【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、防じん用および/または防毒用マスクに取り付けられるフィルタユニットを大気側において一時的に密閉することができる開閉装置に関する。 【0002】 【従来の技術】実公昭60−41243号公報に開示の防じんマスクは、着用者の顔面に対するフィッティング状態の良否を判断するためのフィッティングテスタを有する。 このテスタは、マスクの吸気口を開閉する弁体と、弁体から上方へ長く延びた操作用レバーとを有する。 マスクを着用し、このレバーを下降させて弁体で吸気口を閉じた後に息を吸うことによって、マスクが顔面によくフィットしているか否かを判断することができる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】前記公知のマスクでは、テスタがマスクに対して取り付けられ、フィルタは、テスタよりも前方においてマスクに取り付けられる。 それゆえ、このマスクでは、マスクと顔面との気密性について良否を判断することができても、マスクとフィルタとの間の気密性の良否を判断することができない。 また、このマスクでは、マスクの吸気口の開口面積を大きくするほど弁体が大きくなり、それに伴って操作用レバーが長くなる。 長くなった操作用レバーは、マスクの外方へそれだけ長く突出して周囲のものにぶつかり易くなり、損傷を受けることが多くなる。 【0004】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、防じん・防毒いずれかの機能を有するマスクの吸気口前面側を一時的に気密状態で閉じることによって前記マスクの着用者の顔面に対する密着状態を点検可能な開閉装置である。 【0005】かかる装置において、この発明が特徴とするところは、以下のとおりである。 前記装置が、前記マスクの吸気口前面に取り付けられる防じん用および防毒用いずれかのフィルタユニットに前面側から固定される枠部材と、回転軸を介して前記枠部材に回転可能に支持される蓋部材とからなり、前記枠部材には前記回転軸の周囲に該枠部材の内外を貫通して前記フィルタユニットに通じることが可能な少なくとも一つの透孔が形成され、前記蓋部材には、該蓋部材の回転角度に対応して前記透孔を気密状態で閉じることが可能な第1部位と前記透孔を外気に向かって開放することが可能な第2部位とが前記回転軸を中心とする同心円上に形成されている。 【0006】 【発明の実施の形態】添付の図面を参照して、この発明に係るフィルタユニットの開閉装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。 【0007】図1は、この発明に係るフィルタユニットの開閉装置5が使用されている防じん・防毒用マスク1 の斜視図である。 マスク1は、ヘッドバンド2によって着用者の顔面に密着し固定される面体3と、面体3の前面側に取り外し可能に取り付けられたフィルタユニット4と、フィルタユニット4の前面側に取り付けられた開閉装置5とを有する。 図において、開閉装置5はその通気孔6(図4参照)が開いた状態にあり、通気孔6の内側には防じん用フィルタ7が見える。 外気は、通気孔6 から入って防じん用フィルタ7でろ過されてマスク3の内方ヘと進む。 開閉装置5は、摘み36を矢印A方向へ動かすことによって蓋部材32(図3,4参照)を軸9 を中心に回転させ、通気孔6を閉じることができる。 かかるマスク1は、着用したならば、通気孔6を閉じて息を吸うと、マスク1が気密状態にあるか否かをマスク1 の使用に先立って判断することができる。 【0008】図2、3は、図1の側面図とその部分拡大図である。 ただし、図2において、フィルタユニット4 と開閉装置5とは、線PQRに沿った断面で示されている。 マスク1の面体3は、硬質プラスチックで形成された前部13と軟質弾性プラスチックで形成された後部1 4とを有し、前部13は外側へ向かって延びる吸気口1 6と、吸気口16の内端部に面体3の内側へ向かって開くことが可能な吸気用の逆止弁(図示せず)と、吸気口1 6の下方にあって外側へ向かって開くことが可能な排気用の逆止弁17が取り付けられた排気口18とを備えている。 後部14は、着用者の口許と鼻孔とを覆うことができるように大きく開口している。 