【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ネットワークを介して作動指令可能な直動アクチュエータユニットに関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、ロボット技術(Robot Technology)の発展により、力覚センサを利用した力制御技術に注目が集まっている。 力制御技術を用いることにより、例えば、福祉・介護分野において、介護機器を人と協調させて介護作業を実現することが可能となる。 【0003】 介護機器として、介護用ベッドや立上がり支援機器、車イス、その他が従来から知られている。 これらの介護機器は、要介護者の力をアシストすることにより要介護者の自立を促したり、要介護者を介護する介護者の力のアシストにより介護者の負担の軽減を図るために用いられる。 【0004】 離床支援を行う機器としてはリフトのようにものが市販されているが[非特許文献1]、これらの機器は、介護者が使用することを前提として開発されており、介護者の負担を軽減することは出来るが、要介護者が自ら使用して、離床を実現することは難しい。 【0005】 要介護者の自立的な離床を支援するシステムとしては、天井のレールにロボットアームを設置したシステム[非特許文献2]や、鋼鉄製の天井と永久磁石を用いた天井面移動機構を利用した歩行支援システム[非特許文献3]等が開発されている。 しかし、これらのシステムは通常の家屋等に設置するためには大幅な改修作業が必要となる。 また、大川井らは、比較的小型の離床支援システムを提案しているが、その操作はジョイスティックによって行われ、誰がどのように操作するか等の操作性の議論が必要となる[非特許文献4]。 【0006】 永井らは、ワイヤ駆動型のパワーアシスト型離床支援システムを提案し、利用者の状態に応じた適切な離床支援法の研究開発を行っている[非特許文献5]。 利用者がシステムに加える力に基づいて離床の支援を行うことは非常に有効であるが、この支援機も比較的大型になるという問題がある。 【0007】 【非特許文献1】 http://www. hcr. or. jp/english. html 【非特許文献2】 N. Suzuki, et al. ”System assisting walking and carrying daily necessities with an overhead robot arm for in−home elderlies”, Proc. of the 22nd Annual Int'l Conf. of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society, Vol. 3, pp 2271−2274, 2000 【非特許文献3】 杉本、他、“天井吊り下げ型歩行支援システムの機能と安全対策”、日本ロボット学会学術講演会予稿集、1L19、2002 【非特許文献4】 大川井、他、“自助能力の促進を目指した移動支援器”、第45回自動制御連合講演会、pp. 319−320、2002 【非特許文献5】 永井、他、“自立的移乗動作のためのパワーアシスト装置の制御方法に関する実験的検討”、第8回ロボティクスシンポジア、pp. 136−141、2003 【0008】 一方、インターネットをはじめとするコンピュータ通信が、近年発展し、ネットワークを介して遠隔地の装置を駆動したり制御することが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、参照)。 【0009】 【特許文献1】 特開2002−159760号公報【特許文献2】 特開2003−18569号公報【0010】 特許文献1の「コンピュータ通信を利用した玩具駆動装置及びその方法」は、図5に示すように、ネットワーク上でコンピュータ通信を介してメッセージ情報を提供する複数の通信サーバー50、53と、それら通信サーバーから入力を受けたメッセージ情報を解析する各駆動機器51、54と、それら駆動機器からメッセージ情報の入力を受けて、それに対応する任意の行動、文字情報、オーディオ情報またはビデオ情報を出力する玩具52、55とを備え、コンピュータ通信を介して提供されたメッセージ情報によって特定の動き/音声を実施するものである。 【0011】 特許文献2の「移動体を制御する方法及び装置及び記憶媒体」は、図6に示すように、インターネット等の通信回線64を介して接続されたサービスシステム61、利用者システム63及び観覧者システム65と移動体システム62および撮影システム66を備え、双方向通信により移動体を制御するものである。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】 介護機器である介護用ベッドには通常2〜4台の直動アクチュエータが用いられている。 また立上がり支援機器(離床システム)や車イス等でも、要介護者の体重を支えながら昇降動作等を行うために直動アクチュエータを用いることが多い。 