光伝送システムにおける光源波形整形器、光パルス列発生装置、及び光再生システム

申请号 JP2005510285 申请日 2003-11-21 公开(公告)号 JPWO2004049054A1 公开(公告)日 2006-03-23
申请人 古河電気工業株式会社; 发明人 五十嵐 浩司; 浩司 五十嵐; 江森 芳博; 芳博 江森; 小栗 淳司; 淳司 小栗; 並木 周; 周 並木; 麻生 修; 修 麻生; 忠隈 昌輝; 昌輝 忠隈;
摘要 2モードビート 信号 を発生する2モードビート信号 光源 と、2モードビート信号光源の出 力 光をソリトン整形するソリトン 波形 整形器と、このソリトン波形整形器の出力光を断熱ソリトン圧縮する断熱ソリトン圧縮器とを備えたパルス列発生装置を提供し、このパルス列発生装置に用いられる波形整形器であって、高非線形光伝送路と、高非線形光伝送路よりも低い非線形係数を有し、かつ高非線形光伝送路と2次分散値の絶対値が相違する低非線形光伝送路とを複数配設した構造を有する波形整形器を提供する。更に、少なくとも1の光源がマルチモードで発振する複数の連続光光源と、この連続光光源の出力光を合波する合波器と、この合波器の出力光に非線形現象を発生させる非線形現象発生器とを備えて、SBS(Stimulated Brillouin Scatteing)を抑制する光源を提供する。
权利要求
  • 非線形媒質と分散媒質を配置させ、それら各媒質の寸法を調整することにより伝送特性を制御することを特徴とする波形整形器。
  • 前記非線形媒質はL NL <L で示され、前記分散媒質は、L NL >L で示され、
    NL 、L は、それぞれ下式で表されることを特徴とする請求項1記載の波形整形器。
    ;パルス1/e 幅 P ;パルスピークパワー γ;非線形係数 β ;分散値
  • 前記非線形媒質における非線形効果と前記分散媒質による分散効果とによる位相シフトが、1ラジアン以下となるような光伝送路を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の波形整形器。
  • 前記非線形媒質と前記分散媒質は、少なくとも一方が光ファイバからなることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の波形整形器。
  • 前記非線形媒質と前記分散媒質は交互に配置されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の波形整形器。
  • 前記非線形媒質と前記分散媒質の平均分散値が、長手方向に任意のプロファイルを有する光伝送路を有することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の波形整形器。
  • 前記非線形媒質は、5/W/km以上の非線形係数を有することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の波形整形器。
  • ソリトン周期以内に更にアイソレータを備えたことを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の波形整形器。
  • 非線形係数が5/W/km以上を有するラマン利得媒質と、ポンプLDと、前記ポンプLDからの出力光を前記ラマン利得媒質に入力するためのカプラとからなり、入力されたパルスを整形もしくは圧縮することを特徴とする波形整形器。
  • 請求項1または9に記載の波形整形器のうち、少なくとも一つを用いてSBSを抑圧することを特徴とするSBS抑制器。
  • ビート光発生部と、
    請求項10に記載のSBS抑制器と、請求項1または9に記載の波形整形器のうちの少なくとも1つを用いたことを特徴とするパルス光源。
  • 少なくとも1の光源がマルチモードで発振する複数の連続光光源と、前記連続光光源の出力光を合波する合波器と、前記合波器の出力光に非線形現象を発生させる非線形現象発生器と、を備えて、SBS(Stimulated Brillouin Scattering)を抑制することを特徴とする光源。
  • 前記合波器と前記非線形現象発生器の間に、前記合波器の出力光の偏光を非偏光化する非偏光化器を備えたことを特徴とする請求項12に記載の光源。
  • 前記複数の連続光光源を足し合わせたモード周波数が等間隔でないことを特徴とする請求項12又は13に記載の光源。
  • 前記非線形現象発生器に光ファイバの非線形性を用いたことを特徴とする請求項12から14の何れか1項に記載の光源。
  • 前記合波器が偏波合成器であることを特徴とする請求項12から16の何れか1項に記載の光源。
  • 前記連続光光源からの出力用光ファイバと、前記偏波合成器と、に偏波保持ファイバを用いたことを特徴とする請求項16に記載の光源。
  • 前記偏波合成器からの出力用光ファイバに偏波保持ファイバを用いたことを特徴とする請求項16又は17に記載の光源。
  • 前記非線形現象発生器が、下式を満たすことを特徴とする請求項12から18の何れか1項に記載の光源;
    0.05 ≦ PγL eff
    ここで、 P :光パワ
    γ : 非線形定数
    eff : 実効ファイバ長。
  • 前記非線形現象発生器が、下式を満たすことを特徴とする請求項12から19の何れか1項に記載の光源;
    PγL eff ≦ 0.13
    ここで、 P : 光パワ
    γ : 非線形定数
    eff : 実効ファイバ長。
  • PγL eff値が急激に大きくなる分散値よりも小さい分散を有する光ファイバを前記非線形現象発生器に用いることを特徴とする請求項12から20の何れか1項に記載の光源。
  • 前記連続光光源として内部にグレーティングを備えた半導体レーザを用いることを特徴とする請求項12から21の何れか1項に記載の光源。
  • 前記連続光光源として半導体レーザを用いることを特徴とする請求項12から22の何れか1項に記載の光源。
  • ラマン増幅器の励起用光源として用いられる請求項12から23の何れか1項に記載の光源。
  • 前記励起用光源が前方励起用光源である請求項24に記載の光源。
  • 各波長λ 〜λ ごとに、少なくとも1の光源がマルチモードで発振する複数の連続光源と、前記連続光光源の出力光を合波する偏波合成器と、前記偏波合成器の出力光の偏光を非偏光化する非偏光化器と、を備えたn個の光源と、
    前記n個の光源からの出力光を合波する合波器と、
    前記合波器の出力光に非線形現象を発生させる非線形現象発生器と、
    を備えて、
    SBSを抑制することを特徴とする光源。
  • 各波長λ 〜λ ごとに、少なくとも1の光源がマルチモードで発振する複数の連続光光源と、前記連続光光源の出力光を合波する偏波合波器と、前記偏波合波器の出力光の偏光を非偏光化する非偏光化器と、非偏光化器に非線形現象を発生させる非線形現象発生器と、を備えたn個の光源と、
    前記n個の光源からの出力光を合波する合波器と、
    を備えて、
    SBSを抑制することを特徴とする光源。
  • 前記合波器がWDM合波器であることを特徴とする請求項27に記載の光源。
  • 前記合波器がマッハツエンダー合波器であることを特徴とする請求項27に記載の光源。
  • 说明书全文

    本発明は、光伝送システムにおける連続光光源および光源の制御方法、パルス発生技術に適用される装置及び光再生システムに関する。

    光伝送システムにおいて、光ファイバへの入光パワを制限する要因として、誘導ブリリュアン散乱(Stimulated Brillouin Scattering:SBS)の発生により、入力パワの一部が後方散乱し、伝送システムに悪影響を与えることが考えられる。 従来、SBSを抑制する技術としては、▲1▼電気的に光源を制御する技術と、▲2▼光学的に光源を制御する技術に分けることができる。 ▲1▼は、周波数変調(FM変調)や振幅変調(AM変調)、ditherなどの変調を電気的にかけるもので、5,329,396 12/1994 Fishman et al. に記載されている。 ▲2▼は、パルス光において特に有効なCross−Phase Modulation(XPM)又はSelf−Phase Modulation(SPM)といった光ファイバの非線形現象を用いて光のスペクトルを制御するものであり、Y. Horiuchi et al. ,'Stimulated Brillouin scattering suppression effects induced by cross−phase modulation in high power WDM repeaterless transmission',Electron. Lett. ,vol. 34,No. 4,pp. 390−391,(1998). 及び6,516,113 B1 4/2003 Glingener et al. に記載されている。
    また、近年、光信号伝送システムの大容量化への要求は、ますます高まっている。 これに対する大容量化の追究の流れとして、基幹系伝送システム容量のテラビット化の試みが活発化している。 このテラビット化実現の主要な方法が、波長分割多重方式(Wavelength Division Multiplex:WDM)と、光時分割多重方式(Optical Time Division Multiplexing:OTDM)である。 前者は波長の異なる複数の光信号を束ねて一括伝送する方式であり、後者は光の伝送速度(単位時間当たりの伝送容量)自体を高める方式である。
    これらの方式による光伝送システムにおいて、伝送路中に電気的でなく光の領域で信号を再生する中継器を用いる方法(光再生中継)がある。 このような光再生中継では、下記表1に示す技術が報告されている。

    表1に示す(1)、(3)と(5)の方式は、電気信号変調を基本とするものである。 (2)と(4)の方式は、電気回路不要な全光技術を基本とするものである。 (1)はM. Nakazawa and E. Yoshida,IEEE Photon. Technol. Lett. ,12,1613(2000). 、(2)はK. Tamura et al. ,Opt. Lett. ,18,1080(1993). 、(3)はH. Kurita et al. ,IEICE Trans. Electron. E81−C,129(1998). 、(4)はK. Sato,Electron. Lett. ,37,763(2001). 、(5)はH. Kawatani et al. ,OFC2001,MJ3−1(2001). にそれぞれ掲載されている。


    また、表1以外の手法としては、2モード光をソリトン圧縮ファイバによって、ソリトンパルス列に変換する方式も提案されている(E.M.Dianov et al.,OL,14,1008(1989))。


    また、信号伝送の高速化のために、高ビットレートの光信号を発生させる光源を利用する手法がある。 この手法の一例としては、断熱ソリトン圧縮を利用した光パルス圧縮器が知られ、ホール(R.C.Reeves−Hall)他、「ラマン増幅器における断熱圧縮に基づいたピコ秒ソリトンパルス光源(Picosecond soliton pulse−duration−selectable source based on adiabatic compression in Raman Amplifier)」、エレクトロンレター(Electron.Lett.)、2000年、第36巻,p. 622−624に掲載されている。


    以上背景を鑑みて、本発明では、光通信におけるSBS抑制効果を有する光源を提供し、また、小型かつ構造が単純な波形整形器、光パルス列発生装置、及び、光再生システムを提供することを目的とする。

