【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、農業自動車に使用される如きパワーテークオフ機構すなわち「PTO」機構に関する。 【0002】 【従来の技術】ハイパワー(大馬力)型の農業用トラクタ(155馬力よりも大きい)は、約44.5mm(1 3/4インチ)の直径を有する1000rpmのPT O出力軸を備えるものだけが生産されている。 そのようなトラクタには、より小さな約34.9mm(1 3/ 8インチ)の直径を有する540rpm及び1000r pmの標準寸法のシャフトが設けられず、その理由は、 そのようなシャフトは、そのような大きさのトラクタのフルパワー出力を伝達する能力をもたないからである。 最も一般的な大きさの機器のPTOシャフトのサイズは、約34.9mm(1 3/8インチ)である。 現在においては、そのような機器を使用するためには、クランプオン型(押し付け型)のアダプタをトラクタの出力軸に用いるか、あるいは、そのような機器のドライブ・ ライン(動力伝達系統)を変えてそのような機器を大型のトラクタに使用できるようにする必要がある。 クランプオン型のシャフトは、標準的な540rpmのスプラインに変えた場合には、適正なPTO速度をもたらすために、低いエンジン速度で運転する必要がある。 低いエンジン速度は、けん引バーを引っ張るための大きなけん引力を必要とする運転、並びに、PTO運転の運転に対して許容できるものではない。 適正な出力速度に補正するために、幾つかの低パワー減速歯車箱が利用可能である。 そのような歯車箱は、高価であり、苛酷な使用のための冷却オイル外部配管ラインを必要とし、器具取り付け点に対して許容される位置のガイドラインに適合しない。 幾つかの産業用トラクタには、速度選択ギア機構を有するPTO機構が設けられており、これにより、両端型のPTOシャフトのいずれの端部がPTO機構に挿入されているかに応じて、速度を選択することができる。 540rpm及び1000rpmのスプライン用のクランプオン型の設計は、エンジンのフルパワーを小さな約34.9mm(1 3/8インチ)のシャフトに伝達する可能性があり、そのような場合には早期の故障を生ずることになる。 機器のドライブ・ラインをトラクタに合致するように変えることは、経費がかかり、複雑であり、また、時間を要することである。 また、過剰なトルクをそのようなトルクに対して設計されていないシャフト又は機器に与えた場合には、部品が壊れて危険な状況が生ずる。 伝達可能な最大トルクレベルを制限するように装置を設計した場合には、そのような設計は、ユーザに受け入れられないように思われる。 シャフトの破損設計限界よりも高いトルクを伝達しないようにカプラ(接続手段)を設計することは、非常に頻繁に故障してオペレータをいらいらさせるようなカプラを製造することになる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、適正なサイズの出力軸によって、異なる運転速度へ迅速且つ容易に変換することのできるPTO機構を提供することである。 【0004】本発明の別の目的は、過剰のトルクが与えられた場合に、制御された態様で故障するようなPTO 機構を提供することである。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記及び他の目的は、作業車用のパワーテークオフ・アセンブリが、種々の速度及びパワーレベルで駆動可能な出力駆動部材と、該出力駆動部材に接続される出力軸とを備える本発明によって達成される。 中空円筒形の駆動カラーは、出力軸の対応するスプラインにかみ合う第1の組のスプラインを有する第1の端部と、出力駆動部材の対応するスプラインにかみ合う第2の組のスプラインを有する第2の端部と、 上記第1及び第2の端部の間に位置する中央のネック部分とを備える。 上記ネック部分は、蓄積されたトルクによる損傷の結果として、駆動カラーがそのネック部分において破断して出力軸へのトルクの伝達を阻止し、且つ、駆動カラーが出力軸が破断する前に破断するように構成される。 軸受アセンブリが、乗物に関して固定されて出力軸を回転可能に支持する。 【0006】 【実施例】図1は、スプライン式のエンジン被動軸12 に接続された従来技術のPTO機構10を示しており、 上記スプライン式のエンジン被動軸は、農業用トラクタ又は作業車(図示せず)のフレーム部分14から外方へ突出している。 入力ギア部材16は、上記軸12にスプライン結合されたハブ18と、一式の中央スプラインすなわちギア歯20と、半径方向内方を向いた一式の外側ギア歯22とを備えている。 キャリアハウジング24 が、軸受26を介して、ハブ18に取り付けられている。 