【0009】フィルタユニット4は、面体3寄りに位置する防毒用フィルタとしての吸収缶19と、吸収缶19 の前面側に密着しているシート状の防じん用フィルタ7 とからなる。 ただし、フィルタユニット4は、防じん用フィルタ7を吸収缶19から外した状態で使用することもできる。 吸収缶19は、金属やプラスチックからなる硬質容器と、その中に充填された吸着剤21とからなる。 吸収缶19の後端部分は、面体3の吸気口16に前方から取り外し可能に気密状態で螺着し、後端面には複数の通気孔23が形成されている。 吸収缶19の前端部分は、面体3の吸気口16から前方へ突出し、その前端面には複数の通気孔24が形成され、その通気孔24が防じん用フィルタ7で覆われている。 防じん用フィルタ7は、開閉装置5の作用によって吸収缶19の前端面に固定されている。 【0010】開閉装置5は、吸収缶19の前端部分に位置する枠部材31と、枠部材31の前方に位置する蓋部材32とからなる。 蓋部材32は、軸部9が枠部材31 の軸孔34に挿入され、軸部9を中心に回転可能である。 その回転を容易にするために、蓋部材32の周縁部には摘み36が形成されている。 軸部9と軸孔34の周面との間には気密性を保つためのO−リング37が介在している。 【0011】開閉装置5の枠部材31は、円錐形を呈する前部38と円筒形を呈する後部39とを有し、前部3 8の中央には軸孔34が形成されている。 図3において明らかなように、前部38の外周縁部内面には、環状の第1隆起部41と、その外側に位置する環状の第2隆起部42とが形成されている。 第1隆起部41は、防じん用フィルタ7の周縁部に前方から圧接してフィルタ7を吸収缶19の前面に固定している。 第2隆起部42は、 吸収缶19の周縁部に前方から気密状態で圧接している。 枠部材31の後部39は、吸収缶19の前端部に嵌合し、後部39の内周面に径方向内向きに形成された爪46が吸収缶19の周面で周り方向ヘ延びている段差部47に後方(図2の右方)から圧接している。 かくして枠部材31は、第1,2隆起部41,42と爪46とで吸収缶19の周縁部に前後方向から強く当接し、マスク1の使用上において吸収缶19に実質的に固定された状態にある。 【0012】開閉装置5の蓋部材32は、軸部9と周縁部49とを有し、軸部9の内端部には軸孔34の内端部周縁に後方から当接する抜け止め用の爪50が形成されている。 周縁部49は、蓋部材31の周方向に間欠的に形成され、径方向内方ヘ延びる扁平な第2小突起52を有する。 【0013】図4、5は、開閉装置5の平面図であって、図4は、図1における装置5の状態に対応している。 図5は、図4の摘持部36を持って蓋部材32を矢印A方向へ回転させたときの装置5の部分破断平面図である。 図5から明らかなように、枠部材31は、蓋部材32の軸部9を中心とする同心円の上に等間隔で形成された複数の第1通気孔61と、外周縁部に沿って間欠的に形成され、径方向外方ヘ延びる第1小突起51(図2 参照)と、第1通気孔61の周縁部に形成されたリブ6 4とを有し、外周縁部の外側には第1,2ストッパー6 6,67が形成されている。 蓋部材32は、軸部9を中心とする同心円の上に等間隔で形成された複数の第2透孔62と、第2透孔62と62との間に形成された中間部68とを有する。 第1透孔61と第2透孔62とは、 実質的に同形同大であって、摘持部36が第1ストッパー66に当接しているときには、両透孔61,62の位置が一致して、図1,4に示されるように開閉装置5の通気孔6を形成する。 図4における蓋部材32は、第1,2ストッパー66,67の間に位置する摘持部36 が第2ストッパー67に当接するところまで回転すると、図5に示されるように、中間部68で枠部材31の第1通気孔61を閉じることができる。 すなわち、蓋部材32は、その回転角度に対応して第1透孔61を開閉することができる。 【0014】図6は、開閉装置5の部分断面図である。 (a)は図4におけるVI−VI線矢視図であって枠部材31と蓋部材32との状態を示し、(b)は(a)においてその蓋部材32を矢印A方向(図1、4参照)へ回転させたときの状態を示している。 図の(a)では、第1、2通気孔61,62の位置が一致していて、開閉装置5には通気孔6が形成され、マスク着用者は自由に呼吸することができる。 図の(b)では、枠部材31の第1通気孔61が蓋部材32の中間部68によって気密状態で閉じている。 