Radiation absorbent

申请号 JP2012173063 申请日 2012-08-03 公开(公告)号 JP2013253951A 公开(公告)日 2013-12-19
申请人 Shinshu Univ; 国立大学法人信州大学; 发明人 TSURUOKA SHUJI; FUJIMORI TOSHIHIKO; KANEKO KATSUMI; FUJISHIGE MASATSUGU; ENDO MORINOBU;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a radiation absorbent that is light in weight and safe, and can be used for a variety of uses.SOLUTION: A radiation absorbent is characterized by comprising a carbon nanotube containing particles encapsulated in the hollow space thereof, the particles comprising an atom, a molecule, a compound or a combination thereof and being encapsulated in the hollow space of the carbon nanotube. By encapsulating an element, an inorganic matter or an organic matter having a high radiation absorption capability in the hollow space of the carbon nanotube, a radiation absorbent, which has a capability of highly efficiently absorbing radiation and yet sustains the surface properties of the carbon nanotube, can be provided.
权利要求
  • 原子、分子、化合物のいずれか、またはこれらの組み合わせからなる粒子が、カーボンナノチューブの中空内に内包された粒子内包カーボンナノチューブを含むことを特徴とする放射線吸収材。
  • 前記粒子として、リチウム、ベリリウム、ホウ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銀、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、臭素、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、エオジムプロメチウムサマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ウランのいずれか1つ、またはいずれかの化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の放射線吸収材。
  • 前記粒子内包カーボンナノチューブが、単層、二層、あるいは三層以上の多層のカーボンナノチューブに前記粒子を内包したものであることを特徴とする請求項1または2記載の放射線吸収材。

  • 说明书全文

    本発明は、例えば原子炉から漏出した放射性物質などから放出される放射線を高効率に吸収する、軽量かつ加工容易な放射線吸収材に関する。

    カーボンナノチューブ(以下、CNT)は、グラフェンシートを円筒状にまるめた高アスペクト比を有する中空状のナノサイズ直径炭素繊維である。 また、CNTの中空部分に原子、分子、粒子を挿入、内包したものをピーポッドという。
    ピーポッドは、1998年に最初にその合成が報告され、その後いくつかの研究が報告されているが、物性が安定なため、未だ応用方法に関する報告は少ない(非特許文献1)。 ピーポッドの応用について、いくつか特許出願が存在するが、いずれも用いられるピーポッドは、フラーレンまたは金属内包フラーレンを内包したピーポッドである(特許文献1〜6)。

    放射線は一定数値以下の波長をもつ電磁波であり、人体に悪影響を及ぼす。 一方で、原子発電や医療機関においては広く利用されており、放射線の被ばくを防ぎながら、安全に利用することは、我が国の産業にとって重要である。 このため、これまで様々な放射線の遮蔽材が研究、開発されてきた(特許文献7〜9)。
    物質の放射線吸収量は、質量吸収係数で評価される(非特許文献2)。 非特許文献2では、質量吸収係数について、その定義、測定方法及び数値が掲載されている。 これによれば、放射線吸収係数は、物質の原子番号、すなわち原子核種によって決定される。

    CNTの電磁波吸収に関しては、Dresselhausらが予想を行い、Ramasubramanjamらが研究報告を行っている(非特許文献3〜4)。 また、電波及び光を含む広義の電磁波と範囲を限ってCNTの電磁波吸収についての特許出願が行われている(特許文献10)。
    ピーポッドの電磁波吸収に関しては、CNTとアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及び周期律表第VIII族に含まれる金属から選ばれた少なくとも1種類がCNTのチューブ内に担持された電磁波吸収材料について、特許出願がなされている(特許文献11)。 この出願では、電磁波を準ミリ波領域からミリ波領域までとしている。

