水着用織物および水着 |
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申请号 | JP2012522852 | 申请日 | 2011-11-07 | 公开(公告)号 | JPWO2012073648A1 | 公开(公告)日 | 2014-05-19 |
申请人 | 東レ株式会社; | 发明人 | 丹羽 氏輝; 氏輝 丹羽; 寛晃 伊達; 寛晃 伊達; 笠原 敬子; 敬子 笠原; 彰 渡辺; 彰 渡辺; | ||||
摘要 | 水 着用素材に必要とされる諸特性(伸長率、目付、厚さ、動き易さ、使用耐久性、機械強度、審美性等)を満足させると同時に、水着として着用して泳いだ時、生地の構造設計から生じる微小気泡の効果により従来以上に水抵抗を低減することが可能な水着用織物とするために、合成繊維マルチフィラメント糸条と弾性繊維とから構成される織物であって、表面および裏面に撥水加工が施され、該裏面に凹凸が形成され、該裏面の凹凸は、高低差が150μm以上650μm以下であり、かつ、凹部の幅が100μm以上5000μm以下である水着用織物とする。 | ||||||
权利要求 | 合成繊維マルチフィラメント糸条と弾性繊維とから構成される織物であって、表面および裏面に撥水加工が施され、該裏面に凹凸が形成され、該裏面の凹凸は、高低差が150μm以上650μm以下であり、かつ、凹部の幅が100μm以上5000μm以下である水着用織物。 前記合成繊維マルチフィラメント糸条が、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維およびポリプロピレン系繊維の内の少なくとも一種から選択された、請求項1に記載の水着用織物。 前記弾性繊維を芯糸とし、前記合成繊維マルチフィラメント糸条を鞘糸とする複合糸を、タテ糸およびヨコ糸に用いた、請求項1または2に記載の水着用織物。 前記表面にも凹凸が形成され、該表面の凹凸は、高低差が0.5μm以上130μm以下であり、かつ、凸部の間隔が0.5μm以上180μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の水着用織物。 前記裏面において、凹部が裏面全面積比で30%以上を占める、請求項1〜4のいずれかに記載の水着用織物。 前記裏面の凹凸が、織物組織および/またはエンボス加工により形成されている、請求項1〜5のいずれに記載の水着用織物。 前記織物組織が二重織物組織である、請求項6に記載の水着用織物。 前記表面に平滑化加工が施されている、請求項1〜7のいずれかに記載の水着用織物。 請求項1〜8のいずれかに記載の織物を少なくとも一部に使用した水着であって、該織物の前記表面が表側となっている水着。 |
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说明书全文 | 本発明は、合成繊維と弾性繊維とからなる伸縮性を有する織物に関し、更に詳しくは、水との間に生じる抵抗が低い水着用織物とそれからなる水着に関するものである。 オリンピックなどのように1/100秒を競う競泳の世界においては、水着と水との間に生じる抵抗(以下、「水抵抗」という)が大きな問題となる。 例えば、100mを50秒から47秒台で泳ぐ自由形の男性トップスイマーにとっては、身体が受ける水圧は10kgf(≒98.1N)以上にも達する。 この状況において、より水抵抗の小さい水着用素材が開発できれば、競技者の記録向上につながる。 一方、競泳用水着素材と水着に係わる長い開発の歴史において、泳ぐスピードを競う競泳用水着は、泳ぐ時の動き易さが最重視されることから、伸びのよい編物を用いて身体にフィットされるように縫製されてきた。 更に、水着の水抵抗を減少させるために、水着用編物素材に用いられる合成繊維マルチフィラメント糸条の総繊維繊度を小さくしたり、あるいは、該合成繊維マルチフィラメント糸条の単繊維繊度を小さくしつつもフィラメント数をより多くしたりすることにより、編目を緻密化させ、編物表面の凹凸感を少なくした編物からなる水着が作られてきた。 しかし、これらの編物による水着は、動き易く、かつ比較的水抵抗が小さいものの、細い糸、または、単繊維繊度が小さくフィラメント数が多い糸で編まれていることから、水着表面のモモケ、毛羽立ち、あるいは破れなどの損傷が起こり易く、使用できる期間が短くなる傾向にある。 また、フィラメント数がより多く、かつその単繊維繊度が小さいために、発色性が低下するなど、高級感に劣るものとなり易い。 また、繊維表面に高分子量の直鎖状有機ポリマーの水溶液を塗布してなる水着も提案されている(特許文献1参照)。 この水着は、トムズ効果の応用によって水抵抗を低減させることができるもので、特に競泳用として好適な水着である。 しかしながら、ポリマー水溶液が水着表面に塗布してなるものであるため、そのポリマーが水中で溶け出し、プールを汚すと同時に性能の耐久性に劣るという基本的な問題を有し易い。 また、水抵抗を低減させるために、編地の片面に熱と圧力によるカレンダー加工を施し、編地の片面を平滑化させた水着もあるが、その性能はまだ満足できるものではない。 更に、泳ぐ時の動き易さを損なわずに水抵抗を低減させるために、編物表面に平滑化加工を施し、かつ、撥水部分と非撥水部分を設けると共に、伸長率を規定した編物(特許文献2参照)や競泳水着(特許文献3参照)が提案されている。 しかしながら、これもまだ十分に満足できるものではない。 一方、身体の冷えに伴う不快感を軽減する試みとして、ポリウレタン弾性糸を含んだ編物または織物の全面に撥水加工を施した生地が提案されている(特許文献4参照)。 これは、プールに含まれる塩素によってポリウレタン弾性糸が劣化することがなく、かつ、水着自体が水をあまり吸収しないために着用時に冷えに伴う不快感を軽減する効果を有するものである。 そのため、この技術には、水と水着との間に生じる水抵抗をより低減化させる考えは含まれていない。 近年においては、編物の表面に撥水加工を施すと共に、体長方向に平行な微細な溝を複数形成した溝部を設けることで、泳ぐ時に発生する乱流を制御し整流効果を発現させることを目的とする競泳水着が提案されている(特許文献5参照)。 さらに、織物素材からなる水着の胴部、胸部、大腿部等にポリウレタンシート材料からなるパネルを貼合わせることにより水と水着との間の水抵抗を低減させると共に、身体を締め付けることにより身体の凹凸形状を抑えて形状抵抗を低減させる効果を発現させることを目的とする競泳用水着が提案されている(特許文献6参照)。 