【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、人工的に模造された盆栽に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より我が国で広く親しまれている盆栽は、通常は自然の樹木を鉢に植えて育て、所望の枝ぶりや趣に仕上げることを楽しみ、また競うものである。 しかし、自然の樹木を用いるため、長年月にかけて樹木に変形、剪定等の手入れを繰り返す必要があり、また熟練者をもってしても、所望の枝ぶりのものを得ることは難しい、という問題がある。 【0003】また、上記盆栽を室内に飾る場合、葉が落ちて室内を汚したり、水やり時に床を汚したり、日光浴時の移動が大変であるという問題がある。 これは、特に庭のないアパートやマンションの住人にとって深刻な問題となる。 【0004】上述の様々な問題を解決するため、近年模造盆栽の需要が高まってきている。 この模造盆栽の素材としては、天然の樹木を主材料として用いるものと、合成樹脂、鋳鉄等の人工素材を用いるものとがある。 【0005】前者は、自然の松や杉等の樹木から、枝ぶりの良い部分を選定して切り取り、これを別の樹木の幹部や枝部に接着剤やはめ込み等により接合して、外見状はあたかも自然の樹木であるように製作したものである(例えば、特公昭57−30401、特開昭59−11 300)。 【0006】また、後者は盆栽全体の型をあらかじめ製作しておき、この型に溶かした合成樹脂や鋳鉄を流し込んで成形を行なうものである(例えば、特開平7−10 8344)。 【0007】そして、これらの模造盆栽は、剪定や水やり等の手入れの必要がなく、簡単に所望の枝ぶりの盆栽を得ることができ、手軽に盆栽の雰囲気を楽しむことができるというものである。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上述の模造盆栽にもそれぞれ欠点がある。 すなわち、前者の自然の樹木を利用した模造盆栽は、根のない樹木を用いるため、 樹木の枯死による強度低下や退色の問題が生じる。 また接着剤やはめ込み等の劣化による枝葉の折れや落下も避け難い問題である。 樹木の強度低下や退色を防止する手段として、樹脂塗料を塗布することが通常行われているが、これとて完全なものではなく、年月の経過による強度低下や退色は避けられない。 【0009】また、後者の合成樹脂や鋳鉄を溶かして型に流し込むことにより、成形を行なった模造盆栽は、型の製造時点で形状や枝ぶりが決定されてしまい、この型を変更しない限り、盆栽の形状を変更することができない。 そして、型の変更には少なからぬ費用が必要であり、何回も型を変更することは実際には困難である。 また、成形後の形状や枝ぶりを、人為的に変形することも難しい。 なぜなら合成樹脂や鋳鉄は変形に対して脆く折れ易いからである。 【0010】しかし、本来盆栽とは、育成者の個性により、一つ一つが異なる形状、枝ぶりに成形されることに意義がある。 従って、上記の如く形状の変更ができない(あるいは困難な)模造盆栽は、製作者や観賞する者から見て甚だしく興を失う結果となる。 【0011】本発明は、上記従来の模造盆栽の種々の欠点を解決するために成されたものであり、強度に優れ、 年月の経過による強度低下や退色のおそれがほとんどなく、形状の変更が自在にでき、製作する楽しみを味わえる模造盆栽を提供することを目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の模造盆栽は、自然の樹木を模倣して作られた幹、根、枝葉からなる模造盆栽において、上記幹、 根、枝葉が主に金属撚線を用いて形成されたことを特徴とする。 【0013】また、本発明の模造盆栽は、上記構成において、金属素線と光ファイバーとを撚り合わせてなる複合撚線を少なくとも枝葉に用いてもよい。 【0014】また、本発明の模造盆栽は、金属撚線が鉄または鉄合金、銅または銅合金、アルミまたはアルミ合金および金や銀等の貴金属から選択された同種又は異種のものであってもよく、また、金属撚線の一部あるいは全体に焼なまし処理が施されていてもよい。 また、幹、 根、枝葉に着色、めっき、つや出し、つや消し、あるいは蛍光塗料塗布等の表面処理が施されていてもよい。 【0015】また、本発明の模造盆栽は、上記構成において、金属撚線を束ねて幹、根、枝が形成され、その金属撚線の先端部をほぐして枝、葉、蕾または花等が形成されたものであってもよい。 【0016】また、本発明の模造盆栽は、金属撚線と共に光ファイバーが束ねられていてもよく、また、幹や枝葉に人工の果実や造花等の装飾物が取り付けられていてもよい。 【0017】本発明の模造盆栽は、幹、根、枝葉が主に金属撚線で形成されているので、十分な強度と適度の柔軟性を兼ね備える。 