整することで、人工毛髪全体としての曲げ剛性値を制御することができる。 芯部の材料となるポリアミド樹脂として、強度と剛性が高い半芳香族のポリアミド樹脂、例えば、化学式1で表わされるヘキサメチレンジアミンとテレフタール酸との交互共重合体からなる高分子、例えばナイロン6T又は化学式2で表わされるアジピン酸とメタキシリレンジアミンとをアミド結合で交互に結合した高分子、例えばナイロンMXD6などを用いることができる。 なお、芯部の材料として化学式2で表される高分子材料を用いてなる人工毛髪の方が、芯部の材料として化学式1で表される高分子材料を用いてなる人工毛髪と比べヘアセットが行い易い点で好ましい。

    鞘部の材料となるポリアミド樹脂として、芯部の材料よりも曲げ剛性の低いポリアミド樹脂、例えば直鎖飽和脂肪族ポリアミドとして、化学式3で表わされるカプロラクタムの開環重合体からなる高分子、例えばナイロン6又は化学式4で表わされるヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体からなる高分子、例えばナイロン66などを用いることができる。

    このように、ポリアミド系の人工毛髪として、芯部に曲げ剛性の高いポリアミドを用い、鞘部には芯部よりも曲げ剛性の低いポリアミドを用いた鞘/芯構造とし、その鞘部と芯部との質量比を調整することで、所望の曲げ剛性値を有する繊維を得ることができる。

    この曲げ剛性値は一般に繊維などに適用される物性値であり、毛髪の場合にも風合い(外観、触感、質感)などの感覚的な性状に相関する物性として近年認知されている。 繊維の曲げ剛性の測定は織物に関して川端式測定法とその原理が広く公知であるが、これを改良したシングルヘアーベンディングテスター(カトーテック(株)製、モデルKES−FB2−SH)を用いて、人工毛髪の曲げ剛性を測定した。 人工毛髪及び天然毛髪の何れの場合にも、各1cmの1本について、毛髪全体を一定曲率まで円弧状に等速度で曲げ、それに伴う微小な曲げモーメントを検出し、曲げモーメントと曲率の関係を測定した。 これから、曲げモーメント/曲率変化により曲げ剛性値を求めた。 代表的な測定条件を下記に示す。
    (測定条件)
    チャック間距離:1cm
    トルク検出器:トーションワイヤー(スチールワイヤー)のねじれ検出方式 トルク感度:1.0gf・cm(フルスケール10Vにおいて)
    曲率:±2.5cm -1
    曲げ変位速度:0.5cm -1 /sec
    測定サイクル:1往復 ここで、チャックは、上記1cmの各毛髪を挟み込む機構である。

    鞘をナイロン6又はナイロン66、芯をナイロン6T又はナイロンMXD6とし、溶融紡糸時の鞘/芯成分の吐出容量比が1/2(鞘/芯の質量比で32/68)に近い値で製造した人工毛髪の曲げ剛性値は、天然毛髪の曲げ剛性値の最小値(約6.5×10 -3 gf・cm 2 /本)付近となった。

    溶融紡糸時の鞘/芯成分の吐出容量比が1/7(鞘/芯の質量比で12/88)に近い値で製造した人工毛髪では、天然毛髪の曲げ剛性値の最大値(約7.8×10 -3 gf・cm 2 /本)付近となる。
    なお、天然毛髪とはヒトの頭部に生えている一般的な頭髪を指すが、天然毛髪の曲げ剛性値は個体差が大きいため、年齢層20〜50歳代各層の男性25名、女性38名から頭髪を採取し、そのうち径80μmの試料についての曲げ剛性を同じ測定環境下、即ち、温度22℃、湿度40%の環境下で測定した値である。 以下に示す曲げ剛性値は、何れも温度22℃、湿度40%の環境下での値である。

