自己発熱型定着ローラ

申请号 JP2015008951 申请日 2015-01-20 公开(公告)号 JP2016133673A 公开(公告)日 2016-07-25
申请人 住友電気工業株式会社; 住友電工ファインポリマー株式会社; 发明人 中島 晋吾; 菅原 潤; 池田 吉隆; 田中 正人; 石川 雅敏;
摘要 【課題】構造が簡潔であり、耐久性に優れ、容易に製造できる自己発熱型定着ローラを提供することを目的とする。 【解決手段】本発明の一態様に係る自己発熱型定着ローラは、円柱状の芯金と、この芯金の外周側に積層される断熱層と、この断熱層の外周側に積層され、給電により加熱される発熱層と、この発熱層の外周側に積層される離型層とを備える自己発熱型定着ローラである。上記断熱層が、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の気孔とを有するとよい。上記発熱層が、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の導電フィラーとを有するとよい。上記導電フィラーが 金属粉末 と炭素粉末との混合体であるとよい。上記導電フィラーが金属粉末であり、上記発熱層が上記マトリックス中に絶縁フィラーをさらに含むとよい。上記導電フィラーが針状であるとよい。 【選択図】図1
权利要求

円柱状の芯金と、 この芯金の外周側に積層される断熱層と、 この断熱層の外周側に積層され、給電により加熱される発熱層と、 この発熱層の外周側に積層される離型層と を備える自己発熱型定着ローラ。上記断熱層が、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の気孔とを有する請求項1に記載の自己発熱型定着ローラ。上記発熱層が、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の導電フィラーとを有する請求項1又は請求項2に記載の自己発熱型定着ローラ。上記導電フィラーが金属粉末と炭素粉末との混合体である請求項3に記載の自己発熱型定着ローラ。上記導電フィラーが金属粉末であり、上記発熱層が上記マトリックス中に絶縁フィラーをさらに含む請求項3に記載の自己発熱型定着ローラ。上記導電フィラーが針状である請求項3、請求項4又は請求項5に記載の自己発熱型定着ローラ。上記発熱層の両端間の電気抵抗が5Ω以上100Ω以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の自己発熱型定着ローラ。上記離型層がフッ素樹脂を主成分とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の自己発熱型定着ローラ。上記発熱層の両端部に当接する一対の円筒状の等電位電極をさらに備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の自己発熱型定着ローラ。上記発熱層と離型層との間に弾性層を備える請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の自己発熱型定着ローラ。

说明书全文

本発明は、自己発熱型定着ローラに関する。

複写機、レーザービームプリンタ等の画像形成装置において、印刷及び複写の最終段階では一般に熱定着方式が採用されている。この熱定着方式は、ヒータを内部に設けた加熱ローラと加圧ローラとの間にトナー画像が転写された印刷用紙等の被転写物を通過させることで、未定着のトナーを加熱溶融し、被転写物にトナーを定着させて画像を形成する方式である。

上記従来の加熱ローラとしては、例えば特開2002−31972号公報に記載のものが挙げられる。この加熱ローラでは、ローラの軸方向にヒータが埋設され、このローラ及びヒータの外面側に耐熱性フィルムが配設される。このヒータにより耐熱性フィルムが加熱され、加熱された耐熱性フィルムがローラと独立して回転することでトナーが加熱される。

しかしながら、上記従来の加熱ローラは、内部にヒータを配設することから、構造が複雑であり、製造工程が煩雑となるという不都合がある。また、耐熱性フィルムの内周面側がローラ及びヒータと擦れ合うため耐久性に劣るという不都合もある。

特開2002−31972号公報

本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、構造が簡潔であり、耐久性に優れ、容易に製造できる自己発熱型定着ローラを提供することを目的とする。

本発明の一態様に係る自己発熱型定着ローラは、円柱状の芯金と、この芯金の外周側に積層される断熱層と、この断熱層の外周側に積層され、給電により加熱される発熱層と、この発熱層の外周側に積層される離型層とを備える自己発熱型定着ローラである。

当該自己発熱型定着ローラは、構造が簡潔であり、耐久性に優れ、容易に製造できる。

図1は、本発明の一実施態様に係る自己発熱型定着ローラを示す模式的軸直方向断面図である。

図2は、図1の自己発熱型定着ローラの模式的軸方向断面図である。

図3は、図1の自己発熱型定着ローラを用いた定着装置の要部を示す模式的断面図である。

[本発明の実施形態の説明] 本発明の一態様に係る自己発熱型定着ローラは、円柱状の芯金と、この芯金の外周側に積層される断熱層と、この断熱層の外周側に積層され、給電により加熱される発熱層と、この発熱層の外周側に積層される離型層とを備える自己発熱型定着ローラである。

当該自己発熱型定着ローラは、上述のように給電により加熱される発熱層を備えるため、ヒータを用いる必要がなく、自ら発熱することにより、離型層を介してトナーを加熱して被転写物にトナーを定着できる。このように当該自己発熱型定着ローラはヒータを必要としないため、構造が簡潔であり、製造も容易である。さらに、当該自己発熱型定着ローラは、積層された各層が一体で回転するため、離型層が摩滅し難く耐久性に優れる。

