摩擦抵抗低減剤及び消火剤

申请号 JP2016562652 申请日 2015-12-02 公开(公告)号 JPWO2016088794A1 公开(公告)日 2017-09-14
申请人 住友精化株式会社; 发明人 亨 井戸; 亨 井戸; 彰 木村; 彰 木村; 登 山口; 登 山口; あみ菜 田代; あみ菜 田代;
摘要 水 性媒体等に対して摩擦抵抗を低減させる効果に優れる摩擦抵抗低減剤及びこの摩擦抵抗低減剤を含む消火剤を提供する。本発明の摩擦抵抗低減剤は、ポリアルキレンオキシドと、 酸化 アルミニウムと、電解質と、水とを含み、前記ポリアルキレンオキシドが分散しているポリアルキレンオキシド水性分散液を含む。上記摩擦抵抗低減剤によれば、水性媒体等に対して摩擦抵抗を低減させる効果に優れる。
权利要求

ポリアルキレンオキシドと、酸化アルミニウムと、電解質と、とを含み、前記ポリアルキレンオキシドが分散しているポリアルキレンオキシド水性分散液を含む、摩擦抵抗低減剤。前記ポリアルキレンオキシドの粘度平均分子量が10万〜1000万である、請求項1に記載の摩擦抵抗低減剤。前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシド及びエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の摩擦抵抗低減剤。前記電解質が、硫酸アンモニウム及びリン酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減剤。前記電解質と前記水との質量比、電解質/水が0.11以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減剤。水性媒体用である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減剤。前記水性媒体が消火用水である、請求項6に記載の摩擦抵抗低減剤。請求項1〜7のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減剤を含む、消火剤。

说明书全文

本発明は、例えば性媒体の摩擦抵抗を低減することができる摩擦抵抗低減剤及びこの摩擦抵抗低減剤を使用した消火剤に関する。

ポリエチレンオキシドに代表されるポリアルキレンオキシドは、消火剤、分散剤、繊維糊剤、帯電防止剤、凝集剤等の種々の用途に広く使用されていることが知られており、工業上有用な水溶性高分子である。例えば、ポリアルキレンオキシドは、水性媒体等に添加されると、その水性媒体の粘度を増大させる作用を有する。このようなポリアルキレンオキシドによる増粘作用により、配管を通して水性媒体を輸送させる際に、配管内での水性媒体の摩擦抵抗を低減させることができ、この作用により水性媒体の輸送を効率良く行うことができる(例えば、特許文献1等を参照)。特に、ポリエチレンオキシドを消火用水に添加すると、消火用水が配管内を流れるときの配管との摩擦抵抗が低減され、これにより、消火用水を配管から噴射させたときの消火用水の噴射速度や噴射距離が増大し、結果として消火を効率良く行うことができるようになる(例えば、特許文献2及び3等を参照)。また、ポリアルキレンオキシドの増粘作用は消火対象物への付着性を高めることができ、かつ、水の蒸発も遅延させることができるので、より効果的に消火作用を行うことができる。

特開2001−187875号公報

特公昭49−14197号公報

特開昭54−30700号公報

しかしながら、例えばポンプなどを用いてポリアルキレンオキシドの水溶液を配管へ送流すると、ポンプ圧等によって水溶液に機械的なせん断力が加わり、これによりポリアルキレンオキシドの分子内の化学結合が切断して分子構造が破壊される。その結果、ポリアルキレンオキシドによる増粘作用が低下して、上述した摩擦抵抗を低減させる効果を十分に発揮できないおそれがあった。そのため、例えばポリアルキレンオキシド水溶液を消火用水の摩擦抵抗低減剤として使用する場合、配管へ送り込んだときにはポリアルキレンオキシドによる摩擦抵抗の低減効果が弱まっているので、消火用水の送流速度や放水距離に影響するという問題があった。

本発明は上記に鑑みてなされたものであり、水性媒体等に対して摩擦抵抗を低減させる効果に優れる摩擦抵抗低減剤及びこの摩擦抵抗低減剤を含む消火剤を提供することを目的とする。

本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリアルキレンオキシドの水性分散液を含む摩擦抵抗低減剤により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。