    次に、このように所定の曲げ剛性値を有する人工毛髪を、かつらベースに植設するパターンについて説明する。
    先ず、フロント隠蔽型のかつらの場合を説明する。 図13は、植設パターンの第1乃至第4形態におけるかつらベース11に植設する毛髪の特性を示す図表である。

    かつらベース11に対する毛髪の植設パターンの第1形態を説明する。 第1形態は一般的な装着者に適している。 かつら用毛髪は鞘/芯構造のポリアミド系繊維で構成されている。 かつらベース11の周縁部11aには天然毛髪の曲げ剛性値の最小値(約6.5×10 -3 gf・cm 2 /本)より約40%低くした3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪を植設する。 その内側の第2帯部11eには、3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪と6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪とを質量比で半々になるよう均等に分布させて植設する。 その内側の第1帯部11d、天頂部11c及び前頭部11bには6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪を植設する。 ここで、天然毛髪の曲げ剛性値は個体差があり、装着者の頭皮から生育している毛髪は一般的に曲げ剛性が低い。 第1形態のかつらは、装着者の自毛の曲げ剛性値が約3.4〜4.4×10 -3 gf・cm 2 /本の場合を想定している。 なお、かつらの少なくとも周縁部に植設する毛髪の曲げ剛性値は、装着者の自毛の曲げ剛性値に対して、±0.5〜0.8×10 -3 gf・cm 2 /本程度であれば許容できる範囲である。 このようにして一般の天然毛髪より曲げ剛性値が低い人工毛髪をかつらベース11の周縁部11aに植設することで、植設した人工毛髪が装着者の自毛となじみ易い。

    このように、かつらベース11の周縁部11aに植設される毛髪は、天然毛髪よりも低い曲げ剛性値、すなわち、装着者の自毛と同程度の曲げ剛性値を有する一方、自毛と混ざる可能性が少ない天頂部11c及び前頭部11bに植設される毛髪は、周縁部11aに植設される毛髪と比べて高い曲げ剛性値を有する。 このため、かつらベース11の周縁部11aに植設される毛髪は、装着者の頭皮から生育する残毛と混ざり易く、湿度など環境の影響により自毛と同様の類似した挙動を示すので、かつら装着を察知される蓋然性が低い。 加えて、前頭部11b,天頂部11c及び第1帯部11dに植設される毛髪は、装着者の残毛よりも高い剛性を有しているので、装着者のニーズに応じて各種のヘアスタイルとすることができる。

    次に、かつらベース11に対する毛髪の植設パターンの第2形態を説明する。 第1形態と異なる点は、かつらベース11の前頭部11b、天頂部11c及び第1帯部11dに植設される毛髪並びに第2帯部11eに均等に混ぜて植設される毛髪の剛性を低くした点である。 かつらベースに植設される毛髪は鞘/芯構造のポリアミド繊維でなる点は、第1形態と同様である。
    かつらベース11の周縁部11aには3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪を植設する。 内側の第2帯部11eには、3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪と5.2×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪とを質量比で半々に混ぜて均等に分布させて植設する。 内側の第1帯部11d、天頂部11c及び前頭部11bには5.2×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪を植設する。
    第2形態は第1形態と異なり、前頭部11b、天頂部11c及び第1帯部11dに植設される毛髪の曲げ剛性値が第1形態と比べて低く、かつらに植設した毛髪全体が天然毛髪の曲げ剛性値より低く設定しているので、比較的柔らかい髪質の装着者に適している。 即ち、曲げ剛性値が、約3.1〜4.7×10 -3 gf・cm 2 /本の自毛を有する使用者に適している。