しかし、これらの水着も、着脱し難く、生産に時間がかかる等といった問題があり、まだ十分に満足できるものではない。 また、編物素材では達成することのできない低目付でかつ高伸度のストレッチ織物を水着に使用する提案もされている(特許文献7参照)。 しかしながら、この技術には、水と水着との間の水抵抗をより低減化させる考えが含まれていない。 一方、水着とは異なる船舶の分野においては、水と船舶との間の摩擦抵抗を微小気泡(「マイクロバブル」という)により低減する研究が1990年代から進められてきた。 具体的には、水中を進む物体の壁面に沿った、水と物体との境界層中に、微細な気泡(マイクロバブル)を注入して薄い空気層を作ることにより、物体壁面が水から受ける摩擦抵抗を低減する技術である。 その具体的な開発用途分野である船舶の開発技術においては、特に海運の主役である大型タンカー等、大きくてゆっくり走る船は、微小気泡の適用により適していると言われ、実際に実用化もされている。 このことにより、大型船舶の推進動力を節減するとともに高速化が図られてきた。 微小気泡による摩擦抵抗低減のメカニズムについてはまだ確固たる定説が無いとされる。 考えられるメカニズムの一つは、密度効果、すなわち空気の密度が水の密度の約1000分の1と非常に小さいため、気泡が物体表面近くに集まり層状に分布すると、水の摩擦がそれだけ減少することである。 もう一つの低減メカニズムは、乱流抑制効果、すなわち気泡が摩擦発生の主因である境界層中の乱流を抑制するということである。 これら2つのメカニズムの相乗効果によって、微小気泡による水と船舶との間の摩擦抵抗低減効果が得られていると言われる。 具体的な船舶の没水部分の構造としては、没水部分の表面に塗料にて微細な凹凸形状層を形成させ、かつ該凹凸形状層を撥水性材料で被膜させる。 一方、船体内部に設置したコンプレッサーから細いノズルを通して圧縮空気を船体の外側(撥水性材料で被膜した凹凸形状層の表面)へ噴出させる。 このようにすることで、微小気泡による薄い空気層が船舶没水部分の外周に形成されることになる(非特許文献1)。 しかし、このような微小気泡(マイクロバブル)による水と船舶との間の摩擦抵抗低減技術の考え方を水着に応用した事例は未だ無い。 ながれ20(2001)278−284、[特集]ながれと海洋「マイクロバブルによる船舶の摩擦抵抗低減」 本発明は、前述のような従来の発明からなる水着用編物または織物からなる水着による欠点を解消し、水着用素材に必要とされる諸特性(伸長率、目付、厚さ、動き易さ、使用耐久性、機械強度、審美性等)を満足させると同時に、水着として着用して泳いだ時、生地の構造設計から生じる微小気泡の効果により従来以上に水抵抗を低減可能な水着用織物とそれからなる水着を提供することを目的とする。 上記課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。 本発明によれば、水着用織物に必要とされる諸特性(伸長率、目付、厚さ、動き易さ、使用耐久性、機械強度、審美性等)を保持したまま、水着として着用して泳いだ時、生地の構造設計から生じる微小気泡の発生効果により従来以上に水抵抗を低減可能な水着用織物とそれからなる水着を提供することができる。 本発明の織物は、合成繊維マルチフィラメント糸条と弾性繊維とから構成された、表面および裏面に撥水加工が施された織物であり、少なくとも、水着として着用された際に肌へ接する側に相当する織物裏面に、空気滞留部となる凹凸を有している。 該織物裏面の凹凸は、高低差が150μm以上650μm以下であり、かつ、凹部の幅が100μm以上5000μm以下である。 以下、具体的に図1に基づき本発明を説明する。 図1に示す水着(M)は、本発明にかかる織物で縫製されたものであり、該水着(M)において、水着素材の表面層(a)は微細な凹凸を有し、裏面層(b)は前記表面層(a)よりも大きな凹凸を有している。 更に、織物水着(M)の表面層(a)および裏面層(b)には撥水加工が施されている。 この水着(M)は、裏面側が人体肌面(S)に密着するように着用されるが、水着の裏面層(b)は凹凸の形状を有しており、該裏面層(b)の凹部が空気滞留部となり得る。 例えば、水着(M)を着用して平泳ぎで泳ぐ水泳選手の場合を想定する。 まずスタート台から飛び込む直前には、水着の裏面層(b)の凹部(c)に空気が滞留している。 次に、該選手は、スタート台から飛び込むと同時に水(E)の中をストリームライン(流線型)で直進する。 この時、水着の表面層(a)には水圧(P)がかかるため、水着の裏面層(b)の凹部(c)に滞留していた空気の塊は、浮力の作用をうけて水面方向に向かおうとする。 しかしながら、該空気の塊は、水着(M)を形成する合成繊維マルチフィラメント糸条の緻密な空隙やタテ糸とヨコ糸の交錯点に形成されている微細な空隙を通して押し出されるため、水着の表面層(a)側に微小気泡となって排出される。 次に、水中でのストリームラインから水面へ身体が浮き上がる。 具体的には、両手で水を掻くと同時に身体の約1/3が浮き上がる。 この時、水着が空気に触れることから水着の裏面層(b)の凹部(c)には再び空気が滞留する。 更に次に、両手を伸ばすと同時に身体が水中(E)に沈み、水着の表面層(a)に水圧(P)がかかると、裏面層(b)の凹部(c)に滞留していた空気が、先と同様に水着(M)の合成繊維マルチフィラメント糸条の狭い隙間や織物を構成するタテ糸とヨコ糸の交錯点に形成されている隙間を通して押し出され、表面層(a)の側に微小気泡となって排出される。 更に次に、両手で水を掻くと同時に身体の約1/3が浮き上がり、裏面層(b)の凹部(c)には再び空気が滞留する。 このように、裏面層(b)の凹部(c)への空気の取り込みと排出の繰り返しにより、表面層(a)の側に微小気泡が排出される。 一方、水着の表面層(a)は、合成繊維マルチフィラメント糸条の細い単繊維による微細な凹凸形状を有し、かつ、撥水性を有している。 そのために水着の裏面層(b)の側から表面層(a)の側へ排出された微小気泡は、水圧(P)と微細な凹凸形状を有する表面層(a)の撥水性の作用により、微細な凹凸形状の凹部の中に保持され易い。 その結果、水着表面と水との間に微小気泡の層(B)が形成される。 以上のようにして、本発明においては織物の表面側に微小気泡の層が形成されることになる。 