即ち、本発明は、下記の摩擦抵抗低減剤及び消火剤に関する。 1.ポリアルキレンオキシドと、酸化アルミニウムと、電解質と、水とを含み、前記ポリアルキレンオキシドが分散しているポリアルキレンオキシド水性分散液を含む、摩擦抵抗低減剤。 2.前記ポリアルキレンオキシドの粘度平均分子量が10万〜1000万である、上記項1に記載の摩擦抵抗低減剤。 3.前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシド及びエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、上記項1又は2に記載の摩擦抵抗低減剤。 4.前記電解質が、硫酸アンモニウム及びリン酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、上記項1〜3のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減剤。 5.前記電解質と前記水との質量比、電解質/水が0.11以上である、上記項1〜4のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減剤。 6.水性媒体用である、上記項1〜5のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減剤。 7.前記水性媒体が消火用水である、上記項6に記載の摩擦抵抗低減剤。 8.上記項1〜7のいずれか1項に記載の摩擦抵抗低減剤を含む、消火剤。

本発明に係る摩擦抵抗低減剤はポリアルキレンオキシド水性分散液を含む。このポリアルキレンオキシド水性分散液に含まれるポリアルキレンオキシドは、機械的なせん断力が加わってもその分子構造が崩壊しにくいので、例えば、ポンプ等で摩擦抵抗低減剤を配管内に送り込んだとしても、摩擦抵抗を低減させる効果が損なわれにくい。そのため、上記摩擦抵抗低減剤によれば、配管内の水性媒体に対して優れた摩擦抵抗低減効果を与えることができる。特に、消火用水に摩擦抵抗低減剤を加えると、消火用水の配管内での摩擦抵抗を効果的に低減させることができ、放水速度を高めたり放水距離を大きくしたりすることが可能となり、消火対象物をより確実に消火することができる。

ポリアルキレンオキシド水性分散液及びポリアルキレンオキシド水溶液それぞれの保存日数と、粘度(相対粘度)との関係をプロットしたグラフである。

以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。

本発明に係る摩擦抵抗低減剤は、ポリアルキレンオキシド水性分散液を含んで構成される。

上記ポリアルキレンオキシド水性分散液は、ポリアルキレンオキシドと、酸化アルミニウムと、電解質と、水とを含む。前記ポリアルキレンオキシドは、分散した状態でポリアルキレンオキシド水性分散液中に存在する。

上記ポリアルキレンオキシド水性分散液に含まれるポリアルキレンオキシドは特に限定されず、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、エチレンオキシド−ブチレンオキシド共重合体、エチレンオキシド−スチレンオキシド共重合体、エチレンオキシド−シクロヘキセンオキシド共重合体、エチレンオキシド−エピクロルヒドリン共重合体等の重合体が例示される。ポリアルキレンオキシドは、上記例示列挙した重合体のうちの1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。ポリアルキレンオキシドの粘度平均分子量は、10万〜1000万であることが好ましく、100万〜800万であることがより好ましい。

好ましいポリアルキレンオキシドは、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体である。ポリアルキレンオキシドがポリエチレンオキシド又はエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体であっても、これらの粘度平均分子量は10万〜1000万であることが好ましく、100万〜800万であることがより好ましい。

上記ポリアルキレンオキシドの形状は特に限定はされないが、水性媒体に分散しやすいという観点から粒子の形状であることが好ましい。ポリアルキレンオキシドが粒子形状である場合は、真球状、楕円状、扁平状、多孔質形状等、その形態は特に問われない。

上記ポリアルキレンオキシドの粒子径については特に限定されないが、ポリアルキレンオキシドが水性媒体により分散しやすくなるという観点から、平均粒子径(d50)は250μm以下であることが好ましく、180μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが特に好ましい。ポリアルキレンオキシドの平均粒子径(d50)の下限は特に限定されないが、例えば10μmとすることができる。

上記ポリアルキレンオキシドの含有量は、ポリアルキレンオキシド水性分散液の全質量に対して1〜40質量%が好ましい。ポリアルキレンオキシドの含有量が1質量%以上であれば、ポリアルキレンオキシド水性分散液の摩擦抵抗を低減させる効果をより高めることができる。また、ポリアルキレンオキシドの含有量が40質量%以下であれば、ポリアルキレンオキシドが均一に分散するポリアルキレンオキシド水性分散液が得られやすい。これらの観点から、上記ポリアルキレンオキシドの含有量は、10〜30質量%であることがより好ましい。

