時計ムーブメントの巻上げ装置

申请号 JP2017147492 申请日 2017-07-31 公开(公告)号 JP2018066721A 公开(公告)日 2018-04-26
申请人 ロレックス・ソシエテ・アノニム; ROLEX SA; 发明人 ド アルメイダ グラシア, セルジオ; リンク, ヴァニーナ;
摘要 【課題】時計ムーブメントの巻上げ装置、とりわけ自動巻上げ装置の改善された解決策を提供する。 【解決手段】摩擦に曝されるインターフェースを介して協働する2つの金属部品を含む時計ムーブメントの巻上げ装置、とりわけ自動巻上げ装置に関し、炭素または窒素タイプ 原子 をオーステナイト系ステンレス鋼内に所定の深さまで導入することで硬化された少なくとも1つの摩擦面を含む、少なくとも1つのオーステナイト系ステンレス鋼部品を含む。 【選択図】図2
权利要求

摩擦に曝されるインターフェースを介して協働する2つの金属部品を含む時計ムーブメントの巻上げ装置、とりわけ自動巻上げ装置であって、炭素または窒素タイプ原子をオーステナイト系ステンレス鋼内に所定の深さまで導入することにより硬化された少なくとも1つの摩擦面を含む、少なくとも1つのオーステナイト系ステンレス鋼部品を含む、巻上げ装置。前記所定の深さは、5μm以上40μm以下である、 請求項1に記載の巻上げ装置。前記少なくとも1つの硬化摩擦面は、1000HV以上の硬度を有する、 請求項1または2に記載の巻上げ装置。前記オーステナイト系ステンレス鋼は、316Lタイプ、304Lタイプ、または904Lタイプである、 請求項1から3のいずれか一項に記載の巻上げ装置。前記少なくとも1つの部品は、爪または歯車である、 請求項1から4のいずれか一項に記載の巻上げ装置。請求項1から5のいずれか一項に記載の巻上げ装置を含む、時計ムーブメント。請求項6に記載の時計ムーブメントを含む、時計。請求項1から5のいずれか一項に記載の時計ムーブメント巻上げ装置の製造方法であって、少なくとも1つの金属部品の製造が、 前記部品をオーステナイト系ステンレス鋼帯へ形成するステップ、 得られた前記部品の少なくとも1つの摩擦面に対して、所定の深さまで炭素または窒素タイプの補強原子を一体化させることからなる処理を行うステップ、 の各ステップによる製造を含む、製造方法。前記処理ステップは、前記時計を気体、とりわけ浸炭のためにメタンまたはプロパン、窒化のためにアンモニアまたは分子状窒素、窒化浸炭のために両者の混合物、に、炭化クロムまたは窒化クロムの形成を防止する目的で、500°C未満の温度で曝すことからなり、または表面硬化、または窒化、または窒化浸炭、またはイオン移植、または拡散熱処理といった熱化学処理に曝すことからなる、 請求項8に記載の巻上げ装置の製造方法。前記形成ステップ及び前記処理ステップの間に研磨ステップを含み、及びまたは前記処理ステップの後に前記少なくとも1つの処理後摩擦面の研磨ステップを含む、 請求項8または9に記載の製造方法。

说明书全文

本発明は、時計ムーブメントの巻上げ装置、とりわけ自動巻上げ装置、の部品、及び当該部品を含む巻上げ装置、とりわけ自動巻上げ装置、時計ムーブメント及び時計に関する。本発明はまた、巻上げ装置、より一般的には時計ムーブメントの部品の製造方法に関する。

従来技術の自動巻上げ装置は、運動学的連鎖経由で、香箱ぜんまいの巻上げを可能とするため、回転錘を香箱に接続することを可能にする。

図1は、従来技術の自動巻上げ装置の運動学的連鎖を構成するモバイル要素の一部分を詳細に図示する。当該モバイル要素は、とりわけ、ピニオン4に取り付けられる歯車3と協働する2つの爪(click)1、2を含む。回転錘の第1回転方向に対応する、第1のモードである自動巻上げモードにおいて、歯車3とピニオン4は、回転の第1方向に回転され図1に図示されないオートマトン歯車上で旋回する、爪1、2の作動により回転される。回転錘の第2回転方向に対応する、第2のモードである自動巻上げモードにおいて、爪1、2は歯車3及びピニオン4に対してなんら効果を及ぼさず、オートマトン歯車の回転の第2方向への回転の下、自身の回転軸周りに歯車3に対して高速で振動する。第3のモードである手動巻上げモードにおいて、ピニオン4と歯車3は、手動巻上げ連鎖の影響の下で回転される。歯車3の回転は、自身の旋回軸周りに高速で、または超高速で振動する爪1、2から、歯車3の歯を解放させる。

