多段式浸漬型膜分離装置および膜分離方法

申请号 JP2014517928 申请日 2014-03-20 公开(公告)号 JP6056855B2 公开(公告)日 2017-01-11
申请人 東レ株式会社; 发明人 高畠 寛生; 千 智勲; 西尾 彩;
摘要
权利要求

シート状の分離膜を備えた複数の平膜エレメントが配列された膜ユニットが上下方向に複数配置されてなる膜モジュールと、 被処理を収容し、前記被処理水内に前記膜モジュールが浸漬されて設置される被処理水収容槽と、 前記膜モジュールの下方に設置される散気装置と、 を備えた多段式浸漬型膜分離装置であって、 最下段に設置される前記膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗が、該最下段に配置される膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗より高い、多段式浸漬型膜分離装置。最下段に配置される前記膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗が、他のいずれの膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗よりも10%以上高い請求項1に記載の多段式浸漬型膜分離装置。最下段に配置される前記膜ユニットに備えた平膜エレメントの枚数が、該最下段に配置される膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットに備えた平膜エレメントの枚数より少ない請求項1または2に記載の多段式浸漬型膜分離装置。前記膜ユニットのそれぞれが、前記膜ユニットと連通し、前記分離膜を透過した透過水を送水する透過水配管を備え、 前記膜モジュールの最下段に配置される前記膜ユニットと連通する透過水配管と、該最下段に配置される膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットと連通する透過水配管とが接続する請求項1〜3のいずれか1項に記載の多段式浸漬型膜分離装置。前記最下段に配置される膜ユニットにおける膜間差圧と、該最下段に配置される膜ユニットと連通する透過水配管と接続する透過水配管が連通している該最下段に配置される膜ユニットより上段のいずれかの膜ユニットにおける膜間差圧とが、略同一となるように、それぞれの透過水流量が調整される請求項4に記載の多段式浸漬型膜分離装置。前記膜ユニットのそれぞれが、前記膜ユニットと連通し、前記分離膜を透過した透過水を送水する透過水配管を備え、 前記膜モジュールの最下段に配置される前記膜ユニットと連通する前記透過水配管によって送水される透過水流量と、該膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットと連通する透過水配管によって送水される透過水流量とを、それぞれ独立して制御可能な流量制御手段を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の多段式浸漬型膜分離装置。シート状の分離膜を備えた複数の平膜エレメントが配列された膜ユニットが上下方向に複数配置されてなる膜モジュールと、被処理水を収容し、前記被処理水内に前記膜モジュールが浸漬されて設置される被処理水収容槽と、前記膜モジュールの下方に設置される散気装置と、を備え、最下段に配置される前記膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗が、該膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗より高い多段式浸漬型膜分離装置を用いる膜分離方法。前記膜モジュールの最下段に配置される前記膜ユニットの分離膜を透過した透過水の流量を、該膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットの分離膜を透過した透過水の流量よりも小さくなるように、かつ前記流量の差が10%以下になるように制御する、請求項7に記載の膜分離方法。

说明书全文

本発明は、下や工場排水の浄化に際し、水と汚泥との分離を、ろ過分離膜を使って行う多段式浸漬型膜分離装置と、それを用いた膜分離方法に関する。

下水や工場排水の浄化手段としては、排水中の生物に酵素を与える方法や、活性汚泥を水に混合し、その後分離する方法(膜分離活性汚泥(Membrane BioReactor:MBR)法)等が知られている。多数の細孔を有した分離膜で活性汚泥を固液分離する膜分離活性汚泥法では、分離膜表面に活性汚泥成分が蓄積して分離膜が閉塞してしまう現象(ファウリング)を抑制するため、分離膜の鉛直下方部からの曝気によって生起される気液混合流によって、分離膜表面を洗浄しながら活性汚泥をろ過する。このような膜分離活性汚泥法における膜分離装置としては、例えば、複数の膜ケース(膜ユニット)を上下方向に多段に積層した、多段式膜分離装置が提案されている(特許文献1)。

この上下段の膜ユニットのろ過性能に差があり、下段にある膜ユニットの閉塞が早いことが知られている。これは、MBR法を用いた多段式膜分離装置において、活性汚泥は曝気により下段から上段に供給されるため、下段の膜ユニットでのろ過により、水分だけが汚泥から除去され、上段へ行くほど汚泥濃度が高くなり、ろ過抵抗が大きくなるためであると考えられる。そこで、ろ過抵抗が大きくなった上段では膜ユニットの閉塞を引き起こすことがあるため、長期間安定して装置の運転を行うことを目的として、上段と下段との間に開口部を設けて汚泥が入るようにし、当該上段の膜ユニットの閉塞を防止する方法が開示されている(特許文献2)。

また、MBRでは最下部から曝気をした際、曝気をしていない膜ユニット外部の汚泥を巻き込んで気液混合流が発生する。その際、膜ユニット下部では、膜ユニット外部から内部に汚泥が入り込むため、気液混合流が中央に偏る傾向がある。そうすると、最下段の膜ユニットでは、中央部の膜表面のみ気液混合流との接触により洗浄されるため、気液混合流が接触しない膜はすぐに細孔閉塞が進行し、実質的に利用できる膜面積が限定されるため、最下段の膜ユニットの方が上段の膜ユニットと比較して細孔の閉塞が早いとも考えられる。 また、降雨などにより、一時的な被処理水の流入量が増加した場合には、MBR装置におけるろ過流束を増加させる方法や予備のMBR装置を設けるといった方法が考えられる。

