Liquid crystal display device

申请号 JP2009219643 申请日 2009-09-24 公开(公告)号 JP2011069922A 公开(公告)日 2011-04-07
申请人 Fujifilm Corp; 富士フイルム株式会社; 发明人 UMIHOKO HIROYUKI; ISHIGURO MAKOTO;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a liquid crystal display device having high front CR (contrast) and a fast response speed. SOLUTION: The liquid crystal display device includes a light source, a first polarizer, a first transparent film, a liquid crystal cell having a pair of transparent substrates and a polymeric stabilized blue phase liquid crystal disposed therebetween, a second transparent film, and a second polarizer, disposed in this order, and is characterized in that one of the pair of transparent substrates is an array substrate and that no color filter layer is disposed on the other transparent substrate. COPYRIGHT: (C)2011,JPO&INPIT
权利要求
  • 光源、第1の偏光子、第1の透明フィルム、一対の透明基板とその間に配置される高分子安定化ブルー相液晶とを有する液晶セル、第2の透明フィルム、及び第2の偏光子がこの順に配置され、一対の透明基板のいずれか一方が、アレイ基板であり、且つ他方の透明基板にカラーフィルタ層が配置されていないことを特徴とする液晶表示装置。
  • 前記アレイ基板が、カラーフィルタ・オン・アレイ基板であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
  • 独立した3原色光が順次発光するバックライトユニットを含み、フィールドシーケンシャル駆動方式で駆動されることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
  • 第1の透明フィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)の絶対値|Re(550)|が、20nm以下であり、且つ同波長の厚み方向のレターデーションRth(550)の絶対値|Rth(550)|が、90nm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  • 第1の透明フィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)の絶対値|Re(550)|が、10nm以下であり、且つ同波長の厚み方向のレターデーションRth(550)の絶対値|Rth(550)|が、30nm以下である請求項4に記載の液晶表示装置。
  • 第1の透明フィルムの|Re(400)−Re(700)|が10nm以下であり、及び|Rth(400)−Rth(700)|が35nm以下である請求項5に記載の液晶表示装置。
  • 第1の透明フィルムが、セルロースアシレート系フィルムである請求項6に記載の液晶表示装置。
  • 第1の透明フィルムの|Re(400)−Re(700)|が5nm以下であり、及び|Rth(400)−Rth(700)|が10nm以下である請求項5に記載の液晶表示装置。
  • 第1の透明フィルムが、アクリル系ポリマーフィルムである請求項8に記載の液晶表示装置。
  • 第1の透明フィルムが、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含有するアクリル系ポリマーフィルムである請求項9に記載の液晶表示装置。
  • 第1の透明フィルムが、環状オレフィン系ポリマーフィルムからなる又は環状オレフィン系ポリマーフィルムを有する透明フィルムである請求項6に記載の液晶表示装置。
  • 第2の透明フィルムが、二軸性フィルムからなる又は二軸性フィルムを含む透明フィルムである請求項1〜11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  • 第2の透明フィルムが、一軸性フィルムからなる又は一軸性フィルムを含む透明フィルムである請求項1〜11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  • 第2の透明フィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)の絶対値|Re(550)|が10nm以下であり、且つ同波長の厚み方向のレターデーションRth(550)の絶対値|Rth(550)|が30nm以下である請求項1〜13のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  • 第2の透明フィルムが、Re(550)が200〜350nmであり、且つRth(550)が−88〜88nmである二軸性フィルムからなる請求項1〜11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  • 第2の透明フィルムが、Re(550)が20〜120nmであり、且つRth(550)が125〜225nmである二軸性フィルム、及びRe(550)が−30〜30nmであり、且つRth(550)が50〜150nmである二軸性フィルムを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  • 第2の透明フィルムが、Re(550)が60〜210nmであり、且つRth(550)が30〜105nmである一軸性フィルム、及びRe(550)が−30〜30nmであり、且つRth(550)が70〜170nmである一軸性フィルムを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  • 前記光源が、LED光源である請求項1〜17のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  • 说明书全文

    本発明は、高分子安定化ブルー相を利用した液晶表示装置の表示特性の改善に関する。

    液晶表示素子は光情報処理分野で広く用いられている。 液晶表示方式には、TN、STN、IPS、VA、OCB方式など種々の方式があるが、2枚の偏光板の間にいずれも予め制御された液晶分子の配向を、電界を印加させることにより異なる配向状態に変化させ、光の偏光方向や偏光状態を変化させ、透過する光量を変えることで表示を行うのが一般的である。
    これら従来の液晶表示方式は、いずれも液晶分子の配向を制御するための表面配向処理を必要とし、特に、VAを除く方式では、ラビング処理が必要である。 ラビングは、液晶と接する基板表面に塗布された配向膜表面を布等でこする操作であり、歩留まりの低下及びそれに起因するコストの上昇、ならびに表示品質の低下の原因となっている。 また、上記いずれの方式でも、ネマチック液晶を用いるため、応答時間が最短でも5ミリ秒程度あり、テレビでの動画表示に限界があった。

    近年、液晶表示素子用の液晶としてカイラルネマチック液晶が開発されている(特許文献1及び2等)。 また、上記の課題を解決するものとして、従来のネマチック液晶に代えて、高分子安定化ブルー相の利用が提案されている(特許文献3及び4)。 この高分子安定化ブルー相は、ブルー相の持つ高速応答性を失うことなく、その発現温度範囲を高分子によって著しく高めた新規材料である。 高分子安定化ブルー相は、電界無印加状態で光学的に等方性であるため、配向を制御する必要がない。 電界ゼロでレターデーションが無く、電界印加でレターデーションが誘起される現象を利用する新規な方式で表示を行う。 その応答時間は100μ秒程度であるため、従来の液晶表示素子よりも格段に応答が速い。 また、黒表示時においてレターデーションによる光漏れの発生が無く、広い視野コントラスト(CR)が得られると報告されている。 また、高分子安定化ブルー相に位相差フィルムを組み合わせ、偏光板による光漏れを抑えて、さらに広い視野角CRを得る方法が提案されている(特許文献5)。

    一方、液晶セルのカラーフィルタとアレイとを同一基板に搭載するカラーフィルタ・オン・アレイ(COA)構造について提案されている(特許文献6及び7)。 しかし、高分子安定化ブルー相の液晶セルへの適用については、従来なんら提案されていない。

    特開2003−295225号公報

    特開2001−316346号公報

    特開2003−327966号公報

    WO2005/090520

    特許第4147217号公報(特開2005−202383号公報)

    特開2005−99499号公報

    特開2005−258004号公報

    本発明者らが、高分子安定化ブルー相を利用した液晶表示装置について種々検討した結果、上記利点があるものの、正面(表示面に対して法線方向)CRが他の液晶表示方式より低いという問題があることがわかった。 近年では、液晶表示装置の高CR化が進んでいるので、高分子安定化ブルー相を利用した液晶表示装置についても、正面CRを改善することが強く望まれている。
    本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、高分子安定化ブルー相を利用した液晶表示装置の正面CRを改善することを課題とする。

    上記課題を解決すべく、本発明者が鋭意検討したところ、高分子安定化ブルー相を利用した液晶表示装置の正面CRが低いことの原因の一つに、ブルー相の安定化のためにブルー相中で、光架橋反応等を進行させてポリマーネットワークを形成する際に、反応が十分に進行していないことにあることがわかった。 さらに検討した結果、液晶セルのカラーフィルタ基板やアレイ基板が紫外線の透過を妨げるため、液晶セルの全面又は一部において均一に紫外線が照射されず、光架橋反応の進行が妨げられていることがわかった。 この知見に基づきさらに検討した結果、液晶セルのアレイ基板の対向基板として、カラーフィルタ層がない基板を利用し、当該対向基板側から紫外線を照射することで、高分子安定化ブルー相を利用した液晶表示装置の正面CRが顕著に改善されるとの知見を得、本発明を完成するに至った。

    前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
    [1] 光源、第1の偏光子、第1の透明フィルム、一対の透明基板とその間に配置される高分子安定化ブルー相液晶とを有する液晶セル、第2の透明フィルム、及び第2の偏光子がこの順に配置され、一対の透明基板のいずれか一方が、アレイ基板であり、且つ他方の透明基板にカラーフィルタ層が配置されていないことを特徴とする液晶表示装置。
    [2] 前記アレイ基板が、カラーフィルタ・オン・アレイ基板であることを特徴とする[1]の液晶表示装置。
    [3] 独立した3原色光が順次発光するバックライトユニットを含み、フィールドシーケンシャル駆動方式で駆動されることを特徴とする[1]又は[2]の液晶表示装置。
    [4] 第1の透明フィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)の絶対値|Re(550)|が、20nm以下であり、且つ同波長の厚み方向のレターデーションRth(550)の絶対値|Rth(550)|が、90nm以下である[1]〜[3]のいずれかの液晶表示装置。
    [5] 第1の透明フィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)の絶対値|Re(550)|が、10nm以下であり、且つ同波長の厚み方向のレターデーションRth(550)の絶対値|Rth(550)|が、30nm以下である[4]の液晶表示装置。
    [6] 第1の透明フィルムの|Re(400)−Re(700)|が10nm以下であり、及び|Rth(400)−Rth(700)|が35nm以下である[5]の液晶表示装置。
    [7] 第1の透明フィルムが、セルロースアシレート系フィルムである[6]の液晶表示装置。
    [8] 第1の透明フィルムの|Re(400)−Re(700)|が5nm以下であり、及び|Rth(400)−Rth(700)|が10nm以下である[5]の液晶表示装置。
    [9] 第1の透明フィルムが、アクリル系ポリマーフィルムである[8]の液晶表示装置。
    [10] 第1の透明フィルムが、ラクトン環単位、無マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含有するアクリル系ポリマーフィルムである[9]の液晶表示装置。
    [11] 第1の透明フィルムが、環状オレフィン系ポリマーフィルムからなる又は環状オレフィン系ポリマーフィルムを有する透明フィルムである[6]の液晶表示装置。
    [12] 第2の透明フィルムが、二軸性フィルムからなる又は二軸性フィルムを含む透明フィルムである[1]〜[11]のいずれかの液晶表示装置。
    [13] 第2の透明フィルムが、一軸性フィルムからなる又は一軸性フィルムを含む透明フィルムである[1]〜[11]のいずれかの液晶表示装置。
    [14] 第2の透明フィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)の絶対値|Re(550)|が10nm以下であり、且つ同波長の厚み方向のレターデーションRth(550)の絶対値|Rth(550)|が30nm以下である[1]〜[13]のいずれかの液晶表示装置。
    [15] 第2の透明フィルムが、Re(550)が200〜350nmであり、且つRth(550)が−88〜88nmである二軸性フィルムからなる[1]〜[11]のいずれかの液晶表示装置。
    [16] 第2の透明フィルムが、Re(550)が20〜120nmであり、且つRth(550)が125〜225nmである二軸性フィルム、及びRe(550)が−30〜30nmであり、且つRth(550)が50〜150nmである二軸性フィルムを含む[1]〜[11]のいずれかの液晶表示装置。
    [17] 第2の透明フィルムが、Re(550)が60〜210nmであり、且つRth(550)が30〜105nmである一軸性フィルム、及びRe(550)が−30〜30nmであり、且つRth(550)が70〜170nmである一軸性フィルムを含む[1]〜[11]のいずれかの液晶表示装置。
    [18] 前記光源が、LED光源である[1]〜[17]のいずれかの液晶表示装置。

    本発明によれば、高分子安定化ブルー相を利用することにより、応答速度が速く、しかも正面CRが改善された液晶表示装置を提供することができる。

    本発明の液晶表示装置の構造の一例を示す模式図である。

    本発明に利用可能なCOA基板の一例の断面概略図である。

    本発明に利用可能なCOA基板の対向基板の一例の断面概略図である。

    本発明に利用可能な液晶表示素子の一例を示す断面図である。

    本発明に利用可能な液晶表示素子の一例を示す断面図である。

    本発明に利用可能な液晶表示素子の電極の構成例を示す上面図である。

    (a)は電界無印加状態における上記表示素子の要部の概略構成を模式的に示す断面図であり、(b)は電界印加状態における上記表示素子の要部の概略構成を模式的に示す断面図である

    本発明の表示装置の一例の要部の概略構成を示すブロック図である。

    本発明に利用可能な液晶表示素子の電極の構成例を示す上面図である。

    以下、本発明について詳細に説明する。 なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
    なお、本明細書において、本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内レターデーション(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション(単位:nm)を表す。 Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。

    測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
    Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。

    上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
    尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(21)及び数式(22)よりRthを算出することもできる。

    上記式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。 また、上記式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。 dはフィルムの膜厚を表す。

    測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
    Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。