なお、微少気泡の定義は、学説的に未だ明確ではないとされている説も有る。 広義には、ミリメートル単位以下であり、マイクロサイズの「超微細な気泡」のことをいい、狭義には「その発生時において10〜数十μmの直径を有する気泡」と定義されると言われている。 本発明において、水着用素材は織物からなるものである。 織物からなる水着は編物の水着に比べ、薄地で軽量にすることができ、かつスナッグ等の物性に強いものとすることができる。 該織物は、合成繊維マルチフィラメント糸条と水着としてのストレッチ性を得るための弾性繊維とから構成されるものである。 合成繊維マルチフィラメント糸条としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン系繊維の内の少なくとも一種から選択されたものを使用することが好ましい。 即ち、合成繊維マルチフィラメント糸条としては、JISL0204−3(2009)に該当する弾性繊維(ゴム状弾性をもっている繊維)を除く、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系繊維、芳香族ポリエステルに第三成分を共重合した芳香族ポリエステル系繊維、L-乳酸を主成分とするもので代表される脂肪族ポリエステル系繊維、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン系繊維などの合成繊維などが挙げられる。 これらの合成繊維は、単独または2種以上の混合物として使用することができるが、ポリエステル系繊維またはポリアミド系繊維を主成分にした繊維が特に好ましい。 なお、ポリエステル系繊維を採用する場合、通常のポリエステル系繊維は一般に分散染料を用いて染められるが、分散染料はポリウレタン系繊維を汚染してしまうため、最終製品において色移り等堅牢度不良を発生させることがある。 そのためカチオン染料で染色することの出来るカチオン可染型ポリエステル系繊維を用いることがより好ましい。 また、本発明に用いられる合成繊維は、通常のフラットヤーン以外に、仮撚加工糸、タスラン加工糸、混繊糸等のフィラメントヤーンであってもよい。 合成繊維の糸形態としては、モノフィラメントではなく、マルチフィラメント糸条を用いる。 モノフィラメントの場合は肌触りが悪く、着用感に劣るものとなる。 マルチフィラメント糸条のフィラメント数としては、5〜100フィラメントが好ましく、24〜72フィラメントがより好ましい。 このフィラメント数が、5フィラメント未満では風合いが粗硬気味となり好ましくない。 100フィラメントを超えるとスナッグ等の物性が劣ることになり易く好ましくない。 マルチフィラメント糸条の太さは、特に限定されるものでないが、例えば22デシテックスから110デシテックスまでが好ましく、特に、22デシテックスから55デシテックスまでがより好ましい。 また、該マルチフィラメント糸条を構成する単繊維の繊度としては、0.5〜5.5デシテックスが好ましく、0.5〜3.0デシテックスがより好ましい。 単繊維繊度が0.5デシテックス未満ではスナッグ等の物性が劣ることになり易く好ましくない。 5.5デシテックスを超えると風合いが粗硬気味となり好ましくない。 単繊維の断面形状は、図9の(1)に示すような丸断面、(2)に示すような三角断面、(3)に示すようなY型断面、その他の異形断面などを限定されることなく用いることができる。 前記水着の表面層(a)に、合成繊維マルチフィラメント糸条の細い単繊維により微細な凹凸形状を形成させるためには、図9の(2)に示すような三角断面、(3)に示すようなY型断面、(4)に示すようなH型断面、(5)に示すような+型断面、(6)に示すようなW型断面、(7)に示すようなX型断面、さらには、(8)に示すような中央部に窪みを有する楕円系断面糸等の異形断面糸を用いることがより好ましい。 一方、弾性繊維としては、ゴム状弾性を持っている繊維であればいかなるものでもよく、JIS L0204−3(2009)に該当するものであればよい。 該繊維には、例えば外力に対し、原長の5〜7倍に伸び、また、外力を取り除くことにより、原長に近い長さに復元する特性を持つ繊維が含まれる。 具体的には、ポリウレタン系弾性糸や、上記のような弾性を発現するポリエステル系弾性糸、ポリエーテル・エステル系弾性糸、ポリスチレン系弾性糸等を採用できる。 弾性繊維の太さも特に限定されることはないが、例えば22デシテックスから88デシテックスまでのものを好ましく使用することができ、特に、33デシテックスから55デシテックスまでのものをより好ましく使用することができる。 本発明において、前記した合成繊維マルチフィラメント糸条と弾性繊維とは、組み合わせて複合糸として使用することが好ましい。 複合糸としては、弾性繊維を芯糸に、合成繊維マルチフィラメント糸条を鞘糸にして、芯糸に鞘糸を一方向にカバリングするシングルカバリング糸や、芯糸に鞘糸を右方向と左方向の2重にカバーするダブルカバリング糸が有る。 また、他の複合糸としては、弾性繊維を芯側に、合成繊維マルチフィラメント糸条を鞘側により多く配置した空気混繊複合糸が有る。 更に他の方法として、合撚糸形態の芯鞘複合糸とすることができる。 これは、芯糸になる弾性繊維にドラフトをかけ、鞘糸になる合成繊維マルチフィラメント糸条とを引き揃えて合撚して芯鞘複合糸とする。 なお、このような複合糸を得るにあたっては、一般的なカバリング機、イタリ撚糸機、ダウンツイスタ、アップツイスタ、ダブルツイスタ等が使用される。 また、前記カバリング糸および空気混繊複合糸、合撚糸とも、用いる合成繊維マルチフィラメント糸条としては、フラットヤーンあるいは捲縮を有する仮撚加工糸のいずれでも良い。 複合糸としては、芯鞘複合糸形態を取るものならば、特に限定されるものではない。 しかしながら、弾性繊維は、合成繊維マルチフィラメント糸条のように所望する色合いに染色したり着色することが難しく、また、弾性繊維と合成繊維とを同色に合わせることが困難である。 そのため、織物の品位低下を避けるために、弾性繊維がより芯糸側に、合成繊維マルチフィラメント糸条がより鞘側に最適配置されたカバリング糸が複合糸として好ましく採用される。 更に、織物の目付の増加を避けるため、カバリング糸の繊度を細くできるシングルカバリング糸を採用することがより好ましい。 シングルカバリング糸などのような上記複合糸をタテ糸およびヨコ糸に用いることで、タテ方向とヨコ方向のストレッチ性に特に優れた水着用織物を得ることができる。 