【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、乳房カップを有する衣類に関するものである。 特に着用する事によって、 乳房の丸みと高さを出し、かつ脇部がスレンダーなスッキリしたやせて見える感じを与える乳房カップを有する衣類に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、乳房カップを有する女性用衣類、具体的には、例えばブラジヤー、ロングラインブラジャー、ビスチエ、ボディスーツ、スリーインワン、ブラテディ、ブラキャミソールあるいはブラスリップなどの乳房カップを有するファンデーション類や水着などの衣類は、着用者の乳房に当てがわれる膨らみのある乳房カップを有しており、これらの乳房カップを有する衣類は、女性用の被服として広く普及している。 乳房カップは、不織布やポリウレタンフォームなどの素材が使用されており、乳房の形を美しく補整するための機能を持たせるために種々の提案がなされている。 例えば乳房カップの脇部分、あるいは脇からバージス最下点にわたって、あるいは乳房カップの下辺部に沿った部分に略三日月状などの厚みの厚いパッドを設けたり、より腰の強い素材を用いてバストアップをはかったり乳房の脇への流れを防止した乳房カップを有する衣類は、近年乳房の形を補整する機能を有する乳房カップを有する衣類として普及してきている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの衣類を着用した場合、乳房の形は補整される場合もあるが、 胸が豊かに見えるようになるものの、前記乳房カップの強化部分の位置によって、乳房の肉が前中心側やあるいは脇側にはみ出すような形で補整されるため、特に太った人でなくともバストがスッキリ見えなかったり、バストが大きい人は全体の感じが太り気味に見えてしまうため、特に最近はバストの突出高さは低く押さえ込まず胸のボリュームは保持しながら、乳房の脇側部がスレンダーなスッキリした細身な感じを与えるような補整が望まれるようになってきている。 【0004】また、乳房カップの脇部分、あるいは脇からバージス最下点にわたって、あるいは乳房カップの下辺部に沿った部分を補強部材で補強し、バストアップなどを達成しようとする試みは種々採用されている。 しかし、脇部ならびに前中心部を補強しただけのものは他の部分に余り考慮が払われていないため、脇部の補強により脇からの乳房へ押圧力は作用するものの、他の部分の素材特性に考慮が払われていないので、反作用で、結局乳房の肉が脇側に流れる傾向になる。 【0005】また、脇部にパッドを用いて乳房を前中心側に寄せようとする試みは、乳房の反発とパッドの厚みで脇が膨らんで太って見えると言う問題がある。 そこで、脇部に比較的硬く伸びの少ない素材を用い、前中心側を比較的柔らかく伸びのある素材で乳房カップを作成してみたが、この場合は前述のものに比べて反発力による乳房の肉の脇流れは少なくなるが、乳房の造形性が優れているとは言えず、極端に前中心側に乳房の肉が寄った形になり、きれいなまろやかな丸みがでないことが分かった。 【0006】本発明は、バストの脇側の形をしっかりと押さえてシェイプアップし、その押さえによってはみ出した肉が前中心側上部にはみ出させずにバストを人体の前方にスッキリと押し出してバストの突出を高くし且つまろやかな丸みを帯びさせると共に脇部がスレンダーなスッキリした細身な感じを与える補整機能を有する乳房カップを有する衣類を提供する事を目的とするものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は上記の課題を解決するために、下記のような乳房カップを有する衣類を提供する。 【0008】(1) 乳房カップの(a)上側周辺近傍部分(a 1 )または上側周辺近傍部分の少なくとも主要部分をカバーし前中心側周辺近傍部分に至る部分(a 2 )と、(b)脇上辺部からバージスライン最下点近傍にかけての脇側周辺近傍部分(b 1 )または脇上辺部からバージスライン最下点を通り前中心側に至る脇側周辺から下側周辺部分(b 2 )とを比較的圧縮率の小さい素材で構成し、その残余の部分であるトップを含むほぼ中間部分(c)を比較的圧縮率の大きい柔軟な素材で構成したことを特徴とする乳房カップを有する衣類。 