アスベストの溶融方法及びそのための装置

申请号 JP2008549237 申请日 2007-11-27 公开(公告)号 JPWO2008072467A1 公开(公告)日 2010-03-25
申请人 独立行政法人産業技術総合研究所; 发明人 池田 伸一; 伸一 池田; 規男 梅山; 規男 梅山;
摘要 アスベストの処理にかかるコストを大幅に減らし、かつ、アスベストを除去する際の安全性も十分であるアスベストの無害化方法を提供することを目的とするものであって、アスベスト又はアスベストを含む部材に、赤外線を放射する発 光源 からの光を集光させて、アスベスト、アスベスト含有部材又はアスベスト含有部材中のアスベストを、所定の 温度 に、局所的に加熱することによって、アスベストを加熱溶融して無害化するものであり、そのために装置として、発光源と、該発光源から放射された光をアスベスト又はアスベスト含有部材に集光させる手段を有するアスベストの溶融装置を用いる。
权利要求
  • アスベスト又はアスベスト含有部材に、発光源からの光を集光させることにより、アスベスト、アスベスト含有部材又はアスベスト含有部材中のアスベストを溶融することを特徴とするアスベストの溶融方法。
  • 前記発光源が、赤外線を含む光を放射する光源であることを特徴とする請求項1に記載のアスベストの溶融方法。
  • 前記アスベスト又はアスベスト含有部材が、平面、曲面、或いは多面体面上に塗布又は吹き付けられたものであることを特徴とする請求項1に記載のアスベストの溶融方法。
  • アスベスト、アスベスト含有部材又はアスベスト含有部材中のアスベストを溶融する装置であって、発光源と、該発光源から放射された光をアスベスト又はアスベスト含有部材に集光させる手段とを有することを特徴とするアスベストの溶融装置。
  • 前記発光源が、赤外線照射ランプであることを特徴とする請求項4に記載のアスベストの溶融装置。
  • 前記集光手段が、回転楕円面鏡であり、発光源からの光を点状に集光させることができる反射鏡であることを特徴とする請求項4に記載のアスベストの溶融装置。
  • 前記集光手段が、発光源からの光を線状に集光させることができる反射鏡であることを特徴とする請求項4に記載のアスベストの溶融装置。
  • 平面、曲面、或いは多面体上に塗布又は吹き付けられたアスベスト、アスベスト含有部材又はアスベスト含有部材中のアスベストを溶融するための装置であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のアスベストの溶融装置。
  • 说明书全文

    本発明はアスベストの溶融方法及びそのための装置に関するものであり、さらに詳しくはアスベストを溶融してその繊維状形態を消滅させることによりアスベストを無害化する方法及びそのための装置に関するものである。

    アスベスト(石綿)は、天然に産する繊維状の鉱物で、種類としては、クリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、及びアモサイト(茶石綿)などがあり、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、絶縁性や機械的強度に優れており、加工もし易いため、古くから電気製品、自動車等の工業材料や、建物の屋根材や壁材等の建築材料として幅広く使用されてきた。

    このように、アスベストは優れた特性を有するものの、微小な針状・繊維状結晶を持つため、人が吸引した場合、その一部が呼吸器官に長期間残留して、石綿、肺ガン、悪性中皮腫等の重大な健康障害の原因になるといわれている。
    このアスベストの問題に関しては、平成17年7月以来、政府によって、本格的に様々な対策が取りまとめられているところであり、具体的には、石綿の飛散のおそれのある建築材料の使用を規制するとともに、増改築時や解体時には、原則として石綿の除去を義務づける等の法整備がなされてきている。

    こうしたアスベストを含有する廃棄物(廃アスベスト材)の処分方法として、従来、二重のプラスチック袋に梱包して飛散しない状態にして或はコンクリート化して、最終処理場で地中に埋め立てる方法がとられていた。
    しかしながら、環境問題上の問題から埋め立て地が不足し、近年では、こうした埋め立てに代えて、電気炉等で、アスベストの融点約1500℃以上に加熱し、溶融処理する等の方法で、建築廃材中などのアスベストを無害化処理することが行われている。