上記断熱層が、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の気孔とを有するとよい。このように、上記断熱層が、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の気孔とを有することによって、断熱層が断熱性により優れ、発熱層の熱が芯金側に伝導して損失となることを抑制することができる。

上記発熱層が、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の導電フィラーとを有するとよい。このように、上記発熱層が、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の導電フィラーとを有することによって、適切な電気抵抗及び弾性を有することができ、発熱性を有しながらニップの形成が容易となる。

上記導電フィラーが金属粉末と炭素粉末との混合体であるとよい。このように、上記導電フィラーが金属粉末と炭素粉末との混合体であることによって、電気抵抗の調節が容易となる。

上記導電フィラーが金属粉末であり、上記発熱層が上記マトリックス中に絶縁フィラーをさらに含んでもよい。このように、上記導電フィラーが金属粉末であり、上記発熱層が上記マトリックス中に絶縁フィラーをさらに含むことによっても、電気抵抗の調節が容易となる。

上記導電フィラーが針状であるとよい。このように、導電フィラーが針状であることによって、電気抵抗の調節が容易となる。

上記発熱層の両端間の電気抵抗としては、5Ω以上100Ω以下が好ましい。このように、上記発熱層の両端間の電気抵抗が上記範囲内であることによって、一般的な構成の電源装置を用いてトナー画像の定着に好ましい発熱量を得ることができる。

上記離型層がフッ素樹脂を主成分とするとよい。このように、上記離型層がフッ素樹脂を主成分とすることによって、離型層が離型性、可撓性及び耐熱性に優れるものとなる。

上記発熱層の両端部に当接する一対の円筒状の等電位電極をさらに備えるとよい。このように、上記発熱層の両端部に当接する一対の円筒状の等電位電極をさらに備えることによって、発熱層全体を偏りなく発熱させられる。

上記発熱層と離型層との間に弾性層をさらに備えるとよい。このように、上記発熱層と離型層との間に弾性層をさらに備えることによって、発熱層の変形量を抑制して発熱層の断裂を防止しながら、離型層の変形量を大きくしてニップの形成を容易化できる。

なお、「円柱状」とは、中央に空洞を有する所謂円筒状も含む概念である。「主成分」とは、最も含有量が多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。また、「針状」とは、アスペクト比(フィラーの径と長さの比)が1.5以上、好ましくは2以上である形状を意味する。フィラーの断面形状は円に限らず、フィラーの断面が円でない場合は断面の最大長さを径としてアスペクト比を求める。

[本発明の実施形態の詳細] 以下、本発明の実施形態に係る自己発熱型定着ローラについて図面を参照しつつ詳説する。

[自己発熱型定着ローラ] 当該自己発熱型定着ローラ1は、図1及び図2に示すように円柱状の芯金2と、この芯金2の外周に直接積層される断熱層3と、この断熱層の外周側に積層され、給電により加熱される発熱層4と、この発熱層の外周に直接積層される離型層5とを備える。また、当該自己発熱型定着ローラ1は、断熱層3と発熱層4との間にプライマー層6をさらに備える。

また、当該自己発熱型定着ローラ1は、図2に示すように、離型層5の軸方向長さが発熱層4の軸方向長さよりも小さく、軸方向両端部において発熱層4の外周面が露出している。また、当該自己発熱型定着ローラ1は、発熱層4の両端部の内周面に当接するよう導電体で形成される一対の円筒状の等電位電極7をさらに備える。

<芯金> 芯金2は、当該自己発熱型定着ローラ1の中心において軸方向に延伸する。この芯金2は中空でもよく、中実でもよい。

芯金2には、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス等の金属、又はポリイミド、ポリアミド等の耐熱性樹脂などを用いることができる。耐熱性樹脂の中では、成形性に優れ、耐熱性及び機械的強度に優れるポリイミドが好ましい。

芯金2の平均外径としては、例えば5mm以上40mm以下とすることができる。また、芯金2が中空の場合、芯金2の平均厚みとしては、例えば10μm以上40mm以下とすることができる。芯金2の軸方向長さとしては、例えば100mm以上500mm以下とすることができる。

<断熱層> 断熱層3は、発熱層4が発生する熱が芯金2側に逃げることを抑制し、当該自己発熱型定着ローラ1のエネルギー効率を向上する。この断熱層3は、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の気孔とを有することが好ましい。さらに、この断熱層3は、弾性を有することが好ましい。

断熱層3のマトリックスの主成分とされるゴムとしては耐熱性を有するものであれば特に限定されないが、弾性を有することが好ましく、耐熱性に優れるゴム(耐熱性ゴム)が特に好ましい。この耐熱性ゴムとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、或いはこれらの混合物を好適に用いることができる。

上記シリコーンゴムとしては、例えばジメチルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム等が挙げられる。上記フッ素ゴムとしては、例えばフッ化ビニリデンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム等が挙げられる。

また、前記合成樹脂としては、例えばフェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)等が挙げられる。