    本発明は、光伝送システムにおける光源、波形整形器、光パルス列発生装置、及び光再生システムに関する。
    本発明のひとつである光パルス列発生装置は、2モードビート光発生部、ソリトン変換部とソリトン圧縮部から構成される。 これを図1に示すような従来のシステムでは、2モードビート信号光を、そのまま断熱ソリトン圧縮器へ導いていた。 一方、本発明では、図2に示すように、断熱ソリトン圧縮の前に予めソリトン波形整形器においてビート光をsin型波形からソリトン波形へ変換する。 この結果、ソリトン断熱圧縮の圧縮効率を大きく向上させることが可能となるだけではなく、圧縮ファイバにおける誘導ブリリュアント散乱(stimulated Brillouin scattering:SBS)が抑制できる。
    また、光源性能を決定付ける波形整形部と圧縮部は、CDPFによって実現する。 CDPFは分散ファイバと非線形ファイバとの組合せによって構成され、それらファイバペアの平均分散値を調整することによってパルスコントロールが可能となる。 このCDPF技術によってソリトン変換部とソリトン圧縮部の分散プロファイルの最適化が容易になる。 本光源では、最適プロファイルの一つとして、ソリトン変換部に平均分散が増大するプロファイル、及び、ソリトン圧縮部に平均分散減少プロファイルを採用した。
    また、理想的なCDPFを実現する上で、可能な限り非線形係数が大きいファイバを非線形ファイバに活用することが重要となる。 この観点からは、伝送に用いられるSMFに比べて大きな非線形係数を有する高非線形ファイバ(highly−nonlinear fiber:HNLF)の活用が望ましい。 この低分散HNLF活用によって分散だけでなく非線形係数も櫛状プロファイルとなり、分散ファイバと非線形ファイバの組合せであるCDPFをより理想的に作製することが可能な為である。 ただし、残留分散、分散スロープと非線形効果の相互作用の結果として生じる雑音増幅現象を看過してはならない。 この抑圧には正常分散HNLFの活用が有効である。 これは、正常分散領域では非線形効果と分散の相互作用の結果として生じるパラメトリック利得発生が抑えられ、その結果、雑音増幅が抑圧される為である。
    加えて、ビート光発生部の雑音低減化も重要である。 半導体レーザ(laserdiode:LD)2台の出力CW光を合波することによってビート光を得るのが一般的である。 しかしながら、LD出力パワーは数十mW程度が一般的であり、次段ソリトン変換並びにソリトン圧縮には不充分である。 その為にビート光の増幅が必要となるものの、この過程で必ず雑音が付加される。 これに対して、高出力( 50mW)LDを使用することによって光増幅が不要な、言い換えれば雑音が付加されない、ビート光発生部が実現され得る(図7)。 実際に、100mW出力のdistributed−feedback LDが開発されており、これを用いれば低雑音光ビート発生部が構築可能となる。
    以上をまとめるに、本発明の光パルス列発生装置の特徴は以下である。
    (1)2モードビート信号光に対するCDPF波形整形とCDPFソリトン圧縮の組合せによるソリトン列発生。
    (2)分散増大CDPF波形整形器と分散減少CDPFソリトン圧縮器の組合せ。
    (3)CDPF波形整形器とCDPFソリトン圧縮器への低分散HNLF活用。
    (4)2台の高出力LDを用いるEDFA省略に伴う雑音低減化。
    これら方式の結果として、高品質性だけではなく高圧縮性能を有する断熱ソリトン圧縮器が実現され、この圧縮器を光源に採用することによって、100GHz以上の繰返し周波数及びサブピコ秒領域の時間幅を有する超高純度ソリトン列の発生が可能となる。
    一方で、光伝送システム応用に重要な、ソリトン列繰返し周波数の外部信号(電気・光)との同期も、本光源では容易に実現できる。 この外部同期可能な光源の構成を図8に示す。 図7の光源と光位相ロックロープ(optical phase locked loop:OPLL)部の組合せ構成である。 参照光信号、この図では外部電気入力信号によって駆動される変調器とLDの組合せから得られる光クロックパルス列、と光源出力光の一部に対して光領域での繰り返し周波数を比較する構成である。 周波数比較には、光ファイバにおける四光波混合(four wave mixing:FWM)を活用する。 この発生FWM光のパワーが最大になるように、ビート光発生部のLD波長を調整する。 特に、光領域での周波数比較を採用している為に、それに上限が無い点に注目されたい。
    また、上記光源は、光再生中継サブシステムの光クロックパルス光源にも活用できる。 これを図9に示す。 劣化している伝送信号光を波形整形した後に、光信号から抽出(クロック抽出)したクロック周波数に基づき発生されるクロックパルス列を、光信号によってスイッチする構成である。 このクロック抽出及びクロックパルス列発生に、図8に示した光源を適用させる。 ここでのクロックパルス列の品質は、その伝送路性能を決定する為に極めて重要な光源性能である。 即ち、超高純度ソリトン列発生可能な本光源は、この光再生中継における光クロックパルス光源に適しているといえる。 また、上記と同様の理由から、本光源はOTDM−DEMUX部への応用にも適している。 これを図10に示す。
    更に、本発明は、光ファイバの非線形現象であるXPM、SPM、Four−Wave Mixing(FWM)を用いて連続光光源のSBSを抑制する技術に関する。 具体的に説明すると、本発明は、非線形現象を利用してマルチモードの連続光光源の各モードのスペクトル幅を広げる、もしくはピークパワが大きなモードのパワーを抑えることによりSBSを抑制する方法および装置を提供することができる。
    本発明は、従来技術に対し、更にSBS抑制効果を有する光源に関するものである。 特に本発明では、相対強度雑音(Relative Intensity Noise:RIN)が増加せず、SBSを抑制することができる。
    XPM、SPMなどの非線形現象を起こすためには、3次の非線形感受率を有する媒質において生じる光の強度に応じた屈折率変化が必要であるため、比較的その効果を発生させやすいパルス光に対して適用されてきた。 従って、本発明の対象である連続光に対してはあまり知見が得られていなかった。
    更に、本発明のその他の実施態様を説明すると、波形整形器が挙げられる。 この波形整形器は、波形の整形及び圧縮の両方を兼ねることができる。 つまり、この波形整形器を2つ接続すれば、波形の整形と圧縮を行うことができることになる。
    本発明にかかる波形整形器の1つの実施態様は、入力された光をソリトン光に変換する波形整形器において、高非線形光伝送路と、前記高非線形光伝送路よりも低い非線形係数を有し、かつ前記高非線形光伝送路と2次分散値の絶対値が相違する低非線形光伝送路とを複数配設した構造を有することを特徴とする。
    この実施態様によれば、高非線形光伝送路と低非線形光伝送路とを複数配設することとしたため、等価的に分散減少伝送路を実現することができ、かつ高非線形光伝送路を用いたことで全体として高い分散特性を有する波形整形器を実現することができる。
    また、本発明にかかる波形整形器の他の実施態様は、上記の発明において、入力端からの距離がソリトン周期以下となる領域に光アイソレータをさらに備えたことを特徴とする。
    この実施態様によれば、ソリトン周期以下となる距離に光アイソレータを配置することとしたため、波形整形器中における誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制することができ、強度の高いソリトン光を出力することができる。
    また、本発明にかかる波形整形器の他の実施態様は、上記の発明において、前記光アイソレータは、異なる光伝送路の接合部に配設されることを特徴とする。
    この実施形態によれば、光伝送路の接合部に光アイソレータを配設することとしたため、融着点数を減少させることが可能となり、光損失を低減した波形整形器を実現することができる。
    また、本発明にかかる波形整形器の他の実施態様は、上記の発明において、前記光アイソレータは、前記高非線形光伝送路の前段に配設されることを特徴とする。
    この実施形態によれば、光アイソレータが高非線形光伝送路の前段に配設されることとしたため、誘導ブリリュアン散乱の発生をより効果的に抑制することができる。 誘導ブリリュアン散乱は非線形光学効果の一種であることから、高非線形光伝送路において発生しやすい。 そのため、高非線形光伝送路の前段に光りアイソレータを配設することによって誘導ブリリュアン散乱の発生をより効果的に抑制することができる。
    また、本発明にかかる光パルス発生装置の1つの実施態様は、非線形係数が3km−1・W−1以上の高非線形光伝送路を備え、入力された光をラマン増幅しつつ断熱ソリトン圧縮によってパルス幅を圧縮するパルス幅圧縮手段と、該パルス圧縮手段に対してラマン増幅のための励起光を供給する励起光源と、該励起光源を前記パルス幅圧縮手段と光結合するための光結合手段とを備えたことを特徴とする。
    この実施態様によれば、高非線形光伝送路中を伝送する光に対してラマン増幅を行うこととしたため、高非線形光伝送路の伝送路長を短縮化できると共に、出力光のパルス幅をより圧縮することができる。
    また、本発明にかかる光パルス発生装置の他の実施態様は、上記の発明において、前記パルス幅圧縮手段前段に配設され、波形整形器と、該波形整形器前段に配設された発光手段とさらに備えたことを特徴とする。
    また、本発明にかかる光パルス発生装置の実施態様は、上記の発明において、前記パルス圧縮手段前段に配設された光増幅器をさらに備えたことを特徴とする。
    また、本発明にかかる光パルス発生装置の実施態様は、上記の発明において、前記パルス圧縮手段前段に配設された誘導ブリリュアン散乱抑制手段をさらに備えたことを特徴とする。
    また、本発明にかかる光パルス発生装置の1つの実施態様は、伝送される光の繰返し周波数を抽出するクロック抽出装置と、波形整形器もしくは光パルス発生装置を備えた光クロックパルス列発生装置と、前記クロック抽出装置で抽出された周波数に基づいて、前記光クロックパルス列発生装置から出力される光を変調する光シャッター装置とを備えたことを特徴とする。
    この実施態様によれば、光クロックパルス列発生装置として、本発明の光パルス発生装置を使用することとしたため、光パルスの強度揺らぎや時間揺らぎの少ない光クロックパルス列が得られる。

    図1は、従来の2モードビート光のソリトン圧縮による超高繰り返しソリトン列発生を行なうシステムの構成図である。
    図2は、本発明のソリトン波形成形器と断熱ソリトン圧縮器の組合せによる2モード光からの高繰り返しソリトン列発生を行なうシステムの構成図である。
    図3は、図2に示すシステムにおいて、ソリトン波長成形器に分散増大CDPFを、断熱ソリトン圧縮器に分散減少CDPFを用いた機器構成を示す図である。
    図4は、波形成形用CDPF、及び、ソリトン圧縮用CDPFのファイバ特性プロファイルを示す図である。
    図5Aは、本発明の光パルス列発生装置による、入出力パルスの自己相関波形を示す図である。
    図5Bは、本発明の光パルス列発生装置による、入出力パルスの光スペクトル波形を示す図である。
    図6は、波形成形用CDPF、及び、図3よりも穏やかな分散減少を有するソリトン圧縮用CDPFのファイバ特性プロファイルを示す図である。
    図7は、高出力DFB−LDを用いたビート光発生部の構成図である。
    図8は、2次分散値β の絶対値に対する基本ソリトン励起に必要な入力光の強度の依存性。 外部信号との同期が可能な光源の構成図である。
    図9は、本発明の光源を、光再生中継サブシステムの光クロックパルス光源に応用した場合の構成図である。
    図10は、本発明の光源をOTDM−DEMUX部へ応用した場合の構成図である。
    図11は、分散媒質と非線形媒質が交互に配置された伝送路を示す図である。
    図12は、CPFの概念を示す図である。
    図13は、HNLFにおけるラマン増幅器を用いる波形整形器の構成を示す図である。
    図14は、2次分散値β の絶対値に対する基本ソリトン励起に必要な入力光の強度の依存性を示す図である。
    図15は、出力パルス幅の限界値と入力光強度依存性を示すグラフである。
    図16は、CPFやHNLFにおけるラマン増幅器を用いた波形整形器を用いたパルス列発生装置を示す図。
    図17は、CPFを用いる光パルス列発生装置の構成を示す図である。
    図18は、波形成形用CDPF、及び、分散減少を有するソリトン圧縮用CDPFのファイバ特性プロファイルを示す図である。
    図19Aは、入出力パルスの自己相関波形を示すグラフである。
    図19Bは、光スペクトル波形を示すグラフである。
    図20は、CW光から光変調器を用いてビート光、又は、種パルスを発生させる種パルス発生部と、パルス波形整形器からなる光パルス発生器を示す図である。
    図21は、ソリトン長と入力パルス幅との関係を示すグラフである。
    図22Aは、40GHzパルス列発生の光源構成を示す図である。
    図22Bは、CDPFの分散値と非線形係数のプロフィルを示す図である。
    図23Aは、CPF入出力パルス列の自己相関波形を示すグラフである。
    図23Bは、CPF入出力パルス列の光スペクトル波形を示すグラフである。
    図24は、CPF出力パルスの時間幅とピークペデスタル比の入力波形依存性を示すグラフである。
    図25は、自己相関波形上の隣接パルスピーク値の入力ビートのキャリア抑圧比依存性CSRを示すグラフである。
    図26Aは、40GHzパルス列光源の構成図を示す図である。
    図26Bは、CDPFの分散値と非線形係数のプロファイルを示すグラフである。
    図27Aは、CDPF入出力光パルス列の自己相関波形を示すグラフである。
    図27Bは、CDPF入出力光パルス列の光スペクトル波形を示すグラフである。
    図28は、EDFA−Freeな光源の実施例を示す図である。
    図29は、CPFとHNLFにおけるラマン増幅器の波形整形器を用いる光パルス列発生器を示す図である。
    図30は、CPF不使用及び使用の場合のSBS光パワーとSCRA出力パワーの、SCRA入力パワー依存性を示すグラフである。
    図31は、SCRA出力パルス時間幅のラマン利得及び出力パワー依存性を示すグラフである。
    図32Aと図32Bは、それぞれ利得2.4、9.4、11.6、12.6dBにおけるRA出力パルス列の自己相関波形と光スペクトル波形である。
    図33は、XPMまたはSPMによるSBS抑制効果の模式図である。
    図34は、FWMによるSBS抑制効果の模式図である。
    図35は、HNLFを用いてSBS抑制を行った光源の測定伝送路におけるSBS抑制の効果を検証するための実験系である。
    図36は、HNLFを用いたSBS抑制を行っていない光源の測定伝送路におけるSBS抑制の効果を検証するための実験系である。
    図37は、1455nmの半導体レーザのSBS測定結果を示すグラフである。
    図38は、1461nmの半導体レーザのSBS測定結果を示すグラフである。
    図39は、1455nmの半導体レーザ光をHNLFに通した場合のスペクトルを示すグラフである。
    図40は、1455nmの半導体レーザ光をHNLFに通さないときのスペクトルを示すグラフである。
    図41は、1461nmの半導体レーザ光をHNLFに通した場合のスペクトルを示すグラフである。
    図42は、1461nmの半導体レーザ光をHNLFに通さないときのスペクトルを示すグラフである。
    図43は、1461nmの半導体レーザ光をHNLFに通した場合と、通さない場合のRIN測定結果を示すグラフである。
    図44は、ラマン増幅器の構成図である。
    図45は、2つの連続光光源を用いたSBS抑制光源の模式図である。
    図46は、2つの連続光光源を用いたSBS抑制光源の効果を確認するための実験系である。
    図47は、2つの連続光光源を用いたSBS抑制光源の効果を確認するための実験系に用いた各光源のSBS測定結果を示すグラフである。
    図48Aは、2つの連続光光源を用いたSBS抑制光源の光がTW−RSファイバを伝搬した後のスペクトルを示すグラフである。
    図48Bは、2つの連続光光源を用いたSBS抑制光源の光がTW−RSファイバを伝搬した後のスペクトルを示すグラフである。
    図48Cは、2つの連続光光源を用いたSBS抑制光源の光がTW−RSファイバを伝搬した後のスペクトルを示すグラフである。
    図48Dは、2つの連続光光源を用いたSBS抑制光源の光がTW−RSファイバを伝搬した後のスペクトルを示すグラフである。
    図49Aは、図48Aと図48Bを拡大したグラフである。
    図49Bは、図48Aと図48Cを拡大したグラフである。
    図49Cは、図48Dを拡大したグラフである。
    図50は、2つの連続光光源を用いたSBS抑制光源のSBS抑制効果の模式図である。
    図51は、複数の波長を持つ光源をまとめてSBS抑制する場合のSBS抑制光源の模式図である。
    図52は、複数の波長を持つ光源のそれぞれをSBS抑制する場合のSBS抑制光源の模式図である。
    図53は、FWMによるパワ変化を調べるためのシミュレーションの構成図である。
    図54Aは、1460nmの分散が0ps/nm/kmのファイバを用いた時の、ファイバ長に対するトータルパワとピークパワの関係をシミュレーションによって見積もったグラフである。
    図54Bは、1460nmの分散が1ps/nm/kmのファイバを用いた時の、ファイバ長に対するトータルパワとピークパワの関係をシミュレーションによって見積もったグラフである。
    図54Cは、1460nmの分散が5ps/nm/kmのファイバを用いた時の、ファイバ長に対するトータルパワとピークパワの関係をシミュレーションによって見積もったグラフである。
    図55は、P・L effとピークパワの関係を示したグラフである。
    図56は、ピークパワが3dB落ちるときのP・L effと分散をプロットしたグラフである。
    図57は、各LDの波長間隔を変えた時のピークパワの変化量とファイバ長の関係を示したグラフである。
    図58Aは、実施の形態1にかかる波形整形器の構造を示す模式図である。
    図58Bは、実施の形態1にかかる波形整形器の群速度分散の分布の一例を示すグラフである。
    図59は、実施の形態1にかかる波形整形器によってソリトン変換を行った場合の入力光と出力光の自己相関関係の変化について説明するためのグラフである。
    図60は、実施の形態1の変形例にかかる波形整形器における群速度分散の分布の一例を示すグラフである。
    図61は、実施の形態2にかかる波形整形器の構造を示す模式図である。
    図62A〜図62Dは、は、アイソレータの有無および配置する位置による戻り光の強度の変化について説明するためのグラフである。
    図63Aは出力光の自己相関関係を示すグラフである。
    図63Bは、出力光のスペクトル波形を示すグラフである。
    図64は、実施の形態3にかかる光パルス発生装置の構造を示す模式図である。
    図65は、2次分散値の絶対値に対して基本ソリトン励起に必要な入力光の強度の依存性を示すグラフである。
    図66は、パルス圧縮伝送路に入力する光の強度と圧縮パルス幅の限界値との関係を示すグラフである。
    図67は、実施の形態3の変形例にかかる光パルス発生装置の構造を示す模式図である。
    図68は、本発明の波形整形器を配置させた光再生システムの一構成例を示す図である。
    図69は、その他の実施形態にかかる構成を示す概要図である。

