【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、一般的に、光学システムに関し、更に特定すれば、光アナログ−デジタル変換器に関するものである。 【0002】 【従来の技術】技術の急速な進歩、特に処理の高速化、 チャネル帯域幅の拡大、及び伝送信頼性向上の結果、光学領域及びその可能性に対する関心が確実に増大している。 電気的な無線周波数(RF)に基づく処理と比較すると比較的新しい分野であるため、既存の利用可能な光学技術は、多くの分野において未だ未熟である。 特に、 デジタル光学部品による高速広帯域処理は、その発展が約束されていたものの、RF領域においては既に当然である基礎的技術の多くが欠如していたり未熟であるために、頓挫してしまっている。 【0003】このような観点から、光アナログ−デジタル変換器は、技術的進歩が望まれる技術の1つである。 即ち、現在のデジタル光学システムは、電気的/RF領域におけるデジタル化を基本としており、光学領域とR F領域との間において、変換を双方向に行う必要があるが、この変換は低速であり、損失が多く、しかもノイズが多い。 更に、今日の光アナログ−デジタル変換器は、 「ダウンワード・フォールディング(下方折半)連続近似手法」(downward−foldingsucc essive approximation appr oach)を利用して、サンプリングされたアナログ信号を特定のスレシホルドと比較する検査を行う。 サンプル即ちサンプリングされた信号の振幅がスレシホルド未満である場合、そのビットを「ロー(低)」にセットし、該サンプルをそのまま次のビット段に受け渡す。 サンプルの信号振幅がスレシホルドよりも大きい場合、そのビットは「ハイ(高)」にセットされ、システムは、 それを次のビット段に受け渡す前に、スレシホルド値だけサンプルの振幅を減少させる。 このようにして、連続する各段において、サンプルをスレシホルドと比較する検査を行って、徐々に0に近づけていく。 かかる変換器のアルゴリズムは、光学分野では実施が困難である。 これは、光信号を互いに減算するための簡素で高精度の方法が依然として開発されていないからである。 【0004】したがって、RF技術には殆ど又は全く依存せずに、光アナログ信号を光デジタル信号に変換することにより、システムの複雑度を減らし、高速広帯域処理の進展を可能にするためのデバイスの提案が、切望されている。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、従来技術における前述の欠点及びその他の欠点に対処し、これらを克服するものである。 本発明は、第1の態様において、アナログ信号をデジタル信号に変換する装置を提供する。 この装置は、光キャリア信号を発生する手段と、光キャリア信号をアナログRF信号で周波数変調し、変調光信号を発生する手段と、一連のアナログ−デジタル・ステージとを含み、各アナログ−デジタル・ステージが、デジタル信号における1ビットの信号を発生する。 一連のアナログ−デジタル・ステージの各々は、変調光信号を第1及び第2のパスバンド内でフィルタリングし、それに応答して第1及び第2のフィルタ済信号を発生する手段と、第2フィルタ済信号が第2バンドパス以内にある場合には第1の2進信号を発生し、第2のフィルタ済信号が第2のパスバンドの外側にある場合には第2の2進信号を発生する手段と、第2のフィルタ済信号の周波数を低下させてダウンシフト信号を発生する手段と、第1 のフィルタ済信号とダウンシフト信号とを結合して周波数が低下された変調信号を発生する手段とを含んでいる。 【0006】別の態様では、本発明は、アナログ信号をデジタル信号に変換する方法を提供する。 この方法は、 光キャリア信号を発生するステップと、光キャリア信号をアナログRF信号で周波数変調し、変調信号を発生するステップと、一連のステップにおいてデジタル・ビットを発生するステップとを含む。 各一連のステップは、 変調信号を第1及び第2のパスバンド内でフィルタリングし、それに応答して第1及び第2のフィルタ済信号を発生するステップと、第2のフィルタ済信号が第2のバンドパス以内にある場合には第1の2進信号を発生し、 第2のフィルタ済信号が第2のパスバンドの外側にある場合には第2の2進信号を発生するステップと、第2のフィルタ済信号の周波数を低下させ、ダウンシフト信号を発生するステップと、第1のフィルタ済信号とダウンシフト信号とを結合して、周波数を低下させた変調信号を発生するステップとを含んでいる。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明の好適な実施の形態について、以下に説明する。 なお、同様の参照番号は、同様の構造を表すためのものである。 図1には、ダウンワード・フォールディング連続近似手法を利用した、周波数変調に基づく光アナログ−デジタル変換器10が示されている。 周波数領域においてダウンワード・フォールディング動作を行うことにより、本発明は、光学的なパワー減算という困難な作業を回避し、その代わりに、周波数ダウンコンバージョンを基本とする。 本発明は、特に、 高速デジタル光リンクにおいて有用である。 光学領域においてデジタル化することにより、ビット・レートの高速化が可能となり、ノイズ・レベルの低下を実現することができ、システムの煩雑性を減少させることができる。 