そのため、幹や枝葉の形状や枝ぶりを自在に変更でき、製作する楽しみを味わえる。 また、 自然の樹木ではなく金属撚線を使用しているので、年月の経過による強度低下や退色のおそれがほとんどない。 【0018】また、本発明の模造盆栽は、金属素線と光ファイバーとを撚り合わせてなる複合撚線を、少なくとも枝葉に用いて形成された場合、例えば複合撚線の芯として光ファイバーを配置することにより、複合撚線の切断部における芯の発光により雰囲気を高めることができる。 【0019】また、本発明の模造盆栽は、金属撚線に鉄または鉄合金、銅または銅合金、アルミまたはアルミ合金および金や銀等の貴金属を用いて、それぞれの金属の特徴を生かすことができる。 例えば、鉄および鉄合金は強度が強く、銅または銅合金は表面に生じる「緑青」が苔の雰囲気を醸し出す。 また、アルミおよびアルミ合金は軽量で扱い易く、金や銀等の貴金属は美術的価値が高まり、後には骨董的価値も生じる。 また、上記金属を適当に組み合わせると、各金属の特徴を部分的に生かした風情のある盆栽に仕上げることができる。 また、金属撚線の一部あるいは全体に焼なまし処理を施すことにより、柔軟性をさらに増すことができ、変形加工をより簡単に行なえる。 【0020】また、本発明の模造盆栽は、幹、根、枝葉に着色、めっき、つや出し、つや消し、蛍光塗料塗布等の表面処理が施された場合、色調を豊かにでき、盆栽の趣が増すと共に、美術工芸品としての価値を増すことができ、さらに錆の発生を防止することができる 【0021】また、本発明の模造盆栽は、金属撚線を束ねて幹、根、枝が形成され、金属撚線の先端部をほぐして枝、葉、蕾または花等を任意に形成できるので、従来の模造盆栽のように幹と枝、枝と葉を接着剤やはめ込み等により接合する必要がない。 従って従来問題となっていた接着剤やはめ込み等の劣化による枝、葉の折れや落下が皆無となる。 【0022】また、本発明の模造盆栽は、金属撚線と共に光ファイバーが束ねられた場合、光ファイバーに発光装置を接続することにより、夜間や暗所のイルミネーションやホテル、会館等の装飾的置物として使用することができる。 また、幹や枝葉に人工の果実や造花等の装飾物が取り付けられた場合、見栄えがよく装飾的価値を高めることができる。 【0023】 【発明の実施の形態】 【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。 (実施例1)図3(ロ)にその断面構造を示すように、 線径0.25mmの5本の金属素線8を互いに撚り合わせてなる、撚り構造1×5の金属撚線7を数種類準備した。 すなわち、金属撚線7の材質として硬鋼、ステンレス鋼、銅合金、およびアルミ合金を選定した。 【0024】上記種々の金属撚線のうち、硬鋼およびステンレス鋼からなるものについては、焼なまし処理を施し柔軟性を高めたものを使用した。 また、硬鋼からなる金属撚線には真鍮めっきが施されてある。 【0025】次に、上記種々の金属撚線を用いて、盆栽の形状に仕上げる方法を順を追って説明する。 なお、本実施例では、松に見立てて模造盆栽を形成した。 まず、 図2に示すように、金属撚線7を適当な長さに切断したものを数百本束ねて幹2を形成し、幹2から枝分かれさせた大枝3および根5、大枝3から枝分かれさせた小枝4を大まかに形成した。 これらの形成時に型崩れ防止用のワイヤ6を金属撚線の束の要所に巻き付けた。 【0026】そして、さらに小枝4を形成する金属撚線の束から、葉をつくるための金属撚線を適当に引き出し、図3(イ)に示すように金属撚線7を構成する金属素線8をほぐして葉9を形成した。 この作業を大略全ての小枝に対して実施し、さらに幹、大枝、小枝の曲がりや枝ぶりを調整し、図1に示されるような模造盆栽1を形成した。 なお、この時点ではワイヤ6はまだ巻き付けられている。 【0027】さらに図1に示す模造盆栽の幹2、根5および大枝3に透明樹脂を塗布した。 これは、金属撚線の束を固形させると共に、ツヤ出しをして見映えを良くする作用を奏する。 また、小枝4を構成する複数本の金属撚線は互いに捻じり合わせることによりばらけるのを防止した。 そして透明樹脂が乾燥した後にワイヤ6を取り外して、模造盆栽1を完成した。 後は、模造盆栽1を適当な植木鉢に植え込めばよい。 【0028】なお、実施例1では撚線の束を透明樹脂により固形した後、ワイヤ6を取り外したが、透明樹脂を塗布しない場合はワイヤを巻き付けたままでもよい。 また、幹2、根5、大枝3においても撚線の束を捻じることにより、透明樹脂を塗布しなくとも金属撚線の束がばらけないようにすることもできる。 【0029】また、実施例1では硬鋼からなる金属撚線に真鍮めっきが施されたものを使用したが、真鍮めっきの代わりに銅めっき、ブロンズめっき、ニッケルめっき等を施すことで、違った趣を楽しむことができる。 