日本国特開2000−157848号公報

日本国特許第4107819号公報

しかしながら、被処理水の流量が一時的に増加した場合への対応を目的とした多段式浸漬型膜分離装置として、従来のようにMBR装置におけるろ過流束を上げると膜閉塞が進行し、特に下段の膜ユニットの閉塞が進行するためにろ過ができなくなる。また、予備のMBR装置を設けると装置全体が大きくなる。 また、下段の膜ユニットから上段の膜ユニットに移行する汚泥流れが非常に速いため、特許文献2の方法では上下段の膜ろ過性能差を解消するには効果が不十分であり、最下段の膜ユニットの性能低下を抑制できない場合が多いという問題があった。 そこで、本発明では下段ユニットの膜閉塞が進行したとしても、装置全体におけるろ過流束を一時的に高くでき、また膜分離装置全体として効率的な運転を可能とする多段式浸漬型膜分離装置を提供することを目的とする。

上記事情に鑑みて鋭意研鑽を積んだ結果、本発明者らは、多段式浸漬型膜分離装置において、ろ過抵抗または純水透水抵抗の異なる膜ユニットを組み合わせて膜モジュールを構成することにより、装置全体におけるろ過流束を一時的に高くできることを見出し、本発明を完成するに至った。

すなわち、本発明は、以下の<1>〜<8>に関するものである。 <1>シート状の分離膜を備えた複数の平膜エレメントが配列された膜ユニットが上下方向に複数配置されてなる膜モジュールと、 被処理水を収容し、前記被処理水内に前記膜モジュールが浸漬されて設置される被処理水収容槽と、 前記膜モジュールの下方に設置される散気装置と、 を備えた多段式浸漬型膜分離装置であって、 最下段に設置される前記膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗が、該最下段に配置される膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗より高い、多段式浸漬型膜分離装置。 <2>最下段に配置される前記膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗が、他のいずれの膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗よりも10%以上高い上記<1>に記載の多段式浸漬型膜分離装置。 <3>最下段に配置される前記膜ユニットに備えた平膜エレメントの枚数が、該最下段に配置される膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットに備えた平膜エレメントの枚数より少ない上記<1>または<2>に記載の多段式浸漬型膜分離装置。 <4>前記膜ユニットのそれぞれが、前記膜ユニットと連通し、前記分離膜を透過した透過水を送水する透過水配管を備え、 前記膜モジュールの最下段に配置される前記膜ユニットと連通する透過水配管と、該最下段に配置される膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットと連通する透過水配管とが接続する上記<1>〜<3>のいずれかに記載の多段式浸漬型膜分離装置。 <5>前記最下段に配置される膜ユニットにおける膜間差圧と、該最下段に配置される膜ユニットと連通する透過水配管と接続する透過水配管が連通している該最下段に配置される膜ユニットより上段のいずれかの膜ユニットにおける膜間差圧とが、略同一となるように、それぞれの透過水流量が調整される上記<4>に記載の多段式浸漬型膜分離装置。 <6>前記膜ユニットのそれぞれが、前記膜ユニットと連通し、前記分離膜を透過した透過水を送水する透過水配管を備え、 前記膜モジュールの最下段に配置される前記膜ユニットと連通する前記透過水配管によって送水される透過水流量と、該膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットと連通する透過水配管によって送水される透過水流量とを、それぞれ独立して制御可能な流量制御手段を備える上記<1>〜<5>のいずれかに記載の多段式浸漬型膜分離装置。 <7>シート状の分離膜を備えた複数の平膜エレメントが配列された膜ユニットが上下方向に複数配置されてなる膜モジュールと、被処理水を収容し、前記被処理水内に前記膜モジュールが浸漬されて設置される被処理水収容槽と、前記膜モジュールの下方に設置される散気装置と、を備え、最下段に配置される前記膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗が、該膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗より高い多段式浸漬型膜分離装置を用いる膜分離方法。 <8>前記膜モジュールの最下段に配置される前記膜ユニットの分離膜を透過した透過水の流量を、該膜ユニットより上段に配置されるいずれかの膜ユニットの分離膜を透過した透過水の流量よりも小さくなるように、かつ前記流量の差が10%以下になるように制御する、上記<7>に記載の膜分離方法。

本発明によれば、汚泥に対するろ過抵抗または純水透水抵抗が相対的に高い膜ユニットを膜モジュールの最下段に配置することで、より高いろ過流束が得られるようになる。当該膜ユニットの効果的な配置により、一時的にろ過流束が高い状態でも固液分離を効果的に行うことができ、降雨などによる被処理水流量の一時的な増加など、短期的な流量増加に対応することができる。また、膜分離装置全体として効率良く膜を利用し、膜ろ過抵抗の上昇速度を抑制し、薬品洗浄頻度を低減することができる。