【0008】図1に示すように、光アナログ−デジタル変換器10は、連続するステージ(段)12、46、4 8を含み、これらのステージは、スプリッタ14、11 4、214、第1及び第2のフィルタ16及び18、1 16及び118、216及び218、周波数ダウンシフタ20、120、220、ならびに、加算器22、12 2、222を含んでいる。 アナログRF入力信号24 は、光学的周波数変調変調器(FM変調器)30において、レーザ28からのキャリア出力26を変調する。 なお、レーザ28の内部変調によって、アナログRF入力信号24によりキャリア出力26を変調して、該入力信号24をキャリア上に載せても良い。 光学的FM変調器30は、このようなレーザ内部又は外部の変調器のいずれを含むことも可能であり、新たに開発されたものであっても、当技術分野では公知のものでもよい。 【0009】このようにして、デジタル化すべきアナログRF入力信号24により光キャリア36が周波数変調される。 図2には、変調器30から発生される光変調信号36に対する好適な振幅−周波数マッピング34のグラフが示されている。 周波数マッピング34は、最小信号振幅S minが周波数帯域の下限f Lに対応し、最大信号振幅S maxが周波数帯域の上限f Hに対応するように行われる。 中間の信号振幅は、f L及びf H間の周波数に線形にマッピングする。 したがって、FM変調器30が発生する信号36は単一トーンであり、その周波数は、RF 入力信号24の振幅に応じて、f L 〜f Hの範囲で上下方向に移動する。 図2に示す振幅−周波数マッピング34 は、線形量子化のために用いられているが、別の実施形態では、図2の周波数マッピング34を非線形にすることによって、非線形量子化も容易に実施することができる。 【0010】図1を参照すると、光変調信号36は、第1のステージ12に入力し、ここで1×2の光スプリッタ14に印加される。 1×2の光スプリッタ14は、光変調信号36を等しい第1及び第2の中間信号19、2 1に分割し、それぞれを第1及び第2の出力経路15、 17に出力する。 光スプリッタ14は、入力された光信号を分割し、それを少なくとも2本の出力経路に出力することができる任意の光デバイスから選択すればよい。 【0011】相補型である第1及び第2のフィルタ1 6、18は、バンドパス・フィルタであり、低周波数f Lから高周波数f Hまでのバンドパス周波数範囲を協同してカバーする。 第1のフィルタ16は、第1の中間信号19中の周波数f Lから(f H +f L )/2までの低い方の周波数のものを通過させ、そして、該フィルタ16の出力47に低周波フィルタ済信号(第1のフィルタ済信号)41を出力する。 一方、第2のフィルタ18は、第2の中間信号21中の周波数(f H +f L )/2からf H までの高い方の周波数のものを通過させ、該フィルタ1 8の出力23に高周波フィルタ済信号(第2のフィルタ済因業)43を出力する。 第2のフィルタ18の出力2 3における高周波フィルタ済信号43は、周波数ダウンシフタ20に供給されるとともに、第1のビットを表す信号MSB 1となる。 即ち、第2の中間信号21が第2 のフィルタ18のパスバンドに該当する場合、MSB 1 は、高レベル状態に対応する「1」にセットされる。 逆に、第2の中間信号21が第2のフィルタ18のパスバンドを外れる場合、出力23には信号パワーはなく、したがってMSB 1は低レベル状態に対応する「0」にセットされる。 第2の中間信号21は単一のトーンであるので、第2の中間信号21は常にパスバンド領域の完全に内側か、あるいは完全に外側となり、双方にまたがることはない。 【0012】低周波フィルタ済信号41がある場合、該信号は第1のフィルタ16から第1の中間経路42上に出力され、加算器22に直接入力されるので、周波数調整は行われない。 高周波フィルタ済信号43がある場合、該信号は第2のフィルタ18から第2の中間経路3 8に出力され、周波数ダウンシフタ20に印加される。 周波数ダウンシフタ20は、高周波フィルタ済信号43 を(f H −f L )/2だけダウンコンバードし、ダウンシフト信号45を発生する。 その際、ダウンシフト信号4 5は、周波数範囲f L 〜f Hまでの低い方の半分に入るように、以下の式にしたがって発生する。 【数1】 f new =f old −(f H −f L )/2 (1) ダウンシフト信号45は、ダウンシフタ20から第3の中間経路40を介して加算器22に入力される。 【0013】第1のステージ12への入力信号36は単一のトーンであり、該ステージの2つのフィルタ16、 18は相補的であるので、同一である第1及び第2の中間信号19、21は、2つのフィルタ16、18の一方のみのパスバンドに入っている。 2つの中間信号19、 21は、フィルタのパスバンドに該当するときにのみ通され、さもなければ通過を阻止される。 したがって、2 つの相補的であるフィルタの一方(16又は18)のみが常に、第1又は第2の中間信号19又は21を通過させ、他方のフィルタは常に、第1又は第2の中間信号1 9又は21を阻止する。 第1及び第2中間信号19、2 1はそれぞれ、第1及び第2のフィルタ16、18に到達する前に、第1及び第2中間経路15、17双方に現れるが、フィルタ16、18の処理後、2つの経路4 2、38の一方のみに、信号41又は43が得られる。 経路42又は38のどちらが信号41又は43を搬送するかは、その時点におけるトーン周波数によって決められる。 【0014】第1のフィルタ16からの経路42と、第2のフィルタ18及びダウンコンバータ20からの経路40とは、2×1の光加算器22において合体する。 