【0009】上記のごとく本発明の乳房カップを有する衣類は、乳房カップの(a)上側周辺近傍部分(a 1 ) または上側周辺近傍部分の少なくとも主要部分をカバーし前中心側周辺近傍部分に至る部分(a 2 )と、(b) 脇上辺部からバージスライン最下点近傍にかけての脇側周辺近傍部分(b 1 )または脇上辺部からバージスライン最下点を通り前中心側に至る脇側周辺から下側周辺部分(b 2 )とを比較的圧縮率の小さい素材で構成したので、バストの脇側の形をしっかりと押さえてシェイプアップし、その押さえによってはみ出した肉が前中心側上部にはみ出ることがなく、乳房の上側へのはみ出しも押さえ、乳房カップのトップを含む中間部分(c)を比較的圧縮率の大きい柔軟な素材で構成することによってバストを人体の前方にスッキリと押し出してバストの突出高さを高くし乳房のボリューム感を保ち且つまろやかな丸みを帯びさせると共に、脇部や上部に乳房の肉がはみ出さず、特に脇部がスレンダーなスッキリした細身な感じを与える補整機能を付与する事ができる。 【0010】また、本発明の好ましい態様は次の様である。 (2) (a)と(b)の素材の圧縮率が3〜10%であり、(c)の素材の圧縮率が10〜25%であり、且つ(a)と(b)の素材の圧縮率のいずれよりも(c) の素材の圧縮率の方が大きい前記(1)項に記載の乳房カップを有する衣類。 【0011】上記本発明の好ましい態様とすることにより、前記(1)項に記載の作用効果がより適格に発揮され、しかも着用感の低下のない乳房カップを有する衣類を提供する事ができ好ましい。 【0012】(3) (a)と(b)の素材の圧縮率が3.5〜8%であり、(c)の素材の圧縮率が14〜2 0%である前記(1)項または(2)項のいずれかに記載の乳房カップを有する衣類。 【0013】上記本発明の好ましい態様とすることにより、前記(1)項に記載の作用効果がより安定して発揮され、しかも着用感の優れた乳房カップを有する衣類を提供する事ができ好ましい。 【0014】(4) 更に乳房カップが表カップを有しており、前記表カップ生地として少なくとも下カップ部分の表カップ生地が伸縮性の生地である前記(1)項〜 (3)項のいずれかに記載の乳房カップを有する衣類。 【0015】上記本発明の好ましい態様とすることにより、表カップ生地を取り付けてより装飾性などを向上させる場合に於ても、表カップ生地の少なくとも下カップ部分の生地が伸縮性の生地であるので、乳房の丸みと高さを出し、かつバスト脇部がスレンダーな細身な感じを与える本発明の乳房カップを有する衣類の前記作用効果を妨げることなく、表カップ生地を設ける事ができ好ましい。 【0016】(5) (a)と(b)の素材が圧縮ポリウレタンフォームまたは圧縮ポリウレタンフォームの少なくとも片面に織物または編物が積層された圧縮ポリウレタンフォームの積層物からなる前記(1)項〜(4) 項のいずれかに記載の乳房カップを有する衣類。 【0017】上記本発明の好ましい態様とすることにより、圧縮ポリウレタンフォームは、安価でしかも容易に本発明で用いるに好ましい圧縮率特性を満たすものが得られ、かつ、人体への当たりが柔らかく着用感の低下もなく特に好ましい素材である。 【0018】(6) (c)の素材がストレッチ性不織布、非圧縮ポリウレタンフォームまたはこれらのいずれかの少なくとも片面に伸縮性を有する織物または伸縮性を有する編物が積層された積層物からなる群から選ばれたいずれかである前記(1)項〜(5)項のいずれかに記載の乳房カップを有する衣類。 【0019】上記本発明の好ましい態様とすることにより、これらは、比較的弱い力で圧縮される圧縮特性を有しており、また、柔軟性に優れているので、(a)、 (c)で押し出された乳房の肉をこの部分で吸収し、前述した(c)の持つべきバストを人体の前方にスッキリと押し出してバストの突出高さを高くし且つまろやかな丸みを帯びさせる作用効果を効果的に安定的に発揮でき、しかも着用感が非常に良好であり好ましい。 【0020】(7) 乳房カップを、乳房カップのトップとバージスラインの最下点を結ぶ仮想直線4と、乳房カップのトップを通り前記仮想直線4と直角に交わる仮想直線5とで4つの部分に区分した時に、前中心側で下側の部分の面積の少なくとも1/3の部分が(c)部分によって占められている前記(1)項〜(6)項のいずれかに記載の乳房カップを有する衣類。 【0021】上記本発明の好ましい態様とすることにより、特に脇部がスレンダーなスッキリした細身な感じを与える補整機能を付与する事ができると共に、バストを形よく人体の前方に押し出してバストをより美しい形に補整する補整機能を付与する事ができ好ましい。 【0022】(8)更に、(c)の素材が、(a)及び(b)の素材に比べて、伸びが大きいことを特徴とする前記(1)項〜(6)項のいずれかに記載の乳房カップを有する衣類。 