【0013】 従来、直動アクチュエータを用いて力制御を実現するためには、別々に開発されたアクチュエータやそれらを駆動させるためのモータドライバ、コントローラ、力覚センサ等を組み合わせシステムを構築しなければならなかった。 そのため、専用設計となり、拡張性が低く、システムは必然的に高価となるという問題点があった。 【0014】 また、近年、複数の介護機器(ベッドシステム、離床システム、車イス、その他)を組み合わせて、被介護者や介護者の負担をさらに軽減するシステムの構築が望まれているが、従来の機器には機器間のインタフェース機能がなく、全体のシステムを再構築する必要が生じる。 【0015】 本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。 すなわち、本発明の目的は、アクチュエータモジュール自体に力制御を含む制御・診断機能を内蔵させつつ、ネットワークを介して複数のユニット、さらには機器を制御することができ、安全性と信頼性が高く、汎用性、拡張性が高く、システム化が容易で、コストダウンが可能な直動アクチュエータユニットを提供することにある。 【0016】 【課題を解決するための手段】 本発明によれば、対象物を直動する直動アクチュエータモジュールと、該直動アクチュエータモジュールに加わる負荷を検出する力センサと、直動アクチュエータモジュールの速度、位置、力等を制御するサーボコントロールモジュールとからなり、これらが一体的に構成されており、 前記サーボコントロールモジュールは、ネットワークから速度、位置、力等の制御指令を受信しかつそれらの情報を送信する双方向のネットワーク機能と、速度制御・位置制御・力制御機能と、検出された直動アクチュエータモジュールの出力、速度、位置及び電流値から安全性の確保と異常を検出する自己診断機能とを有する、ことを特徴とする直動アクチュエータユニットが提供される。 【0017】 上記本発明の構成によれば、直動アクチュエータモジュールと力センサとサーボコントロールモジュールが一体的に構成されているので、このような直動アクチュエータを用いることにより、容易に力制御系を利用したシステムの構築が可能となり、例えば福祉・介護分野等では、人間の力のアシストや人間が加える力情報に基づいた適切なシステムの運動制御が実現できる。 【0018】 また、サーボコントロールモジュールが双方向のネットワーク機能を有しているので、複数の直動アクチュエータを組み合わせて利用することが可能となり、様々なアシストシステムの構築が可能になる。 また、直動アクチュエータモジュールと力センサとサーボコントロールモジュールがユニット化されているので、非常に拡張性に優れており、システムの変更や拡張を容易に行うことも可能となる。 さらに、マイクロプロセッサの作動プログラムによって安全性を確保し異常を検出する自己診断機能を持たせることができるので、要介護者の体重を支える等の必要以上の出力の発生を防止することができる。 【0019】 本発明の実施形態の一例によれば、前記直動アクチュエータモジュールは、駆動モータと、そのモータの動きを直動に変換するメカニズムと、該駆動モータの回転角度を検出するエンコーダとからなる。 【0020】 この構成により、ネジ部材として例えば台形ネジを用いることにより、ストロークの長い直動アクチュエータを低コストで実現できる。 また、エンコーダで駆動モータの回転角度を検出することにより、直動アクチュエータモジュールの速度と位置を容易かつ低コストで検出できる。 【0021】 前記力センサは、対象物の反対側で直動アクチュエータモジュールを弾性的に支持する弾性支持部材と、該弾性支持部材の出力による変位を検出する変位検出器とからなる。 【0022】 この構成により、直動アクチュエータモジュール全体に加えられた力を検出することができる。 また弾性支持部材として例えばバネを用い、変位検出器として可変抵抗やポテンショメータを用いることにより、直動アクチュエータモジュールの出力を容易かつ低コストで検出できる。 【0023】 前記サーボコントロールモジュールは、ネットワークからの受信指令と作動プログラムを記憶する記憶装置と、作動プログラムに基づき直動アクチュエータモジュールを制御しかつ検出された出力、速度、位置及び電流値から安全性の確保と異常を検出するマイクロプロセッサと、マイクロプロセッサと直動アクチュエータモジュール及び力センサとの間で信号を変換するインタフェースと、制御信号を駆動信号に変換するモータドライバとを有する。 【0024】 この構成により、ネットワークを介して受信指令や作動プログラムを記憶装置に記憶させ、マイクロプロセッサ、インタフェース及びモータドライバにより作動プログラムに基づき直動アクチュエータモジュールを制御しかつ検出された出力、速度、位置及び電流値から安全性の確保と異常検出をすることができる。 【0025】 【発明の実施の形態】 以下に本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。 なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。 【0026】 図1は、本発明の直動アクチュエータユニットの構成図である。 この図に示すように、本発明の直動アクチュエータユニット10は、直動アクチュエータモジュール12、力センサ18及びサーボコントロールモジュール20からなり、これらが一体的に構成されている。 【0027】 直動アクチュエータモジュール12は、対象物1を直動する方向に伸びる細長い駆動ロッド13と、駆動ロッド13に取り付けられたナット部材14aとこれと螺合する細長いネジ部材14bからなる直動モジュール14と、ネジ部材14bをその軸心を中心に回転駆動する駆動モータ15と、駆動モータ15の回転角度を検出するエンコーダ16とからなる。 【0028】 対象物1は、例えば要介護者用の介護用ベッドの一部であり、駆動ロッド13の先端部とは適切な先端部材(図示せず)を介して連結される。 また直動アクチュエータモジュール12を支持する支持部材11は、介護機器のフレーム等に適切な連結部材(図示せず)を介して連結される。 【0029】 駆動ロッド13は、この例では先端部が閉じた中空円筒形のパイプであり、その末端部にナット部材14aが固定される。 ネジ部材14bは、好ましくは台形ネジであるが、高精度を必要とする場合にはボールネジでもよい。 また直動モジュールとしてネジ以外の機構、例えばラック・ピニオン機構を用いてもよい。 【0030】 駆動モータ15は好ましくはサーボモータであり、この例では歯車減速機17を介してネジ部材14bを回転駆動する。 エンコーダ16は、好ましくは駆動モータ15に内蔵又は一体化されており、駆動モータ15の回転角度を検出する。 なお、エンコーダ16は、アブソリュート式でもインクリメンタル式でもよい。 また駆動モータ15とエンコーダ16の代わりにパルスモータを用いてもよい。 なお、図1に示すように、直動モジュール14、駆動モータ15、及びエンコーダ16は同一のモジュール本体9に格納されている。 【0031】 力センサ18は、対象物1の反対側で直動アクチュエータモジュール12を弾性的に支持する弾性支持部材18aと、弾性支持部材18aの変位を検出する変位検出器18bとからなる。 【0032】 支持部材11は、モジュール本体9の基部を収容する凹部を有し、モジュール本体9の基部を上下動可能に保持する。 弾性支持部材18aはモジュール本体9の基部と支持部材11の間に挟持され、直動アクチュエータモジュール12の反力により下方に押し付けられるようになっている。 【0033】 弾性支持部材18aは、例えば圧縮バネであり、変位検出器18bは、例えば可変抵抗、ポテンショメータであり、弾性支持部材18aの変位を検出し、これから直動アクチュエータモジュール12を検出する。 なお、力センサ18としてその他の周知のセンサ、例えばロードセルを用いてもよい。 【0034】 図2は、図1のサーボコントロールモジュールの構成図である。 この図に示すように、サーボコントロールモジュール20は、通信ユニット21、記憶装置22、マイクロプロセッサ23、インタフェース24及びモータドライバ25を有する。 【0035】 通信ユニット21は、好ましくは同一の介護システムを構成する別のコンピュータ等と狭域通信網(LAN)で接続される。 記憶装置22は、RAM,ROM,フラッシュメモリ、その他の記憶媒体であり、ネットワーク2からの受信指令と作動プログラムを記憶する。 【0036】 インタフェース24は、A/D変換器24a、D/A変換器24b、カウンタ24c等からなり、マイクロプロセッサ23と直動アクチュエータモジュール12のエンコーダ16、モータドライバ25及び力センサ18との間で信号を変換する。 モータドライバ25は、制御信号をモータを駆動する駆動信号に変換する。 【0037】 マイクロプロセッサ23は、CPUを内蔵し、記憶装置22に記憶された作動プログラムに基づき直動アクチュエータモジュール12のモータ15を制御する。 また、同時にマイクロプロセッサ23は、力センサ18で検出された力、エンコーダ16から出力される速度と位置、及びモータドライバ25から受信する電流値から安全性の確保と異常を検出する。 【0038】 安全性の確保は、例えば要介護者の体重を支える等で必要となる力(例えば約100kg)を超える力を検出する場合に、装置の作動を停止し、要介護者の安全を確保する。 異常を検出は、例えばモータに電流値が正常値以上である場合に装置の異常動作を検知する。 【0039】 なお、上述した通信ユニット21、記憶装置22及びマイクロプロセッサ23をコンピュータ(PC)として一体化してもよい。 【0040】 図3は、本発明のアクチュエータを用いたネットワークシステム図である。 この図において、複数の直動アクチュエータユニット10が、同一の狭域通信網(LAN)2を介して上位コンピュータ30に接続される。 例えば複数のアクチュエータ10がベッドシステムを構成し、別の複数のアクチュエータ10が離床システムを構成する。 