球状窒化アルミニウム粒子の製造方法及び球状窒化アルミニウム粒子製造装置 |
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申请号 | JP2016068083 | 申请日 | 2016-03-30 | 公开(公告)号 | JP2017178668A | 公开(公告)日 | 2017-10-05 |
申请人 | 新日鉄住金マテリアルズ株式会社; | 发明人 | 杉橋 敦史; 佐藤 裕; 澤野 清志; | ||||
摘要 | 【課題】所望の窒化度合いの球状窒化アルミニウム粒子を得ることができる球状窒化アルミニウム粒子の製造方法及び球状窒化アルミニウム粒子製造装置を提供する。 【解決手段】球状窒化アルミニウム粒子製造装置1では、アプリケーター2内で処理する球状アルミナ粒子の窒化度に応じて発生する一 酸化 炭素ガス濃度に基づき予め定まる終了タイミングでマイクロ波照射を終了できるので、加熱 温度 によらず球状アルミナ粒子の窒化度を制御でき、かくして窒化度のばらつきが抑えられ、所望の窒化度合いの球状窒化アルミニウム粒子を得ることができる。 【選択図】図1 | ||||||
权利要求 | アプリケーター内で、球状アルミナ粒子と炭素系材料粉末とを含む混合物に、窒素雰囲気中でマイクロ波を照射して、該球状アルミナ粒子の少なくとも一部を窒化して球状窒化アルミニウム粒子を製造する、球状窒化アルミニウム粒子の製造方法において、 前記アプリケーターからの排ガス中の一酸化炭素ガス濃度(体積%)を監視し、該一酸化炭素ガス濃度の最大値を基準として、該最大値から定めた終了タイミングでマイクロ波の照射を終了することを特徴とする、球状窒化アルミニウム粒子の製造方法。前記一酸化炭素ガス濃度が、下記式(1)により求められる換算COガス濃度β(t)であることを特徴とする請求項1に記載の球状窒化アルミニウム粒子の製造方法。 β(t)=α(t) /ΔP(t) (1) α(t):マイクロ波照射開始後の時間tにおける、排気ガス中の一酸化炭素ガス濃度(体積%)の実測値。 ΔP(t):下記式(2)で求められる正味マイクロ波出力(W)。 ΔP(t)=P(t)−Pr(t) (2) P(t):マイクロ波照射開始後の時間tにおけるマイクロ波照射出力、又は、時間t−Δtから時間tにおける時間平均値(W)。 Pr(t):マイクロ波照射開始後の時間tにおけるマイクロ波反射出力、又は、時間t−Δtから時間tにおける時間平均値(W)。 Δt:所定のマイクロ波測定継続時間。前記最大値に対する一酸化炭素ガス濃度の比が所定の値となった時点でマイクロ波の照射を終了することを特徴とする請求項1又は2に記載の球状窒化アルミニウム粒子の製造方法。前記比が、下記式(3)により求められる換算COガス濃度比γ(t)であることを特徴とする請求項3記載の球状窒化アルミニウム粒子の製造方法。 換算COガス濃度比γ(t)=β(t)/βmax (3) βmax:一酸化炭素ガス濃度が最大となったときの上記式(1)に基づき換算された換算COガス濃度最大値。前記最大値が、前記混合物の表面温度が600℃以上で検出されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の球状窒化アルミニウム粒子の製造方法。マイクロ波発振器を備えるアプリケーター内で、球状アルミナ粒子と炭素系材料粉末とを含む混合物に、窒素雰囲気中でマイクロ波を照射して、該球状アルミナ粒子の少なくとも一部を窒化して球状窒化アルミニウム粒子を製造する、球状窒化アルミニウム粒子製造装置であって、 前記アプリケーターからの排ガス中の一酸化炭素ガスの濃度(体積%)を測定する一酸化炭素ガス分析器と、 該一酸化炭素ガス分析器から受け取った一酸化炭素ガス濃度データを基に、一酸化炭素ガス濃度の最大値を検出し、該最大値を基準として、該最大値から定めた終了タイミングで、前記マイクロ波発振器によるマイクロ波の照射を終了させる制御部と、 を備えることを特徴とする、球状窒化アルミニウム粒子製造装置。 |
