【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、椅子型マッサージ機とその運転制御方法とに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、椅子型のマッサージ機として、使用者に対してマッサージ動作する高さを、使用者の座高レベルに応じて自動的に変更できるようにしたものが開発されている(特許第2511451号公報参照)。 このマッサージ機は、「施療子」と呼ぶ、モミやさすり等を行うための動作部分を、マッサージ動作を始めるのに先立って一旦、上限高さまで上昇させ、その後、下降させて使用者の肩へ当接させ、このとき施療子に内蔵させた圧力センサからの検出信号によって肩との当接高さ位置を判断し、この当接高さ位置をその後に行う一連のマッサージ動作の原点として設定し、この原点(即ち、肩位置)から上方又は下方へ向けてプログラムされたマッサージ動作を順次、実行してゆくという構成になっている。 【0003】すなわち、ヒトの座高レベルには、身長差等によって各人に大きな差異があるものの、肩レベルから首レベルまでの距離や腰レベルまでの距離自体は、仮令、座高レベルが異なった場合でも略一定の比率関係にあるという認識のもとに、上記した原点から首位置までの予想距離や、原点から肩周辺又は腰位置までの予想距離を画一的な数値データ、即ち、上下方向に設定した複数のポイントの列に対して占有する所要ポイント数として記憶させ、これを原点の設定後に、必要に応じてポイント列中でシフトさせるというものであった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、種々様々な身長差を有した多数の者によって実際にこのマッサージ機を使用した結果、必ずしも一様に十分且つ満足したマッサージによる治療効果を得られるというものではなかった。 上記従来のマッサージ機を開示した公報には、数値データを決定した根拠の説明が無いので明らかではないが、本出願人の推察によれば、この数値データは、原点(肩位置)から首位置や肩周辺又は腰位置等までの漠然とした予想距離であって、単に「そのあたり」へ施療子を到達させればよい、という程度の技術思想であったからに他ならないためと思われる。 【0005】ヒトの体型は、上記認識に基づくほど単純・明快なものではなく、ただ単に、上記のような漠然とした数値制御を行っても、あまり意義をもたない。 つまり、マッサージによる治療効果を発揮させるには、位置に個人差のあるツボを適切に刺激することが必要であり、漠然とした数値制御は十分でない。 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、身長差に関係なく、適切なツボを刺激し、一様に十分で且つ満足した治療効果を得ることができる椅子型マッサージ機とその運転制御方法とを提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。 即ち、本発明に係る椅子型マッサージ機では、マッサージ動作をする動作子(この動作子は、モミ玉だけでなく、指圧、タタキ、さすり等を行うための動作部分を含む)を備えた背凭れ部と、該背凭れ部の高さ方向に沿って前記動作子を移動させる移動駆動部とを有し、且つ移動駆動部に対して、ツボ位置である使用者の背側における特定位置へ動作子を停止させるための位置制御部が設けられている。 【0007】この場合の特定位置は、各ツボの位置であって、肩位置を基準として表されるものであるが、基準となる位置は、肩位置に限らず、腰位置等の身体の背側であれば、どの部位であってもよい。 但し、この特定位置を決定させるための特定位置情報は、予め多数のヒトを対象に身長測定と、身体の所定部位間(例えば肩と腰との間の寸法)の距離測定とを行い、それらを所定の身長範囲ごとに集計して平均値を算出することにより求めた平均位置データである。 【0008】即ち、この特定位置情報は、統計に基づいたものである。 