上記ポリアルキレンオキシドの含有量は、酸化アルミニウム1質量部に対して、0.09〜400質量部が好ましく、より好ましくは1.9〜100質量部である。ポリアルキレンオキシドの含有量を上記範囲に設定することにより、ポリアルキレンオキシド水性分散液の摩擦抵抗を低減させる効果をより高めることができる。

ポリアルキレンオキシド水性分散液の分散媒体として、電解質が溶解した水溶液(電解質水溶液)を使用する。

上記電解質としては、ポリアルキレンオキシドの膨潤を最小にしつつ、ポリアルキレンオキシドを不溶性にする性質を有する化合物を使用する。このような電解質であればその種類は特に限定されず、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、リン酸三ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等の無機ナトリウム塩、および、硫酸カリウム、炭酸カリウム等の無機カリウム塩等が挙げられる。なかでも、水に対する溶解度が大きい点で、硫酸アンモニウムが好適に用いられる。

電解質水溶液の溶媒としては、水であるが、その他、水と低級アルコールとの混合溶媒であってもよい。

摩擦抵抗低減剤における電解質の濃度は、分散させるポリアルキレンオキシドの種類によって異なるが、通常、電解質/水の質量比で0.11以上であることが好ましい。電解質/水の質量比が0.11以上であれば、ポリアルキレンオキシドが分散媒に溶解するのを抑制することができ、安定なポリアルキレンオキシド水性分散液が得られる。電解質/水の質量比は、0.11〜0.90であることが好ましく、0.43〜0.80であることがより好ましい。

ポリアルキレンオキシド水性分散液には、酸化アルミニウムが含まれる。この酸化アルミニウムの存在により、ポリアルキレンオキシド水性分散液におけるポリアルキレンオキシドの分散安定性が向上する。ポリアルキレンオキシドの分散性をより高めるという観点で、上記酸化アルミニウムの平均粒子径は、1〜1000nmが好ましい。より好ましい酸化アルミニウムの平均粒子径は、10〜100nmである。酸化アルミニウムとしては、市販のアルミナゾル等を使用することができる。

酸化アルミニウムの含有量は、電解質水溶液に対して固形分換算で通常0.1〜11質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜5.3質量%である。酸化アルミニウムの上記含有量が0.1質量%以上であれば、ポリアルキレンオキシド水性分散液においてポリアルキレンオキシドの分散状態がより安定となりやすい。また、酸化アルミニウムの含有量が11質量%以下であれば、ポリアルキレンオキシド水性分散液の粘度が大きくなり過ぎるのを防ぐことができ、ポリアルキレンオキシド水性分散液に適度な流動性を付与することができる。

ポリアルキレンオキシド水性分散液には、摩擦抵抗低減剤の性能が損なわれない程度であれば、その他の添加剤等が含まれていてもよい。例えば、ポリアルキレンオキシド水性分散液の粘度を調整することを目的として親水性のシリカ等の無機化合物又は水溶性高分子等を添加することもできる。上記水溶性高分子としては、ポリアルキレンオキシド以外の材料を選定することができるが、本発明の効果が阻害されない程度であれば、ポリアルキレンオキシド水性分散液にさらに他のポリアルキレンオキシドを添加することも可能である。また、使用目的に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を加えてもよい。

上記のように構成されるポリアルキレンオキシド水性分散液は、電解質水溶液にポリアルキレンオキシドの粒子が分散媒に溶解せずに分散した状態で存在する。

ポリアルキレンオキシドが安定に分散して存在することで、ポリアルキレンオキシド水性分散液に大きなせん断力が与えられたとしても、ポリアルキレンオキシド分子内の化学結合が切断されにくい状態となっている。そのため、せん断力に対してポリアルキレンオキシドの分子構造が安定であり、分子構造がせん断破壊されにくいという性質を有している。従来のようにポリアルキレンオキシドの水溶液等を摩擦抵抗低減剤として使用した場合は、せん断力によってポリアルキレンオキシドの分子構造は破壊されて、摩擦抵抗を低減させる効果が失われやすかったが、ポリアルキレンオキシド水性分散液を使用する場合は、そのような問題が起こりにくい。