    たとえば、特許文献1には、アスベストを含有する繊維強化セメント板の廃材からアスベストを分離し、分離したアスベストを無害化する方法、及び得られた固形物、残滓を原料の一部に再利用する繊維強化セメント板の製造方法が記載されている。 この方法では、アスベストを含有した繊維強化セメント板の廃棄物を、粗砕または粗断したのち、湿式微粉砕し、得られたスラリーから、湿式分離法でアスベストを60〜100重量%回収した固形分と、アスベスト含有量0〜10重量%以下の残滓とに分離し、該固形分を700〜1000℃で焼成することにより、固形分中のアスベストを分解し、フォレステライト(Mg SiO )を主体とした無害成分とするものである。

    また、特許文献2では、フロン無害化処理によって生成されるフロン分解物がフッ化カルシウムを含むことに着目して、このフロン分解汚物を融解剤として用いることにより、低エネルギーでアスベストを無害化処理する方法を提案している。 すなわち、アスベストを含んだ物質(アスベストを含んだスレート板、屋根瓦、道管、自動車のブレーキ、アセチレンボンベの充填材、耐火被覆材等)とフロン分解無害化処理によって生成されたフロン分解物とを混合又は混練し、次いで当該混合物を600℃以下の低温で加熱処理することにより、アスベストを確実に分解し、アスベストの繊維形態の消滅、結晶構造の崩壊などを引き起こして無公害化するものである。

    さらに、特許文献3では、アルミニウム粉を混合したアスベスト廃棄物をアーク放電、或いは熱プラズマによる加熱によって溶融処理する方法が、特許文献4では、素化合物からなる融解剤によって前処理したアスベストを含むスレート廃材を1000℃程度の温度で溶融処理する方法が、特許文献5では、アスベスト含有廃棄物を、添加剤無しで1200〜1700℃で溶融処理する方法が、それぞれ提案されている。

    しかしながら、いずれのアスベスト無害化処理方法も、建築物などに使用されたアスベストを除去した後、処理場に集め、溶融させる方法を用いているため、壁材に吹きつけられたアスベスト等を除去する際には、アスベストを含む粉塵が作業場外に漏洩しないように大がかりな設備と安全対策を用意しなければならず、このような状況では、アスベストの処理に多大なコストがかかり、また、アスベストを除去する際の安全性も十分でない。

    特開2000−271561号公報

    特開2005−168632号公報

    特開平08−084969号公報

    特開2005−279589号公報

    特開平09−019672号公報

    特公平5−34317号公報

    国際公開第2005/1725号パンフレット

    本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、アスベストの処理にかかるコストを大幅に減らし、かつ、アスベストを除去する際の安全性も十分であるアスベストの無害化方法を提供することを目的とするものである。

    従来のアスベストの無害化処理における上記課題は、主として壁材などからのアスベストの除去工程にあり、課題解決のためには、アスベストの除去工程と無害化処理を同時になしうる方法が必要である。 一方、前述のとおり、アスベストを無害化処理する方法としては、アスベストを加熱溶融することにより、その繊維状形態を崩壊させるのが、コスト及び環境上の安全性等の点で非常に有効であるものの、壁材に吹き付けられたアスベストに従来の実用的な加熱溶融方法、例えばガスバーナーの火炎による加熱方法などを適用したのでは、壁材などの基板及びその周辺の温度も上昇してしまうために、アスベスト又はアスベストを含有する吹きつけ材のみを所定の温度に均質に加熱して溶融することは殆ど不可能である。

    本発明者らは、壁材に吹き付けられたアスベストを溶融する方法について研究を重ねた結果、アスベスト或いはアスベスト含有部材に、ハロゲンランプなどの発光源からの光を集光させ、生じた熱によりアスベストを溶融してその繊維状形態を崩壊することにより、アスベストを無害化できるという知見を得た。