このような特定位置情報は、使用者が始動操作のなかで自己身長を位置制御部へ選択・入力したときに、位置制御部が、記憶した複数の特定位置情報の中からその身長に適合したものを選出して読み出すようになっている。 そして、位置制御部は、この読み出した特定位置情報に基づいて移動駆動部による動作子の移動量を制御するものである。 【0009】すなわち、本発明は、座高レベルに差異がある場合はもとより、年齢や性別等の違い、或いは体型の特徴等として多種多彩なものがあり、またそれらの組み合わせ等をも考え合わせた場合、漠然と決定したような画一的な数値データだけでは、とても万人に適応させた制御は不可能であるとの知見に基づいたものであって、そのために、実際に身長差だけでなく、年齢、性別、体型等が異なる多くのヒトからデータ採取を行っているのである。 【0010】特に、本発明では、心身の凝りをほぐすにはツボをマッサージするという原則を重視すると共に、 このためのツボが、背骨に沿った両側に並んでいることに着目して、位置制御部に記憶させる特定位置情報を、 背骨に沿って並んだ複数のツボ位置を示すものとされている。 従って、上記ように多数のヒトからデータ採取を行う場合には、所定のツボの位置データを採取することになる。 【0011】このツボ位置に対するデータ採取は、医学的資料に依存して測定してもよいが、指圧師や鍼灸師、 或いはマッサージ業に携わる者等の経験則に基づく指示、触感、場合によってはデータ採取対象者らの感想をも考慮しながら行うのが好適である。 特に、指圧師等の専門家であれば、マッサージに求める目的(例えば一般的な筋肉疲労の回復、内蔵機能の改善、便通の向上、腰痛の改善等)や、これと身長、性別、年齢、体型、病歴等との組み合わせ等に起因するツボ位置の微妙な違いも熟知しているため、マッサージ効果として極めて良好なものを得ることができる。 【0012】なお、特定位置情報を全てツボ位置とする必要はなく、例えば肩近傍の所定位置に「原点」を示す特定位置情報を設定し、この他の特定位置情報をツボ位置として、上記原点に基づいて他の特定位置情報を距離測定するようなかたちとすればよい。 位置制御部に対し、動作子を所定の特定位置情報に基づいて移動させた後に、当該特定位置から背凭れ部の高さ方向に微動可能な構成(即ち、人為的スイッチ操作によって動作子を任意量だけ作動できたり、特定位置から一定の範囲で動作子を微動させながらマッサージを行える構成)を持たせておくと、平均ツボ位置と実際のツボ位置にわずかな違いがある場合にも対応できる。 また、使用者が姿勢を変えたとき、凝り位置に微妙なズレがあったとき、特定位置情報に該当する身体部分に傷口があったとき、個人的な好みに合わせるとき等の場合において、確実にツボ位置をマッサージできる。 【0013】位置制御部に対して、動作子が現在どの位置にあるかを使用者に知らせる位置表示部を設けておくことにより、使用者にとってマッサージの進捗状況を把握でき、凝りが特に強い場合等に自らの健康管理ができるし、またその部位を重点的にマッサージする場合等に便利となる。 この場合、位置表示部としては、音声、音(ブザー)、光等によるものとすることができる。 【0014】一方、本発明に係る椅子型マッサージ機の運転制御方法では、背骨に沿って並んだ複数のツボにおける位置データを身長の異なる多数のヒトから採取すると共に、これらを所定の身長範囲ごとに区分したうえで各別に平均位置データとして算出し、この平均位置データを予め特定位置情報として記憶させておく。 そして、 始動操作のなかで身長の入力があったときに、この身長に適合する身長範囲区分を選び、この中に書き込まれている複数の特定位置情報、即ち、ツボ位置から一部又は全部を読み出して、この読み出した一つ一つの特定位置情報ごとに、マッサージ動作を行うための所定時間を保持させつつ、移動駆動部を作動させてゆくようにしたものである。 【0015】従って、使用者の全身又は部分領域に対して効果の高いマッサージが自動運転のもとに行われることになる。 