    特開2005−141865号公報

    特開2005−235887号公報

    特開2005−332991号公報

    特開2006−117498号公報

    特開2007−152682号公報

    特開2009−130062号公報

    特開平11−304994号公報

    特開2004−77170号公報

    特開2008−8656号公報

    特開2010−192581号公報

    特開2003−124011号公報

    BWSmith et al. Nature 396 323 (1998) Hubbell, JH & Seltzer, SM Table of X-Ray Mass Attenuation Coefficients and Mass Energy-AbsorptionCoefficients (version 1.4), NISTIR 5632 (National Institute of Standards andTechnology, Gaithersburg, MD, 1995), [Online] Available:http://physics.nist.gov/xaamdi (2004). MS Dresselhaus et al., " Graphite Fibers and Filaments ", Springer,Berlin, Hierderberg (1988). R.Ramasubramanjan, et al,. Appl Phys Lett 83 2928 (2003).

    放射線は、障害物の質量吸収係数及び厚さによって減衰することが知られている。 このため、従来の放射線吸収材は、鉛やタングステンなどの比重の大きい金属やコンクリートが使用され、かつその規模も大型となる傾向にあった。 一方で鉛は、その毒性が指摘されており、製品への加工も容易ではなかった。 炭素やなどの質量吸収係数が小さい物質は黒鉛炉、放射性物質貯蔵プールなど大規模設備には使われているが加工性が劣るためにコンパクトな遮蔽材としては利用されていない。
    本発明は、上記の課題を解決するためなされたものであり、CNTまたはCNTの中空部分に任意の原子、分子を内包したピーポッドからなる放射線吸収材を提供することを目的とする。

    本発明に係る放射線吸収材は、原子、分子、化合物のいずれか、またはこれらの組み合わせからなる粒子が、カーボンナノチューブの中空内に内包された粒子内包カーボンナノチューブを含むことを特徴とする。
    本発明においては、カーボンナノチューブの中空内に内包する原子、分子、化合物を粒子と総称する。 カーボンナノチューブにはさまざまな種類の粒子を内包させることができるから、内包した粒子の種類によって多種の粒子内包カーボンナノチューブを作成することができる。 カーボンナノチューブに粒子を内包させる際には、同一の粒子に限らず異種粒子を内包させることも可能である。
    粒子内包カーボンナノチューブは、単体で放射線吸収材とすることも可能であるが、樹脂、金属、繊維、塗料、フィルム等の他の材料に添加、混合して放射線吸収材とすることができる。 粒子内包カーボンナノチューブを他の材料に混合する場合も、一種類の粒子内包カーボンナノチューブに限らず、複数種類の粒子内包カーボンナノチューブを混合、添加して放射線吸収材とすることができる。

    また、本発明に係る放射線吸収材は、前記粒子として、リチウム、ベリリウム、ホウ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銀、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、臭素、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、エオジムプロメチウムサマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ウランのいずれか1つまたは、いずれかの化合物を含む構成とすることができる。

    前記粒子を内包するカーボンナノチューブとしては、単層、二層、あるいは三層以上の多層のカーボンナノチューブを使用することができる。 粒子内包カーボンナノチューブによる放射線吸収作用は、カーボンナノチューブ自体の放射線吸収作用に加え、カーボンナノチューブに内包された粒子の放射線吸収作用の寄与による。 したがって、カーボンナノチューブの設計と、内包する粒子の種類、濃度等を選択することにより、効果的な放射線吸収作用を備える放射線吸収材が得られる。

    本発明は、炭素がCNTの構造をとることにより、CNTの質量吸収係数が、公知の炭素の質量吸収係数に比べて明らかに増加するとの知見に基づく。 また、CNTに元素を内包した粒子内包カーボンナノチューブ(ピーポッド)にすることにより、質量吸収係数が、従来の放射線吸収量の加算則による値に比べて等しいか大きくなるとの知見に基づく。
    本発明で使用するCNTは、最外径が0.4 nm以上200nm以下であればよいが、特に1nm以上であり100nm以下であることが望ましい。
    また、本発明で使用するCNTは単層CNT、2層以上の多層CNTの種類によらず使用が可能である。 本発明に使用するピーポッドに内包する粒子は、原子、分子のいずれでも良く、有機金属、有機物などの化合物でも良い。 また、この粒子は、常温常圧下において、固体、液体、気体のいずれであっても使用が可能であり、固体、液体であると好適である。

