改良されたパワーリザーブを有する腕時計

申请号 JP2014222322 申请日 2014-10-31 公开(公告)号 JP5844873B2 公开(公告)日 2016-01-20
申请人 ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス; 发明人 セドリック・デコステル;
摘要
权利要求

少なくとも1つのエネルギ貯蔵手段(2)を含む機械式時計ムーブメント(1)であって、 前記少なくとも1つのエネルギ貯蔵手段(2)は、その入において少なくとも1つの巻き上げ機構(4)によって駆動される穴車(3)による供給を受け、その出力において時方輪列(5)に動力供給する、機械式時計ムーブメント(1)において、 前記機械式時計ムーブメント(1)は、連結解除機構を形成する少なくとも1つの第1の弾性接続(7)によって前記時方輪列(5)の少なくとも1つのホイールセットに接続された、第1のエネルギ取り込み手段(6)を含み; 前記第1のエネルギ取り込み手段(6)は、前記エネルギ貯蔵手段(2)が動力供給する前記時方輪列(5)からエネルギを取り込み; 前記第1のエネルギ取り込み手段(6)は、前記角穴車(3)を駆動する少なくとも1つの駆動ホイールセット(8)と協働し; 前記少なくとも1つの駆動ホイールセット(8)は前記角穴車(3)と噛み合い、これにより、前記第1のエネルギ取り込み手段(6)が取り込んだエネルギの一部を再注入することによって前記エネルギ貯蔵手段(2)への供給を行う ことを特徴とする、機械式時計ムーブメント(1)。前記少なくとも1つの駆動ホイールセット(8)は、前記少なくとも1つの巻き上げ機構(4)の動作中に作動状態となる少なくとも1つの連結解除機構(9)の作用によって連結を解除できることを特徴とする、請求項1に記載の機械式時計ムーブメント(1)。前記連結解除機構を形成する前記第1の弾性接続(7)は、前記第1のエネルギ取り込み手段(6)と前記角穴車(3)との間に挿入されることを特徴とする、請求項2に記載の機械式時計ムーブメント(1)。前記第1のエネルギ取り込み手段(6)は、少なくとも1つの中間ホイールセット(60)上において、前記エネルギ貯蔵手段(2)の下流に配置され、 前記中間ホイールセット(60)は、前記エネルギ貯蔵手段(2)が駆動する第1のカナ(61)の各側に同軸に配設された以下の部品: 前記時方輪列(5)のホイールセットと接続するための、前記第1のカナ(61)と一体となって枢動する中間歯車(62);及び 前記角穴車(3)を駆動する前記少なくとも1つの駆動ホイールセット(8)と噛み合う、追加の中間接続歯車(63)を含み、 前記追加の中間歯車(63)は、前記中間ホイールセット(60)が備えるアーバ(68)上に枢動可能に設置され、前記第1の弾性接続(7)を構成する弾性回転復元手段又は少なくとも1つのゼンマイ(67)によって、前記アーバ(68)に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の機械式時計ムーブメント(1)。少なくとも1つの前記巻き上げ機構(4)は、ユーザが起動させる手動巻き上げ機構(40)であること;及び 前記角穴車(3)を駆動する前記少なくとも1つの駆動ホイールセット(8)は、前記角穴車(3)を駆動するカナ(81)と同軸の、少なくとも1つの第1の追加の角穴車駆動歯車(82)を含み、前記第1の追加の角穴車駆動歯車(82)は、前記角穴車(3)を駆動する前記少なくとも1つの駆動ホイールセット(8)が備える前記アーバ(80)上に枢動可能に設置され、前記ユーザが起動させた前記手動巻き上げ機構(40)の動作中、連結解除機構(9)を構成する第1の弾性回転復元手段又は少なくとも1つの第1のばね(84)によって前記アーバ(80)に接続されること を特徴とする、請求項1に記載の機械式時計ムーブメント(1)。前記第1の弾性回転復元手段又は前記少なくとも1つの第1のばね(84)によって構成される前記連結解除機構(9)のうちのいくつかは、前記第1の追加の角穴車駆動歯車(82)に摩擦力を印加し、そのトルクのモーメントは、前記連結解除機構(9)と前記第1の追加の角穴車駆動歯車(82)との間の相対的な枢動方向に応じて異なることを特徴とする、請求項5に記載の機械式時計ムーブメント(1)。前記第1のばね(84)は、前記角穴車(3)を駆動する前記少なくとも1つの駆動ホイールセット(8)の前記アーバ(80)に対して前記第1の追加の角穴車駆動歯車(82)の遊びのない単方向枢動方向を生成するよう配設され、これにより、少なくとも1つの前記巻き上げ機構(4)による前記機械式時計ムーブメント(1)の巻き上げ中の、前記時方輪列(5)へのトルクのいずれの伝達も防止できることを特徴とする、請求項5に記載の機械式時計ムーブメント(1)。少なくとも1つの前記巻き上げ機構(4)は、自動巻き上げ機構(45)であること;及び 前記角穴車(3)を駆動する前記少なくとも1つの駆動ホイールセット(8)は、第2の追加の角穴車駆動歯車(86)を更に含み、前記第2の追加の角穴車駆動歯車(86)は、前記アーバ(80)上に枢動可能に設置され、前記自動巻き上げ機構(45)の動作中、前記連結解除機構(9)のうちのいくつかを構成する第2の弾性回転復元手段又は少なくとも1つの第2のばね(88)によって、前記アーバ(80)に接続されること を特徴とする、請求項5に記載の機械式時計ムーブメント(1)。前記第2の弾性回転復元手段又は前記少なくとも1つの第2のばね(88)によって構成される前記連結解除機構(9)のうちのいくつかは、前記第2の追加の角穴車駆動歯車(86)に摩擦力を印加し、そのトルクのモーメントは、前記連結解除機構(9)と前記第2の追加の角穴車駆動歯車(86)との間の相対的な枢動方向に応じて異なることを特徴とする、請求項8に記載の機械式時計ムーブメント(1)。前記第2のばね(88)は、前記角穴車(3)を駆動する前記少なくとも1つの駆動ホイールセット(8)の前記アーバ(80)に対して前記第2の追加の角穴車駆動歯車(86)の遊びのない単方向枢動方向を生成するよう配設され、これにより、前記ユーザが起動させる前記手動巻き上げ機構(40)による前記機械式時計ムーブメント(1)の巻き上げ中、又は前記第1のエネルギ取り込み手段(6)の動作中の、前記時方輪列(5)へのトルクのいずれの伝達も防止できることを特徴とする、請求項8に記載の機械式時計ムーブメント(1)。ゼンマイ(67)は、前記追加の中間歯車(63)と前記追加の角穴車駆動歯車(82)との間の遊びを補償するよう配設されることを特徴とする、請求項5に記載の機械式時計ムーブメント(1)。前記機械式時計ムーブメント(1)は、テンプを有する少なくとも1つの調速部材(90)を含むこと; 前記調速部材(90)の作動中、前記第1のエネルギ取り込み手段(6)は前記時方輪列(5)から機械的トルクを常に取り込むこと;及び 前記テンプは、前記機械式時計ムーブメント(1)がその動作に十分な振幅を維持するための前記第1のエネルギ取り込み手段(6)を有さない場合よりも小さくなるよう寸法設定されること を特徴とする、請求項1に記載の機械式時計ムーブメント(1)。前記機械式時計ムーブメント(1)は、テンプを有する少なくとも1つの調速部材(90)を含むこと; 少なくとも1つの前記巻き上げ機構(4)は、自動巻き上げ機構(45)であること;並びに 前記機械式時計ムーブメント(1)が空間内で固定位置に保持されている場合及び前記自動巻き上げ機構(45)が非作動状態である場合にのみ、前記第1のエネルギ取り込み手段(6)は前記時方輪列(5)から機械的トルクを常に取り込み、これによって前記テンプの振幅を減少させ、前記機械式時計ムーブメント(1)のパワーリザーブを増大させること を特徴とする、請求項1に記載の機械式時計ムーブメント(1)。前記巻き上げ機構(4)は手動巻き上げ機構(40)を含み、 前記手動巻き上げ機構(40)は、前記ユーザが起動させるステム(41)を含み、前記ステム(41)の軸方向巻き上げ位置及び前記ユーザが前記ステム(41)に付与する回転巻き上げ方向において、前記角穴車(3)と噛み合う伝達用歯車(44)を駆動する巻き上げカナ(42)と噛み合うよう配設された摺動カナ(43)を駆動するよう配設され、 前記伝達用歯車(44)は、前記ステム(41)の作動中に前記角穴車(3)と前記伝達用歯車(44)との間のバックラッシュを補償する手段を含むコハゼ(31)と協働するよう配設される ことを特徴とする、請求項1に記載の機械式時計ムーブメント(1)。請求項1に記載の機械式時計ムーブメント(1)を少なくとも1つ含む、時計(100)。