なお、特定位置情報の相互間で動作子(マッサージ駆動部)を移動させる時間の間隔やその移動順、 及び特定位置情報自体の組み合わせは、マッサージの目的等に応じて適宜変更可能である。 【0016】 【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。 本発明に係る椅子型マッサージ機1は、図1に例示した外観図をもとに説明すると、その基本構成として、椅子本体2と、この椅子本体2の背凭れ部3に設けられた動作子4をマッサージ動作させるマッサージ駆動部5と、このマッサージ駆動部5を背凭れ部3の高さ方向に沿って移動させる移動駆動部6とを有している。 【0017】そして、移動駆動部6に対しては、図示は省略するがその作動状態を制御する回路としての位置制御部が設けられている。 この位置制御部による制御は、 使用者の背側における特定位置、例えば図2に示すようなツボ位置(東洋医学的に言えば「経穴」である)に対して動作子4を一致させるべく、マッサージ駆動部5を停止させるようにするものである。 【0018】なお、本発明に係るマッサージ機1の装置構成としては、上記基本構成を具備したものであれば、 その他は特に細かく限定されるものではない。 従って以下では、特願平8−185258号に係る出願明細書に記載のものと略同じ構成のものを適用した場合について説明する。 図例の椅子本体2では、座面部8が、肘掛け部9を一体的に具備した左右両側の脚体10によって支持され、また、この座面部8の前部にはフットレスト1 1が設けられたものとなっている。 【0019】そして、このフットレスト11や背凭れ部3は、リクライニングのため、適宜電動機構又は流体圧駆動機構(図示略)等によって座面部8に対する角度変更が可能になっていると共に、この座面部8自体も、フットレスト11や背凭れ部3の角度変更に伴って、ある程度の前後動や上下動等が可能になっている。 上記移動駆動部6は、背凭れ部3の高さ方向に沿って設けた送りねじ14をマッサージ駆動部5に対して螺合関係にさせると共に、この送りねじ14を電動モータ等を具備した原動部15で正・逆回転させることによって、マッサージ駆動部5を使用者の首側又は腰側へ移動可能にしたものである。 【0020】なお、この移動駆動部6には、他に巻き掛け駆動機構や、ラックとピニオンとの噛合構造、又は流体圧シリンダ等を用いた直線移動手段等を採用することも可能である。 上記マッサージ駆動部5は、図3乃至図5に示すように移動駆動部6によって直接的に移動可能とされるベースフレーム17と、このベースフレーム1 7に左右一対の側部リンク機構18を介して設けられて上下両端を前後に揺動可能にされた揺動板19と、これらベースフレーム17と揺動板19との間に介設された揺動板原動部21と、揺動板19に対して設けられた上下のリンク機構23,24と、これら各リンク機構2 3,24に各別に設けられたリンク原動部25とを有している。 【0021】そして、各リンク機構23,24に対して、上記した動作子4が設けられている。 これら動作子4は、いずれも横軸まわりで回転自在なローラとして形成されているが、上部リンク機構23によって保持される動作子4は、下部リンク機構24によって保持される動作子4に比べて径大とされており、背凭れ部3において突出する高さが大きく、また左右間隔も広くなっている。 【0022】上下のリンク機構23,24は略同じ構造であるので、図3及び図4に基づいて上部リンク機構2 3だけを説明する。 この上部リンク機構23は、左右両外側に設けられた縦軸26を中心として互いに交差揺動可能に設けられた動作子支持枠27,28と、これらの揺動範囲を規制するリンク29,30とを有している。 【0023】そして、これら各動作子支持枠27,28 と揺動板19との間に、上記したリンク原動部25が設けられている。 このリンク原動部25には、蛇腹ポンプ構造又はバルーン構造を有したエアーセルを用いてある。 即ち、このリンク原動部25へ加圧空気を供給することによって軸方向膨張が生じ、動作子4は縦軸26を中心として斜め前方へ突出することになり、反対にリンク原動部25から加圧空気を排気又は吸引することによって軸方向収縮が生じ、動作子4は元の状態に戻る。 