    上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。 平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。 主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
    セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
    これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。 この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
    なお、本明細書において、Re、Rth及び屈折率について特に測定波長が付記されていない場合は、測定波長550nmであるものとする。 また、「面内遅相軸」とは、面内で屈折率が最大になる方向であり、「面内進相軸」とは面内遅相軸に面内で直交する方向である。 また、可視光領域とは、波長380〜780nmを意味する。

    本発明は、高分子安定化ブルー相を利用した液晶表示装置に関し、特に、液晶セルの一対の基板のうち、一方にアレイ基板を配置し、他方にカラーフィルタ層のない対向基板を配置した高分子安定化ブルー相を利用した液晶表示装置に関する。 高分子安定化ブルー相を利用した液晶表示装置は、配向を制御する必要がなく、応答速度が速く、及び広い視野角特性を示すことが知られている。 しかし、本発明者が検討した結果、正面CRの観点では、他の液晶表示方式と比較して劣っていることがわかった。 この原因の一つは、液晶層中の配向欠陥である。 高分子安定化ブルー相は、ブルー相液晶をポリマーネットワークで安定化する構造であるため、液晶配向が不均一になりやすく、配向欠陥が生じやすいことにある。 配向欠陥部分での液晶による散乱現象により、正面(表示面に対して法線方向)CRが低下する。 この配向欠陥は、ポリマーネットワークの形成が不十分であるほど生じ易くなる。 高分子安定化ブルー相の液晶セルを作製する際は、一対の基板中に、ブルー相液晶を封入し、ブルー相中でポリマーネットワークを形成するための、光架橋反応等を進行させる。 本発明者が鋭意検討したところ、この際に、液晶セルのカラーフィルタ基板やアレイ基板が紫外線の透過を妨げるため、液晶セルの全面又は一部において均一に紫外線が照射されず、光架橋反応の進行が妨げられていることがわかった。 その結果、反応が十分に進行せず、ポリマーネットワークの形成が不十分になり、このことが配向欠陥を生じさせる一因になる。 従来、液晶セルの一対の基板の一方にはアレイ基板が、他方にはカラーフィルタ基板が配置されているために、いずれの側から紫外線照射しても、光架橋反応等は不十分になる。

    本発明では、液晶セルの一対の基板の一方に、アレイ基板を、他方にカラーフィルタ層を有しない対向基板を配置しているので、該対向基板側から紫外線を照射すれば、カラーフィルタにより透過を妨げることなく、ブルー相液晶に対して均一に紫外線を照射できる。 その結果、光架橋反応を安定的に且つ十分に進行させることができ、ブルー相の安定化のためのポリマーネットワークを安定的に形成することができる。 ブルー相がポリマーネットワークによって、より安定化されていれば、配向欠陥も生じ難く、その結果、配向欠陥部分の液晶による光散乱に起因した正面CRの低下を軽減することができる。 高分子安定化ブルー相のポリマーネットワークの状態が、正面CRに与える影響については従来全く検討されておらず、本発明者が初めて見出したことである。

    本発明の一実施形態は、液晶セルの一対の基板の一方にCOA基板を配置し、他方にカラーフィルタ層を有しない対向基板を配置したCOA構造の液晶表示装置である。 対向基板側から紫外線を照射することにより、カラーフィルタやアレイにより透過を妨げることなく、ブルー相液晶に対して均一に紫外線を照射できる。 その結果、光架橋反応を安定的に且つ十分に進行させることができ、ブルー相の安定化のためのポリマーネットワークを安定的に形成することができる。 ブルー相がポリマーネットワークによって、より安定化されていれば、配向欠陥も生じ難く、その結果、配向欠陥部分の液晶による光散乱に起因した正面CRの低下を軽減することができる。
    なお、COA構造は、従来、開口率を拡大できる構造として提案されているが、高分子安定化ブルー相の液晶セルに適用可能であることについては、未だ知られていない。 また、COA構造の採用により、開口率が拡大されることは、白表示時の透過率を向上させることにつながるが、一方で、正面CRは、白表示時及び黒表示時の2つの透過率(白輝度及び黒輝度)によって決定されるので、COA構造の採用により開口率を拡大することが、そのまま正面CRの改善につながるわけではない。

    また、本発明の他の実施形態は、カラーフィルタを有さない液晶セル、及びカラーフィルタを有さず、フィールドシーケンシャル駆動の液晶セルを有する液晶表示装置である。 フィールドシーケンシャル駆動方式では、カラーフィルタ層がなくても、例えば、独立した3原色(RGB)光が順次発光するバックライトユニットを利用すれば、フルカラー表示が可能である。 フィールドシーケンシャル駆動用液晶セルでは、アレイ基板の対向基板にはカラーフィルタ層が配置されていないので、当該対向基板側から紫外線照射を行えば、カラーフィルタやアレイにより透過を妨げることなく、ブルー相液晶に対して均一に紫外線を照射できる。 その結果、光架橋反応を安定的に且つ十分に進行させることができ、ブルー相の安定化のためのポリマーネットワークを安定的に形成することができる。 ブルー相がポリマーネットワークによって、より安定化されていれば、配向欠陥も生じ難く、その結果、配向欠陥部分の液晶による光散乱に起因した正面CRの低下を軽減することができる。

    一般的に、高分子安定化ブルー相は、黒表示時には等方性になるので、リア側(ブルー相液晶に対して光源側)偏光子を通過し、法線方向に進む直線偏光は、その後、液晶層を通過してもその偏光状態は変化せず、原則として全てフロント側(ブルー相液晶に対して観測者側)偏光子の吸収軸で吸収される。 即ち、原則として、黒表示時には法線方向には光漏れはないといえる。 しかし、黒表示時の正面透過率はゼロではない。 この理由の1つは、液晶層中の液晶分子が揺らいでいるためであり、液晶層に入射した光がある程度その揺らぎによって散乱されるためであることが知られている。 また、上記した通り、配向欠陥部分の液晶によっても光散乱が生じる。
    さらに本発明者が検討した結果、この黒表示時の透過率には、液晶層中の液晶分子の揺らぎ以外に、光源側の偏光子と液晶セルとの間に配置される部材の位相差にもその一因があることを見出した。

    通常、液晶表示装置のバックライトユニットからは、指向性をもった光が、光源側の偏光子に入射するが、斜め方向から入射した光は、液晶セルに入射するまでに通過する部材のレターデーションによって楕円偏光化される。 その後、この楕円偏光化された光が、液晶セルに入射するが、本発明者が鋭意検討したところ、この楕円偏光化された光が、液晶セル中の各部材(液晶、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、アレイ基板の構造、対向基板の突起構造、対向基板上の共通電極にスリットなど)に入射すると、各部材における散乱や回折などの光学現象によって、正面に散乱されてしまい、その結果、正面CRが低下するとの知見が得られた。 偏光子を通過した後、液晶セルに入射するまでに直線偏光が通過する部材のレターデーションが低ければ、液晶セル中に配置されている各部材における光学現象による黒表示時の透過率の上昇が抑制できる。 よって、本発明では、光源側の偏光子と液晶層との間に配置される透明フィルムのレターデーションは低いほど好ましい。 具体的には、光源側の偏光子と液晶層との間に配置される透明フィルムが、|Re(550)|が、20nm以下であり、且つ|Rth(550)|が、90nm以下であると、黒表示時に正面方向に生じる光漏れを軽減でき、正面CRをより改善できる。

    さらに、光源側の偏光子と液晶層との間に配置される透明フィルムのレターデーションは、黒表示時の斜め方向に生じる色味付き、いわゆる黒色味変化(カラーシフト)にも影響を与える。 本発明者が鋭意検討したところ、光源側の偏光子と液晶層との間に配置される透明フィルムの、|Re(550)|が10nm以下であり、且つ|Rth(550)|が30nm以下であると、上記作用により正面CRがさらに改善されるとともに、斜め方向での色味付きを軽減できることがわかった。 より具体的には、光源側の偏光子と液晶層との間に配置される透明フィルムの光学特性を、上記範囲とすることで、正面の白表示時と黒表示時との透過率比(輝度比)である正面CRについて、高値が達成でき、及び斜め方向の広い可視光波長範囲で黒表示時の光漏れを抑えることで黒色味変化量を抑制することができる。

    本発明では、高分子安定化ブルー相液晶の両側に用いる透明フィルム(光源側の偏光子と液晶層との間に配置される透明フィルム)の面内レターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)、および好ましくはさらにRe及びRthの波長依存性を最適な値に制御し、その材料・製法を鋭意検討することにより、正面方向でも黒表示時に光漏れが少なく、CRの高い液晶表示素子を実現している。

    また、本発明の液晶表示装置は、同一面スイッチング方式に対応液晶画面の大型化や高品質化に適する。
    また、本発明の液晶表示装置では、高分子安定化ブルー相液晶を利用しているので、以下の利点がある。
    まず、液晶材料を配向制御するための表面配向処理が不要であり、従来の表示素子で不可欠だった基板表面への配向膜の塗布−乾燥−熱キュア−ラビングなどの配向処理−洗浄−乾燥といったプロセスを全て省略できる。 このプロセスは、ほこりや微粒子などの異物の混入、静電気の発生、傷の発生などを招き、歩留まりの低下や表示機能の低下の原因となっていたので、このプロセスを省略できることにより、歩留まりの低下や表示機能の低下が回避できる。
    次に、従来の液晶表示素子ではネマチック液晶の配向状態の変化を基本原理とするため本質的に応答時間に限界があり、競合技術であるプラズマパネルやELなどに比べ動画表示機能に劣っていたが、高分子安定化ブルー相液晶を利用すると、100μ秒程度の応答が可能であるため、この問題も解決できる。

    本発明に使用可能な高分子安定化ブルー相液晶材料の例には、コレステリック相と等方相の間で青色相を発現し得る低分子液晶と、該低分子液晶中に形成された高分子ネットワークとを有する複合系液晶組成物が含まれる。 該高分子ネットワークは、非液晶性又は液晶性のモノマーが架橋剤とともに重合することにより形成された高分子ネットワークである。 前記高分子安定化ブルー相液晶材料は、カイラルドーパントを含んでいるのが好ましい。 高分子安定化ブルー相液晶に対するカイラルドーパントの量は、高分子安定化ブルー相液晶の回折波長に影響する。 高分子安定化ブルー相液晶の回折波長が可視領域(380〜750nm)外であるように、カイラルドーパントの添加量を調整してもよい。 そのような添加量のカイラルドーパントを含有する高分子安定化ブルー相液晶材料を利用した液晶表示装置は、黒表示時の光漏れがさらに軽減される。

    前記高分子ネットワークを形成するのに用いられるモノマーは、非液晶性モノマー及び液晶性モノマーのいずれでもよいが、非液晶性のモノマーの方が液晶性モノマーより効果的である。
    非液晶性のモノマーは、光重合又は熱重合によって重合することができるモノマーであって、棒状の分子構造(例えば、ビフェニル基又はビフェニル・シクロヘキシル基等の末端にアルキル基、シアノ基、フッ素などが付いたような分子構造)を有しないモノマーを指称し、例えば、分子構造中にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、フマレート基、シンナモイル基等の重合性基を含むモノマーが挙げられるが、これらに限られるものではない。
    非液晶性のモノマー以外のモノマーとして、フェニル基やシクロヘキシル基などを含む棒状や板状の骨格を有しそれ自身で液晶性を示すか、他の分子との混合により液晶相を示すような液晶性モノマーが挙げられる。
    また重合基を複数有するようなモノマーを用いてもよい。

    非液晶性モノマーの好ましい例には、分子構造中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を含むアクリレート系モノマーが含まれ、特に好ましい例には、側鎖としてアルキル基を有する枝分かれ構造のアクリレート系モノマーが含まれる。 アルキル基は、一般に、炭素数1〜4のアルキル基であり、このようなアルキル基から成る側鎖をモノマー単位当たり少なくとも1個有するモノマーを用いる。 アクリレート系モノマーの好適な例としてはシクロヘキシルアクリレートなど、また、側鎖としてアルキル基を有するアクリレート系モノマーの好適な例としては、2−エチルヘキシルアクリレート、1,3,3−トリメチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。

    このモノマーが、架橋剤とともに重合に供されることにより、高分子ネットワークが形成される。 この架橋剤は、液晶性又は非液晶性の化合物のいずれでもよく、用いたモノマーに対応してそのモノマー分子間を結合して網状構造を形成し得るような反応性部位を有するものを使用すればよい。 例えば、本発明の好ましい態様に従いモノマーとしてアクリレート系モノマーを用いる場合には、架橋剤として液晶性のジアクリレートモノマーを使用することもできる。