【0030】また、葉の部分に緑の塗料を塗布したり、 幹や枝に茶色やこげ茶色の塗料を塗布することにより、 より自然の盆栽の趣に近づけることができる。 さらに、 ワイヤブラシや紙やすりで幹や枝をこすることによりつや消しを行うと、模造盆栽全体を落ち着いた趣にでき、 また風雪に耐えた様子を表現できる。 【0031】また、金属撚線と共に光ファイバーを束ねることもできる。 光ファイバーは金属撚線の束の外周部分に任意の本数を配してもよいし、模造盆栽の完成後に幹や枝葉に巻き付けたり、接着したりして取り付けても良い。 そして、発光装置から光ファイバーに赤色や青色等の様々な光を入射することにより、夜間や暗室でのイルミネーションとして使用することができるものである。 【0032】また、幹や枝葉にいろんな色彩の人工の果実や花等の装飾物を取り付けてもよい。 これらは各人の好みに合わせて自由に交換できるよう着脱自在の取付構造(例えば磁石や引掛け鉤)にするのが好ましい。 【0033】(実施例2)図4(ロ)にその断面構造を示すように、1本の光ファイバー10を芯として、その周囲に6本の金属素線8を撚り合わせて、本発明の請求項6の模造盆栽に係る複合撚線11を得た。 この複合撚線11の断面形状は通常1+6構造と呼称されるものである。 光ファイバーの外周には光ファイバーを保護するためのコーティング樹脂が被覆されている。 【0034】この複合撚線11を用いて、実施例1と同様の方法で盆栽の形状に仕上げた。 そして、図4(イ) に示すように、小枝を構成する複合撚線の束から適当に引き出した複合撚線11の先端部の金属素線8をほぐした。 これは、光ファイバー10を花芯に見立て、金属素線8をほぐした部分を花弁や花びらに見立てたものである。 【0035】そして、光ファイバー10に発光装置(図示せず)からの種々の色の光を伝送することにより、複合撚線11の先端部の光ファイバーが光り、あたかも花が咲いたような風情を楽しむことができる。 【0036】ところで、実施例2では複合撚線のみで構成したが、実施例1の一部に所要本数の複合撚線を用いて、少なくとも枝葉を構成するようにすることも可能である。 【0037】 【発明の効果】本発明の模造盆栽は、幹や枝葉が金属撚線で形成されており、十分な強度と適度の柔軟性を兼ね備えている。 従って枝葉が折れたり、ちぎれたりするおそれが全くない。 また、各人の好みに合わせて枝ぶりや葉の形状を自由に変更できるので趣が増す。 また、年月の経過による強度低下や退色のおそれがほとんどないので、手入れの手間がかからず、水やりの必要がないことと相まって、特に室内に飾る場合に最適である。 【0038】また、金属撚線の束から幹、枝を形成し、 金属撚線の先端部をほぐして枝、葉、蕾または花等を自由に形成される構造であるので、従来の模造盆栽のように接着剤を用いて枝や葉を1本1本接着する手間が省け、製造工数を大きく削減できる。 また従来の問題となっていた接着剤の劣化による枝葉等の折れや落下が皆無となり、維持管理の手間が省ける。 【0039】また、本発明の模造盆栽は、撚線を形成する金属が鉄または鉄合金、銅または銅合金、アルミまたはアルミ合金および金や銀等の貴金属からなるので、適度の柔軟性を備え、幹や枝葉の微妙な曲線も簡単に形成できると共に、各金属の特徴を生かすことができる。 【0040】また、幹や枝葉に着色、めっき、つや出し、つや消し等の表面処理を施すことにより、色調を豊かにでき、盆栽の趣を増すと共に、工芸品としての価値が増し、色調の変質を防止できる。 【0041】また、本発明の模造盆栽の金属撚線と共に光ファイバーが束ねられた構造とすると、夜間や暗所にてイルミネーションとして使用でき、装飾的価値を増すと共に雰囲気を高めることができる。 また、金属素線と光ファイバーを束ねた複合撚線を用いた場合も、同様の効果を奏する。 【0042】さらに、幹や枝葉に人工の果実や造花等の装飾物を取り付けると、装飾的価値が高まり、各人の好みに応じた盆栽を製作することができ、趣をより一層増すことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施例1の模造盆栽の全体図である。 【図2】図1の模造盆栽の製作過程の説明図である。 【図3】図1の模造盆栽を構成する金属撚線を示し、 (イ)は先端部分をほぐした状態を示す部分拡大図、 (ロ)は拡大断面図である。 【図4】本発明の実施例2の模造盆栽を構成する複合撚線を示し、(イ)は先端部分をほぐした状態を示す部分拡大図、(ロ)は拡大断面図である。 【符号の説明】 1 模造盆栽 2 幹 3 大枝 4 小枝 5 根 6 ワイヤ 7 金属撚線 8 金属素線 9 葉 10 光ファイバー 11 複合撚線 |