【0023】上記本発明の好ましい態様とすることにより、(a)及び(b)の部分で押し出された乳房の肉が、大きな反発力を受けずに(c)部分の伸びにより形よく吸収されるため、更に一段と脇部がスレンダーなスッキリした細身な感じを与える補整機能を付与する事ができると共に、バストを形よく人体の前方に押し出してバストをより美しい形に補整する補整機能を付与する事ができ好ましい。 【0024】(9) 乳房カップを有する衣類がブラジャーであって、前記ブラジャーはそのバック布が身体の脇に当たる部分に圧縮ポリウレタンフォーム及び/またはノーバインダー圧縮不織布からなる脇押さえが更に取り付けられている前記(1)項〜(8)項のいずれかに記載の乳房カップを有する衣類。 【0025】上記本発明の好ましい態様とすることにより、ブラジャーのバック布に、それが身体の脇に当たる部分に圧縮ポリウレタンフォーム及び/またはノーバインダー圧縮不織布からなる脇押さえが更に取り付けられていることにより、身体の脇の肉をしっかりと押さえることができるので、前記乳房カップの作用効果と合わせてよりスレンダーな細身な感じを与える着痩せする補整機能をより効果的に付与する事ができるブラジャーを提供することができ好ましい。 【0026】 【発明の実施の形態】本発明の乳房カップを有する衣類の乳房カップは、乳房カップの(a)上側周辺近傍部分(a 1 )または上側周辺近傍部分の少なくとも主要部分をカバーし前中心側周辺近傍部分に至る部分(a 2 ) と、(b)脇上辺部からバージスライン最下点近傍にかけての脇側周辺近傍部分(b 1 )または脇上辺部からバージスライン最下点を通り前中心側に至る脇側周辺から下側周辺部分(b 2 )とを比較的圧縮率の小さい素材で構成し、その残余の部分であるトップを含むほぼ中間部分(c)を比較的圧縮率の大きい柔軟な素材で構成したものである。 【0027】以下、本発明の乳房カップを有する衣類に用いられる代表的な乳房カップを説説明するために、図1〜3に人体左側の乳房カップ(代表例として3/4カップタイプ)の正面図を示した。 【0028】乳房カップのトップとは乳房カップの膨らみの頂点部分を意味し、図1に示した乳房カップ1は、 前記で(a)部分として説明したもののうち上側周辺近傍部分(a 1 )12と、前記で(b)部分として説明したもののうち脇上辺部からバージスライン最下点3近傍にかけての脇側周辺近傍部分(b 1 )13とが比較的圧縮率の小さい素材で構成されており、その残余の部分であるトップ2を含むほぼ中間部分(c)14を比較的圧縮率の大きい柔軟な素材で構成されている例である。 1 5、16はこれらの素材の境界部である接ぎラインを示している。 なお、本発明では、ほぼ中間部分(c)の説明として、“トップを含む”と言う用語を用いているが、境界部である接ぎライン15または16がトップ2 の上を通っている場合も、本発明で言う“トップを含む”に該当する意味で用いている。 また、脇上辺部からバージスライン最下点3近傍にかけての脇側周辺近傍部分(b 1 )は厳密にバージスライン最下点で終わっている事は要求されず、バージスライン最下点3よりも少し前中心寄りになったり、脇側になっていてもよく、本発明の目的を達成出来る範囲で適宜ずれている事は何等差支えなく、その意味で「脇上辺部からバージスライン最下点『近傍』にかけて」と表現している。 これらの点は他の例に於ても同様である。 【0029】次に、図2に示した乳房カップは、本発明の乳房カップを有する衣類に用いられる別の態様の3/ 4カップタイプの乳房カップの正面図である。 図2に示した乳房カップ1は、前記で(a)部分として説明したもののうち上側周辺近傍部分の少なくとも主要部分をカバーし前中心側周辺近傍部分に至る部分(a 2 )12´ と、前記で(b)部分として説明したもののうち脇上辺部からバージスライン最下点3近傍にかけての脇側周辺近傍部分(b 1 )13´とが比較的圧縮率の小さい素材で構成されており、その残余の部分であるトップ2を含むほぼ中間部分(c)14´が比較的圧縮率の大きい柔軟な素材で構成されている例である。 15´、16´はこれらの素材の境界部である接ぎラインを示している。 【0030】次に図3に示した乳房カップは、本発明の乳房カップを有する衣類に用いられる更に別の態様の3 /4カップタイプの乳房カップの正面図である。 図3に示した乳房カップ1は、前記で(a)部分として説明したもののうち上側周辺近傍部分(a 1 )12´´と、前記で(b)部分として説明したもののうち脇上辺部からバージスライン最下点を通り前中心側に至る脇側周辺から下側周辺部分(b 2 )13´´とが比較的圧縮率の小さい素材で構成されており、その残余の部分であるトップ2を含むほぼ中間部分(c)14´´を比較的圧縮率の大きい柔軟な素材で構成されている例である。 15´ ´、16´´はこれらの素材の境界部である接ぎラインを示している。 