    一方、前記高分子安定化ブルー相液晶材料を構成している低分子液晶は、コレステリック相(カイラルネマチック相)と等方相の間で青色相を発現し得る低分子液晶であり、好ましくは、細長く棒状の幾何学形状の分子からなるサーモトロピック液晶であり、液晶表示素子用に開発されている種々の液晶材料から選択して使用することもできる。 このような低分子液晶の例には、ビフェニル、ターフェニル、ビフェニル・シクロヘキシル等の分子構造を含み、不斉原子の存在によりそれ自身がカイラリティー(キラリティー)を有するか、又は、カイラルな物質(カイラルドーパント)が添加されることにより、コレステリック相(カイラルネマチック相)を発現し得る物質であって、そのコレステリック相(カイラルネマチック相)におけるらせんのピッチ長が約500nm以下となるようなものから選ばれる。 これらの低分子液晶は、一般に、複数の種類を混合して使用することが好ましい。

    カイラルドーパントは、液晶にねじれ構造を生じさせるものであり、例えば後述する実施例で使用したZLI−4572や、下記に示すCB15、下記に(a)〜(h)として示す、furo[3,2−b]furan構造を有する誘導体等が挙げられる。

    通常、カイラルドーパントはTNモードのねじれ構造を安定化させたり、コレステリック相やキラルスメクチック相などのヘリカル相を誘起させるために添加剤として用いる。
    本発明の場合、通常のものより短いピッチ長が好ましいので、Helical Twisting Power(HTP)が大きいものを高濃度で添加することが好ましい。 従って、HTPが大きく、液晶に対して溶解性の高いカイラルドーパントが好ましい。

    高分子安定化ブルー相液晶の青色相は、低分子液晶中にモノマーと架橋剤を分散させ、青色相が保持されている温度で重合反応を行うことによって得られる。
    重合は、熱重合及び光重合のいずれでも行うことができるが、熱重合の場合は、青色相が保持される温度と重合温度(加熱温度)とが重なる範囲に限界があり、また、高分子ネットワークの形態が加熱により変化する可能性もあるので、紫外光を用いる光重合によるのが好ましい。 また、重合に際しては、重合速度を速めるために、低分子液晶中に、モノマー、カイラルドーパント、架橋剤に加えて重合開始剤も分散させておくことが好ましい。 光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、チオキサントン系などの各種の開始剤が使用可能であり、具体的には、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどが例示できる。

    高分子安定化ブルー相液晶に対するカイラルドーパントの量を、高分子安定化ブルー相液晶の回折波長が可視領域(380〜750nm)外とする調整は、例えば、以下の手順で行うことができる。
    (1)適当量のカイラルドーパントを加えた高分子安定化ブルー相液晶を用意する。
    (2)この液晶表面を回折格子分光器(例えば、日本分光社製・顕微紫外可視光度計350)を用いて常法に従って回折波長を測定する。
    (3)この回折波長が可視領域外となるカイラルドーパントの量を決定する。
    このようにして測定したカイラルドーパントの量は、カイラルドーパントのHTP(Helical Twisting Power)に依存し、カイラルドーパントと液晶の種類によって異なる。 例えば、液晶がJC1041−XXでありカイラルドーパントがZLI−4572の場合にはZLI−4572の量は約6〜10モル%、同じくカイラルドーパントがCB15の場合にはCB15の量は約85〜95モル%である。

    本発明の液晶表示装置の一例の模式図を図1に示す。 図1に示す液晶表示装置は、高分子安定型ブルー相液晶表示素子LCを2つの偏光板PL1及びPL2で挟んだ構造になっている。 偏光板PL1は、偏光膜10を2枚の透明フィルム14、18で挟んだ構成になっていて、及び偏光板PL2は、偏光膜12を2枚の透明フィルム16、20で挟んだ構成になっている。 2枚の透明フィルムのうち、高分子安定型ブルー相液晶表示素子LC側の透明フィルム14及び16は、表示性能に影響を与えるが、高分子安定型ブルー相液晶表示素子と反対側の透明フィルム18及び20は、偏光膜10及び12の保護フィルムとして機能し、表示性能に通常影響を与えないであろう。 図1の液晶表示装置では、液晶セルの一対の基板の一方に、COA基板24が、他方にカラーフィルタ層のない対向基板が配置されている。 ポリマーネットワーク形成時の紫外線照射を、対向基板22側から行うことにより、架橋反応の進行が十分となり、ポリマーネットワークの架橋度が改善される。 その結果、従来の高分子安定化ブルー相を利用した液晶表示装置と比較して、黒表示時に正面方向に生じる光漏れが軽減され、正面CRが改善されている。

    さらに、光源側(図面中下側に光源が配置されているものとする)の透明フィルム16の|Re(550)|が、20nm以下であり、且つ|Rth(550)|が、90nm以下であると、正面CRをさらに改善できる。 透明フィルム16のレターデーションをさらに軽減することによって、及び好ましくはRe及びRthの波長依存性を制御することよって、黒表示時の正面方向における光漏れがさらに軽減でき、CRがさらに改善されるとともに、斜め方向に生じる色味付きを軽減することができる。 より具体的には、透明フィルム16のReの絶対値|Re(550)|が10nm以下であり、Rthの絶対値|Rth(550)|が30nm以下であるのが好ましい。 より好ましくは、透明フィルム16の|Re(550)|は5nm以下であり、|Rth(550)|は10nm以下である。 また、透明フィルム16は、Re及びRthの波長依存性が小さく、即ち、可視光領域にわたって、Re及びRthの絶対値が上記条件を満足するのが好ましい。 Re及びRthの好ましい波長依存性は、具体的には、|Re(400)−Re(700)|が10nm以下、且つ|Rth(400)−Rth(700)|が35nm以下であり;より好ましくは、|Re(400)−Re(700)|が5nm以下、且つ|Rth(400)−Rth(700)|が10nm以下である。
    また、透明フィルム16のRe(400)は、−5〜5nmであるのが好ましく、Rth(400)は−10〜10nmであるのがより好ましい。
    また、透明フィルム16のRe(700)は、−10〜10nmであるのが好ましく、Rth(700)は、−10〜10nmであるのがより好ましい。

    表示面側に配置される透明フィルム14の光学特性を制御することによって、さらに表示特性を改善することができる。
    好ましい一例は、透明フィルム14も、透明フィルム16に要求される前記光学特性を満足する例である。
    他の好ましい例は、透明フィルム14が、光学的に二軸性を示す例である。 具体的には透明フィルム14のReが200〜350nm程度、且つRthが−88〜88nm程度であり、より好ましくはReが250〜300nm程度、且つRthが−45〜45nm程度である。
    他の好ましい例は、透明フィルム14が、光学的に二軸性を示す2枚構成の例である。 具体的には2枚のうち、一方は透明フィルム14のReが20〜120nm程度、且つRthが125〜225nm程度であり、より好ましくはReが40〜100nm程度、且つRthが145〜205nm程度であり、他方は透明フィルム14のReが−30〜30nm程度、且つRthが50〜150nm程度であり、より好ましくはReが−10〜10nm程度、且つRthが80〜120nm程度である。
    他の好ましい例は、透明フィルム14が、光学的に一軸性を示す2枚構成の例である。 具体的には、2枚のうち、一方は透明フィルム14のReが60〜210nm程度、且つRthが30〜105nm程度であり、より好ましくはReが110〜160nm程度、且つRthが55〜80nm程度であり、他方は透明フィルム14のReが−30〜30nm程度、且つRthが70〜170nm程度であり、より好ましくはReが−10〜10nm程度、且つRthが100〜140nm程度である。

    偏光板PL1及びPL2の外側の保護フィルムである透明フィルム18及び20は、さらにその表面に機能層を有していてもよい。 例えば、透明フィルム20は、そのバックライト側の表面に、防汚性フィルム、アンチリフレクションフィルム、アンチグレアフィルム、アンチスタチックフィルム等の機能性フィルムを有していてもよく、同様に、透明フィルム18はその表面に、防汚性フィルム、アンチリフレクションフィルム、アンチグレアフィルム、アンチスタチックフィルム等の機能性フィルムを有していてもよい。

    図1の液晶表示装置は、背面側偏光板(図1では偏光板PL2)のさらに外側に、バックライトユニット(不図示)を備える。 本発明では、バックライトユニット中の光源がLED光源であるのが好ましく、直下型LED光源であるのがより好ましい。 LED光源を利用すると、黒透過率がさらに低くなり、正面CRがさらに改善される。

    液晶セルLCは、一対の基板22及び24と、該基板の間に高分子安定型ブルー相液晶材料が封入された液晶セルであって、電界が基板面に対して平行に印加される液晶表示素子である。 電界は一方の基板面に相互に組み込まれた櫛歯型の2つの電極により印加されることが好ましい。 実際には、前記2つの電極の一方を薄膜トランジスタ(TFT)のソース電極とし、他方を共通電極として、TFT動作によって前記電界をON−OFFすることが実用的な方法となる。 即ち、この電界を、一方の基板面内にTFTと共通電極を組み込み、前記TFTのオン−オフによって、入力信号に応じた電界としてTFT電極と共通電極の間に印加することが好ましい。

    液晶セルLCの一対の基板22及び24のうち、光源側に配置される基板24は、カラーフィルタ・オン・アレイ基板であり、図中省略したが、TFTアレイ上にカラーフィルタ層を有する。 COA基板では、カラーフィルタ層の厚みは、従来型のカラーフィルム層(1〜2μm程度)より厚く、2〜4μm程度が一般的である。 これは画素電極の端部と配線の間にできる寄生容量を抑制するためである。 本発明の液晶表示装置が有するカラーフィルタ層も2〜4μm程度の厚みが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。 また、COA基板を利用して液晶セルを製造する際は、カラーフィルタ層上の画素電極をパターニングする必要があり、エッチング液や剥離液への耐性が要求される。 この目的で、膜厚を厚めに調整したカラーフィルタ材料(着色感光性組成物)を用いるが、通常のカラーフィルタ材料で形成したカラーフィルタ層+オーバーコート層という2層構成をとることもある。 本発明には、いずれの構成のCOA基板を用いてもよい。

    図2に、図1中のCOA基板24の一例の断面概略図を示す。
    図2中に示すCOA基板24は、ガラス基板などの光透過性を有する絶縁性基板241と、その上に、アクティブエリアに相当する領域において、画素毎に配置されたスイッチング素子242、画素毎に配置されたカラーフィルタ層243R、243G、243Bを備えている。 カラーフィルタ層243R,243G、243Bは、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)にそれぞれ着色された複数の着色層からなり、それぞれ赤色、緑色、及び青色の各色成分の光を透過する。 COA基板は、さらにその上に、スイッチング素子242に接続された、ITOなどの光透過性の金属材料から形成された画素電極244を備えている。 さらに、これらの部材の表面は、誘電率の高い絶縁層245によって覆われていて、平坦化されている。
    なお、本明細書では、COA基板の構造の詳細については省略する。 COA基板の詳細な構造については、上記特許文献6及び7の他、特開2007−240544号公報、特開2004−163979号公報、特開2008−15375号公報等を参照することができる。
    また、COAの液晶表示装置におけるブラックマトリクスの位置は、ポリマーネットワークの架橋度向上の観点ではCOA基板に位置することが好ましいが、ブラックマトリクスの影響は小さいため、対向のガラス基板に配置されていてもよく、液晶セル内のいずれの位置に配置されていてもよい。

    図3に、図1中の対向基板22の一例の概略断面図を示す。
    図3中に示す対向基板22は、ガラス基板などの光透過性を有する絶縁性基板からなり、カラーフィルタ層やアレイ部材等の光透過を妨げる部材は存在しない。 よって、ポリマーネットワーク形成時に、対向基板22側から紫外線を照射すれば、架橋反応を十分に進行させることができ、安定的にポリマーネットワークを形成することができる。 但し、対向基板22は図3の構成に限定されるものではなく、カラーフィルタ層やアレイ部材が配置されていない限り、いかなる構成であってもよい。

    本発明では、カラーフィルタを有する態様においては、カラーフィルタは、アレイ基板上に配置することが必要である。 本発明に使用可能なカラーフィルタは、通常の液晶表示装置が有するカラーフィルタと同様、基板の画素部位に複数の異なる色(例えば赤、緑、青の光の3原色、透明、黄色、シアンなど)を配列したカラーフィルタである。 その作製方法は様々であり、例えば、着色のための材料(有機顔料、染料、カーボンブラックなど)を用い、カラーレジストと呼ばれる着色感光性組成物(無色の場合もある)を調製し、これを基板の上に塗布して層を形成し、フォトリソグラフィ法によりパターン形成するのが一般的である。 前記着色感光性組成物を基板の上に塗布する方法も様々であり、例えば初期には、スピン・コーター法が採用され、省液の観点で、スリット&スピン型コーター法が採用され、現在では、スリットコーター法が一般的に採用されている。 その他にロールコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法などがある。 また近年では、フォトリソグラフィにより離画壁とよばれるパターンを形成した後に、インクジェット方式により画素の色を形成することも行なわれている。 この他に、着色非感光性組成物と感光性ポジ型レジストを組み合わせた方法、印刷法、電着法、フィルム転写法によるものなどが知られている。 本発明に利用するカラーフィルタは、いずれの方法で作製されたものであってもよい。