说明书全文

本発明は、その入において少なくとも1つの巻き上げ機構によって駆動される穴車による供給を受け、その出力において時方輪列に動力供給する少なくとも1つのエネルギ貯蔵手段を含む、機械式時計ムーブメントに関する。

本発明はまた、少なくとも1つのこのタイプのムーブメントを備える時計にも関する。

本発明は、機械式時計ムーブメントの分野に関する。

時計機構のパワーリザーブは常に関心が寄せられるものであり、このような関心は、キャリバー内のエネルギを消費するコンプリケーション及び機構の数が増大することによって更に高まっている。パワーリザーブを増大させるためには、振動子の周波数若しくは脱進機への動力を低減する、及び/又は1つ若しくは複数の香箱で得られる動力を増大させることができる。全ての場合において、時方輪列、調速機及びゼンマイを変更しなければならず、これは既存のキャリバーを大幅に、かつ高いコストをかけて改造することからなる。更に、利用できる空間は、香箱の拡張を可能とする程のものであることは滅多になく、従って調速システムへの作用に対する変更は制限される。

Nicolet Watchによる特許文献1は、速度計を備える車両内に設置される腕時計のための、自動巻き上げデバイスを開示しており、前記速度計は、一方で速度計を作動させるケーブルの端部に、他方で速度計自体に固定されるよう設計されたギヤボックスと、ケーブルから速度計及び腕時計のゼンマイに回転運動を伝達するためにギヤボックスに接続される手段とを含む。

Haute Ecole Arc/Pascal Winklerによる特許文献2は、時方輪列の第1のホイールセットに伝達される所定の出力トルクを有するムーブメントのための機械的エネルギ源を開示している。この機構はゼンマイを含み、このゼンマイの端部はアーバ及び香箱のドラムと一体であり、これらの端部のうちの一方は、時方輪列の第1のホイールセットに動力学的に接続されるよう設計される。この機構は、ゼンマイの端部間の動力学的接続を保証するように、かつこれらの間のエネルギの伝送を可能とするように配設された歯車列を含む。歯車列は遊星歯車列を含む。