【0031】上記のごとく本発明の乳房カップを有する衣類は、乳房カップの(a)上側周辺近傍部分(a 1 ) 12、12´´または上側周辺近傍部分の少なくとも主要部分をカバーし前中心側周辺近傍部分に至る部分(a 2 )12´と、(b)脇上辺部からバージスライン最下点近傍にかけての脇側周辺近傍部分(b 1 )13、13 ´または脇上辺部からバージスライン最下点を通り前中心側に至る脇側周辺から下側周辺部分(b 2 )13´´ とを比較的圧縮率の小さい素材で構成したので、バストの脇側の形をしっかりと押さえてシェイプアップし、その押さえによってはみ出した肉が前中心側上部にはみ出ることがなく、乳房の上側へのはみ出しも押さえ、乳房カップのトップ2を含む中間部分(c)14、14´または14´´を比較的圧縮率の大きい柔軟な素材で構成することによってバストを人体の前方にスッキリと押し出してバストの突出高さを高くし乳房のボリューム感を保ち且つまろやかな丸みを帯びさせると共に、脇部や上部に乳房の肉がはみ出さず、特に脇部がスレンダーなスッキリした細身な感じを与える補整機能を付与する事ができる。 【0032】図1〜3に示した本発明の乳房カップを有する衣類に用いられるこれら乳房カップの実例は本発明の理解を容易にするための例であって、乳房カップの具体的な形はその使用目的や、衣類の種類、フルカップ、 3/4カップ、2/3カップ、1/2カップなどのタイプによっても変ってくるので、本発明の乳房カップを有する衣類に用いられる乳房カップは図1〜3に示されたもののみに限定されるものではない。 また、図1〜3にはいずれも3枚接ぎで構成されている乳房カップを図示したが、(a)、(b),(c)に相当する部分のいずれかまたはそれぞれを更に2つ以上に分けて、例えば(a)の部分を2枚接ぎまたはそれ以上にするとか、 (b)の部分をを2枚接ぎまたはそれ以上にするとか, (c)に相当する部分を2枚接ぎまたはそれ以上にするとか、またはこれらのいずれかの組合せにするなど、本発明の作用効果を発現し得る限り接ぎ合わせの数は特に限定されるものではない。 【0033】本発明の乳房カップを有する衣類に用いられる乳房カップは、乳房カップのトップとバージスラインの最下点を結ぶ仮想直線4と、乳房カップのトップを通り前記仮想直線4と直角に交わる仮想直線5とで4つの部分に区分した時に、前中心側で下側の部分の面積の少なくとも1/3の部分が(c)部分によって占められていることが好ましいが、ここで言う「4つの部分に区分した時に、前中心側で下側の部分の面積」が容易に理解できるように、この説明をするための乳房カップの正面図を図4に示した。 【0034】図4に於て、乳房カップ1のトップである最も膨らみの大きい部分を2で示してある。 そしてバージスラインの最下点を3で示した。 この2と3を結ぶ仮想直線を4とし、乳房カップ1のトップ2を通り前記縦の仮想直線4と直角に交わる仮想直線を5とすると、前記仮想直線4と仮想直線5とで4つの部分に区分した時に、前中心側で下側の部分6の面積の少なくとも1/3 の部分が前述した(c)部分によって占められていることが、特に脇部がスレンダーなスッキリした細身な感じを与える補整機能を付与する事ができると共に、バストを形よく人体の前方に押し出してバストをより美しい形に補整する補整機能を付与する事ができ好ましい。 【0035】尚、この説明図は一例であって、前述したと同様に乳房カップは基本的概念はあるとしても具体的な形はその使用目的や、衣類の種類、フルカップ、3/ 4カップ、2/3カップ、1/2カップなどのタイプなど設計に応じて変ってくるので、トップ2の位置やバージスラインの最下点3の位置は乳房カップに応じて当然変わるものであり、従って仮想直線4、5の位置も具体的な個々の乳房カップに応じて決められるべきものである。 【0036】図5に本発明の乳房カップを有する衣類の1種であるブラジャーの一例の正面図を示した。 図5に示したブラジャーに於ては乳房カップ1として前述の図1に示したタイプの乳房カップを用いている。 従って図1と同一の部分は同一の符号を付して、詳細な説明は省略した。 【0037】尚、17はブラジャーのバック布であり、 バック布17が身体の脇に当たる部分に圧縮ポリウレタンフォーム及び/またはノーバインダー圧縮不織布からなる脇押さえ18が更に取り付けられている。 19はストラップ(肩紐)を示している。 【0038】図6は図5のブラジャーの別の態様であり、乳房カップを構成する前記(a)、(b)、(c) の接ぎラインの態様が図5の乳房カップのそれと比べて若干異なっている態様である。 