アクチュエータ10は、その他の複数の介護機器(ベッドシステム、離床システム、車イス、その他)にも同様に用いることができる。 【0041】 各アクチュエータ10はそれぞれ独立に、双方向のネットワーク機能と自己診断機能を有し、記憶装置に記憶された作動プログラムに基づき直動アクチュエータモジュールを制御しかつ検出された出力、速度、位置及び電流値から安全性の確保と異常を検出するようになっている。 上位コンピュータ30は、各アクチュエータ10にLAN2を介して指令値を指示する機能と、必要によりプログラムを書き換える機能を有する。 【0042】 上述した本発明の構成によれば、直動アクチュエータモジュール12と力センサ18とサーボコントロールモジュール20が一体的に構成されているので、このような直動アクチュエータを用いることにより、容易に力制御系を利用したシステムの構築が可能となり、例えば福祉・介護分野等では、人間のアシストや人間が加える力情報に基づいた適切なシステムの運動制御が実現できる。 【0043】 また、サーボコントロールモジュール20が双方向のネットワーク機能を有しているので、複数の直動アクチュエータを組み合わせて利用することが可能となり、様々なアシストシステムの構築が可能になる。 また、直動アクチュエータモジュールと力センサとサーボコントロールモジュールが一体的に構成されているので、非常に拡張性に優れており、システムの変更や拡張を容易に行うことも可能となる。 【0044】 さらに、サーボコントロールモジュール20が安全性を確保し異常を検出する自己診断機能を有するので、要介護者の体重を支える等の必要以上の出力の発生を防止し、かつ異常動作を早期に発見することができる。 【0045】 以下、本発明の直動アクチュエータの制御方法について説明する。 本発明の直動アクチュエータは、直動アクチュエータモジュールとサーボコントロールモジュールが一体構造となっており、その下部に弾性支持部材を利用した力センサが搭載されている。 弾性部材を使用しているため、直動アクチュエータモジュールに力が加わると、弾性部材が変形し、直動アクチュエータモジュールと力センサのフランジとの間に変位が生じる。 この変位をポテンショメータ等で検出することにより、直動アクチュエータに生じる力を検出する。 いま、ポテンショメータの変位をΔx pとおくと、直動アクチュエータに加わる力fは[数1]で求めることが出来る。 【0046】 【数1】
【0047】 ただし、k
pは剛性係数である。 ここで、離床支援システムのようなパワーアシストシステムを実現するため、直動アクチュエータに加わる力に基づいてそのアクチュエータの制御方法の一例を示す。 いま、直動アクチュエータに搭載されたモータがモータドライバによって駆動され、指令した目標角速度で回転するものと仮定し、直動アクチュエータを[数2]式の特性を満たすように制御する。
【0048】
【数2】
【0049】
ただし、dは粘性係数、kは剛性係数である。 また、xは直動アクチュエータの実際の軌道、xdは直動アクチュエータの目標軌道である。 この制御系を用いることにより、図4に模式的に示すように、直動アクチュエータを利用者の力に基づいて動かすことが可能となる。 また、利用者の特性に応じて目標軌道や粘性係数、剛性係数等を決定することにより、適切な離床支援等が実現できる。 その他、ニューラルネットワーク等の手法を利用し、利用者の加える力に基づいてリアルタイムに目標軌道や各パラメータを変化させることによって、利用者の力に基づいた支援が実現できる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0051】
【発明の効果】
上述したように、本発明の直動アクチュエータユニットは、ネットワークを介して複数の機器を制御することができ、安全性と信頼性が高く、汎用性、拡張性が高く、コストダウンが可能である、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の直動アクチュエータユニットの構成図である。
【図2】図1のサーボコントロールモジュールの構成図である。
【図3】本発明のアクチュエータを用いたネットワークシステム図である。
【図4】本発明のアクチュエータのシステム図である。
【図5】従来システムの構成図である。
【図6】従来システムの別の構成図である。
【符号の説明】
1 対象物、2 狭域通信網(LAN)、
9 モジュール本体、10 直動アクチュエータユニット、
11 支持部材、12 直動アクチュエータモジュール、
13 駆動ロッド、14 直動モジュール、
14a ナット部材、14b ネジ部材(台形ネジ)、
15 駆動モータ(サーボモータ)、16 エンコーダ、
18 力センサ、18a 弾性支持部材(圧縮バネ)、
18b 変位検出器(可変抵抗、ポテンショメータ)、
20 サーボコントロールモジュール、
21 通信ユニット、22 記憶装置、
23 マイクロプロセッサ、24 インタフェース、
24a A/D変換器、24b D/A変換器、24c カウンタ、
25 モータドライバ、30 上位コンピュータ
|