    カラーフィルタ形成用の材料についても特に制限はない。 着色材料として、染料、有機顔料、無機顔料等、いずれを用いることもできる。 染料は、高CR化の要求から検討されていたが、近年は有機顔料の分散技術が進歩し、ソルトミリング法などで微細に砕いたブレークダウン顔料や、ビルドアップ法による微細化顔料などが高CR化に用いられている。 本発明には、いずれの着色材料を用いてもよい。
    なお、上記した通り、フィールドシーケンシャル駆動方式の態様では、カラーフィルタは不要である。

    液晶セルのアレイ基板及びその対向基板に利用される絶縁性の基板としては、透明基板が好ましく、ガラス、プラスチックフィルム、光学結晶等を用いることができる。
    これら一対の基板間の距離は通常2〜100μm程度である。
    印加する電界は、通常1000〜100000V/cm程度である。 電界は、実質的に基板に対し平行(又は表示方向に垂直)であればよい。
    電界の印加方法に特に制限はないが、一方の基板面に櫛歯型の電極2つを相互に組み込む構造が簡便である。 この櫛歯型電極当り、櫛歯の数は約2〜100個、長さ約1〜10000μm、幅約1〜50μm、櫛歯間距離約1〜100μmが好ましい。

    本発明では、基板に櫛歯型の電極2つを同一面内に相互に組み込むように付け、それらに電圧を印加することで櫛歯に対して垂直に、基板面に平行に電界を印加してもよい。 もう一方の基板は電極のないガラス板であり、薄膜などのスペーサを介して、対向配置させる。 その結果、スペーサ厚のギャップが一対の基板間にできるので、そのギャップに液晶材料を注入することにより、液晶表示素子LCを作製できる。
    向かい合った二つの櫛歯電極に電圧を印加すると、電界方向すなわち櫛歯線に垂直方向を光軸とする一軸の屈折率異方性が生じる。

    二枚の偏光板PL1及びPL2の間にこの液晶セルLCを配置し、各偏光板PL1及びPL2の吸収軸10a及び12aを直交させ(いわゆるクロスニコル状態)、電界方向をそれぞれの吸収軸に対して45度にすれば、電界ゼロで透過率ゼロ(レターデーションゼロなので)、電界印加で光透過(レターデーションが生じたセルが波長板のように作用するため)となる。 したがって、電圧ON−OFFで明−暗のCRをつけることができる。 液晶表示素子のレターデーションが透過光の波長の半分になれば、透過率最大になる。

    上記した通り、液晶表示素子LCの櫛歯電極の櫛の長辺の方向は、偏光板PL1及びPL2の吸収軸10a及び12aと45度になっているとレターデーションの効率が最大になり最も好ましい。 また、+45度と−45度の2つの領域を設けると、電圧印加時にドメインに分割させることができ、方位角方向により均一な表示特性が得られるため好ましい。 例えば、図5では、電極の構成は、右半分と左半分で2つのドメインになっており、また後述する図8ではジグザグ形の櫛歯電極を用いて2つのドメインを得ることができる。

    本発明に用いられる電極構造としては、同一面スイッチングが可能な電極構造である限り、特に制限はない。 例えば、図4の断面図に示すように、コモン電極とピクセル電極がどちらも櫛歯電極になっている電極構造であっても、図5の断面図に示すように面電極のコモン電極と櫛歯電極のピクセル電極との間に絶縁層を挟んだ電極構造であってもよい。

    図7(a)は、電界無印加状態(OFF状態)における本実施の形態にかかる表示素子の要部の概略構成を模式的に示す断面図であり、図7(b)は電界印加状態(ON状態)における本実施の形態にかかる表示素子の要部の概略構成を模式的に示す断面図である。 また、図7は、本実施の形態にかかる表示素子を用いる表示装置の要部の概略構成の一例を示すブロック図である。 本実施の形態にかかる表示素子は、駆動回路とともに表示装置に配されて用いられる。

    図8は、画素がマトリクス状に配された表示素子と、駆動回路としてのソースドライバおよびゲートドライバと、電源回路等とを備えている。

    また、上記表示素子には、複数のデータ信号線と、各データ信号線にそれぞれ交差する複数の走査信号線とが設けられ、これらデータ信号線および走査信号線の組み合わせ毎に、上記画素が設けられている。

    上記電源回路は、上記ソースドライバおよびゲートドライバに、上記表示素子にて表示を行うための電圧を供給し、これにより、上記ソースドライバは、上記表示素子のデータ信号線を駆動し、ゲートドライバは、表示素子の走査信号線を駆動する。

    上記各画には、図示しないスイッチング素子が設けられている。 該スイッチング素子としては、例えばFET(電界効果型トランジスタ)あるいはTFT(薄膜トランジスタ)等が用いられ、上記スイッチング素子のゲート電極が走査信号線に、ソース電極がデータ信号線に、さらに、ドレイン電極が、図示しない画素電極に接続されている。 これにより、上記各画素において、走査信号線が選択されると、スイッチング素子が導通し、図示しないコントローラから入力される表示データ信号に基づいて決定される信号電圧が、ソースドライバによりデータ信号線を介して表示素子に印加される。 表示素子は上記走査信号線の選択期間が終了してスイッチング素子が遮断されている間、理想的には、遮断時の電圧を保持し続ける。

    本実施の形態において、上記表示素子は、電界(電圧)印加時または電界(電圧)無印加時に光学的等方性(巨視的、具体的には、可視光波長領域、つまり、可視光の波長スケール、もしくは、それよりも大きなスケールで見て等方であればよい)を示す媒質(液晶性媒質(液晶材料)、誘電性物質)を用いて表示を行うようになっている。

    図7(a)・(b)に示す表示素子は、媒質保持手段(光学変調層保持手段)として、互いに対向して配置された一対の基板を備え、これら一対の基板間に、光学変調層として、電界の印加により光学変調する媒質(以下、媒質Aと記す)からなる媒質層が挟持されていると共に、これら一対の基板の外側、つまり、これら両基板の対向面とは反対側の面に、偏光板がそれぞれ設けられている構成を有している。

    上記一対の基板のうち、少なくとも一方の基板は透光性を有する、例えばガラス基板等の透明な基板からなり、これら一対の基板のうち、一方の基板における他方の基板との対向面には、図7(b)に示すように上記基板1に略平行な電界(横向きの電界)を上記媒質層に印加するための電界印加手段(電界印加部材)である櫛歯状の櫛歯電極が、図6に示すようにこれら櫛歯電極の櫛歯部分(櫛歯電極)が互いに噛み合う方向に対向配置されている。 また、図9に示す様に、ジグザグ形の櫛歯電極が、対向配置されている。

    上記櫛歯電極は、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の透明電極材料等の電極材料からなり、例えば線幅5μm、電極間距離(電極間隔)5μm、厚み0.3μmに設定されている。 但し、上記電極材料並びに線幅および電極間距離、および厚みは単なる一例であり、これに限定されるものではない。

    本発明では、例えば、上記櫛歯電極が設けられた基板を、図示しないシール剤により、必要に応じて、例えば図示しないプラスチックビーズやガラスファイバースペーサ等のスペーサを介して貼り合わせ液晶層を形成する。

    本実施の形態に用いられる液晶は、電界を印加することにより、光学的異方性の程度が変化する媒質である。 物質中に外部から電界E jを加えると、電気変位D ij =ε ij・E jを生じるが、そのとき、誘電率(ε ij )にもわずかな変化が見られる。 光の周波数では屈折率(n)の自乗は誘電率と等価であるから、上記媒質Aは、電界の印加により、屈折率が変化する物質と言うこともできる。

    なお、従来の液晶表示素子は、このように、電界印加に伴う液晶分子の回転による配向方向の変化のみを利用して表示を行うものであり、液晶分子が一定方向に整列した状態で、揃って回転するため、液晶固有の粘度が応答速度に大きく影響していた。 これに対して、本実施の液晶表示装置は、媒質における光学的異方性の程度の変化を用いて表示を行う。 したがって、従来の液晶表示素子のように、液晶固有の粘度が応答速度に大きく影響するといった問題がないので、高速応答を実現することができる。 また、高速応答性であるので、フィールドシーケンシャルカラー駆動方式を利用することも好ましい。 フィールドシーケンシャル駆動方式については、特開2005−181667号公報、特開2009−42446号公報、特開2007−322988号公報、及び特許第3996178号公報等に詳細な記載があり、参照することができる。 フィールドシーケンシャル駆動では、独立した3原色光が順次発光するバックライトユニットが利用される。 光源としてLEDを備えたバックライトユニットが好ましく、例えば、赤、緑、青の3色を発光するLED素子を光源として備えるバックライトユニットが好ましく利用される。

    次に、本発明の液晶表示装置に用いる第1及び第2の透明フィルム(図1中では、透明フィルム16及び透明フィルム14)について説明する。
    第1及び第2の透明フィルムは偏光板の保護フィルムとしての機能を兼ねることが、液晶表示装置の薄型化の点から好ましい。 よって偏光板の保護フィルムとして利用されている種々の材料からなるポリマーフィルムを用いることができる。

    [セルロースアシレート系フィルム]
    セルロースアシレート系フィルムは、偏光板加工適性が良好であり、第1及び第2の透明フィルムとして使用するのに適する。 また、後述するレターデーション低減剤を添加することによって、第1の透明フィルムに要求される特性、即ち低Re及び低Rth、を満足するセルロースアシレート系フィルムを作製することができる。 さらに波長分散調整剤を添加することによって、Re及びRthが適切な波長分散特性、具体的には、|Re(400)−Re(700)|が10nm以下、且つ|Rth(400)−Rth(700)|が35nm以下、を示すセルロースアシレート系フィルムが得られる。
    また、レターデーション上昇剤を添加することによって、及び/又は延伸処理を施すことによって、光学的に一軸性又は二軸性のセルロースアシレート系フィルムを作製することができ、当該セルロースアシレート系フィルムは、第2の透明フィルムとして使用することができる。

    セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあげられ、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。 これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができるが、これらに限定されるものではない。

    セルロースアシレートは、セルロースの水酸基がアシル化されたものである。 アシル基としては、炭素原子数2〜22のアシル基のいずれであってもよい。 セルロース中の水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度が得られる。 測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。

    セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.00〜3.00であることが好ましい。 さらには置換度が2.75〜3.00であることがより好ましく、2.85〜3.00であることがさらに好ましい。

    セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく、単一でも2種類以上の混合物でもよい。 例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル及び芳香族アルキルカルボニルエステル等が挙げられる。 これらは、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。 これらの好ましいアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、へプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。 これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基がより好ましい。

    上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基のうちで、実質的にアセチル基、プロピオニル基及びブタノイル基の少なくとも2種類からなる場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性を低下できる。 よって、第1の透明フィルムとして用いるセルロースアシレートフィルムの作製には、原料として、アシル置換度が2.60〜3.00のセルロースアシレートを用いるのが好ましく、アシル置換度が2.65〜3.00のセルロースアシレートを用いるのがより好ましい。 第2の透明フィルムとして用いるセルロースアシレートフィルムの原料として用いるセルロースアシレートが有する置換基の種類、及びその置換度は、要求される光学特性に応じて決定されるであろう。 例えば、フェニル基等の芳香族基を含むセルロースアシレートを用いることもできる。

    セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であるのが好ましく、セルロースアセテートについては、180〜550がより好ましく、180〜400がさらに好ましく、180〜350が特に好ましい。 重合度を一定以下とすることによりセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になるのをより効果的に防止することができる。 重合度を一定以上とすることにより、作製したフィルムの強度が低下してしまうのをより効果的に防止できる。 平均重合度は、例えば、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。 この方法は、特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
    また、セルロースアシレートの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。 具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることがよりさらに好ましい。

    低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。 低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。 低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。 なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。 硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。 本発明で用いることができるセルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。 一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。 セルロースアシレートの含水率を前記範囲とするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。 セルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。

    単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。

    セルロースアシレートフィルム中には、種々の添加剤(例えば、光学異方性を低下させる化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)から選択される少なくとも1種を添加することができる。
    第1の透明フィルムとして利用するセルロースアシレートフィルムを作製するためには、低Re及び低Rthとするために、光学異方性を低下させる化合物を用いることが好ましい。 光学異方性を低下させる化合物の例には、下記式を満足する化合物が含まれる。
    (Rth (A) −Rth (0) )/A≦−1.0
    0.01≦A≦30
    式中、Rth (A)は、光学異方性を低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)を表し、Rth (0)は、該フィルムであって、光学異方性を低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)を表し、Aは、フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの、光学異方性を低下させる化合物の質量(%)を表す。
    光学異方性を低下させる化合物は、下記式を満足するのがより好ましい。
    (Rth (A) −Rth (0) )/A≦−2.0
    0.1≦A≦20