図1は本発明の実施形態における多段式浸漬型膜分離装置を示す斜視図である。

図2は本発明の実施形態における多段式浸漬型膜分離装置を示す模式図である。

図3は膜ユニット内で隣接する2枚の平膜エレメントを示す斜視図である。

図4は膜透過性抵抗測定装置の模式図である。

図5は実施例1のろ過差圧の変化を示した運転試験の結果を表すグラフである。

図6は実施例2のろ過差圧の変化を示した運転試験の結果を表すグラフである。

図7は比較例1のろ過差圧の変化を示した運転試験の結果を表すグラフである。

図8は比較例2のろ過差圧の変化を示した運転試験の結果を表すグラフである。

以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。

本発明に係る多段式浸漬型膜分離装置(以下「本発明の装置」とも記載する。)について、図1〜図2に、膜ユニットを2つ備える多段式浸漬型膜分離装置を例示して本発明について説明する。 図1に示す多段式浸漬型膜分離装置1は、膜ユニット11A,11Bが上下方向に2つ配置されてなる膜モジュール12を有する。図2に示すように、膜モジュール12は被処理水収容槽13内の被処理水中に浸漬される。 各膜ユニット内には、図3に示すようにシート状の分離膜を備えた複数の平膜エレメント101を膜面が平行となるように一定間隙をおいて配列されている。この平膜エレメントは、シート状の分離膜を備えたエレメントであり、例えば、樹脂や金属等で形成されたフレームの表裏両面に、シート状の分離膜を配設し、分離膜とフレームで囲まれた内部空間に連通する透過水出口102をフレーム上部に設けた構造の平膜エレメント101が用いられる。この平膜エレメント101の隣り合う2枚を図3(概略斜視図)に示す。隣り合う平膜エレメント101の間には一定の間隔(通常6〜10mm)が空けられていて、この膜間空間Z内を、被処理水の上昇流、特に後述する散気装置18から発生する気泡と被処理水との混合液の上昇流が流れる。

膜ユニット11A,11Bは、分離膜を透過した透過水を排出するための透過水配管14A,14Bとそれぞれ連通している。透過水は膜ユニット内の各平膜エレメントの透過水出口102から透過水配管を通じて送水される。透過水配管14A,14Bには、それぞれ、透過水流量を測定する流量計17A,17Bが設置され、さらに透過水配管14A,14Bが連通した透過水配管14Cに流量計17Cが設置されている。ただし、流量計の数は減らしてもよく、その場合は前記3つの内流量計17A,17Bのみを設置し、上段および下段膜ユニットのそれぞれのろ過流量を測定することが好ましい。前記流量計17A,17Bのみを設置した際には、制御装置を設け、前記制御装置を用いて前記二つの流量計から得られたそれぞれの流量を合算し、合算した流量を用いて吸引ポンプを制御することが可能である。透過水は、透過水配管14A,14Bからそれぞれ排出してもよいが、それぞれの配管および吸引ポンプが必要となる。よって図2に示すように、透過水配管14A,14Bを最終的に連通させて透過水を系外に排出することが好ましい。これは、膜ろ過の際に発生する圧を上段と下段の膜ユニットそれぞれがバランス良く分散することができるからである。また、図2の様に最終的に連通させた場合にはポンプの設置数を減少できるため、ポンプの設置場所が少なくなり、ポンプのメンテナンスも簡単である点からより好ましい。圧力計16は、透過水配管14A,14Bにそれぞれ設置してもよいが、透過水配管が連通されており、上段と下段の膜ユニットの圧力差は生じないことから、図2に示すように透過水配管14A,14Bが連通された後の透過水配管14Cに設置すれば足りる。

ろ過の駆動力としては、例えば、ろ過ポンプ19を作動させて透過水配管内を減圧することにより、被処理水収容槽内の被処理水を分離膜によってろ過する。ろ液は、透過水配管を介して系外に取り出される。なお、透過水配管内を減圧するためにろ過ポンプを設けずに、被処理水収容槽13と透過水収容槽(図示せず)との水位差を利用することが、ろ過ポンプの作動に必要なエネルギーを使用せずろ過運転ができることから好ましく、この際は、透過水配管14A,14Bを連通した後の透過水配管14Cに流量調整弁15を設け、流量計17A,17B,及び17Cの少なくとも一つに連動させ、設定した流量に合わせた膜ろ過運転ができるようにすることが好ましい。

被処理水収容槽13内の膜モジュール12の下方には、気泡を発生させるための散気装置18が設置される。散気装置18から噴出される空気によって、被処理水収容槽13内に気泡が発生する。噴出した気泡によるエアリフト作用によって生起する気液混合上昇流や気泡が、最下段の膜ユニットに流入し、さらに、槽内の混合液を適宜新たに伴いながら、上方に位置する膜ユニットに流入する。これにより分離膜の膜面が洗浄され、膜間閉塞を防止することができ、さらに、分離膜面に付着・堆積し易いケーキ層の生成を抑制することができる。散気装置18は必要に応じて複数設置することができる。

本発明の装置では、複数配置する膜ユニットのうち、汚泥に対するろ過抵抗または純水透水抵抗が最も高い膜ユニットを膜モジュールの最下段に配置する。すなわち、図1〜2に示す実施形態においては膜ユニット11Bの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗が最も高い。 実際に膜分離装置を運転する場合において、膜ユニットを上下方向に多段に配置した膜モジュールでは、下段の膜ユニットより上段の膜ユニットの方が比較的閉塞しにくい。この主要因の一つは、膜ユニット下部では、膜ユニット外部から内部に汚泥が入り込んで気液混合流が中央に偏り、最下段の膜ユニットでは中央部の膜表面のみ気液混合流との接触により洗浄されるため、気液混合流が接触しない膜はすぐに細孔閉塞が進行し、実質的に利用できる膜面積が限定されることがある。

即ち、実質的に利用可能な膜面積が限定されている最下段の膜ユニットに汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗が高い膜ユニットを配置し、膜面積が有効に活用できる最下段より上方の膜ユニットに汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗が低い膜ユニットを配置することで、膜分離装置全体として膜を有効活用し、より長寿命化を実現できると同時に、被処理水の流量が一時的に増加しても、急速な膜閉塞の進行を抑制できる。