【0024】従って、左右のリンク原動部25に対して加圧空気の給排制御を同期的に行うことで、左右の動作子4が相互近接・相互離反を繰り返すようになり、これがモミ動作を生起させることになる。 一方、ベースフレーム17と揺動板19との間に設けられる揺動板原動部21は、図4及び図5から明らかなようにリンク原動部25と略同じ位置付けで4個用いられている。 そして、 この4個のうち、上部リンク機構23のリンク原動部2 5に対応する左右2個、即ち上列のものと、下部リンク機構24のリンク原動部25に対応する左右2個、即ち下列のものとが、互いに同期又は交替して、加圧空気の給排を受けるようになっている。 【0025】従って、上列の揺動板原動部21と下列の揺動板原動部21とに対して上下交替状に加圧空気を給排することで、揺動板19の揺動を介して上下の動作子4が上下交替状の出退動作をするようになる。 これが指圧動作や叩き動作を生起させるものとなる。 また、上列及び下列の揺動板原動部21に対して一斉に加圧空気を給排することで、全ての動作子4が同期的に出退動作をするようになる。 これにより、上記とはややパターンの異なる指圧動作や叩き動作を生起させるものとなる。 【0026】さて、このような装置構成を有したマッサージ機1において、移動駆動部6を作動させるための上記位置制御部は、前記したように背凭れ部3にもたれかかった使用者に対して、その背側の特定位置へ動作子4 を一致させることができる。 そのため位置制御部は、これら特定位置(これは使用者側の寸法情報である)に合わせて移動駆動部6へ作動を指示するための特定位置情報(これは装置側の寸法情報である)を予め記憶したものとなっている。 【0027】特定位置を、図2に示したように背骨に沿って並んだ個々のツボ位置とする場合において、特定位置情報を求めるには次のようにする。 すなわち、まず、 身長の異なる多数のヒトを対象として、身長測定と座高(Y1寸法)測定、及びこの座高測定で用いた肩側の測定点Pを原点としたときの各ツボ位置までの距離測定(肺兪に対応するY2、隔兪に対応するY3、脾兪に対応するY4、…等)とを行う。 【0028】なお、本実施形態においてY2より下方の距離は、それぞれ上位側に隣接する位置を基準に測定した部分的なものとしているが、これに限らず、常にP点からの通し距離として測定してもよい。 また、Y2〜Y 7で示した各寸法は代表的なツボ位置に対するものを例に挙げたにすぎず、これらには含めていないツボ位置(肩中兪、厥陰兪、心兪、…等)をも対象として距離測定を行ってもよいし、また図示はしていないがヒトの背側には更に多くのツボがあり、必要に応じてそれらに対する距離測定を行ってもよい。 【0029】次に、このようにして採取した個々のデータを、所定の身長範囲ごとに区分し、そのうえで各区分ごとに平均値を算出する。 そして、このようにして得られた平均位置データを、特定位置情報とするものである。 従って、本実施形態で言えば、特定位置情報は、表1に示すように身長範囲を大略3cmから5cm程度の間隔でA〜Fに区分したときに、各区分についてY1, Y2,…Y7にわたって求められることになる。 なお、 この表1は、A〜Fの各区分それぞれについて、いずれもデータ採取対象者を100人以上としてデータ採取した結果のものである。 【0030】 【表1】 【0031】このような特定位置情報を記憶した位置制御部では、使用者が椅子本体2に腰掛けて始動操作をするなかで、自己の身長を入力したときに、上記A〜F区分の中からその身長に適合した区分を選出し、この区分の中に書き込まれているY1,Y2,…Y7の各特定位置情報を読み出すようになっている。 そして、位置制御部は、この読み出した一つ一つの特定位置情報に基づいて、順次、移動駆動部6に対して所定の作動を指示する。 【0032】例えば、入力された身長がA区分に適合するとき、位置制御部はこのA区分を選出することによって、椅子本体2の座面部8から上方へY1(即ち、5 3.4cm)だけ離れた位置にP点(原点)があると判断する。 