また、競泳など激しい運動を伴う水泳の際に着用される水着の場合、スナッグが問題となりやすい。 そのため、シングルカバリング糸を採用する場合には、カバリング時の撚係数を高く設定することが好ましい。 その撚係数は6500から12000の範囲が好ましく、スナッグレベルを最良とするためには7500から11000の範囲に設定することがより好ましい。 なお撚係数は次式で算出される。 本発明において、織物は、水着として着用された際に肌へ接する側とは反対側に相当する織物表面に、微細な凹凸形状を設けることが好ましい。 該織物表面の凹凸形状は、高低差(凸形状の高さ)が0.5μm以上130μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましく、10μm以上70μm以下が特に好ましい。 高低差が0.5μm未満または130μmを超えると、微小気泡の数が減少し、かつサイズも不安定なものとなる。 なお、織物の表面に後述する平滑化加工を施すことで、織物表面の凹凸形状をより最適化することができる。 該表面の微細な凹凸形状において、凸部の間隔(凸形状同士の間隔)は、0.5μm以上180μm以下が好ましく、10以上150μm以下がより好ましく、10μm以上100μm以下が特に好ましい。 この凸部の間隔が0.5μm未満または180μmを超えると、前記と同様に、微小気泡の数が減少し、かつサイズも不安定なものとなる。 前記表面における凹凸形状は、前記する合成繊維マルチフィラメント糸条を使用することで、自然に形成されることが多いが、前記図9の(1)に示すような丸断面ではなく、図9の(2)〜(8)に示すような、非円形断面形状である異形断面糸を使用することにより、より望ましい表面形態を形成してもよい。 一方、水着として着用された際に肌へ接する側に相当する織物裏面には、上述したように、空気滞留部となる比較的大きな凹凸形状が設けられる。 該凹凸形状は、高低差が150μm以上650μm以下であり、凹部の幅が100μm以上5000μm以下である。 凹凸形状の高低差とは、図2に示す織物の模式断面図においてhで示される値である。 150μm未満の場合は、空気の滞留量が少なくなり、微小気泡の発生量も少なくなることになる。 また、650μmを超えると、凹部の深さが大きくなることから、空気の滞留量は満たされるものの、織物の全体厚さが厚くなったり、織物表面が薄くなり透け感が出たりするなど、水着としては不適なものになる。 この高低差は200μm以上500μm以下であることがより好ましく、200μm以上400μm以下がより好ましい。 織物裏面の凹凸形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、図3〜図8の水着用織物裏面の模式平面図に示すようなものが挙げられる。 具体的には、凸部が、図3に示すようなストライプ柄状、図4に示すようなドット柄状、図5に示すように格子柄状、更には、図6に示すような市松柄状、図7に示すようなボーダー柄状(横縞柄状)、図8に示すような水玉柄状、またはA〜Zのようなアルファベット形状(図示しない)などで設けられている態様が挙げられる。 水着用織物の目付、厚さ、伸長率や織物表面感の品位、見栄え等に応じて適宜選択して形成させればよい。 また、織物裏面の凹部の幅とは、[図2]〜[図8]においてwで示される値である。 この凹部の幅は、100μm以上5000μm以下である。 この凹部の幅が100μm未満では、空気の滞留量が少なくなり、微小気泡の発生量も少なくなることになる。 また、5000μmを超えると、裏側の凸部の間隔が広くなることを意味し、織物の表面に柄癖のような影響を与え、水着としての見映えにも劣ることになる。 この凹部の幅は、200μm以上1200μm以下であることがより好ましい。 [図2]〜[図8]においてyで示す、織物裏面の凸部の幅は、100μm以上5000μm以下であることが好ましく、200μm以上3000μm以下であることがより好ましい。 この凸部の幅を100μm以上とすることで、水着として着用した際の着圧によっても該凸部が変形されにくく、安定して空気滞留部を形成し易くなる。 その結果、空気の滞留量が多くなり、微小気泡の発生量も多くなる。 また、5000μm以下とすることで、裏側の凸部が織物表面に柄癖のように影響することを防ぐことができ、水着としての見映えにも優れたものとなる。 更に、微小気泡をより多く発生させるためには、織物裏面において凹部が裏面全面積比で30%以上を占めることが好ましい。 30%以上とすることで、前記と同様に空気の滞留量が多くなり、微小気泡の発生量も多くなる。 また、織物表面への柄癖の影響や水着としての見映えも考慮すると、80%以下とすることが好ましい。 したがって、裏面において凹部は、裏面全面積比で30〜80%を占めることがさらに好ましく、40〜80%を占めることがより好ましく、50〜80%を占めることが特に好ましい。 逆に裏面の凸部は、裏面全面積比で20〜70%を占めることが好ましく、20〜60%を占めることがより好ましく、20〜50%を占めることが更に好ましい。 このように、織物裏面における凹部と凸部の面積比を最適化することで微小気泡の発生量をより多くすることができる。 上記したような凹凸形状は例えば以下のように形成することができる。 一般的に織物の裏面に小さな凹凸形状を形成させるためには、タテ糸とヨコ糸の両者に同一繊度の糸を使用して織物にすればよい。 しかしながら、この方法では、凹凸形状の高低差が小さいため、狙いとする十分な空気滞留部を織物裏面に形成させることができない。 他の方法として、タテ糸またはヨコ糸のどちらか一方の糸を太繊度にし、他方の糸を細繊度にして織物を製織することで、裏面に比較的大きな凹凸形状を形成させることができる。 しかしながら、この方法によれば、織物の表面にも大きな凹凸形状が形成されることになり易く、基本的な目的とする水抵抗性を逆に悪化させる原因となり得る。 このようなことから、本発明は、タテ糸・ヨコ糸の両者に同一繊度の糸を使用して、低水抵抗性を狙う競泳水着用素材としての表面平滑性や目付、厚さを満足しつつ、織物裏面には、織物組織(例えば二重織物組織)により、微小気泡を発生させるために十分な空気滞留部となる大きな凹凸形状を形成させることが好ましい。 すなわち、本発明において、水着用織物は、表面が例えば微細な凹凸形状を有するフラットに近い組織で、裏面が凹凸組織であることが好ましい。 