この遊星歯車列は、ゼンマイ巻き上げ機構に動力学的に接続されるよう設計された第1の入出力、ゼンマイの一方の端部に動力学的に接続された第2の入出力、ゼンマイの他方の端部に動力学的に接続された第3の入出力を含む。この遊星歯車列は、第1の非円形太陽歯車と噛み合うよう配設された非円形歯車を含む衛星歯車を含む。

フランス特許出願第1155071A号

国際公開特許出願第2012/168443A2号

本発明の目的は、基本的な歯車列を改造することなく、脱進機に放出される動力を低減することによって、既存のムーブメントのパワーリザーブを増大させるために、時方輪列からの取り込みによって香箱にトルクを再注入することである。

この目的のために、本発明は、その入力において少なくとも1つの巻き上げ機構によって駆動される角穴車による供給を受け、その出力において時方輪列に動力供給する少なくとも1つのエネルギ貯蔵手段を含む、機械式時計ムーブメントに関する。この機械式時計ムーブメントは:前記機械式時計ムーブメントが、連結解除機構を形成する少なくとも1つの第1の弾性接続によって前記時方輪列の少なくとも1つのホイールセットに接続された、第1のエネルギ取り込み手段を含み;前記第1のエネルギ取り込み手段が、前記エネルギ貯蔵手段が動力供給する前記時方輪列からエネルギを取り込み;前記第1のエネルギ取り込み手段が、少なくとも1つの角穴車駆動ホイールセットと協働し;前記駆動ホイールセットが前記角穴車と噛み合い、これにより、前記第1のエネルギ取り込み手段が取り込んだエネルギの一部を再注入することによって前記エネルギ貯蔵手段への供給を行うことを特徴とする。

本発明の特徴によると、前記少なくとも1つの角穴車駆動ホイールセットは、前記少なくとも1つの巻き上げ機構の動作中に作動状態となる少なくとも1つの連結解除機構の作用によって連結を解除できる。

本発明はまた、少なくとも1つのこのタイプのムーブメントを備える時計にも関する。

本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。

図1は、香箱の形態の機械的エネルギアキュムレータと調速機構とを含む

機械式時計機械式ムーブメントを含む腕時計の概略平面図であり、前記

機械式時計ムーブメントは、本発明によるエネルギ再注入機構による改良されたパワーリザーブを有する。

図2は、図1の

機械式時計ムーブメントの、線EEに沿った概略部分断面図であり、特に時方輪列を示す。

図3は、図1の

機械式時計ムーブメントの、線BBに沿った概略部分断面図であり、特に自動歯車列を示す。

図4は、図1の

機械式時計ムーブメントの、線DDに沿った概略部分断面図であり、特に手動巻き上げ機構を示す。

図5は、図1の

機械式時計ムーブメントの、線FFに沿った概略部分断面図であり、特に再注入機構を示す。

図6は、図1の

機械式時計ムーブメントの、線AAに沿った概略部分断面図であり、特に角穴車駆動ホイールセットを示す。

図7は、図1の

機械式時計ムーブメントの、線CCに沿った概略部分断面図であり、特に再注入機構の歯車列を示す。

図8は、エネルギ再注入機構が備える中間ホイールセットの概略斜視図であり、この中間ホイールセットは中間歯車を含み、この中間歯車は部分的に自由に枢動でき、また弾性復元手段によって、第1のカナと一体のアーバに接続されている。

図9は、図8の中間歯車の概略斜視図である。

図10は、アーバに対する角度静止位置への弾性復元手段を備えた、図8の中間歯車の概略斜視図である。

図11は、本発明による組み立て済み状態の角穴車駆動ホイールセットの概略斜視図であり、前記角穴車駆動ホイールセットは、アーバの両側に第1の歯車及び第2の歯車を含み、第1の歯車は部分的に自由に枢動でき、また弾性復元手段によって前記アーバに接続され、第2の歯車もまた部分的に自由に枢動でき、また弾性復元手段によって前記アーバに接続されている。

図12は、図11の第1の歯車及び/又は第2の歯車が備える弾性復元手段のある変形例の概略平面図である。

図13は、図11の第1の歯車及び/又は第2の歯車が備える弾性復元手段の別の変形例の概略平面図である。

図14は、図11の第1の歯車及び/又は第2の歯車が備える弾性復元手段の別の変形例の概略平面図である。

図15は、図11の第1の歯車及び/又は第2の歯車が備える弾性復元手段の別の変形例の概略平面図である。

図16は、図11の第1の歯車及び/又は第2の歯車が備える弾性復元手段の別の変形例の概略平面図である。

図17は、図11の第1の歯車及び/又は第2の歯車が備える弾性復元手段の別の変形例の概略平面図である。

図18は、図11の第1の歯車及び/又は第2の歯車が備える弾性復元手段の別の変形例の概略平面図である。

図19は、本発明によるエネルギ再注入システムのブロック図である。

本発明の目的は、基本的な歯車列を改造することなく、脱進機に放出される動力を低減することによって、既存の機械式時計ムーブメントのパワーリザーブを増大させるために、腕時計100の機械式時計ムーブメント1の時方輪列5からの取り込みによって、エネルギ貯蔵手段、特に少なくとも1つの香箱にトルクを再注入することである。

簡略化のために、エネルギ貯蔵手段が香箱20である非限定的な場合に関して、本発明を説明する。本発明はその他のエネルギ貯蔵手段:複数の香箱、線形弾性手段、素化物等を用いた物理化学的エネルギ変換、又はその他の手段に適用可能であることを理解されたい。

脱進機の動力を低減するために、トルクの一部を時方輪列から直接得ることが理論的には可能である。この追加のトルクは香箱に直接再注入でき、これによって香箱の容量を増大させることができる。