ここで、膜ユニットの汚泥ろ過抵抗とは、汚泥の分離膜に対する透過のし易さ、言い換えれば、ろ過による膜の詰まり(閉塞)具合を示す値であり、具体的には膜差圧(一次側圧力と二次側圧力との差)を透過水流量で除した値で求められる。 また、MBR法におけるろ過性は、汚泥を用いた分離膜の汚泥ろ過抵抗の測定を行うことで知ることができる。分離膜の汚泥ろ過抵抗は、膜ユニットの汚泥ろ過抵抗を基本として考え、新品又は薬液洗浄直後の膜ユニットに対して、同一汚泥に同一のろ過流束でろ過した場合に測定される汚泥ろ過抵抗をいう。しかし、実際の現場での評価が困難な場合などには、膜ユニットから一つの平膜エレメントを選定し、該選定した平膜エレメントの分離膜に対しての汚泥ろ過抵抗値を代表値として使用してもよい。

汚泥とはその構成成分によって、分離膜に対する透過性は一様ではないため、複数の分離膜及び分離膜の集合体である膜ユニットに対するろ過抵抗の高低の順序は、汚泥の種類によって入れ替わることもあり得る。従って、実際に浸漬型膜分離装置を設置する際には、設置場所における汚泥に対して、各々の分離膜に対するろ過抵抗を測定し、当該ろ過抵抗の値に基づいて、平膜エレメントとして備える分離膜を選択し、膜ユニットを適宜組み立てて膜モジュールとすることが好ましい。 なお、汚泥に対するろ過抵抗が高いとは、汚泥の透過性が低いことと同義であり、ろ過抵抗が低いとは、汚泥の透過性が高いことと同義である。

本発明において、ユニットの汚泥ろ過抵抗は、下記に記載される方法にて測定される。大きくは、(A)直接ユニット全体の汚泥ろ過抵抗を求める方法と、(B)ユニットに含まれる代表膜の膜汚泥ろ過抵抗を測定し、ユニットに含まれる膜面積で除すことでユニットの汚泥ろ過抵抗を間接的に求める方法の二つである。ユニット全体の汚泥ろ過抵抗を正確に求めるという視点から上記(A)の方法が好ましいが、少量の汚泥で簡便に測定可能という視点から上記(B)の方法でも構わない。

上記(A)の方法は次の通りである。 本発明では、運転初期の汚泥ろ過抵抗が重要であるため、ユニット汚泥ろ過抵抗を膜ユニット使用開始直後の膜差圧を透過水量で除した値で求めることができる。使用後の場合は、膜目詰まりを可能な限り解消した後に膜差圧と透過水量を測定することで、同様にユニット汚泥ろ過抵抗を求めることができる。ここで、膜目詰まりを解消する方法としては、膜ユニットが浸漬可能な量の薬液水溶液を収容した槽(被処理液収容槽13とは別の槽としてもよく、被処理液収容槽13内に収容されている汚泥を取り出した後に薬液水溶液を加えてもよい)に、評価対象の膜ユニットを浸漬させることが好ましい。ここで、浸漬時間は好ましくは2時間以上、さらに好ましくは4時間以上、最も好ましくは10時間以上である。薬液水溶液は膜目詰まりの原因物質の組成によって随時適切に判断すれば良く、原因物質が有機物の場合は4000mg/l以上の次亜塩素酸水溶液やpH12以上の水酸化ナトリウム水溶液が、原因物質が無機物の場合には0.1%以上のシュウ酸水溶液や2%以上のクエン酸水溶液などが好適に利用される。また、膜エレメント間に強固な汚泥ケークが形成されている場合もあるので、そのような時には、上記のような薬液浸漬の前に汚泥ケークを物理的に除去することや、薬液浸漬中に膜ユニット下方部から曝気して薬液に流れを作ることなどが好ましい。

上記(B)の方法は次の通りである。 まず、評価対象とする膜ユニットから、代表となる膜を切り出す。切り出す膜は、膜ユニット内の複数の膜エレメントからランダムに抽出された膜エレメントに対し、ランダムに選択された箇所の分離膜を切り出す。この際、可能ならできるだけ多くの代表膜を切り出して評価することが好ましいが、少なくとも3以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上の代表膜を切り出し、後述の方法で膜汚泥ろ過抵抗を測定した後、その平均値を膜汚泥ろ過抵抗とする。そして、得られた膜汚泥ろ過抵抗をユニットに含まれる膜面積で除すことでユニットの汚泥ろ過抵抗を算出する。

切り出した代表膜の膜汚泥ろ過抵抗評価方法は次の通りである。 まず、膜のコンディショニングとして、使用膜の場合は膜の薬品洗浄を実施し、未使用膜の場合は分離膜をエタノールに15分浸漬した後に水中に2時間以上浸漬し純水でリンスする。ここで薬品洗浄は、前述の膜ユニットの浸漬洗浄と同様、薬液水溶液に浸漬させて実施するが、浸漬時間は好ましくは2時間以上、さらに好ましくは4時間以上、最も好ましくは10時間以上である。薬液水溶液は膜目詰まりの原因物質の組成によって随時適切に判断すればよく、原因物質が有機物の場合は4000mg/l以上の次亜塩素酸水溶液やpH12以上の水酸化ナトリウム水溶液が、原因物質が無機物の場合は0.1%以上のシュウ酸水溶液や2%以上のクエン酸水溶液などが好適に利用される。

上記のようにコンディショニングを行なった膜を用いて、次のように汚泥基礎ろ過実験を行って膜汚泥ろ過抵抗を測定する。測定に用いる汚泥は、膜ユニットが浸漬されていたもしくは浸漬する汚泥を採取し、冷蔵保存で1週間以内に利用することが好ましいが、汚泥採取が困難な場合は、他の下水処理場などの活性汚泥を代替として用いてもよい。

