手動リフティングスリング装置

申请号 JP2015557312 申请日 2013-02-18 公开(公告)号 JP6219412B2 公开(公告)日 2017-10-25
申请人 ユー.エス.パシフィック ノンウーブンス インダストリー リミテッド; U.S.PACIFIC NONWOVENS INDUSTRY LIMITED; 发明人 ウォン、チョー キー;
摘要
权利要求

布製の、患者の臀部及び足部を支持する底部支持部、 前記底部支持部に対し傾斜をなして接合されて、前記患者の背部を支持する後側支持部、 左右両側においてそれぞれ患者の位置を規制する左側ガード部及び右側ガード部、を含み、 前記左側ガード部及び右側ガード部は、いずれも前記底部支持部と後側支持部の双方に接合され、かつ前記左側ガード部と右側ガード部には、リフティングハンドルが少なくとも2つずつ設けられ、 また、前記後側支持部及び前記底部支持部は等脚台形形状であり、前記後側支持部の下側縁と前記底部支持部の後側縁が接合され、前記後側支持部と前記底部支持部とのなす角は鈍角であり、 前記左側ガード部及び前記右側ガード部は略三角形状であり、各2つの辺が後側支持部と底部支持部に接合し、更に、その略三角形状の左側ガード部及び右側ガード部は、2つの三角形の接合物であり、前記2つの三角形の接合部位は、前記後側支持部と前記底部支持部との接合部位から対辺へ向かう直線部位であり、 前記左側ガード部及び右側ガード部前記にそれぞれ含まれる前記2つの三角形状部分に、1つずつリフティングハンドルが設けられ、 前記布は患者間の交差感染を防止するための生分解性の重合体材料からなり、前記生分解性の重合体材料は、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシ酪酸、またはこれらのうち複数の材料の混合物を含み、 前記布は、スパンレースまたはニードルパンチで形成された連続フィラメントウェブまたは短繊維ウェブを用いて作製される ことを特徴とする手動リフティングスリング装置。前記底部支持部、後側支持部、左側ガード部及び右側ガード部の辺縁が折り畳まれている及び/または補強されており、かつ一体的に縫合されている 請求項1に記載の手動リフティングスリング装置。前記底部支持部と後側支持部は人体形状に合うよう裁断され、かつ襞が設けられている 請求項1に記載の手動リフティングスリング装置。前記布にはマークが設けられている 請求項1に記載の手動リフティングスリング装置。前記布の片側または両側には通気性の非生分解性または生分解性のシートが付着している 請求項1に記載の手動リフティングスリング装置。

说明书全文

本発明はリフティング装置に関し、具体的には手動リフティングスリング装置に関する。

通常、病院ではリフティングスリング装置を用いて患者や歩行困難者を搬送する。リフティングスリング装置の使用にあたっては、事故防止と患者間の交差感染回避が重要な課題となる。最も初期のリフティングスリング装置は織布で作製されており、かつ構造が複雑で設計が合理的とはいえず、製造コストの増加を招来していた。

よって、コスト的な観点からこうしたリフティングスリング装置は繰り返し使用する必要があり、必然的に交差感染が発生しやすくなっていた。織布製スリングは、洗浄過程、特にスリングの耐熱温度で洗浄した場合、必ずしも感染源となる生体を死滅させられるとは限らない。そこで、スリングの耐熱温度よりも高い温度で紡織スリングを洗浄し、更に乾燥させることで感染源となる生体を全て死滅させようとすると、スリングを傷めてしまう恐れがある。また、スリングは使用地点と洗浄地点間を搬送する際に紛失したり損傷したりする可能性があるため、一部のスリングが洗浄中や搬送中の場合であっても患者に使用できるよう、十分な数の予備スリングを用意しておかねばならない。これらによる不都合から、一部の病院ではスリングの使用を禁じている。リフティングスリング装置のコストを削減できれば、使い捨てまたは有限回数だけ使用可能なリフティングスリング装置の普及に有利となり、患者間の交差感染という課題を解決可能となる。よって、設計が合理的で低コストなリフティングスリング装置の開発が、目下のところ早急に解決を要する課題とされている。