香箱20は角穴車3を備える。この角穴車3は、手動巻き上げ機構40及び/又は自動機構45及び/又は本発明による再注入機構及び/又は太陽光電力変換器若しくはその他のデバイス等のいずれの追加のエネルギ取り込み手段からエネルギを受け取り、受け取ったエネルギを香箱に貯蔵する。

香箱20は時方輪列5にトルクを伝達する。このトルクの第1の部分は、ここでは詳細に説明しない通常の脱進機機構に伝達される。前記トルクの第2の部分は、本発明による第1のエネルギ取り込み手段6によって抽出され、角穴車3に伝達される。

この再注入原理は、トルクが時方輪列5から取り出され、余剰のトルクを用いて香箱20を巻き上げるため、比較的単純なものに見える。しかしながらこの原理は、解決しなければならないいくつかの問題を抱えている。

まず、システムの効率は、システムが動作のために必要とするホイールセットの数に特に依存するため、香箱20にできる限り近接してトルクを取り込まなければならない。例えば四番車等の高速で回転する歯車からトルクを取り出す場合、香箱20を巻き上げるために大型の乗算用歯車列が必要となる。

従来の機械式時計ムーブメント1では、歯車列のトルクは香箱20のドラム21によって伝達される。従って、脱進機及び時方輪列5の減速によって速度が定義されるため、ドラム21の歯部22を通してトルクを再注入することはできない。よって、トルクを角穴車3に直接再注入する必要がある。従って、単方向の又は連結解除可能なシステムを、再注入システムの歯車列と角穴車3との間に挿入しなければならない。安全を保証するためのこのタイプのシステムを使用しない場合、手動又は自動巻き上げ中に角穴車3に与えられたトルクは、再注入システムによって歯車列を通して直接伝達されることになり、これにより脱進機のトルクが上昇して、振幅及びノッキングが大幅に増大する。

自動機構45を有する機械式時計ムーブメント1の場合、振動型等の自動巻き上げ錘46の運動によって角穴車3を常に駆動できる。図示した実施形態では、錘46は自動デバイスのフレーム15に支持され、歯部47は第1のリバーサ歯車48及び第2のリバーサ歯車49を通して巻き上げ動作を実現する。第2のリバーサ歯車49は、カナ18を備える減速ホイールセット16のプレート17を駆動し、前記カナ18は、以下に説明する本発明による角穴車駆動歯車の第2の歯車86の歯部89を駆動するよう配設される。

この瞬間、手動巻き上げ機構40は自動的に連結解除される。これは即ち、角穴車と連結解除歯車との間の歯部が再び噛み合うまでの一定の期間に亘って、再注入システムが供給するエネルギが失われることを意味する。(自動巻き上げ機構45を頻繁に作動させる)「ハイ(high)」ユーザが腕時計100を装着する場合、腕時計100が装着されている間はエネルギリザーブが最大レベルであるため、再注入システムは機械式時計ムーブメントのパワーリザーブに限られた効果しか与えない。更にこのシステムが噛合状態でない場合、全てのトルクは時方輪列内に残る。一定の期間が経過すると、振幅がノッキング点まで増大するリスクが生じる。

以上は、再注入システムの複雑性を明瞭に例示している。

手動巻き上げ機構40を有する機械式時計ムーブメント1にトルク再注入機構を組み込むと、パワーリザーブの量をユーザが即座に視認できるため、これは完全に正当なものである。更に再注入システムは、ステム41による巻き上げ中を除いて常に角穴車3と噛み合う。原則として、手動機械式時計ムーブメントを有するユーザは、腕時計のパワーリザーブに応じて、1週間に3〜4回しか自身の腕時計を巻き上げない。従ってこの期間中のエネルギの潜在的な損失は、無視できる程度のものである。

自動巻き上げ機構45を有する機械式時計ムーブメント1にトルク再注入機構を組み込むと、腕時計100が装着されていない場合、例えば週末の数日間だけ腕時計が外される場合に便利である。この場合、パワーリザーブの増大は、ユーザが月曜日の朝に腕時計を巻き上げる必要がなくなるため、評価されることである。

本発明による機構の構造を以下に示し、またその根拠となる計算についても以下の説明中に挙げる。

本発明はまた、少なくとも1つのエネルギ貯蔵手段2、特に香箱20を含む、機械式時計ムーブメント1にも関する。

この香箱20は、歯部22、蓋24及びアーバ25を有するドラム21を含む。

このエネルギ貯蔵手段2は、その入力において、少なくとも1つの巻き上げ機構4によって駆動される角穴車3による供給を受け、その出力において、時方輪列5に動力供給する。角穴車3は、歯部31、アーバ25と協働するための駆動手段23、及び固定要素32を含む。時方輪列5は従来通り、カナ52及びプレート53を有する三番車51、歯部59を有する二番筒カナ54、カナ56及びプレート57を有する四番車ホイールセット55、及び筒車58を含む。

様々な図に示したように、機械式時計ムーブメント1の様々な構成部品は場合に応じて、文字盤支持プレート11、歯車列バー12、下側自動デバイスバー13、香箱バー14、自動デバイスフレーム15、巻き上げステム19に格納される。

本発明によると、この機械式時計ムーブメント1は、連結解除機構を形成する少なくとも1つの第1の弾性接続7によって時方輪列5の少なくとも1つのホイールセットに接続された、第1のエネルギ取り込み手段6を含む。

このような第1のエネルギ取り込み手段6は、角穴車3を駆動するための少なくとも1つの駆動ホイールセット8と協働し、この駆動ホイールセット8は角穴車3と噛み合い、これにより、第1のエネルギ取り込み手段6が取り込んだエネルギの一部を再注入することによってエネルギ貯蔵手段への供給が行われる。