膜透過性抵抗測定装置(汚泥基礎ろ過実験装置)は図4のように窒素ガスによりリザーバータンクを加圧し、攪拌式セル(ミリポア(株)製Amicon 8010、有効膜面積4.1cm2)から透過する単位時間ごとの透過水量を電子天秤により監視する構成である(Chia−Chi Ho,A.L.Zydney,Journal of Colloid and Interface Science,2002.232 P389)。電子天秤はコンピューターと接続し、重量の経時変化から後に膜透過抵抗を計算する。膜表面は攪拌式セル付属のマグネチックスターラーの回転により膜面流束を与え、攪拌式セルの攪拌速度は常に600rpmに調節し、評価温度は25℃、評価圧力は20kPaとした。評価は以下の順に行う。尚、水温については評価液体の粘性で換算して膜抵抗を算出してもよい。

ここで各膜抵抗Rは下記式により求められる。 R=(P×t×S)/L R:膜抵抗(m2×Pa×s/m3) P:評価圧力(Pa) t:透過時間(s) L:透過水量(m3) S:膜面積(m2) 汚泥ろ過を継続するのに伴い膜表面に汚泥が付着していくため、膜抵抗Rは経時的に変化し上昇傾向にあるが、攪拌による剥離とのバランスから膜抵抗が一定値となる期間がある。この一定値となる膜抵抗値を、膜汚泥ろ過抵抗とする。

膜ユニットの純水透水抵抗は、前記の汚泥ろ過抵抗を測定する方法において、被ろ過液を汚泥から純水もしくは逆浸透膜透過水に変更することで評価する。

本発明の装置において、具体的には、最下段の膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗は、他のいずれの膜ユニットすなわち最下段の膜ユニットよりも上方に位置する全ての膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗に対しても、10%以上高いことが好ましく、15%以上高いことがさらに好ましく、30%以上高いことが特に好ましく、50%以上高いことが最も好ましい。最下段の膜ユニットの汚泥ろ過抵抗または純水透水抵抗を上記範囲にすることで、膜面積がより有効に利用できる上段の膜ユニットからより多くの処理水が得られるため、バランス良く膜を利用することによって長寿命化を図れると同時に、被処理水流量の一時的な増加にも、単位膜面積あたりのろ過流量を高く設定することで対応できる。

上記の膜ユニットの順序を実現するために、膜エレメント枚数を全てのユニットに対して同数とし、最下段の膜ユニットには膜汚泥ろ過抵抗や純水透水抵抗が他のユニットより大きい膜を設置する方法や、全てのユニットに膜汚泥ろ過抵抗や純水透水抵抗が同程度の膜を用い、最下段の膜ユニットの膜エレメント枚数を減少させる方法などが好適に用いられる。

なお、分離膜は一般に使われる多孔質膜であればよく、例えばポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などで作られた分離膜が挙げられる。中でもポリフッ化ビニリデン系樹脂で作られた分離膜が好ましく用いられる。分離膜の厚みは0.01mm〜1mmの範囲であればよく、0.1mm〜0.7mmが好ましい。

平膜エレメントは分離膜と取水部分を含み、必要に応じて支持板、流路材などを含んでいてもよい。当該分離膜はシート状であれば特に制限されず、必ず分離膜を通って平膜エレメントの中へ水が入る構造であればよい。また2枚の分離膜の間に支持板を設け、分離膜を平たい形に維持してもよい。また、2枚の分離膜の間、もしくは分離膜と支持板の間に流路材を設け、分離膜を平たい形に維持しながら、分離膜を通った処理水が取水部分に流れやすい構造にしてもよい。また平膜エレメントの大きさは300mm×300mm〜2,000mm×2,000mmであればよく、500mm×1,000mm〜500mm×1,500mmが好ましい。

膜モジュールは2以上の膜ユニットを含んでいればよく、他にそれぞれの膜ユニットに曝気装置を備えていてもよいが、1つの膜モジュールに1つの曝気装置を備えていることが好ましい。複数の膜ユニットは上下方向に積層しており、膜ユニットは膜モジュールひとつ当たり、2〜3個含んでいることが好ましい。

また、膜ユニット中の分離膜を透過した透過水を送水する透過水配管は、被処理水、処理水及び薬品洗浄液に対して安定なものであれば特に制限されず、プラスチック製や金属製の配管等が例示される。特に浸漬が容易である点から、金属製が好ましい。 透過水配管の態様としては、膜ユニット一つにつき、一つの透過水配管が連通していることが設置や維持管理の点から好ましい。

さらにまた、図2では2つの膜ユニットが配置された膜モジュールを有する装置を示したが、3以上の膜ユニットを配置することもできる。この場合、膜モジュールの最下段に位置する膜ユニットに連通している透過水配管と、上方に位置する1以上の透過水配管とが連結していることが好ましい。流量の調整のためにポンプを設置する場合、透過水配管の数と同じだけのポンプを設置してもよいが、透過水配管が連結していると、その分必要なポンプの数を減らすことができる。ろ過抵抗は膜ユニットごとに異なるので、ひとつのポンプで複数の膜ユニット及びそれに連通している透過水配管内の透過水を吸引しても、実際の吸引圧および流束は膜ユニットのろ過抵抗によって異なり、それぞれの膜ユニットに合った流量に調整することができる。