すなわち図5に示された乳房カップ1の(b)部分として説明した脇上辺部からバージスライン最下点3近傍にかけての脇側周辺近傍部分(b 1 )13はその上側の先端部がカップの上辺縁まで到達している態様であるのに対し、図6のブラジャーに示された乳房カップ1は、乳房カップ1の(a)部分として説明した上側周辺近傍部分(a 1 )12の脇側の先端がカップ1の脇上辺縁まで到達している態様である点が図5に示したブラジャーと異なり、その他の点は図5に示した態様と実質的に同一である。 尚、図6において接ぎライン15aは前述の(a)の部分12と、 (b)の部分13及びトップを含むほぼ中間部分(c) 14との接ぎラインを示し、接ぎライン16aは(b) の部分13と、中間部分(c)14との接ぎラインを示している。 図6に示したタイプも図5に示したタイプもほぼ同様の前述した本発明の作用効果を達成することができる。 【0039】次に図7に更に表カップを有するブラジャーの一例の斜視図を示した。 尚、表カップの裏側の乳房カップ1は図5と同一の態様としたが、図6やあるいは図2、図3の態様としても良いことは容易に理解される。 図7に於て、21が表カップを示しており、この例では表カップは上カップ部分22と下カップ部分23とからなり、その少なくとも下カップ部分23が伸縮性の生地から構成されている。 少なくとも下カップ部分23 が伸縮性の生地から構成されていることにより、本発明の乳房カップを有する衣類の前記作用効果を妨げることなく、表カップ生地を設ける事ができ好ましい。 また、 この場合の伸縮性は少なくとも衣類(ブラジャー)縦方向の伸縮性を有することが好ましく、もちろん縦横両方向や更に斜め方向などの伸縮性を有する生地も極めて好適に用いる事ができる。 これら伸縮性を有する少なくとも下カップ部分の表カップ生地の具体例としては、特に限定するものではないが、例えば、ツーウェイトリコット、ベアーフライス、ストレッチレース、ポリウレタン繊維含有ラッセル編物(パワーネットと称されることがある。)、その他ポリウレタン繊維などの弾性繊維の使用された伸縮性の編物、織物などを使用することができる。 【0040】次に図8に本発明の乳房カップを有する衣類の1種であるボディスーツの一例の斜視図を示した。 このボディスーツに図示された乳房カップ1の態様は図1に示した乳房カップ1の態様と実質的に同様なタイプの乳房カップを有しているが、図2や図3または図6に示したようなタイプの乳房カップを備えたものであってもよいことは容易に理解される。 尚、一般にボディスーツに於ては乳房カップは表カップ布でカバーされているので、乳房カップの接ぎライン15、16は点線で示した。 表カップが設けられる場合には、前述した様に表カップ生地としては少なくとも下カップ部分の表カップ生地として伸縮性の生地が用いられている。 【0041】次に図9に本発明の乳房カップを有する衣類の1種である水着の一例の斜視図を示した。 この水着に図示された乳房カップ1の態様は図1に示した乳房カップ1の態様と実質的に同様なタイプの乳房カップを有しているが、図2や図3または図6に示したようなタイプの乳房カップを備えたものであってもよいことは容易に理解される。 尚、一般に水着に於ては乳房カップは水着の表布(少なくとも下カップ部分の表布の生地として伸縮性の生地が用いられている。)でカバーされているので乳房カップの接ぎライン15、16は点線で示した。 【0042】以上、本発明の乳房カップを有する衣類について、その具体例としてブラジャー、ボディスーツ、 水着を取り上げて説明したが、本発明はこの図示した実施の態様例で示したもののみに限定されるものではなく、例えばビスチエ、スリーインワン、ブラテディ、ブラキャミソールあるいはブラスリップなどの乳房カップを有するファンデーション類のみならず、他の各種の乳房カップを有する女性用の衣類についても同様に適用できることは容易に理解されるところである。 【0043】そして乳房カップの(a)上側周辺近傍部分(a 1 )または上側周辺近傍部分の少なくとも主要部分をカバーし前中心側周辺近傍部分に至る部分(a 2 ) と、(b)脇上辺部からバージスライン最下点近傍にかけての脇側周辺近傍部分(b 1 )または脇上辺部からバージスライン最下点を通り前中心側に至る脇側周辺から下側周辺部分(b 2 )とを比較的圧縮率の小さい素材で構成することにより、バストの脇側の形をしっかりと押さえてシェイプアップし、その押さえによってはみ出した肉が前中心側上部にはみ出ることがなく、乳房の上側へのはみ出しも押さえ、また、乳房カップのトップを含む中間部分(c)を比較的圧縮率の大きい柔軟な素材で構成することにより、バストを人体の前方にスッキリと押し出してバストの突出高さを高くし乳房のボリューム感を保ち且つまろやかな丸みを帯びさせると共に、脇部や上部に乳房の肉がはみ出さず、特に脇部がスレンダーなスッキリした細身な感じを与える補整機能を付与する事ができる。 