出願人のオートマトン装置から既知のこれら3つの巻上げモードは、歯車3の歯の非対称構造から、及び爪1、2の特定の形状、とりわけ爪1、2のくちばしの特定の形状から、特に可能となる。この3つのモードにおいて、爪1、2のくちばしは歯車3の歯と協働し、そのため両部品の摩擦面間で摩擦トルクが生じ、これは経年劣化に伴い摩耗現象を発生させる。第2及び第3巻上げモードは、爪の高速または超高速の振動により、摩擦学的レベルにおいて、より一層これらの部品に応をかける。具体的には、爪の場合における摩擦速度は、手動巻上げでは少なくとも5kHzが計測され、10kHzを超える場合もある。指標として、時計ムーブメントの機械的振動体の軸の振動数は、一般的に3から5Hz程度であり、これは巻上げ装置の応力とはかなり異なる応力を示す。爪と歯車は、一般的に、Ck60、Finemac、または20APタイプの鋼から打ち抜かれる。従来技術のこうした実施形態から、以下に詳述するように、オートマトン装置の経年劣化の進行中に著しい摩耗がみられる。この摩耗はオートマトンの効率を低下させ、これは経年劣化の進行後に巻上げ性能を低下させる危険性につながる。

図3aと3bは、経年劣化後の、Ck60鋼製の先行技術の爪の摩擦面を具体的に、それぞれ化学コントラスト走査型電子顕微鏡(SEM)画像及び光学顕微鏡画像として示す。図面中の暗い区域で識別される、機能区域の表面の大部分が、経年劣化により変化したように見える。図4は、EDXマイクロプローブを用いた、これら表面の化学分析の結果を図示する。暗い区域は、酸化生成物の存在に対応する。酸化生成物は、酸化鉄であった。

摩擦面上の酸化物の顕著な生成は、摩擦酸化作用の典型である。更に、この光学画像は、表面上の酸化物が、ヘマタイト(Fe203)に典型的な茶から赤の色であることを示す。ヘマタイトは鉱物であり、その硬度は実質的に1000〜1100HVであり、接触する2つの表面上に形成された酸化物の混合物の廃物から生じて、各表面にちりばめられる。当初のCk60鋼は、720Hv程度の硬度を有する。このため、経年劣化により堆積される鉱物は、より柔らかい金属表面に比べて、高い摩損性を有する。このため、摩擦酸化により生成される廃物は、従来技術の巻上げ装置の経年劣化中に観測される性能の低下の一因となる。本出願人は初めて、巻上げ装置の2つの部品間のインターフェースに出現する摩耗を促進する腐食現象の存在を、更に詳しくは酸化鉄の出現を、特定した。

更に、巻上げシステムの全体的な経年劣化は、上に説明した巻上げ装置の部品以外の部品の摩耗にも関連する。先行技術の解決策は、巻上げ装置の全体的な摩耗を増大させる巻上げ装置に基づくものである。

本発明の目的は、先行技術の欠点の全てまたは一部を解消した、時計ムーブメントの巻上げ装置、とりわけ自動巻上げ装置の改善された解決策を提供することである。

このため、本発明の全般的な目的は、先行技術の解決策に比べて経年劣化の進行に関して改善された挙動を有する時計ムーブメント巻上げ装置を提案することである。本発明は、以下の2つの主題のうちの1つを達成することを試みる。 第1の主題は、経時的に実質的に一定の性能を有する、時計ムーブメント巻上げ装置からなる。または、より意欲的には、 第2の主題は、巻上げ装置の全体的な経年劣化を最大限減少させるために、経時的に向上する性能を有する時計ムーブメント巻上げ装置からなる。

更に詳しくは、本発明は非常に高い、とりわけ5kHz以上の摩擦振動数であっても、腐食をより良く耐える時計ムーブメント巻上げ装置の部品についての解決策を求める。

この目的のため、本発明は、時計ムーブメントの巻上げ装置、とりわけ自動巻上げ装置の部品に関し、当該部品はオーステナイト系ステンレス鋼製であり、当該部品は補強原子をオーステナイト系ステンレス鋼内に所定の深さまで導入することで硬化された少なくとも1つの摩擦面を含む、部品に関する。