本装置はさらに、連通している透過水配管によって送液される透過水流量を制御する流量制御手段を備えることが好ましい。流量制御手段としては、具体的にはろ過ポンプ、流量調整弁などが挙げられるが、特に消費エネルギー削減の点から水位差によるろ過運転を行い、流量調整弁を用いて流量を調整することが好ましい。 当該流量制御手段は、前記膜モジュールの最下段に位置する膜ユニットに連通している透過水配管に備えることが好ましく、さらに、他の膜ユニットすなわち、上方に位置する1以上の膜ユニットに連通している透過水配管にも、備えることが好ましい。

また、膜モジュールの最下段に配置された膜ユニットと連通する透過水配管と、その上方に位置する膜ユニットと連通する透過水配管とに、それぞれ独立して制御可能な流量制御手段を備えることが好ましい。これは、最下段に位置する膜ユニットが最も目詰まりを起こしやすいことから、最下段に位置する膜ユニットにおける透過水流量と、上方に位置する膜ユニットにおける透過水流量とを調整することにより、膜ユニットの長寿命化を図ることができるためである。

流量制御手段は、各膜ユニットに連通した透過水配管にそれぞれ備えることもできるが、各透過水配管を連通させた後の透過水配管に備えることが好ましい。これは、それぞれ膜ユニットに加わる圧力が同一となるため、最下段にろ過抵抗が高い膜ユニットを配置した場合、最下段膜ユニットに掛かる負荷がその他膜ユニットに分散されて自然に低減されるため、全体膜モジュールとしてのバランスがよくなるためである。

本発明の装置は、上記流量制御手段に代えて又は流量制御手段と共に、透過水のろ過時吸引圧力を計測する圧力測定手段を備えてもよい。透過水のろ過時吸引圧力とろ過停止圧力との運転差圧が測定できればよい。

膜モジュールの最下段に配置された膜ユニットの分離膜を透過して得られた透過水の運転差圧が所定値よりも大きい場合、膜ユニットの汚泥に対する抵抗が高く、透過性が低くなっている状態、すなわち目詰まりによって閉塞し始めている状態を意味する。 ここで、所定値とは、被処理水性状により異なるが、運転差圧は10kPa〜40kPaが好ましく、運転差圧20kPa以下がさらに好ましい。

この場合、閉塞した膜ユニットを薬品洗浄する、散気装置の散気風量もしくは散気時間を変化させる、または、膜ユニットの透過水流量を低減する、という手段をとることが好ましい。これにより、運転差圧が低下し、5〜10kPa程度の運転差圧で好ましいろ過運転を行うことができる。

薬品洗浄とは閉塞した分離膜を酸やアルカリ薬品を用いて分離膜の2次側から逆液洗浄することであり、用いられる薬品は次亜塩素酸ソーダ、クエン酸、シュウ酸等が挙げられ、中でも次亜塩素酸ソーダ、クエン酸が好ましく用いられる。 散気装置によって散気風量を増加する場合には、通常の風量5NL/min/EL(「NL/min/EL」は“normal liter per minute per element”を示す)に対して20NL/min/ELまでであればよく、8NL/min/EL以下がより好ましい。 散気装置による散気時間は、場合によっては間欠で行うこともできるが、常時散気が好ましい。

なお、これら薬品洗浄や散気風量又は散気時間の増加は、被処理水の種類や温度、粘度などの構成によって著しく異なるため、その都度、最善の条件を選択し、膜分離を行うことが必要である。

最下段の膜ユニットからの透過水の運転差圧が所定値より小さくなった場合のみならず、当該透過水の流量値もしくは圧力値が所定値より小さくなった場合、または、最下段の膜ユニットからの透過水の流量値もしくは圧力値と、他のいずれかの膜ユニットからの透過水の流量値もしくは圧力値との差が所定値より大きくなった場合も同様に、最下段の膜ユニットを薬品により洗浄する、散気装置の散気風量もしくは散気時間を増加する、または、最下段の膜ユニットの透過水流量を低減する、などの手段により対応することもできる。

透過水の圧力値の差が所定値よりも大きいとは、当該膜ユニットの汚泥に対する抵抗が高く、透過性が低くなっている状態、すなわち目詰まりによって閉塞し始めている状態を意味する。透過水圧力の差が所定値より大きくなると、最下段に配置された膜ユニットの閉塞が進み、前記薬品や散気などによる洗浄でも閉塞が解消できないためである。

また所定値とは、ろ過圧力、ろ過差圧など、運転時のろ過圧力を判断可能な測定値について、ろ過運転条件、汚泥や被処理水の条件などにより決定することができる値である。

さらに、膜モジュールの最下段に配置された膜ユニットの分離膜を透過して得られた透過水の流量を、他の少なくともいずれかの膜ユニット、すなわち上方に設置した1以上の膜ユニットの分離膜を透過して得られた透過水の流量よりも、小さくなるように、前記流量制御手段にて流量を規制して膜分離を行うことが好ましい。膜モジュールの最下段に設置した膜ユニットを透過する水の量を意図的に少なくすることで、最下段の膜ユニットが閉塞するまでの期間を長くすることができる。 すなわち、最下段の膜ユニットの流量を少なく、上方にある膜ユニットの流量を多めに設定することにより、膜ユニットの洗浄が必要となるまでの時間がより長くなり、また、複数ある膜ユニットの洗浄時期も同じ時期になるように調整ができ、1度の膜ユニットの取り出し洗浄によって、全ての膜ユニットの洗浄が可能となる。 なお、最下段の膜ユニットを透過した透過水の流量と、他の1以上の膜ユニットを透過した透過水の流量との差は10%以下であることが最下段の膜ユニットと上方に位置する膜ユニットが同様な透過水配管を使用でき、設置ミスによる運転不具合を低減できると共に、配管による抵抗を低減できる点から好ましい。