    発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
    (光パルス列発生装置の実施形態)
    まず、本発明に係る光パルス列発生装置の実施形態について説明する。 まず、本発明の光パルス列発生装置の実施例を図2と図3に示す。
    図2は、本発明の光パルス列発生装置の、全般的システム構成を示す図である。 図2において、2モードビート信号光源(dual−frequency optical source)から出力された信号光の波形はsin波形であるが、ソリトン波形整形器(soliton shaper)によって、ソリトン整形された後の出力光は、sech 波形の断熱ソリトン圧縮に適した形となる。 その後、断熱ソリトン圧縮器(adiabatic soliton compressor)によって、テラビット伝送に適応するパルス光信号を得ることができる。 圧縮器前半において、ソリトン変換されたパルスが後半で圧縮されるプロセスである従来法に比べて、本手法では、圧縮器の最初から圧縮が生じ得る為に、圧縮性能向上が実現され得る。 更に、ソリトン波形整形器によって、SBS効果発生の前にスペクトルが効率良く広帯域化され得る。 その結果、CDPF全体でのSBS効果が抑圧される。
    図3では、ソリトン波形整形器に分散増大CDPFを、断熱ソリトン圧縮器に分散減少CDPFを適用した実施例を示す。 波長の異なる2台の半導体レーザの出力光を合波した後に、エルビウム添加物ファイバ増幅器や半導体光増幅器に入力する。 その増幅されたビート光を、2段のCDPFに入力する構成である。 この2段のCDPFに、分散増大ファイバと分散減少ファイバの組合せを活用することによって、パルス品質を劣化させずに高圧縮率を実現できる。 また、CDPF技術の活用によって、分散増大・分散減少プロファイルを容易に実現できるだけではなく、ファイバ長調整を通じて分散値を緻密に連続的にコントロールできる。
    具体的な機器を説明すれば、本発明の光パルス列発生装置は、下記の機器から構成されている。
    (1)モードの異なる光信号を発信する2台の半導体レーザ出力と、その光信号を合波して2モードビート信号光を作る合波器を備える2モードビート信号光源(Dual−frequency optical source)
    (2)散増大CDPFにより構成され、2モードビート信号光をソリトン変換するソリトン波形整形器(Soliton shaper)
    (3)散減少CDPFで構成され、ソリトン変換された信号光を断熱ソリトン圧縮する断熱ソリトン圧縮器(Adiabatic soliton compressor)加えて、高品質なソリトン列を発生させる上では、可能な限り非線形係数が大きなファイバ、即ちHNLF、を活用することが重要となる。 理想的なCDPFでの非線形ファイバでは、非線形性のみが生じ、分散は抑圧される必要がある。 従来では、この非線形ファイバに2次分散値が極めて小さい分散シフト化ファイバを用いているものが多い。 このような2次分散値が極めて小さいファイバでは高次分散効果が増強され得る為に、一般には、パルス品質は劣化する。 これに対して、分散値の小さいHNLFは、分散効果が小さいだけではなく、非線形性も増強され、より理想的な非線形ファイバとして動作し得る。 この結果として、CDPF設計の自由度が向上し、圧縮パルス品質の劣化抑圧も容易となる。
    この分散増大CDPFと分散減少CDPFは、HNLFとSMFの融着接続によって製造される。 従って、これらのCDPFは、D値がファイバの長さ方向に一定であるHNLFとSMFの、たった2種類のファイバの長さを調整するだけで容易に構成され、その結果、現実の製造、施工時に多きなメリットを有する。 これに対し、上述したが、従来の分散増大ファイバおよび分散減少ファイバは、長さ方向に対しDの値が緻密調整された光ファイバを使用する必要がある。 この光ファイバの製造は、大変困難であり、実際の製造、施工時に多大な時間とコストを有することになる。
    また、HNLFは、正常分散HNLFと呼ばれる分散値がマイナスとなるファイバであり、これを用いた分散増大CDPFによるソリトン波形整形器は、圧縮ファイバによるSBSを抑えて雑音を抑制することができる。 また、正常分散HNLFを用いたCDPFによるソリトン圧縮器との相性もよく、雑音の抑制された出力光を得ることができる。
    このCDPFのファイバ特性は表2にまとめられている。

    表2は、波形整形器及び断熱ソリトン圧縮に用いたCDPFのファイバ特性を示す。 D

    aveは平均分散値を表す。 1st pair〜3rd pairにおいては、HNLFの長さを40mに固定して、SMFの長さを長くしていくことによってD

    aveを増加させ、分散増大CDPFを実現している。 これを波形成形器として使用する。


    また、4th pair〜6th pairにおいては、HNLFの長さを100mに固定して、SMFの長さを短くしていくことによってD

    aveを減少させ、分散減少CDPFを実現している。 これを、ソリトン圧縮用に使用する。


    以上により、HNLFとSMFのたった2種類のファイバの長さを調整することで、所定の分散増大CDPFと分散減少CDPFを得ることができる。


    ここで図4に、これらの波長成形、及び、ソリトン圧縮用のCDPFのファイバプロファイルを示す。 図4の上段のグラフは、理想的な分散プロファイルを示す。 グラフの縦軸は分散値Dを示し、単位はps/nm/kmである。 横軸はファイバ長手方向距離zを示し、単位はmである。


    図4の中段のグラフは、表2で示すCDPFの分散プロファイルを示す。 縦軸、横軸の単位は、図4の上段のグラフと同様である。 また、破線は、平均分散値D

    aveを表している。


    図4の下段のグラフは、表2で示すCDPFの非線形係数γのプロファイルを示す。 グラフの縦軸は非線形係数γを表し、単位は1/W/kmである。 横軸は、ファイバ長手方向距離zを表し、単位はmである。


    まず、図4の中段のグラフに示した平均分散値D

    aveからわかるように、波形整形を目的としたCDPFには、所定の分散増大プロファイルを有し、断熱ソリトン圧縮部を目的としたCDPFには、所定の分散減少プロファイルを有している。


    また、ここで注目すべきことは、図4の下段のグラフから明らかなとおり、CDPFにHNLFを活用したことによってファイバ分散だけではなく、非線形係数も櫛状のプロファイルを有するファイバを実現できたことである。 このことによって、非線形効果と分散効果を交互に生じせる、理想的なプロファイルを得ることができる。


    つまり、非線形媒質と分散媒質の寸法を調整することによって、伝送特性を制御することができる。 ここでいう寸法とは、光ファイバの長さを始めとして、その他、媒体の長さ、厚み等、非線形特性、分散特性に影響を与えるあらゆる寸法が該当する。


    ここで、HNLFの実際の分散値と非線形係数はそれぞれ・0.8ps/nm/kmと24 1/W/kmである。 このHNLFの分散値がマイナス値をとる正常分散化によって、ソリトン圧縮におけるパラメトリック利得発生を抑圧でき、結果として雑音増大が抑圧されている。


    次に、図5に、上述のビート光を、分散増大CDPFを用いるソリトン変換、及び、分散増大CDPFを用いるソリトン圧縮を行った結果の値、つまり、本発明の光パルス列発生装置の性能を示す入出力パルス波形を示す。


    図5Aは、入出力パルスの自己相関波形を黒丸に示す。 グラフの縦軸は光強度を表し、単位はarbitrary unitである。 グラフの横軸は時間遅延を表し、単位はpsである。 また、理想的なsech

    パルスの自己相関波形を破線で示す。


    図5Bは、光スペクトル波形を示す。 グラフの縦軸はスペクトルを表し、単位は10dB/divである。 グラフの横軸は波長を表し、単位はnmである。 また、理想的なsech

    波形を破線で示す。


    ここで注目すべきことは、実験結果と破線が自己相関波形上だけではなく、光スペクトルにおいても良く一致していることである。 更に、CDPF入出力パルススペクトルのモード幅に大きな変化が無いことから、ソリトン圧縮過程における雑音増幅が少ないことが証明されている。


    以上の結果から、本発明の光パルス列発生装置によって得られた光パルスが、超高純度なソリトンであることを示している。 また、自己相関波形フィッティングから換算される時間幅は、830fsである。


    従って、2モード光光源と、正常分散HNLFを使用した分散増大CDPFによるソリトン波形成形器と、正常分散HNLFを使用した分散減少CDPFによるソリトン圧縮器とを組み合わせた光パルス列発生装置によって、サブピコ秒レベルの圧縮された超高純度ソリトンを得ることが可能となり、テラビット伝送の実用化に大きく近づいたと言える。


    また、図4の実施例のCDPFに比べて、より緩やかに分散減少されるCDPFを適用することによって、更に、ソリトン圧縮の性能の向上が図られることが判明している。 その一例として、6ペアCDPF断熱ソリトン圧縮部を有するソリトン圧縮器のファイバの特性を表3に示す。


    aveは平均分散値を表す。 1st pair〜3rd pairにおいては、HNLFの長さを40mに固定して、SMFの長さを長くしていくことによってD

    aveを増加させ、分散増大CDPFを実現している。 これを波形成形器として使用する。


    また、4th pair〜9th pairにおいては、HNLFの長さを100mに固定して、SMFの長さを短くしていくことによってD

    aveを減少させ、分散減少CDPFを実現している。 表3の場合に比べて、分散減少CDPFの長さが2倍となっている。 これを、ソリトン圧縮用に使用する。


    また、図6に、CDPFのファイバ特性プロファイルを示す。 図6の上段のグラフは、表3で示すCDPFの分散プロファイルを示す。 グラフの縦軸は分散値Dを示し、単位はps/nm/kmである。 横軸はファイバ長手方向距離zを示し、単位はmである。