    前記光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たない化合物から選択されるのが好ましい。 具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造を有する化合物が好ましい。
    第1の透明フィルムとして利用するセルロースアシレートフィルムを作製する際には、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物を用いることが好ましい。 logP値が7以下の化合物を採用することにより、セルロースアシレートとの相溶性がより良くなり、フィルムの白濁や粉吹きをより効果的に防止することができる。 また、logP値が0以上の化合物を採用することにより、親水性が高いために、セルロースアセテートフィルムの耐水性が悪化してしまうのをより効果的に防止できる。 logP値としてさらに好ましい範囲は1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
    なお、オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。 また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。 計算方法としては、Crippen's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto's fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.− Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。 ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen's fragmentation法により判断することが好ましい。

    光学異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。 また光学異方性を低下させる化合物は、分子量が150〜3000であることが好ましく、170〜2000であることがより好ましく、200〜1000であることがさらに好ましい。 これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。 光学異方性を低下させる化合物は、好ましくは、温度25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、温度25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。 また光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
    光学異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートの0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
    光学異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
    光学異方性を低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。

    光学異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80〜99%であるのが。 光学異方性を低下させる化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面及び中心部の化合物量を測定して求めることができる。

    光学異方性を低下させる化合物の第一の例は、下記一般式(13)で表される化合物である。

    式(13)中、R 11はアルキル基又はアリール基を表し、R 12及びR 13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。 また、R 11 、R 12及びR 13の炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。 R 11 、R 12及びR 13は置換基を有していてもよく、置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が特に好ましい。 また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、t−アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ビシクロオクチル基、ノニル基、アダマンチル基、デシル基、t−オクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、ジデシル基)が特に好ましい。 アリール基としては炭素原子数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、ビナフチル基、トリフェニルフェニル基)が特に好ましい。
    以下に、一般式(13)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、これらの具体例に限定されるものではない。 尚、化合物中、Pr iはイソプロピル基を意味する(以下、同じ)。

    前記光学異方性を低下させる化合物の例には、下記一般式(18)で表される化合物が含まれる。

    一般式(18)中、R 14はアルキル基又はアリール基を表し、R 15及びR 16はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
    14は、フェニル基又は、環状アルキル基が好ましい。 R 15及びR 16は、それぞれ、フェニル基又はアルキル基が好ましい。 アルキル基としては、環状アルキル基及び直鎖のアルキル基のいずれも好ましい。
    これらの基は、置換基を有していてもよく、置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が特に好ましい。
    一般式(18)で表される化合物は、より好ましくは一般式(19)で表される化合物である。

    一般式(19)中、R 114 、R 115及びR 116はそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表す。 アルキル基は、環状アルキル基及び直鎖のアルキル基のいずれも好ましいく、アリール基はフェニル基が好ましい。
    以下に、一般式(18)(及び一般式(19))で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、これらの具体例に限定されるものではない。 尚、化合物中、Bu iはイソブチル基を意味する。

    第1の透明フィルムとして利用するセルロースアシレートフィルムの作製には、レターデーションの波長分散を低下させる化合物(以下「波長分散調整剤」ともいう)を利用するのが好ましい。 セルロースアシレートフィルムのRthの波長分散性を上記好ましい範囲とするためには、下記式(VII)で表されるRthの波長分散ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を、下記2式を満たす範囲で少なくとも1種含有することが好ましい。
    (ΔRth (B) −ΔRth (0) )/B≦−2.0
    0.01≦B≦30
    ここで、ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|であり、ΔRth (B)は、波長分散調整剤をB質量%含有するフィルムのΔRthを意味し、ΔRth (0)は波長分散調整剤を含まない同フィルムのΔRthを意味する。
    波長分散調整剤は、下記式を満足するのがより好ましい。 (ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−3.0
    0.05≦B≦25
    また、波長分散調整剤は、下記式を満足するのがさらに好ましい。
    (ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−4.0
    0.1≦B≦20

    上記の波長分散調整剤は、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|及び|Rth(400)−Rth(700)|を低下させ得る化合物を少なくとも1種、セルロースアシレートの固形分に対して0.01〜30質量%添加させるのが好ましい。

    セルロースアシレートフィルムのRe及びRthの値は、一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性となる。 従って、相対的に小さい短波長側のRe及びRthを大きくすることによって波長分散性を、平滑にすることが要求される。 一方、波長200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は、短波長側よりも長波長側の吸光度が大きいという波長分散特性を持つ。 この化合物自身がセルロースアシレートフィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe及びRthの波長分散は、吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。

    従って上述したような、波長200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe及びRthの波長分散が短波長側が大きいと想定されるものを用いることによって、セルロースアシレートフィルムのRe及びRthの波長分散を調製することができる。 このためには、波長分散調整剤として用いる化合物は、セルロースアシレートに十分均一に相溶することが要求される。 このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましく、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。

    また、前記波長分散調整剤として用いる化合物は、セルロースアシレートフィルムの分光透過率を上昇させないものであることが要求される。 本発明に透明フィルムとして用いるセルロースアシレートフィルムは、波長380nmにおける分光透過率が、45%〜95%であるのが好ましく、且つ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることが好ましい。

    前記波長分散調整剤は、セルロースアシレートフィルムの作製の工程、例えば溶液流延法で作製する場合には、ドープ流延、及び乾燥の工程で揮散しないことが好ましい。
    前記波長分散調整剤は揮散性の観点から、分子量が250〜1000であることが好ましく、より好ましくは260〜800であり、さらに好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。 これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。

    前記波長分散調整剤の添加量は、セルロースアシレートに対して、0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましく、0.2〜10質量%であることが特に好ましい。
    またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
    また、セルロースアシレートフィルムを溶液流延工程で作製する場合には、これら波長分散調整剤を添加する時期は、ドープ作製工程中のいずれであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。

    前記波長分散調整剤の具体例には、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが含まれるが、これらに限定されるものではない。

    前記波長分散調整剤として使用可能なベンゾトリアゾール系化合物の例には、下記一般式(101)で表される化合物が含まれる。

    一般式(101)
    11 −Q 12 −OH
    式(101)中、Q 11は含窒素芳香族ヘテロ環を表し、Q 12は芳香族環を表す。

    11は含窒素方向芳香族へテロ環を表し、好ましくは5〜7員環の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5又は6員環の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、セレナゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンゾセレナゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、ナフトチアゾール環、ナフトオキサゾール環、アザベンズイミダゾール環、プリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、トリアザインデン環、テトラザインデン環等があげられ、さらに好ましくは、5員環の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズオキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環が好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾール環である。

    12で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。 また、これらは単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。
    芳香族炭化水素環は、好ましくは炭素数6〜30の単環又は2環の芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜20の単環又は2環の芳香族炭化水素環であり、さらに好ましくは炭素数6〜12の単環又は2環の芳香族炭化水素環であり、最も好ましくはベンゼン環である。
    芳香族ヘテロ環は、好ましくは窒素原子又は硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。 ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアゾール環、トリアジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、チアゾリン環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサゾリン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、テトラゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンゾトリアゾール環、テトラザインデン環などが挙げられる。 芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環である。
    12で表される芳香族環は、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。
    11及びQ 12はそれぞれ置換基を有してもよく、置換基としては、後述の置換基Tが好ましい。
    置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。 )、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。 )、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。 これらの置換基はさらに置換されてもよい。 また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。 また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。

    一般式(101)で表される化合物の中でも、下記一般式(101−A)で表される化合物が好ましい。

    式(101−A)中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、R 6 、R 7 、及びR 8はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。

    1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、R 6 、R 7 、R 8 、及びR 9はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。 またこれらの置換基はさらに別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。 R 1及びR 3は、それぞれ、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。

    2及びR 4は、それぞれ、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。

    5及びR 8は、それぞれ、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。

    6及びR 7は、それぞれ、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。

    一般式(101)で表される化合物の中でも、下記一般式(101−B)で表される化合物が好ましい。

    式(101−B)中、R 1 、R 3 、R 6及びR 7は、一般式(101−A)中のそれらとそれぞれ同義であり、また好ましい範囲も同様である。

    以下に一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。

    以上例に挙げたベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320を越えるものが、保留性の点で有利である。

    また前記波長分散調整剤として使用可能なベンゾフェノン系化合物の例には、一般式(102)で表される化合物が含まれる。

    一般式(102)中、Q 1及びQ 2は、それぞれ、芳香族環を表す。 XはNR(Rは水素原子又は置換基を表す。)、酸素原子又は硫黄原子を表す。

    1又はQ 2で表される芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。 また、これらは単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。
    1及びQ 2で表される芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、さらに好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)さらに好ましくはベンゼン環である。
    1及びQ 2で表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のどれかひとつを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。 ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアゾール環、トリアジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、チアゾリン環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサゾリン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、テトラゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンゾトリアゾール環、テトラザインデン環などが挙げられる。 芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環である。
    1又はQ 2で表される芳香族環は、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、さらに好ましくは置換又は無置換のベンゼン環である。
    1又はQ 2は、さらに置換基を有してもよく、前述の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。 また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。

    XはNR(Rは水素原子又は置換基を表す。置換基としては上述の置換基Tが適用できる。)、酸素原子又は硫黄原子を表し、Xとして好ましくは、NR(Rとして好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基はさらに置換してもよい。)、又は酸素原子であり、特に好ましくは酸素原子である。

    一般式(102)で表される化合物の中でも、下記一般式(102−A)で表される化合物が好ましい。

    一般式(102−A)中、R 21 、R 22 、R 23 、R 24 、R 25 、R 26 、R 27 、R 28 、及びR 29はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。

    21 、R 23 、R 24 、R 25 、R 26 、R 28 、及びR 29はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。 またこれらの置換基はさらに別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。

    21 、R 23 、R 24 、R 25 、R 26 、R 28 、及びR 29は、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。

    22として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、さらに好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。

    27として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、さらに好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。

    一般式(102)としてより好ましくは下記一般式(102−B)で表される化合物である。

    一般式(102−B)中、R 10は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表す。

    10は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表し、これらは置換基を有していてもよい。 置換基としては前述の置換基Tが適用できる。
    10として好ましくは、アルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数5〜12のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換又は無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。

    一般式(102)で表される化合物は、特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。
    以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。

    また、本発明に用いられる波長分散調整剤として使用可能なシアノ基を含む化合物の例には、一般式(103)で表される化合物が含まれる。

    一般式(103)中、Q 31及びQ 32はそれぞれ独立に芳香族環を表す。 X 31及びX 32はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、又は芳香族ヘテロ環を表す。
    31及びQ 32で表される芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。 また、これらは単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。

    芳香族炭化水素環として好ましくは、炭素数6〜30の単環又は2環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環であり、さらに好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環であり、最も好ましくはベンゼン環である。

    芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。 ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアゾール環、トリアジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、チアゾリン環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサゾリン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、テトラゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンゾトリアゾール環、テトラザインデン環などが挙げられる。 芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環である。

    31及びQ 32で表される芳香族環は、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。
    31及びQ 32はさらに置換基を有してもよく、上述の置換基Tが好ましい。

    31及びX 32は水素原子又は置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。 X 31及びX 32で表される置換基は前述の置換基Tを適用することができる。 また、X 31及びX 32はで表される置換基はさらに他の置換基によって置換されてもよく、X 31及びX 32はそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。

    31及びX 32として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基及びこれらを組み合せたもの)である。

    一般式(103)で表される化合物の中でも、下記一般式(103−A)で表される化合物が好ましい。

    一般式(103−A)中、R 31 、R 32 、R 33 、R 34 、R 35 、R 36 、R 37 、R 38 、R 39及びR 30はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。 X 31及びX 32は一般式(103)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。

    31 、R 32 、R 34 、R 35 、R 36 、R 37 、R 39及びR 30はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。 またこれらの置換基はさらに別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。

    31 、R 32 、R 34 、R 35 、R 36 、R 37 、R 39及びR 30は、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。

    33及びR 38は、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、さらに好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。

    一般式(103)は、より好ましくは下記一般式(103−B)で表される化合物である。

    一般式(103−B)中、R 33及びR 38はそれぞれ、一般式(103−A)中のそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。 X 33は水素原子、又は置換基を表す。

    33は、水素原子、又は置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用でき、また、可能な場合はさらに置換基で置換されてもよい。 X 33は、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR 301 (R 301は、炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基及びこれらを組み合せたもの))である。

    一般式(103)としてさらに好ましくは一般式(103−C)で表される化合物である。

    一般式(103−C)中、R 33及びR 38は、一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。 R 302は炭素数1〜20のアルキル基を表す。

