【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、衣類用ライナー(li ner)、またはトリミング(trimming)のような着脱可能な付着物を衣類に付着するために使用するボタン穴に関し、さらに詳しくは、冬季用衣類に、毛皮からなるライナー、またはトリミングなどを付着するために使用するボタン穴に関する。 【0002】 【従来の技術】洗濯時等の便宜を図るために、特に、冬季用衣類である高級コートおよびパーカなどには、防寒用ライナーをその衣類の内側に着脱可能に付着したり、 または装飾用トリミングなどをその衣類のカラー、裾、 ケープ、フードの縁などに着脱可能に付着することがなされている。 【0003】このような着脱可能な付着手段としては、 通常、スライドファスナまたはボタンが使用されている。 しかしながら、スライドファスナを使用すると、特に毛皮からなるライナー、トリミングなどを衣類に付着する場合、毛皮の毛がその間に挟み込まれて損傷されやすいため、主にボタンが用いられている。 【0004】ボタンを用いる場合は、ライナーとトリミングのような付着物にボタン穴を形成して、これら付着物が付着される衣類上のボタン穴に対応する位置にボタンを付けて、前記ボタンをボタン穴に留めることができるようにする。 これと反対に付着物にボタンを付けて衣類にボタン穴を形成することもある。 【0005】従来においては、図9に示すように、付着物100の内側に付着された内皮102に適当な間隔をおいてボタン穴104を形成するとともに、これらボタン穴104の位置と対応する衣類106の位置に付着されたボタン108を、ボタン穴104に留めて付着物1 00を衣服106に付着している。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】このような付着方法においては、付着物100上のボタン穴104の位置と衣服106上のボタン108の位置が正確に対応しなければならない。 これらの位置がずれると、ライナー、トリミングのような付着物100が歪み、または曲がることになって衣類の形態に悪影響を及ぼすばかりではなく、 ひどい場合はこれらを付着することができなくなるという問題があった。 【0007】このような問題を防止するためには、衣類の製造過程において、ボタンおよびボタン穴の位置を設定することに相当な注意が要求され、生産性の低下、および不良率の増大を伴うことになる。 【0008】本発明は、上記問題にかんがみなされたもので、ボタンとの相互位置の設定が容易な、着脱可能な付着物を衣類に付着するためのボタン穴を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明によれば、衣類またはこの衣類に着脱可能な付着物のいずれか一方に付着されたボタンを留めるために、前記衣類または付着物のいずれか他方に設けられるボタン穴において、一連の、ボタンの個数よりも多い尾根を有する波形形状に屈曲させた柔軟な線材を、前記衣類または前記付着物のいずれか一方上のボタンの配列線に対応する前記衣類または付着物のいずれか他方上の線に沿って付着して、前記波形形状の尾根ごとに一つのボタン穴を形成し、前記ボタンが、ボタンの個数より多く形成された前記ボタン穴中の不特定な一つに留められることができるようになされていることを特徴とするボタン穴が提供される。 【0010】また、衣類またはこの衣類に着脱可能な付着物のいずれか一方に付着されたボタンを留めるために、前記衣類または付着物のいずれか他方に設けられるボタン穴において、一連の、ボタンの個数よりも多い屈曲部を有する波形形状に柔軟な線材を屈曲させた固定部材と、この固定部材の長手方向に沿ってこの固定部材に付着されて前記屈曲部ごとに一つのボタン穴を形成する柔軟なストリップ状の支持部材とを含み、前記ボタン一個に対し複数の前記ボタン穴が対応するようになされていることを特徴とするボタン穴が提供される。 【0011】さらに、衣類またはこの衣類に着脱可能な付着物のいずれか一方に付着されたボタンを留めるために、前記衣類または付着物のいずれか他方に設けられたボタン穴において、前記衣類または前記付着物のいずれか一方上のボタンの配列線に対応する前記衣類または付着物のいずれか他方上の線に沿ってボタンの個数より多い複数のボタン穴が配列されており、前記ボタン一個当り複数の前記ボタン穴が対応して、前記ボタンが、前記複数のボタン穴中の不特定な一つに留められることができるようになされていることを特徴とするボタン穴が提供される。 【0012】 【実施例】以下、添付した図面に基づいて本発明の好ましい実施例を具体的に説明するが、本発明は、この実施例によって何等制限されるものではない。 なお、図面において、同一の部材を表わすために同一の符号を使用した。 【0013】図1は、コート7と、このコート7の内側に付着された防寒用ライナー1を示している。 このライナー1は、図3に示すように毛皮3とその内側に裁縫された内皮5を有する。 図2(A)および図2(B)に示すようなボタン穴9を、図3に示すように、ライナー1 に裁縫により付着し、コート7の内側に付着されたボタン25がこのボタン穴9に留められる。 