【0044】(a)と(b)の素材の圧縮率は3〜10 %であり、(c)の素材の圧縮率は10〜25%であり、且つ(a)と(b)の素材の圧縮率のいずれよりも(c)の素材の圧縮率の方が大きいことが好ましい。 そして、より好ましい圧縮率の範囲は、(a)と(b)の素材の圧縮率が3.5〜8%であり、(c)の素材の圧縮率が14〜20%の範囲である。 【0045】また、特に限定するものではないが、更に(a)と(b)の素材の嵩高保持率が(c)の素材の嵩高保持率よりも大きい素材を用いることがより好ましい。 また更に(c)の素材の伸びが(a)と(b)の素材の伸びよりも伸びの大きな素材であることが好ましい。 【0046】ここで圧縮率、嵩高保持率は次の方法によって測定する事ができる。 縦横10cm×10cmの試験片を10枚重ねて、その上に縦横10cm×10cm(重さ50gf/100 cm 2 )のアルミニウム板をのせ、その状態で四辺において10枚分の試験片の厚みを測定し、一枚当たりの試験片の厚みの平均値(A)を算出する。 【0047】アルミニウム板の上に2000gfのおもりを30秒間載せ、前記の操作と同様にして圧縮された状態の一枚当たりの試験片の厚みの平均値(B)を算出する。 【0048】2000gfのおもりを除き、30秒放置した後、再び2000gfのおもりをアルミニウム板の上に24時間載せ、おもりを除いて1時間放置後の状態の一枚当たりの試験片の厚みの平均値(C)を前記の操作と同様にして算出する。 【0049】次式により、圧縮率(%)、嵩高保持率(%)を求める。 【0050】 【数1】圧縮率(%)={(A−B)/A}×100 【0051】 【数2】嵩高保持率(%)={(C−B)/(A− B)}×100 また、前記素材の伸びの比較は、(a)、(b)、 (c)の素材とも同じ条件で伸びを測定して比較すればよく、特に限定するものではないが、通常インストロン型定速伸長型引張試験機(例えば島津製作所製“オートグラフ”AG−500Dなど)を用いて一定加重を掛けた時の伸長率などを測定する方法で判定することができる。 尚、伸びの測定は、その素材の最もよく伸びる方向の伸長率の値で比較する。 【0052】(a)と(b)を構成する素材の具体例としては、例えば、フォームラバーや圧縮ポリウレタンフォームなどがあげられるが、特に圧縮ポリウレタンフォームが好ましい。 また(a)の素材としてはストレッチレースなども使用可能である。 圧縮ポリウレタンフォームの嵩密度は特に限定するものではないが0.075〜 0.300g/ccのものが好ましく用いられる。 またフォームラバーや圧縮ポリウレタンフォームの少なくとも片面に織物または編物が積層された圧縮ポリウレタンフォームやフォームラバーの積層物も好ましく用いられる。 積層される織物または編物としては、伸縮性であっても伸縮性がなくてもよい。 この様な織物または編物を積層する事により、肌触りを改良したり、見栄えをよくすることができ好ましい。 特に限定するものではないがトリコット編物、例えばナイロントリコット、ポリエステルトリコット、綿トリコット、綿とナイロンまたはポリエステルの混編トリコットなどが好適に用いられる。 これらのトリコット編物は伸縮性を有するが、伸びを比較的少なく抑えたい場合には、2枚以上重ねて積層してもよい。 【0053】尚、通常のポリウレタンフォームでは圧縮率が大きすぎるものが一般的であり、通常のポリウレタンフォームは好ましくない。 ただし、(a)と(b)を構成する素材は圧縮ポリウレタンフォームやフォームラバーのみに限定されるものではなく、着用感を低下させずに本発明の目的を達成出来るものであれば使用可能である。 【0054】また、(c)を構成する素材の具体例としては、例えば、ストレッチ性不織布、非圧縮ポリウレタンフォームまたはこれらのいずれかの少なくとも片面に伸縮性を有する織物または伸縮性を有する編物が積層された積層物などが用いられ、これらは、比較的圧縮率が大きい圧縮特性を有しており、また、柔軟性に優れているので、前述した(c)の持つべきバストを人体の前方にスッキリと押し出してバストの突出高さを高くし且つまろやかな丸みを帯びさせる作用効果を効果的に安定的に発揮でき、しかも、着用感を低下させず、着用感が非常に良好であり好ましい。 【0055】特に、ストレッチ性不織布や非圧縮ポリウレタンフォームなどを用いる場合には、これらのいずれかの少なくとも片面に伸縮性を有する織物または伸縮性を有する編物が積層された積層物を用いることが肌触りを改良したり、見栄えをよくすることができ好ましい。 