そして、マッサージ駆動部5における上部又は下部の動作子4が、上記P点から、所要されるツボ位置(例えば肺兪とする)まで移動するのに必要な距離Y2 (即ち、6.4cm)とその移動方向とを、移動駆動部6に対して指示する。 【0033】勿論、この段階で動作子4がどの位置で停止しているかは考慮に入れる必要があり、位置合わせのための必要な演算がなされる。 このとき、動作子4の現在位置や移動距離を検出するには、移動駆動部6の送りねじ14又は原動部15の回転部分に、ロータリーエンコーダや回転型ポテンショメータ等の回転数検出器(図示略)を設けておき、その回転数からマッサージ駆動部5の移動距離を算出させる方法を採用すればよい。 【0034】またこれに代えて、マッサージ駆動部5の移動をガイドするレール部材(図4の符号32参照)や送りねじ14に沿って直線型ポテンショメータ等の距離検出器(図示略)を設けると共に、マッサージ駆動部5 側に検出子(図示略)を設けて、その移動距離を直接的に計測するようにしてもよい。 上記のように動作子4を目的位置へ移動させた後、マッサージ駆動部5が所定時間のマッサージ動作をすることによって、肺兪に対するマッサージが行われることになる。 【0035】なお、位置制御部には、動作子4が目的位置に到達した後において、移動駆動部6を高さ方向に微動可能にしておくのが好適である。 すなわち、人為的スイッチ操作により動作子を任意量だけ作動させたり、特定位置から一定の範囲内で動作子を移動させながらマッサージを行えるようにするとよい。 この微動の範囲は、 おおよそ40mm程度とするのが妥当である。 【0036】このようにすると、ツボの平均位置と、実際のツボ位置との間にわずかな違いがあっても、確実にツボ位置を刺激することができる。 また、P点(原点) 設定後に使用者が姿勢を変えたとき、凝り位置に微妙なズレがあったとき、特定位置情報に該当する身体部分に傷口があったとき、或いは個人的な好みに合わせるとき等々においても、柔軟な対応が可能になる。 【0037】次に、位置制御部は、動作子4が現在位置から、次に所要されるツボ位置(例えば隔兪とする)まで移動するのに必要な距離Y3(即ち、9.3cm)とその移動方向とを、移動駆動部6に対して指示する。 その後、マッサージ駆動部5が所定時間のマッサージ動作をすることによって、隔兪に対するマッサージが行われることになる。 【0038】位置制御部が、一つの特定位置情報から次の特定位置情報へ向けて移動駆動部6に作動を指示する時間の間隔は、上記説明から明らかなようにマッサージ駆動部5の動作時間を考慮したものとなっている。 このような動作を繰り返すことにより、使用者の全身又は部分領域に対して効果の高いマッサージが自動運転のもとに行われることになる。 【0039】 【実施例】次に、具体的なマッサージプラグラムの一例を説明する。 図6乃至図8は、位置制御部に対して使用者が始動操作をするのと同時に、位置制御部が所定のマッサージプログラムを選出し実行させるまでの手順を示したフローチャートであり、図9は、使用者が始動操作等をするためのコントローラ40を示したものである。 【0040】このコントローラ40は、操作面に開閉可能な蓋41が設けられており、図9(a)に示すように蓋41を開いた状態では使用者の好みに応じた各種のマニュアル操作が可能となっており、また図9(b)に示すように蓋41を閉じた状態では自動治療コースが複数通りの中から選択できるようになっている。 以下では、 蓋41を閉じた状態を主として説明する。 【0041】蓋41の表面側には、その下半部にコース選択部42が設けられ、上半部には透明カバー部43を介して表示面部44が透けて見えるようになっている。 コース選択部42では、自動治療コースの実行パターンとして、外輪状に配された1番〜6番の番号キーの単独によって計6パターンの標準コースを選択することができると共に、これら番号キーの中央に配された短縮モードキーと各番号キーとの組み合わせ操作によって更に計6パターンの短縮コースを選択することができる。 