【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、植物の発芽を促進する発芽促進材、及び植物種子の播種方法に関する。 【0002】 【従来の技術】植物種子の発芽には、水・温度・酸素濃度などの条件が整うことが必要である。 そのため圃場に播種した場合、土壌水分が少なく、或いは、播種後の雨量が少ないと発芽率が低くなり、また出芽揃いが悪かった。 このため、収量の低下が生じたり、或いは収穫がばらつくため作業の効率の低下が生じていた。 【0003】ここで灌水された水の有効利用を図るものとして、植物栽培用シート(特開昭58−819号公報)が知られている。 しかしこの植物栽培用シート自体は水分を持たず、このため播種後降水があるまでは発芽促進効果がなく、この降水までの間に一部種子は発芽してしまうため発芽揃いの改善効果が得られない。 あるいは、播種後灌水すればこの欠点は改善されるものの取扱性が悪く、かつ、広い圃場に応用した場合、大量のシートが必要となり実用的ではなかった。 また、このものは、植物の発芽や根の発育に必要な酸素をゲル中に含まないため、シートは薄くなければならず、その保水性は低かった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、取扱が容易で、手軽に発芽促進することができる発芽促進材を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明の発芽促進材は、 上記目的を達成するために、請求項1に記載のように、 水性ゲルからなる構成を有する。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明に係る種子の発芽促進材において、充分な効果を得るためには含水率は40%以上あることが必要で、80%以上であると非常に高い発芽促進効果が得られるので望ましい。 【0007】これら発芽促進材が播種された種子の近くに存在することにより、種子周囲の雰囲気の水分率が高くなり、種子が速やかに発芽するため、発芽揃いが改善され、また発芽率が高くなる。 なお、これら発芽促進材は種子の発芽後には、その根に水分を供給する効果をも有する。 そのため播種後はもちろん、発芽或いは出芽後当分灌水の必要がなく、作物の収率向上はもちろん、省力化も達成できる。 【0008】本発明の水性ゲルからなる発芽促進材において用いるゲル形成主剤としては、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、キサンタンガム、ローカンストビーンガム、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、ゼラチン、カラギーナン、及び、寒天等が挙げられる。 これらは単独で、或いは組み合わせて好適に用いることができる。 【0009】アルギン酸ナトリウムやペクチンを用いる場合、単体を水に溶解しただけではゲルが形成されず、 そのため、ゲルを形成するための硫酸カルシウムなどのカルシウム等の架橋イオンを含む架橋剤を添加する必要がある。 ここで、この架橋剤の働きを調整するものとして、トリポリ燐酸ナトリウム等のポリ燐酸ナトリウムを系に添加しても良い。 ゲル形成主剤として、カルボキシルメチルセルロースを用いる場合には、ミョウバン等の架橋剤を添加する必要がある。 【0010】なお、高温をゲル形成工程で必要とする原料を用いる場合、その高温処理によって無菌状態となるが、その後、ゲルが植物に害をなす、いわゆる悪玉菌の温床となることが多く、その結果、作物の病害が生じやすく、収量が低下するおそれが大きい。 そのため、ゲル形成剤としては、室温以下(最高でも40℃以下)で行うものを用いることが望ましい。 【0011】また、本発明の水性ゲルからなる発芽促進材において、保水剤を含有するならば、発芽までに長期間要する種子においても発芽が容易となり、また種子に充分な水分を供給することが可能となって、その結果、 高発芽率、高収穫となるので望ましい。 なお、保水剤としては、いわゆる高分子吸収剤(吸水体)が知られている。 【0012】ここで、本発明の水性ゲルからなる発芽促進材において、その植物の生長に寄与する肥料成分を含有するならば、施肥の効果も併せて得ることができるので望ましい。 