特に限定するものではないが積層する伸縮性を有する織物または編物としてはトリコット編物、例えばナイロントリコット、ポリエステルトリコット、綿トリコット、 綿とナイロンまたはポリエステルの混編トリコットなどの伸縮性を有するものが好適に用いられる。 【0056】尚、前記の様な織物や編物を積層した積層物の圧縮率や嵩高保持率を求めるには、積層物の状態で前記の測定法に従って求めればよい。 また、図5〜9に示した本発明の乳房カップを有する衣類に於ては、乳房カップの(a)及び(b)に相当する12、13の部分の素材はトリコット編物がその両面に積層された圧縮ポリウレタンフォーム(圧縮率4.2%、嵩高保持率9 2.3%、厚さ3mm、圧縮ポリウレタンフォーム部分のみの嵩密度0.280g/cc)を用い、(c)に相当する14の部分の素材はトリコット編物がその両面に積層されたストレッチ性不織布(圧縮率16.5%、嵩高保持率41.3%、厚さ4mm、ストレッチ性不織布部分のみの目付145g/m 2 )を用いる組み合わせと、(a)及び(b)に相当する12、13の部分の素材がトリコット編物がその両面に積層された圧縮ポリウレタンフォーム(圧縮率7.0%、嵩高保持率52.2 %、厚さ3mm、圧縮ポリウレタンフォーム部分のみの嵩密度0.0784g/cc)を用い、(c)に相当する14の部分の素材はトリコット編物がその両面に積層されたストレッチ性不織布(圧縮率16.5%、嵩高保持率41.3%、厚さ4mm、ストレッチ性不織布部分のみの目付145g/m 2 )を用いる組み合わせの2通りをそれぞれについて採用したが、これのみに限定されるものではないことは前述した通りである。 【0057】 【発明の効果】本発明の乳房カップを有する衣類は、乳房カップの(a)上側周辺近傍部分(a 1 )または上側周辺近傍部分の少なくとも主要部分をカバーし前中心側周辺近傍部分に至る部分(a 2 )と、(b)脇上辺部からバージスライン最下点近傍にかけての脇側周辺近傍部分(b 1 )または脇上辺部からバージスライン最下点を通り前中心側に至る脇側周辺から下側周辺部分(b 2 ) とを比較的圧縮率の小さい素材で構成したので、バストの脇側の形をしっかりと押さえてシェイプアップし、その押さえによってはみ出した肉が前中心側上部にはみ出ることがなく、乳房の上側へのはみ出しも押さえ、乳房カップのトップを含む中間部分(c)を比較的圧縮率の大きい柔軟な素材で構成することによってバストを人体の前方にスッキリと押し出してバストの突出高さを高くし乳房のボリューム感を保ち且つまろやかな丸みを帯びさせると共に、脇部や上部に乳房の肉がはみ出さず、特に脇部がスレンダーなスッキリした細身な感じを与える補整機能を付与する事ができる。 【0058】(2)また、本発明の乳房カップを有する衣類に於て、(a)と(b)の素材の圧縮率が3〜10 %であり、(c)の素材の圧縮率が10〜25%であり、且つ(a)と(b)の素材の圧縮率のいずれよりも(c)の素材の圧縮率の方が大きい素材である本発明の好ましい態様とすることにより、前記(1)に記載の効果がより好適に発揮され、しかも着用感の低下のない乳房カップを有する衣類を提供する事ができ好ましい。 【0059】(3)また、本発明の乳房カップを有する衣類に於て、(a)と(b)の素材の圧縮率が3.5〜 8%であり、(c)の素材の圧縮率が14〜20%である本発明の好ましい態様とすることにより、前記(1) 項に記載の効果がより安定して発揮され、しかも着用感の優れた乳房カップを有する衣類を提供する事ができ好ましい。 【0060】(4)また、本発明の乳房カップを有する衣類に於て、更に乳房カップが表カップを有しており、 前記表カップ生地として少なくとも下カップ部分の表カップ生地が伸縮性の生地である本発明の好ましい態様とすることにより、表カップ生地を取り付けてより装飾性などを向上させる場合に於ても、表カップ生地の少なくとも下カップ部分の生地が伸縮性の生地であるので、乳房の丸みと高さを出し、かつバスト脇部がスレンダーな細身な感じを与える本発明の乳房カップを有する衣類の前記効果を妨げることなく、表カップ生地を設ける事ができ好ましい。 【0061】(5)また、本発明の乳房カップを有する衣類に於て、(a)と(b)の素材が圧縮ポリウレタンフォームまたは圧縮ポリウレタンフォームの少なくとも片面に織物または編物が積層された圧縮ポリウレタンフォームの積層物からなる本発明の好ましい態様とすることにより、圧縮ポリウレタンフォームは、安価でしかも容易に本発明で用いるに好ましい伸び特性や弾性回復率を満たすものが得られ、かつ、人体への当たりが柔らかく着用感の低下もなく特に好ましい。 