    本発明によれば、放射線吸収能の高い元素をピーポッドとしてCNTに内包することによって、材料であるCNTの表面物性を変えることなく、その特性上利用が困難であった物質を放射線吸収材料として活用することが可能となる。 たとえば、ヨウ素のように放射線吸収能は高いもののハロゲンであるため、他の材料との混合が容易でない、あるいは溶液またはペーストがシールを劣化させるため、これまで有効に活用できなかった元素について、原子、分子あるいは原子、分子が100個未満の粒子の状態でCNTに内包することにより好適に活用することが可能となる。 また、この際、ピーポッドは、材料であるCNTの表面物性を変えないので、公知のCNTの応用方法をそのまま利用することが可能になる。 その応用範囲は、紙、繊維、フィルム、固形物、樹脂、セラミック及び金属等であり、CNTを添加、混合、コーティング、混錬できる材料であれば特に制限がない。

    また、ピーポッドは安定であるため、内包された粒子は容易には排出されない。 この性質を利用して、例えば、毒性があることにより取り扱いが難しい鉛やタングステン等の元素をCNTに内包してピーポッドにすることにより、ガンマ線を高効率で遮断する材料を製造することが可能である。 さらに、このピーポッドは使用後に周囲の材料を燃焼するなどして取り出すことにより、安全、かつ容易に回収が可能である。

    本発明の放射線吸収材は、軽量かつ高効率放射線吸収材としてさまざまな製品に適用することができる。

    多層カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真である。

    ガドリニウム内包二層カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真である。

    ピーポッドの作成装置の概略図である。

    各種炭素材料の質量吸収係数の測定結果を示すグラフである。

    三塩化ガドリニウムを内包したピーポッドの蛍光X線分析スペクトルである。

    ヨウ素を内包したピーポッドの蛍光X線分析スペクトルである。

    図1は、多層カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真を示す。 図示例の多層カーボンナノチューブは、4層のカーボンナノチューブである。 カーボンナノチューブの製造には、触媒気相成長法等の公知の方法が利用できる。 触媒気相成長法では、金属触媒が存在する、カーボンナノチューブが形成される温度に加熱した加熱雰囲気内に、メタン等の炭化水素と、水素またはアルゴン等のキャリアガスとの混合ガスを導入し、混合ガスと接触する金属触媒の表面からカーボンナノチューブを成長させて製造する。

    図2は、塩化ガドリニウムを内包するカーボンナノチューブ(ガドリニウムピーポッド)の透過型電子顕微鏡写真を示す。 図2に示すガドリニウムピーポッドは、二層のカーボンナノチューブ内にガドリニウムが取り込まれたものである。 カーボンナノチューブの中心部分にガドリニウムが存在している状態が見られる。

    (ピーポッドの作成方法)
    図3に、ピーポッドの作成に使用した装置の概略図を示す。 以下、この装置を使用してピーポッドを作成する方法について説明する。
    まず、カーボンナノチューブ略100mgを電子天秤で秤量し、図3に示す二股グラスチューブの主管10に入れる。 一方、塩化ガドリニウム(III)(和光純薬製)、またはヨウ素(和光純薬製試薬特級)を100mg秤量し、グラスチューブの枝管12に入れる(図3(a))。

    次いで、主管10をマントルヒーター18内に置き(図3(b))、コック14を開き、真空ポンプ16により、主管10と枝管12内が乾燥、真空になるまで脱気操作を行う。 この際、マントルヒーター18の加熱温度を150℃に設定し、余分な水分を蒸発させる。