2 ×1光加算器22は、2つの光導波路からの信号を単一の光媒体に結合する光学部品であれば、任意のものを採用することができる。 一実施形態では、スプリッタ14 として選択されたデバイスを、該スプリッタと逆に動作させることにより、加算器22として機能するようにしている。 【0015】信号経路40、42は第1のステージ12 の終端の加算器22において再結合されるので、第1のステージのダウンシフト出力44は、周波数範囲f L 〜 f Hの下半分に制限される。 第1のステージのダウンシフト出力44は、必要に応じて増幅され、次いで第2のステージ46に受け渡される。 第2のステージ46は第1のステージ12と同様な構成であるが、以下の点で相違している。 すなわち、第1のステージ46においては、第1及び第2のフィルタ116、118が、新たな狭められた周波数範囲f L 〜(f L +f H )/2の上半分及び下半分の間で区別を行い、周波数ダウンシフタ12 0が、以下の式(2)によって信号138をダウンコンバートするように、動作する。 【数2】 f new =f old −(f H −f L )/4 (2) すなわち、第2のステージ46は、f L 〜f L +(f L − f H )/4の範囲の出力を有する。 また、第2のステージ46は、第2のフィルタの出力から信号が出力されたとき、言い換えると、第2のステージ46に入力された信号の周波数が第2のフィルタ118のパスバンドf L +(f L −f H )/4 L 〜f L +(f L −f H )/2に入っているとき、第2のビットを表す信号MSB 2を「1」として出力する。 【0016】同様に、第3のステージ48は、第1及び第2のステージ12、46と同様であるが、ただし、第1及び第2のフィルタ216、218が、新たな狭められた周波数範囲f L 〜f L +(f L −f H )/4の上半分及び下半分のいずれに入力信号が入っているか否かを識別する点で相違している。 第3のステージ48は、第3のビットを表す信号MSB 3を出力するとともに、f L 〜f L +(f L −f H )/8の周波数範囲の出力を加算器22 2から発生する。 後続のビットは、追加のステージにおいて、その度に狭くなるフィルタによって抽出することができる。 最終のステージ50では、最下位ビットLS B即ちMSB nを得ることができる。 このようにして、 カスケード状にステージを追加することによって、多数のビットを得ることができる。 【0017】各ステージ12、46、48、50によって発生されたビット信号MSB 1 、MSB 2 、MSB 3 、 MSB n 、は、高周波側である第2のフィルタ18、1 18、218、318から出力される信号38、13 8、238、338から取り出され、特定の用途毎に必要に応じて、処理し利用することができる。 並列なビット出力が望ましい場合、ビット信号をそのまま使用することができるが、適切な時間遅延(図示せず)によって、ビット出力を同期化することも可能である。 直列ビット出力が望ましい場合、N×1加算器(図示せず)を用いて、Nビットの経路を結合して1本の経路にすることができる。 また、N×1加算器においてビットを結合する前に、時間遅延を適正に実施することによって、ビットの同期を取ることも可能である。 【0018】本発明の完全に光学的なアナログ−デジタル変換器10は、特に、高速デジタル・リンクにおいて有用である。 光学領域においてデジタル化することによって、ビット・レートの高速化が可能となり、ノイズ・ レベルの低下を実現することができ、システムの複雑度を減少させることができる。 本発明は、これまでに示しかつ記載したものや、説明したばかりの実施態様の物理的な大きさや寸法に限定される訳ではないことは、当業者には認められよう。 本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の好適な実施形態による、ダウンワード・フォールディング連続近似手法を利用した周波数変調に基づく光アナログ−デジタル変換器のブロック図である。 【図2】図1に示す光アナログ−デジタル変換器に関する、振幅−周波数マッピングのグラフである。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 デイヴィッド・エル・ロリンズ アメリカ合衆国カリフォルニア州90250, ホーソーン,ガーキン・アベニュー 15000 (72)発明者 スティーヴン・アール・パーキンズ アメリカ合衆国カリフォルニア州90278, リドンド・ビーチ,ウォラコット・ストリ ート 1723 (72)発明者 エリック・エル・アプトン アメリカ合衆国カリフォルニア州90278, リドンド・ビーチ,カーティス・アベニュ ー 2516,ナンバー 1 (72)発明者 エリザベス・ティー・カンキー アメリカ合衆国カリフォルニア州90266, マンハッタン・ビーチ,アルマ・アベニュ ー 2801 (72)発明者 ローレンス・ジェイ・レムボ アメリカ合衆国カリフォルニア州90503, トーランス,ウエスト・ハンドレッドナイ ンティース・ストリート 5530,ナンバー 141 (72)発明者 ジュアン・シー・カリロ,ジュニアー アメリカ合衆国カリフォルニア州90504, トーランス,ウエスト・ハンドレッドエイ ティフォース・ストリート 4036 (72)発明者 マーク・キンティス アメリカ合衆国カリフォルニア州90266, マンハッタン・ビーチ,ヴーアヒーズ・ア ベニュー 1636 |