このための織物の製法は特に限定するものではないが、例えば、ドビー機構やジャカード機構を備えた織機を用い、かつ、二重織物組織であるタテ二重組織、ヨコ二重組織、タテヨコ二重組織のいずれかの組み合わせにより、表面を平織組織等のフラット組織とする一方、裏面を凹凸組織に製織することができる。 製織に用いる織機の種類は、ウォータージェット織機、エアージェット織機、レピア織機など、特に限定されるものではない。 また、裏面の凹凸形状は、エンボス加工により形成されてもよい。 エンボス加工のための織物の裏面組織は、特に限定されるものではないが、若干厚めの平織組織や、表裏とも平織組織となるタテヨコ二重組織が好ましく使用できる。 エンボス加工により、凹凸形状の柄変化の自由度が大きくなる。 エンボス加工におけるエンボスロールの圧力や温度は、通常に行われているポリエステル織物やナイロン織物の加工条件に準じて行えばよい。 なお、従来から存在する、例えば22デシテックスから110デシテックスのマルチフィラメント糸条丸断面ポリエステル系繊維からなる鞘糸と22デシテックスから88デシテックスの弾性繊維からなる芯糸とを組み合わせたシングルカバリング糸をタテ糸およびヨコ糸に使用した一般的な2Wayストレッチ平織物の場合、その織物裏面には、使用糸の太さ(繊度)に起因する凹凸が表れる。 しかし、このような使用糸の太さのみに起因する凹凸は、高低差が10μm以上150μm未満と小さく、また、凹部の幅も100μm未満となり、空気滞留部として実質的に機能するものではない。 そのため、泳ぐ時に発生する微小気泡も、織物を形成する使用糸の構成単繊維同士の間隙から発生する非常に少ないものである。 そして、本発明において水着用織物は、表面裏面の両方に撥水加工が施されていることが必要である。 裏面に撥水加工が施されているため、裏面の凹部に空気が滞留し易く空気滞留部として作用する。 裏面に撥水加工が施されていない場合は、常時親水状態となり、空気が滞留できず、微小気泡を実質的に発生することができない。 また、表面にも撥水加工を施すということは、合成繊維マルチフィラメント糸条の細い単繊維による微細な凹凸形状の全面が撥水性を有することになる。 そのため、裏面側から表面側に微小気泡が排出されると、その微小気泡は、水圧(P)と微細な凹凸形状表面の撥水性の作用により、水着表面と水との間に保持され、微小気泡の層(B)が形成される。 ここで用いられる撥水剤としては、フッ素系撥水剤、シリコン系撥水剤など通常の撥水剤を用いることができ、特に限定されるものではない。 また、撥水加工の設備や加工条件も、通常に行われているポリエステル2Wayストレッチ織物やナイロン2Wayストレッチ織物の加工条件に準じて行えばよく、特に限定されるものではない。 例えば、撥水加工を染色仕上げ加工工程の中の1工程として組み込むこともでき、その場合の具体的プロセス例としては、拡布精練/リラックス、中間セット、染色、撥水加工、仕上げセット、または、液流精練/リラックス、染色、撥水加工、仕上げセット等の態様が考えられる。 目的とする織物のストレッチ率や表面品位の状態により適宜選択すればよい。 なお、撥水加工以外に、染色段階での付帯加工として、防汚加工、抗菌加工、消臭加工、防臭加工、防カビ加工、紫外線吸収加工、更に、プリント加工などを、要求特性に応じて適宜選択し併用加工をすることも可能である。 本発明においては、水着用織物の表面に、平滑化加工が施されていることも好ましい。 ここでいう平滑化加工とは、織物表面において水抵抗性を劣化させると考えられる凹凸形状等を熱や圧力などにより押し潰し、表面を該加工処理前よりも滑らかに変化させる加工のことをいう。 なかでも、加工安定性と生産性の観点から、平滑化加工の具体的手段としてはカレンダー加工が好ましい。 その加工機としては通常の加熱金属ロールとぺーパーロール、またはコットンロールよりなるカレンダー加工機を用いることができ、加熱金属ロールを用いる場合は鏡面ロールであることが好ましい。 また、板状物を用いてカレンダー加工を行うこともできる。 例えばカレンダー加工条件は、織物の幅100〜220cmに対して、線圧で1〜60tとし、ロール温度は130〜250℃で行うことが好ましい。 また、他の平滑化加工としては、加熱金属ロールと皮ベルトを有する転写プリント機を利用して行うこともできる。 これら平滑化加工の条件は、織物の種類、表面の凹凸感、風合などにより、先に述べた織物表面の微細な凹凸形状における凸部の高さと間隔を損なわない程度に適宜設定すればよい。 特に、仕上げセット後に、織物組織の影響で織物表面に凹凸感が顕著に出た場合などに、この平滑化加工を行うことが好ましい。 このように平滑化加工を施すことにより、織物表面は比較的平たく滑らかになり、水抵抗性の低減効果に寄与することができる。 本発明の水着用織物は、タテ方向とヨコ方向の平均伸長率が55%以上、平均伸長回復率が75%以上であることが好ましい。 伸長率とは、水着用織物の伸びの程度を表すものである。 この数値が大きい程、水着にして着用した時、身体の動きに追従し易く、水泳のような激しい動きにも水着が追従し、動き易く、疲れ難い。 また、伸長回復率とは身体の動きで伸長した水着が、素早く元の状態に戻ろうとする回復程度を表すものである。 この数値が大きい程、水着にして着用した時、よりフィット性に富み、動き易いことを示す。 伸長率と伸長回復率は、織物のタテ方向とヨコ方向の各々の数値を平均して考えることがよい。 これは、水着にして実際着用して動く場合、織物はタテ方向あるいはヨコ方向の一方向のみ伸長されるわけではなく、人間の身体の丸みに応じて三次元的に織物が伸長されるためである。 この三次元的な伸長特性が織物のタテ方向とヨコ方向の平均した伸長率である平均伸長率、および平均伸長回復率と相関し、よく一致するものである。 本発明における織物は、上記したように、タテ方向とヨコ方向の平均伸長率が55%以上であることが好ましく、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは75%以上である。 平均伸長率が55%未満であると水着を着用して激しい水泳を行った場合、水着と皮膚との間のゆとり量を考慮しても、身体の動きに水着が追従し難く、また、疲れ易いものとなり好ましくない。 一方、平均伸長率が130%を超えると、泳ぐことにより水着に緩みが生じ、泳ぎづらくなることになる。 