【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、病院やその他の医療介護等の医療現場において、患者等の搬送に使用されているストレッチャーに着脱自在に取付け、取外しの可能なストレッチャーの装着ユニットに関する。 【0002】 【従来の技術】患者や病人を搬送する際に、病院等における医療介護の現場で使用されるストレッチャーは、走行するための動力装置が付属しておらず、人為的な動力に頼る搬送が通常となっていたので、介護者には大きな負担となっていた。 【0003】また、従来より電動の医療ベッドや電動車椅子等は使用されているが、これらは本体の内部に内部機構やモーター、電源等を組込んでいるために非常に高価であり、また、導入する際には製品として新規に一台ずつ揃えなければならないために大変なコストがかかり、簡単には導入することができなかった。 ストレッチャーに関しても、電動のストレッチャーの開発はコスト面等において問題が残り、現在でも病院内等の医療介護の現場において患者、病人等の搬送は人為的な動力のみに頼るストレッチャーを使用している現場がほどんどであるというのが現状である。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】通常、ストレッチャーを用いて患者を搬送する際にはどうしても一人で行なう事が多くなってしまうが、ストレッチャー本体に患者を含めると約80kg〜150kg位の重量になり、これを介護者が一人で搬送することは大変重労働であった。 【0005】特に、曲がりくねった通路やスロープ等の上下の高低差のある通路、或は段差のある場所や長い廊下等を患者や病人をストレッチャーに乗せた状態で移動するのは更なる労力を要することもあり、場合によっては手助けが必要である場合もあった。 【0006】また、従来のストレッチャーの多くは搬送時に小回り可能になるように接地面との接触部において、回動自在に設けた4輪のキャスターを装着しているが、ストレッチャーの走行時には各々のキャスターの車輪の向きが進行方向に対して別々の向きになることが多く、不安定な走行であった。 このため、特にストレッチャーの直進性と旋回性は悪くなっていた。 【0007】このように、患者や病人のストレッチャーでの搬送は介護者にとっては重労働であったため、医療業務等において負担がかからない操作性の安定した安価なストレッチャーが切望されていた。 【0008】本発明は、上記の実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、操作に要する操作力を低減可能で、走行性が良く、且つコストをおさえた操作性に優れたストレッチャーの装着ユニットを提供することによって患者の搬送に伴う医療業務の負担を軽減することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明のストレッチャーの装着ユニットは、少なくとも一対の車輪の間に適宜の駆動手段で回転する駆動軸に対して、転動自在に当接させると共に、一対の車輪を駆動軸を中心に揺動可能に設けてユニット本体を構成し、このユニット本体は、何れか一方の車輪が接地したときに自動走行するように構成した。 【0010】更に、ユニット本体をストレッチャーに着脱可能であり、また、上記のストレッチャーの装着ユニットは、押圧把持部付近に操作盤を着脱自在に設けるとよい。 【0011】 【発明の実施の形態】本発明におけるストレッチャーの装着ユニットの実施の形態を図に従って説明する。 図において、1はストレッチャー本体、5はユニット本体、 24は係止具、25は操作盤である。 本体ユニット5 は、モーターブラケット6bに取付けられた電動モーター6と電動モーター6の出力を伝達するカップリング6 a、電動モーター6の出力を車輪8に伝達する駆動軸であり、かつ車輪8を揺動させる中心軸としての機能を併せ持つセンターシャフト7、センターシャフト7に圧入し、車輪8に摩擦力によりトルクを伝達するウレタンローラ7a、センターシャフト7に軸受9aを介して揺動可能に設けたキャリア9等からなっている。 【0012】キャリア9には、一対の車輪8、8がセンターシャフト7の軸方向に摺動可能に取付けられ、この車輪8、8は、ウレタンローラ10に当接し、ウレタンローラ10aからのトルクによって回動可能になっている。 