【0042】標準コースは、移動駆動部6によってマッサージ駆動部5を2往復させる間に、各ツボ位置での指圧を3回繰り返すものであり、また、座面部8やフットレスト11等に設けた適宜機構により下肢外側に対して指圧等を加えられるようにしてある。 所要時間は約15 分である。 これに対して短縮コースは、移動駆動部6によるマッサージ駆動部5の往復を1回だけとし、各ツボ位置での指圧も1回だけとし、更に下肢等に対する指圧は省略してある。 ただ、マッサージ動作の内容自体は、 標準コースの同番のものと基本的に同じである。 所要時間は約5分である。 【0043】ここで、各コースについて概説すると次のようなものである。 コース1は、疲労回復コースであり、肩中兪、心兪、肝兪の順に通常圧法でマッサージした後、腎兪を緩圧法でマッサージする。 コース2は、胃腸改善コースであり、厥陰兪及び隔兪を通常圧法でマッサージした後、肝兪及び胃兪を緩圧法でマッサージする。 【0044】コース3は、便通改善コースであり、三焦兪を通常圧法でマッサージした後、大腸兪及び小腸兪を緩圧法でマッサージする。 コース4は、肝臓障害改善コースであり、厥陰兪及び隔兪を通常圧法でマッサージした後、肝兪及び三焦兪を緩圧法でマッサージする。 コース5は、腰痛改善コースであり、脾兪を通常圧法でマッサージした後、腎兪、大腸兪、小腸兪を緩圧法でマッサージする。 【0045】コース6は、神経痛改善コースであり、例えば坐骨神経痛では、大腸兪に通常圧法でマッサージし、小腸兪に緩圧法でマッサージした後、脚等を指圧する。 助間神経痛では心兪に緩圧法でマッサージし、隔兪に通常圧法でマッサージした後、脚等を指圧する。 一方、上記表示面部44には、自動治療コースを選択中であることや選択したコースが何番であるか等について表示するコース表示部45と、動作子4の現在位置を発光点として表示する位置表示部46と、動作時間の残りを表示する経時表示部47と、マッサージ力の強弱を表示する強さ表示部48等が設けられている。 ここで、位置表示部46としては、音声、音(ブザー)、光等により位置を使用者に表示する(知らせる)ものとしてもい。 【0046】なお、コントローラ40において蓋41を開くと、上記コース表示部45は消灯し、これと入れ代わって「お好み手動コース」の表示が点灯するようになっている。 また、コース選択部42も実質的に機能停止状態とされる。 そして、蓋41によって隠されていた部位(コース選択部42に対応する部位)には、上昇歩進釦49と下降歩進釦50とが設けられている。 これら上昇歩進釦49及び下降歩進釦50は、押し操作している間だけ、移動駆動部6を作動させることができるようになったもので、これによって動作子4を任意量だけ歩進できることになる。 【0047】このコントローラ40には、更に蓋41の上部側に電源投入部52と、これに隣接して身長選択部53とが設けられている。 この身長選択部53は、身長設定釦54と複数の表示LED55とを有し、表示LE D55は身長設定釦54の操作によって選択された身長範囲の点灯表示が可能になっている。 ここでは身長の選択は3つの範囲から行うものであり、その範囲の一つは使用者の身長が165cm以下である場合(表1のA, B,C区分に略対応している)、次の一つは使用者の身長が165cmを超え175cm以下である場合(表1 のD,E区分に略対応している)、残る一つは使用者の身長が175cmを超え190cm以下である場合(表1のF区分に略対応している)である。 【0048】かかる範囲分けにより、ツボ位置の個人差にほぼ対応することができ、必要な場合は動作子4の微動により、確実にツボ位置を刺激することができる。 前記表示LED55は、これらの範囲に対応して設けられたものであり、身長設定釦54によって選択された範囲に対応するLED55が点灯する。 コントローラ40の下端部には、マッサージ力の強弱を選択する強さ選択部57と椅子本体2のリクライニング調節部58とが設けられている。 