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说明书全文 | 本発明は、球状窒化アルミニウム粒子の製造方法及び球状窒化アルミニウム粒子製造装置に関する。 球状アルミナ(Al2O3)粒子は、熱伝導性に優れたフィラー又は放熱シート等の部材として、半導体基板等の電子デバイスに広く使用されている。熱伝導性をさらに高めるために、アルミナ粒子を窒素雰囲気中でマイクロ波加熱して窒化することによって、窒化アルミニウム改質層を備えたアルミナ粒子を製造する方法が知られている(特許文献1)。同方法では、カーボンを付着させたアルミナ粒子の粉状混練物をマイクロ波加熱により1400℃以上1700℃以下の温度にした状態で5分間以上保持して熱処理を行う。 特開平2011-219309号公報
しかしながら、特許文献1では、粉状混練物中にシース型熱電対を挿入して当該粉状混練物の温度を監視しているため、熱電対による局所的な温度しか分からない。このような局所的な情報に基づいて窒化の度合いを管理しても、窒化の程度にばらつきを生じ、所望の窒化度合いの球状窒化アルミニウム粒子を得ることが難しい。さらに、熱電対自体も金属製であるため、加熱炉内に熱電対を挿入した場合、粉状混練物の焼成反応に影響を与えてしまう恐れもある。 また、マイクロ波による直接加熱では、一般的に行われている電気炉加熱と異なり、粉状混練物の表面等の温度が必ずしも均一とは成らず、一定温度の加熱炉内で一定時間保持する、という従来の焼成管理方法を利用することも困難であるため、その点からも所望する窒化度合いの球状窒化アルミニウム粒子を得ることが難しいという問題があった。 本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、所望の窒化度合いの球状窒化アルミニウム粒子を得ることがきる、球状窒化アルミニウム粒子の製造方法、及び球状窒化アルミニウム粒子製造装置を提供することを目的とする。 本発明の球状窒化アルミニウム粒子の製造方法は、アプリケーター内で、球状アルミナ粒子と炭素系材料粉末とを含む混合物に、窒素雰囲気中でマイクロ波を照射して、該球状アルミナ粒子の少なくとも一部を窒化して球状窒化アルミニウム粒子を製造する、球状窒化アルミニウム粒子の製造方法において、前記アプリケーターからの排ガス中の一酸化炭素ガス濃度(体積%)を監視し、該一酸化炭素ガス濃度の最大値を基準として、該最大値から定めた終了タイミングでマイクロ波の照射を終了することを特徴とする。 また、本発明の球状窒化アルミニウム粒子製造装置は、マイクロ波発振器を備えるアプリケーター内で、球状アルミナ粒子と炭素系材料粉末とを含む混合物に、窒素雰囲気中でマイクロ波を照射して、該球状アルミナ粒子の少なくとも一部を窒化して球状窒化アルミニウム粒子を製造する、球状窒化アルミニウム粒子製造装置であって、前記アプリケーターからの排ガス中の一酸化炭素ガスの濃度(体積%)を測定する一酸化炭素ガス分析器と、該一酸化炭素ガス分析器から受け取った一酸化炭素ガス濃度データを基に、一酸化炭素ガス濃度の最大値を検出し、該最大値を基準として、該最大値から定めた終了タイミングで、前記マイクロ波発振器によるマイクロ波の照射を終了させる制御部と、を備えることを特徴とする。 本発明は、アプリケーター(加熱炉)内で処理する球状アルミナ粒子全体の窒化度に応じて発生する一酸化炭素ガス濃度に基づき定めた終了タイミングでマイクロ波の照射を終了できるので、ばらつきのある局所的な温度監視値に基づいて窒化アルミニウムの焼成の進捗を管理する方法と比較して、窒化度のばらつきが抑えられ、所望の窒化度合いの球状窒化アルミニウム粒子を得ることができる。 本発明の球状窒化アルミニウム粒子製造装置の一態様の断面模式図である。 試料温度と、マイクロ波の入射出力及び反射出力と、排気ガス中のCO濃度及びCO 2濃度とを示すグラフの一例である。 所定の時間tでマイクロ波の照射を停止して、球状窒化アルミニウム粒子の一部を採取したものの蛍光X線スペクトルの一例である。 窒化アルミニウム(AlN)生成率(%)と換算CO(ガス)濃度のピーク比との負の相関を示すグラフである。 AlN生成率(%)と熱伝導率(W/mK)との正の相関を示すグラフである。 実施例で得られた球状窒化アルミニウム粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 実施例で得られた球状窒化アルミニウム粒子の電子プローブマイクロ分析(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)によるマッピング画像である。