    かつらベース11に対する毛髪の植設パターンの第3形態を説明する。 第1形態と異なる点は、第2形態とは逆に、かつらベース11の前頭部11b、天頂部11c及び第1帯部11dに植設される毛髪並びに第2帯部11eに混ぜて植設される毛髪の剛性を強めた点である。 かつらベース11に植設される毛髪は鞘/芯構造のポリアミド繊維でなる点は、第1形態と同様である。
    かつらベース11の周縁部11aには3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪を植設する。 内側の第2帯部11eには、3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪と7.8×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪とを質量比で半々に混ぜて均等に分布させて植設する。 内側の第1帯部11d、天頂部11c及び前頭部11bには7.8×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪を植設する。
    第1形態と異なり、前頭部11b、天頂部11c及び第1帯部11dに植設される毛髪の曲げ剛性値を第1形態と比べて高くし、天然毛髪との格差を大きくして、ボリューム感やゴアゴア感を持たせることができ、今までなし得なかった、例えば髪が立ったヘアスタイルを形成することができる。 よって、ボリューム感のあるヘアスタイルを要求する装着者の場合に適している。 第3形態のかつらは、装着者の自毛の曲げ剛性値が約3.4〜4.4×10 -3 gf・cm 2 /本の場合を想定している。

    かつらベース11に対する毛髪の植設パターンの第4形態を説明する。 第4形態は、第3形態と比べ、かつらベース11の周縁部11aに植設される毛髪及び第2帯部11eに混ぜて植設される毛髪の剛性を強めた点で異なる。 装着者の残毛がかつらを必要としない人の天然毛髪と同程度の剛性を有している場合に適している。 かつらベース11に植設される毛髪は鞘/芯構造のポリアミド繊維でなる点は、第1形態と同様である。
    かつらベース11の周縁部11aには5.2×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪を植設する。 内側の第2帯部11eには、5.2×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪と7.8×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪とを質量比で半々に混ぜて均等に分布させて植設する。 その内側の第1帯部11d、天頂部11c及び前頭部11bには7.8×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪を植設する。
    第3形態と異なり、装着者の残毛の剛性が一般的な天然毛髪と同様の剛性を有している場合、即ち、装着者の残毛の曲げ剛性値が約5.0〜6.5×10 -3 gf・cm 2 /本であると、残毛と同程度の剛性を有する人工毛髪を周縁部11aに植設することで、装着者の残毛の程度に対応させることができる。 かつらベース11の前頭部11bや天頂部11cには剛性のある人工毛髪を植設しているので、ボリューム感のあるヘアスタイルを形成し、ヘアの乱れを防止することができる。

    以上説明したように、かつらベースに植設される人工毛髪は、第1乃至第4形態では何れも、鞘/芯構造を有するポリアミド系繊維で構成されるが、以下の第5乃至第8形態として説明するように、鞘/芯構造のポリアミド系繊維でなる第1の人工毛髪とポリエステル系繊維でなる第2の人工毛髪とを適宜所定の割合で均一に混ぜ、かつらベースの区分領域に植設してもよい。

    ポリエステル系繊維でなる第2の人工毛髪は、次のような構造を有する。 ポリエステル系繊維でなる第2の人工毛髪は、例えばポリエチレンテレフタレートでなる繊維の直径を調整したり、紡糸に際して溶融する原料としてのポリエチレンテレフタレートにポリブチレンテレフタレートの混合比を調整したりすることにより、毛髪の曲げ剛性値を変えることができる。 ポリエチレンテレフタレートを主成分とする人工毛髪は、直径が大きくなると曲げ剛性値が直線的に増加する。 例えば、平均直径が50μmから70μmに増加すると、曲げ剛性値が6.70×10 -3 gf・cm 2 /本から7.67×10 -3 gf・cm 2 /本に増加する。 一方、ポリエチレンテレフタレートにポリブチレンテレフタレートを混入し、その混入割合を増加させることで、曲げ剛性値を減少させることができる。 この第2の人工毛髪のポリエステル系人工毛髪を第1の人工毛髪のポリアミド系人工毛髪に分散させて混入することにより、ポリアミド系繊維の人工毛髪の集束性を抑制し、より天然毛髪に近い風合いを得ることができる。