有利には、角穴車3を駆動するための前記少なくとも1つの駆動ホイールセット8は、少なくとも1つの巻き上げ機構4の動作中に作動状態となる少なくとも1つの連結解除機構9の作用によって連結を解除できる。

有利には、連結解除機構を形成する第1の弾性接続7を、第1のエネルギ取り込み手段6と角穴車3との間に挿入する。

本発明によると、第1のエネルギ取り込み手段6は、少なくとも1つの中間ホイールセット60上において、エネルギ貯蔵手段2の下流に配置される。

図8に示す前記中間ホイールセット60は、エネルギ貯蔵手段2、特に香箱20のドラム21の歯部22が駆動する第1のカナ61の各側に、アーバ68の周りに同軸に配設された以下の部品を含む: −時方輪列5のホイールセットと接続するための、第1のカナと一体となって枢動する中間歯車62; −角穴車3を駆動するために歯部64を含みかつ少なくとも1つの駆動ホイールセット8と噛み合う、追加の中間接続歯車63(この追加の中間歯車63は、中間ホイールセット60が備えるアーバ68上に枢動可能に設置され、第1の弾性回転復元手段によって、又は第1の弾性接続7を構成する、歯車63のハウジング65と中間ホイールセット60のハウジング66との間に挿入されたゼンマイ67によって、前記アーバ68に接続される)。

図9では、補助中間歯車63を、ゼンマイ67を格納するための凹部630を含む有利な実施形態で示す。このゼンマイ67は、凹部630内に格納された外側コイル651を含み、この凹部630内では、ゼンマイ67のラグ650と歯車63のノッチ65との協働、又はその逆の協働によって、外側コイル651の枢動が防止される。ゼンマイ67は、外側コイル651を、中間ホイールセット60のアーバ68上に枢動防止手段653を含む内側コイルに対して連接する、少なくとも1つの渦巻状ストランド654を含む。ここで前記防止手段653は、アーバ68上の凸状四角柱683と協働する、四角柱状の孔である。動作中、追加の中間歯車63はゼンマイ67が駆動する中間歯車62のアーバ68上で自由に枢動し、これによりゼンマイ67の内側コイル652はホイールセット60のアーバ68に固定接続される。

計算によって定義されるゼンマイ67の渦巻状の幾何学的形状を図10に示す。ゼンマイの巻き上げターン数を最大化するために、このタイプの実施形態の好ましい例においては、コイルは「LIGA」製造技術における制約を満たした上で可能な限り長くなければならない。この幾何学的形状は、18°に等しくなるよう計算された巻き上げを保証するよう最適化される。より高いトルクのために、コイルを中心に取り付けるための外側の点を、コイルをリング(赤色の円)に取り付けるための内側の点と確実に接触させることができ、これはいずれの問題も引き起こさないばかりか、コイル内側の応力を部分的に緩和できる。

通常の様式において、機械式時計ムーブメント1の少なくとも1つの巻き上げ機構4は、ユーザが起動させる手動巻き上げ機構40である。また、本発明による角穴車3を駆動する少なくとも1つの駆動ホイールセット8は、角穴車3と係合するカナ81と同軸の、少なくとも1つの第1の追加の角穴車駆動歯車82を含む。追加の中間歯車63の歯部64と協働するよう配設された歯部85を備える、この第1の追加の角穴車駆動歯車82は、角穴車3を駆動する少なくとも1つの駆動ホイールセット8が備えるアーバ80の肩部83上に枢動可能に設置される。この第1の追加の角穴車駆動歯車82は、ユーザが起動させた手動巻き上げ機構40の動作中、第1の連結解除機構を構成する第1の弾性回転復元手段又は少なくとも1つの第1のばね84によってアーバ80に接続される。このタイプの第1の追加の角穴車駆動歯車82は、図11に示す更に複雑なホイールセットの底部に確認できる。

好ましくは、第1の弾性回転復元手段又は少なくとも1つの第1のばね84によって構成されるこれらの連結解除機構9のうちのいくつかは、第1の追加の角穴車駆動歯車82に摩擦力を印加し、そのトルクのモーメントは、連結解除機構9と第1の追加の角穴車駆動歯車82との間の相対的な枢動方向に応じて異なる。

具体的には、第1のばね84は、角穴車3を駆動する少なくとも1つの駆動ホイールセット8のアーバ80に対して第1の追加の角穴車駆動歯車82の遊びのない単方向枢動方向を生成するよう配設され、これにより、少なくとも1つのこのタイプの巻き上げ機構4による機械式時計ムーブメント1の巻き上げ中の、時方輪列5へのトルクのいずれの伝達も防止できる。

少なくとも1つの巻き上げ機構4が自動巻き機構45である場合、角穴車3を駆動する少なくとも1つの駆動ホイールセット8は、図11に示すように、第2の追加の角穴車駆動歯車を更に含む。減速ホイールセット16のカナ18と協働するよう配設された歯部89を備える、この第2の追加の角穴車駆動歯車86は、アーバ80の肩部87上に枢動可能に設置され、自動巻き上げ機構45の動作中、連結解除機構9を構成する第2の弾性回転復元手段又は少なくとも1つの第2のばね88によって、前記アーバ80に接続される。即ち、角穴車駆動ホイールセット8の片側には再注入システムが配設され、もう片側には自動巻き上げ機構が配設され、これは2つのトルク入力の間の連結解除システムのための要件を説明するものである。

