【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ネクタイ、特に、容易に着用することのできる簡易ネクタイに関するものである。 【0002】 【従来技術及び課題】一般に、ネクタイは、一端が他端よりも幅広に形成されてなる帯状体であり、これをワイシャツの襟の下に巻き付けるとともに左右の襟の中央に逆三角形の結び目ができるように結び付けて着用される。 すなわち、着用時には、前記逆三角形の結び目の下方に、前記帯状体の一端側で且ネクタイの表面側となる幅広帯部が垂れ下がり、その後方に、他端側の細帯部が位置する態様となる。 尚、前記幅広帯部の下方端は、細帯部のそれよりも下方に位置させなければならない。 【0003】このように、ネクタイを装着するには、前記幅広帯部と前記細帯部との長さを調節しながら、前記逆三角形の結び目を格好よく形成しなければならないため、このネクタイを結ぶ作業はなかなか難しく且面倒であり、時間のかかる作業である。 特に、朝の忙しい時等に前記結び目がうまく作れず、同じ作業を何度も繰り返さなければならない場合には特にうっとうしい作業となる。 【0004】本発明は、このような問題点に鑑みて成されたものであり、容易に且迅速にネクタイを格好良く結ぶことができるようにすることを課題とする。 【0005】 【技術的手段】上記課題を解決するための本発明の技術的手段は、『幅広帯部(1) と細帯部(2) とを別体に構成し、前記細帯部(2) を、ループ状部(2a)とその下端に連続する単一帯部(2b)とから構成し、前記ループ状部(2a) の下端部から一定範囲を帯状半体部(20a)(20b)とし、そのそれぞれの一側縁にはファスナーの歯(31)を設け、ファスナーの滑り金具(32)を取付けた中央片(40)と、該中央片(40)から両斜め上方へ延び且前記帯状半体部(20a) (20b)がそれぞれ挿通する一対の挿通管(41)(42)とからなる全体として略Y字状の芯体(4) を設け、前記幅広帯部(1) は前記芯体(4) の前面に装着されると共にその上端部は通常のネクタイを締めた態様に巻き付けて固定され、帯状半体部(20a)(20b)相互が歯(31)(31)によって接合された時には、この接合部の幅が単一帯部(2b)の幅に一致するようにした』ことである。 【0006】 【作用】上記技術的手段は次のように作用する。 幅広帯部(1) と別体に構成されている細帯部(2) を構成するループ状部(2a)の帯状半体部(20a)(20b)にはファスナーの歯(31)が設けられ、ファスナーの滑り金具(32)によって接離自在となっている。 又、前記滑り金具(32)は芯体 (4) の中央片(40)に固定され、前記帯状半体部(20a)(20 b)はこの両側から斜め上方に延びる一対の挿通管(41)(4 2)に挿通されるから、細帯部(2) は、前記芯体(4) の上方では環状部を構成し、且その下方では帯状半体部(20 a)(20b)相互が接合されて帯状体を構成する態様となる。 【0007】従って、ファスナーの滑り金具(32)が取付けられた芯体(4) を細帯部(2) の長手方向に沿って上方へ移動させると、芯体(4) の上方に形成される前記環状部が小さくなり、且、芯体(4) の下方の帯状半体部(20 a)(20b)の帯状接合部が長くなる。 逆に、芯体(4) を細帯部(2) の長手方向に沿って下方へ移動させると、芯体 (4) の上方の環状部が大きくなり、且、芯体(4) の下方の帯状半体部(20a)(20b)の帯状接合部が短くなる。 【0008】芯体(4) は、上記したように、略Y字状体で、幅広帯部(1) はその表面が前方側となるように、その上端部を、前記挿通管(41)(42)の間に掛けるとともに、一方の挿通管(42)に巻き付け、そのまま、前記芯体 (4) の前面側をきつく包囲した後に他方の挿通管(41)に巻き付けて固定させると、幅広帯部(1) の上端には、前記芯体(4) の形状に倣って、通常のネクタイを締めたと同様の略逆三角形状の結び目が形成されることとなる。 これにより、前記略逆三角形の結び目の下方前方に幅広帯部(1) が垂れ下がり、その後方に細帯部(2) が位置する態様、すなわち、装着した状態のネクタイの態様が形成されることとなる。 そして、その上方には前記環状部が形成されることとなる。 【0009】従って、実際には、幅広帯部(1) の前記結び目(芯体(4) )を降下させて、前記環状部を、頭部が挿通できる程度に拡大させる。 そして、前記環状部に頭部を挿通させた後に、ワイシャツの襟の下方に前記環状部を入れ込む。 