また、本発明における織物においてタテ方向とヨコ方向の平均伸長回復率は、75%以上であることが好ましい。 好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。 平均伸長回復率が75%未満であると水泳により伸長された水着が伸ばされた状態となり、身体へのフィット感に劣ることから身体の動きに追従しにくくなる。 また、水着としての見映えにも劣ることになる。 なお、平均伸長回復率は、100%に近いほどよいが、カバリング糸を用いた場合、織物の伸長と回復の繰り返しからくる歪みにより、95%程度が限界である。 本発明の水着用織物は、通気性が5〜70cm 3 /(cm 2・s)であることが好ましい。 5〜50cm 3 /(cm 2・s)が好ましく、更には、5〜30cm 3 /(cm 2・s)にするのがより好ましいものである。 本発明においては、織物裏面の凹部に滞留した空気が、泳ぐ時に受ける水中での水圧により、水着の合成繊維マルチフィラメント糸条の微細な隙間やタテ糸とヨコ糸の交錯点の微細な空隙を通して押し出され、水着表面に微小気泡となって排出されることが必用である。 上記通気性を、5cm 3 /(cm 2・s)以上とすることで、織物裏面の凹部に滞留した空気が水中での水圧により押し出され易く、水着表面に微小気泡となって排出される量が多くなるため、微小気泡層を形成し易くなる。 また、該織物の通気性を70cm 3 /(cm 2・s)以下とすることで、織物裏面側から瞬時に押し出される空気の量が多くなりすぎるのを抑えることができ、微小気泡が形成されにくくなるのを防ぐことができる。 なお、上記通気性の数値は、水着用織物を無張力な状態とした場合の通気性数値である。 実際に水着として着用する場合には、着用張力により、織物にタテ・ヨコ・斜め方向に20〜30%程度伸長されるが、かかる張力を考慮しても、前記無張力下での通気性が5〜70cm 3 /(cm 2・s)有れば、十分であると判断される。 織物の目付は200g/m 2以下であることが好ましい。 200g/m 2を超えると競泳水着用の織物としては重くなりすぎ、泳いでいる時、重く感じたり、動きが妨げられることから身体の疲れを増し、かえって不快感を生じるなど、着用性に劣るものとなり易い。 特に、90〜190g/m 2にするのが好ましい。 目付が90g/m 2未満の場合は、動き易いものの織物が薄すぎて裏地などの少ない競泳水着用の織物としては透けなどの問題を生じやすく審美性の点から好ましくない。 また、破裂強力や引き裂き強力が低いなどの生地物性面で水着用として不適な織物となり易い。 織物の厚さは0.90mm以下であることが好ましい。 0.90mmを超えると競泳水着用の織物としては厚くなりすぎ、泳いでいる時、かさばることを感じたり、動きが妨げられることから身体の疲れを増し、かえって不快感を生じるなど着用性に劣るものとなり易い。 特に、0.25〜0.80mmが好ましく、更に、動き易さの観点から0.35〜0.60mmがより好ましい。 厚さが0.25mm未満の場合は、先に述べた目付と同様に、動き易いものの織物が薄すぎて裏地などの少ない競泳水着用の織物としては透けなどの問題を生じやすく審美性の点から好ましくない。 また、破裂強力や引き裂き強力が低いなどの生地物性面で水着用として不適な織物となり易い。 本発明の水着用織物は、二重織物から形成されることが好ましい。 二重織物を採用すると、従来から使用されている一重織物品に比べ、破裂強力や引き裂き強力の強いものが得られ易い。 このことをふまえて、本発明によれば破裂強力350kPa以上、さらには400kPa以上を有する水着用織物を得ることも可能となる。 以上のような織物は、前述の織物表面が水着の表側になるように、水着に縫製される。 こうすることで、織物裏面の凹部に滞留した空気を、泳ぐ時に受ける水圧により水着の表面へ微小気泡として排出することができ、水着と水との境界に微少気泡の層を形成することができる。 なお、本発明の織物は、水着の全部分に使用したり、あるいはある特定部分の一部分に使用するなどいずれでもよく、特に限定されるものではない。 着用者に応じて最適に使用することで、微小気泡の発生とその有効利用により、水抵抗をより低減できる水着、特に競泳用水着が得られる。 以下、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 なお、本発明において用いた評価は、それぞれ次の方法により行ったものである。 (1)織物の目付 最終加工上がりの織物からタテ100cm×ヨコ100cmの評価サンプルを3枚ずつ採取した後、質量を計量し、3枚の平均値(g/m 2 )で表した。 (2)織物の厚さ JISL1096:2010の第8.4項に記載のA法に準じて行った。 即ち、試料の異なる5か所について厚さ測定器を用いて、一定時間及び一定圧力の下で厚さ(mm)を測り、その平均値を算出し、四捨五入して小数点以下2桁で表した。 なお、測定時の一定圧力は、0.7kPaとした。 (3)織物の伸長率 JISL1096:2010の第8.16.1項に記載の伸び率A法(定速伸長法)に準じて行った。 なお、ストリップ法の17.6N(1.8kg)荷重時を採用し、試験条件は、サンプル幅5cm×長さ20cm、クランプ間隔10cm、引張速度20cm/分とした。 また、初荷重は、JIS L 1096:2010の方法に準じて、試料幅1m相当の重さを使用した。 試料のタテ方向及びヨコ方向の各々3回の試験結果(%)の平均値を算出し、四捨五入して小数点以下1桁で表した。 (4)織物のタテ方向とヨコ方向の平均伸長率 前記織物の伸長率のタテ方向及びヨコ方向の各々3回の試験結果(%)の平均値から、 (5)織物の伸長回復率 JISL1096:2010の「伸長弾性率(伸長回復率)及び残留ひずみ率」第8.16.2項に記載のA法(繰返し定速定伸長法)に準じて行った。 なお、ストリップ法の17.6N(1.8kg)荷重時・繰返し5回後を採用し、試験条件は、サンプル幅5cm×長さ20cm、クランプ間隔10cm、引張速度20cm/分とした。 初荷重は、JIS 1096:2010の方法に準じて、試料幅1m相当の重さを使用した。 試料のタテ方向及びヨコ方向の各々3回の試験結果(%)の平均値を算出し、四捨五入して小数点以下1桁で表した。 (6)織物のタテ方向とヨコ方向の平均伸長回復率 前記織物の伸長回復率のタテ方向及びヨコ方向の各々3回の試験結果(%)の平均値から、 (7)織物の通気性 JISL1096:2010の第8.26.1項に記載のA法(フラジール形法)に準じて行った。 