好ましくは、これら第2の弾性回転復元手段又は少なくとも1つの第2のばね88によって構成される連結解除機構9のうちのいくつかは、第2の追加の角穴車駆動歯車86に摩擦力を印加し、そのトルクのモーメントは、連結解除機構9と第2の追加の角穴車駆動歯車86との間の相対的な枢動方向に応じて異なる。

具体的には、第2のばね88は、角穴車3を駆動する少なくとも1つの駆動ホイールセット8のアーバ80に対して第2の追加の角穴車駆動歯車86の遊びのない単方向枢動方向を生成するよう配設され、これにより、ユーザが起動させる手動巻き上げ機構40による機械式時計ムーブメント1の巻き上げ中、又は第1のエネルギ取り込み手段6の動作中の、時方輪列5へのトルクのいずれの伝達も防止できる。

従って、角穴車3を駆動する駆動ホイールセット8の設計は、実行するべき以下の様々な機能を考慮したものである: −自動巻き上げ機構45から角穴車3へのトルクの伝達; −再注入システムからのトルクの伝達; −2つのシステム間のトルク伝達の連結解除(単方向歯車を使用する必要がある)。

自動巻き上げ機構45による巻き上げ中にホイールセット内のトルクが再注入システムを駆動すると、再注入システムを介した時方輪列の追加のトルクによってノッキングが引き起こされてしまう恐れがあるため、ホイールセット内のトルクは再注入システムを駆動しないことが重要である。逆方向において、再注入システムによる駆動中に、自動巻き上げ機構45の歯車のいずれかがクリック歯車まで駆動されるのを回避する必要がある。

図11は、5つの部品、即ち:好ましくは20AP鋼を旋盤加工したアーバ80;自由に枢動できる第1の追加の角穴車駆動歯車82及び第2の追加の角穴車駆動歯車86;並びにこれらの歯車が駆動されること又は駆動されないことを保証する第1のばね84及び第2のばね88からなる角穴車を駆動する駆動ホイールセット8の、設置状態における非限定的な具体的実施形態を示す。

好ましくは硬化銅−ベリリウム(CuBe)で作製された単方向性の第1の追加の角穴車駆動歯車82及び第2の追加の角穴車駆動歯車86に関して、これらの機能は、自動巻き上げ機構45又は再注入システムからのトルクを受けた場合にアーバ80を駆動することである。しかしながら、アーバ80(2つの歯車間の連結解除システム)が前記歯車82、86を駆動しない場合には、これらはトルクを伝達してはならない。更に歯車82又は86は、例えばクリック歯車に対向するように、死角を有してはならない。これら歯車82、86の歯部85、89はまた、ギアの遊びを最小化するよう最適化される。印加されるトルクの方向に応じた、各ばね84、88の大きく異なる挙動は、駆動の第1の「自由」方向及び第2の「摩擦」方向として単純化できる。しかしながら、ばねの「自由」方向においてさえ、ばねの外径部分に印加される僅かな予備応力によって、ばねと関連する歯車との間には僅かな摩擦が存在し、これは即ち、歯車が低摩擦トルクで駆動され、後続の歯車又はカナとの遊びを補償できるまで回転することになることを意味する。

2つの歯車82、86は好ましくは、同一のばねを受承するよう考案され、これによって構成部品の数が削減される。更に、これら歯車82、86の枢動直径は同一である。これにより、アーバ80の6面駆動シャフトの中央にばねを取り付けるための寸法を同一にすることができる。

第1の可撓性ばね84又は第2の可撓性ばね88は、ロック方向に動作した場合にアーバ80を駆動する機能を有する。アーバ80がばねを駆動する際、対応する歯車は駆動されてはならない。好ましくは、摩擦トルクは最小化され、ロック用トルクは最大化される。

このタイプの連結解除システムは、腕時計の手動又は自動巻き上げ中の、再注入システムによるいずれの力フィードバックを防止するために重要であることが理解される。角穴車を駆動する駆動ホイールセット8は単方向歯車を形成し、この単方向歯車の動作はリバーサークリックホイールに類似している。少なくとも1つの駆動ホイールセット8は、公知のリバーサに比べて体積がはるかに小さく、従って角穴車3の直近に容易に挿入できるため、公知のリバーサに比べてはるかに進歩したものである。本発明による少なくとも1つの駆動ホイールセット8は死角を有さず、これはこの駆動ホイールセット8を自動ムーブメントに設置できることを意味している。

図12〜図18は、ばねの様々な幾何学的形状(ただしばねの幾何学的形状はこれらに限定されない)を示し、第1のばね84又は第2のばね88に等しく適用できる。より詳細には、図12は、第1の追加の角穴車駆動歯車82に格納された第1のばね84を示し、図13〜図18は、第2の追加の角穴車駆動歯車86に格納された第2のばね88を示す。これらは摩擦によって対応する歯車に固定され第1のばね84の外側コイル841、第2のばね88の外側コイル881はそれぞれ、歯車82、86のハウジング820、860と協働し、前記外側コイル841、881はそれぞれ前記ハウジング820、860内において、その縁部における摩擦によって、及び/又はそれぞれ前記第1のばね84及び第2のばね88が備えるタブ84A、88Aによって保持される。各ばねの内側部分842、882は、アーバ80の凸状部800と相補的な外形を有する第1のばね84、第2のばね88それぞれの凹状部840、880を介して、アーバ80と協働する。