この状態では、襟の相当下方に、前記結び目が位置していることとなる。 そこで、前記結び目を上昇させて前記環状部を縮小させれば、ネクタイが締め上げられた状態が完成する。 このとき、芯体(4) は滑り金具を介して、歯(31)(31)のかみ合い部によって支持されているから、ファスナーを開く為の抵抗力が前記締め上げ状態にある結び目のゆるみ止め力として作用することととなり、簡単には前記締め上げ状態がゆるまない。 【0010】尚、前記芯体(4) に取付けた滑り金具(32) を帯状半体部(20a)(20b)の最上端に位置させた時のループ状部(3b)の残りの部分の合計長さはワイシャツの最小首回り長さよりも短く設定されていることは当然であり、どんなサイズの人にでも合わせることができる。 又、この時、芯体(4) に巻き付けた状態の幅広帯部(1) の長さは、前記細帯部(2) の下端から滑り金具(32)の上端までの長さよりも長く設定しておけば、幅広帯部(1) の下方に細帯部(2) がはみ出して見えてしまう不都合はない。 【0011】 【効果】幅広帯部(1) の結び目が形成される芯体(4) を上下させることにより、その上方に設けられている環状部の大きさを変えることができるので、前記結び目を降下させて環状部を拡大させ、頭部を挿通させるとともにワイシャツの襟の下に該環状部を入れ込んだ後に、前記結び目を上昇させるだけでネクタイの締め付けが完了するので、ネクタイを装着する作業が容易且迅速に行うことができる。 又、結び目の形と幅広帯部(1) 及び細帯部 (2) の長さの釣合いは予め格好良く決定されているので、何度もやり直さなければならない不都合は解消される。 【0012】ファスナーを開く為の抵抗力が前記締め上げ状態にある結び目のゆるみ止め力として作用するから、前記締め上げ状態が簡単にはゆるまない 【0013】 【実施例】次に、上記した本発明の実施例を図面に従って詳述する。 本発明実施例のネクタイは、上端が斜めに切断されている幅広帯部(1) と、細帯部(2) とからなるもので、前記細帯部(2) は、下端から一定範囲を帯状半体部(20a)(20b)としたループ状部(2a)とその下端に連続する単一帯部(2b)とから形成される。 前記幅広帯部(1) は、図1に示すように、出来上がり時に結び目の下方に1本の溝が生じる格好の良い結び具合が形成されるように、幅広帯部(1) の中央よりもやや上方域に、中央の両側の生地を摘んで縫い付けることにより縦長の溝(10)を形成しておく。 【0014】尚、この実施例では、前記幅広帯部(1) の長さは約65cm、細帯部(2) の長さは約58cmに設定されている。 一方、細帯部(2) は、図2に示すように、下端部近傍の単一帯部(2b)を除いてはループ状に構成され、前記単一帯部(2b)との連設部から一定範囲がファスナーの歯(31)を具備する帯状半体部(20a)(20b)となっている。 【0015】この細帯部(2) の前記帯状半体部(20a)(20 b)は前記単一帯部(2b)の上端から約27cmの範囲に亙って形成され、これら帯状半体部(20a)(20b)相互を接離自在とするため、前記歯(31)(31)相互を係脱させる為の滑り金具(32)を具備する芯体(4) が設けてある。 該芯体 (4) は、図2及び図3に示すように、後方開放の1つの箱体とした中央片(40)と、該中央片(40)の両側から斜め上方に連設されている一対の挿通管(41)(42)とからなる略Y字状体であり、前記中央片(40)内には前記ファスナーの滑り金具(32)が嵌合せしめられており、該挿通管(4 1)(42)には前記帯状半体部(20a)(20b) がそれぞれ挿通せしめられている。 前記挿通管(41)(42)は、芯体(4) の前後方向に細長い断面を有する管であるから、前記帯状半体部(20a)(20b)もこの形状に応じて立ち上げられる。 この時、ファスナーの歯(31)(31)が形成されている側が後方となるようにする。 【0016】細帯部(2) をこのような構成に仕上げるには、ループ状部(2a)の帯状半体部(20a)(20b)それぞれを、挿通管(41)(42)の上方から挿通させるとともにファスナーの歯(31)(31)を具備させ、該ファスナーの滑り金具(32)を前記芯体(4) の中央片(40)内にその後方開放部から嵌合させて固定させ、その後、帯状半体部(20a)(20 b)の下端に、前記単一帯部(2b)を縫い付ければ良い。 