また、断熱層3のマトリックス中の気孔は、発泡剤、中空フィラー等によって形成することができる。中空フィラーとしては、例えば有機マイクロバルーン、中空ガラスビーズ等を使用することができる。

上記発泡剤としては、加熱することにより分解して、例えば窒素ガス、炭酸ガス、一酸化炭素、アンモニアガス等を発生するものであり、有機発泡剤又は無機発泡剤が使用できる。

有機発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド(A.D.C.A)、アゾビスイソブチロニトリル(A.I.B.N)等のアゾ系発泡剤、例えばジニトロソペンタメチレンテトラミン(D.P.T)、N,N’ジニトロソ−N,N’−ジメチルテレフタルアミド(D.N.D.M.T.A)等のニトロソ系発泡剤、例えばP−トルエンスルホニルヒドラジド(T.S.H)、P,P−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(O.B.S.H)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(B.S.H)等のヒドラジド系、他にはトリヒドラジノトリアジン(T.H.T)、アセトン−P−スルホニルヒドラゾンなどが例示され、これらを単独で、又は二種類以上合わせて使用できる。

また、無機発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、ホウ化素ナトリウム、ソジウムボロンハイドライド、シリコンオキシハイドライド等が例示される。一般的に無機発泡剤は、ガス発生速度が有機発泡剤より緩慢でありガス発生の調整が難しい。そのため、化学発泡剤としては、有機発泡剤が好ましい。

上記有機マイクロバルーンとは、中空マイクロスフィア(Microsphere)の1種であり、例えばフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリ塩化ビニリデン等の熱可塑性樹脂、ゴムなどの有機高分子材料で形成された中空の球状微粒子である。断熱層3が有機マイクロバルーンを含有することで、断熱層3の柔軟性、耐熱性及び寸法安定性が向上する。この有機マイクロバルーンは球状であるため、断熱層3を形成する組成物に含有させても応の異方性が生じ難い。従って、有機マイクロバルーンは断熱層3の硬度及び断熱性の均一性を低下させ難い。また、有機マイクロバルーンとしてフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する耐熱性有機マイクロバルーンを用いることで、断熱層3の耐熱性がより向上する。なお、上記有機マイクロバルーンとしては市販品を用いることができる。

上記有機マイクロバルーンの平均径は、通常数μm以上数百μm以下であり、5μm以上200μm以下が好ましい。

断熱層3の気孔率の上限としては、60%が好ましく、50%がより好ましく、45%がさらに好ましい。一方、断熱層3の気孔率の下限としては、5%が好ましく、10%がより好ましく、15%がさらに好ましい。断熱層3の気孔率が上記上限を超える場合、断熱層3の強度が不十分となるおそれがある。逆に、断熱層3の気孔率が上記下限に満たない場合、断熱層3の断熱性が不十分となるおそれがある。なお、気孔率とは、断面を顕微鏡観察した際の面積率として測定される値である。

断熱層3の平均厚みの上限としては、500mmが好ましく、200mmがより好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、20μmが好ましく、100μmがより好ましい。上記平均厚みが上記上限を超える場合、当該自己発熱型定着ローラ1の大きさが不必要に増加するおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限に満たない場合、断熱層3の断熱性が不十分となり、当該自己発熱型定着ローラ1のエネルギー効率が低くなるおそれがある。

断熱層3と発熱層4とは直接又は他の層を介して接合されていることが好ましい。このように、断熱層3と発熱層4とが接合されることで、発熱層4の内周面(芯金2側の面)の断熱層3又は他の層との摩擦による摩耗が防止でき、当該自己発熱型定着ローラ1の耐久性が向上する。本実施形態では、断熱層3と発熱層4との間に後述するプライマー層6を積層することで断熱層3と発熱層4とを接合している。

<発熱層> 発熱層4は、離型層5から露出する両端部から給電されることにより、抵抗損(ジュール損)によって発熱する層である。

発熱層4は、電流を流すことができ、抵抗損によって発熱するものであればよいが、好ましくは、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の導電フィラーとを有するものとされる。

発熱層4のマトリックスの主成分としては、耐熱性を有する合成樹脂又はゴムが挙げられ、中でも、耐熱性樹脂が好ましい。この耐熱性樹脂としては、例えばポリイミド、ポリアミド等が挙げられ、耐熱性及び機械的強度に優れるポリイミドが特に好ましい。また、耐熱性ゴムとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、又はこれらの混合物を用いることができる。

発熱層4のマトリックス中には、絶縁フィラーを含んでもよい。絶縁フィラーを含むことにより、導電フィラー間の電気的接触を制限して、発熱層4の電気抵抗を比較的容易に調節することができる。

このような絶縁フィラーの材質としては、絶縁性を有するものであればよいが、熱伝導率が大きい酸化チタン、金属ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化ケイ素、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の無機フィラーが好適に使用される。

上記導電フィラーとしては、公知のものを使用でき、例えば金、ニッケル等の金属粉末、金属メッキを施した樹脂粒子、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素粉末などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び導電率の観点から、導電フィラーが炭素粉末を含むことが好ましく、金属粉末と炭素粉末との混合体であることがより好ましい。金属粉末としてはニッケル粉末が好ましい。