すなわち、試験機の円筒の一端に試験片を取り付けた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように吸込みファン及び空気孔を調整し、そのときの垂直形気圧計の示す圧力を計った。 測定した圧力と使用した空気孔の種類とから、試験機の附属の換算表によって試験片を通過する空気量(cm 3 /(cm 2・s))を求めた。 5回の試験結果の平均値を求め、四捨五入して小数点以下1桁で表した。 (8)織物表面の微細な凹凸形状における高低差と凸部の間隔 走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、S−3400Nタイプ)にて織物断面の表面側を、倍率50〜80で撮影した。 この撮影時に、織物表面の微細な凹凸形状における高低差(凸部の高さ)と凸部の間隔(隣接する凸部頂点間の距離)を各々計測するように指定操作した。 なお、1μmの位までの正確な測定が困難であることに鑑み、個々の測定値における1の位を四捨五入した。 また、凸部の左右で高さが異なる場合、高い方を選んで測定した。 さらに10回の計測結果の平均値で表した。 (9)織物裏面の凹凸形状における凹部(または凸部)の幅と長さ 走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、S−3400Nタイプ)にて織物断面の裏面側を、倍率50〜80で撮影した。 この撮影時に、織物裏面の凹凸形状における凹部(または凸部)の幅と長さを各々計測するように指定操作した。 なお、1μmの位までの正確な測定が困難であることに鑑み、個々の測定値における1の位を四捨五入した。 さらに10回の計測結果の平均値で表した。 (10)織物裏面の凹凸形状の高低差(凸部の高さ) (11)織物裏面の凹部の面積比 織物裏面の凹部と凸部の幅と長さを基に、織物裏面の総面積に対する凹部の総面積の比を算出し、10回の計測結果の平均値で表した。 なお、隣接する凸部との高低差が150μm未満もしくは650μm超の凹部、もしくは、幅が100μm未満もしくは5000μm超の凹部は、この面積比を算出する上での「凹部」、すなわち分子から除外した。 (12)水抵抗性 図10に示す測定器を用いて水着用織物の水抵抗性を測定した。 すなわち、筒型プラスチック製ロール3(直径22.5cm、長さ24cm)の軸芯5の一方の端部に高性能トルクモーター4を取付け、箱型プラスチック製水槽1(幅50cm、奥行き43cm、深さ40cm)の内部に、前記軸芯5が水平方向のまま回転するように固定した。 なお、ロール3には、設定した時間当たりの回転数に対するトルクモーター4の抵抗値を表示するデジタル表示器6も設けた。 次に、水槽1の中に水2を入れ、ロール3が直径方向に2/3水につかるようにすると同時に、このロール3の回転数を142回転/50秒(表面速度2m/秒)に設定した。 これは、100m自由型のトップスイマーが100mを50秒で泳ぐ速度に相当する。 サンプルを取付ける前のこの条件を理想体とする。 次に、サンプルとして、織物表面が外側になるように、筒状評価サンプル(円周58cm、幅20cm)を3個作製した。 このサンプルを、着用状態を想定し、タテ、ヨコとも20%伸長させて、前記のロール3に取付けた。 上記のサンプルを取付ける前の条件を理想体(ブランク)とするのに対し、ロール3にサンプルを取付け、該ロールが水中で142回転/50秒で回転する際の抵抗値(%)を計った。 3個のサンプルの平均値を算出し、小数点以下2桁で表した。 水抵抗性に劣る織物は、この抵抗値(%)が大きな数値となり、逆に、水抵抗性に優れた織物は、この抵抗値(%)が小さな数値となる。 (13)微小気泡の発生状況 上記水抵抗性の測定時に微小気泡の発生状況を視覚評価した。 同時に、高速度カメラ((株)フォトロン製、FASTCAM−APS RSタイプ)にて撮影し、パソコンに取り込むと共に、再度、微小気泡の発生状況を確認した。 なお、実験中に発生する微小気泡のサイズを正確に実測することが困難なことも有り、視覚判定で直径が1mm程度以下のものを微小気泡と判断した。 また、視覚判定の基準は、次の通りである。 (14)水着素材としての総合評価 [実施例1] その後、この生機を通常のカチオン染料可染型ポリエステル2Wayストレッチ織物の染色加工に準じて95℃浴中での精練/リラックス投入、125℃浴中でのカチオン染料染色を行い、更に撥水加工を行い、仕上げ幅102cm、ヨコ密度210本/2.54cmの水着用織物として仕上げた。 この織物において、裏面の凹凸形状は、高低差が220μm、凹部幅が1000μm、凹部の面積比が78%であった。 また、表面の凹凸形状は、高低差が61μm、凸部の間隔が133μmであった。 一方、この織物の通気性は13.3cc/(cm 2・s)、目付が151g/m 2 、厚さが0.46mm、平均伸長率が71.4%、平均伸長回復率が85.7%であった。 この織物について水抵抗性を測定した結果、水抵抗性は1.2%と非常に優れたものであつた。 水抵抗性の測定時に発生が確認される微小気泡は非常に多いものであった。 更に、この織物の表面を表側にした100%使いの競泳用水着を試作し、19〜22歳の大学生である男性5名、女性5名で平泳ぎによる試着評価を行った結果、動き易く、かつ、身体が軽く感じる等、非常に泳ぎ易く、競泳水着用素材として優れているものであることが確認された。 これらの評価結果を表1に示す。 [実施例2] その後、この生機を通常のナイロン2Wayストレッチ織物の染色加工に準じて80℃浴中での精練/リラックス投入、95℃浴中での酸性染料染色を行い、更に撥水加工を行い、仕上げ幅104cm、ヨコ密度190本/2.54cmの水着用織物として仕上げた。 この織物において、裏面の凹凸形状は、高低差が200μm、凹部幅が500μm、凹部の面積比が61%であった。 また、表面の凹凸形状は、高低差が44μm、凸部の間隔101μmであった。 一方、この織物の通気性は21.3cc/(cm 2・s)、目付が133g/m 2 、厚さが0.41mm、平均伸長率が82.5%、平均伸長回復率が83.0%であった。 この織物について水抵抗性を測定した結果、水抵抗性は2.0%と非常に優れたものであつた。 水抵抗性の測定時に発生が確認される微小気泡は非常に多いものであった。 