さらにいえば、上段にある膜ユニットほど流量を多く、下段にある膜ユニットほど流量を少なくすることにより、膜モジュールの一時的なろ過流量をより高く上げることができ、かつ膜ユニットの長寿命化が期待される。

また、流量制御手段に代えて、圧力を制御することによっても同様の効果を得ることができる。この場合には、被処理水と透過水の圧力差を、最下段の膜ユニットではやや遅く上昇するように調整し、上方にある膜ユニットではやや速く上昇するように調整すればよい。また、下段にある膜ユニットほど当該圧力差が遅く上昇するように調整し、上段にある膜ユニットほど該圧力差が早く上昇するように調整することにより、膜ユニットの長寿命化が期待される。

また、最下段に配置された膜ユニットと連通する透過水配管と、他の上方に配置された膜ユニットと連通する透過水配管とが接続し、同一の吸引ポンプによる駆動力で膜ろ過を行なうなどすることで、これらの膜ユニットの膜間差圧を常に略同一にすることができる。このとき、透過水配管中に流量調整用バルブなどを備えることで透過水流に抵抗をつければ、それぞれの膜ユニットの膜間差圧を調整することもでき、膜間差圧差は±10%以内とすることが好ましい。これによって、ポンプ動力を無駄なく利用できるだけでなく、膜目詰まりが進行した膜ユニットは、その分だけ自然に膜ろ過流量が抑制されることとなり、膜ユニットがバランスよく利用されることになる。

本発明に係る浸漬型膜分離装置及び膜分離方法について、汚泥を含む被処理水を対象として説明したが、活性汚泥の他に、河川水、湖沼水、地下水海水、下水、排水、食品プロセス水などを被処理水とし、被処理水中の懸濁物を除去することによって、浄水処理、排水処理、飲料水製造、工業用水製造などの用途でも利用することが可能である。

以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。

<分離膜の作製> 製膜原液用の樹脂成分としてポリフッ化ビニリデン(PVDF/呉羽化学工業株式会社製、KF#850)を用いた。また、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてH2Oをそれぞれ用いた。これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、表1に示す組成を有する製膜原液をそれぞれ作製した。 分離膜の基材としては密度0.42g/cm3、サイズ50cm幅×150cm長の長方形のポリエステル繊維製不織布を使用した。次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、前記基材に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬し、さらに90℃の熱水に2分間浸漬することで溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、複合分離膜1〜3を製造した。

<汚泥ろ過抵抗および純水透水抵抗の測定> 上記組成および方法によって作製したそれぞれの分離膜1〜3に対して、上記汚泥ろ過抵抗実験方法を用いて汚泥ろ過抵抗を測定した。 分離膜の汚泥ろ過抵抗を測定するために、測定用汚泥としては、下水処理場より採集した汚泥をデキストリン培地(デキストリン12g/L、ポリペプトン24g/L、硫酸アンモニウム7.2g/L、リン酸1カリウム2.4g/L、塩化ナトリウム0.9g/L、硫酸マグネシウム7水和物0.3g/L、塩化カルシウム2水和物0.4g/L)をBOD容積負荷1g−BOD/L/日、水滞留時間1日で約1年間馴養した汚泥溶液(MLSS 15.17g/L)をMLSS 1g/Lになるように逆浸透膜ろ過水で希釈して用いた。希釈汚泥についてろ紙ろ過試験を行ったところ、20℃における希釈汚泥50mLの孔径1μmろ紙(No.5C)に対する5分間の透過量は18.9mLであった。粘度計(リオン(株)製VT−3E、ローターNo.4使用)により測定した希釈汚泥の粘度は1.3mPa・s(20℃)であった。 まず、分離膜をエタノールに浸漬し、水で置換した後、純水で5分程度リンスを行った。リザーバータンクを取り外し、評価後の膜を攪拌評価セルにセットした状態でセルを汚泥希釈液(15g)で満たし、汚泥希釈液を一定量(7.5g)ろ過した。一定量ろ過し、汚泥ろ過中の最後の20秒間では略一定となったため、このろ過水量から算出される汚泥ろ過抵抗をRとした。同様に、汚泥ではなく純水を用いることで純水透水抵抗Rを測定した。このような実験によって得られた結果を表2に示す。分離膜1から3まで、それぞれ異なる汚泥ろ過抵抗を持つ分離膜が得られた。

<平膜エレメントの作製> 汚泥ろ過抵抗が異なる上記分離膜1〜3を用いてそれぞれ平膜エレメントを作製した。 平膜エレメントは、基本的には東レ(株)製のTSP−50150エレメントを基に作製した。エレメントは上部に取水ノズルを設けている大きさ1,600mm×500mmの支持板の両面に分離膜を付着させた構造であり、分離膜の面積は1.4m2である。平膜エレメントは上記それぞれの分離膜をエレメントの大きさに合わせて切断し、エレメントの支持板に貼り付けて作製した。

<膜ユニットの作製> 膜ユニットは東レ(株)製TMR140を使用した。まず上記分離膜で同じ種類の分離膜を使用した平膜エレメントを用いて膜ユニットを組み立て、その後散気ブロック、下段膜ユニット、中間ブロック、上段膜ユニットを順番に積み立てることで膜モジュールを作製した。下段膜ユニットおよび上段膜ユニットは、1個のユニットに対して上記平膜エレメント20枚を入れて組み立てたものを使用した。