【0014】ボタン穴9は柔軟な線材を一連の、ボタンの個数より多い尾根、または屈曲部17を有する波形形状に屈曲させた固定部材13に、この固定部材13の長手方向に沿って柔軟なストリップ状の支持部材21を付着することにより形成され、屈曲部17ごとに開口部1 9が形成される。 図2に示したように、隣接した屈曲部17同士は接するほど近く形成するのが好ましい。 【0015】固定部材13は、たとえば、太い糸で作ることができる。 そして、支持部材21としては、たとえば、ストリップ状の布を使用することができるが、図2 (A)に示すように、太い糸を所定の幅を有するジグザグ型に屈曲させたものを使用してもよい。 図2(B) は、図2(A)に示した支持部材21の長さ方向に沿って支持部材21の幅の一部分にストリップ状の布26を重ねて取り付けた状態を示す。 【0016】このように形成されたボタン穴9がライナー1に付着されると、ボタン穴9中のどの屈曲部17にもボタンを留めることができる状態になる。 したがって、ボタン穴9を裁縫によりライナー1に付着するため、ライナー1上でボタン穴9の位置を選定するためには、コート7に付着されたボタンの配列線に対応するライナー1上の線に沿ってボタン穴9を位置させることで十分であり、個々のボタンの位置により屈曲部17ごとの位置を決定する必要はない。 【0017】他の実施例としては、支持部材21を省略して固定部材13のみをライナー1に付着してもよい。 この場合でも、各屈曲部17はボタンを留めるための開口部19を形成することができる。 しかしながら、支持部材21を用いる方が好ましい。 この支持部材21は、 装飾の目的以外にも柔軟な材料からなる固定部材13がライナー1に付着される前、または付着される過程で屈曲部17の間隔を維持する機能を発揮するからである。 【0018】図4(A)、図4(B)および図5は、コート7に付着されたボタン25を毛皮ライナー1に設けられたボタン穴9に留めることにより毛皮ライナー1をコート7に付着した場合を示す。 各ボタン25の位置が不正確な場合、すなわち対向する開口部19の位置と正確に一致しない場合であっても、ボタン穴の材料を柔軟性を有するものとすることにより開口部19の形状は変形し得るので、このような不正確性が補完される。 【0019】ボタンを、コート9またはライナー1のいずれか一方に付着することに応じて、ボタン穴9は、ライナー1またはコート9のいずれか他方に付着すればよい。 【0020】支持部材21の固定部材13への付着作業は別途に行なうことができるが、ボタン穴9をライナー1に裁縫により付着すると同時に行なうこともできる。 【0021】ボタン穴9のライナー1への付着のためには、図3に示すように、毛皮3と内皮5の間に前記ボタン穴9の一側の縁を挿入させて裁縫することができる。 また、ボタン穴9を、図6に示すように、毛皮トリミング22の底に付着された内皮5に露出されている状態で付着することもできる。 図7(A)は内皮がない毛皮トリミング22の底にボタン穴9を付着することを示し、 図7(B)は図7(A)の毛皮トリミング22の底にボタン穴9を裁縫により付着することを示す。 【0022】図6、図7(A)、図7(B)に示した充填材料23が挿入された毛皮トリミングは、コートの首部分周囲または腰部分等に使用される。 図8は、本発明のボタン穴を用いた着脱可能な毛皮トリミング33を付着した衣類31を示している。 【0023】 【発明の効果】本発明のボタン穴によって、ボタン穴とボタンとの相互位置が一致しない場合であっても、ライナー、トリミングのような付着物が歪み、または曲がることが防止されるので、衣類の形態を維持することができる。 また、ボタン穴とボタンとの相互位置を決定する作業が容易になるので、生産性が向上するとともに、不良品の発生を防ぐことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明のボタン穴を使用したライナーを衣類に付着した状態を示す説明図である。 【図2】本発明のボタン穴の一実施例を示す平面図で、 (A)は、支持部材として太い糸を用いた場合、(B) は、さらにその上にストリップ状の布を重ねて取り付けた場合をそれぞれ示す。 【図3】図2(A)の実施例のボタン穴を、毛皮ライナーに使用した場合を示す説明図である。 【図4】図3に示す毛皮ライナーを衣類に付着した状態を示す説明図で、(A)は断面図、(B)は平面図である。 【図5】図4(B)と同様に、毛皮ライナーを衣類に付着した状態を示し、ボタンとボタン穴の相互位置が正確に一致しない場合を示す断面図である。 【図6】内皮を有する毛皮トリミングに本発明のボタン穴を付着した状態を示す断面図である。 【図7】内皮がない毛皮トリミングに本発明のボタン穴を付着した状態を示す説明図で、(A)は断面図、 (B)は図2に示す本発明のボタン穴を裁縫により(A)に示す毛皮トリミングに付着した状態を示す平面図である。 【図8】本発明のボタン穴を用いた着脱可能な毛皮トリミングを付着した衣類を示す説明図である。 【図9】従来の技術によるボタン穴を示す断面図である。 【符号の説明】 1 毛皮ライナー 3 毛皮 5 内皮 7 コート 9 ボタン穴 13 固定部材 17 屈曲部 19 開口部 21 支持部材 22 毛皮トリミング 23 充填材料 25 ボタン 100 付着物 102 内皮 104 ボタン穴 106 衣類 108 ボタン |