また、上記のポリアルキレンオキシド水性分散液は、保存安定性にも優れる。具体的には、従来のポリアルキレンオキシド水溶液では、保存日数の経過と共にポリアルキレンオキシドの分解が起こるため、粘度が大きく低下するのに対し、ポリアルキレンオキシド水性分散液では、そのような粘度の低下が起こりにくい。そのため、ポリアルキレンオキシド水性分散液を含む摩擦抵抗低減剤では、一定期間保存した後でも摩擦抵抗を低減させる効果が損なわれにくい。

上記摩擦抵抗低減剤は、せん断が加わっても摩擦抵抗を低減させる作用が損なわれにくく、しかも、保存安定性に優れるという利点があることで、種々の用途に使用することができる。

例えば、水性媒体を送流ポンプ等によって配管内を送流させるようなシステムにおいて、水性媒体の配管内での摩擦抵抗を低減させることを目的として、上記摩擦抵抗低減剤が好適に用いられる。このような送流システムにおいて、ポリアルキレンオキシド水性分散液を含む摩擦抵抗低減剤を存在させれば、水性媒体の配管内での摩擦抵抗が効果的に低減されるので、水性媒体の送流がスムーズになる。

特に、ポンプを使用して摩擦抵抗低減剤を水性媒体が流れる配管に注入しても、ポンプによるせん断力や配管内を流れる際のせん断力によってポリアルキレンオキシドが破壊されにくいことで、配管内に注入された後においても摩擦抵抗の低減作用の損失が起こりにくい。そのため、配管内を流れる水性媒体の摩擦抵抗を十分に低下させることができる。

また、ポリアルキレンオキシド水性分散液は水性媒体に混合されると、すぐに水性媒体に均一に混ざる特性を有しているので、水性媒体に対し速やかに摩擦抵抗を低減させることができる。また、長時間の撹拌や大きな機械的せん断を与えなくてもポリアルキレンオキシド水性分散液が水性媒体に均一に混合されるので、せん断の影響をより小さくすることができる。これによっても、ポリアルキレンオキシドの分子構造の破壊がさらに抑制されるので、ポリアルキレンオキシドによる摩擦抵抗低減効果をより確実に発揮することができる。そのため、本実施形態の摩擦抵抗低減剤は、例えば、消火用水のように緊急に放水を要するような用途に特に好適である。

摩擦抵抗低減剤は、水性媒体に対して摩擦抵抗を低減させる効果が優れることで、配管から水性媒体を噴射させた際に、その水性媒体の噴射距離をより長くすることができる。

例えば、上記摩擦抵抗低減剤を消火用水に添加するなどすれば、消火用水をホースから放水させたときの放水速度や放水距離が増大し、消火を効率良く行うことができる。しかも、消火用水は、摩擦抵抗低減剤に含まれるポリアルキレンオキシドによって、粘度が上昇しているので標的物への付着性が高く、かつ、粘度上昇により水の蒸発も遅延するので、消火をより確実に行うことができるという利点もある。

摩擦抵抗低減剤は、配管内へ送り込む前に水性媒体と混合させて混合液とし、この混合液を送流ポンプ等の使用によって配管内へ送り込んでもよい。あるいは、水性媒体と摩擦抵抗低減剤をそれぞれ独立に配管内へ送り込んでもよい。これらをそれぞれ独立に配管内へ送り込む場合、摩擦抵抗低減剤は配管の上流及び下流のいずれから注入してもよい。このように、本発明に係る摩擦抵抗低減剤は、供給ライン等の制約を受けにくく、設備面でも有利である。

ポリアルキレンオキシド水性分散液を製造する方法は特に限定されないが、例えば、下記工程(1)〜(3) (1)酸化アルミニウムの水分散液を調製する工程、 (2)上記水分散液に電解質を溶解させることにより分散媒を調製する工程、 (3)上記分散媒にポリアルキレンオキシドを添加してポリアルキレンオキシド水性分散液を調製する工程、 を備える製造方法を適用することができる。

まず、上記(1)の工程では、水を攪拌しながら分散安定剤である酸化アルミニウムを所定量添加し、酸化アルミニウムの水分散液を調製する。

次いで、上記(2)の工程では、(1)の工程で調製した水分散液に電解質を溶解させることにより分散媒を調製する。電解質を溶解させるにあたり、あらかじめ水分散液の中和処理を行ってもよい。酸性条件下ではポリアルキレンオキシドの安定性が悪いが、上記のような中和処理を行っておけば、次の工程で添加するポリアルキレンオキシドが分散媒中で安定に存在することができる。この中和工程では分散媒のpHが6〜8となるようにすればよい。中和工程は(1)、(2)のいずれの工程内で行ってもよいし、(1)と(2)の間の工程で行ってもよい。