出力ハウジング28が、トラクタのフレームすなわちハウジング部分(図示せず)に固定されている。 キャリアハウジング24は、ボルト(図示せず)によって、 ハウジング28にも取り付けられている。 カウンタシャフトギア部材30が、ハウジング24の中の軸受32、 並びに、ハウジング28の中の軸受34によって、回転可能に支持されている。 カウンタシャフトギア30は、 大きな直径を有する一組のギア歯36と、小さな直径を有する一組のギア歯38とを備えている。 出力駆動ギア部材40は、カウンタシャフトギア部材30のギア歯3 8にかみ合う外側ギア42と、内側ギア44とを備えている。 【0007】中空のスリーブ46が、出力駆動ギア部材40の軸方向の中央孔の中で回転可能に収容されている。 スリーブ46の内側部分は、外側スプライン48を有している。 スリーブ46の外方端は、内側スプライン50を有している。 横断孔52が、スリーブ46の内側部分を通って半径方向に伸長している。 スリーブ46の内側は、小さな直径を有する内側孔53と、孔54及び55によって孔53に接続されている大きな直径を有する外側孔53とを形成している。 【0008】内側スプラインを有する環状のシフトカラー60が、軸方向に摺動可能なようにスリーブ46の外側スプライン48に取り付けられている。 半径方向の孔62が、シフトカラー60を貫通し、孔52に収容されているスプリングピン64を収容している。 孔52の直径は、スプリングピン64の直径よりも大きく、従って、シフトカラー60及びスプリングピン64は、スリーブ46に関して軸方向に摺動することができる。 シフトカラー60は、第1の組のギア歯66と、第2の組のギア歯68とを有している。 バネ70が、孔53の中に収容されており、上記バネ70は、スリーブ46の端部及びスプリングピン64に係合すると共に、シフトカラー60を図1で見て右側へ押圧するように偏倚されている。 【0009】プランジャ70は、孔53の中で摺動可能に収容された本体72と、孔54の中へ突出するステム74とを有している。 キャップ76が、本体72を孔5 3の中に保持している。 スプリングピン64に係合するための溝(図示せず)が、本体72の端部に形成されている。 キャップ78をハウジング28にピン止めすることができる。 【0010】図1に示すように、PTOの第1の出力軸80をスリーブ46の中に装着することができる。 出力軸80は、機器に対して1000rpmの駆動力をを与えるために使用される、約44.5mm(1 3/4インチ)の標準直径を有するスプライン式の外方端を有する外方端82を備えている。 軸80は、内側部分を備えており、該内側部分は、小さな直径を有する端部分84 と、中間の直径を有する部分86と、大きな直径を有する部分88とを備えており、上記大きな直径を有する部分88は、スリーブ46の内側スプライン50とかみ合うスプラインを備えている。 部分84及び86を接続する環状の肩部90が、スリーブ46に形成された肩部9 2に係合し、軸80の内方端がプランジャ70のステムに係合するのを阻止することができる。 【0011】軸80をスリーブ46から取り外し、図2 に示すシャフトアセンブリ100と交換することができる。 シャフトアセンブリ100は、軸82よりも小さな馬力レベルすなわち動力レベルで作動するようになされている。 シャフトアセンブリ100は、軸受ハウジング108の中に設けられたオイルシール106の間に設けられた軸受104の中で回転可能に収容された両端型のシャフト部材102を備えている。 ハウジング108 は、4つのボルト110によって、ハウジング28にボルト止めすることができる。 シャフト部材102のある部分112が、540rpmの標準速度で駆動するようなスプライン形状及び寸法を有している。 軸方向の盲中央孔114が、シャフト部分112の端部の中に伸長している。 シャフト部材102の他方の部分116は、1 000rpmの標準速度で駆動するようなスプライン形状及び寸法を有している。 シャフト部分112、116 の内方端には、同一のスプラインの組118、120がそれぞれ形成されている。 軸受ハウジング108は、シャフト112、116の後方端を機器(図示せず)の接続部分(図示せず)に対して適正な位置に位置決めするように構成されている。 【0012】本発明によれば、中空で環状のブレークアウェー式の駆動カラー122は、スプライン118又は120とかみ合うための内側スプライン124と、スリーブ46のスプライン50とかみ合うための外側スプライン126とを備えている。 図3及び図4に最も良く示すように、駆動カラー122はまた、スプライン12 4、126の間に位置して小さな直径を有するネック部分128も備えている。 