本発明において、球状窒化アルミニウム粒子とは、主に、フィラー又は放熱用シートとしての性能を確保するために球状アルミナ粒子の表面近傍を窒化することで改質し、球状アルミナ粒子の表面を窒化アルミニウムとなしたものをいうが、それ以外にも、窒化反応が進み、球状アルミナ粒子全体が、球状窒化アルミニウムと化したものも含んでいる。 本発明において、球状窒化アルミニウム粒子を得るために用いる球状アルミナ粒子は真球状又は略真球状であればよい。球状アルミナ粒子は、例えば、レーザ粒度分布測定機(CILAS製CILAS-920)を用いて質量基準で求めた50質量%平均粒子径(D50)で5〜150μmであることが望ましい。これは、製造した球状窒化アルミニウム粒子を樹脂と混合し、フィラーとした場合に必要な熱伝導特性を得やすい粒子径であることによる。 球状アルミナ粒子は、アルミナ粉末を球状に造粒することにより得られたものを使うことができる。球状アルミナ粉末は、例えばアルコキシド法、バイヤー法、アンモニウム明ばん熱分解法、又はアンモニウムドーソナイト熱分解法等によって得ることができる。造粒法としては、湿式撹拌造粒法、スプレードライ法等があるが、好ましくはスプレードライ法により造粒した粒子が使用される。スプレードライ法としては、ノズル法、ディスク法等の何れの方式であってもよい。 炭素系材料粉末としては、例えば黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、無定形炭素等の粉末が挙げられ、天然由来であっても工業的に製造されたものであってもよい。好ましくは製造後の窒化アルミニウムの絶縁性能に影響を与えないために、金属含有率が1質量%以下、好ましくは金属含有率が0.1質量%以下であるものが望ましい。炭素系粉末は混合原料である球状アルミナ粒子を被覆するように存在することが望ましく、球状アルミナ粒子の上記平均径以下の平均粒径を有することがより望ましい。 球状アルミナ粒子と炭素系材料粉体とを含む混合物は、球状アルミナ粒子と炭素系材料粉体を乾式でボールミル等により混合することで調製することができる。混合の際に、例えば水、アルコール等の液状分散媒を加えてもよいが、乾燥する手間がかかるので、好ましくは乾式で混合する。混合比は、下記反応式に基づくAl2O3/3C化学量論比の0.5倍以下程度が望ましい。 Al2O3 + 3C +N2 → 2AlN +3CO また、本発明では、必ずしも混合する球状アルミナ粒子全体を窒化アルミニウムに変換させる必要はなく、後述のように球状アルミナ粒子の表層近傍を窒化アルミニウムに転換するだけでもよい。従って、上記反応式において、原料として用意されたAl2O3のモル等量に対応する量のカーボンを含む炭素原料を用意する必要はない。一方、表面から目的とする深さまで窒化するために必要な理論値よりもCを多くしておく。そうしておくことで、上記反応式の反応が進んだ際に、炭素C不足による一酸化炭素発生量の低減は生じないようにしてある。 なお、Al2O3/3C化学量論比の0.5倍を超えた場合は、Al2O3の還元される量が少なくなり、これに伴って窒化により窒化アルミニウムAlNとなる割合が少なくなり、目的とする窒化アルミニウム含有量の粒子を得ることができない。 図1は、本発明の球状窒化アルミニウム粒子製造装置の一態様の断面模式図である。球状窒化アルミニウム粒子製造装置1は、アプリケーター(加熱炉)2と、マイクロ波発振器3と、一酸化炭素ガス分析器13と、制御部14とを備える。アプリケーター2には、アプリケーター2内の電磁界分布を均一化するためのスターラー5と、断熱材8a,8bが載置される載置台7とが内部に設けられており、アプリケーター2の天板所定位置に形成された開口部に石英窓9が設けられている。 