    本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のアスベストの溶融方法及び溶融装置を提供するものである。
    (1)アスベスト又はアスベスト含有部材に、発光源からの光を集光させることにより、アスベスト、アスベスト含有部材又はアスベスト含有部材中のアスベストを溶融することを特徴とするアスベストの溶融方法。
    (2)前記発光源が、赤外線を含む光を放射する光源であることを特徴とする(1)に記載のアスベストの溶融方法。
    (3)前記アスベスト又はアスベスト含有部材が、平面、曲面、或いは多面体面上に塗布又は吹き付けられたものであることを特徴とする(1)に記載のアスベストの溶融方法。
    (4)アスベスト、アスベスト含有部材又はアスベスト含有部材中のアスベストを溶融する装置であって、発光源と、該発光源から放射された光をアスベスト又はアスベスト含有部材に集光させる手段とを有することを特徴とするアスベストの溶融装置。
    (5)前記発光源が、赤外線照射ランプであることを特徴とする(4)に記載のアスベストの溶融装置。
    (6)前記集光手段が、回転楕円面鏡であり、発光源からの光を点状に集光させることができる反射鏡であることを特徴とする(4)に記載のアスベストの溶融装置。
    (7)前記集光手段が、発光源からの光を線状に集光させることができる反射鏡であることを特徴とする請求項4に記載のアスベストの溶融装置。
    (8)平面、曲面、或いは多面体面上に塗布又は吹き付けられたアスベスト、アスベスト含有部材又はアスベスト含有部材中のアスベストを溶融するための装置であることを特徴とする(4)〜(7)のいずれかに記載のアスベストの溶融装置。

    本発明の方法及び装置によれば、アスベストを壁などからはがす必要はなく、壁に付いたまま溶融させることで、現在かかっているコストを大幅に削減でき、また、安全性も格段に改善することができる。

    本発明の無害化装置の概略を示す図

    クリソタイルの赤外線集光加熱処理前の写真

    クリソタイルの赤外線集光加熱処理後の写真

    アモサイトの赤外線集光加熱処理前の写真

    アモサイトの赤外線集光加熱処理後の写真

    クロシドライトの赤外線集光加熱処理前の写真

    クロシドライトの赤外線集光加熱処理後の写真

    赤外線集光加熱処理前のクリソタイルの位相差顕微鏡観察の写真

    赤外線集光加熱処理後のクリソタイルの位相差顕微鏡観察の写真

    赤外線集光加熱処理前のアモサイトの位相差顕微鏡観察の写真

    赤外線集光加熱処理後のアモサイトの位相差顕微鏡観察の写真

    赤外線集光加熱処理前のクロシドライトの位相差顕微鏡観察の写真

    赤外線集光加熱処理後のクロシドライトの位相差赤外線顕微鏡観察の写真

    赤外線集光加熱処理前のクリソタイルの粉末のX線回折パターン

    赤外線集光加熱処理後のクリソタイルの粉末のX線回折パターン

    赤外線集光加熱処理前のモサイトの粉末のX線回折パターン

    赤外線集光加熱処理後のアモサイトの粉末のX線回折パターン

    赤外線集光加熱処理前のクロシドライトの粉末のX線回折パターン

    赤外線集光加熱処理後のクロシドライトの粉末のX線回折パターン

    反射鏡を用いた溶融実験の方法を模式的に示す図

    コンクリート上のロックウールが溶融した後の断面写真

    符号の説明

    1:楕円型反射鏡 2:発光源(ハロゲンランプ)
    3:試料(アスベスト又はアスベスト含有吹き付け材)
    4:コンクリート板又は鉄板 5:溶融部分

    本発明においては、アスベスト又はアスベストを含む部材に、赤外線を含む光を放射する発光源からの光を集光させて、アスベスト、アスベスト含有部材、又はアスベスト含有部材中のアスベストを、所定の温度に、局所的に加熱することによって、アスベストを加熱溶融して無害化することを特徴とするものである。
    本発明におけるアスベストとしては、代表的には、クリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、及びアモサイト(茶石綿)などがあり、これらのいずれも本発明の方法及び装置により無害化することが可能である。

    これらのアスベストが、電気炉等の高温加熱により約1500℃以上の高温で溶融することは従来から知られているが、ハロゲンランプ等の赤外線を含む光を放射する発光源からの光を照射することにより、その光の吸収によって加熱溶融されることは今までなされていなかった。 すなわち、アスベスト自体は、白色ないし青色又は茶色を帯びた白色の繊維状鉱物であるので、それに光を吸収させて効率的に加熱溶融できることは知られていなかった。 白色の物質は光を吸収しにくいと一般的に考えられているからである。 予想外にも、光を照射した際には、その光を吸収して容易に加熱溶融されることがわかった。 そして、アスベストは、その熱伝導率が非常に小さいために、加熱源からの放射光を集光させてアスベストを含む材料に照射した際には、局所的に加熱溶融され易いものと思われる。