更に、この織物の表面を表側にした100%使いの競泳用水着を試作し、実施例1と同一被験者である男性5名、女性5名で平泳ぎによる試着評価を行った結果、動き易く、かつ、身体が軽く感じる等、非常に泳ぎ易く、競泳水着用素材として優れているものであることが確認された。 これらの評価結果を表1に併せて示す。 [実施例3] この空気混繊複合加工糸を用い、ドビー機構付きのエアージェット織機で、オサ密度80羽/寸、オサ入れ2本入れ、ヨコ密度125本/2.54cmのヨコ二重組織で、裏面に図5に示す凹凸形状を有する織物生機を製織した。 その後、この生機を通常のカチオン染料可染型ポリエステル2Wayストレッチ織物の染色加工に準じて95℃浴中での精練/リラックス投入、125℃浴中でのカチオン染料染色を行い、更に撥水加工を行い、仕上げ幅102cm、ヨコ密度210本/2.54cmの水着用織物として仕上げた。 更に、この織物の表面に加熱金属ロールとペーパーロールからなるカレンダー加工機で平滑加工を施した。 この織物において、裏面の凹凸形状は、高低差が310μm、凹部幅が900μm、凹部の面積比が54%であった。 また、表面の凹凸形状は、高低差が15μm、凸部の間隔が142μmであった。 一方、この織物の通気性は10.0cc/(cm 2・s)、目付が157g/m 2 、厚さが0.52mm、平均伸長率が66.0%、平均伸長回復率が80.0%であった。 この織物について水抵抗性を測定した結果、水抵抗性は1.8%と優れたものであつた。 水抵抗性の測定時に発生が確認される微小気泡は非常に多いものであった。 更に、この織物の表面を表側にした100%使いの競泳用水着を試作し、実施例1と同一被験者である男性5名、女性5名で平泳ぎによる試着評価を行った結果、実施例1と2に比べ、平均伸長率が若干低いものの、動き易く、かつ、身体が軽く感じる等、非常に泳ぎ易く、競泳水着用素材として優れているものであることが確認された。 これらの評価結果を表1に併せて示す。 [実施例4] その後、実施例1と同様に染色、撥水加工を行い、仕上げ幅102cm、ヨコ密度210本/2.54cmの水着用織物として仕上げた。 この織物において、裏面の凹凸形状は、高低差が250μm、凹部幅が400μm、凹部の面積比が22%であった。 また、表面の凹凸形状は、高低差が55μm、凸部の間隔が120μmであった。 一方、この織物の通気性は12.9cc/(cm 2・s)、目付が160g/m 2 、厚さが0.48mm、平均伸長率が72.3%、平均伸長回復率が88.1%であった。 この織物について水抵抗性を測定した結果、水抵抗性は3.1%であった。 この水抵抗性の測定時に微小気泡の発生も確認された。 更に、この織物の表面を表側にした100%使いの競泳用水着を試作し、実施例1と同一被験者である男性5名、女性5名で平泳ぎによる試着評価を行った結果、動きが余り妨げられることもなく泳ぐことができ、競泳水着用素材として適しているものであることが確認された。 これらの評価結果を表1に併せて示す。 [実施例5] 更に、この織物の裏面にエンボス加工機にて図6に示す凹凸柄を付与して水着用織物として仕上げた。 エンボス加工におけるエンボスロールの圧力や温度は、ポリエステル織物に行われている通常加工条件に準じて行った。 この織物において、裏面の凹凸形状は、高低差が410μm、凹部幅が300μm、凹部の面積比が50%であった。 また、表面の凹凸形状は、高低差が32μm、凸部の間隔が113μmであった。 一方、この織物の通気性は9.5cc/(cm 2・s)、目付が165g/m 2 、厚さが0.58mm、平均伸長率が74.0%、平均伸長回復率が87.5%であった。 この織物について水抵抗性を測定した結果、水抵抗性は2.5%であった。 この水抵抗性の測定時に微小気泡の発生も確認された。 更に、この織物の表面を表側にした100%使いの競泳用水着を試作し、実施例1と同一被験者である男性5名、女性5名で平泳ぎによる試着評価を行った結果、動き易く、かつ、泳ぎ易く、競泳水着用素材として適しているものであることが確認された。 これらの評価結果を表1に併せて示す。 [比較例1] この織物は通常の平織組織のため、裏面に空気滞留部となる大きな凹凸部が形成されてなかった。 裏面の凹凸形状は、高低差が40μm、凹部幅が70μm、前記のように規定する凹部の面積比が0%であった。 また、表面の凹凸形状は、高低差が59μm、凸部の間隔が121μmであった。 一方、この織物の通気性は24.2cc/(cm 2・s)、目付が120g/m 2 、厚さが0.31mm、平均伸長率が71.0%、平均伸長回復率が88.5%であった。 この織物について水抵抗性を測定した結果、水抵抗性は3.8%と実施例に比べて劣るものであつた。 また、水抵抗性の測定時には微小気泡の発生もなかった。 更に、この織物の表面を表側にした100%使いの競泳用水着を試作し、実施例1と同一被験者である男性5名、女性5名で平泳ぎによる試着評価を行った結果、動きは妨げられないものの、身体は軽く感じることがなく、競泳水着用素材として優れていないと感じられるものであった。 これらの評価結果を表1に併せて示す。 [比較例2] この織物において、裏面の凹凸形状は、高低差が210μm、凹部の幅が300μm、凹部の面積比が25%であった。 また、表面の凹凸形状は、高低差が63μm、凸部の間隔が110μmであった。 一方、この織物の通気性は10.7cc/(cm 2・s)、目付が210g/m 2 、厚さが0.51mm、平均伸長率が50.0%、平均伸長回復率が86.0%であった。 この織物について水抵抗性を測定した結果、水抵抗性は6.4%と劣るものであつた。 また、水抵抗性の測定時には微小気泡の発生もなかった。 更に、この織物の表面を表側にした100%使いの競泳用水着を試作し、実施例1と同一被験者である男性5名、女性5名で平泳ぎによる試着評価を行った結果、動き難く、水着が重く、身体が軽く感じることはなく、競泳水着用素材として優れていないと感じられるものであった。 これらの評価結果を表1に併せて示す。 本発明にかかる水着用織物は、水着用素材に必要とされる諸特性を満足しつつ、水着として着用して泳いだ時、生地の構造設計から生じる微小気泡の効果により従来以上に水抵抗を低減することができるので、一般の水着は勿論、特に競泳用水着に好適に用いることができる。 M:水着S:人体肌面E:水B:微小気泡の層P:水圧a:表面層b:裏面層c:凹部(空気滞留部) |