断熱材8a,8bは、所定の厚みを有した板状又はファイバー状のものからなり、こう鉢8c全体を取り囲むように積層されている。なお、載置台7は、例えばマイクロ波透過性のアルミナ、シリカ、ムライト、トリジマイト、酸化マグネシウム、サイアロン、窒化アルミニウム等を主成分とした素材からなり、断熱材8a,8bは、マイクロ波透過性の繊維状のアルミナ、シリカ、ムライト等からなる。こう鉢8cは、例えばマイクロ波透過性の高純度アルミナ、シリカ、トリジマイト、酸化マグネシウム、サイアロン、窒化アルミニウム等からなり、球状アルミナ粒子と炭素系材料粉体とを含む混合物6を、内部に収容している。なお、断熱材8a,8bに取り囲まれ、かつこう鉢8c内に収容された混合物6は、アプリケーター2に設けた石英窓9、断熱材8a,8b及びこう鉢8cに形成された開口部を通して、例えば赤外線カメラ10により表面温度を監視し得る。 アプリケーター2には、マイクロ波発振器3からのマイクロ波を当該アプリケーター2内へと導く導波路4が側壁の所定位置に設けられている。この実施の形態の場合、導波路4の途中には、マイクロ波発振器3から実際に照射されたマイクロ波のマイクロ波照射出力を計測するマイクロ波照射出力計(図示せず)と、アプリケーター2内から反射してきたマイクロ波を計測するマイクロ波反射出力計(図示せず)とが設けられている。 マイクロ波照射出力計及びマイクロ波反射出力計は、マイクロ波発振器3からアプリケーター2内へマイクロ波が照射される際に得られた計測結果を、それぞれ後述する制御部14に送出する。 アプリケーター2には、窒素ガス供給管11と排気ガス管12とが設けられている。窒素ガス供給管11は、図示しないボンベ等の窒素ガス貯留部と接続されており、当該窒素ガス貯留部内の窒素ガスをアプリケーター2内に供給する。排気ガス管12は、アプリケーター2内からの排ガスがオンライン分析可能な一酸化炭素ガス分析器13を経由させてアプリケーター2外に排出する。なお、図1では、窒素ガスが混合物6の上側から供給され、排気ガスが混合物6の下側から排気される構成としたが、本発明は、このような位置関係に限定されず、逆の位置関係であってもよい。 一酸化炭素ガス分析器13によって行われる一酸化炭素ガス分析法としては、質量分析法、赤外線吸収法、定電位電解法等があり、いずれの方法を利用してもよい。 また、図1の構成では、オンライン分析可能な一酸化炭素ガス分析器13を用いたが、本発明はこれに限らず、排気ガス管12にガストラップを設け、サンプラーにより手動にて、その都度バッチ分析を行ってよい。 一酸化炭素ガス分析器13は、例えばマイクロ波発振器3からアプリケーター2内へマイクロ波が照射されることでアプリケーター2内から送られてくる排気ガス中の一酸化炭素ガス濃度を計測し、その測定結果を一酸化炭素ガス濃度データとして制御部14に送出する。アプリケーター2内では、マイクロ波の照射が開始されると、炭素系材料粉末がマイクロ波を吸収することで、混合物6の温度が上昇し、上記反応式に従い一酸化炭素(以下「CO」とする場合がある)が発生する。 制御部14は、一酸化炭素ガス分析器13から受け取った一酸化炭素ガス濃度データを基に、アプリケーター2内の一酸化炭素ガスの濃度値を監視し、一酸化炭素ガス濃度の最大値を検知し得る。これに加えて制御部14は、一酸化炭素ガス濃度の最大値を基準に予め定めた終了タイミングでマイクロ波照射終了信号を生成し、これをマイクロ波発振器3に送出する。なお、制御部14で定められた終了タイミングは、球状アルミナ粒子から所望の窒化度合いとなった球状窒化アルミニウム粒子を製造できる終了タイミングを予め調べおき、これに基づいて制御部14に予め定められたものである。 マイクロ波照射終了信号を受け取ったマイクロ波発振器3は、球状窒化アルミニウム粒子を製造するために出力していたマイクロ波の照射を終了する。