本発明の課題は、従来のリフティングスリング装置における構造が複雑で高コストであるとの欠点に対する手動リフティングスリング装置を提供することである。

本発明では、この技術的課題を解決するために以下の技術方案を用いた。即ち、手動リフティングスリング装置であって、布製の、患者の臀部及び足部を支持する底部支持部、前記底部支持部に対し傾斜をなして接合されて、前記患者の背部を支持する後側支持部、及び左右両側においてそれぞれ患者の位置を規制する左側ガード部及び右側ガード部、を含み、前記左側ガード部及び右側ガード部はいずれも前記底部支持部と後側支持部の双方に接合され、かつ前記左側ガード部と右側ガード部には、リフティングハンドルが少なくとも2つずつ設けられている。

本発明による前記手動リフティングスリング装置において、前記布は織布または不織布である。

本発明による前記手動リフティングスリング装置において、前記底部支持部、後側支持部、左側ガード部及び右側ガード部の辺縁が折り畳まれている及び/または補強されており、かつ一体的に縫合されている。

本発明による前記手動リフティングスリング装置において、前記底部支持部と後側支持部は人体形状に合うよう裁断され、かつ襞が設けられている。

本発明による前記手動リフティングスリング装置において、前記布にはマークが設けられている。

本発明による前記手動リフティングスリング装置において、前記布は一層または多層の織布或いは不織布シートを積層してなる。

本発明による前記手動リフティングスリング装置において、前記布の片側または両側には通気性の非生分解性または生分解性のシートが付着している。

本発明による前記手動リフティングスリング装置において、前記布は非生分解性材料からなり、前記非生分解性材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートまたはポリアミドを含む。

本発明による前記手動リフティングスリング装置において、前記布は生分解性の重合体材料からなり、前記生分解性の重合体材料は、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシ酪酸、またはこれらのうち複数の材料の混合物を含む。

本発明による前記手動リフティングスリング装置において、前記布は熱接着による非生分解性または生分解性の方向を限定しない繊維からなる。

本発明による前記手動リフティングスリング装置において、前記不織布は、スパンレースまたはニードルパンチで形成された連続フィラメントウェブまたは短繊維ウェブを用いて作製される。

本発明による前記手動リフティングスリング装置において、当該不織布は、非生分解性または生分解性の化学物質で接着して形成された連続フィラメントウェブまたは短繊維ウェブから作製され、前記化学物質はエマルジョン粘着剤または接着剤を含む。

本発明は更に、搬送される患者間の交差感染を防止する方法であって、患者ごとに上述した専用の手動リフティングスリング装置を所有する方法を提供する。

本発明の手動リフティングスリング装置によれば、以下の有益な効果を得られる。即ち、本発明の手動リフティングスリング装置は構造がシンプルで設計が合理的であり、快適性が高くかつ低コストであることから、患者ごとに有限回数だけ使用される専用の手動リフティングスリング装置を配備可能となる。

以下に、図面と実施例を組み合わせて本発明につき更に説明する。

本発明の好ましい実施例における手動リフティングスリング装置の透視図

本発明の好ましい実施例における手動リフティングスリング装置の使用状態を示す説明図

本発明の目的、技術方案及び利点をより明らかにするために、以下に図面と実施例を組み合わせて本発明を更に詳細に説明する。

本発明は、患者の身体を支持して手動で搬送するための手動リフティングスリング装置に関する。この種の手動リフティングスリング装置は担架として使用可能な場合もある。なお、「手動リフティングスリング装置」「スリング」「リフティングスリング」及び「担架」との用語は、本発明の記載において互いに置き換え可能であり、看護者もしくは病人搬送者によって頻繁に使用されるスリングまたは担架のことをいう。例えば、当該装置は、負傷者や病人をアクシデント発布点から付近の救急車に搬送するために用いられるが、このときには担架と称される。そして、患者をベッドから病院内の他の地点まで移動させる場合、当該装置はリフティングスリング装置と称される。