    図6の下段のグラフは、表3で示すCDPFの非線形係数γのプロファイルを示す。 グラフの縦軸は、非線形係数γを表し、単位は1/W/kmである。 また、横軸はファイバ長手方向距離zを表し、単位はmである。


    以上のプロファイルを持つCDPFファイバによって、図5に示される出力光よりも、更に圧縮された超高純度ソリトンを得ることができる。


    また、ビート光発生部の雑音低減化も重要である。 半導体レーザ(LD)2台の出力CW光を合波することによってビート光を得るのが一般的である。 しかしながら、LD出力パワーは数十mW程度が一般的であり、次段ソリトン変換並びにソリトン圧縮には不充分である。 その為にビート光の増幅が必要となる。 しかし、その増幅器の雑音が問題となる。


    図3の光源部品において最も雑音付加が多いのがEDFAである。 言い換えるに、EDFAを使用しない方式では、より高品質なソリトン列の発生が可能となる。 この考えに基づくEDFA−freeな光源の実施例を、図7に示す。 高出力(

    50mW)LD2台の出力CW光を、合波することによってビート光(

    50mW)が得られる。 このビート光は次段ソリトン変換及び圧縮に十分な光パワーを有しているので、光増幅を必要としない。 したがって、より雑音が少ないソリトン列の発生が可能である。 また、EDFAに用いられるポンプLD、駆動回路を省略できる為に、装置自体の小型化もメリットの一つである。


    次に、本光源の光伝送システムへの応用を考えると、光源の外部同期は必須機能である。 本光源は、このファンクション実現も容易に行える特長を有する。


    これに関する実施例として、その光源構成を図8に示す。 図7に示した低雑音光源を基本とするソリトン列発生部とOPLL(optical phase locked loop)部の組合せ構成である。 このOPLL部の動作原理の詳細を以下に説明する。


    外部入力光を参照信号とする場合、この外部入力光の繰返し周波数と2モード光のビート周波数を光領域で比較する。 この比較には光ファイバ非線形効果の一種である四光波混合(four wave mixing:FWM)現象を活用する。 外部光とビート光を合波しHNLFに入力し、FWM光を発生させる。 このFWM光を波長フィルタで切出し、そのパワーをモニタする。 このFWM光パワーが最大となるように、ビート光発生部のLD波長を調整することによって、周波数の同期が可能となる。 また、外部電気信号との同期をとる場合は、はじめに、その電気信号に基づくクロックパルス列を発生させる。 これには簡易かつ高速な電界吸収型半導体変調器(electro−absorption semiconductor modulator:EAM)付DFBLDが適している。 また、必要であればHNLFを用いてパルス圧縮する。 この光クロックパルス列とビート光の繰返し周波数を、上述と同様に光領域で比較することによって同期が実現される。


    また、長距離の伝送中に発生する信号光の波形の乱れや信号光パルスの時間ずれを、中継点で補償することは、テラビット長距離伝送における重要課題である。 これに関して、上記光源は、再生中継サブシステムの光クロックパルス光源にも活用できる。 これを図9に示す。


    再生中継の初段では、劣化している伝送信号光のノイズ除去を行うことによって、ある程度、波形を成形することができる。 これは、閾値と飽和を有する入出力特性のデバイスを使用することによって実現される。


    しかし、この機能だけでは、信号光パルスの時間ずれは補償されない。 この信号光パルスの時間ずれを補償する機能として、下記の説明するRetimingがある。


    ここでは、タイミングのずれを有する信号を、基準繰り返し周波数のクロックパルス列によってスイッチングし、Retiming機能を実現するものである。 光領域でのスイッチの実現法として、光ファイバの非線形効果に基づく方法が一般的といえる。


    このRetimingで必要となるクロックパルス発生に、図8に示すOPLL付きソリトン列発生装置を活用させることが有効である。 この出力パルスとして、入力信号光の繰り返し周波数に同期したソリトンパルス列が得られる。 この光源出力パルスは、高純度な信号光パルスなので、高品質伝送路の構築、すなわち、高性能伝送路と高品質伝送パルスの実現が必須の条件となるテラビット級OTDM伝送システムに、非常に適している。


    また、本発明の光源は、OTDMシステム受信部に必要となるDEMUX部のクロックパルス列発生に使用することに関しても、非常に適している。 この実施例を図10に示す。


    図10に示されるシステムは、伝送された光信号を分岐して取り出し、その信号の繰り返し周波数の分周を有するクロックパルス列でスイッチするものである。 このクロックパルス列発生とクロック抽出に、図8に示す光源を採用する。 図10では、Kerr−shutterにて分岐をしているが、もちろん、他の装置、方法によって行なうこともできる。


    この本発明の光源を利用することによって、DEMUX部をより簡素な構成で実現することが可能となる。 加えて、図9の再生中継と同様に、スイッチ前にあらかじめ雑音除去をして波形成形することによって、更なる高性能化が可能である。


    以上のように、本発明の光源は、発信部、中継部、受信部等、伝送システムのあらゆる部分において適用可能であり、本発明によって、テラビット級OTDM伝送システムの実現に大きく貢献するものである。


    (光パルス列発生装置のその他の実施形態)


    また、光パルスは時間・空間・周波数領域において興味深い特徴を有している。 エネルギーが時間的・空間的に集約している、スペクトルが広帯域化されている、などがその代表例であろう。 この特徴を活用した様々な応用が提案されており、微細加工、多光子吸収加工、サンプリング計測や光ファイバ通信などへの応用が期待されている。


    光パルス発生法の主流が、モード同期チタンサファイアレーザに代表される大型固体レーザ装置である。 ただし、空間光学系を用いている為に、小型化困難であり安定性も乏しい。 これらの本質的な問題の為に、この光源の産業応用が疑問視されている。 一方、小型・安定性の観点からは半導体レーザ(laser diode:LD)や誘電体・半導体光変調器を用いる方式に勝るものはない。 特に、この方式では電気信号との同期が容易であり、産業応用に必須な特徴を本質的に備えている方式といえよう。 ただし、この方式によって得られる光パルスの時間幅はたかだか1ps程度である為に、更なる時間幅短縮には光パルス圧縮器が必須となる。 更に、1台のLDからの出力パワーも数百mWが限界であり、ワット級・マイクロジュール級増幅には外部光増幅器が必要となる。 本発明は、特に、前者のパルス圧縮に関する技術である。


    簡素でLD出力パルスとの整合性が良いパルス圧縮方式として、光ファイバ非線形効果を用いる方式がある。 特に、低雑音性に優れているのが基本ソリトンを活用する断熱ソリトン圧縮である。 光ソリトンは光ファイバ伝搬において摂動が存在した場合でも、ソリトン次数と呼ばれる以下の式で表されるパラメータNを一定にするように自分自身の波形を変化させる。


    ただし、γとβ

    は光ファイバの非線形係数[1/W/km]と分散値[ps

    /km]である。 また、P

    、T

    とε

    は光ソリトンのピークパワー[W]、1/e

    パルス幅[ps]とパルスエネルギー[pJ]である。 摂動として、β

    が減少する場合やε

    が増大する場合、光ソリトンはNを一定化させるためにT

    を減少させる。 これが断熱ソリトン圧縮の原理である。


    この断熱ソリトン圧縮プロセスの実現法として、(1)ファイバ長手方向に分散値が減少する分散減少ファイバ(dispersion−decreasing fiber:DDF)、(2)異種ファイバを組み合わせることによってDDFを模倣するファイバ、そして(3)長手方向に緩やかな利得を有するファイバ、を活用する方式が提案されている。 ここでは、各々の特徴をまとめてみよう。


    (1)DDFは理想的な断熱ソリトン圧縮ファイバである。 しかしながら、局所分散値を厳密に制御する必要があり、その作製は容易とはいえない。 分散揺らぎは雑音増幅につながり、圧縮パルスの品質劣化につながる。 また、入力パルス特性に対してDDF入力端分散値と分散減少率を最適化する必要があり、決して柔軟性が高い方式とはいえない。


    (2)分散一定ファイバ数種類を接続することによってDDFを模倣することが可能である。 数種類の異なる分散値を有する分散シフトファイバ(dispersion−shifted fiber:DSF)を接続するステップ状分散プロファイルファイバ(step−like dispersion profiled fiber:SDPF)と2種類の異なる分散値を有するDSFを交互に配置するコム状分散プロファイルファイバ(comb−like dispersion profiled fiber)がある。 これらは分散値を緻密に制御することが可能である一方で、ファイバ接続の融着ロスが存在する為に、圧縮性能の観点からは他手法に劣る。


    (3)光ファイバ増幅器はエルビウム添加ファイバ増幅器(Erbium doped fiber amplifier:EDFA)及びラマン増幅器に大別される。 特に後者のラマン増幅は、非線形光学効果である誘導ラマン散乱を利用して光増幅を行うため、EDFA等と異なり、励起光の強度および波長を変動させることによって増幅利得を調整することが可能である。 従って、入力される光の波形およびDSFの分散値の変動を補償するように増幅利得を制御することによって、容易に断熱ソリトン圧縮が可能となる。 しかしながら、ラマン増幅を組み込んで光パルス圧縮器を構成した場合、光パルス圧縮器が大型化するという問題を有する。 これは、ラマン増幅はEDFAに比べて増幅効率が低く十分な光増幅には通常、数十kmのファイバ長を有するDSF等が必要となり装置を小型化することが困難となる為である。


    これら圧縮方式の共通の問題が誘導ブリリュアン散乱(Stimulated Brillouin Scattering:SBS)現象による入力パワー制限である。 SBSとは、光ファイバにおける光波パワーがある閾値に達した場合、後方散乱光が発生する現象である。 このために、圧縮ファイバに伝搬可能な光波パワーが制限され、効果的な断熱ソリトン圧縮プロセスの実現が困難となる。


    以上の3形態の圧縮ファイバの中で本発明に関るのが(2)に記したCDPFと(3)のラマン増幅器である。 本発明は、これらの延長型と位置付けることも可能であるが、全く新しい概念であることに注意されたい。 ここで、以下で用いている波形整形器とは光波の時間及びスペクトル領域の波形を整形する装置を意味し、そこには光パルス圧縮やスペクトル広帯域化器も含まれることに注意されたい。


    光パルスの波形を整形する手法として、伝送路の局所分散効果と局所非線形効果を通じて光波を制御する方式が一般的である。 光ソリトン、スーパーコンティニューム光などもこの方式に含まれる。 局所的な分散及び非線形効果を調整する従来法とは異なり、分散媒質と非線形媒質を交互に配置する伝送路によって光波を制御するのが本発明である。 本発明の概念図を図11に示す。 特に、各分散媒質での分散による位相回転と各非線形媒質における非線形誘起位相回転が1ラジアン以下であれば、それらの媒質の寸法を調整することは局所的な分散と非線形を制御することと等価である。 ここでいう寸法とは、光ファイバの長さを始めとして、その他、媒体の長さ、厚み等、非線形特性、分散特性に影響を与えるあらゆる寸法が該当する。


    分散媒質と非線形媒質が交互に配置された伝送路を実現する手法の一つが光ファイバであり、これも本発明である。 分散値だけでなく非線形係数も異なる2種類の光ファイバを交互に接続することによって、分散媒質と非線形媒質が交互に配置された伝送路を実現できる。 このような伝送路をここではCPF(comb−like profiled fiber)と呼ぶ。 このCPFの概念図が図12である。 近年、従来ファイバに比べて倍以上大きな非線形係数を有する高非線形ファイバ(highly−nonlinear fiber:HNLF)が実現されている。 非線形係数だけでなく通常分散シフトファイバ(dispersion−shifted fiber:DSF)と同様に分散制御も可能であり、多様な分散値を有するHNLFが実現されている。 このようなHNLFを用いれば、CPFを作製することは容易である。 ゼロ分散を有するHNLFを非線形媒質として用い、従来のシングルモードファイバ(standard single−mode fiber:SMF)を分散媒質とするCPFがその一例である。 もちろん、HNLF以外のファイバ、例えば逆に非線形係数が小さいファイバなど、を用いてCPFを作製しても構わない。