【0049】次に、このコントローラ40を使って自動治療コースを設定する手順を図6乃至図8に基づいて説明する。 このコントローラ40は、使用に不慣れな者にも簡単に操作できるようにするため、入力手順を順次、 表示部の点灯によって導くようになっている。 従って、 最初に電源を投入すると、まず使用者に対して身長選択を行うように促す(ステップ101)。 【0050】そこで使用者は、ステップ102〜104 に示すように身長選択部53の身長設定釦54を適当な回数押し、自己の身長に適合する範囲を選択する。 これによって所定の特定位置情報が読み出される(ステップ105、108、107参照)。 なお、統計的にみて1 65cmを超え175cm以下の身長を有する者が多いという事情を考慮すると共に、操作に不慣れな者が身長設定釦54を押さなかった場合に対処できるようにするため、身長設定釦54が操作されなかったときには、自動的に165cmを超え175cm以下が選択されたものとみなして、所定の特定位置情報が読み出されるようにプログラムされている。 【0051】この後、使用者の好みでマッサージ力の強弱を設定させる(ステップ109〜ステップ115参照)。 この設定をしない場合は、自動的に中程度が選択される。 次に、コントローラ40はコース選択を要求する表示を行って、使用者に所要操作を促す(ステップ1 16)。 【0052】ここで短縮コースを選ぶには、始めに短縮モードキーを押し、続けて1〜6の中の所望する番号キーを押せばよく(ステップ118〜124参照)、また標準コースを選ぶには、短縮モードキーを押さずにそのまま1〜6の中の所望する番号キーを押せばよい(ステップ131〜136参照)。 従って、所定の動作プログラムが読み出され、実行されることになる。 その後におけるプログラムの実行は、前記した各コースに沿って行われるものであり、ここでの詳説は省略する。 【0053】ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。 例えば、マッサージ駆動部5の細部構造や動作子4の形状、個数、及び移動駆動部6の細部構造等は、適宜変更可能である。 すなわち、マッサージ駆動部5等に関して言えば、エアーセルを用いたものだけでなく、機械的に動作する構成としてもよい。 また、本発明に係る椅子型マッサージ機とは、全体が椅子の形態を有するもののみならず、椅子の背凭れ部に装着させることにより、椅子に座った状態で使用できるものを含むものである。 【0054】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明に係る椅子型マッサージ機では、使用者の身長差に関係なく、適切なツボを刺激することができ、マッサージによる治療効果を発揮することができる。 一方、本発明に係る椅子型マッサージ機の運転制御方法では、使用者の全身又は部分領域に対して複数のツボ位置の一つ一つを自動的且つ連続的にマッサージできるようになり、快適となり、またマッサージ効果も良好となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係る椅子型マッサージ機の外観を示す斜視図である。 【図2】本発明においてマッサージの対象とするツボ位置を例示した人体の背面図である。 【図3】マッサージ駆動部を示す正面図である。 【図4】図3のW−W線拡大断面図である。 【図5】図3のH−H線拡大断面図である。 【図6】位置制御部に対して使用者が始動操作をするのと同時に位置制御部が所定のマッサージプログラムを選出し実行させるまでの手順を示したフローチャートの前段部である。 【図7】図6に続くフローチャートの中段部である。 【図8】図7に続くフローチャートの終段部である。 【図9】使用者が始動操作等をするためのコントローラを示したもので、(a)は蓋を開いた状態であり、 (b)は蓋を閉じた状態である。 【符号の説明】 1 椅子型マッサージ機 2 椅子本体 3 背凭れ部 4 動作子 5 マッサージ駆動部 6 移動駆動部 40 コントローラ 46 位置表示部 |