本発明は、手動リフティングスリングを用いて搬送される患者間の交差感染を防止する方法についても提供する。即ち、これら患者は2名により非生分解性または生分解性の手動リフティングスリングで持ち上げられる。そして、患者各々が自分専用の手動リフティングスリング装置を所有する。好ましくは、当該スリングがどの患者専用なのかをはっきりと識別できるよう、各リフティングスリング装置にはっきりとマークを付ける。当該リフティングスリングには、他人に使用されることのないよう耐久性インクでマークを付ければよい。更に、リフティングスリングの布は生分解性の重合体材料からなる。生分解性不織布スリングのコストが織布スリングのコストの数分の1であり、一般的に受け入れ可能な範囲であることは周知である。よって、各人専用のスリングを配備可能となり、患者間の交差感染発生を防止可能となる。かつ、当該手動リフティングスリング装置に用いられる布材料は生分解性及び/または堆肥性であるため、使用後に廃棄されたスリングにより環境が汚染される恐れがない。

図1は、本発明の好ましい実施例における手動リフティングスリング装置の透視図である。図1に示すように、手動リフティングスリング装置10は、布製の底部支持部12、後側支持部11、左側ガード部13及び右側ガード部14を含む。底部支持部12は底部に位置し、患者の臀部及び足部を支持する。後側支持部11は底部支持部12に対し傾斜角をなし、当該患者の背部を支持する。後側支持部11の下側縁と底部支持部12の後側縁は接合されており、かつ、患者が当該手動リフティングスリング装置10に座しやすいよう、傾斜角を鈍角とすることが好ましい。後側支持部11と底部支持部12は等脚台形形状であることが好ましく、両者における長尺の底辺同士が接合される。

左側ガード部13と右側ガード部14は、それぞれ左右両側から患者の位置を規制する。左側ガード部13と右側ガード部14は、いずれも底部支持部12及び後側支持部11双方に接合されている。実施例によっては、左側ガード部13は略三角形であり、一方の底辺が底部支持部12の左側脚に接続され、他方の底辺が後側支持部11の左側脚に接続される。同様に、右側ガード部14もこれに対応している。他の実施例では、手動リフティングスリング装置10による囲繞スペースを拡大すべく、図1の左側ガード部13は底部支持部12または後側支持部11にそれぞれ接合される2つの三角形から構成される。当該手動リフティングスリング装置10は、中軸面に対し対称である。

左側ガード部13と右側ガード部14には、リフティングハンドル15が少なくとも2つずつ設けられる。例えば本実施例では、患者の背部領域と足部領域にそれぞれが加わるよう、左側ガード部13の上側と下側にリフティングハンドル15が1つずつ設けられている。同様に、右側ガード部14にもリフティングハンドル15が2つ設けられている。

好ましくは、底部支持部12、後側支持部11、左側ガード部13及び右側ガード部14の辺縁がいずれも折り畳まれている及び/または補強されており、かつ一体的に縫合されている。例えば、辺縁16は複数回折り畳まれて、縫合または超音波接着される。好ましくは、底部支持部12と後側支持部11は人体形状に裁断され、例えば襞18が設けられる。リフティングハンドル15が設けられる領域17は補強され、例えば、布上に別途シートを設けることで増厚処理が施される。

このほか、当該手動リフティングスリング装置10の布にはマークを付けてもよい。例えば、ラベルを縫い付けたり、耐久性インクで文字を書き付けたりする。また、例えばラベルの上部に患者の名前や、「洗浄禁止」「アイロン禁止」「乾燥禁止」といった共通認識用の文字を書いてもよい。