    302は、好ましくはR 33及びR 38の両方が水素原子の場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。

    302は、好ましくはR 33及びR 38が水素以外の場合には、一般式(103−C)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。

    前記一般式(103)で表される化合物は、Jounal of American Chemical Society 63巻 3452頁(1941)記載の方法によって合成できる。

    以下に、一般式(103)で表される化合物の具体例を挙げるが、下記具体例に何ら限定されるものではない。

    (レターデーション上昇剤)
    第2の透明フィルム用のセルロースアシレート系フィルムの例には、上記した通り、光学的に二軸性又は一軸性のフィルムが含まれる。 この様な特性を満足するセルロースアシレート系フィルムを作製する場合は、フィルム中に、レターデーション上昇剤を添加するのが好ましい。
    セルロースアシレート系フィルムのレターデーションを上昇させる作用のある添加剤(レターデーション発現剤)としては、特開2004−50516号公報の11〜14頁に記載の棒状芳香族化合物を好ましく用いることができる。
    また、セルロースアシレート系フィルムのレターデーション上昇剤として使用可能な化合物の例には、特開2002−277632号公報の[0016]〜[0024]に記載の化合物が含まれる。
    また、セルロースアシレート系フィルムのレターデーション上昇剤として使用可能な化合物の例には、特開2002−182215号公報の[0033]〜[0041]に記載の化合物が含まれる。

    また、前記レターデーション上昇剤は、単独あるいは2種類以上混合して用いることができる。 レターデーション発現剤の添加量はセルロースアシレート100重量%に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がさらに好ましい。

    (マット剤微粒子)
    前記透明フィルム用のセルロースアシレート系フィルム中には、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。 本発明に使用可能な微粒子としては、二酸化珪素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。 これらの微粒子の中ではケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、二酸化珪素がより好ましい。 二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子サイズが1nm〜20nm、かつ、見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。 1次粒子の平均径が5〜25nmのものがフィルムのヘイズを下げることができて、より好ましい。 見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。 見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。

    これらの微粒子は、通常、平均粒子サイズが0.05〜2.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.05〜2.0μmの凹凸を形成させる。 2次平均粒子サイズは0.05μm〜1.0μmが好ましく、0.1μm〜0.7μmがより好ましく、0.1μm〜0.4μmがさらに好ましい。 なお、ここでいう、1次若しくは2次粒子サイズはフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。 また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとする。

    二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。 酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。

    これらの中でアエロジル200VおよびアエロジルR972Vは、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。

    マット剤の混合方法は特に限定されるものではないが、マット剤分散剤と添加剤溶液の混合、及びセルロースアシレート液等との混合にはインラインミキサーを使用することが好ましい。 二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましく、15〜20質量%がさらに好ましい。 分散濃度が高い方が同量の添加量に対する濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。 最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は0.001〜1.0質量%が好ましく、0.005〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.1質量%がさらに好ましい。

    (セルロースアシレート系フィルムの製造方法)
    前記透明フィルム用セルロースアシレート系フィルムの製造方法について特に制限はない。 種々のフィルム成形方法によって製造することができ、例えば、溶液製膜法及び溶融製膜法のいずれの方法でも製造することができる。 溶液製膜法が好ましい。

    [アクリル系ポリマーフィルム]
    次に、第1及び第2の透明フィルムとして使用可能な、アクリル系ポリマーフィルムについて説明する。 アクリル系ポリマーを主成分とするアクリル系ポリマーフィルムは、高光透過率性であり、及び低複屈折性であることが知られている。 よって、第1の透明フィルムに要求される、低Re及び低Rthを達成可能である。 さらにアクリル系ポリマーフィルムは、低波長分散性を示し、よって第1の透明フィルムとして適切な波長分散特性、具体的には、|Re(400)−Re(700)|が10nm以下であり、且つ|Rth(400)−Rth(700)|が35nm以下、さらに好ましくは|Re(400)−Re(700)|が5nm以下であり、且つ|Rth(400)−Rth(700)|が10nm以下、を示すフィルムが得られる。

    アクリル系ポリマーフィルムは、(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種から誘導される繰り返し単位を有するアクリル系ポリマーを主成分とするフィルムである。 当該アクリル系ポリマーフィルムの好ましい例は、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位とともに、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーである。 このアクリル系ポリマーについては、特開2008−9378号公報に詳細な記載があり、参照することができる。

    [その他のポリマーフィルム]
    その他、前記透明フィルムとして、正の固有レターデーションと負の固有レターデーション成分とを併せ持つ材料を含有するポリマーフィルムを用いることができる。
    (株)帝人製「ピュアエース」等の変性ポリカーボーネートフィルム、特開2003−292639号公報および特開2003−321535号公報に開示されるノルボルネン系ポリマーフィルム等も好ましい。 ノルボルネン系ポリマーフィルム等の環状オレフィン系ポリマーフィルムは、低透湿性及び高透過性である。 環状オレフィン系ポリマーフィルムは、製造条件(製膜条件、延伸条件)等を調整することで、低Re及び低Rth、又は一軸性及び二軸性の光学特性を発現し得るので、第1及び第2の透明フィルムとして利用することが可能である。

    前記第2の透明フィルムの一例は、Nz(但し、Nz=Rth(550)/Re(550)+0.5)が0.5付近の透明フィルムである。 この特性を示す透明フィルムのレターデーションは逆分散性であることが望ましい。 すなわち、波長が大きいほどレターデーションが大きくなっていることが望ましい。 更に望ましくは、レターデーションが波長に比例することが望ましい。 このようにすると、可視光における広い範囲において黒状態の光漏れが抑えられる。

    また、Nzが0.5付近の透明フィルムを2枚用いてもよい。 2枚の透明フィルムの双方のレターデーションが波長の4分の1程度であることが望ましい。 または、2枚の透明フィルムは異なる光学特性であってもよいが、そのレターデーションの和が波長の2

    分の1程度であることが望ましい。 このようにすると、透明フィルムの1枚あたりのレターデーションを小さくすることができるため透明フィルムの製造適正範囲が広がり、面状ムラ等の欠陥が生じ難くなるというメリットがある。 またフィルムの厚さを小さくすることができるため低コストで、透明フィルムを製造することが可能になる。

    また、2枚の透明フィルムのレターデーションを波長の2分の1程度にして、且つ一方の透明フィルムのNzが0.25程度、他方の透明フィルムのNzが0.75程度にすることが好ましい。 このようにすると、フィルムの波長分散が原因で発生する光漏れを補償することができ、可視光における広い範囲において黒状態の光漏れが抑えられる。

    また、前記透明フィルム(特に第2の透明フィルム)は、液晶組成物からなる光学異方性膜であってもよく、また、該膜とポリマーフィルムとの積層体であってもよい。 前記光学異方性膜の作製には、棒状液晶及び円盤状液晶等、種々の液晶材料から選択した1種又は2種以上を用いることができる。 例えば、棒状液晶を含有する硬化性液晶を垂直配向状態に固定してなる光学異方性膜などを利用することができる。

    [延伸処理]
    本発明に用いる透明フィルム(特に第2の透明フィルム)は、延伸処理されたフィルムであってもよい。 延伸処理によりフィルムに所望のレターデーションを付与することが可能である。 透明フィルムの延伸方向は幅方向(横延伸)が好ましい。 幅方向に延伸することにより、ロール ツー ロールで偏光子の透過軸と透明フィルムの遅相軸が平行な偏光板を製造することが可能となる。
    幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。

    フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。 フィルムは、乾燥中の処理で延伸することができ、特に溶媒が残存する場合は有効である。 幅方向の延伸は、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによって行うことができる。 フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。

    フィルムの延伸倍率(延伸前のフィルムに対する伸び率)は、1%〜200%が好ましく、5%〜150%がさらに好ましい。

    さらに、幅方向にフィルムを把持しながら収縮させる収縮工程を含む方法により製造されたフィルムを用いることもできる。
    フィルムの幅方向に延伸する延伸工程と、フィルムの搬送方向に収縮させる収縮工程を含む製造方法においてはパンタグラフ式あるいはリニアモーター式のテンターによって保持し、フィルムの幅方向に延伸しながら搬送方向にはクリップの間隔を徐々に狭めることでフィルムを収縮させることができる。

    なお、上記のようなフィルムの長手方向または幅方向のいずれか一方を延伸し、同時にもう一方を収縮させ、同時にフィルムの膜厚を増加させる延伸工程を具体的に行う延伸装置として、市金工業社製FITZ機などを望ましく用いることができる。 この装置に関しては(特開2001−38802号公報)に記載されている。

    延伸工程における延伸率および収縮工程における収縮率としては目的とする正面レターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションンRthの値により、任意に適切な値を選択することができるが、延伸工程における延伸率が10%以上であり、かつ収縮工程における収縮率が5%以上とすることが好ましい。
    なお、本発明でいう収縮率とは、収縮方向における収縮前のフィルムの長さに対する収縮後のフィルムの収縮した長さの割合を意味する。
    収縮率としては5〜40%が好ましく、10〜30%が特に好ましい。

    [透明フィルムの厚み]
    本発明に用いる透明フィルムの厚みについては特に制限はない。 一般的には、10μm〜200μmが好ましく、20μm〜150μmがさらに好ましく、30μm〜100μmがよりさらに好ましい。

    [鹸化処理]
    本発明に用いる透明フィルム(特に、透明セルロースアシレートフィルム)には、アルカリ鹸化処理を施してもよい。 鹸化処理をすることにより、ポリビニルアルコールのような偏光子の材料との密着性を付与し、偏光板の保護フィルムとして好ましく用いることができる。

    アルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行うことが好ましい。 前記アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの濃度は0.1〜5.0mol/Lの範囲にあることが好ましく、0.5〜4.0mol/Lの範囲にあることがさらに好ましい。 アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることがさらに好ましい。

    以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。 以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。 従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。

    1. 高分子安定化ブルー相液晶セルの作製(1) 液晶材料の調製 液晶としてフッ素系混合液晶であるJC1041−XX(チッソ)、4−cyano−4'−pentylbiphenyl(5CB)(Aldrich)及びカイラル剤としてZLI−4572(Merck)を加熱混合した。 各比率は、37.2/37.2/5.6(mol%)とした。 さらに、発現するブルー相の回折波長を380nm以下に制御するため、(JC1041−XX/5CB/ZLI−4572)混合液晶にカイラル剤CB15(Aldrich)を導入した。 比率は、20(mol%)とした。 その混合液中に高分子ネットワークを形成させるための光重合性モノマーとして一官能性の2−ethylhexyl acrylate (EHA) (Aldrich)及び二官能性のRM257 (Merck)を7対3の割合で混合し加えた。 比率は6.5(mol%)とした。 さらに、光重合開始剤として2,2−dimethoxyphenylacetophenone(DMPAP) (Aldrich)を加えた。 比率は0.33(mol%)とした。 以上のようにして混合液を調合した。

    (2)COA基板の作製 ガラス基板の上に、特開2009-141341号公報中に記載の実施例20に従い、TFT素子を作製し、さらにTFT素子上に保護膜を形成した。
    続いて、前記保護膜上に、着色感光性組成物に特開2009−144126号公報中の実施例3、8及び10に記載の通りの方法で組成物を調製し、各組成物を用い、及び特表2008−516262号公報の[0099]〜[0103]中に記載の実施例9aに記載のプロセスに従い、カラーフィルタ・オン・アレイ(COA)基板を作製した。 但し、各画素の着色感光性樹脂組成物における顔料の濃度は半分にし、さらに塗布量を調整し、ブラック画素が4.2μmに、レッド・グリーン・ブルー画素がいずれも3.5μmになるようにした。 さらに、カラーフィルタにコンタクトホールを形成した後、上記カラーフィルタ上に、図4に示すTFT素子と電気的に接続したITO(Indium Tin Oxide)の透明画素電極を形成した。 電極間50μmの櫛歯型ITO電極(ITO電極抵抗値:100Ω)とした。 次いで、特開2006−64921号公報の実施例1に従い、このITO膜上の隔壁(ブラックマトリックス)上部に相当する部分にスペーサを形成した。 その後、カラーフィルタのRGB画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリクス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。
    ガラス基板と上記作製したCOA基板を組む合わせ、COA型ガラスセルを作製した。 セル厚は25μmとした。
    一方、上記と同様な作製方法でTFT基板(アレイ基板)とカラーフィルタ基板を各々作製し、貼り合わせて、非COA型ガラスセルを作製した。

    (3)液晶セルの作製 上記混合液を等方相の状態で、COA型および非COA型ガラスセル中に毛管現象を利用して注入した。 調製した混合液において発現した液晶相は、高温側からブルー相II、ブルー相I及びカイラルネマチック相であった。