    かつらベース11に対する毛髪の植設パターンの第5形態を説明する。 図14は、植設パターンの第5形態におけるかつらベース11に植設する毛髪の特性を示す図表である。 この第5形態は、前述の第1形態の変形例である。 かつらベース11に植設される毛髪として、鞘/芯構造のポリアミド系繊維でなる第1の人工毛髪とポリエステル系繊維でなる第2の人工毛髪とを用いる点で異なる。
    かつらベース11の第2帯部11eには、3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の第1の人工毛髪と6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の第1の人工毛髪とを質量比で半々になるよう均等に分布させるように混ぜて、更に6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の第2の人工毛髪を均等に混ぜて植設する。 このとき、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との混合率を質量比で80:20とする。 第1帯部11d、天頂部11c及び前頭部11bには、それぞれ、6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の第1の人工毛髪と6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の第2の人工毛髪を均質に混ぜて植設する。 このとき、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との混合率を質量比で80:20とする。 以上のように、前頭部11b、天頂部11c、第1帯部11dには、第2の人工毛髪のポリエステル系繊維が、第1の人工毛髪のポリアミド系繊維中に混ぜ合わさって植設されているので、ポリアミド系繊維の集束性を抑え、さらさら感のあるヘアスタイルを形成することができる。

    かつらベース11に対する毛髪の植設パターンの第6乃至第8形態を説明する。 この第6乃至第8形態は、それぞれ前述の第2乃至第4形態の変形例である。 何れも、かつらベース11に植設される毛髪として、鞘/芯構造のポリアミド系繊維でなる第1の人工毛髪とポリエステル系繊維でなる第2の人工毛髪とを用いる点で異なる。
    図15は植設パターンの第6形態におけるかつらベース11に植設する毛髪の特性を示す図表である。 第6形態では、かつらベース11の第2帯部11eには、3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する第1の人工毛髪と5.2×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する第1の人工毛髪とを質量比で半々になるよう均等に分布させるように混ぜて、更に6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する第2の人工毛髪を均質に混ぜて植設する。 このとき、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との混合率を質量比で80:20とする。 第1帯部11d、天頂部11c及び前頭部11bには、それぞれ、5.2×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の第1の人工毛髪と6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の第2の人工毛髪を均質に混ぜて植設する。 このとき、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との混合率を質量比で80:20とする。

    図16は植設パターンの第7形態におけるかつらベース11に植設する毛髪の特性を示す図表である。 第7形態では、かつらベース11の第2帯部11eには、3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の第1の人工毛髪と7.8×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の第1の人工毛髪とを質量比で半々になるよう均等に分布させるように混ぜて、更に6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の第2の人工毛髪を均質に混ぜて植設する。 このとき、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との混合率を質量比で80:20とする。 第1帯部11d、天頂部11c及び前頭部11bには、それぞれ、7.8×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する第1の人工毛髪と6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する第2の人工毛髪を均質に混ぜて植設する。 このとき、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との混合率を質量比で80:20とする。

    図17は植設パターンの第8形態におけるかつらベース11に植設する毛髪の特性を示す図表である。 第8形態では、かつらベース11の第2帯部11eには、5.2×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する第1の人工毛髪と7.8×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する第1の人工毛髪とを質量比で半々になるよう均等に分布させて混ぜて、更に6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する第2の人工毛髪を均質に混ぜて植設する。 このとき、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との混合率を質量比で80:20とする。 第1帯部11d、天頂部11c及び前頭部11bには、それぞれ、7.8×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する第1の人工毛髪と6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する第2の人工毛髪を均質に混ぜて植設する。 このとき、第1の人工毛髪と第2の人工毛髪との混合率を質量比で80:20とする。

    第6乃至第8形態は、第5形態と同様、それぞれ第2乃至第4形態として示したかつらの好適な場合において、更に、第2の人工毛髪であるポリエステル系繊維が第1の人工毛髪であるポリアミド系繊維の集束性を抑え、さらさら感のあるヘアスタイルを形成することができる。