導電フィラーが金属粉末と炭素粉末との混合体である場合、発熱層4の導電フィラー中の炭素粉末の割合の上限としては、97体積%が好ましく、95体積%がより好ましい。一方、発熱層4の導電フィラー中の炭素粉末の割合の下限としては、30体積%が好ましく、50体積%がより好ましい。発熱層4の導電フィラー中の炭素粉末の割合が上記上限を超える場合、金属粉末が均等に分散せず、発熱層4の電気抵抗を均一にすることが容易でなくなるおそれがある。逆に、発熱層4の導電フィラー中の炭素粉末の割合が上記下限に満たない場合、導電フィラーによる発熱層4の電気抵抗の低下が大きく、発熱層4の電気抵抗の調整が容易でなくなるおそれがある。

また、発熱層4中の導電フィラーは、針状であることが好ましい。導電フィラーが針状であることによって、導電フィラーに配向性を持たせることで、発熱層4の電気抵抗率を導電フィラーの配向方向に小さく、導電フィラーの配向方向に垂直な方向に大きくすることができる。これにより、発熱層4の軸方向の電気抵抗率を周方向の電気抵抗率よりも小さくすることができる。このようにすると軸方向に安定して電流が流れるため、熱特性が安定する。

導電フィラーのアスペクト比の下限としては、1.5が好ましく、2.0がより好ましい。一方、導電フィラーのアスペクト比の上限としては、1000が好ましく、100がより好ましい。導電フィラーのアスペクト比が上記下限に満たない場合、軸方向と周方向とで電気抵抗率の差を設けることができないおそれがある。逆に、導電フィラーのアスペクト比が上記上限を超える場合、発熱層4の塗工が容易ではなくなるおそれがある。

針状の炭素粉末としては、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と呼称することがある)が挙げられる。CNTは、ナノサイズの円筒状カーボンである。CNTは、一般に比重が約2.0、アスペクト比(直径に対する長さの比)が50以上1000以下である。また、CNTとしては、単層型(single−wall)と複層型(multi−wall)とが代表的である。上記複層型CNTは、筒状のカーボン材料が同心円状に幾重にも重なった構造を有する。CNTの製法は、公知の方法を用いることができるが、CNTの直径を制御しやすく、量産性にも優れた気相成長法が好ましい。

CNTの平均直径の上限としては、500nmが好ましく、300nmがより好ましい。一方、上記平均直径の下限としては、100nmが好ましい。上記平均直径が上記上限を超える場合、発熱層4の柔軟性や表面の平滑性が低下するおそれがある。逆に、上記平均直径が上記下限に満たない場合、CNTの分散性が低下して発熱層4の機械的強度が低下するおそれや、CNTの生産性が低下するおそれがある。なお、CNTの平均直径とは、例えばレーザー散乱法や走査型電子顕微鏡による観察によって測定したCNTの短軸径の平均値である。

CNTの平均長さの上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。一方、上記平均長さの下限としては、1μmが好ましい。上記平均長さが上記上限を超える場合、CNTの分散性が低下し発熱層4の機械的強度が低下するおそれや、発熱層4の表面の平滑性が低下するおそれがある。逆に、上記平均長さが上記下限に満たない場合、発熱層4の破断伸び等の機械的強度が不十分となるおそれがある。なお、CNTの平均長さとは、例えばレーザー散乱法や走査型電子顕微鏡による観察によって測定したCNTの長さの平均値である。

また、針状以外の形状を有する炭素粉末としては、例えばシェル状のカーボン粒子を用いることができる。このようなシェル状のカーボン粒子を用いることで、添加量に対する発熱層4の電気抵抗変化が穏やかとなり、発熱層4の電気抵抗の調節が容易となる。

また、針状の金属粉末としては、特に限定されないが、例えば針状ニッケル粉末等が挙げられる。

発熱層4における導電フィラーの含有量の上限としては、60体積%が好ましく、55体積%がより好ましく、50体積%がさらに好ましい。一方、上記含有量の下限としては、5体積%が好ましく、10体積%がより好ましく、15体積%がさらに好ましい。上記含有量が上記上限を超える場合、発熱層4の耐熱性、機械的強度等が低下するおそれがある。逆に、上記含有量が上記下限に満たない場合、発熱層4の抵抗を所望の範囲とし難くなるおそれがある。

発熱層4の平均厚みの上限としては、300μmが好ましく、250μmがより好ましく、200μmがさらに好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記上限を超える場合、当該自己発熱型定着ローラ1の製造コストが増加するおそれがある。一方、上記平均厚みが上記下限に満たない場合、発熱層4が熱や衝撃により破損し易くなるおそれがある。

発熱層4の両端間の電気抵抗の上限としては、100Ωが好ましく、80Ωがより好ましく、60Ωがさらに好ましい。一方、発熱層4の両端間の電気抵抗の下限としては、5Ωが好ましく、7.5Ωがより好ましく、10Ωがさらに好ましい。上記抵抗が上記上限を超える場合、発熱層4の温度上昇に必要な電圧が大きくなり、当該自己発熱型定着ローラ1を駆動するための電源装置が不必要に高価となるおそれがある。逆に、上記抵抗が上記下限に満たない場合、発熱層4の温度上昇に必要な電流が大きくなり、やはり当該自己発熱型定着ローラ1を駆動するための電源装置が不必要に高価となるおそれがある。