これにより、球状窒化アルミニウム粒子製造装置1では、アプリケーター2内で処理されて生成される球状窒化アルミニウム粒子全体の窒化度に応じて発生する一酸化炭素ガス濃度に基づき予め定められた終了タイミングでマイクロ波の照射を終了できるので、局所的な値しか検知できない混合物6の加熱温度に依存せずに球状窒化アルミニウム粒子の窒化度を制御でき、かくして窒化度のばらつきが抑えられ、所望の窒化度合いの球状窒化アルミニウム粒子を得ることができる。 また、球状窒化アルミニウム粒子製造装置1では、所望の窒化度合いの球状窒化アルミニウム粒子が得られる終了タイミングでマイクロ波発振器3によるマイクロ波の照射を終了できるので、マイクロ波発振器3による無駄な加熱を防止し得る。 なお、所望の窒化度合いの達成後もマイクロ波の照射を継続した場合、球状窒化アルミニウム粒子の表面での窒化アルミニウムの成長が継続し、球状の窒化アルミニウムの粒子の表面に不均一な凹凸が発生する。表面の凹凸が大きな球状の窒化アルミニウムの粒子をフィラー材として用いると、樹脂中への球状窒化アルミニウム粒子の混合比率が低下し、フィラーとしての熱伝導性能が得られないという問題が発生する。 本発明では、このCO濃度を監視することによって、球状窒化アルミニウム粒子の窒化度合いを制御するが、単に一酸化炭素ガスが出なくなったことで反応の完結を検知するのではなく、一酸化炭素ガスの生成が未だ続いている状態で、一酸化炭素ガス濃度の最大値を基準に定めた終了タイミングでマイクロ波照射を終了することを特徴とする。より詳細には、一酸化炭素ガス濃度(体積%)の最大値を過ぎた後で、一酸化炭素ガスが検出されなくなる前までの間であって、酸化炭素ガス濃度の最大値を基準に定めた終了タイミングでマイクロ波照射を終了する。 次に、一酸化炭素ガス濃度の最大値を基準に予め定めた終了タイミングについて詳細に説明する。ここで、図2は、排気ガス中の一酸化炭素ガス(以下、COとも呼ぶ)濃度のグラフの一例である。この例では、CO濃度はマイクロ波の照射開始から約4時間直前辺りで最大値に達した後、徐々に低下してゆき、約7時間が経過する頃には、低レベルに低減して低減の程度も小さくなっている。そこで、本例では7時間経過を見てマイクロ波の照射を停止した。 なお、マイクロ波の照射開始後約0.5時間に見られるCO濃度の小さいピークは、並行して二酸化炭素ガス(CO2)も発生していることから分かるように、アプリケーター2内に残留している酸素により混合物中の炭素系材料が燃焼されて発生したものであり、本発明における窒化反応とは関係ない。 従って、この例の場合、制御部14は、マイクロ波の照射開始から約4時間経過〜約7時間のいずれかの時点で、マイクロ波発振器3によるマイクロ波の照射を終了させることが考えられる。なお、CO濃度の最大値は、本例のように山型形状のピークの頂点として現れる必要はなく、一定期間ほぼ同じ値が続く、台形状のピークの上底部であってもよい。 因みに、制御部14において一酸化炭素ガス濃度の最大値を決定する場合には、例えば、一酸化炭素ガス分析器13から受け取った一酸化炭素ガス濃度データを制御部14で監視してゆき、例えばアプリケーター2中の残存酸素の燃焼が終了する時点として、混合物6の温度が600℃以上になる温度範囲に限定して、一酸化炭素ガス濃度の最も高い値を順次検出してゆき、その値から所定値以上、一酸化炭素ガス濃度が下がったときに、検知した一酸化炭素ガス濃度の最も高い値を一酸化炭素ガス濃度の最大値として決定してもよい。 なお、図2には、マイクロ波照射出力計(図1にて図示せず)によって計測したマイクロ波の出力(マイクロ波照射出力P(t)であり、図2中「入射(kW)」と表記)と、マイクロ波反射出力計によって計測したマイクロ波の出力(マイクロ波反射出力Pr(t)であり、図2中「反射(kW)」と表記)も示されており、これは後述する換算COガス濃度β(t)を計算する際に使用される(tは時間を示す)。 図2では、マイクロ波の出力が±1kw程度変動している様に見えるが、これは図1の球状窒化アルミニウム粒子製造装置1において、電磁界を均一化するためのスターラー5からの反射電力がマイクロ波の発振に影響しているためである。