    以上の第1乃至第8形態では、フロント隠蔽型のかつらにおいて領域毎に曲げ剛性値の異なる毛髪を植設する場合を示しているが、第1乃至第8形態の各場合においてさらに5つの領域毎にカール径及び/又は長さが異なる毛髪を植設するにしてもよい。 以下、第9形態及び第10形態として、第1形態で更に各部位毎にカール径及び長さが定められた毛髪を植設した例を説明するが、曲げ剛性値はかつらベースの領域によらずほぼ同一であり、カール径及び/又は長さが異なるようにしてもよい。

    かつらベース11に対する毛髪の植設パターンの第9形態を説明する。 図18は、植設パターンの第9形態におけるかつらベース11に植設する毛髪の特性を示す図表である。 第9形態が第1形態と異なる点は、周縁部11a、前頭部11b、天頂部11c、第1帯部11d及び第2帯部11eに植設される毛髪が、植設される部位毎に所定の曲げ剛性値を有するだけでなく、部位毎に所定のカール径及び/又は長さを有する点である。
    周縁部11aには、カール径が35mm、長さが9cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 前頭部11bには、カール径が23mm、長さが7cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 天頂部11cには、カール径が26mm、長さが6cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 第1帯部11dには、カール径が28mm、長さが7cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 第2帯部11eには、カール径が32mm、長さが8cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪と、カール径が32mm、長さが8cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とを半々に混ぜて植設する。

    かつらベース11に対する毛髪の植設パターンの第10形態を説明する。 図19は、植設パターンの第10形態におけるかつらベース11に植設する毛髪の特性を示す図表である。 第10形態が第1形態と異なる点は、周縁部11a、前頭部11b、天頂部11c、第1帯部11d及び第2帯部11eに植設される毛髪が、植設される部位毎に所定の曲げ剛性値を有するだけでなく、部位毎に所定のカール径及び/又は長さを有する点である。
    周縁部11aには、カール径が40mm、長さが10cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 前頭部11bには、カール径が30mm、長さが8cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 天頂部11cには、カール径が35mm、長さが7cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 第1帯部11dには、カール径が35mm、長さが8cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 第2帯部11eには、カール径が40mm、長さが9cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪と、カール径が40mm、長さが9cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とを半々に混ぜて植設する。

    第9形態及び第10形態として、第1形態で更に各部位毎にカール径及び長さが定められた毛髪を植設した例を説明したが、第2形態乃至第8形態でも同様に各部位毎にカール径及び長さが定められた毛髪を植設してかつらを構成してもよい。

    次に、トップ装着型のかつらについて説明する。
    図20は、植設パターンの第11乃至第13形態におけるかつらベース31に植設する毛髪の特性を示す図表である。 かつらベース31に対する毛髪の植設パターンの第11形態を説明する。 この第11形態は一般的な装着者に適している。 かつらベース31に植設される毛髪は鞘/芯構造のポリアミド系繊維で構成されている。 かつらベース31の全周縁領域31Aには天然毛髪の曲げ剛性値の最小値(約6.5×10 -3 gf・cm 2 /本)より約40%低くした3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪を植設する。 その内側の調整領域31Cには、3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪と6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪とを質量比で半々になるよう均等に分布させて植設する。 その内側の天頂部31eの領域31Bには6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪を植設する。 ここで、天然毛髪の曲げ剛性値は個体差があり、かつらを必要としている者の頭皮から生育している毛髪は一般的に曲げ剛性が低い。 第11形態のかつらは、装着者の自毛の曲げ剛性値が約3.4〜4.4×10 -3 gf・cm 2 /本の場合を想定している。