各ばねの内側部分842、882をその外側部分841、881に接続する少なくとも1つのアーム843、883が非対称な剛性を有する、図示したばねの具体的な外形によって、アーバ80と各歯車との間の相対的枢動運動がある方向のものであるか他の方向のものであるかに応じて、モーメントが大きく異なるトルクを印加できる。前記他の方向において印加されるトルクに対する前記ある方向において印加されるトルクの比は、ばねの形状、使用される断面、使用される材料の組み合わせに応じて好ましくは3を超える。この比は大幅に、特に10倍を超えて上昇させることができる。

図12、13では、ばねの外形は閉鎖型であり、各ばねの内側部分842、882はそれぞれ、アーバ80を中央とする菱型形状であり、この菱型の端部のうちの一方Aは外側部分841、881それぞれの始点を構成し、この外側部分841、881はそれぞれ、略1周の円を形成した後で位置Cにおいて巻き上げられてアーム843、883を形成し、第1の端部Aに対して対称な菱型の他端において位置Bに取り付けられる、外側部分より小さい半径を有する約半周の円形セクションを有する。

図14ではばねの外形は開放型であり、内側部分842、882はそれぞれ、その半径に亘って三角形によって延長されたディスク形状を有し、前記三角形の遠位点Eは、約半周の円形セクタであるアーム843、883それぞれの始点を構成し、その後位置Fにおいて巻き上げられて外側部分841、881を形成し、前記外側部分841、881はそれぞれ、前記アームより大きな半径を有する略1周の円形となり、その後遠位端Gにおいて停止する。

図15ではばねの外形は開放型であり、内側部分842、882はそれぞれ、その半径に亘って三角形によって延長されたディスク形状を有し、前記三角形の遠位点Hはアーム843、883それぞれの始点を構成し、前記アーム843、883の渦巻きは約半周して位置Iまで進み、前記位置Iから円形の外側部分841、881それぞれが始まり、その後位置Hに対して約1.25周して、遠位端Jにおいて停止する。

図16ではばねの外形は開放型であり、このばねは2つの対称なストランドを含み、内側部分842、882はそれぞれ、K、Nにおいてアーム843、883に取り付けられるディスク形状であり、前記アーム843、883の渦巻きは約0.75周して位置L、Pまで進み、前記位置L、Pから円形の外側部分841、881それぞれが始まり、その後半周して遠位端M、Qにおいて停止する。

図17ではばねの外形は閉鎖型であり、120°間隔の糸状部を含み、内側部分842、882はそれぞれディスク形状であり、前記内側部分842、882の位置Rから、略半径方向の湾曲したアーム843、883が始まり、前記アーム843、883は位置Sにおいて、より大きな直径の2つの円形セクタ(外側部分841、881それぞれを形成するセクタTUを含む)を接合する弦885に接合し、ばねは、前記弦885から約120°の位置にある別の弦885上の位置Uから再び始まり、位置Vにおいて上述のものと同様の、別の半径方向の湾曲したアームに接合し、位置Vは前記始点Sと対をなすものである。

図18ではばねの外形は開放型であり、ばねは2つの対称なストランドを含み、内側部分842、882はそれぞれ、大きな断面を有する径方向アーム886が位置Wに取り付けられるディスク形状である。前記径方向アーム886は位置Xまでであり、径方向アーム886よりも小さい断面を有するアーム843、883が、前記位置Xから歯車周縁部の遠位点Yまで直角に突出する。

図12〜18のばねは打抜き加工で製造でき、又は極めて微細なストランドを有するばねについては、「LIGA」、「DRIE」又は同様の製造プロセスを用いて製造できる。

本発明によると、中間ホイールセット60のゼンマイ67は有利には、追加の中間歯車63と追加の角穴車駆動歯車82との間の遊びを補償するよう、寸法設定されて配設されると有利である。

特定の変形例では、機械式時計ムーブメント1は、テンプを有する少なくとも1つの調速部材90を含み、前記調速部材90の作動中、第1のエネルギ取り込み手段6は時方輪列5から機械的トルクを常に取り込む。本発明によると、このテンプは、前記機械式時計ムーブメント1がその動作に十分な振幅を維持するための第1のエネルギ取り込み手段6を有さない場合よりも小さくなるよう寸法設定される。

特定の変形例では、機械式時計ムーブメント1は、テンプを有する少なくとも1つの調速部材90を含み、機械式時計ムーブメント1が空間内で固定位置に保持されている場合及び自動巻き上げ機構45が非作動状態である場合にのみ、第1のエネルギ取り込み手段6は時方輪列5から機械的トルクを常に取り込み、これによってテンプの振幅を減少させ、機械式時計ムーブメント1のパワーリザーブを増大させる。

好ましくは機械式時計ムーブメント1において、巻き上げ機構4は手動巻き上げ機構40を含み、これはユーザが起動させるステム41を含み、ステム41の軸方向巻き上げ位置及びユーザがステム41に付与する回転巻き上げ方向において、角穴車3と噛み合う伝達用歯車44を駆動する巻き上げカナ42と噛み合うよう配設された摺動カナ43を駆動するよう配設される。本発明によると、伝達用歯車44は、ステム41の作動中に角穴車3と伝達用歯車44との間のバックラッシュを補償する手段を含むコハゼ31と協働するよう配設される。