この中間部68は、第1通気孔61の周縁部に密着して第1通気孔61を気密状態で閉じるように作用させるための部分であり、その作用を確実にするために、図示例の枠部材31におけるリブ64の頂部には、蓋部材32の閉じるときの回転方向Aへ向かって上り勾配となる傾斜面71が形成されている。 また、蓋部材32の中間部68が枠部材31と向かい合う面には、リブ64の傾斜面71と同程度の傾きを有する傾斜面72が形成されている。 (a)において蓋部材32が矢印A方向へ回転すると、蓋部材32の傾斜面72が枠部材31の傾斜面71の上を摺動して傾斜面71,72 どうしが互いに密着する。 枠部材31と蓋部材32とは、傾斜面71と72とが強く密着できるように、両部材31、32の間隔が調整されている。 【0015】図7は、図5のVII−VII線断面図である。 第1通気孔61が閉じたときに傾斜面71と72 とが確実に密着するように蓋部材32の周縁部には径方向内方ヘ延びる第2小突起52が形成されている(図2 を併せて参照)。 蓋部材32が第1通気孔61を閉じると、第2小突起52が枠部材31の第1小突起51にマスク1の後方から圧接する。 【0016】このように作用する開閉装置5が取り付けられたマスク1は、蓋部材32を回転させて枠部材31 の第1通気孔61を閉じると、吸気口16よりも前方の部分が気密状態になる。 それゆえ、着用したマスク1をこの気密状態にセットして息を吸えば、マスク1と着用者の顔面との接触が良好な気密状態にあるか否かを簡単かつ確実に判断できる。 第1通気孔61は、フィルタユニット4の前面の面積をおよそ1/2を上限として外気へ直接的に開放することができる。 その開放面積を閉じるための蓋部材32の大きさは、開放面積の大小に関係なく一定している。 その蓋部材32を回転させるための摘持部36は、枠部材31の第1、2ストッパー66, 67の間に位置することによって、その摘持部36が周囲の物にぶつかって不用意に動いたり、損傷を受けたりすることがないようにガードされている。 【0017】開閉装置5は、枠部材31の後部39が径方向へ弾性変形可能なもので、図2、3の状態において、開閉装置5を面体3に対して左方へ引張ると、枠部材31の爪46が吸収缶19の段差部47から外れ、開閉装置5をフィルタユニット4から分離することができる。 分離した開閉装置5は、フィルタユニット4に対して押圧すると、枠部材31が弾性変形してユニット4に嵌合し、図2、3の状態になる。 【0018】この発明に係る開閉装置5は、蓋部材32 によって枠部材31の第1通気孔61を密閉するものであり、枠部材31と蓋部材32とに互いに圧接可能に形成された傾斜面71と72や第1、2小突起51と52 は、そのような密閉を確実にするための手段の一例である。 この発明は、これらの手段を省いたり、これらの手段に代えて別の手段を採用して実施することが可能である。 また、図示例で吸収缶19に対して着脱可能な開閉装置5は、吸収缶19以外のフィルタユニットやフィルタユニットが取り付けられている面体3に対して着脱可能に作られていてもよい。 さらにはまた、開閉装置5 は、吸収缶19等のフィルタユニットに対して、またはフィルタユニットが取り付けられている面体3に対して取り外し不能に作られていてもよい。 【0019】 【発明の効果】この発明に係るフィルタユニットの開閉装置は、マスクの面体に取り付けられているフィルタユニットの通気孔を閉じて着用したマスクの気密状態の良否を点検できるから、フィルタユニットと面体との取り付け部位における気密性の不良および面体とマスク着用者の顔面との気密性の不良を容易に発見することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】開閉装置が取りつけられたマスクの斜視図。 【図2】図1のPQR線矢視図。 【図3】図2の部分拡大図。 【図4】透孔が開いている開閉装置の平面図。 【図5】透孔が閉じている開閉装置の部分破断平面図。 【図6】開閉装置の部分断面図。 (a)は図5のVI− VI線断面を示し、(b)は(a)において蓋部材が回転した状態を示す。 【図7】図5のVII−VII線矢視図。 【符号の説明】 1 マスク 4 フィルタユニット 5 開閉装置 7 フィルタ 9 軸 16 吸気口 19 フィルタ 31 枠部材 32 蓋部材 41 第1隆起部 42 第2隆起部 51 係合部位(第1小突起) 52 突起部(第2小突起) 61 透孔 62 第2部位 68 第1部位 71 傾斜面 72 傾斜面 |