更に詳しくは、本発明は、摩擦に曝されるインターフェースを介して協働する2つの金属部品を含む時計ムーブメントの巻上げ装置、とりわけ自動巻上げ装置に関し、炭素または窒素タイプ原子をオーステナイト系ステンレス鋼内に所定の深さまで導入することで硬化された少なくとも1つの摩擦面を含む、少なくとも1つのオーステナイト系ステンレス鋼部品を含む、巻上げ装置に関する。

本発明は、請求項において、具体的に定義される。

本発明の主題、特徴、及び利点は、添付の図面に関連して、非限定的に与えられる1つの特定の実施形態についての以下の説明において、より詳しく開示される。

図1は、先行技術の巻上げ装置の運動学的連鎖を構成するモバイル要素の一部分を示す図である。

図2は、本発明の一実施形態に係る巻上げ装置の運動学的連鎖を構成するモバイル要素の爪を示す図である。

図3a及び3bは、経年劣化後の、先行技術のCk60鋼製爪の摩擦面を示す図である。

図4は、EDXマイクロプローブによる、先行技術に係る爪の図3a、図3bの摩擦面の化学分析の結果を示す図である。

図5a及び5bは、経年劣化後の、本発明の一実施形態に係る爪の摩擦面を示す図である。

図6は、EDXマイクロプローブによる、本発明の一実施形態に係る爪の図5a、図5bの摩擦面の化学分析結果を示す図である。

図7は、本発明の実施形態と先行技術の爪の比較試験結果を示す図である。

説明する実施形態によれば、本発明は、時計ムーブメントのオートマトン装置または自動巻上げ装置の爪と歯車に関する。当該実施形態によれば、爪は、歯車の歯と協働するよう設計される。更に詳しくは、爪は、とりわけその両端に位置するくちばしを用いて、歯車の歯と協働するよう旋回する。代替的に、爪は、戻しばねがあってもなくても、自動巻上げ装置の歯及びまたはカムと協働するように設計されても良い。より一般的には、本発明は、摩擦に曝される巻上げ装置のその他全ての部品、とりわけ高振動摩擦を発生するインターフェースを含む全ての金属部品の一対に対して、実施することができる。例えば、それが手動または自動巻上げ装置であれ、巻上げ装置の巻上げコハゼに実施することができる。

図2は、本発明の一実施形態にかかる巻上げ装置の爪12を図示する。当該爪は、その2つの端部に、上述の巻上げ用の操作の3つのモードに従い、図1の歯車3などの歯車と交互に協働する2つのくちばし13、14を有する。くちばし13、14のそれぞれに、歯車との摩擦トルクに曝される機能区域の摩擦面15、16が特定される。

こうした現象を克服するため、本実施形態では、オーステナイト系ステンレス鋼、例えば316Lタイプの鋼、から爪12を製造することを提案する。爪12の摩擦面15、16には、所定の深さまで炭素または窒素原子を拡散させることからなる、特定の処理が施される。当該爪は、例えば20APまたはFinemacタイプ鋼製の、従来の歯車と協働するよう設計される。

当該実施形態に係る爪の製造方法は、以下のステップを含む。 − 爪を、316Lオーステナイト系ステンレス鋼の帯から打ち抜く、 − 爪の少なくとも1つの摩擦面を処理する。処理は、鋼の結晶格子内に炭素または窒素タイプの補強原子を所定の深さまで、好ましくは5μm以上40μm以下の範囲の深さまで、拡散することからなる。当該処理は、時計を気体(浸炭のためにはメタンまたはプロパン、窒化のためにはアンモニアまたは分子状窒素、窒化浸炭のためには両者の混合物)に、炭化クロムまたは窒化クロムの形成を防止するため、500°C未満の温度で曝すことからなってもよい。一例として、当該処理は、コールスタライジング処理(登録商標)、または表面硬化、窒化、窒化浸炭、イオン移植、拡散熱処理等の熱化学処理からなってもよい。当該処理は、処理表面が1000Hv以上の硬度の硬化を得るように選択される。当該処理は、従来技術から知られる技術を使用するものであることから、ここで詳細に説明することはしない。