    本発明において、赤外線を含む光を放射する発光源としては、代表的にはハロゲンランプ、キセノンランプ等の赤外線照射ランプが用いられるが、赤外線を含む光を放射する発光源であればこれに限られるものではない。 また、該発光源からの光をアスベストに集光させる手段としては、反射鏡やレンズが用いられる。
    本発明におけるアスベストの溶融に用いられる装置としては、前記発光源と、該発光源からの光を集光させる手段を有するものであればよく、特に限定されるものではないが、アスベスト処理装置ではなく結晶成長装置として知られている、上記特許文献6及び7に記載されている公知の加熱装置を参考にすることができる。 特に特許文献7に記載された結晶成長加熱装置は、2000℃まで温度を上昇可能であるにもかかわらず、非常に小型であって、家庭用の100Vの電源が使用でき、安価であるなどの利点を有している。 以下の溶融実験1はこの装置を使用して行った。

    (溶融実験1)
    小型赤外線集中加熱炉を用いて、アスベストの溶融実験を行った。
    図1は、溶融実験に用いた小型赤外線集中加熱炉の概略を示す概念図である。
    図中、1は、楕円型反射鏡であり、2は、ハロゲンランプなどの発光源であり、3は、試料である。
    図に示すとおり、小型赤外線集中加熱炉は、2つの楕円型反射鏡を持ち、それぞれの焦点の位置にハロゲンランプなどの発光源3が1つずつ設置されている。 2つの反射鏡は、互いに他方の焦点が一致するように設けられており、試料3は、その焦点の位置に配置される。
    ハロゲンランプ3に通電することにより、フィラメントが赤熱し、赤外線を放射するが、その赤外線を試料位置に集光させることで、試料の温度を上昇させる。

    試料として、クリソタイル(ロシア・ウラル産P4クラス)、アモサイト(南アフリカ産)、クロシドライト(南アフリカ産)の3種類を用い、それぞれ5mm程度として、外径6mmのアルミナ管の先端に差し込み固定した。
    次に、試料を固定したアルミナ管を、前記小型赤外線集中加熱炉に取り付けた。

    当該小型赤外線集中加熱炉は650Wの汎用のハロゲンランプを2つ備え、それぞれに最高100Vまで、電圧をかけることが出来る。 例えば融点2050℃のルビーを溶かすためには、当該装置で93V程度の電圧をかける必要がある。
    今回の溶融実験では、試料空間に空気を数百cc/minの量で流しながら、40V〜50Vの電圧を印加することで、3種類全てのアスベストを溶融させることが出来た。
    このことから、アスベストの場合、ルビーの場合の約1/3程度の電で溶融可能であることがわかる。

    図2及び3、図4及び5、図6及び7は、それぞれ、クリソタイル、アモサイト及びクロシドライトを、当該装置で加熱する前後のカメラで直接観察した写真である。
    これらの写真から明らかなように、繊維状の試料の形状が、なめらかになり、また、体積も小さくなる様子を観察できた。 また、溶融後のアスベストが試料保持に使用したアルミナ管に濡れず玉状になっていることから、アスベストがアルミナに比べてより赤外線を吸収し、温度が上昇していることが分かる。

    また、溶融したクリソタイル、アモサイト及びクロシドライトの試料中に、繊維状の形態が残っていないことを確かめるため、それぞれの、赤外線集光加熱処理前と赤外線集光加熱処理後の試料について、JIS A 1481:2006「建材製品中のアスベスト含有率測定方法」に準拠した、位相差顕微鏡観察及び粉末X線回折を行った。 位相差顕微鏡観察については、採用した屈折率、分散色は、クリソタイル(1.550、白色)、クロシドライト(1.700、白色)、アモサイト(1.700、白色)である。 X線はCu−Kα線を用いた。
    図8及び図9、図10及び図11、図12及び図13は、それぞれクリソタイル、アモサイト、及びクロシドライトの赤外線集光加熱処理前と赤外線集光加熱処理後の位相差顕微鏡観察の写真であり、図14及び図15、図16及び図17、図18及び図19は、それぞれクリソタイル、アモサイト、及びクロシドライトの赤外線集光加熱処理前と赤外線集光加熱処理後の粉末X線回折パターンである。 今回の位相差顕微鏡観察の写真では、アスベストの繊維状形態は青く光っている部分として観察される。
    これらの図からみて、赤外線集光加熱処理後の試料のいずれにも、繊維状の石綿は含まれていないことが明らかである。