    このCPFに用いる光ファイバの条件を分散長L

    と非線形長L

    NLを用いてより定量的に示す。 L

    とL

    NLはそれぞれ分散効果と非線形効果による位相回転が1ラジアンとなるファイバ長を表し、以下の式で与えられる。


    とL

    NLはそれぞれ分散効果と非線形効果による位相回転が1ラジアンとなるファイバ長を表す。 CPFでは、L

    NL <L

    となるファイバを非線形媒質として用いて、L

    NL >L

    となるファイバを分散媒質とする。


    以下では、このCPFの効果を示す。


    CPFの大きな利点が局所分散値の緻密な制御が可能な点である。 一般に、ファイバの局所分散値を精密に制御するには高度なファイバ作製技術が必須である。 一方で、非線形媒質と分散媒質のペアの多段であるCPFの局所分散値はその分散媒質の寸法、言い換えるならば各ペアの平均分散値、によって決定される。 例えば、上述のHNLFとSMFでCPFを構成した場合、CPFの局所分散値はSMF長によって緻密に調整可能である為に、曲分散値の制御が極めて容易である。 その結果、正確な光パルス制御が可能となる。 例えば、パルス伝搬方向に分散値が減少するファイバやその逆の分散増大ファイバもCPFによって容易に実現できる。 それだけでなく、作製が容易ではないそれらの組合せ、分散が増大し減少するファイバや、その逆の分散が一旦減少し増大するファイバもCPFの分散ファイバ長を調節するだけで容易に実現可能である。 更に、長手方向の分散値の安定化が作製上困難なファイバであっても、このCPFを適用させれば一定分散を有するファイバを近似的には実現できる。


    加えて、CPFはSBS抑圧効果を備えているという大きな利点を有する。 一般に、分散値や非線形係数が大きく異なるファイバでは、ブリリュアン利得帯域も大きく異なる。 従って、CPFに用いられる各ファイバは大きく異なるブリリュアン利得帯域を有しており、その結果としてCPFのSBS閾値は、CPFと同程度のCPF構成の光ファイバのSBS閾値よりも減少する。 SBS閾値が小さいCPFでは、SBS現象によって入力パワーが制限されない為に、光波制御が容易になる。 この特長を活かすのがSBS抑圧器としてCPFを用いる手法である。 光波のスペクトルを広帯域化することによってSBSを抑圧できる。 このスペクトル広帯域化にCPFを用いることによって、動作パワー条件をより高パワー化できる。


    また、アイソレータ挿入によってSBSを抑圧することが可能である。 これは、アイソレータ挿入によってSBS誘起後方散乱光の蓄積を減少できる為である。 特に、ファイバ接続点が多いCPFにはアイソレータを挿入しやすく、その挿入位置の最適化も容易である。 一般に、波形整形においてSBSを抑圧する場合は、スペクトルが広帯域化される前にアイソレータを挿入するのが効果的である。 アイソレータのファイバ挿入位置はソリトン周期z

    soliton以内が目安となる。


    本発明の別形態が図13のHNLFを用いるラマン増幅器を活用する波形整形器である。 ラマン利得媒質となるHNLF、ポンプLD、そしてポンプ光をHNLFへ入力する為のWDMカプラからなる。 ラマン利得に用いているファイバとして、5W

    −1 km

    −1以上の非線形係数を有するHNLFを用いることが特徴である。 HNLFは高い非線形係数γを有することから、入力されたソリトン光に対して、短いファイバ長で効率良くラマン増幅を行うことができる。 ラマン増幅は、非線形光学効果の一種であることから、非線形係数γの値が大きいほど単位ファイバ長あたりの増幅効率を高めることが可能となる。 このため必要なファイバ長を短くすることが可能となり、ラマン利得ファイバの長さを2km程度と、非常に短くすることができる。 このことは波形整形器の小型化の観点からは非常に重要な利点であって、HNLFを使用することによって小型の波形整形器が実現できる。 具体的には、従来の波形整形器と比べてラマン利得ファイバを1/10程度の短尺化することが可能である。


    また、本波形整形器では、所定の2次分散値β

    の絶対値に対して、入力される光波の強度を従来よりも低減することが可能である。 図14は、2次分散値β

    の絶対値に対して基本ソリトン励起に必要な入力光の強度の依存性を示すグラフである。 図14において、曲線l

    は従来の光パルス圧縮器について示し、曲線l

    は、本発明について示す。 図14からも明らかなように、例えば、|β

    |=1ps

    /kmの場合において、従来は入力光が150mW程度の強度を必要としていたのに対し、本発明では20mW程度の強度の光を入力することによってパルス圧縮を行うことができる。 半導体レーザ素子を光源とした場合20mW程度の出力であれば低い注入電流で容易に実現できるため、本発明にかかる光パルス発生装置では、光増幅器を省略することが可能であると共に、低消費電力の光パルス発生装置を実現することができる。


    また、ラマン増幅ファイバにHNLFを用いた場合、HNLFは高い非線形係数γを有するために従来の光パルス圧縮器よりも2次分散値β

    の値が大きな光ファイバを用いることが可能である。 上記したように、入力されるソリトン光は、基本ソリトン条件、具体的には(1)式においてN=1を満たすことが好ましい。 従って、非線形係数γの値が小さい場合、2次分散値β

    の値を大きくするためには、入力されるソリトン光が高い強度が必要となることから、一般に2次分散値β

    の値は低く抑える必要があった。 本発明のラマン増幅ファイバ非線形係数γが高い値を有することから、これに対応して2次分散β

    も高い値に設定しても入力されるソリトン光の強度を高くする必要はなく、低強度の入力光によって高効率のパルス圧縮を行うことが可能である。


    上述の2次分散値β

    の値を高くすることによる利点について説明する。 断熱ソリトン圧縮によるパルス幅の圧縮は、基本的には上記した(1)式に従うが、実際には高次の分散値によってパルス幅の圧縮は制限されることが知られている。 具体的には、3次分散値β

    、4次分散値β

    等が2次分散値β

    と比較して所定以上の値を有する場合、ソリトン光のパルス幅の圧縮を効率的に行うことができなくなる。 本発明では大きな2次分散値β

    を有するラマン利得ファイバを用いることができ、相対的に高次の分散値の値は低下することから、ソリトン光のパルス圧縮を行う際に高次分散値の影響を排除することが可能となる。 さらに、HNLFは3次分散値β

    の値を従来よりも低くすることが可能である。 例えばβ

    の値を従来の1/3程度である0.03ps

    /km程度とすることができる。 このことによって、出力光のパルス幅をより小さい値にまで圧縮することが可能となる。


    図15は、ラマン増幅器に入力する光の強度と圧縮パルス幅の限界との関係を示すグラフである。 ここで、曲線13は、本発明について示す曲線であり、曲線14は、比較のため従来のDSFを用いた波形整形器について示す曲線である。 曲線13と曲線14との比較から明らかなように、本発明では同一の入力光強度に対してより狭い範囲にまでパルス圧縮を行うことが可能である。 具体的には、従来のDSFを用いた場合には10mW程度の入力光強度の場合には数ps程度であっても圧縮することが困難であるのに対して、本波形整形器では200fs程度にまでパルス幅を圧縮することができる。


    また、100fsまでパルス幅を圧縮する場合、従来は250mW程度の入力光強度が必要であったのに対し、本ラマン増幅型波形整形器では、非線形係数γ=15W

    −1 km

    −1 、3次分散値β

    =0.1ps

    /kmの場合は46mWで足り、γ=15W

    −1 km

    −1 、β

    =0.03ps

    /kmの場合は15mWで足りる。 さらに、γ=25W

    −1 km

    −1 、β

    =0.03ps

    /kmの場合には入力光の強度を8.3mWであっても100fsのパルス幅を実現することができる。


    なお、ラマン増幅ファイバにHNFLを用いた場合、従来のDSFと比較して高次の分散値を低い値とすることが可能である。 例えば、3次分散値β

    の値について、DSFでは0.1ps

    /km程度が一般的なのに対して、HNLFでは0.03ps

    /km程度にまで3次分散値を低減することが可能である。 3次分散値等の値を低減することが可能であることから、HNLFでは高次の分散値に対して2次分散値の値を相対的に高めることが可能となる。 例えば、ラマン増幅ファイバの3次分散値が0.03ps

    /kmの場合には、100fs程度にまでパルス幅を圧縮する場合に必要な2次分散値は、従来のDSFでは2ps

    /km程度必要となるのに対して、HNLFでは、0.6ps

    /km程度でも十分となる。


    次に具体的な実施例について説明する。

    本発明であるCPFやHNLFにおけるラマン増幅器を用いた波形整形器を活用することによって高性能パルス列発生装置を実現できる。 その装置の形態を図16に示す。 光ビート光発生部、ソリトン変換部、そして断熱ソリトン圧縮部の組合せである。 光ビート発生部はサイン波状信号を発生させる装置である。 次のソリトン変換部において、そのビート光をソリトン変換する。 その後、断熱ソリトン圧縮部において低雑音パルス圧縮する。 ソリトン変換部と圧縮部を分離することによって、それぞれに最適な伝送路設計を適用でき、その結果、高品質かつ高効率なソリトン圧縮が可能となる。 このソリトン変換器や断熱ソリトン圧縮器に上述のCPFやラマン増幅器を用いることもできるし、それ以外のファイバを用いても構わない。

    CPF波形整形器を用いる光パルス列発生装置を図17に示す。 これは図16に示した光源の一形態であり、2台のCW−LDからなるビート光発生部、CPFソリトン変換部、そしてCPFソリトン圧縮部の構成となっている。 2台のCW−LD出力CWを合波することによって、それら波長差に対応した繰返し周波数を有する光ビートが得られる。 はじめのCPFにおいて、このビート光を次段パルス圧縮に最適な波形であるソリトンに変換し、次のCPFにおいてソリトン圧縮する。 CPFソリトン変換器を用いることによって、ビート光を直接ソリトン圧縮するのではなく、圧縮に最適なソリトンに変換した後に圧縮することによって、理想的な断熱ソリトン圧縮プロセスが実現できる。
    ソリトン変換・圧縮に用いたCPFはHNLFとSMFの3ペア構成、即ち合計で6ペア構成である。 HNLFの非線形係数は24 1/W/kmであり、その分散値は−0.8ps/nm/kmである。 ここで、HNLFの分散が負値の正常分散であることに注目されたい。 正常分散HNLFを用いることによって、HNLFでの変調不安定性(modulation instability:MI)利得の発生を抑圧できる。 MI利得を通じて雑音と光パルスの相互作用が増強される為に、MI利得発生の抑圧は低雑音パルス列発生には重要である。
    CPFの分散値Dと非線形係数γのプロファイルを図18BとCに示す。 B内の破線はCPF各ペアの平均分散値である。 CPFの初段3ペアがソリトン変換部、後段3ペアがソリトン圧縮部に相当する。 CPFに低分散HNLFとSMFを用いることによって分散値だけでなく非線形係数もコム状になり、非線形媒質と分散媒質が交互に配置された伝送路が実現されている。 また、CPFにおいて各ペア平均分散値が一旦増大して減少するように分散プロファイルが設計されている点に注目されたい。 CPFでは各ペア平均分散値が局所分散値の目安となるために、このCPFは図18Aに示す分散増大ファイバと分散減少ファイバの組合せと等価である。 この分散増大ファイバに相当するCPFがソリトン変換部であり、ここでビート光からソリトンへの効率良い変換が実現される。 その後の分散減少ファイバに相当するCPFにおいて断熱ソリトン圧縮プロセスが実現される。 このCPFの各ファイバの長さと各ペア分散値D aveを表4にまとめる。

    また、CPFの第1ペアと第2ペアの間、及び、第4ペアと第5ペアの間に光アイソレータが挿入されている。 これによってCPFにおけるSBSを抑圧している。 もちろん、アイソレータ無挿入のCPFもSBS抑圧効果を有しているものの、その効果をより増強する為に2台のアイソレータを挿入した。 目的に応じては、アイソレータの台数を増やしても、逆にアイソレータ台数を減少させても構わない。


    上述のビート光をCPFによってソリトン変換・圧縮を行った結果の値、つまり、本発明の光パルス列発生装置の性能を示す入出力パルス波形を図19示す。 図19Aは、入出力パルスの自己相関波形を示す。 グラフの縦軸は光強度を表し、単位はa. u. である。 グラフの横軸は遅延を表し、単位はpsである。 図19Bは、光スペクトル波形を示す。 グラフの縦軸はスペクトルを表し、単位はdB/divである。 グラフの横軸は波長を表し、単位はmnである。 また、パルス波形をsech

    波形にフィッティングした結果を破線で示す。 ここで注目すべきことは、実験結果と破線が自己相関波形上だけではなく、光スペクトルにおいても良く一致していることである。 更に、CPF入出力パルススペクトルのスペクトル線幅に大きな変化が無いことから、ソリトン圧縮過程における雑音増幅が少ないことが証明されている。 また、自己相関波形フィッティングから換算される時間幅は830fsである。 このときの時間帯域幅積ΔtΔνは0.34と算出され、ほぼフーリエ変換限界パルスが得られていることが示されている。 以上の結果から、本発明の光パルス列発生装置によって得られた光パルスが、超高純度なソリトンであることを示している。