    このように、かつらベース31の全周縁領域31Aに植設される毛髪は、平均的な天然毛髪よりも低い曲げ剛性値、すなわち、装着者の自毛と同程度の曲げ剛性値を有する一方、自毛と混ざる可能性が少ない天頂部31eの領域31Bに植設される毛髪は、全周縁領域31Aに植設される毛髪と比べて高い曲げ剛性値を有する。 このため、かつらベース31の全周縁領域31Aに植設される毛髪は、装着者の頭皮から生育する残毛と混ざり易く、湿度など環境の影響により自毛と同様類似した挙動を示すので、かつら装着を察知される蓋然性が低い。 加えて、天頂部31eの領域31B及び調整領域31Cに植設される毛髪は、装着者の残毛よりも高い剛性を有しているので、ボリューム感が出しやすく、装着者のニーズに応じて各種のヘアスタイルとすることができる。

    かつらベース31に対する毛髪の植設パターンの第12形態を説明する。 第11形態と異なる点は、かつらベース31の天頂部31eの領域31Bに植設される毛髪及び調整領域31Cに均等に混ぜて植設される毛髪の剛性を低くした点である。 毛髪が鞘/芯構造のポリアミド繊維でなる点は第11形態と同様である。 かつらベース31の全周縁領域31Aには3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪を植設する。 内側の調整領域31Cには、3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪と5.2×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪とを質量比で半々に混ぜて均等に分布させて植設する。 さらに内側の天頂部31eの領域31Bには5.2×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値を有する人工毛髪を植設する。
    第12形態は第11形態と異なり、天頂部31eの領域31Bに植設される毛髪の曲げ剛性値が第11形態と比べて低く、かつらに植設した毛髪全体を天然毛髪の曲げ剛性値より低く設定しているので、比較的柔らかい髪質の装着者に適している。 即ち、曲げ剛性値が、約3.1〜4.7×10 -3 gf・cm 2 /本の自毛を有する使用者に適している。

    かつらベース31に対する毛髪の植設パターンの第13形態を説明する。 第11形態と異なる点は、第12形態とは逆に、かつらベース31の天頂部31eの領域31Bに植設される毛髪及び調整領域31Cに混ぜて植設される毛髪の剛性を強めた点である。 毛髪が鞘/芯構造のポリアミド繊維でなる点は第11形態と同様である。 かつらベース31の全周縁領域31Aには3.9×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪を植設する。 内側の調整領域31Cには、5.2×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪と6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪とを質量比で半々に混ぜて均等に分布させて植設する。 内側の天頂部31eの領域31Bには6.5×10 -3 gf・cm 2 /本の曲げ剛性値の人工毛髪を植設する。
    第11形態と異なり、天頂部31eに植設される毛髪の曲げ剛性値を第11形態と比べて高くし、天然毛髪との格差を大きくして、ボリューム感やゴアゴア感を持たせることができ、今までなし得なかった、例えば髪が立ったヘアスタイルを形成することができる。 よって、ボリューム感のあるヘアスタイルを要求する装着者の場合に適している。 第13形態のかつらは、装着者の自毛の曲げ剛性値が約3.4〜4.4×10 -3 gf・cm 2 /本の場合を想定している。

    以上の第11乃至第13形態では、トップ装着型のかつらにおいて領域毎に曲げ剛性値の異なる毛髪を植設する場合を示しているが、前述したように、フロント隠蔽型のかつらにおける第5乃至第8形態のように、かつらベース31に植設される毛髪として、鞘/芯構造のポリアミド系繊維でなる第1の人工毛髪とポリエステル系繊維でなる第2の人工毛髪とを用いてもよい。 また、第11乃至第13形態の各場合においてさらに5つの領域毎にカール径及び/又は長さが異なる毛髪を植設するようにしてもよい。 以下、第14形態及び第15形態として、第11形態で更に各部位毎にカール径及び長さが定められた毛髪を植設した例を説明するが、曲げ剛性値はかつらベースの領域によらずほぼ同一であり、カール径及び/又は長さが異なるようにしてもよい。