    次に、光重合により高分子安定化ブルー相を調製した。 偏光顕微鏡観察で観測されたブルー相/N*相転移温度から2K高温側で紫外光を照射した。 COA型ガラスセルでは、ガラス基板(即ちCOA基板の対向基板)側から、非COA型ガラスセルでは、TFT基板(即ちアレイ基板)側から紫外線を照射した。 照射様式は、ガラスセルの温度を複合系がブルー相Iを発現する温度領域で一定に保持し、照射強度1.5mWcm -2 (365nm)の紫外光を照射することで高分子安定化ブルー相を調製した。
    調製した高分子安定化ブルー相の電界印加前後における偏光顕微鏡観察像を観察した。 観察は293Kで行った。 白状態の印加電界として、周波数100kHz、4.9Vμm -1正弦波交流電界を用いた。 黒状態の電界無印加時、入射光の偏光状態は光学的に等方性である高分子安定化ブルー相を通過後も変化しないため偏光顕微鏡像は暗視野となった。 電界印加後(b)、電極間の高分子安定化ブルー相にレターデーションが誘起されたことを示す透過光量の著しい増大が観測され、液晶表示装置として光スイッチングされていることが確認できた。 以上のようにして高分子安定化ブルー相液晶表示素子を作製した。

    フィールドシーケンシャル駆動用高分子安定化ブルー相液晶表示素子を作製した。 具体的には、非COA型ガラスセルに用いたアレイ基板と、カラーフィルタ層を有さない透明基板とを、一対の基板として組合わせ、ガラスセルを作製し、これを用いた以外は、上記と同様にして、高分子安定化ブルー相液晶表示素子を作製した。 なおポリマーネットワークの形成時には、対向基板側から紫外線照射を行った。

    なお、下記の実施例に利用した電極構造は図4に示す電極構造であるが、図5に示す電極構造を利用しても同様に光スイッチングが確認できた。
    さらに、図6に示す電極構造および図8に示す電極構造を利用した例でも、同様に光スイッチングが確認できた。

    2. 透明フィルム1の準備 市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製、以下、「TACフィルム」という)を透明フィルム1として用いた。 光学特性は、
    Re(550)=1nm、
    Rth(550)=38nm、
    Re(400)=0.6nm、
    Rth(400)=22nm
    Re(700)=1.4nm
    Rth(700)=42nm、
    |Re(400)−Re(700)|=0.8nm、及び |Rth(400)−Rth(700)|=20nmであった。

    3. 透明フィルム2の作製(セルロースアセテート溶液の調製)
    下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Dを調製した。
    セルロースアセテート溶液D 組成 酢化度2.86のセルロースアセテート 100.0質量部 メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部 メタノール(第2溶媒) 60.0質量部

    (マット剤溶液の調製)
    平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子(AEROSILR972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。
    この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
    マット剤溶液組成 平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部 メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部 メタノール(第2溶媒) 3.4質量部 セルロースアセテート溶液D 10.3質量部

    (添加剤溶液の調製)
    下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。 光学異方性を低下させる化合物(レターデーション低減剤)及び波長分散調整剤については、下記に示すものをそれぞれ用いた。

    添加剤溶液組成 化合物A−19(レターデーション低減剤) 49.3質量部 UV−102(波長分散調整剤) 7.6質量部 メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部 メタノール(第2溶媒) 8.7質量部 セルロースアセテート溶液D 12.8質量部

    (セルロースアセテートフィルム試料2の作製)
    上記セルロースアセテート溶液Dを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、添加剤溶液4.1質量部を、それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。 なお、添加化合物(化合物A−19及びUV−102)の総量は、セルロースアセテートの量に対して、13.6質量%であった。
    残留溶剤量30%でフィルムをバンドから剥離し、140℃で40分間乾燥させセルロースアセテートフィルム試料2を製造した。 得られたセルロースアセテートフィルム試料2の残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は40μmであった。

    作製したセルロースアセテートフィルム試料2は、
    Re(550)=0.3nm、
    Rth(550)=3.2nm、
    Re(400)=1.4nm、
    Rth(400)=−3.5nm
    Re(700)=0.2nm
    Rth(700)=4nm、
    |Re(400)−Re(700)|=1.2nm、及び |Rth(400)−Rth(700)|=7.5nm
    であった。
    このセルロースアシレートフィルムを透明フィルム2として使用した。 透明フィルム2は第1の透明フィルムとしての特性を満足するフィルムである。

    4. 透明フィルム3の作製 無水マレイン酸単位を含むアクリル系ポリマーMA−2の調製:
    特開2007−113109号公報の[0050]記載の「(b)耐熱アクリル樹脂」に従い無水マレイン酸10モル%、スチレン16モル%、メタクリル酸メチル74モル%の樹脂を合成した。 このTgは112℃であった。

    調製した前記アクリル系ポリマーMA−2を90℃の真空乾燥機で乾燥して含水率を0.03%以下とした後、安定剤(イルガノックス1010(チバガイギ(株)製)0.3重量%添加し230℃において窒素気流中下、ベント付2軸混練押出し機を用い、水中に押出しストランド状にした後、裁断し直径3mm長さ5mmのペレットを得た。
    これらのペレットを90℃の真空乾燥機で乾燥し含水率を0.03%以下とした後、1軸混練押出し機を用い下記条件の温度で混練押出しした。 この後、押し出し機とギアポンプの間に300メッシュのスクリーンフィルターを設置した。 この後、下記条件でギアポンプを通過させた後、濾過精度7μmのリーフディスクフィルターを通し、ダイからメルトを押出し、下記条件でキャストした。 なお、下記条件中の「ギアポンプ前後の差圧」とは前側圧力から後側圧力を差し引いたものであり、また「メルト着地点−タッチロール・キャストロール中点間のズレ」において、正はタッチロール側に、負はキャストロール側に着地したことを示す。
    この後、3連のキャストロール上にメルト(溶融樹脂)を押出した。 この時、最上流側のキャストロール(チルロール)に、下記条件に記載の面圧でタッチロールを接触させた。 タッチロールは特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの、但し薄肉金属外筒厚みは2mmとした)を用い、Tg−5℃において、下記条件に記載のタッチ圧で使用した。 なお、チルロールを含む3連のキャストロールの温度は、タッチロールと接触する最上流側のキャストロール(第1ロール)を、下記条件に記載の温度差(キャストロール温度−タッチロール温度)となるようにした。 さらに、その次のキャストロール(第2ロール)は第1ロール−5℃、その次のキャストロール(第3ロール)は第1ロール−10℃とした。
    この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。 また製膜幅1.5mとし、製膜速度30m/分で3000m巻き取った。 製膜後の未延伸フィルムの厚みは60μmとした。
    最上流側のキャストロールに下記条件に記載の面圧でタッチロールを接触させた。 下記に、スクリュー温度差、吐出量、ギアポンプ前後の差圧、キャストロール上のメルトの表裏温度差、キャストロールとタッチロールの温度差、メルト着地点−タッチロール・キャストロール中点間のズレ、タッチロールのタッチ圧、製膜幅変動、製膜幅の変動、製膜幅の平均を示す。
    (条件)
    スクリュー温度差(出口−入口):30℃
    吐出量:200kg/hr
    ギアポンプ前後の差圧(前−後):−3MPa
    キャストロール温度−タッチロール温度:−5℃
    メルト着地点−タッチロール・キャストロール中間点のズレ:−3mm
    タッチロールのタッチ圧:0.1MPa
    製膜幅変動:6%
    製膜幅平均値:25m

    作製したアクリル系ポリマーフィルムの光学特性は、
    Re(550)=2nm、
    Rth(550)=−2nm、
    Re(400)=2.1nm、
    Rth(400)=−2.6nm
    Re(700)=1.99nm
    Rth(700)=−1.5nm、
    |Re(400)−Re(700)|=0.11nm、及び |Rth(400)−Rth(700)|=1.1nm
    であった。
    このフィルムを透明フィルム3として使用した。 透明フィルム3は第1の透明フィルムとしての特性を満足するフィルムである。

    5. 透明フィルム4の作製(ポリマー溶液の調製)
    ・セルロースアシレートA:
    置換度が2.94のセルロースアセテートの粉体を用いた。 セルロースアシレートAの粘度平均重合度は300、6位のアセチル基置換度は0.94であった。
    2)溶媒 下記の溶媒Aを使用した。 溶媒Aの含水率は0.2質量%以下であった。
    ・溶媒A ジクロロメタン/メタノール/ブタノール=83/15/2(質量比)
    3)添加剤・添加剤A
    二酸化ケイ素微粒子(粒子サイズ20nm、モース硬度約7)(0.08質量部)
    4)溶解 攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、前記溶媒および添加剤を投入して撹拌、分散させながら、前記セルロースアシレートを徐々に添加した。 投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。

    なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×10 4 kgf/m/sec 2 [4.9×10 5 N/m/sec 2 ])の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×10 4 kgf/m/sec 2 [9.8×10 4 N/m/sec 2 ])で攪拌する攪拌軸を用いた。 膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
    膨潤した溶液をタンクから、ジャケット付配管で50℃まで加熱し、さらに2MPaの加圧化で90℃まで加熱し、完全溶解した。 加熱時間は15分であった。 この際、高温にさらされるフィルター、ハウジング、および配管はハステロイ合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有する物を使用した。
    次に36℃まで温度を下げ、セルロースアシレート溶液を得た。

    5)ろ過 得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025、ポール社製)にて濾過してポリマー溶液を得た。

    (フィルムの作製)
    前記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。 流延スピードは50m/分、塗布幅は200cmとした。 流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。 そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。 次に110℃で5分、さらに140℃で10分乾燥して、セルロースアシレートの膜厚65μmの透明のフィルムを得た。

    (予備延伸)
    上記製膜したセルロースアシレートフィルムを、ロール延伸機を用いて縦一軸延伸処理を実施した。 ロール延伸機のロールは表面を鏡面処理した誘導発熱ジャケットロールを用い、各ロールの温度は個別に調整できるようにした。 延伸ゾーンはケーシングで覆い、160℃の延伸温度とした。 延伸部の前のロールは徐々に160℃の延伸温度に加熱できるように設定した。 延伸倍率は40%とし、ニップロールの周速を調整することで制御した。 縦横比(ニップロール間の距離/ベース入口幅)は0.5となるように調整し、延伸速度は延伸間距離に対して10%/分とした。
    フィルムの予備延伸倍率は、フィルムの搬送方向と直交する方向に一定間隔の標線を入れ、その間隔を熱処理前後で計測し、下記式から求めた。
    フィルムの予備延伸倍率(%)=100×(熱処理後の標線の間隔−熱処理前の標線の間隔)/熱処理前の標線の間隔

    (熱処理)
    得られたフィルムの両端をテンタークリップで把持した後、260℃の加熱ゾーン内を通過させた。 幅方向の寸法変化率は、テンターの拡縮率を変更することにより調整した。 加熱ゾーンの温度、および前述の方法にしたがって求めた幅方向の寸法変化率は、−12%であった。

    (再延伸)
    得られたフィルムの両端をテンタークリップで把持した後、加熱ゾーン内で搬送方向と直交する方向に延伸した。 260℃の加熱ゾーン、およびテンターの延伸倍率は2%とした。 なお、熱処理工程を用いた場合は、熱処理ゾーン入口にてテンタークリップで把持した後、テンタークリップを外すことなく、そのまま再延伸ゾーンに搬送した。

    作製した透明フィルム4の光学特性は、Re(550)=140nm、及びRth(550)=−2nmであった。

    6. 透明フィルム4'の作製 透明フィルム4の作製において、流延ギーサーを調整することによりセルロースアシレートの膜厚を125μmにした以外は同様の工程で透明フィルム4'を作製した。
    作製した透明フィルム4'の光学特性はRe(550)=287nm、Rth(550)=−8nmであった。

    7. 透明フィルム5の作製 環状オレフィン系樹脂(樹脂A1)の合成:
    8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−
    3−ドデセン(特定単量体)250部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン(開環重合反応用溶媒)750部とを窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。 次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.62部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)のトルエン溶液(濃度0.05モル/l)3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。 この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)は0.75dl/gであった。

    このようにして得られた開環重合体溶液4,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C 6533 0.48部を添加し、水素ガス圧100kg/cm 2 、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反応を行った。

    得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。 この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下、「樹脂A1」という。)を得た。

    樹脂フィルム(a1−1)の製造:
    上記樹脂A1をトルエンに30%濃度(室温での溶液粘度は30,000mPa・s)になるように溶解し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を重合体100重量部に対して0.1重量部を添加し、日本ポール製の孔径5μmの金属繊維焼結フィルターを用い、差圧が0.4MPa以内に収まるように溶液の流速をコントロールしながら濾過した。
    得られたポリマー溶液を、クラス1000のクリーンルーム内に設置した井上金属工業製INVEXラボコーターを用い、アクリル酸系で親水化(易接着性化)表面処理した厚さ100μmの基材のPETフィルム(東レ(株)製、ルミラーU94)上に、乾燥後のフィルム厚みが200μmになるように塗布し、これを50℃で一次乾燥の後、90℃で二次乾燥を行った。 PETフィルムより剥がした樹脂フィルムを(a1−1)とした。 得られたフィルムの残留溶媒量は0.5%であり、全光線透過率は93%であった。