なお、この肥料成分はその植物の生長に寄与するものならば、無機質肥料・有機質肥料を問わないが、発芽促進剤の水性ゲルを硬化させたり、崩壊させるおそれのあるものを除外する必要がある。 また、過酸化水素を原料に混合し、水性ゲルを富酸素化してもよい。 この場合、水性ゲル内に植物根が侵入した際にその根に水のみならず充分な酸素が供給され、根の成長が促進される利点がある。 【0013】なお、本発明の水性ゲルからなる発芽促進材が防腐剤を含有するものであるならば、水性ゲルの腐敗を防止でき、その結果、植物の生長を妨げる悪玉菌の増殖を防止して、植物の病気等を防ぐ等の効果を併せ持たせることができるので望ましい。 同様に殺虫剤等、いわゆる「農薬」を混合することも可能である。 【0014】本発明に係る発芽促進材は、例えば注型法で形成することができるため、シート状、ひも状、ブロック状、球状、円柱状、半円柱状その他、需要者が求める形にすることが可能である。 例えば図1(a)及び(b)中符号2aとして示すような三角柱形状の発芽促進材を、圃場1に設けられたV字状の溝1aに置き、その上に植物種子3を播種し、覆土しても良い(図中符号1bは覆土)(この場合、V字状の溝1aを一種の型として、そこに粘稠な水性ゲル形成性水溶液を流し込むことによって、発芽促進材2aを形成することも可能である)。 なお、このように比較的大きい発芽促進材の場合には、原料に過酸化水素を適宜添加して、ゲル内に進入し、成長する根に充分な酸素が供給されるようにすることが望ましい。 【0015】また、図2のように、球状の発芽促進材(図2中符号2b)を作成し、圃場1に設けられたV字状の溝に多数個納め、その上に種子3を播種、覆土することも可能である。 なお、この場合には、発芽促進材間の空間により、植物の根の成長に必要な空気(酸素)が供給されやすい利点があり、望ましい。 なお、これら種子の播種に関してはその種子に適した深さに播種することが必要である。 従って上記例における溝は、通常に播種する場合に比べて、深く掘ったものでなければならない。 【0016】 【実施例】 〔実施例〕 (発芽促進材の作製)水性有機ゲルを形成するものとしてアルギン酸ナトリウム、これを硬化させるものとして塩化カルシウムを用い、球状の発芽促進材を作製した。 すなわちアルギン酸ナトリウム3重量%溶液からなる液滴を、中空細管から塩化カルシウム10重量%溶液中に滴下して、球状の発芽促進材を7000個作製した。 これらは直径が9mmの球状で、重量は1個当たり0.4 g、水分率は97重量%であり、透明なものであった。 【0017】(圃場への播種)圃場に条間25cmになるように複数のV字型の溝を掘り、これに上記球状の発芽促進材6000個を納め、次いでこの発芽促進材の上に、水に4時間浸漬しその後一晩室温で乾燥したホウレンソウの種子400粒を播種し(図2参照)、覆土で覆った。 なお、播種深度は1.5cmで、株間は5cmとした。 このときの播種後14日目の発芽率を調べたところ91%であった。 【0018】〔比較例〕また、このとき同時に上記実施例と同様に(すなわち播種深度も1.5cmとし)、但し発芽促進材を用いずにホウレンソウの種子400粒を播種したときの14日後発芽率を調べたところ67%であった。 なお、この実施例及び比較例では灌水は行わなかった。 これら実施例及び比較例より本発明の効果は明らかである。 【0019】 【発明の効果】本発明の発芽促進材を併用することにより、灌水を行わなくとも高い発芽率と良好な発芽揃いが得られ、その結果出芽率も良好である。 従って、収量の向上はもちろん、発芽揃いが良好なことから収穫時期が揃うため、収穫作業の機械化、或いは省力化が容易である。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の発芽促進材の一例(三角柱形状のもの)の使用方法を示す図である。 (a)圃場に発芽促進材を置く状態を示した図である。 (b)播種及び覆土の状態を示す図である。 【図2】本発明の発芽促進材の一例(球形のもの)の使用方法を示す図である。 【符号の説明】 1 圃場 1a 溝 1b 覆土 2a 発芽促進材(三角柱形状のもの) 2b 発芽促進材(球状のもの) 3 種子 |