次いで、上記(3)の工程では、得られた分散媒にポリアルキレンオキシドの粉末を少量ずつ攪拌しながら添加する。

以上のような工程を経ることで、ポリアルキレンオキシド水性分散液を得ることができる。なお、酸化アルミニウム、電解質の添加順序は特に限定されないが、酸化アルミニウムのゾル(アルミナゾル)を用いる場合には、電解質による酸化アルミニウムの凝集を防ぐために上記の順序が好ましい。

上記ポリアルキレンオキシド水性分散液は、そのまま摩擦抵抗低減剤として使用してもよいし、その他の添加剤や他の摩擦抵抗低減剤を加えることで摩擦抵抗低減剤として使用することも可能である。また、この摩擦抵抗低減剤は、所定量の水を加えるなどして、消火用水や消火剤として使用することも可能である。摩擦抵抗低減剤を消火用水用途に使用する場合、摩擦抵抗低減効果を高めるという観点から、消化用水に含まれる水100質量部に対してポリアルキレンオキシドの含有量が0.001〜10質量部となるように消火用水を調製することが好ましく、0.01〜5質量部であることがより好ましい。なお、摩擦抵抗低減剤は、消火用水や消火剤に限定されず、その他の各種用途に適用することも可能である。

以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。

(実施例1) 200mLのビーカーに11.9gのアルミナゾル200(酸化アルミニウム分散水溶液、平均粒子径10〜100nm、固形分10%、日産化学工業社製)を加え、攪拌機付きモーターを用いて攪拌しながら、78.6gのイオン交換水を一括添加して水分散液を調製した。この水分散液を約5分攪拌したのち、攪拌を継続しながら35%NaOH水溶液を0.6g添加し、次いで、硫酸アンモニウム59.7gを添加した。硫酸アンモニウムが溶解するまで十分に攪拌を行うことで分散媒が得られた。この分散媒のpHは6.8であった。このように得られた分散媒を攪拌しつつ、ポリアルキレンオキシドとして49.8gのポリエチレンオキシド粉末(住友精化社製「PEO−18」、平均粒子径(d50)が63μm、0.5%水溶液の状態での粘度が320mPa・sで粘度平均分子量が450万)を徐々に添加した。ポリエチレンオキシド粉末が均一に分散するまで十分に攪拌をすることで、ポリエチレンオキシド水性分散液を得た。

次いで、10Lの容器にイオン交換水6Lを入れ、幅80mm×高さ25mmの平羽根にて撹拌回転数120rpmで攪拌し、そこへ上記ポリエチレンオキシド水性分散液を2.4g添加して試料を調製した。この試料において、ポリエチレンオキシド水性分散液は、イオン交換水に対して400ppm、ポリエチレンオキシドとしてはイオン交換水に対して100ppm含まれている。

ポリエチレンオキシド水性分散液を添加した直後の試料を用いて渦の深さDsを測定したところ、渦の深さDsは28mmであった。この試料をすぐさま後述のマグネットポンプで移送し、移送後の試料を用いて渦の深さDsを測定したところ、渦の深さDsは8mmであった。

(実施例2) ポリエチレンオキシド水性分散液の添加量を0.5gに変更した以外は実施例1と同様にして試料を調製した。この試料水溶液において、ポリエチレンオキシド水性分散液は、イオン交換水に対して83ppm、ポリエチレンオキシドとしてはイオン交換水に対して20ppm含まれている。

ポリエチレンオキシド水性分散液を添加した直後の試料を用いて渦の深さDsを測定したところ、渦の深さDsは33mmであった。この試料をすぐさま後述のマグネットポンプで移送し、移送後の試料を用いて渦の深さDsを測定したところ、渦の深さDsは25mmであった。

(比較例1) 10Lの容器にイオン交換水6Lを入れ、幅80mm×高さ25mmの平羽根にて撹拌回転数120rpmで攪拌し、そこへ0.5%ポリエチレンオキシド水溶液(水溶液粘度が0.5%で320mPa・sのもの)を120g添加し、1分間攪拌することでポリエチレンオキシドが完全に溶解した試料を調製した。この試料水溶液において、ポリエチレンオキシドとしてはイオン交換水に対して100ppm含まれている。