数時間という長い時間を要する窒化アルミニウムの焼成に対して、スターラー5の回転は数十rpmのオーダーであるので、マイクロ波の出力としては、数秒〜1分程度のマイクロ波測定継続時間(Δt)での平均した値、即ち、時間t−Δtから時間tまでの時間平均値(W)を用いて、照射マイクロ波電力P(t)、反射マイクロ波電力Pr(t)としてもよい。 図3は、所定の時間tでマイクロ波の照射を終了して、球状窒化アルミニウム粒子の一部を採取したものの蛍光X線スペクトルの一例である。蛍光X線スペクトルの分析深さは最大でも数μmであるから、同スペクトルから、アルミナ粒子表面から数μm以内の深さにはAl2O3が残っておらず、AlNと中間体であるAlONが存在することが確認できる。 これらの蛍光X線のそれぞれの材料のメインピーク高さ強度を用いて下記AlN生成率(%)を定義することができる。例えば、図3は、リガク製X線回折装置「RINT−2500TTR」により測定した球状窒化アルミニウム粒子のX線回折パターンである。AlNの含有比率の計算は、AlN(PDFカードNo.25−1133)、Al2O3(PDFカードNo.10−0173)、及びAlON(PDFカードNo.48−0686)の最大ピークの強度を測定し、それらの強度比から、次式によりAlN含有量を百分率計算した。 AlN生成率(%)=AlNのピーク高さ/(Al2O3、AlN、及びAlONのピーク高さの合計) 本発明者らが種々検討したところ、所定時間tにおけるAlN生成率(t)は、マイクロ波照射開始後の時間tにおけるCOガス濃度の、COガス濃度最大値に対する比と良好な負の相関を示すと共に、熱伝導率(W/mK)と良好な正の相関を示すことを見出した。ここから、COガス濃度比を監視すれば、所望の熱伝導率(W/mK)を有する球状窒化アルミニウム粒子を作れる。 図4は、AlN生成率(%)と換算COガス濃度比γ(t)(後述する)との負の相関を示すグラフである。同グラフにおいて、横軸は所定時間tにおける換算COガス濃度比γ(t)である。図4では、球状窒化アルミニウム粒子の製造時、マイクロ波発振器3におけるマイクロ波の出力を変更する場合、またアプリケーター2内におけるマイクロ波の反射による損失もあるため、これらの影響を補償した換算COガス濃度比γ(t)が使用されている。以下、換算COガス濃度比γ(t)を求める際に用いる換算COガス濃度β(t)と、換算COガス濃度比γ(t)とについて詳細に説明する。なお、以下において、濃度の単位は特に断りの無い限り体積%とし、出力の単位はWとする。 ここでは、所定時間tにおける排気ガス中のCOガス濃度実測値であるα(t)を、下記式(1)により換算し、所定時間tにおける換算COガス濃度β(t)を求める。 β(t)=α(t)/ΔP(t) (1) ΔPは下記式(2)で求められる正味マイクロ波出力である。 ΔP(t)=P(t)−Pr(t) (2) P(t)は所定時間tのマイクロ波照射出力であり、Pr(t)は所定時間tのマイクロ波反射出力である。図1及び図2に示すように、スターラー5等の影響によりマイクロ波の照射及び反射出力の時間変動が大きい場合は、前述のように、それぞれ所定のマイクロ波測定継続時間(Δt)での平均したマイクロ波の照射出力P(t)、反射出力Pr(t)を用いる。 なお、上述した球状窒化アルミニウム粒子製造装置1では、P(t)及びPr(t)について、マイクロ波照射出力計及びマイクロ波反射出力計により測定できる。 α(t)を正味マイクロ波出力ΔP(t)で除することで、焼成途中のマイクロ波出力の変動を補償したCOガス濃度が求められる。すなわち、マイクロ波発振器3でマイクロ波を出力する際には、種々の事情によってマイクロ波発振器3におけるマイクロ波の出力を下げ、或いは上げることが行われることもあり、その場合、マイクロ波の出力に応じて混合物6における反応速度が変わり、これに応じてCOガス濃度が変化してしまう。そこで、α(t)をΔP(t)で除することで、マイクロ波の出力の変動を補償したCOガス濃度を求めることができる。 例えば、局所加熱の進行により放射温度計での温度計測値が焼成容器や断熱材の使用温度範囲を超えて上昇した場合などにおいて、装置の損傷防止および安全上の観点からマイクロ波出力を低下させる必要が生じる場合がある。