また、発熱層4の軸方向の単位長さあたりの電気抵抗(長さ抵抗率)の上限としては、1000Ω/mが好ましく、800Ω/mがより好ましく、600Ω/mがさらに好ましい。一方、上記長さ抵抗率の下限としては、0.01Ω/mが好ましく、0.1Ω/mがより好ましく、1Ω/mがさらに好ましい。上記長さ抵抗率が上記上限を超える場合、発熱層4の電気抵抗が大きくなり過ぎるおそれがある。逆に、上記長さ抵抗率が上記下限に満たない場合、発熱層4の電気抵抗が小さくなり過ぎるおそれがある。

発熱層4に電流を印加する方法としては、図示しない電極板、ブラシ等を発熱層4の両端の露出部分の外周面に当接させる方法が採用される。発熱層4の外周面に管状の導電体 からなる電極を配設し、この端子に電極板ブラシ等を当接させてもよい。

<離型層> 離型層5は、断熱層3の外周面に直接積層され、トナーと接触する層である。この離型層5は、トナーが自己発熱型定着ローラ1に付着することを防止する。

離型層5の主成分としては、例えば熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を用いることができる。上記熱可塑性樹脂としては、例えばビニル樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。これらの中で、離型性、可撓性及び耐熱性に優れるフッ素樹脂が好ましい。また、これらの樹脂を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。

上記フッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFP)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等が挙げられる。これらの中で、分子量が小さく離型性に優れるPFA又はPTFEが好ましい。

離型層5は、熱伝導フィラー等の添加剤を含有してもよい。離型層5が熱伝導フィラーを含有することで、発熱層4の熱を効率よくトナーに伝えることができる。

上記熱伝導フィラーとしては、例えば金属、セラミック、ボロンナイトライド、カーボンナノチューブ、アルミナ、シリコンカーバイド等が挙げられる。

離型層5は、絶縁性を有することが好ましい。具体的には、離型層5の軸方向の単位長さあたりの電気抵抗の下限としては、1014Ω/mが好ましい。離型層5の上記長さ抵抗率が上記下限に満たない場合、発熱層4から離型層5を介して漏電し、発熱層4の発熱が不十分となるおそや、感電事故又は装置故障の原因となるおそれがある。

離型層5の平均厚みの上限としては、50μmが好ましく、35μmがより好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましい。上記平均厚みが上記上限を超える場合、当該自己発熱型定着ローラ1の大きさが不必要に増大するおそれや、当該自己発熱型定着ローラ1の熱効率が低下するおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限に満たない場合、離型層5の強度が不十分となるおそれがある。

離型層5は発熱層4と接合されていてもよく、接合されず独立して回転できるものでもよいが、接合されていることが好ましい。このように、離型層5と発熱層4とが接合されることで、離型層5の内周面(発熱層4と接する側の面)の発熱層4との摩擦による摩耗が防止でき、当該自己発熱型定着ローラ1の耐久性が向上する。この離型層5と発熱層4の接合方法としては、特に限定されず、離型層5又は発熱層4の形成と同時に接合する方法、離型層5及び発熱層4を形成した後に接合する方法等が挙げられる。また、これらの方法に加え、離型層5及び発熱層4の主成分を親和性の高い組み合わせとすることでより強固に離型層5と発熱層4とを接合できる。

上記離型層5又は発熱層4の形成と同時に接合する方法としては、例えば離型層5の内周面に発熱層4を塗布、押出成形等することで発熱層4を形成する方法、発熱層4の外周面に離型層5を塗布、押出成形等することで離型層5を形成する方法、離型層5と発熱層4とを共押出する方法が挙げられる。

上記離型層5及び発熱層4を形成した後に接合する方法としては、例えば離型層5と発熱層4とを接着剤により接着する方法、離型層5の発熱層4が積層される側の面にプラズマ処理等の表面処理を行う方法、離型層5の主成分がフッ素樹脂である場合に例えば加熱、電離放射線の照射、カップリング剤の塗布等により離型層5と発熱層4とを化学結合させる方法等が挙げられる。

<プライマー層> プライマー層6は、断熱層3と発熱層4との間に積層される層であり、断熱層3と発熱層4との密着性を向上させる。このプライマー層6の主成分としては、断熱層3と発熱層4との主成分に応じ適宜選択できる。プライマー層6の具体的な主成分としては、例えばシリコーンゴム、フッ素樹脂等を用いることができる。

プライマー層6を形成する組成物としては、市販の汎用品を用いることができる。このような組成物としては、例えば信越化学社の「X−33−174」、信越化学社の「KE−1880」、東レダウコーニング社の「DY39−051」、三井デュポン社の「PJ992CL」、ダイキン工業社の「GLP103SR」等が挙げられる。