図2は、本発明の好ましい実施例における手動リフティングスリング装置の使用状態を示す図である。患者は当該手動リフティングスリング装置による囲繞スペースに座し、当該スリングにより背部、臀部及び足部を支持される。当該手動リフティングスリング装置は2名で持ち上げられる。各人はスリング両側の2つのハンドルをつかむが、そのうち一方のハンドルは患者の背部を、他方のハンドルは座している患者の臀部と足部を支持する。

本発明は、織布または不織布からなる。好ましくは不織布からなり、不織布上には、織布的な外観を持たせるべくローリング(圧延)により形成された突起パターンを設けてもよい。また、付属布層によりスリング装置を補強してもよい。本発明が提供する手動リフティングスリング装置の推奨安全荷重は120kgであるが、実験の結果、190kgの重量物について50回のリフティングに耐えられることが証明され、かつ損傷の痕跡も認められなかった。

このほか、布は一層または多層の織布或いは不織布シートを積層して構成可能である。更に、リフティング及び搬送中に患者の体液を吸収しないよう、通気性または非通気性のシートをスリングにおける生分解性不織布の片側または両側に積層してもよい。

本発明の手動リフティングスリング装置は、非生分解性の布で作製可能である。これら非生分解性材料としては、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPA(ポリアミド)、及びその他人工の重合体を含む。

好ましくは、本発明の手動リフティングスリング装置は、生分解性/堆肥性の不織材料でも作製可能であり、典型的な材料としては、PLA(ポリ乳酸)、または主要部をPLAとして少量のPHA(ポリヒドロキシアルカン酸)を加えた混合物、または主要部をPLAとして少量のPHAとPBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)を加えた混合物、または主要部をPLAとして少量のPHA、PBAT及びPBS(ポリブチレンサクシネート)を加えた混合物、または主要部をPLAとして少量のPBAT及びPBSを加えた混合物、またはPBATとPBSの混合物、または主要部をPLAとして少量のPHB(ポリヒドロキシ酪酸)を加えた混合物、が挙げられる。

前記スリングは、熱接着による生分解性/堆肥性の方向を限定しないポリマー繊維により作製可能とすることが好ましいが、ドライレイド、ケミカルボンド(生分解性接着剤を使用)による布形成や、ドライレイドまたはスパンレース(spun lace)による布形成としてもよい。通常、当該材料は通気性を有する(非通気性の生分解性シートが表面に貼り付けられている場合を除く)がは通さず、かつ、患者を浴槽に入れるために、スリングに貫通孔の配置が求められる場合もある。布は、スパンレースまたはニードルパンチにより形成された連続フィラメントウェブまたは短繊維ウェブを用いて作製してもよい。当該布は、非生分解性または生分解性の化学物質で接着して形成された連続フィラメントウェブまたは短繊維ウェブから作製してもよく、前記化学物質はエマルジョン粘着剤または接着剤を含む。

使用済みの廃棄手動リフティングスリング装置が環境に悪影響を及ぼすことのないよう、手動リフティングスリング装置の布としては生分解性及び/または堆肥性の布を用いることが好ましい。以下では、前記生分解性及び/または堆肥性の布について議論する。本発明で使用される生分解性材料は、スリング装置における相応の積載能力を保証してリフティング中の事故を防止可能とするとともに、スリング装置の製造コストを増加させることもないため、患者は当人専用のリフティングスリング装置を所有可能となり、交差感染の発生が回避される。

現在一般的な生分解性の重合体のうち、ポリ乳酸(PLA)をプラスチックや布における生分解性/堆肥性の重合体として使用するメリットとしては、以下が挙げられる。即ち、PLAは天然かつ再生可能な材料から抽出されるが熱可塑性を有し、溶融押出によってプラスチック製品、繊維及び布を生産可能である。また、ポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレン)やポリエステル(ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレート)といった石油合成による類似の材料に比べて、PLA製品は良好な機械強度、靭性及び柔軟性を有する。なお、PLAは乳酸から生成されるが、当該乳酸はトウモロコシ、小麦、穀類またはテンサイから抽出される発酵副産物である。重合時において、乳酸は下記式で示される二量体の繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステルを形成する。

ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)が、炭素源及びエネルギー源としての細胞内貯蔵物質を生物が自然合成することで得られることは既知である。このうち、P(3HB‐co‐4HB)のコポリエステルにおける繰り返し単位は下記式で示される。

ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)という生分解性の重合体は、現在のところ微生物から得ることはできないが、石油系製品を合成して得ることは可能である。PBATの融点は120℃でありPLAの融点より低いものの、PBATはPLAよりも高い弾性、優れた耐衝撃強度、そして良好な溶融加工性能を備えている。PLAは良好な溶融加工性能、強度及び生分解性/堆肥性を備えてはいるが、弾性と耐衝撃強度には劣る。これに対し、PBATとPLAの混合物はより強い弾性、可撓性及び耐衝撃強度を備える。PBATの化学構造は下記式で示される。

ポリブチレンサクシネート(PBS)はエチレングリコールの縮合重合によって合成される。PBSの化学構造は下記式で示される。

P(3HB‐co‐4HB)製品が土壌、汚泥及び海水に生分解しやすいことは既知であるが、水中の微生物欠乏により水中における生分解速度は大幅に減速してしまう(Saito,Yuji,Shigeo Nakamura,Masaya Hiramitsu and Yoshiharu Doi,“Microbial Synthesis and Properties of Poly(3‐hydroxybutyrate‐co‐4‐hydroxybutyrate),”Polymer International 39(1996),169‐174)。従って、P(3HB‐co‐4HB)製品は、例えば密封梱包による乾燥貯蔵や清浄液等の清潔な環境では保存期限が良好となるはずである。一方で、例えば土壌、河川の水、泥、海水及び肥料や砂、汚泥及び海水、堆肥といった微生物を含む不潔な環境に置いた場合、廃棄したP(3HB‐co‐4HB)製の布、シート及び梱包材は分解しやすくなるはずである。ここで、ポリ乳酸(PLA)は上記のような不潔な環境や環境温度下では生分解しにくいが、堆肥化は必須であることに留意せねばならない。まず、堆肥中の熱と湿度によりPLA重合体をより小さなポリマー鎖に分解し、最終的に乳酸へと分解する必要がある。堆肥や土壌中の微生物は、より小さなポリマーセグメントと乳酸を養分として消費する。そこで、PLAを有するP(3HB‐co‐4HB)製品のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)混合物は、PHAs‐PLAの混合物からなる製品の分解性能を強化するはずである。また、PHAとPLAの混合物からなる製品は、清潔環境下における保存期限が良好なはずである。しかし、過去10年間、PLAの価格が例えばポリプロピレンとPETポリエステルの合成ポリマーよりもやや高い程度にまで大幅に値下がりしている一方で、PHAsの価格はPLAに比べ2〜3倍高を維持している。なお、当該PLAは乳酸からの大規模合成が可能である。PHAsは特定の炭素源を有する微生物によって生成され、かつ溶剤を用いて微生物から抽出せねばならない。従って、商業的には、25%を超えるPHAをPLAと混合して溶融押出で織布、ニット、不織布、シート、食品パッケージ等の製品を形成することは不可能である。