上記試料を用いて、発生する渦の深さを測定したところ、後述のマグネットポンプで移送させる前の渦の深さDsは5mmであったのに対し、マグネットポンプで移送後の渦の深さDsは31mmであった。

(調製例1) 10Lの容器にイオン交換水6Lを入れ、幅80mm×高さ25mmの平羽根にて撹拌回転数120rpmで攪拌し、そこへ実施例1で得られたポリエチレンオキシド水性分散液を2.4g添加した。このように調製した試料を「試料1A」と表記する。この試料1Aを約1時間にわたって攪拌を継続することで、ポリエチレンオキシドが完全に溶解した試料を調製した。このように調製した試料を「試料1B」と表記する。

上記試料を用いて、発生する渦の深さを測定したところ、ポリエチレンオキシド水性分散液を添加した直後の試料(すなわち、試料1A)では渦の深さDsは28mmであった。また、マグネットポンプで移送させる前の上記試料1Bの渦の深さを測定したところ、渦の深さDsは5mmであったのに対し、試料1Bをマグネットポンプで移送した後の渦の深さDsは32mmであった。

(調製例2) 10Lの容器にイオン交換水6Lを入れ、幅80mm×高さ25mmの平羽根にて撹拌回転数120rpmで攪拌し、そこへ実施例1で得られたポリエチレンオキシド水性分散液を0.5g(イオン交換水に対して83ppm)添加した。このように調製した試料を「試料2A」と表記する。この試料2Aを約1時間にわたって攪拌を継続することで、ポリエチレンオキシドが完全に溶解した試料を調製した。このように調製した試料を「試料2B」と表記する。

上記試料を用いて、発生する渦の深さを測定したところ、ポリエチレンオキシド水性分散液を添加した直後の試料(すなわち、試料2A)では渦の深さDsは33mmであった。また、マグネットポンプで移送させる前の上記試料2Bの渦の深さを測定したところ、渦の深さDsは13mmであったのに対し、試料2Bをマグネットポンプで移送した後の渦の深さDsは34mmであった。

(渦抑制率評価) 上記実施例、比較例及び調製例で調製した試料300g(25℃)を回転子(8mm×30mm)の入ったガラスビーカー(直径75mm×高さ150mm)に計り取り、マグネチックスターラーを用いて700rpmで攪拌し、発生する渦の深さを測定した。

また、上記のように測定した渦の深さの値を用いて、渦抑制率Pを以下の式により算出した。

P(%)=[(Dw−Ds)/Dw]×100

上記式において、Dwは、イオン交換水の渦の深さ(mm)、Dsは後述のように試料をマグネットポンプで移送させた後のその試料の渦の深さ(mm)を示す。ここで、イオン交換水の渦の深さは、上記の試料の渦の深さを測定する方法と同様の方法で計測した。すなわち、上記試料の渦の深さの測定において、試料をイオン交換水に置き換えた以外は同様の方法で行った。測定されたイオン交換水の渦の深さDwは35mmであった。

また、マグネットポンプで移送した後の渦抑制率評価は以下のようにして行った。上記実施例、比較例及び調製例で調製した試料をマグネットポンプ(株式会社イワキ製:IWAKI Magnet Pump MD−15R−N)で移送し、移送後の試料水溶液300g(25℃)を回転子(8mm×30mm)の入ったガラスビーカー(直径75mm×高さ150mm)に計り取り、マグネチックスターラーを用いて700rpmで攪拌し、発生する渦の深さを測定した。ここで、上記測定で使用したマグネットポンプは、最大吐出量が16L/minである。また、マグネットポンプの出入口それぞれに1mの塩化ビニル製チューブ(外径8mm,内径6mm)を接続して、移送を行った。

(ポリアルキレンオキシドの0.5%水溶液粘度の測定方法) 1L容のビーカーにイオン交換水497.5gを入れ、幅80mm、縦25mmの平板で先端周速が1.0m/sの条件で、攪拌しながらポリアルキレンオキシド2.5gを投入し、攪拌を3時間継続して水溶液を調製した。得られた水溶液を、25℃の恒温槽に30分以上浸し、B型回転粘度計(TOKIMEC社製のB型粘度計、ローター番号2、回転数12rpm、3分、25℃)により水溶液の粘度を求めた。