上記プライマー層6の平均厚みの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましい。上記平均厚みが上記上限を超える場合、当該自己発熱型定着ローラ1の製造コストが増加するおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限に満たない場合、断熱層3と発熱層4との密着性が向上し難いおそれがある。

<等電位電極> 等電位電極7は、発熱層4の両端部の外周面に印加される電圧を、発熱層4の周方向に均等化する。これによって、発熱層4の全体に略均等に電流を流し、発熱層4を偏りなく発熱させる。

等電位電極7は、十分に電気抵抗が小さい導電体で形成すればよいが、金属箔、導電性ペースト等を用いて形成することができる。上記金属箔としては、銅箔が好適に用いられ、金属箔に接着剤が塗布された金属テープを用いてもよい。

[自己発熱型定着ローラの製造方法] 当該自己発熱型定着ローラ1は、発熱層4を構成する材料をフィルム状に形成する工程と、フィルム状の発熱層4の表面に離型層5を構成する材料を積層する工程と、この発熱層4と離型層5との積層体を、金型の円柱状のキャビティの内周面に沿うよう装填する積層体装填工程と、発熱層4の両端部の内周面に等電位電極7を配設する等電位電極配設工程と、発熱層4の内周面にプライマー層6を形成するプライマー層形成工程と、芯金2をその中心軸がキャビティの中心軸と一致するよう装填した状態で断熱層形成用組成物を射出成形する断熱層形成工程とを備える製造方法により容易かつ確実に製造することができる。

当該自己発熱型定着ローラ1はヒータを備えないため、ヒータを製造する工程及びローラにヒータを埋設する工程が不要である。

<フィルム形成工程> フィルム形成工程では、発熱層4を構成する材料を溶媒で希釈した樹脂組成物の基材(離型フィルム)への塗工及び焼成により、フィルム状の発熱層4を形成する。

樹脂組成物の塗工方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等の従来公知の塗工方法を用いることができる。

樹脂組成物の焼成では、樹脂組成物中の溶媒を揮発させる。この焼成温度としては、例えば100℃以上500℃以下とすることができる。

<積層工程> 積層工程では、フィルム状の発熱層4の表面に離型層5を積層する。離型層5の積層方法としては、離型層5を形成する樹脂組成物を発熱層4の表面に塗工及び焼成する方法、予めフィルム状に形成した離型層5を接着剤等で貼り合わせる方法等を用いることができる。発熱層4と離型層5との密着力を向上するために、フィルム状の離型層5の発熱層4に対する接着面にプラズマ処理、プライマー処理等を行ってもよい。

<積層体装填工程> 積層体装填工程では、円柱状のキャビティを有する金型を用い、この金型の内周面に沿うチューブ状となるように発熱層4及び離型層5の積層体を金型に装填する。

金型の主成分としては、例えば鉄、ステンレス、アルミニウム、これらの合金等が挙げられる。

また、金型内周面に平滑化処理を施すことが好ましい。このように、金型内周面に平滑化処理を施すことで、当該自己発熱型定着ローラ1の表面の平滑性が向上するため、ニップ性が向上すると共に、断熱層3形成後に当該自己発熱型定着ローラ1を金型から引き抜く際の脱型性が向上する。この平滑化処理としては、金型の主成分がアルミニウムの場合は引き抜きにより金型を形成すること、また他の金属の場合は金型にクロムメッキ、ニッケルメッキ等を行うことが挙げられる。金型内周面の表面粗さ(Rz)としては、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。

キャビティの内径は当該自己発熱型定着ローラ1の径に応じて適宜調整できる。キャビティの内径をD1、チューブ状の離型層5の外径をD2としたときの(D1−D2)/D1の値の上限としては、10%が好ましく、8%がより好ましい。一方、(D1−D2)/D1の値の下限としては、3%が好ましく、4%がより好ましい。上記(D1−D2)/D1の値が上記上限を超える場合、チューブ状の離型層5の外周面にしわが発生し、当該自己発熱型定着ローラ1のニップ圧の均一性が低下するおそれがある。逆に、上記(D1−D2)/D1の値が上記下限に満たない場合、チューブ状の離型層5を金型の内周面に沿って装填し難くなり、当該自己発熱型定着ローラ1の製造効率が低下するおそれがある。

チューブ状の離型層5としては、金型より長尺のものが好ましい。このようにチューブ状の離型層5を金型より長尺とすることにより、チューブ状の離型層5を金型に装填する際、チューブ状の離型層5の両端部を金型から突出させることができ、この突出部を金型の両端部の外側に折り返すことが可能となる。これにより、金型の内径よりチューブ状の離型層5の外径が細い場合でも、金型とチューブ状の離型層5との間の空間の気密性を容易かつ確実に保つことができる。

チューブ状の離型層5の両端部を折り返す場合、この折り返し部の平均長さ(折り返し位置から離型層5の端部との距離のうち短い方の距離)としては、10mm以上30mm以下が好ましい。折り返し部の平均長さが上記下限に満たない場合、上述の折り返しによる効果が十分に得られないおそれがある。一方、折り返し部の平均長さが上記上限を超える場合、チューブ状の離型層5の長さに無駄が生じる。