    (溶融実験2)
    平面上の吹きつけ材の溶融実験を行った。
    当該技術を用いた平面上に施工されたアスベスト吹き付け材の溶融処理を行う際には、主に0.1%〜数%の濃度のアスベスト含有吹きつけ材を処理することになる。 具体的には、典型的な吹き付け材の母材であるロックウール、バーミキュライト、及びパーライトをアスベストと同時に溶融処理する必要がある。 また、想定される平面上のアスベスト含有吹きつけ材の処理においては、装置形状上の制限があるため、前述の結晶成長装置をそのまま使用することはできない。
    そこで、本実験では、反射鏡のみを準備し、コンクリート板(60mm×300mm×300mm)及び鉄板(5mm×300mm×300mm)の上に吹き付けられた、ロックウール(厚さ約15mm)、バーミキュライト(厚さ約5mm)、及びパーライト(厚さ約5mm)の溶融処理実験を行った。

    図20は、使用した方法を模式的に示す図であって、図中、1は、反射鏡であり、2は、ハロゲンランプであり、3は、吹きつけ材であり、4は、コンクリート板又は鉄板であり、5は、溶融部分である。
    反射鏡には、その材質が真鍮で、鏡面に金メッキが施された回転楕円面鏡を用いた。 回転楕円面に関する焦点間距離は50mm、長径65mm、短径60mm、短径長径比は0.92であった。 また、ハロゲンランプは、平板型フィラメント(ウシオ電機製 JCS 100V−650WCC)で、電力は650Wのものを使用した。 ハロゲンランプのフィラメントの中心は、反射鏡内側の一方の焦点に位置し、またもう一方の焦点の位置が、吹きつけ材表面になるように反射鏡を置いた。 電源は、結晶成長装置で使用した100V・15Aの電源を使用した。

    以下にそれぞれの結果を示す。
    (1)コンクリート上のロックウール 55V程度で表面が溶融しはじめ、70V程度で大きく溶融、陥没した。 照射時間は30秒程度であった。 その後90Vまで電圧を上昇させても、溶融部分が大きくなることはなかった。 直径約15mm、深さ約15mmの局所的な溶融処理ができたことになる。 図21は、コンクリート上のロックウールが溶融した後の断面写真である。 溶融固化した黄土色の塊は陥没穴の底部と側面に残った。
    (2)コンクリート上のバーミキュライト 30V程度で煙があがり、70V程度で溶け始め、85V程度で溶けた部分が沸騰した。 照射時間は30秒程度であった。 溶融できた領域は、直径約10mm、深さ約3mmであった。
    (3)コンクリート上のパーライト 20V程度で煙があがり、70V程度で溶け始め、75V程度で溶けた部分が沸騰した。 照射時間は30秒程度であった。 溶融できた領域は、直径約10mm、深さ約3mmであった。
    (4)鉄板上のロックウール 50V程度で表面が溶融しはじめ、60V程度で大きく溶融、陥没した。 照射時間は30秒程度であった。 その後90Vまで電圧を上昇させても、溶融部分が大きくなることはなかった。 溶融できたのは、直径約20mm、深さ約16mmの領域であった。 実験後の鉄板の温度は室温のままであった。
    (5)鉄板上のバーミキュライト 30V程度で煙があがり、95Vまで電圧を上げたが、溶融しなかった。 照射時間は30秒程度であった。 実験後の鉄板の温度は50℃程度まで上がっていた。
    (6)鉄板上のパーライト 20V程度で煙があがり、95Vまで電圧を上げたが、溶融しなかった。 照射時間は30秒程度であった。 実験後の鉄板の温度は50℃程度まで上がっていた。