<膜モジュールの配置> 膜ユニットを2つ備え、下段には相対的に汚泥ろ過抵抗および純水透水抵抗が大きい膜ユニットを配置し、上段には相対的に汚泥ろ過抵抗および純水透水抵抗が小さい膜ユニットを設置した膜モジュールを含む浸漬型膜分離装置を用いて、膜分離試験を行った。下段および上段膜ユニットのろ過抵抗差は、下記の式にて算出した。 汚泥ろ過抵抗差=(下段膜ユニットに使用した膜の汚泥ろ過抵抗/膜ユニット膜面積−上段膜ユニットに使用した膜の汚泥ろ過抵抗/膜ユニット膜面積)×100÷(下段膜ユニットに使用した膜の汚泥ろ過抵抗/膜ユニット膜面積) 純水透水抵抗差=(下段膜ユニットに使用した膜の純水透水抵抗/膜ユニット膜面積−上段膜ユニットに使用した膜の純水透水抵抗/膜ユニット膜面積)×100÷(下段膜ユニットに使用した膜の純水透水抵抗/膜ユニット膜面積) 表3に膜モジュール1〜4に対して、使用した膜モジュールの膜ユニット構成および各ろ過抵抗差を示す。

<膜モジュールのろ過運転実験> 試験条件は以下の通りである。 表4にまとめて示す条件にて生活廃水の処理を行った。生活廃水を原水供給ポンプによって脱窒槽に導入して処理した後、その液を膜分離活性汚泥槽に導入する。膜分離活性汚泥槽では膜モジュールから供給される曝気によって好気性状態が維持され、かつ処理水のろ過が行われる。なお、MLSS濃度の維持のため、膜分離活性汚泥槽の汚泥を、汚泥引き抜きポンプを用いて定期的に引き抜いた。 膜モジュールのろ過運転は定流量運転を行った。定格運転時のろ過流量は56m3/dで運転を行ったが、実施例や比較例の実験を行った際にはろ過流量を一時的に168m3/dに上げてろ過運転を行った。なお、実施例や比較例の実験は雨が降る日に行った。

<実施例1> 実施例1では、膜モジュール1を使用し、図2のように構成された装置を用い、膜モジュールのろ過流量を制御して実験を行った。上段および下段膜ユニットにはそれぞれ流量計を設け、上段および下段膜ユニットぞれぞれの透過水配管を連通した後には圧力計、流量調整弁、流量計とろ過ポンプを設け、初期はろ過ポンプを用いて運転を開始した後、運転を流量調整弁にて切り替え、ろ過ポンプは停止とした。この際、ろ過ポンプや流量調整弁を用いたろ過運転は流量計と連動させてろ過を行い、定流量ろ過運転になるようにした。ろ過流量は168m3/dで、ろ過サイクルは9分間のろ過と1分間の停止の繰り返しとした。ろ過差圧は、ろ過運転開始から8分経過時点でのろ過運転圧力から、ろ過停止後50秒経過時点でのろ過停止圧力を引いて算出した。 ろ過運転は、ろ過差圧が5〜6kPaの状況で開始し、上記のろ過運転条件を用いて1ヶ月間ろ過運転を行った。その経緯を図5に示す。また、安定的なろ過運転は、ろ過運転時間48時間まで、ろ過差圧上限25kPa以下であることとした。 実験の結果、図5に示すように、得られた上下段の膜ユニットのろ過差圧はいずれも、安定的なろ過運転が可能なろ過差圧の上限(25kPa)より低く、高いろ過流束でも一時的に安定運転が可能であると考えられる。

<実施例2> 膜モジュール2を使用した以外は、実施例1と同様に実験を行った。実験の結果、図6に示すように、得られた上下段の膜ユニットのろ過差圧はいずれも、安定的なろ過運転が可能なろ過差圧の上限(25kPa)より低く、高いろ過流束でも一時的に安定運転が可能であった。

<比較例1> 膜モジュール3を使用した以外は、実施例1と同様に実験を行った。実験の結果、図7に示すように、得られた膜モジュールのろ過差圧は安定的なろ過運転が可能なろ過差圧の上限(25kPa)より高く、高いろ過流束では安定運転ができなかった。

<比較例2> 膜モジュール4を使用した以外は、実施例1と同様に実験を行った。実験の結果、図8に示すように、得られた膜モジュールのろ過差圧は、安定的なろ過運転が可能なろ過差圧の上限(25kPa)より高く、高いろ過流束では安定運転ができなかった。

本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2013年3月21日出願の日本特許出願(特願2013−058568)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

本発明の浸漬型膜分離装置は、下段の膜ユニットの膜閉塞が進行しても、装置全体でのろ過流束を一時的により高くすることができるため、雨などによる被処理水の流量の一時的増加など、短期的な激しい流量増加にも対応することができる。 本発明に係る装置は、汚泥のみならず河川水、湖沼水、地下水、海水、下水、排水、食品プロセス水なども被処理水として適用し、膜分離を行うことが期待される。

1 多段式浸漬型膜分離装置 11A,11B 膜ユニット 12 膜モジュール 13 被処理水収容槽 14A,14B,14C 透過水配管 15 流量調整弁 16 圧力計 17A,17B,17C 流量計 18 散気装置 19 ろ過ポンプ 101 平膜エレメント 102 透過水出口 a 圧力調整器 b バルブ c 圧力計 d 供給水用リザーバー e マグネチックスターラー f 膜ろ過ユニット g 電子天秤

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