(ポリアルキレンオキシドの粘度平均分子量の測定方法) オストワルド粘度計を用いた極限粘度[η]の値から下記のStaudinger式を用いて粘度平均分子量[M]を算出した。

[η]=6.4×10−5×M0.82 但し、溶媒は純水、測定温度は35℃に設定した。

(ポリアルキレンオキシドの平均粒子径(d50)の算出方法) ポリアルキレンオキシドの平均粒子径は、以下のようにして求めた。JIS Z 8801に規定する試験用ふるいを用いて、ふるい分けを行い、各ふるい上の残分(質量)を測定し、積算質量百分率で表した。その後、積算値50%の粒度を平均粒子径としd50とした。

表1には、実施例、比較例及び調製例で得た試料の渦の深さDs(mm)及び渦抑制率P(%)をまとめている。なお、表1において「添加直後の渦の深さ」とは、各実施例、比較例においてポリエチレンオキシド水性分散液をイオン交換水に添加した直後の渦の深さDs(mm)を示し、調製例1,2ではそれぞれ試料1A,2Aの渦の深さDs(mm)を示す。また、表1において「ポンプ移送前の渦の深さ」とは、各実施例、比較例においてポリエチレンオキシド水性分散液をイオン交換水に添加して得た試料のマグネットポンプ輸送直前の渦の深さDs(mm)を示し、調製例1,2ではそれぞれ試料1B,2Bの渦の深さDs(mm)を示す。また、表1において「ポンプ移送後の渦の深さ」とは、マグネットポンプで輸送した試料の渦の深さDs(mm)を示す。

実施例1,2のように、ポリエチレンオキシド水性分散液の添加直後にポンプ移送した場合では、ポンプによる機械的せん断の影響を受け難くなるため渦抑制効果が高い。よって、実施例1,2の試料は高い摩擦抵抗低減効果を有しているといえる。

これに対し、比較例1のようにポリエチレンオキシド水性分散液でなくポリエチレンオキシドの水溶液を用いた場合、マグネットポンプでの輸送後は、渦の発生を抑制できていないことがわかる。

(参考:保存安定性評価) 参考として、ポリアルキレンオキシド水性分散液の保存安定性を分散液の粘度変化から評価した。

図1には、実施例1のポリアルキレンオキシド水性分散液及び調製例1のポリアルキレンオキシド水溶液のそれぞれについての粘度変化を示している。具体的には、ポリアルキレンオキシド水性分散液及びポリアルキレンオキシド水溶液それぞれの調製直後の粘度が、保存日数とともにどのように変化するかについて示している。ポリアルキレンオキシド水性分散液及びポリアルキレンオキシド水溶液はいずれも窒素置換を行い、40℃の環境下で保管し、所定日数ごとに粘度測定を行った。粘度は、市販のB型回転粘度計(撹拌回転数12rpm、撹拌時間3分)で測定し、図1のY軸の粘度を、ポリアルキレンオキシド水性分散液及びポリアルキレンオキシド水溶液の調製直後(0日)の粘度をそれぞれ100とした相対粘度で表している。なお、ポリアルキレンオキシド水性分散液の粘度を測定するにあたっては、当該分散液を希釈することで水溶液の状態に調製し、この水溶液を測定サンプルとして粘度測定を行った。

図1からわかるように、ポリアルキレンオキシド水溶液では、保存日数の経過と共に粘度が大きく低下しているのに対し、ポリアルキレンオキシド水性分散液では、ポリアルキレンオキシド水溶液に比べるとわずかに低下が見られるのみである。ポリアルキレンオキシド水溶液では、時間と共にポリアルキレンオキシドの分解等が起こって粘度が低下したと考えられる。これに対し、ポリアルキレンオキシド水性分散液ではそのような分解が抑制されているといえる。従って、ポリアルキレンオキシド水性分散液では、ポリアルキレンオキシドが溶解せずに分散して存在していることにより、保存安定性に優れることが示唆された。

本発明に係る摩擦抵抗低減剤は、摩擦抵抗を低減させる効果が大きく、大きなせん断が加えられたとしても、摩擦抵抗を低減させる効果が失われにくい。そのため、水性媒体等の摩擦抵抗を低減させるのに好適に使用され、特に、消火用水や消火剤等への使用に好適である。

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