    かつらベース31に対する毛髪の植設パターンの第14形態を説明する。 図21は、植設パターンの第14形態におけるかつらベース31に植設する毛髪の特性を示す図表である。 第14形態では、かつらベース31が所定の曲げ剛性値の毛髪を植設するための領域区分と、所定のカール径及び/又は長さの毛髪を植設するための領域区分とが別々に異なって定められている。 即ち、天頂部31eである主要領域31Bには、カール径が30mm、長さが18cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 全周縁領域31Aで前頭部31aの領域には、カール径が30mm、長さが15cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 全周縁領域31Aで左右の側頭部31b,31cの領域には、カール径が35mm、長さが20cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 全周縁領域31Aで後頭部31dの領域には、カール径が45mm、長さが30cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 調整領域31Cで前頭部31aの領域には、カール径が30mm、長さが15cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とカール径が30mm、長さが15cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とを質量比で半々に混ぜて植設する。 調整領域31Cで左右の側頭部31b,31cの領域には、カール径が35mm、長さが20cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とカール径が35mm、長さが20cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とを質量比で半々に混ぜて植設する。 調整領域31Cで後頭部31dの領域には、カール径が45mm、長さが30cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とカール径が45mm、長さが30cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とを質量比で半々に混ぜて植設する。

    かつらベース31に対する毛髪の植設パターンの第15形態を説明する。 図22は、植設パターンの第15形態におけるかつらベース31に植設する毛髪の特性を示す図表である。 第15形態では、第14形態と同様、かつらベース31が所定の曲げ剛性値の毛髪を植設するための領域区分と、所定のカール径及び/又は長さの毛髪を植設するための領域区分とが別々に異なって定められている。 即ち、天頂部31eである主要領域31Bには、カール径が40mm、長さが25cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 全周縁領域31Aで前頭部31aの領域には、カール径が35mm、長さが20cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 全周縁領域31Aで左右の側頭部31b,31cの領域には、カール径が45mm、長さが30cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 全周縁領域31Aで後頭部31dの領域には、カール径が60mm、長さが35cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪を植設する。 調整領域31Cで前頭部31aの領域には、カール径が35mm、長さが20cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とカール径が35mm、長さが20cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とを質量比で半々に混ぜて植設する。 調整領域31Cで左右の側頭部31b,31cの領域には、カール径が45mm、長さが30cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とカール径が45mm、長さが30cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とを質量比で半々に混ぜて植設する。 調整領域31Cで後頭部31dの領域には、カール径が60mm、長さが35cm、曲げ剛性値が3.9×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とカール径が60mm、長さが35cm、曲げ剛性値が6.5×10 -3 gf・cm 2 /本である毛髪とを質量比で半々に混ぜて植設する。

    第14形態及び第15形態として、第11形態で更に各部位毎にカール径及び長さが定められた毛髪を植設した例を説明したが、第12形態及び第13形態でも同様に各部位毎にカール径及び長さが定められた毛髪を植設してかつらを構成してもよい。

    このように、かつらベース11,31の天頂部11c,31eの領域に曲げ剛性値の高い毛髪を植設することが可能になるので、植毛作業の際、毛髪の根元近傍に細かい間隔で波形をつける、所謂クリンピング加工を行なって植設後の毛髪が立ち上がるようにする必要がないし、クリンピング加工による縮れ毛とならず、外観を損うこともない。 また、かつらベース11,31に植設する毛髪の密度を大きくする必要もないことから、ヘアスタイルの外観そのものが変化することもない。

    以上説明した植設パターンに限らず、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で適宜、変更が可能である。 例えば、かつらベースに植設する毛髪の領域に応じて、毛髪の曲げ剛性値のみならず、毛髪の長さや太さ、色その他毛髪に付されるカールの大きさなどを調整し、かつら装着を露呈することなく装着者の好みのヘアスタイルを形成することができる。

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