【0013】図6に示すように、キャリア9の先端付近に押ねじ11を設け、この押ねじ11を締緩することによって車輪8、8の軸心を支持する中心軸8a、8aをセンターシャフト7の方向に摺動自在に調節してウレタンローラー7aに対する車輪8の押圧力を調整可能に設けている。 【0014】センターシャフト7の先端付近にはキャリア9を揺動するトルクを伝達する摩擦クラッチ10を設け、センターシャフト7は、車輪8、8が組込まれたキャリア9と共に軸受9aを介してメインブラケット12 によって支持され、更に以上の各部品はベース板13に取付けられている。 【0015】上記の他には、図示しないが動力源であるバッテリー、主電源スイッチ、電動モーター6を制御するための制御ユニット、速度調整ボリューム、バッテリーを充電するための接続ソケットが設けられ、上記の部品はカバー15で覆われ、ベース板13に取付けられている。 【0016】このユニット本体5に取付金具23aを取付け、また、係止具24をアタッチメントとしてストレッチャー本体1に装着すると、ユニット本体5は、ストレッチャー本体1に着脱自在になる。 【0017】操作盤25は、ユニット本体5を操作するためのもので、介護者がストレッチャー本体1を運搬する際に把持する付近に設ける。 操作盤25には、ストレッチャー本体1を前後退させる前進ボタン26aと後退ボタン26bからなる走行ボタン26を設け、また動作状態やバッテリーの残量等は表示部27にLED等によって表示される。 なお、表示部27は、接続コネクタ付制御ケーブル(図示せず)によってユニット本体5と接続される。 【0018】ユニット本体5内のバッテリーが消耗し、 充電量が少なくなって表示部27に表示された場合には、外部の充電器(図示せず)によって充電を行なう。 【0019】次に実際の動作及び作用を説明する。 速度調整ボリュームを調節して任意の速度に設定し、主電源スイッチをオンにするとユニット本体5による走行が可能な状態になる。 速度調整ボリュームと主電源スイッチはユニット本体5に設け、ユニット本体5は、ストレッチャー本体1の下部に位置しているので、人体との接触等による誤作動の防止している。 【0020】走行ボタン26を押すことによって走行が開始し、走行を停止する際には走行ボタン26を離すことによって簡単に停止する。 【0021】表示部27のLEDは、充電が必要である状態を赤色点灯することにより、動作中におけるバッテリーの充電時期を知らせることになっている。 【0022】走行ボタン26を押した時にストレッチャー本体1が急激に発進することがなく、走行開始時において患者等の被搬送者に不快感を与えることがない。 これは、安全のために走行ボタン26を押した際に電動モーター6の回転速度を徐々に速くするようにしているためであり、例えば速度調整ボリュームの調整を忘れ、速度の設定が速くなっている状態でもスムーズな発進が可能である。 【0023】前進ボタン26aを押し、電動モーター6 が回転を始めると、電動モーター6のトルクがセンターシャフト7に伝達し、摩擦クラッチ10を介してキャリア9が揺動する。 また、センターシャフト7のウレタンローラー7aと当接している車輪8、8が回転する。 【0024】摩擦クラッチ10は、その一側部をキャリア9に設けた方形状の貫通穴9bに挿入され、また、残りの一側部は略直角状に設け、センターシャフト7に対して回動可能に設けた摩擦クラッチ10の両側面を無給油軸受材からなるスラストワッシャー10aで挟むようにして更に片側をウエーブワッシャー10bによって押圧する構造になっている。 従って、センターシャフト7 の回動はスラストワッシャー10aを介してウエーブワッシャー10bと摩擦クラッチ10との接触面の摩擦力によって摩擦クラッチ10に伝わり、摩擦クラッチ10 と共にキャリア9がセンターシャフト7を中心にして揺動する。 【0025】なお、ウエーブワッシャー10bを交換することによってスラストワッシャー10aと摩擦クラッチ10の当接時の摩擦力を変えることが可能になり、任意のトルクの伝達力に調整することができる。 【0026】キャリア9は、車輪8が接地面Bに接地するまでセンターシャフト7を中心にして揺動し、接地以降はセンターシャフト7は摩擦クラッチ10に対して空転する。 このとき、軸受け材として設けたスラストワッシャー10aによって摩擦クラッチ10は保護され摩耗が防がれる。 