    本発明の別形態が図20に示す構成を有する光源である。 CW光から光変調器を用いてビート光または種パルスを発生させる種パルス発生部と、その時間幅を短縮化させるパルス波形整形部から成る光パルス列発生器である。
    種パルスは高速光変調器、例えばLiNbO 変調器(LiNb optical modulator:LNM)や電界吸収効果型半導体光変調器など、によって発生される。 外部電気信号によって高速光変調器、例えばLiNbO 光変調器や電界効果型半導体光変調器など、を駆動することによって、電気信号に同期した光信号を容易に発生することができる。 電気信号として電気パルス信号を用いた場合、その電気パルスと同様な光パルスが得られる。 もちろん、パルス繰返し周波数やパルス時間幅は電子回路の帯域によって制限され、現状ではそれらは40GHz、>10ps程度にとどまっている。
    本光源では、種パルスはパルス波形整形部によって時間幅短縮化される。 光変調器を用いて発生される種パルスを非線形ファイバパルス圧縮する上で問題となるのは、そのファイバ長である。 光変調器によって得られるパルスの時間幅はたかだか10ps程度である。 このような比較的広い光パルスを圧縮するには、数十km以上の圧縮用ファイバが必要となる。 これはスペクトル帯域が40GHz程度の光パルスに対して郡速度分散効果の影響を与えるには長尺なファイバが必要である為である。 一般に基本ソリトンの特徴を活用する圧縮器の場合、そのファイバ長を決定付けるパラメータはソリトン長z solitonである。 この値と入力パルス幅Δtの関係を示したのが図21である。 ここではファイバ分散値として10ps /kmを用いて計算した。 Δt増大に伴いz solitonはその2乗に比例し増大する。 例えば、20psパルス圧縮に対してz solitonは10km程度である。 断熱ソリトン圧縮過程ではz soliton程度のファイバにおける圧縮率は2〜3程度であることを考えると、20psパルスを数psまで圧縮するには少なくても20km以上のファイバが必要となる。 このような長尺ファイバでは損失が大きくなる為に、理想的な圧縮の実現が困難となる。
    一方で、実施例1で示したように、各ペア平均分散値の最適化とHNLF使用によってCDPF性能が改善されたCPFでは、圧縮ファイバ短尺化と圧縮パルス品質保持の両立が実現されている。 これは160GHzビートに対して設計されているCPFであり、40GHzビート光や>10ps光パルスをそのまま適用することは不可能であるが、入力光に対して最適化することは可能である。 一般には、圧縮ファイバ長は繰り返し周波数の2乗に反比例するが、CPFの場合、分散ファイバ、具体的にはSMFのみが長尺化されることになる。 よって、CPF圧縮の場合、>10psパルスや40GHzビート光に対しても圧縮ファイバ長は数キロオーダーとなり得る。 実際、本実施例に示した40GHzビート光、即ち12.5psパルスに対するCDPFのファイバ長はたかだか1.8kmである。
    本発明の一形態を図22Aに示す。 20GHzRF信号によって駆動した多電極LNMによって波長可変レーザ出力CW光(波長λ in )をキャリア抑圧変調し40GHzビート光を得る。 LNMの動作点を最適化することによって、駆動RF信号の2倍の周波数を有するパルス列の発生が可能でり、この方式はキャリア抑圧変調方式と呼ばれる。 この40GHzビート光をEDFAによって24dBmまで増幅し、CPFに入力する構成である。 CPFに入力される40GHzビート光の自己相関波形と光スペクトル波形を図23AとBに示す。 光スペクトルアナライザの波長分解能は0.01nmである。 ビート光のキャリア抑圧比(CSR)は19dB程度である。 使用したCPFはHNLFとSMFの6ペア構成である。 そのHNLFの分散値と非線形係数はそれぞれ−0.7ps/nm/kmと24 1/W/kmである。 このCDPFの分散及び非線形係数のプロファイルを図22Bに示す。 破線は各ペアの平均分散値を示す。 実施例1と同様に、各ペア平均分散値が前半3ペアでは増大し、後半3ペアでは減少するプロファイルとなっている。 このように分散プロファイルを最適化することによって、断熱ソリトン圧縮を基本とする方式でも1.8kmまでの圧縮ファイバ短尺化が可能となる点に注目されたい。 このCPFの各ファイバの長さを表5にまとめる。

    λ

    in =1556nmでのCPF出力パルス列の自己相関波形と光スペクトル波形を図23下部に示す。 比較の為にsech

    状波形を破線で示す。 自己相関波形から計算される時間幅Δtは3.3psであり、ペデスタル・ピーク比R

    ppは13dB程度である。 自己相関波形上での消光比は15dB以上であるが、これは測定限界値である。 また、時間帯域幅積ΔtΔνは0.36であり、ほぼフーリエ変換限界パルスが得られていることを示している。 ここで、自己相関波形だけでなく、スペクトル波形上でも実験結果と破線が良く一致する点に注目されたい。 更に、CSR増大も抑圧されている様子も示されている。 これら結果からCPFによって低雑音・高純度ピコ秒ソリトン列が発生されていることが示された。


    図24はCPF出力パルスのΔt、ΔtΔνとR

    ppのλ

    in依存性である。 測定範囲1530〜1560nmにおいてほぼ一定なΔtとΔtΔνが得られている。 R

    ppに関しても、1540〜1560nmにおいては>13dBが確保されている。 ただし、短波長領域においてペデスタル量が増大する様子が示されている。 これは短波長領域ではSMF分散量が不充分である、言い換えるにSMFが正分散スロープを有する為である。 以上の測定結果から、本圧縮器は1540〜1560nmの動作帯域を有することが示された。 ただし、今回の測定範囲外の>1560nmまで帯域がカバーしている可能性もあることを追記しておく。


    低CSRの光トーン光に対しては、パルス圧縮を通じて20GHzパルス列成分が増強され得る。 この圧縮器の許容CSRを明らかにする為に、自己相関波形上での隣接パルスのピーク値P

    neighのCSR依存性を図25に示す。 比較の為に2モードCWビート光に対する実験結果を白丸でプロットする。 CSRの減少に伴いP

    neighが減少し20GHzパルス列成分が成長する様子が示されている。 P

    neigh >0.9には17dB以上のCSRが必要である。 この値は通常の多電極LNMを用いれば容易に得られる値である。

    ここでは、本発明の別形態として、ビート光ではなく種パルスをCPFによって圧縮する例を示す。 その構成図が図26Aである。 CWレーザ、光変調器、CPFから成る。 CW光から光変調器によって光パルスを発生させる。 ここでは、高速LNMを用いており、40GHzサイン波状電気信号によって、それを駆動している。 ただし、LNMの非線形入出力特性の為に光出力はサイン波よりも時間幅が狭いパルス状になる。 その自己相関波形と光スペクトル波形を図27の上部に示す。 その光スペクトル上に置いて高次のコム成分が発生していることが示されており、自己相関波形から計算されるパルス時間幅は8ps程度である。 この光パルスをEDFAで24dBmまで増幅し、CPFに入力する。 この例は、実施例2のCPF後段3ペアを用いている。 これは、実施例2のCPF前段3ペアの役割がビート光からソリトン列への変換であり、本構成では既にある程度ソリトン的な光パルスがLNM出力で得られており、前段3ペアが不要である為である。 ここで用いた3ペアCPFの分散Dと非線形係数γのプロファイルを図26Bに示す。 また、このCPF各ペアのファイバ長を表6にまとめる。

    CDPF出力パルスの自己相関波形と光スペクトル波形を図27下部に示す。 破線はソリトン波形である。 自己相関波形及び光スペクトル波形において実験結果と破線が良く一致することが示されている。 自己相関波形から換算される時間幅は2.3psである。 このときのΔtΔνは0.32であり、ほぼフーリエ変換限界パルスが得られている。


    図13の光源部品において最も雑音付加が多いのがEDFAである。 言い換えるに、EDFAを使用しない方式ではより高品質なソリトン列の発生が可能となる。 この考えに基づくEDFA−freeな光源の実施例を図28に示す。 高出力(>50mW)LD2台の出力CW光を合波することによってビート光(>50mW)が得られる。 このビート光は次段ソリトン変換及び圧縮に十分な光パワーを有しているので光増幅を必要としない。 したがって、より雑音が少ないソリトン列の発生が可能である。 また、EDFAに用いられるポンプLD駆動回路を省略できる為に、装置自体の小型かもメリットの一つである。

    ここでは、CPFとHNLFにおけるラマン増幅(soliton compression in Raman amplification:SCRA)の波形整形器を用いる光パルス列発生器を説明する。 その構成を示した図画が図29である。 DFBLD2台の出力CW光をカップラによって合波して得られる2モード100GHzビート光をCPFとSCRAからなる圧縮系に入力する構成である。 ここで、SCRAファイバにおけるSBSを抑圧する為にCPFがSCRAの前段に配置されている点に注目されたい。 CPFはHNLFとシングルモードファイバの6ペア構成であり、その分散プロファイルは図18に示されている。 また、SBS抑圧効果を増強する為に、CPFには2つの低損失光アイソレータが挿入されている。
    このCPFを用いてソリトン変換されたパルスをSCRA入力することによってSCRAファイバでのSBS抑圧が可能となる。 これを確認する為に、CPF不使用及び使用の場合のSBS光パワーP SBSとSCRA出力パワーP outのSCRA入力パワーP in依存性を図30に示す。 CPF不使用の場合(図30上部)ではSBS閾値は15mW程度であるのに対して、CPFを使用した場合(図30下部)ではSBS閾値が40mW以上に増加しているのが示されている。
    このソリトン変換されたパルスをSCRAによって圧縮する。 このSCRAは2.4km長低スロープHNLFと後方励起用ポンプLD(出力パワー0.8W)と2台のWDMカプラから構成される。 HNLFの非線形係数、分散値及び分散スロープはそれぞれ25 1/km/W、1.0ps/nm/km及び0.013ps/nm /kmである。 注目すべきは、HNLF活用によってSCRAファイバ長が数キロメートルオーダまで尺化されている点である。 数十キロメートルオーダのファイバが必要であった従来法と比べると、1/10程度減少化されている。
    SCRAに入力されたパルスは、HNLFを伝搬するに従いラマン利得をうけ断熱ソリトン圧縮される。 SCRA出力パルス時間幅Δtのラマン利得G及び出力パワーP out依存性を図31の黒丸でプロットする。 破線は基本ソリトン励起パワーとなるP outを示す。 この破線以上の領域においてパルス圧縮が生じ、G増大に伴いΔtが2.1psから840fsに減少する様子が示されている。 更に、この圧縮のメカニズムを明らかにする為にΔt×Gを白丸プロットする。 圧縮が生じている領域ではΔt×Gが一定となることに注目されたい。 断熱ソリトン圧縮においてはこの値が一定となることから、本方式が断熱ソリトン圧縮に基づいていることが示された。
    図32Aと32Bはそれぞれ利得2.4、9.4、11.6と12.6dBにおけるRA出力パルス列の自己相関波形と光スペクトル波形である。 比較の為にsech 波形を破線で示す。 自己相関波形上だけでなく光スペクトル波形上においても破線と実験結果が良く一致しており、高純度ソリトンが発生されていることが示されている。 また、光スペクトル波形の中心波長付近の光パルス信号成分と雑音成分の比が40dB以上確保されている点にも注目されたい。 以上結果から、RA出力パルスは低雑音かつ高純度なソリトンであることが示された。
    (連続光光源の実施形態)
    上述のように、光伝送システムにおいて、光ファイバへの入力光パワーを制限する要因としては、非線形現象が挙げられる。 その中でも誘導ブリリュアン散乱(Stimulated Brillouin Scattering:SBS)は比較的小さな入力パワーで起きやすく、入力したパワーの一部を後方に散乱して伝送システムに悪い影響を与える。 本発明では光ファイバの非線形効果を用いた連続光光源のSBSの抑制方法を開示する。
    SBSを抑制する方法として大きく2つ上げることができる。 1つ目は光源のスペクトル幅を広くすることであり、2つ目は光源のピークパワを小さくすることである。 本発明では光ファイバの非線形現象であるXPM、SPM、Four−Wave Mixing(FWM)を用いてSBSを抑制する。 具体的に説明すると、本発明は、光ファイバの非線形現象を利用してマルチモードの連続光光源の縦モードのスペクトル幅を広げる、もしくはピークパワを抑えることによりSBSを抑制する方法および装置である。
    XPM、SPMは光源のスペクトル幅を広げる効果があり、これによりSBSを抑制することができる。 これは、スペクトル幅が広がるとブリリュアン利得が小さくなり、その結果としてSBS閾値が大きくなるためである。 なお、図33はそのメカニズムの模式図である。
    一般的に、連続光では光ファイバ中のKerr効果による屈折率変化が起きにくいため、これらの非線形現象はほとんど起きないとされている。 しかし、光源にマルチモードの連続光を用いることによりマルチモード間で発生するビートを用いてこれらの非線形現象を起きやすくすることが出来る。 これに対し、従来のSBS抑制では、主にパルス光に対してのみ適用してきた。 しかしながら、本発明では、光源にマルチモードの連続光を適用することにより、連続光でも非線形現象を起こすことが可能であり、この結果、SBSを抑制することができた。
    図34は、FWMを利用したSBSの抑制のメカニズムを示した模式図である。 図34では、光源のマルチモードのパワー配分を変化させ、1モード当りのパワーを小さくしている。 この結果、各縦モードのブリリュアン利得を小さくすることでSBSを抑制することができる。