    上記樹脂フィルム(a1−1)の表面に、延伸温度の180℃(Tg+10℃)で収縮率が30%であるポリエステル製フィルムを、その収縮方向が延伸方向と垂直になるように粘着剤で貼付し、延伸速度300%/分で2.0倍に延伸した。 次いで、150℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、さらに室温まで冷却して取り出し、上記ポリエステル製フィルムを剥離して透明フィルム5を得た。

    作製した透明フィルム5の光学特性はRe(550)=125nm、Rth(550)=60nmであった。

    8 透明フィルム5'の作製 TOPAS #6013のペレット(Tg=136℃)を用いて、110℃において2時間以上乾燥し、1軸混練押出し機を用いて押出した。 このとき押出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。 これを押出し温度(吐出温度)260℃で幅1900mm、リップギャップ1mmのダイから押出した。
    この後、チルロールとタッチロールの中央部に溶融樹脂を押出した。 この時、チルロールは、幅2000mm、直径400mmのHCrメッキされた金属製ロールを用い、タッチロールは、幅1700mm、直径350mmの特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの、但し薄肉金属外筒厚みは2mmとした)を用いた。

    これらのロールを用い、タッチロール及びチルロールの温度はともに、Tg−5℃とした。 また、製膜の雰囲気は25℃、60%であった。
    この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。 また製膜幅は1540mmとし、450m巻き取った。
    作製した環状オレフィン系ポリマーフィルムの光学特性は、
    Re(550)=2nm、
    Rth(550)=4nm、
    Re(400)=2.3nm、
    Rth(400)=4.5nm
    Re(700)=1.8nm
    Rth(700)=3.5nm、
    |Re(400)−Re(700)|=0.5nm、及び |Rth(400)−Rth(700)|=1nm
    であった。
    このフィルムは第1の透明フィルムとしての特性を満足するフィルムであった。 このフィルムを透明フィルム5'として使用した。

    9. 透明フィルム6の作製 透明フィルム5の表面をケン化後、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。 60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。
    配向膜塗布液の組成――――――――――――――――――――――――――
    下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部 水 371質量部 メタノール 119質量部 グルタルアルデヒド 0.5質量部――――――――――――――――――――――――――

    下記の組成の棒状液晶化合物を含む塗布液を、上記作製した配向膜上に#46のワイヤーバーで連続的に塗布した。 フィルムの搬送速度は20m/minとした。 室温から90℃に連続的に加温する工程で溶媒を乾燥させ、その後、90℃の乾燥ゾーンで90秒間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。 続いて、フィルムの温度を60℃に保持して、UV照射により液晶化合物の配向を固定化し光学異方性層を形成した。 続いて、光学異方性層B1が形成された面の反対側のセルロースアセテートフィルム表面を連続的にケン化処理し、透明フィルム6を作製した。

    棒状液晶化合物を含む塗布液(S1)の組成――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    下記の棒状液晶性化合物(I) 100質量部 光重合開始剤(イルガキュアー907、チバ・ジャパン社製) 3質量部 増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部 下記のフッ素系ポリマー 0.4質量部 下記のピリジニウム塩 1質量部 メチルエチルケトン 172質量部――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    作製した透明フィルム6から棒状液晶性化合物を含む光学異方性層のみを剥離し、光学特性を測定した。 波長550nmで測定した光学異方性層B1のみのRe(0)は0nmであった。 一方、Rthは−130nmであった。 棒状液晶分子がフィルム面に対して実質的に垂直に配向している光学異方性層が形成され、透明フィルム6を得た。

    10. 透明フィルム7の作製 下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。 該溶液を保留粒子径4μm、濾水時間35秒の濾紙(No.63、アドバンテック製)を5kg/cm 2以下で用いてろ過した。

    セルロースアセテート溶液組成 酢化度60.9%のセルロースアセテート (重合度300、Mn/Mw=1.5) 100質量部 トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部 ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部 メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部 メタノール(第2溶媒) 54質量部 1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部

    別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤Aを8質量部、レターデーション上昇剤Bを10質量部、二酸化珪素微粒子(平均粒径:0.1μm)0.28質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液(かつ微粒子分散液)を調製した。 セルロースアセテート溶液474質量部に該レターデーション上昇剤溶液40質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。

    得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。 残留溶剤量が15質量%のフィルムを、130℃の条件で、テンターを用いて20%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外してセルロースアセテートフィルムを作製した。 延伸終了時の残留溶媒量は5質量%であり、さらに乾燥して残留溶媒量を0.1質量%未満として透明フィルム7を作製した。

    このようにして得られたフィルム7の厚さは80μmであった。 作製したフィルムについて、自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定することによって、Reが70nm、Rthが175nmであり、これからNzが3.0であることが分かった。

    上記製作した透明フィルムの表面のケン化処理を行い、このフィルム上に市販の垂直配向膜(JALS−204R、日本合成ゴム(株)製)をメチルエチルケトンで1:1に希釈したのち、ワイヤーバーコーターで2.4mL/m 2塗布した。 直ちに、120℃の温風で120秒乾燥した。

    次に、下記の棒状液晶化合物3.8g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02g、下記の空気界面側垂直配向剤0.002gを9.2gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を調製した。 この溶液を前記配向膜を形成したフィルムの配向膜側に、#3.6番手のワイヤーバーでそれぞれ塗布した。 これを金属の枠に貼り付けて、100℃の恒温槽中で2分間加熱し、棒状液晶化合物を配向させた。 次に、80℃で120W/cm高圧水銀灯により、20秒間UV照射し棒状液晶化合物を架橋して、その後、室温まで放冷して位相差層を作製した。

    自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、製作したフィルムのReの光入射角度依存性を測定し、予め測定した支持体の寄与分を差し引くことによって、透明領域のみの光学特性を算出したところ、透明領域はReが0nm、Rthが−180nmであり、いずれも棒状液晶が略垂直に配向していることを確認し、透明フィルム7を得た。

    11. 偏光板A〜Lの作製<偏光板Aの作製>
    延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を製作し、市販の透明フィルム1にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の両面に貼り付け偏光板Aを形成した。
    <偏光板Bの作製>
    同様にして偏光膜を製作し、透明フィルム1にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。 さらに同様にして前記製作の透明フィルム2を偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Bを形成した。
    <偏光板Cの作製>
    同様にして偏光膜を製作し、透明フィルム1にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。 さらに同様にして前記製作の透明フィルム3を偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Cを形成した。
    <偏光板Dの作製>
    同様にして偏光膜を製作し、透明フィルム1にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。 さらに同様にして前記製作の透明フィルム4を偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Dを形成した。
    <偏光板Eの作製>
    同様にして偏光膜を製作し、透明フィルム1にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。 さらに同様にして前記製作の透明フィルム4'を偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Eを形成した。
    <偏光板Fの作製>
    同様にして偏光膜を製作し、透明フィルム1にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。 さらに同様にして前記製作の透明フィルム5を偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Fを形成した。
    <偏光板Gの作製>
    同様にして偏光膜を製作し、透明フィルム1にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。 さらに同様にして前記作製の透明フィルム6を偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Gを形成した。
    <偏光板Hの作製>
    同様にして偏光膜を製作し、透明フィルム1にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。 さらに同様にして前記製作の透明フィルム7を偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Hを形成した。
    <偏光板Iの作製>
    偏光板Gの作製において、透明フィルム6と偏光膜の間に透明フィルム1を貼り付けた以外は同様の構成で偏光板Iを形成した。
    <偏光板Lの作製>
    同様にして偏光膜を作製し、透明フィルム1にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。 さらに同様にして透明フィルム5'を偏光膜の他方の面に貼り付け偏光板Lを形成した。

    以下に偏光板A〜Lの構成をまとめる。 外側保護フィルムは、後述の液晶表示装置作製時に、外側に配置される透明フィルムであり、内側保護フィルムは、内側、即ち液晶セル側に配置される透明フィルムである。

    12. 液晶表示装置の作製 リア側に偏光板を高分子安定化ブルー相液晶表示素子の一方に、かつ偏光膜の吸収軸と液晶表示素子内のくし歯電極の長辺方向が45度となるように貼り付けた。 続いて、この液晶表示素子のもう一方のフロント側にもう1枚の偏光板を、記偏光板とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。 偏光板の組合せは、以下の表に示す通りである。 また、偏光板の貼合の向きは、上記表に示した通りである。 また、下記表中、「液晶セル」の欄の「COA」とは、COA構造の液晶セルを意味し、「非COA」とは非COA構造の液晶セルを意味する。 これらの作製方法については、上記した通りである。

    13. 液晶表示装置の評価(1)正面CR
    実施例及び比較例の各液晶表示装置を、白表示及び黒表示させ、正面(表示面に対して法線方向)の透過率を測定し、正面CRを算出した。 正面CRは、(白表示時の透過率)/(黒表示時の透過率)である。
    結果を下記表に示す。

    (2)黒表示時のカラーシフト 実施例及び比較例の各液晶表示装置を黒表示させ、一対の偏光板の互いに直交する吸収軸に対して方位方向45°において法線方向からの傾き60°方向における色味を、色彩輝度計((株)トプコン製BM−5)を用いて測定し、黒色味変化量について評価した。 ここで、黒色味変化量は法線方向からの傾き60°方向で方位方向を0〜360°変化させたときに、色度u'v'のそれぞれの最小値、最大値から計算される距離と定義した。
    結果を下記表に示す。

    上記結果から、COA基板を利用して、対向基板にカラーフィルタがないCOA構造の実施例の液晶表示装置は、アレイ基板とその対向基板にカラーフィルタ基板を利用した通常のセル構造の比較例の液晶表示装置と比較して、黒表示時の透過率が低く、正面CRが高いことが理解できる。 これは、COA構造の液晶セルでは、ポリマーネットワーク形成時に、対向基板側から紫外線照射したことにより、架橋反応が十分に進行し、安定したポリマーネットワークが形成されたことによるものと考えられる。 一方、比較例用の通常の非COA構造の液晶セルでは、紫外線照射をアレイ基板側から行ったため、アレイによって光透過が妨げられ、架橋反応の進行が不十分であったため、安定したポリマーネットワークが形成できず、それが正面CRの低下として現れたものと考えられる。

    また、偏光板B、C及びLをそれぞれ光源側の偏光板として用い、|Re(550)|が10nm以下であり、且つ|Rth(550)|が30nm以下の透明フィルム2、3及び5'のそれぞれを、セル側の保護フィルムとして配置した、実施例6〜11、12〜17、及び18の液晶表示装置は、正面CRが特に高く、さらに黒表示時のカラーシフトも軽減されていることが理解できる。

    上記実施例及び比較例では、光源としてCCFLを利用していたが、光源を白色LED直下型にかえた以外は、同様にして、液晶表示装置をそれぞれ準備し、同様に評価した。

    光源をLEDにすると、黒透過率が低く、さらに正面CRが高くなることが確認できた。

    同様に図5、図6及び図9に示す電極構造を利用して、同様に実施を行った結果、黒透過率が低く、正面CRが高く、黒色味変化量が小さいことが確認された。

    さらに、上記方法で作製したフィールドシーケンシャル駆動用液晶セル(カラーフィルタ非搭載)と、偏光板A〜Lのいずれかとを、下記の表に示す通り組合せて、液晶表示装置をそれぞれ作製した。 偏光板の貼合の向きは、上記表1に示した通りである。 バックライトには、フィールドシーケンシャル用の3原色光が順次発光するバックライトを用いた。 それぞれの液晶表示装置について、上記と同様にして、正面CR及び黒色味変化量を評価した。 結果を下記表に示す。 なお、下記表中、上記表4中の比較例の結果も併せて示した。 即ち、これらの比較例は、非COA型の液晶セル(カラーフィルタ搭載)と、LED光源のバックライトとを組合わせた液晶表示装置の例であり、アレイ基板側から紫外線を照射して、ポリマーネットワークを形成した例である。

    上記表に示す結果から、フィールドシーケンシャルと組み合わせた本発明の実施例においても、同様に正面CRおよび黒色味変化量が改善されていることがわかる。

    10、12 偏光膜10a、12a 偏光膜の吸収軸14 第2の透明フィルム16 第1の透明フィルム18、20 透明フィルム22 セル基板24 セル基板(COA基板)
    241 絶縁性の透明基板242 スイッチ素子243G、243B、243R カラーフィルタ層244 画素電極245 絶縁層LC 液晶表示素子PL1、PL2 偏光板

    QQ群二维码
    意见反馈