【0017】尚、この実施例では、図4のように、前記中央片(40)の側壁内面相互の間隔をファスナーの引き手 (33)の幅に略一致させると共に、前記側壁内面の対向位置に係止溝部(44)(44)を形成して、これら係止溝部(44) (44)内に前記引き手(33)を圧入させて、この中央片(40) に滑り金具(32)を固定している。 これにより、前記芯体 (4) の上方域ではループ状部(2a)の一部によって環状部 (20)を形成し、その下方では、帯状半体部(20a)(20b)が歯(31)(31)によって接合された帯状接合部(21)が形成される態様の、図2に示したような細帯部(2) が構成されることとなる。 【0018】そして、前記芯体(4) を細帯部(2) の長手方向に添って上下させることにより、ファスナーの開閉が可能となる。 芯体(4) を帯状半体部(20a)(20b)の上端部に達するまで上昇させると、芯体(4) の挿通管(41)(4 2)を挿通して該芯体(4) の上方で環状部(20)を構成するのは、ループ状部(2a)における歯(31)の非形成域のみとなり、これによる環状部(20)は最小となる。 尚、この最小の環状部(20)の大きさは、ワイシャツの最小サイズの首回りよりも小さくなるようにその寸法を設定している。 逆に、芯体(4) をファスナーの下端近傍にまで降下させると、歯(31)(31)が形成されている帯状半体部(20 a)(20b)も芯体(4) の挿通管(41)(42)を挿通し、ループ状部(2a)のほぼ全域が、該芯体(4) の上方で環状部(20) を構成することとなり、この時の環状部(20)は最大となる。 この時の環状部(20)の大きさは、頭部が十分入る大きさである。 【0019】次に、この芯体(4) に前記幅広帯部(1) の上端部近傍を巻き付ける。 それには、まず、幅広帯部 (1) に形成した前記溝部(10)が前記芯体(4) の中央片(4 0)の近傍で且表側に位置するように、前記溝部(10)より上方域を芯体(4) の表側から挿通管(41)(42)の間に掛ける。 そして、図5に示すように、前記幅広帯部(1) の上端部近傍を一方の挿通管(42)の裏側へ巻き付けるとともに、そのまま、芯体(4)の表側を包囲し、さらに、他方の挿通管(41)に巻き付けて、その端部を表から見えない所定箇所に縫い付けて固定する。 これにより、図6に示すような、芯体(4) の上に逆三角形の結び目(11)が形成され、その下方に幅広帯部(1) 及び細帯部(2) が位置し、さらには、その上方には、前記細帯部(2) のループ状部(2a)の一部又は全部からなる環状部(20)が形成されてなる簡易ネクタイが完成する。 【0020】尚、前記芯体(4) の挿通管(41)(42)の間には、完成状態の前記結び目(11)が中央で凹まないように、挿通管(41)と挿通管(42)との間に、補強突起(43)を突設させている。 この結び目(11)を降下させて、環状部 (20)を頭部が入る程度に拡大させ、適度な締め具合となるように前記結び目(11)を引上げれば、上記簡易ネクタイの装着が完了する。 この時には、結び目(11)の上方のループ状部(2a)は、襟の下となって見えないため、通常のネクタイと何ら変わらない装着状態に装着可能となる。 さらに、この装着状態では、滑り金具(32)によってファスナーの歯(31)(31)とのかみ合いをはずす為の抵抗力の反力が締付け力として作用しているから、前記締め付け状態が簡単に緩む心配がない。 【0021】また、ループ状部(2a)の帯状半体部(20a) (20b)の帯幅は、一側縁の歯(31)(31)相互をかみ合わせた接合状態で単一帯部(2b)と同じ幅となるように設定しているから、結び目(11)から下方に延びる細帯部(2) は一本の帯幅となり、この点でも通常のネクタイと何ら変わらない外観となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明実施例のネクタイを構成する幅広帯部 (1) の説明図。 【図2】本発明実施例のネクタイを構成する細帯部(2) の説明図。 【図3】芯体(4) の斜視図。 【図4】中央片(40)と引き手(33)との関係図 【図5】幅広帯部(1) の芯体(4) への巻き付け手順を示す説明図。 【図6】完成状態のネクタイの説明図。 【符号の説明】 (1) ・・・幅広帯部 (2) ・・・細帯部 (2a)・・・ループ状部 (2b)・・・単一帯部 (20a)(20b)・・・帯状半体部 (31)・・・歯 (32)・・・滑り金具 (4) ・・・芯体 (40)・・・中央片 (41)(42)・・・挿通管 (41)(42)・・・挿通管 |