アルミナを窒化アルミニウムに転換する反応は吸熱反応であり、反応に必要なエネルギーはマイクロ波の電力により供給される。従って、照射するマイクロ波の出力を低下させると、原料アルミナが窒化アルミニウムに転換される速度が低下し、原料アルミナが窒化アルミニウムに転換されることに伴って発生するCOガスの発生量が低下し、計測しているCOガス濃度が低下する。この様な場合においても、原料アルミナから窒化アルミニウムへの転換の進行を誤差なく監視するためには、焼成中のマイクロ波出力、正確には、照射マイクロ波出力から反射して戻ってくるマイクロ波反射出力を差し引いた、正味の照射マイクロ波出力を用いて、発生しているCOガス濃度を補正することが必要である。 ここで例えば、球状窒化アルミニウム粒子製造装置1においては、制御部14によって、マイクロ波照射出力計及びマイクロ波反射出力計から受け取ったマイクロ波照射出力P(t)及びマイクロ波反射出力Pr(t)と、一酸化炭素ガス分析器13から受け取った一酸化炭素ガス濃度データを基に得たCOガス濃度実測値α(t)により、換算COガス濃度β(t)を求めることができる。 球状窒化アルミニウム粒子製造装置1では、このようにして制御部14にて求めた換算COガス濃度β(t)を基に、アプリケーター2内の一酸化炭素ガスの濃度値を監視し、一酸化炭素ガス濃度の最大値を特定してもよい。この場合、制御部14は、所望の窒化度合いの球状窒化アルミニウム粒子を得ることがきるマイクロ波照射の終了タイミングとして、一酸化炭素ガス濃度の最大値を基準に終了換算COガス濃度βendを予め定めておく。制御部14は、一酸化炭素ガス分析器13から受け取った一酸化炭素ガス濃度データを基に求めた換算COガス濃度β(t)を監視してゆき、当該換算COガス濃度β(t)が終了換算COガス濃度βendとなったときにマイクロ波の照射を終了させることもできる。 次に、上述した換算COガス濃度比γ(t)について説明する。上記と同様の方法で、COガス濃度が最大となったときの濃度を式(1)及び(2)により換算して、アプリケーター2から送られてくる排気ガス中の換算COガス濃度最大値βmaxを求める。換算COガス濃度比γ(t)は、下記式(3)に示すように、所定時間tにおける換算COガス濃度β(t)の、βmaxに対する比により求めることができる。 換算COガス濃度比γ(t)=β(t)/βmax (3) この場合、例えば制御部14は、所望の窒化度合いの球状窒化アルミニウム粒子を得ることができるマイクロ波照射の終了タイミングとして、一酸化炭素ガス濃度の最大値を基準にした、マイクロ波停止の換算COガス濃度比γ0を予め定めておき、一酸化炭素ガス分析器13から受け取った一酸化炭素ガス濃度データを基に求めた換算COガス濃度β(t)や換算COガス濃度最大値βmaxを監視してゆき、換算COガス濃度比γ(t)が、予め定めたγ0まで低下したときにマイクロ波の照射を終了させることもできる。 図5は、AlN生成率(%)と熱伝導率(W/mK)との正の相関を示すグラフである。熱伝導率は、球状窒化アルミニウム粒子を樹脂(汎用エポキシBis−A型)と体積比80:20で混合し、平板上に成型して乾燥処理した板状成型体に対しての熱伝導率を測定した。熱伝導率の測定は定常法を用いて計測した。フィラー用途向けの熱伝導率としては、15W/mK以上であることが好ましく、図5からAlN生成率(%)が45%以上であることが好ましい。図5の結果を基に図4において、換算COガス濃度比γ(t)を確認した場合、換算COガス濃度比γ(t)が1.0以下、好ましくは0.8以下であること望ましいことが確認できた。即ち、換算COガス濃度比γ(t)が1.0以下ということは、COガス濃度が最大値になった後にマイクロ波の照射を終了すればよいことが分かる。また窒化が進み過ぎた場合、球状窒化アルミニウム粒子の表面の凹凸発生により球状窒化アルミニウム粒子(フィラー)の樹脂への混合可能量が低下することを考慮すると、換算ガス濃度比γ(t)が0.1以上で焼成を終了することが好ましいことが分かった。