均一に隔置された複数(4つであるのが好ましい)の孔130が、ネック部分128を通って半径方向に伸長している。 カラー122は、関連する他の要素の材料よりも構造的に弱い材料から形成されるのが好ましく、例えば、ノジュラー鋳鉄材料又は4 140鋼から形成することができる。 【0013】シャフト部分112をスリーブ46の中へ挿入し、駆動カラー122のスプライン126をスリーブのスプライン50にかみ合わせることができる。 この場合には、動力は、入力ギア部材16、シフトカラー6 0及びスリーブ46を介して、駆動軸12からシャフト102へ1000rpmで伝達される。 【0014】シャフト部分116をスリーブ46の中へ挿入してシャフト部分116の端部をステム74に係合させ、これにより、プランジャ70、スプリングピン6 4及びシフトカラー60を左側へ押圧してスプライン6 6をスプライン22から外してスプライン68を出力駆動ギア40のスプライン44にかみ合わせるようにすることができる。 この場合には、動力は、入力ギア部材1 6、カウンタシャフトギア部材30、出力駆動ギア部材40、シフトカラー60及びスリーブ46を介して、駆動軸12からシャフト102へ540rpmで伝達される。 従って、シャフト部材102の一方又は他方の端部をスリーブ46の中へ挿入するだけで、シフトカラー6 0を移動させることにより、適正な駆動速度を得ることができる。 【0015】ネック部分128の直径が小さく、また、 孔130が設けられているので、トルクによる損傷は、 出力軸に蓄積するよりもより速い速度でカラー122に蓄積することになる。 その結果、カラー122は、出力軸が破断するよりも早く破断する。 駆動カラー122は通常、ネック部分128に発生して該ネック部分の周囲で円周方向に広がるクラック(亀裂)の結果として破断する。 そのような破断は一般に、ネック部分128において駆動カラー122の中心軸線に直交する平面付近で起こるのが好ましい。 そのような破断が生ずると、シャフト102の外方端にはトルクが全く伝達されない。 これにより、シャフト102の外方端が回転するのが防止され、シャフト102の下流側の他の部分が損傷するのが阻止される。 【0016】カラー122は、伝達可能なトルクのレベルを制限しない。 カラーは、伝達可能なピークトルクの発生回数を制限し、上述のように、疲労損傷が、出力軸又は機器の部品(図示せず)に使用される材料よりもかなり速い速度でそこに蓄積するように設計される。 これにより、ユーザは、何等かの高慣性機器に高レベルのトルクを伝達してこれを始動させ、あるいは、他の機器を停止させることができる。 カラー122は、ユーザが使用しているシャフトの安全な運転限界を越えていることをユーザに警告するために破断する最初の部品として設計されるのが好ましい。 カラー122の寿命は、シャフトが破断する前に複数のカラーが破断するようにすべきである。 オペレータが、その機器のドライブ・ラインの能力を越えて運転している複数のカラーを破断させ続ける場合には、そのドライブ・ラインをより高いトルク能力を有するドライブ・ラインに変える必要がある。 【0017】カラーの設計は、疲労損傷の概念に基づいている。 これは、あるレベルよりも高いトルクの発生が蓄積することを意味する。 例えば、1つの高トルクの発生は、多くのより低いトルクの発生と同じ量の損傷を蓄積させる。 カラーは、その破断の前に、シャフトよりも少ない損傷の蓄積を必要とするように設計される。 【0018】特定の実施例に関連して本発明を説明したが、当業者には、上述の記載に基づき多くの代替例、変更例及び変形例が明らかであることを理解する必要がある。 従って、本発明は、請求の範囲の精神及び範囲内のそのような総ての代替例、変更例及び変形例を含むことを意図するものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明を機能させようとする従来技術のPTO 機構の部分断面図である。 【図2】本発明に従って構成された両端型のPTOシャフトアセンブリの部分断面図である。 【図3】図2の駆動カラーの拡大図である。 【図4】図3の線4−4に沿う断面図である。 【図5】図1の構造に組み立てられた図2の両端型のP TOシャフトアセンブリの端面図である。 【符号の説明】 10 PTO機構(パワーテークオフ機構) 100 PTOシャフトアセンブリ 102 シャフト部材 104 軸受 108 軸受ハウジング 112、116 シャフト部分 118、120 スプライン 122 駆動カラー 124 内側スプライン 126 外側スプライン 128 ネック部分 130 孔 |