センターシャフト7に対して摩擦クラッチ10が滑ることによる走行への支障はないが、若干のトルク損失が生じるので、防止策としてウエーブワッシャー10bの加圧の代りにソレノイド等を使用して加圧力を遮断してもよい。 【0027】車輪8が接地面Bに接地した後においては、キャリア9の揺動は停止し、電動モーター6のトルクの殆どが車輪8が回転するための動力となり、ストレッチャー本体1は移動を開始する。 【0028】ストレッチャー本体1が移動している際、 図8において接地面Bには車輪8が回転するトルクの力と、接地面Bに加わっている重量の力の和が地中の方向に向って加わっているので、車輪8を接地させる向きに新たに外力を加えることなく走行に必要な駆動力を接触面Bに伝えることができる。 【0029】後退ボタン26bを押すと、電動モーター6が前進ボタン26bを押す場合と逆方向に回転するため、ストレッチャー本体1は後退する。 走行時においては、走行ユニット5の車輪8、キャリア9、摩擦クラッチ7の各部品の設置位置をセンターシャフト7を中心にして前後に対称に設けているため前進走行時と同様の駆動力が安定して得られる。 【0030】走行ボタン26をオフにして電動モーター6の回動を停止すると、車輪8、8が回転を停止すると共に、車輪8、8とセンターシャフト7に設けたウレタンローラ7aの接触面において撓みが発生している状態から開放され、接地面Bに対して反発力が生じ車輪8、 8が接地面Bから離れるので、自由車輪2のみの走行が可能になり、通常のストレッチャーと同様に使用できる。 【0031】また、電動モーター6の回転を停止したときに、車輪8、8の停止位置を車輪同志が水平の状態になるように保ちたい場合には、センサー、マイクロスイッチ等の検出器を設け、この検出器によってキャリア9 の水平位置の検出を行ない、電動モーター6を微量に回動させることによって制御することができる。 【0032】ユニット本体5をストレッチャー本体1に取付ける際には、横梁23、取付金具23a、係止具2 4をストレッチャー本体1とユニット本体5の間に介在して設ける。 ユニット本体5において、ユニット本体5 に横梁23を取付ねじ22によってねじ止めし、更に横梁23に取付金具23aを取付ねじ24cによってねじ止めする。 なお、この横梁23と取付金具23aは、交換可能であるのでストレッチャー本体1のサイズや種類に応じて異なる横梁23と取付金具23aを用意すれば、あらゆるストレッチャー本体1への走行ユニット5 の取付けが可能になる。 なお、23cは長穴であり、取付金具23aの取付位置を調節可能にしている。 【0033】一方、ストレッチャー本体1の下部のパイプフレーム3において、取付金具23aが接続する部位に係止具24の係止部24aを係止する。 次に、取付金具23aの係止片23bにストレッチャー本体1に係止した係止具24の取付部24bを係止し、最後に取付工具16でターンキャッチ24dを締めつけることによって、ユニット本体5をストレッチャー本体1に装着することができる。 【0034】ターンキャッチ24dは、通常は内部の弾発部材(図示せず)によって取付部24bが外側方向に弾発付勢しているが、取付工具で締め付けると内側方向に付勢するため、取付部24bは係止片23bに強固に嵌着する。 なお、ターンキャッチ24dの代りにパッチンジョウ等を使用してもよい。 【0035】ストレッチャー本体1にユニット本体5を完全に固定したいときは、横梁23を直接ストレッチャー本体1のパイプフレーム3に固着や接着等の方法によって固定すればよい。 【0036】本実施の形態においては、ユニット本体5 は係止具24によってストレッチャー本体1のパイプフレーム3に引き上げられるように取付けられており、またパイプフレーム3に係止具24の係止部24aが僅かに内側に接触しているだけなので、ストレッチャーとしての他の機能を妨げることがなく、ストレッチャー本体1の下部付近に積載用のネットを設ける場合や、或はストレッチャー本体1の昇降機能等の障害になることがない。 【0037】係止具24は、パイプフレーム3の任意の位置に取付け可能であるのでユニット本体5をストレッチャー1のパイプフレーム3の所望の位置に設けることができる。 また、係止部24aとパイプフレーム3が当接する部位にスポンジゴム等の緩衝材を設けると、ストレッチャー本体1に対して金具の滑りを防止して強固に固定することができると共に、ストレッチャー本体1との間に寸法誤差がある場合にも誤差を吸収して取付けが可能になる。 