    上記(1)、(2)、(3)、(4)の実験結果から、コンクリート上のロックウール、バーミキュライト、パーライト及び鉄板上のロックウールを赤外線による局所加熱で溶融処理できることが明らかとなった。
    上記(4)、(5)、(6)の実験結果から、バーミキュライト及びパーライトの熱伝導率が、ロックウールに比較して大きいこと、及び、バーミキュライト及びパーライトの吹きつけ厚さが、ロックウールに比較して薄いことから、赤外線による局所加熱が、鉄板上のバーミキュライト及びパーライトに関しては不可能であることを示唆している。

    (溶融実験3)
    吹きつけ材溶融処理の際に、コンクリート又は鉄板の面が剥き出しになる場合もあることから、コンクリート表面及び鉄板表面に、前述の吹きつけ材に対する溶融処理と同じく赤外線を照射する実験を行った。
    以下にそれぞれの結果を示す。
    (7)コンクリート 45V程度で溶け始め、65V程度で溶けた部分が沸騰した。 その後電圧を70V程度まで上げても、沸騰が激しくなるだけであった。 照射時間は30秒程度であった。 溶融できた領域は、直径約10mm、深さ約2mmであった。
    (8)鉄板 95Vまで電圧を上げても全く変化無し。 酸化している様子も見られなかった。 照射時間は30秒程度であった。 実験後の鉄板の温度は50℃程度まで上がっていた。

    上記(7)、(8)の結果から、コンクリート上のロックウールなどの吹きつけ材を本発明の方法及び装置で溶融処理する場合には、万が一コンクリートの表面に直接赤外線が集光するような事態になったとしても、コンクリートの表面のみが、1〜2mm程度に薄く溶融するだけであって、コンクリートの内側まで溶融したり、破損したりすることはあり得ないことがわかる。 一方、鉄板の場合は、万が一鉄板の表面に直接赤外線が集光するような事態になったとしても、その良好な熱伝導率のために、局所加熱ができず比較的大きな領域全体で照射エネルギーを受け止めるため、鉄板が溶融することはあり得ず、酸化、破損などの変質も全く考える必要がないことがわかる。

    (溶融実験4)
    赤外線照射の影響を、温度上昇以外は全く受けない鉄板上で、ランプ電圧と温度の関係を知るために、銀箔、酸化銅(CuO)粉末、及び酸化鉄(Fe )粉末に、前記図20の模式図に示す方法を用いて赤外線を照射した。
    (9)銀箔(0.1mm×15mm×15mm)
    95Vまで電圧を上げたが全く変化はなかった。 粉末状ではなく、光沢のある箔状であったため、反射率が大きく温度が上がらなかったと考えられる。
    (10)酸化銅(CuO)粉末:融点1100℃
    35V程度で溶け始め、40V程度で全体が溶融した。
    (11)酸化鉄(Fe 、Fe )粉末:共に融点約1600℃
    赤い粉末であったFe が、25V程度で黒く変色し始めた。 Fe へ変化していると考えられる。 70V程度で溶け始め、75V程度で全体が溶融した。

    これらの実験から、赤外線集光加熱による溶融処理は、対象材料の熱伝導率や反射率、或いは体積によっては容易でない場合が存在することが分かる。
    本発明で対象とするアスベスト含有吹きつけ材は、熱伝導率や反射率が小さく、局所加熱処理に適した材料であることを確認できた。 また吹きつけ材が施工されている壁や天井の基材であるコンクリートや鉄板が、赤外線照射により受ける影響はほとんど無いことが実証された。 また、ロックウールが溶融する電圧は70V程度であることから、ロックウールの温度は1600℃以上になっていることが、酸化鉄の溶融実験結果から示された。 したがって、アスベストを混入したロックウールを溶融処理する際に、ロックウールが溶融した時には、融点が1500℃程度と言われている含有アスベストも溶融していることは確実である。 クリソタイル、クロシドライト、アモサイトのいずれも赤外線によって容易に溶融され、繊維状形態が消失していることも示されたことから、アスベスト含有吹きつけ材を、本発明の赤外線集光加熱により、その場溶融処理を行うことが現実的に可能であることが明らかとなった。

    本発明の方法及び装置によれば、アスベストを壁などからはがす必要はなく、壁に付いたまま溶融させることで無害化ができるので、今後数十年は必要とされているアスベスト板或いはアスベスト含有ロックウール等の取り壊しの際に必要とされるアスベスト処理への本発明の方法及び装置の適用が大いに期待できる。

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