    SBSを抑制するための連続光光源は、マルチモードで発振する半導体レーザと、零分散波長1461nmの高非線形光ファイバ(Highly Nonlinear Fiber:HNLF)とから構成される。 なお、HNLFは非線形定数γ=24.5/W/km、光ファイバ長500mを用いた。 光ファイバは長いほど、非線形定数は大きいほど非線形現象は起きやすくSBSを抑制できるが、それに伴ってHNLF中でのSBSも起こりやすくなる。 また、HNLFが長くなるほど挿入損失が大きくなる。 これらを加味して、HNLFの長さと非線形係数は決定される。 また、HNLF前後の反射光を抑えるために、必要に応じてアイソレータを配置させても良い。 アイソレータはHNLFの入射前後の伝送路のいずれかもしくは両方に配置させる。
    図35では、さらにSBS測定用の構成が示されている。 HNLFの出射側には、20dBタップと、SBS測定の被測定光ファイバとしてnonzero dispersion shifted fiberであるTrueWave登録商標 RS Fiber(TW−RS)とが順に配置されている。 TW−RSは長さを40kmとし、SBSが十分おきえる長さとした。 20dBタップは、TW−RSからの反射光のパワーを測定するためのReflection Monitor Power Meterと、入射光のパワーを測定するためのThoughput Monitor Power MeterとをSBS測定用伝送路に光学的に接続させるものである。 SBSの値は、これらの測定値を用いて算出する。 なお、SBSの値は、(Return Loss;SBS値)[dB]=(Reflection Power)[dBm]−(Thoughput Power)[dBm]として評価した。
    なお、SBS抑制の効果を明確にするために、図35の実験系が示すようにマルチモードで発振される半導体レーザの連続光をHNLFに通した場合の測定伝送路におけるSBS値(本実施例)と、図36の実験系が示すようにHNLFを通さない場合の測定伝送路におけるSBS値(比較例)とを測定した。 図35、図36の実験系にはAttenuatorが導入されているが、これは同一駆動条件における半導体レーザのSBS閾値を測定するために出力を変化させることができるようにするためである。
    以下に、図35、図36のSBS測定用伝送路を用いた実験結果を示す。 なお、実験では、半導体レーザから出力された連続光をHNLFに通した場合と、通さない場合のSBS値、スペクトルとRIN特性の評価を行った。
    図37、図38は、それぞれ1455nmと1461nmの半導体レーザを用いてSBS値を測定した結果を示すグラフである。 HNLFを通すことによりSBS閾値が大きくなることを確認した。 特に、光ファイバの零分散波長1461nmと半導体レーザの中心波長が近い1461nmの半導体レーザにおいてSBS抑制効果が顕著である。 一般的にFWMは光ファイバの零分散波長に光源の波長が近いほど起きやすいため、半導体レーザの波長を零分散波長にあわせたほうがよい。
    図39乃至図42は1455nmと1461nm半導体レーザからの連続光をHNLFに通した場合と、通さない場合のスペクトルをそれぞれ表す。 このとき、縦軸の光出力目盛りはトータルパワで0dBmに規格化された値を用いている。 1451nmの半導体レーザをHNLFを通したときと通さないときのスペクトルである図39と図40の比較、1461nmの半導体レーザをHNLFを通したときと通さないときのスペクトルである図41と図42の比較から、HNLFを通すことでスペクトル全体がFWMによりブロードになっていることが分かる。 特に光ファイバの零分散波長1461nmに併せた1461nmの半導体レーザで顕著にスペクトルがブロードになっている。 このスペクトルがブロードになった波長帯域と、SBS値が抑制された波長帯域とが一致していることがわかる。 つまり、SBS抑制効果の主な要因はFWMにより、スペクトルがブロード化したからであると考えられる。
    FWMによりスペクトルがブロード化した波長帯域;1461nmの半導体レーザ光をHNLFに通した場合と、通さない場合のRIN特性の測定結果を図43に示す。 図43に示すように、RIN特性の測定結果から、FWMによるRINの悪化がないことが確かめられた。 電気的制御によるSBS抑制技術では、変調やditherをかけている周波数においてRINが悪化する傾向があるが、FWMによるSBS抑制技術ではRINの悪化がほとんどない点が優れている。
    上述した試験結果から、HNLFに半導体レーザモジュールから出力されたマルチモードの連続光を通すことにより、SBSが抑制されることがわかる。 また、SBSを抑制した際にもRINの悪化がほとんどないことがわかる。 SBS抑制の主な要因は、FWMによるものであり、FWMにより各縦モードのピーク値が小さくなるように光ファイバの非線形定数と光ファイバ長をコントロールすることにより効果的に抑制できる。
    次に、上述した連続光光源のSBSの抑制装置および方法を用いたラマン増幅器について説明する。
    図44は、ラマン増幅器の構成図である。 ラマン増幅器には、前方励起型、後方励起型、双方向励起型があるが、前方からの励起光源には特に優れたRIN特性が要求される。 これは、前方からの励起においては、励起光と信号光とが光ファイバ中を一緒に伝搬するため、励起光のRIN特性が信号光に影響を及ぼすからである。 つまり、励起光のRIN特性が悪い場合、信号光のRIN特性も悪くなってしまう恐れがある。
    そのため、ラマン増幅器の前方励起用光源としてRIN特性の優れた半導体レーザの開発が行われてきた。 ラマン増幅起用に一般的に用いられている励起光源には、波長を固定するためFiber Bragg Grating(FBG)がつけられているが、FBGを付けるとRINが悪化する傾向がある。 そこでRINを改善するために、FBGがなくても波長が固定されるように半導体レーザのチップ内部にGratingをつけた半導体レーザが開発された。 しかしながら、内部にGratingを付けると縦モードのスペクトル幅が狭くなりSBSが起きやすくなる傾向があった。 従って、SBSを抑制してもRIN特性が悪化しない本発明をこの内部にGratingを付けた半導体レーザに適用すれば、ラマン増幅器の前方励起用光源として非常に有効的な手段となる。 また、RIN特性の問題とSBSの問題の両方を解決することができるラマン増幅器を得ることができる。 もちろん、内部にGragingをつけた半導体レーザに本発明のSBS抑制手段を適用した方がRINとSBSの両方を改善できるため効果的であるが、本発明のSBS抑制手段を内部にGratingのない半導体レーザに適用してもよい。

    図45を参照し、実施例6よりさらにSBS抑制効果を持つ光ファイバの非線形現象を利用した連続光光源のSBSの抑制装置および抑制方法について説明する。
    SBS抑制連続光光源は、2つの連続光光源と、それら2つの出力光を合波するための合波器と、合波器を通過後の各連続光光源の偏光を非偏光化するための非偏光化器と非線形現象を引き起こすための非線形現象発生器から構成される。 ここで、非偏光化装置は必ずしも必要ではないが、非線形現象発生器が偏光依存性を持つ場合には非偏光化装置も用いた方が効率よく非線形現象を起こすことができるため、有効的である。
    ここで、2つの連続光光源のうち少なくとも一方はマルチモードで発振する光源を用いる。 もう一方の光源は、2つの光源を足し合わせた際のモード周波数間隔が等間隔にならないようなマルチモードもしくはシングルモード光源を選ぶ。 例えば、モード間隔の異なるマルチモード光源を組み合わせてもよい。 また、モード間隔が同じ2つのマルチモード光源を用いた場合は、それぞれの光源を足し合わせたモード周波数が等間隔にならないようにすればよい。
    合波器は、例えば偏波合成器を用いてもよい。 偏波合成をする際は、効率よく合成するために、光源からの出力及び偏波合成器に用いる光ファイバを偏波保持ファイバにするとよい。
    非偏光化器は結晶型を用いてもファイバ型を用いてもよい。 偏波合成を効率よくするために、偏波合成器からの出力に用いる光ファイバは偏波保持ファイバにするとよい。
    光ファイバ中での非線形現象の起きやすさを示すパラメータとしてnonlinear phase shift

    しくは光ファイバが長いほど非線形現象は大きくなる。 非線形現象をひきおこすための光ファイバは、光ファイバの零分散波長が2つの光源の波長に近い方が非線形現象の一つであるFWMがおきやすいため、効率よくSBSを抑制することができる。 また、ファイバ長が長いほど、非線形定数が大きいほど非線形現象が発生しやすいため、効率よくSBSを抑制することができる。


    図46を用いて、非線形現象を利用した連続光光源のSBSの抑制装置および抑制方法の具体的な実施方法を説明する。 今回は、非線形現象発生器として伝送路用光ファイバそのものを用いた。 つまり、伝送路中での連続光光源のSBSを抑制するために、伝送路で発生する非線形現象を用いた。 伝送路としてNonzero−dispersion Shifted FiberであるTrueWave RSを用いた。 なお、TrueWave RSは零分散波長1439.4nm、非線形定数γ=2/W/km、光ファイバ長20kmを用いた。 連続光光源として1442nm付近でマルチモードで発振する半導体レーザを2つ用いた。 連続光光源の発信波長は非線形現象の一つであるFWMがおきやすいように光ファイバの零分散波長に合わせた。 半導体レーザからの出力は偏波を保持するために偏波保持ファイバを用いた。 偏波合成器としては偏波保持型合波器を用いた。 非偏光化器としては、ファイバ型のものを用いた。 Depolarizerからの出力をTrueWave RSに入射するためにWDM合波器を用いた。


    図47にLD1とLD2を単独で駆動した場合のSBS測定結果を示す。 SBS測定は、TW−RSの入力部における、入力パワと反射光パワから求めた。 LD1は約70〜170mWの間でRetrun Lossが約−31dBであり、SBSによる反射光パワがRayleigh散乱レベル以下であることが分かる。 それに対して、LD2は約90〜190mWの間でSBSによる反射光パワがRayleigh散乱レベル以上であることがわかる。 しかし、LD1とLD2の合計パワが250mWになるように様々な組み合わせて駆動した場合、Return Lossが約−31dBであり、SBSによる戻り光パワがRayleigh散乱レベル以下であった。 つまり、LD1とLD2の両方を駆動することによりSBSを抑制できる。


    図48A〜DにTW−RS伝送後のスペクトルを示す。 図48AはTW−RSにLD1単独で125mWで入力した場合のスペクトルである(条件1−1)。 図48BはTW−RSにLD2単独で125mWで入力した場合のスペクトルであり、LD2の縦モードの位置がLD1の縦モードの位置とわずかにずれるように調整した(条件2−1)。 図49Aに図48Aと図48Bを拡大したものを示す。 図48CはTW−RSにLD2単独で125mWで入力した場合のスペクトルであり、LD2の縦モードの位置がLD1の縦モードの間の中心からわずかにずれるように調整した(条件2−2)。 図49Bb)に図48Aと図48Cを拡大したものを示す。 図48DはLD1から条件1−1でLD2から条件2−1で同時にTW−RSに光を入力した場合(条件Both−1)のスペクトルと、LD1から条件1−1でLD2から条件2−2で同時にTW−RSに光を入力した場合(条件Both−2)のスペクトルを示す。 図49Cは図48Dを拡大したものである。 LDを単独で駆動した図48A−Cと、2つ同時にLDを駆動した図48Dを比較すると、スペクトルの包絡線が広がったことがわかる。 また、拡大図である図49A−Bと図49Cを比較すると、2つ同時にLDを駆動したことにより縦モードのピークパワが小さくなっていることがわかる。 特に、条件Both−2では縦モードがほとんど平坦になっている。 包絡線が広がり縦モードのピークパワが小さくなったことによりSBSを抑制する効果がある。 包絡線が広がったのは、2つLDを駆動したことにより縦モードの本数が多くなったためFWMが起きやすくなったからである。 縦モードのピークパワが小さくなったのは図50で示すように、各LDの縦モードの間にFWMにより新しい波長が発生し、各LDの縦モードと新しい波長でさらにFWMが起き、パワが配分されるからである。