    その後、コック14を閉じ、グラスチューブの細径に形成したネック部15をバーナーで溶融封函する。
    次いで、主管10を覆っているマントルヒーター18をはずし、グラスチューブ全体を別のマントルヒーター内に置き、200℃で48時間放置する。 グラスチューブをマントルヒーターより取り出し、放置冷却後、ネック部15部分をやすりで傷を付け、誘導切りでカットして主管10からCNTを取り出す。 こうして、ガドリニウムあるいはヨウ素を内包するピーポッドが得られる。

    (X線吸収測定方法)
    実験では、ピーポッド以外の、CNT及びCNT以外の炭素材料についてもX線吸収測定を行った。 X線吸収測定に使用したCNTは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、三井物産株式会社製多層カーボンナノチューブ(商品名 Mitsui
    MWNT-7)、Bayer社製多層カーボンナノチューブBaytubes(登録商標)、JFEエンジニアリング株式会社製多層カーボンナノチューブ(JFE-CNT)である。
    CNT以外の炭素材料として、標準炭素材料(HOPG:Highly Oriented Pylorized Carbon)、フラーレン、CNTにより染色したポリエステル繊維(C-Textile)についてもX線吸収測定を行った。
    X線吸収測定に使用したピーポッドは、前述した方法によって作成したガドリニウムピーポッドとヨウ素ピーポッドである。 ガドリニウムピーポッドには、本研究室製の2層カーボンナノチューブを使用し、ヨウ素ピーポッドには、三井物産株式会社製多層カーボンナノチューブ(Mitsui MWNT-7)を使用した。

    X線吸収測定に際しては、まず、上述した測定対象であるCNT、炭素材料、ピーポッドをエタノール(和光純薬製試薬特級)で洗浄し、宮本理研工業株式会社製真空検体乾燥機RA-155S型で乾燥させ、取り出した後、タブレット成形製剤ホルダー内に詰めハンディタイプのプレス機でタブレット成形を行う。 これを株式会社リガクRINT TTR II、 X線装置の受光器の前に置き、MoKα線(50kV)をゲルマニウム結晶(1,1,1)面で単色化したX線を照射する(X線強度I sample )。 同様に、受光器の前にサンプルを置かない状態でX線強度を測定した(X線強度I o )。

    X線質量吸収係数は以下の(1)式より算出する。

    ただし、(μ/ρ)は質量吸収係数、μは被測定物の線形吸収係数、ρは被測定物の密度、xは被測定物の厚みである。

    (X線吸収測定結果:CNT、炭素材料)
    図4に、上述した4種のCNTのサンプル(SWCNT、Mitsui
    MWNT-7、Baytubes(登録商標)、JFE-CNT)と、標準炭素材料(HOPG)、フラーレン(C 60 )、C-Textileについて測定した質量吸収係数を示す。
    サンプルSWCNTは直径1.2〜1.4nmの単層カーボンナノチューブ、Mitsui MWNT-7は、直径60〜70nmの多層カーボンナノチューブ、Baytubes(登録商標)は直径20〜30nmの多層カーボンナノチューブである。 これらのCNTサンプルはいずれも中空のカーボンナノチューブであるのに対して、JFE-CNTは、カーボンナノチューブの中心部(芯部分)にカーボンが充填されたもの(ナノ炭素ロッド)である。

    図4において、補正済みとあるのは、サンプルに含有されている不純物によるX線吸収の影響を取り除く補正を行った結果であることを示す。 サンプルSWCNTとサンプルC 60については不純物測定結果から測定限界以下の不純物量であることを確認し、補正していない。 サンプルHOPG、JFE-CNTは不純物を含んでいないので補正をしていない。
    サンプルC-Textileは、Baytubes(登録商標)を分散させた分散液にポリエステル繊維を浸漬させてCNTを染色した繊維を織って得られた織布である。 C-TextileのX線吸収測定は、C-Textileの布を複数枚重ねたものをサンプルとして測定した。