【0038】走行の際は、車輪8の回動による補助走行が可能になり、前進、後退の選択も前進ボタン26a、 後退ボタン26bの切替によって簡単にできるので介護者はストレッチャー本体1の操舵のみ行なえば良く、本体を押圧する力をさほど加える必要がないので負担にならない。 【0039】また、従来のストレッチャーは4輪のキャスターのみであるため、操舵の際に直進性が悪く、斜めに移動したり蛇行したりして思うように進まず大変であったが、本発明は向きを固定して車輪8、8を設けているので直進時の安定性が良くなる。 旋回を行なう場合においても車輪8、8において旋回中心が定まり、車輪8 がストレッチャー本体1の中心点の役割を成し、更に残りの自由車輪2は回動自在であるから旋回性も向上し、 操舵性が大幅に改善される。 【0040】接地面Bが登坂又は下り坂のように勾配がある場合においては、電動モーター6の登坂能力の範囲内の勾配であれば自走することが可能であり、さらなる勾配を有する坂道であっても介護者がストレッチャー1 を搬送する補助動力となる。 なお、本実施の形態のストレッチャーの装着ユニットは約150kgの負荷があるときに約4°の登坂能力がある。 【0041】また、下り坂を搬送する場合には、本機を制動装置として使用することが可能になる。 例えば、後退で坂を下る場合に、走行ボタン26の切替を前進ボタン26aにして、走行ユニット5の前進側の車輪8を接地面Bに接地してストレッチャー本体1を反対向きにして後退するようにすると、電動モーター6のトルクの向きが進行方向と逆転しているので進行方向に対してブレーキの作用があり、ゆっくりと坂道を下ることができる。 【0042】エレベーターに乗降する場合など、段差のある場所を移動するときや接地面Bに起伏が存在する場所を移動するとき等においては、揺動式のキャリア9が接地面に沿って揺動し、車輪8、8が接地面Bに沿って回動するのでスムーズに移動でき、また、安定した駆動力を接地面Bに伝達出来るためにこれらの段差の通過も簡単である。 【0043】ユニット本体5を異なるサイズ、種類等のストレッチャーに付け替える場合には、アタッチメントとして設けた横梁23と取付金具23aと係止具24を交換するだけで簡単に取付け可能であると共に、メンテナンス等によってユニット本体5の取り外しの必要が生じた場合でも、係止具24のターンキャッチ24dを取付工具16で緩めることによって取付部24bと係止片23bの嵌着が外れるので、簡単に脱着でき、係止具2 4をストレッチャー本体1から取外す必要がない。 従って、ユニット本体5は、現在病院内で使用しているストレッチャーに補助的に使用することが可能な走行補助ユニットであるので、コストを低く抑えることができる。 【0044】また、操作盤25は、介護者がストレッチャー本体1を運搬する際に把持する付近に着脱自在に設け、また、パネルには各操作ボタンと表示パネルを一体に手元付近に設けているので見易くなっており、操作も簡単である。 【0045】なお、本発明のストレッチャーの装着ユニットは、装着する対象をストレッチャーのみに限ることなく、例えば食事運搬用のワゴン、工場等において使用される荷物搬送用の台車等にも使用することができ、医療現場以外の業務でも搬送、運搬等に携わる作業者の負担を軽減することができる。 【0046】 【発明の効果】以上のことから明らかなように、本発明のストレッチャーの装着ユニットは、ストレッチャーを搬送する際の操作力を低減し、また、走行性が良く、且つコストをおさえることができ、操作性にも優れているので、医療業務の負担を軽減する等の優れた効果を有する。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明のストレッチャーの装着ユニットを装着した状態を示す正面図である。 【図2】図1のA−A線断面図である。 【図3】図1の右側面図である。 【図4】本発明のストレッチャーのユニット本体を示す右側面図である。 【図5】図4の内部構造を示す平面図である。 【図6】車輪の回転を示す説明図である。 【図7】停止時の車輪の状態を示す説明図である。 【図8】運転時の車輪の状態を示す説明図である。 【図9】ユニット本体の装着した状態を示す断面図である。 【図10】ユニット本体の接続部分を示す説明図である。 【図11】表示パネルを示す斜視図である。 【符号の説明】 1 ストレッチャー本体 5 ユニット本体 7 センターシャフト 8 車輪 25 操作盤 |