本発明はまた、少なくとも1つのこのような機械式時計ムーブメントを含む時計100、特に腕時計にも関する。

本発明の機構は、角穴車の駆動を続行する前に、いずれのトルクが時方輪列を通過してノッキングを引き起こすのを防止しながら、自動巻き上げ機構の作用の下で再注入システムにおいて生成される遊びを補償しなければならない。これは、ムーブメントが回転している間、時方輪列からのトルクの取り込みが一定である場合に可能である。エネルギのレベルに関して、テンプのために必要な動力は、時方輪列からのトルクの一定の取り込みによって低減される。これは、十分な振幅を保証するためのテンプの寸法の低減を伴う。テンプの寸法は、再注入システムが取り込むトルクの低減に直接対応する。図示した変形例では、3100erg/秒の調速力を有する振動子を有する基本機械式時計ムーブメントから、1120erg/秒の調速力を有する改良型機械式時計ムーブメントへの変更が行われている。これは16mg×cm2から14mg/cm2への慣性の低減を意味し、これに対応して周波数も4Hzから3Hzへと低減される。

自動巻きムーブメントを有する腕時計を装着している時には、ムーブメントは増大したパワーリザーブを必要としない。しかしながら、ユーザが腕時計を外している時には、自律性が重要となる。ユーザが腕時計を外した後では、再注入システムを用いてパワーリザーブを増大させることが有利となる。従って自動巻き腕時計に関しては、腕時計装着時に遊びを補償しないことも考えられる。しかしながら、腕時計を外して、遊びの補償に対応する一定の期間(これは装着者によって異なり得る)が過ぎた後、再注入システムは時方輪列のトルクの一部を取り込み、このトルクの取り込みに応じてパワーリザーブを増大させる。よって装着中は時方輪列に全てのトルクが残っている。従って、テンプは(再注入システムを有さない)標準的なムーブメントのテンプと同一のままである。しかしながら、腕時計を外して再注入システムが作動し始めると、再注入のために取り込まれたトルクに応じてテンプの振幅が減少することになる。しかしながらこの場合、振幅の減少により、これは非使用期間中の腕時計の等時性能に僅かに影響を与えるものの、ムーブメントを停止させることなく数日間過ごすことができ、これは本発明による再注入システムを用いなければ不可能である。

このバックラッシュ補償システムは、自動巻き上げ中に生成されるバックラッシュを補償でき、これにより、角穴車が駆動されている場合でさえ、角穴車の歯部との恒常的な接触を保証する。中間ホイールセット60内に遊びを有さない単方向歯車を使用することは、良好な解決法である。この歯車は一方向に自由に回転し、反対方向にはロックされており、全体に亘って極めて小さい死角しか有さない。バックラッシュに関して、遊びが低減された歯部の幾何学的形状、又は可撓性歯部要素を含む遊びを有さない歯部を使用してもよい。

本発明による機構は、以下の基準を良好に満たす: −動作中のシステムの安全性; −製造、及び既存の機械式時計ムーブメントへの組み込みの容易性; −手動及び自動の両機械式時計ムーブメントのためのシステムの信頼性;並びに −最適な再注入効率、及び損失の最小化。

死角のない解決法により、自動巻き機械式時計ムーブメントの効率を向上させることができる。単方向歯車を使用する連結解除システムは、実装及び製造の簡単さという差し迫ったニーズに応えるものである。これにより、構成部品の数及び複雑さを制限できる。

遊びを補償する機能及びロックする機能は、いずれの場合にも、単一の部品によって直接実行される。

1 機械式時計ムーブメント 2 エネルギ貯蔵手段 3 角穴車 4 巻き上げ機構 5 時方輪列 6 第1のエネルギ取り込み手段 7 第1の弾性接続 8 角穴車駆動ホイールセット 9 連結解除機構 11 文字盤支持プレート 12 歯車列バー 13 下側自動デバイスバー 14 香箱バー 15 自動デバイスフレーム 16 減速ホイールセット 17 プレート 18 カナ 19 巻き上げステム 20 香箱 21 ドラム 22 歯部 23 駆動手段 24 蓋 25 アーバ 31 歯部、コハゼ 32 固定要素 40 手動巻き上げ機構 41 ステム 42 巻き上げカナ 43 摺動カナ 44 伝達用歯車 45 自動機構、自動巻き上げ機構 46 自動巻き上げ錘、錘 47 歯部 48 第1のリバーサ歯車 49 第2のリバーサ歯車 51 三番車 52 三番車51のカナ 53 三番車51のプレート 54 二番筒カナ 55 四番車ホイールセット 56 四番車ホイールセット55のカナ 57 四番車ホイールセット55のプレート 58 筒車 59 二番筒カナ54の歯部 60 中間ホイールセット 61 第1のカナ 62 中間歯車 63 追加の中間接続歯車、追加の中間歯車 64 歯車64の歯部 65 歯車63のハウジング、ノッチ 66 中間ホイールセット60のハウジング 67 ゼンマイ 68 アーバ 80 アーバ 81 カナ 82 第1の歯車、第1の追加の角穴車駆動歯車 83 アーバ80の肩部 84 第1のばね 84A タブ 85 第1の歯部 86 第2の歯車、第2の追加の角穴車駆動歯車 87 アーバ80の肩部 88 第2のばね 88A タブ 89 第2の歯部 90 調速部材 100 時計、腕時計 630 凹部 650 ラグ 651 外側コイル 652 内側コイル 653 枢動防止手段 654 渦巻状ストランド 683 凸状四角柱 800 凸状部 820 ハウジング 840 凹状部 841 外側部分 842 内側部分 843 アーム 860 ハウジング 880 凹状部 881 外側部分 882 内側部分 883 アーム 885 弦 886 径方向アーム A 菱型の一方の端部 B 位置 C 位置 E 遠位点 F 弦 G 遠位端 H 遠位点 I 位置 J 遠位端 K 位置 L 位置 M 遠位端 N 位置 P 位置 Q 遠位端 R 位置 S 始点 TU セクタ U 位置 V 位置 W 位置 X 位置 Y 遠位点

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