    図4は、中空のCNTである3種のサンプルSWCNT、Mitsui
    MWNT-7、Baytubes(登録商標)については、標準炭素材料や、中心部にカーボンを充填したJFE-CNT、フラーレン(C 60 )と比較して、X線に対する質量吸収係数が明らかに大きいことを示す。 すなわち中空のCNTは、中心部にカーボンが充填されたCNTと比較してX線の吸収特性に優れ、標準炭素材料やフラーレンと比較して、効率的にX線を吸収できることがわかる。

    (X線吸収測定結果:ヨウ素内包ピーポッド)
    株式会社リガクUltimaIV、X線装置において50kV、4mA、波長0.6197オングストローム及び50kV、35mA、波長0.709オングストロームで測定を行った。 サンプル(タブレット)の厚さは、三井物産株式会社製多層カーボンナノチューブ(Mitsui MWNT-7)からなるサンプルについては1.164mm、この多層カーボンナノチューブにヨウ素を内包させたサンプルについては1.561 mmであった。
    X線質量吸収係数を測定した結果は下記のとおりである。
    A.
    波長0.6197オングストローム
    MWNT-7 : 0.404
    ヨウ素内包ピーポッド:0.496 cm 2 /g
    B.
    波長0.709オングストローム
    MWNT-7 : 0.539
    ヨウ素内包ピーポッド:0.716 cm 2 /g

    上記実験結果は、中空の多層カーボンナノチューブMitsui MWNT-7と比較して、この多層カーボンナノチューブにヨウ素を内包させたピーポッドのX線吸収特性が向上したことを示している。 ヨウ素内包ピーポッドのX線吸収特性が向上した理由は、カーボンナノチューブに内包したヨウ素の放射線吸収能によるものと考えられる。

    (X線吸収測定結果:ガドリニウム内包ピーポッド)
    株式会社リガクUltimaIV、X線装置において50kV、4mA、波長0.6197オングストローム及び50kV、35mA、波長0.709オングストロームで測定を行った。 サンプルの厚さは、2層カーボンナノチューブからなるサンプルについては0.083 mm、この2層カーボンナノチューブにガドリニウムを内包させたピーポッドについては0.109 mmであった。 2層カーボンナノチューブの比重は非常に小さいので、測定された数値((1)式の-ln (I sample /I o )は試料厚み実測値0.109 mm 及び塩化ガドリニウム(I)の質量2.424 g/ml及び三塩化ガドリニウム(III)6水和物の質量(2400 kg/m 3 (CAS No.13450-84-5))より三塩化ガドリニウム(III)の比重を2.4とし図2より塩化ガドリニウム(III)内包ピーポッドの比重を推算して質量級数係数を概算した。

    測定結果は下記のとおりである。
    C.
    波長0.6197オングストローム
    2層CNT : 0 (ブランクと同じ=吸収無し)
    -ln (I sample /I o ) :
    0.02230
    ガドリニウム内包ピーポッド : 29 cm 2 /g
    D.
    波長0.709オングストローム
    2層CNT : 0
    -ln (I sample /I o )
    :0.02365
    ガドリニウム内包ピーポッド : 31 cm 2 /g
    参考:炭素とガドリニウムの波長0.709オングストロームに対する質量吸収係数はそれぞれ0.625 cm 2 /g及び 64.4 cm 2 /g。

    上記実験結果は、2層カーボンナノチューブにガドリニウムを内包したピーポッドは、2層カーボンナノチューブに比較して、X線吸収効率が大きく向上していることを示す。 このようにピーポットはカーボンナノチューブに内包させる粒子のX線吸収能により、ピーポッド全体としてのX線吸収効率を効果的に向上させることが可能である。 一般的に、X線(放射線)吸収能は重い元素の方が軽い元素よりも高いから、原子番号のより大きな元素を内包させることが有効と考えられる。 また、元素によって、特定波長のX線(放射線)の吸収効率が特に高いといった場合には、特定波長の放射線(放射性物質)の保護用として利用することも可能である。