表1に、生分解性不織布、生分解性シート及び不織布と生分解性シートの積層構造について示す。中国のサプライヤーからは、9μmの純ΡΒΑΤシート及び炭酸カルシウムを20%有する9μmのΡΒΑΤシートが得られた。米国のBiax‐Fiberfilm社からは、ポリプロピレン(PP)(非生分解性)を20%含むメルトブローン(MB)Vistamaxx(登録商標)(非生分解性)が得られた。ドイツのSaxon Textile研究機構からは、通常質量が80g/m2であるカーボンブラックを有した黒色スパンボンド(SB)PLAが得られた。各試験では、5〜13g/m2のホットメルト接着剤を用いて、純PBATシート及び炭酸カルシウムを20%有するPBATシートを20%のPPを含有するVistamaxx MB及び黒色SB PLAに積層した。なお、通常は0.5〜12g/m2のホットメルト接着剤を使用するものとしたが、好ましくは1〜7g/m2のホットメルト接着剤であった。また、ホットメルト接着剤を用いてSB PLA2層を積層及び接着させた。表1に、全原材料及び積層構造について測定した重量、厚み、靭性、破断伸び、引裂強さ、破裂強さ、水蒸気透過率(MVT)及び水頭(hydrohead)を示す。なお、これらは本発明における各実施例の例示にすぎず、下記材料からなる各層は溶融を応用して接着させた。ここで、PBATシートまたはその他の生分解性/堆肥性シートについては、接着剤を用いることなく押出コーティングを基材に直接適用することが可能である。また、積層構造は、熱間圧延、全体圧延または超音波溶接により接続または接着可能であるが、これに限らない。このほか、ホットメルト接着剤に代えて、ゴムまたは水または溶剤を基礎とした接着剤或いはエマルジョンを用いて積層構造を接着することも可能である。

表1に示すように、9μmの純(100%)PBATシート(試料1)は、MD方向に良好な伸び率を有し、かつCD方向の破断伸びは300%以上に達した。試料1〜5については破裂強さの測定が不可能であったが、これは、これら全てのシート及び積層構造の弾性が非常に良好であり、測定過程で破裂が発生せず、かつ測定後にも変形がみられなかったためである。試料1の水蒸気透過率はかなり良好であり、24時間あたり3380g/m2であった。また、静水頭は549mmであった。炭酸カルシウム(CaCO3)を20%有するPBATシート(試料2)は試料1と類似のデータを示したが、WVTR及び静水頭(hydrostatic head)については相対的に低かった。試料1と2に類似の6μmまたはそれ以下の厚みが一層薄いPBATシートも良好な伸び率及び高いWVTRを備えると予測されるが、水頭はより低くなる可能性がある。メルトブローンである試料3はVistamaxx(登録商標)(Vistamaxxポリオレフィンに基づく重合体は高弾性である。エクソンモービル製)を80%とPPを20%含有するが、当該布は適度に開繊されていることから、約300%のMD及びCD伸び率を備えるとともに、24時間あたり8816g/m2という高いWVTR値を示した。MB Vistamaxx布は生分解性ではないが、生分解性重合体から作製される弾性不織材料の一例となり得る。前記生分解性重合体とは、例えば伸び率及び変形回復力が非常に高いPBAT及びその他の生分解性重合体である。試料3は水頭が1043mmとたいへん高く、良好な遮断性を備えることが示された。ここで、20%のPPをVistamaxx重合体粒子に添加し、混合物をMB押出機に供給する前に物理的に混合して溶融すると、Vistamaxx MB布の粘度が高まりすぎない。100%のVistamaxxをメルトブローンした場合には粘度が非常に高くなってローリング中にダマが発生し、続く積層または使用にあたって開繊が困難となる(un‐wind)。

Vistamaxxのみの場合と比較して、ホットメルト接着剤を用いることでVistamaxxを備えた純PBAT及びCaCO320%含有PBATの積層構造は、MD及びCD靭性が明らかに向上した。更に、当該試料は非常に高いMD伸び率と特に高いCD伸び率(試料4では390%、試料5では542%)を備えていた。試料4と試料5は更に、それぞれ24時間あたり1671g/m2及び1189g/m2という著しく高いMVTR値を備え、かつ339mm及び926mmという高い水頭を備えていた。更に注目すべき点として、PBATシートはMB100%Vistamaxx上、またはある程度のPPを有するMB Vistamaxxの上に直接押出コーティングすることが可能であり、かつ、ホットメルト接着剤を使用してもしなくてもよい。また、押出コーティングでは4または5μmという更に薄い規格のPBATシートの使用が可能となっている。これより、より高いMVTRが備わるが、水頭はより低下する可能性がある。