【0062】(6)また、本発明の乳房カップを有する衣類に於て、(c)の素材がストレッチ性不織布、非圧縮ポリウレタンフォームからなる群から選ばれたいずれかである本発明の好ましい態様とすることにより、これらは、比較的弱い力で圧縮される圧縮特性を有しており、また、柔軟性に優れているので、(a)、(c)で押し出された乳房の肉をこの部分で吸収し、前述した(c)の持つべきバストを人体の前方にスッキリと押し出してバストの突出高さを高くし且つまろやかな丸みを帯びさせる作用効果を効果的に安定的に発揮でき、しかも着用感が非常に良好であり好ましい。 【0063】(7)また、本発明の乳房カップを有する衣類に於て、乳房カップを、乳房カップのトップとバージスラインの最下点を結ぶ仮想直線4と、乳房カップのトップを通り前記仮想直線4と直角に交わる仮想直線5 とで4つの部分に区分した時に、前中心側で下側の部分の面積の少なくとも1/3の部分が(c)部分によって占められている本発明の好ましい態様とすることにより、特に脇部がスレンダーなスッキリした細身な感じを与える補整機能を付与する事ができると共に、バストを形よく人体の前方に押し出してバストをより美しい形に補整する補整機能を付与する事ができ好ましい。 【0064】(8)また、本発明の乳房カップを有する衣類に於て、更に(c)の素材が、(a)及び(b)の素材に比べて伸びが大きい本発明の好ましい態様とすることにより、(a)及び(b)の部分で押し出された乳房の肉が、大きな反発力を受けずに(c)部分の伸びにより形よく吸収されるため、更に一段と脇部がスレンダーなスッキリした細身な感じを与える補整機能を付与する事ができると共に、バストを形よく人体の前方に押し出してバストをより美しい形に補整する補整機能を付与する事ができ好ましい。 【0065】(9)また、本発明の乳房カップを有する衣類に於て、乳房カップを有する衣類がブラジャーであって、前記ブラジャーはそのバック布が身体の脇に当たる部分に圧縮ポリウレタンフォーム及び/またはノーバインダー圧縮不織布からなる脇押さえが更に取り付けられている本発明の好ましい態様とすることにより、ブラジャーのバック布に、それが身体の脇に当たる部分に圧縮ポリウレタンフォーム及び/またはノーバインダー圧縮不織布からなる脇押さえが更に取り付けられていることにより、身体の脇の肉をしっかりと押さえることができるので、前記乳房カップの作用効果と合わせてよりスレンダーな細身な感じを与える着痩せする補整機能をより効果的に付与する事ができるブラジャーを提供することができ好ましい。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の乳房カップを有する衣類に用いられる左の乳房カップの一例の正面図。 【図2】本発明の乳房カップを有する衣類に用いられる左の乳房カップの別の一例の正面図。 【図3】本発明の乳房カップを有する衣類に用いられる左の乳房カップの更に別の一例の正面図。 【図4】本発明の乳房カップを有する衣類に用いられる乳房カップの用語の説明のための左の乳房カップの一例の正面図。 【図5】本発明の乳房カップを有する衣類の1種であるブラジャーの一例の正面図。 【図6】本発明の乳房カップを有する衣類の1種であるブラジャーの別の一例の正面図。 【図7】本発明の乳房カップを有する衣類の1種である表カップを有するブラジャーの一例の斜視図。 【図8】本発明の乳房カップを有する衣類の1種であるボディスーツの一例の斜視図。 【図9】本発明の乳房カップを有する衣類の1種である水着の一例の斜視図。 【符号の説明】 1 乳房カップ 2 乳房カップのトップ 3 バージスラインの最下点 4 仮想直線 5 仮想直線 6 乳房カップの前中心側で下側の部分 12、12´´ 乳房カップの上側周辺近傍部分(a 1 ) 12´ 上側周辺近傍部分の少なくとも主要部分をカバーし前中心側周辺近傍部分に至る部分(a 2 ) 13、13´ 乳房カップの脇上辺部からバージスライン最下点3近傍にかけての脇側周辺近傍部分(b 1 ) 13´´ 脇上辺部からバージスライン最下点を通り前中心側に至る脇側周辺から下側周辺部分(b 2 ) 14、14´、14´´ 乳房カップのトップを含むほぼ中間部分(c) 15、15´、15´´、15a 接ぎライン 16,16´、16´´、16a 接ぎライン 17 ブラジャーのバック布 18 脇押さえ 19 ストラップ(肩紐) 21 表カップ 22 表カップの上カップ部分 23 表カップの下カップ部分 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 尼口 賢 京都府京都市南区吉祥院中島町29番地 株 式会社ワコール内 |