    上記実験においては、異なる2つの波長のX線について測定した。 これは、物質のX線吸収係数はX線の波長に依存するため、吸収係数のエネルギー依存性をみるためである。 X線、ガンマ線等の放射線のエネルギーは波長が決まれば決定される。 0.6179オングストロームでは20KeV、0.709オングストロームでは、17.47KeVである。
    ヨウ素内包ピーポッドとガドリニウム内包ピーポッドの測定結果を比較すると、ヨウ素内包ピーポッドはガドリニウム内包ピーポッドにくらべて、波長による吸収係数の変化が大きくなっている。 これは、原子番号の小さいヨウ素はガドリニウムよりX線のエネルギーの影響を受けやすいこと示している。

    上記実験は、CNTにヨウ素内包ピーポッドと、ガドリニウム内包ピーポッドについて測定したものである。 CNTにはヨウ素あるいはガドリニウム以外に任意の原子、分子、化合物を内包させてピーポッドを作製することが可能であり、複数種の原子や化合物を組み合わせて内包することも可能である。 複数種の原子や化合物を組み合わせることによって、特定の放射線に対する遮蔽機能を向上させた放射線吸収材を作製するといったことも可能である。 また、内包した粒子が異なる異種のピーポッドを組み合わせて放射線吸収材とすることにより種々の放射線源に対応した放射線吸収材とすることができる。

    以下に、有機物を内包したピーポッドとしてメチレンブルー分子内包カーボンナノチューブ、無機元素内包ピーポッドとして硫黄内包カーボンナノチューブを作製した例について説明する。
    (メチレンブルー分子内包ピーポッド)
    メチレンブルーエタノール溶液を使用し、溶液吸着法により、単層カーボンナノチューブ中空内にメチレンブルー分子を内包させた粒子内包カーボンナノチューブ(ピーポッド)を作成した。 試料は、303Kにて溶液吸着法により作成し、カーボンナノチューブの中空部全体の20%の容積をメチレンブルーが占める。 カーボンナノチューブの中空内にメチレンブルーが内包されたことは透過型電子顕微鏡観察によって確認した。 また、バンドル構造に由来するX線回折ピークの顕著低下、窒素吸着量の低下を確認した。

    (硫黄内包ピーポッド)
    図3に示すピーポッドの作成装置の二股グラスチューブの主管10に単層カーボンナノチューブを入れ、枝管12に硫黄を入れて、真空排気した後、マントルヒータ18により773Kに加熱して48時間保持することにより、カーボンナノチューブの中空内に硫黄を導入した。 硫黄は数十nm以上の長さを有する一次元的な構造をとっている。 長い硫黄の一次元構造は、シンクロトロンX線回折から、一次元鎖方向の回折が観測されることと、透過電子顕微鏡から確認した。

    図5は、2層カーボンナノチューブに三塩化ガドリニウムを内包したピーポッドの蛍光X線分析結果を示す。 スペクトルの四で囲んだ部分がガドリニウムによる寄与部分であり、カーボンナノチューブにGdが内包されていることが確かめられた。 Gdの含有量は3.1wt%であり、この含有量はカーボンナノチューブの中空部分をほぼ満たしていると考えられる量である。
    図6は、2層カーボンナノチューブにヨウ素を内包したピーポッドの蛍光X線分析結果を示す。 スペクトルの四角で囲んだ部分がヨウ素による寄与部分である。 ヨウ素の含有量は2.55wt%であり、この場合もヨウ素はカーボンナノチューブの中空部分をほぼ満たしていると考えられる。

    前述したように、ピーポッドは内包した粒子(原子、化合物)を排出させずにCNTの内部に止めておくという性質を有するから、ヨウ素のようなハロゲンや毒性がある鉛やタングステン等の元素を内包して構成することが可能であり、安全でかつ種々の用途に利用できる放射線吸収材として提供することができる。

    10 主管 12 枝管 16 真空ポンプ 18 マントルヒーター

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