黒色SB PLAの目標重量は80g/m2、MD靭性は104N、CD靭性は31Nであったが、MD破断伸びは3.6%と低く、CD伸び率は30.7%と高かった。破裂強さは177KN/m2であり、WVTRは24時間あたり8322g/m2とかなり高かった。かつ、水頭は109mmとかなり顕著であった。ホットメルト接着剤を用いて純PBATに80gsmの黒色SB PLAを積層した場合のMD及びCD靭性は、それぞれ107N及び39Nと単純なSB PLAよりも高かったが、CD伸び率はわずか9.8%であった。しかし、SB PLAを積層したPBATは220KN/m2という高い破裂強さを備えていた。一方で、通気性は依然として良好に保たれ、WVTRは24時間あたり2459g/m2であり、かつ、水頭は3115mmと非常に高かった。CaCO3を20%含むPBATを積層したSB PLAについては、水頭が2600mmに達したものの相対的には低い値であったことを除き、試料8と類似の属性を備えていた。より薄いPBATシートを備えたSB PLA積層構造、特に押出コーティングにより積層形成された更に薄いPBATシートを備えたSB PLA積層構造によれば、高いMVTRを備える医学、工業またはスポーツ用の防護服を生産可能となる。この防護服は着用時に快適で静水頭が高いことから、遮断及び防護に適用可能である。シートの積層前または後に、PBATシート側か任意の側のSB PLAに処理剤(フルオロシリコーンまたはその他の類の処理剤)を適用すれば、遮断及び防護力が更に高まる。更に、シートの積層前または積層後にMB PLAとSB PLAを積層結合することで、遮断及び防護力を向上させることが可能である。更に、処理剤を例えばPBATシート、SBまたはMB PLA作製用の溶融ポリマーに添加することも可能である。

SB PLA2層を溶融接着して試料9を形成したところ、MD及びCD靭性と破裂強さが実質的に一層構造の試料6の2倍となった。110g/m2のSB PPから作製した患者用リフティングスリングの破断伸び(伸び率%)に対応する目標MD及びCD靭性を、それぞれ少なくとも5cmあたり200N及び140N、MD及びCD伸び率の値をいずれも少なくとも40%とした。表1に示すように、2層を接着結合したSB PLA層のMD靭性は215Nであったが、CD靭性は必要レベルに対しわずか50%であった。また、MD及びCDの破断伸びは必要最小値である40%に比べて大幅に低かった。なお、SB布の押し出し前にPLAと5〜60%のPBAT、または、好ましくは20〜50%のPBATを混合することで、SB PLAのMD及びCD伸び率を向上させることが可能である。そのほか、PBATとPBSをPLAと混合することで、所望のMD・CD靭性及び伸び率の値と、熱暴露後の安定性を備えた布が得られる。また、スパンレース法及びニードルパンチ法を含む非熱間圧延工程でSBフィラメントウェブを接着すれば、より大きな多方向強度と伸び率が得られる。これによれば、2または複数のSB PLA布を積層または接着結合することなく、110g/m2及び更に大重量のニードルパンチSB PLAを生成可能となり、所望の強度と伸び率の値が得られる。

表2では2種類のSB PLA布を比較しているが、一方がPLA100%で構成されているのに対し、他方は80質量%のPLAと20質量%のPHBから構成されている。表には、80%PLA/20%PHBの混合物が100%PLA SBよりも良好なMD及びCD靭性を備えており、かつMD伸び率は100%PLA SBの4倍、CD伸び率は100%PLA SBの3倍であることが示されている。加熱溶融により2層の試料11を積層することで表1の試料9を作製したところ、このようにして作製された布は前記の試料9に比べて非常に高いMD及びCD引張強さと引裂強さを備えるとともに、比較的高い伸び率を備えていた。

特定の実施例に基づき記載したが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく各種の変更及び等価の置き換えが可能である。また、本発明の技術にかかる特定の状況または材料に適応するために、本発明につきその保護範囲を逸脱することなく様々な修正を加えてもよい。従って、本発明はここで開示した特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲内のあらゆる実施例を含む。

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