有利には、この方法は、先行する2つのステップの間に、研磨ステップを含む。またこの方法は有利には、処理ステップ後に、処理後の表面を完全に平坦にするために、例えば2〜3μmにわたり、摩擦面を平らにする役割を有する、最終研磨ステップを含む。

図5a、5bは、図3a、3bに図示する引用例と同じ経年劣化手順を経て観察された、本実施形態の爪の摩擦面を図示する。図3a、3bに関する観察と異なり、本発明の実施形態に係る爪の摩擦面は、ほとんど暗い区域がないことが明らかである。更に、図6にその結果を示す化学分析は、図中に示される少量の暗い跡が、本実施形態にかかる爪の摩擦中の優秀な酸化抵抗に貢献する、鉄及びまたはクロムの酸化物、とりわけクロマイト(FeCr2O4)によるものであることを表す。考察として、爪上に観察される酸化鉄は、主として歯車上に形成され、その後爪の表面に移行される。

図7もまた、本実施形態に係る巻上げ装置で得られる効果を図示する。当該図は、従来技術の巻上げ装置で計測される、Ck60鋼の爪と組み合わされる20AP鋼歯車との間のトルクを、穴車におけるいくつかの速度において新品状態でのトルクを21、31、41、51、61、71の棒で表し、角穴車におけるいくつかの速度において経年後状態でのトルクを23、33、43、53、63、73の棒で表しており、本発明の実施形態にかかる巻上げ装置で計測されるトルクを、角穴車におけるいくつかの速度において新品状態のトルクを表す22、32、42、52、62、72の棒と、角穴車におけるいくつかの速度において経年後状態でのトルクを表す24、34、44、54、64、74の棒と比較した。歯車の回転と、旋回軸周りに振動する爪に対する摩擦を生じさせるため、装置の操作の第3モードに対応する、小型時計の巻真での手動巻上げを行うことで、経年劣化が得られた。考察として、爪は常にクリックしない構造であり、歯車に対して高速で振動、とりわけ擦れているため、ここで問題となるのは爪にとってもっとも過酷な摩耗条件である。

図7は、経年劣化前に、本発明の実施形態にかかる部品で計測されたトルクは、先行技術の部品で計測されたトルクよりも非常にわずかに低いことを示す。経年劣化後、2つの測定間のギャップが非常に顕著になる。本発明の実施形態にかかる部品は、トルクの減少があるのに対して、先行技術の部品は測定したトルクに極端な増加があり、これは経時的に性能が著しく減少したことを示す。

このため、全ての予想に反して、本発明の実施形態で用いられる解決策は、経年的に摩擦トルクを減少させることをも可能にし、これにより経年劣化中でも巻上げ装置がその性能を向上させることを可能にする。当該効果は、例えば、他の部品の摩耗に関連付けられた巻上げシステムの経年劣化を相殺することを可能にするため、非常に有利である。本発明の他の利点は、時計ムーブメント巻上げ装置が、使用する素材に起因して磁気への感受性が低いという事実から生じる。

本実施形態は、標準歯車と組み合わされた、処理済のオーステナイト系ステンレス鋼製の爪を用いて説明された。変形例として、歯車は同様に、オーステナイト系ステンレス鋼製であってもよく、その歯、少なくともその摩擦面は、上述のように処理により硬化されてもよい。

更に、本実施形態で選択されたオーステナイト系ステンレス鋼は316Lタイプであるが、例えば304Lや904Lなどその他のオーステナイト系ステンレス鋼を用いることもできる。

当然、本発明は上述した巻上げ装置に限定されるものではなく、変形例として、他の構造を有する巻上げ装置のあらゆる金属部品に、具体的には摩擦摩耗に曝される部品の少なくとも1つに実施されてもよい。

本発明はまた、上述の巻上げ装置、とりわけ自動巻上げ装置を含む、時計ムーブメントに関する。本発明はまた、当該時計ムーブメントを含む、時計、例えば腕時計に関する。

本発明は更に一般的に、他の金属部品に対する著しい摩擦に曝される時計ムーブメントのあらゆる金属部品、例えばレバー、とりわけカムと協働するよう設計されるレバーくちばし、とりわけレトログラード機構の構成でカムと行動するよう設計されるレバーくちばし、に拡大してもよい。本発明はまた、回転軸への接触を通じて大量の摩擦に曝される鋼ストラップのリンクに実施してもよい。

12 爪 13 くちばし 14 くちばし 15 摩擦面 16 摩擦面

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