本工程では、まず円柱状のキャビティを有する金型を用意し、エア拭き等により金型内周面を清掃し付着している異物を除去する。その後、チューブ状の離型層5を金型に挿入し、両端部の口径を拡大する。この拡大部を金型の外側に折り返して折り返し部を形成する。

その後、チューブ状の離型層5と金型内周面との間に生じた隙間に真空ラインを接続して真空吸引を行い、チューブ状の離型層5を金型内周面に吸着させる。その後、固定具を金型の両端側に装着し、上記折り返し部を金型の外周面に密着させる。

<等電位電極配設工程> 等電位電極配設工程では、発熱層4の両端部の内周面に、例えば導電性ペーストの塗布及び焼成により等電位電極を形成する。

<プライマー層形成工程> プライマー層形成工程では、発熱層4の内周面にプライマー層形成用組成物を塗装及び乾燥することでプライマー層6を形成する。このプライマー層形成用組成物としては、例えば上記プライマー層6において例示した樹脂、無機フィラー等を含む組成物が挙げられる。プライマー層形成用組成物の乾燥は、真空下で、金型の中心軸を中心として金型並びに離型層5、発熱層4及びプライマー層形成用組成物の積層体を回転させながら加熱することで行うことができる。

<断熱層形成工程> 断熱層形成工程では、金型の中心軸と芯金2の中心軸が略一致するように芯金2を離型層5、発熱層4及びプライマー層6の積層体の中空部に挿入し、その後断熱層形成用組成物をプライマー層6と芯金2との間に注入し加硫することで断熱層3を形成する。

上記芯金2は公知の方法で製造することができる。芯金2の形成材料として耐熱性樹脂を用いる場合、例えばドラム状の金型の外周面に樹脂を塗布し、金型を回転させながら加熱し、金型を離型することで中空円柱状の芯金2を容易かつ確実に形成できる。

上記断熱層形成用組成物としては、例えば上記断熱層3において例示した樹脂等を含む組成物が挙げられる。

断熱層形成用組成物注入後、金型蓋を金型の両端に被せ、断熱層形成用組成物を所定温度で所定時間加熱することにより加硫し断熱層3を形成する。その後、金型とチューブ状の離型層5間の真空を開放することで芯金2、断熱層3、プライマー層6、発熱層4及び離型層5の積層体を脱型することで当該自己発熱型定着ローラ1が得られる。

なお、上記脱型後さらに加硫を行うとよい。このように、脱型後にさらに加硫を行うことで、断熱層3の加硫不足による断熱層3の固化不良や断熱層3内への揮発成分の残留を低減できる。

<利点> 当該自己発熱型定着ローラ1は、上述のように給電により加熱される発熱層4を備えるため、ヒータを用いる必要がなく、自ら発熱することにより、離型層5を介してトナーを加熱して被転写物にトナーを定着できる。このように、当該自己発熱型定着ローラ1は、ヒータを必要としないため、構造が簡潔であり、製造も容易である。さらに、当該自己発熱型定着ローラ1は、積層された各層が一体で回転するため、離型層5が摩滅し難く耐久性に優れる。

また、当該自己発熱型定着ローラ1は、断熱層3が、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の気孔とを有するため、断熱層3が断熱性により優れ、発熱層4の熱が芯金2側に伝導して損失となることを抑制することができる。

また、当該自己発熱型定着ローラ1は、発熱層4が、合成樹脂又はゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の導電フィラーとを有することによって、適切な電気抵抗及び弾性を有することができ、発熱性を有しながらニップの形成が容易である。

また、当該自己発熱型定着ローラ1は、発熱層4の導電フィラーの素材が金属又は炭素であることによって、発熱層4の電気抵抗を安定して好ましい値とすることができる。また、導電フィラーが針状であることによって、電気抵抗の調節がよりに容易である。また、導電フィラーが金属粉末と炭素粉末との混合体であることによって、電気抵抗の調節がさらに容易である。

また、当該自己発熱型定着ローラ1は、発熱層4の両端部の内周面に当接する一対の円筒状の等電位電極7を備えることによって、発熱層4全体に均等に電流を流して偏りなく発熱させられる。

[定着装置] 図3の定着装置は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置であり、定着ローラとしての当該自己発熱型定着ローラ1、及び当該自己発熱型定着ローラ1と対で配置される加圧ローラ11を備える。この定着装置は、未定着トナーBが表面に積層された被転写材Aを当該自己発熱型定着ローラ1及び加圧ローラ11で加熱及び加圧することで未定着トナーBを定着させ、定着トナーCを形成するものである。

当該自己発熱型定着ローラ1を定着ローラとして備えた定着装置は、当該自己発熱型定着ローラ1の構造が簡潔であり、耐久性に優れ、容易に製造できるため、低いコストで製造できる。

[その他の実施形態] 今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。

当該自己発熱型定着ローラは、発熱層と離型層との間に弾性層をさらに備えてもよい。このように、発熱層と離型層との間に弾性層をさらに備えることによって、発熱層の変形量を抑制して発熱層の断裂を防止しながら、離型層の変形量を大きくしてニップの形成を容易化できる。また、発熱層と離型層との間に弾性層を設けることによって断熱層を弾性を有しないものとすることもできる。