従って、γ0は1.0〜0.1が好ましく、0.9〜0.1がより好ましい。 図6は、後述する実施例で得られた球状窒化アルミニウム粒子の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)写真である。図6から、球状窒化アルミニウム粒子がほぼ真球状でありフィラーに好適であることが分かる。図7は図6の粒子の電子プローブマイクロ分析(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)によるマッピング画像である。図7から分かるように、窒化の度合いは球状窒化アルミニウム粒子表面から数μm〜数十μm程度であり、球状窒化アルミニウム粒子中央部は窒化されていないことが分かる。 また、上述のように、本発明では、上記反応式において、用意されたAl2O3のモル当量に比べ、炭素Cを多量に含むように炭素系粉末を調製してあるため、COガスの発生の低減の原因は、材料中の炭素C不足ではない。一方で、球状窒化アルミニウム粒子の中には、中央部が完全に窒化されていないものがあることから、窒化の進捗に伴うCOガス濃度の低減は、球状アルミナに生じた窒化アルミニウム層によって、球状窒化アルミニウム粒子の内部までN2ガスが届きにくくなっていることの影響を受けているものと考えられる。即ち、本発明は、上記反応式における右辺の生成量を単に追っているわけではなく、球状窒化アルミニウムの表面及び内部の状態を含め、包括的に球状窒化アルミニウムの生成状態を判断するものである。 以上の結果から、換算COガス濃度比γ(t)が0となる前(即ちCOガス濃度が検出限界以下となる時点より前)において、一酸化炭素ガス濃度の最大値を基準に決められた所定の終了タイミングでマイクロ波の照射を終了させることで、球状窒化アルミニウム粒子の窒化が進み過ぎないようにすることが望ましい。 以下、実施例により、より具体的に本発明効果を説明する。球状アルミナ粒子(マイクロン社製球状アルミナ粉末AX35−125)169gと、炭素系材料粉末(クラレケミカル社製電極材料用活性炭)51gとを、ボールミルで1時間混合し、原料混合物を調製した。該原料混合物220gを、高純度アルミナ製のこう鉢に入れて、図1に示す構成の球状窒化アルミニウム粒子製造装置1のアプリケーター2内で、50L/分の窒素ガス気流下で、一酸化炭素ガス分析器13として設けた堀場製作所製ポータブルガス分析計PG−240で排気ガス中のCO濃度をオンライン分析しながら、マイクロ波により加熱処理した。マイクロ波照射を開始してから4.5時間後、換算COガス濃度比γが約0.7となった時点で、マイクロ波の照射を手動にて停止した。得られた反応混合物を取り出した後に、余剰の活性炭を700℃の大気雰囲気加熱炉にて燃焼除去して、アルミナ粒子の少なくとも一部が窒化アルミニウムである球状窒化アルミニウム粒子を得た。図6に得られた球状窒化アルミニウム粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す。上述したように、図6から、マイクロ波により加熱処理されて得られた球状窒化アルミニウム粒子はほぼ真球であり、フィラーとして好適であることが分かる。また、図7に球状窒化アルミニウム粒子のEPMAマッピング画像を示す。図7右上の窒素のマッピング画像から分かるように、粒径が約50μmの球状窒化アルミニウム粒子では表面から約5μmが窒化されており、粒径が30μm以下の球状窒化アルミニウム粒子では約10μm程度窒化されていた。焼成した球状窒化アルミニウム粒子を樹脂(汎用エポキシ樹脂)と体積比80:20で混合し、板状に成型乾燥した試料の熱伝導率を定常法により測定した約21w/mkであった。 1 球状窒化アルミニウム粒子製造装置 2 アプリケーター(加熱炉) 3 マイクロ波発振器 4 導波路 5 スターラー 6 球状アルミナ粒子と炭素系材料粉体とを含む混合物 7 載置台 8 断熱材 9 石英窓 10 赤外線カメラ 11 窒素ガス供給管 12 排気ガス管 13 一酸化炭素ガス分析器 14 制御部 |