発熱層と離型層との間に形成される弾性層としては、ゴムを主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含まれる複数の気孔とを有するものが好ましい。上記ゴムとしては、耐熱性に優れるゴムが特に好ましい。この耐熱性ゴムとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、或いはこれらの混合物を好適に用いることができる。

発熱層と離型層との間に形成される弾性層の厚さとしては、弾性等を考慮して、適切なニップを形成できるよう設定される。

上記実施形態では、断熱層と発熱層との間にプライマー層を備えるものを例に取り説明したが、これに限定されず、プライマー層を備えず、断熱層の外周面に離型層が直接積層されるものであってもよい。この場合、断熱層と発熱層との接合方法としては、例えば上述の離型層と発熱層との接合方法として例示したものと同様の方法が挙げられる。

また、離型層と発熱層との間や、等電位電極と断熱層との間にプライマー層を設けてもよい。

また、発熱層と離型層との間にプライマー層が積層されてもよい。このように、発熱層と離型層との間にプライマー層を積層することで、発熱層と離型層との接合強度を向上できる。

また、当該自己発熱型定着ローラにおいて、等電位電極は必須ではない。

当該自己発熱型定着ローラの製造方法としては、発熱層と離型層との積層体を用いる方法の他、発熱層の内周に芯金を配置して断熱層を充填した後に、発熱層の外周面に離型層を積層する方法としてもよい。

発熱層と離型層との積層体は、フィルム状の離型層を形成し、このフィルム状の離型層に発熱層を形成する樹脂組成物を塗工して形成してもよい。

以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。

〔試作品〕 マトリックスとなる樹脂と、マトリックスを溶解する溶媒と、導電フィラーとを含む樹脂組成物を塗工及び焼成して、軸方向長さが232mm、外周面の直径が56mm、平均厚さが57μmの発熱層の試作品を製作した。表1に示すように、マトリックス及び導電フィラーの異なる配合1〜14について、樹脂組成物を軸方向と垂直方向(周方向)に塗工した発熱層の試作品と、樹脂組成物を軸方向と平行方向に塗工した発熱層の試作品とをそれぞれ製作した。

(マトリックス) 配合1〜14の発熱層を形成するマトリックスを溶媒で溶解したものとして、2種類のワニスを使用した。具体的には、ワニス1としては、宇部興産社のポリイミドワニス「U−ワニス−S」を使用した。ワニス2としては、IST社のポリイミドワニス「パイヤーML」を使用した。各配合1〜14におけるワニスの配合量は、表1に記載するとおりである。

(導電フィラー) 配合1〜14の樹脂組成物中の導電フィラーとしては、カーボンナノチューブ及び針状ニッケルの一種又は複数種を用いた。上記カーボンナノチューブとしては昭和電工社の炭素繊維「VGCF−H」(平均径200nm、平均長さ6μm)を使用した。上記針状ニッケルとしては、ヴァーレ社のカーボニル法により製造されるニッケル粉末「Type255」(平均長さ2.2〜2.8μm)を使用した。各配合1〜14における導電フィラーの配合量は、表1に記載するとおりである。なお、表中の「−」は、そのフィラーを配合していないことを意味する。

(電気抵抗) 上記配合1〜14の樹脂組成物で製作した発熱層の試作品について、両端間の電気抵抗の値を測定した。この測定結果を、表1に併せて示す。なお、「>106」は、電気抵抗の値が、この測定に用いたテスターの測定レンジの上限である10MΩを超えていたことを示す。

配合1〜14の樹脂組成物を用いた発熱層の電気抵抗の値を検討すると、配合1,4,8〜14は、塗工方向にかかわらず定着装置用の定着ローラとして利用可能な発熱量を得ることができる。しかしながら、配合2,3の樹脂組成物を用いた発熱層については、電気抵抗が高くなり過ぎ、また、配合5〜7の樹脂組成物を用いた発熱層については、電気抵抗が低くなり過ぎるため、通常の加熱ローラに用いられる電源装置を使用して適切な発熱量を得ることは難しいと考えられる。

また、樹脂組成物の配合にかかわらず、軸方向に垂直に塗工して形成した発熱層の方が、軸方向に平行に塗工して形成した発熱層よりも両端間の電気抵抗が大きくなる傾向が確認された。これは、針状の導電フィラーが塗工時に塗工方向に配向することにより、塗工方向の電気抵抗が小さくなることによるものと考えられる。さらに詳しく見ると、アスペクト比がより大きいカーボンナノチューブの配合比率が大きいほど、垂直塗工時と平行塗工時との電気抵抗の差が大きくなった。

以上のように、当該自己発熱型定着ローラは、構造が簡潔であり、耐久性に優れ、容易に製造できるため、画像形成装置用定着装置の定着ローラとして好適に使用できる。

1 自己発熱型定着ローラ 2 芯金 3 断熱層 4 発熱層 5 離型層 6 プライマー層 7 等電位電極 11 加圧ローラ A 被転写材 B 未定着トナー C 定着トナー

QQ群二维码
意见反馈