    ここでは、伝送路自体を非線形現象発生器として用いたが、非線形現象発生器までを連続光光源とみなしてもよい。 非線形現象発生器として非線形係数が大きいファイバを用いれば、ファイバ長を短くしても同等の効果を得ることができる。

    複数の波長からなるSBS抑制された連続光光源を得るために、図51で示すように各波長でSBS抑制してもよいし、図52で示すように、各波長を合波した後にまとめてSBS抑制をしてもよい。 各波長を合波する際は、WDM合波器を用いてもよいし、マッハツェンダー合波器を用いてもよい。

    図45のSBS抑制光源において、SBSを抑制するためのファイバ条件を求めるために、シミュレーションによってFWMの検討した。 各連続光光源は縦モード数8本、縦モード間隔約0.2nm(35GHz)のものを仮定した。 ただし、非偏光化装置により各連続光光源の隣り合う縦モードは直行するため、隣り合う縦モードはFWMを起こさないものと仮定した。 つまり、シミュレーションでは各連続光光源の縦モード数を4本、縦モード間隔を0.4nm(70GHz)として行った。 シミュレーションの構成図を図53に示す。
    図54A〜Cに1460nmにおける分散が0,1,5ps/nm kmの時のシミュレーション結果を示す。 縦軸の”Variation of Power”はHNLFに入力前後におけるパワの変動量を示す。 ここでは、トータルパワとピークパワの両方を示す。 SBS抑制光源としては、トータルパワを維持しつつ、ピークパワを下げることが有効的である。 図から、非線形定数が大きいほど、ファイバ長が長いほどピークパワが下がる傾向にあることが分かる。 また、分散が大きくなると、ピークパワが大きく落ちなくなる傾向があることがわかる。
    非線形定数とパワーとファイバ長がVariation of Powerに与える影響を見積もるために、非線形定数とパワーと実効ファイバ長(L eff )の積(PγL eff )を横軸にとったものを図55に示す。 ここでL eff =(1−exp(−α L))/α であり、α はファイバロスを表す。 図55が示すように、分散が0ps/nm km付近の時は、異なる非線形定数、ファイバ長、縦モードパワにおいても同じ振る舞いをすることがわかる。 例えば、縦モードパワを3dB落としたいときは、PγL effが0.05以上になるように非線形発生装置の光ファイバを設計すればよい。 また、PγL effが0.13付近まではピークパワが減少傾向にあることから、PγL effが0.13より小さい領域で設計するのが好ましい。
    分散がVariation of Powerに与える影響を見積もるために、横軸に分散を、縦軸にピークパワが3dB落ちる時のPγL effをプロットした(図.56)。 ピークパワが3dB落ちるということはSBSが起きない領域で光ファイバに入力できるパワが2倍になることを意味する。 図56から、ある非線形定数を持つ光ファイバにおいて、分散がある値を超えると、急激にPγL effを大きくしないとピークパワが落ちなくなることが分かる。 従って、急激にPγL effが大きくなる分散値より小さい分散を持つ光ファイバを非線形発生装置として用いるのがよい。 負の分散の場合のシミュレーションを行っていないが、分散の絶対値が重要であるため、正の分散と同じ傾向を示す。 例えば、非線形定数が23/W/kmのときは−15〈分散〈15の範囲で、非線形定数が11/W/kmのときは−5〈分散〈5の範囲で、非線形定数が5/W/kmのときは−2〈分散〈2の範囲で設計するのがよい。

    図55のSBS抑制光源において、SBSを抑制するための各LDの間隔を求めるために、シミュレーションによってFWMの検討した。 シミュレーション条件は実施例4と同じで、ファイバは1460nmにおける分散がファイバは分散が0ps/nm km、非線形定数23/W/kmのものを用いた。 Longitudinal mode 1−mとLongitudinal mode 2−m(m=1,2,3,4)をパラメータとして変化させたときのピークパワのピークパワの変動量を図. 57に示す。 図. 57が示すように、各LDの波長間隔が縦モード間隔0.4nm(70GHz)の1/2である0.20nm(35GHz)、1/4である0.10nm(17.5GHz)の時には、ピークパワがあまり減少しないことがわかる。 ただし、1/8である0.5nm(8.75GHz)になると各LDの波長間隔が縦モード間隔0.4nm(70GHz)の整数分の1でないときと同じくらいピークパワを抑えることができる。 (0.2nm、0.4nm、0.8nmの場合は波長では0.4nmの整数分の1になっているが、周波数で完全に整数分の1になっていない)各LDの波長間隔が縦モード間隔0.4nm(70GHz)の整数分の1の時は、合波後の縦モードが等間隔なグリッド上に並ぶため、そのグリッド以外に新たに発生するFWMがないためである。 従って、ピークパワを抑制するためには、合波後の縦モードが等間隔なグリッド上に並ばないようにするとよい。
    (光整形器、光再生システムの実施形態について)
    次に、波形整形器、光再生システムの実施形態について説明する。 図面の記載において、同一または類似部分には同一あるいは類似な符号を付している。 また、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意する必要がある。 さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
    この波形整形器は、波形の整形及び圧縮の両方を兼ねることができる。 つまり、この波形整形器を2つ接続すれば、波形の整形と圧縮を行うことができることになる。

    まず、実施例11にかかる波形整形器について説明する。 この波形整形器は、入力された光をソリトン光に変換するためのものである。 図58Aは、波形整形器の構造を示す模式図であり、図58Bは、実施の形態1にかかる波形整形器の群速度分散Dの分布の一例を示すグラフである。
    本実施例11にかかる波形整形器は、図58Aに示すように、非線形係数が例えば3km−1・W−1以上、好ましくは5.0km−1・km−1以上であって、例えば高非線形光ファイバ(High Non−Linear Fiber)によって形成される高非線形光伝送路1a、1b、1c、1d、1eと、非線形係数が例えば3km−1・W−1以下、好ましくは1km−1・W−1以下であって、例えば単一モード光ファイバ(Single Mode Fiber)によって形成される低非線形光伝送路2a、2b、2c、2d、2eとが交互に接続された構造を有する。 なお、ここで高非線形光伝送路および低非線形光伝送路の個数については必ずしも5個である必要はなく、6個以上であっても良いし、4個以下であっても良い。
    図58Bに示すように、高非線形光伝送路1a〜1eは、2次分散値β2の絶対値が4.0以上の等しい値を有し、それぞれの伝送路長La〜LeがLa>Lb>Lc>Ldとなるよう構成されている。 例えば、La=100m、Lb=50m、Lc=25m等というように、長手方向に進むに従って伝送路長が短くなる。
    本実施例11にかかる波形整形器は、高非線形光伝送路1a〜1eの伝送路長を長手方向に減少させることによって、等価的に分散減少ファイバを実現している。 具体的には、高非線形光伝送路1aと低非線形光伝送路2a、高非線形光伝送路1bと低非線形光伝送路2b等を対としてとらえ、各対における群速度分散D(=(−2πc/λ2)β2)の値の平均値を考えた場合、高非線形光伝送路と低非線形光伝送路との対における2次分散値の絶対値は長手方向に減少しているとみなすことができる。 このため、本実施の形態1にかかる波形整形器に光を入力した場合、波形整形器中を伝搬するに従ってソリトン断熱圧縮が行われ、出力される光はソリトン光となる。
    高非線形光伝送路1a〜1eは、非線形係数が例えば3km−1・W−1以上、好ましくは5km−1・W−1と高い値を備えた光伝送路によって形成されているために、分散性を高くすることが可能である。 一般に、ソリトン断熱圧縮を行うためには、光伝送路中における非線形性と分散性とが釣り合っている必要がある。 従って、従来のように低非線形性光伝送路のみで構成した場合に2次分散値を低く抑制する必要があることと異なり、本実施例1にかかる波形整形器では、非線形係数の増大に対応して分散性、具体的には2次分散値の絶対値を増加させることが可能となる。
    このため、本実施例11にかかる波形整形器では、2次分散値の絶対値を増加させることが可能であり、かつ2次分散値の絶対値の高い高非線形光伝送路1a〜1eを用いることで光伝送路の伝送長を短縮化することが可能となる。 理論上入力光をソリトン光に整形するために最低限必要となる伝送路長であるソリトン周期は、一般に2次分散値の絶対値に対応して決定され、2次分散値の絶対値が増大するとともにソリトン周期は短くなることが知られている。 本実施例1にかかる波形整形器では、高非線形光伝送路1a〜1eを使用しているため、2次分散値の絶対値を大きくすることが可能となり、この結果、波形整形器全体における伝送路長が短い、小型の波形整形器を実現することができる。
    具体的に、100mWのピークパワーを有する3psパルスを入力した場合における波形整形器の構造の一例について以下に説明する。 高非線形光伝送路1a〜1eとして非線形係数が15km−1・W−1である高非線形光ファイバを使用し、低非線形伝送路2a〜2eとして単一モード光ファイバを使用した。 これらを用いて最適化を行った結果、波形整形器の特性は次のようになる。 すなわち、非線形長が0.67km、分散距離が0.14km、2次分散値の絶対値の平均値が4.3ps2/kmであって、ソリトン周期が0.25kmである。 このため、波形整形器全体の伝送路長は0.25km〜0.67km程度と、従来の8km〜20km程度と比較して格段に短くすることができ、小型の波形整形器を実現することができる。
    図59は、かかる構造の波形整形器を使用した場合の自己相関波形の変化について示すグラフである。 図59上段は、波形整形器に入力させる入力光の自己相関波形を示し、図59下段は、波形整形器から出力される出力光の自己相関波形を示す。 図59下段のグラフに示すように、伝送路長が短いにもかかわらず、上記構造の波形整形器によって十分なソリトン光が得られている。
    次に、本実施例11にかかる波形整形器の利点について説明する。 本実施例11にかかる波形整形器は、全体の伝送路長を短くすることによって、全体を小型化することが可能であるとともに、他の利点も有する。 まず、伝送路長を短くすることによって、光損失による強度の低下を抑制することが可能となる。 光伝送路として一般に使用される光ファイバは低損失であるものの、数kmに渡って光を伝搬した場合、光ファイバ中における光損失を無視することはできない。
    しかし、本実施例11にかかる波形整形器では、入力光の伝搬距離を0.25km〜0.67km程度に抑制することができるため、光損失を実用上問題とならない程度に抑制することができる。
    また、入力光の伝搬距離を短くすることによって、その他の非線形効果、例えば誘導ブリリュアン効果の発生を従来よりも抑制することができる。 誘導ブリリュアン効果の発生を抑制することで出力されるソリトン光の強度の飽和を避けることが可能となり、高い強度のソリトン光を出力することが可能となる。
    また、本実施例11にかかる波形整形器では、高非線形光伝送路と低非線形伝送路とを組み合わせた構造とすることで、副次的な利点も有する。 高非線形光伝送路として一般に使用される高非線形光ファイバは、現時点では分散制御を精密に行うことが容易ではなく、単独で分散減少伝送路を構成することは困難である。 しかし、本実施例11にかかる波形整形器は、高非線形光伝送路の伝送路長を制御することによって等価的に分散減少伝送路を実現しているため、高非線形光ファイバを用いたにも関わらず精密な分散制御を行うことが可能となると期待される。 すなわち、所望の分散特性が得られない場合であっても、伝送路長を調整することで等価的に分散制御を行うことが可能となるという利点を有する。
    (実施例11の変形例)
    次に、本実施例11にかかる波形整形器の変形例について説明する。 変形例にかかる波形整形器は、非線形係数が例えば3km−1・W−1以上、好ましくは5km−1・W−1以上であって、2次分散値の絶対値が互いに相違する複数の高非線形光伝送路を組み合わせた構造を有する。
    図60は、変形例にかかる波形整形器の分散Dの分布の一例を示すグラフである。 図60に示すように、変形例にかかる波形整形器は、長手方向に進むに従って2次分散値の絶対値が減少するように高非線形光伝送路が順次接続された構造を有する。 かかる構造によって波形整形器を構成した場合であっても、等価的に分散減少伝送路を実現することが可能である。 また、高非線形光伝送路を用いることによって、図58Aに示す構造の波形整形器と同様に伝送路長を短くすることができる。

    次に、実施例12にかかる波形整形器について説明する。 図61は、実施例12にかかる波形整形器の構造を示す模式図である。 実施例12にかかる波形整形器は、誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制するため、実施の形態1にかかる波形整形器に光アイソレータを配置したものである。 以下、本実施例12にかかる波形整形器について、図61を参照して説明する。
    実施例12にかかる波形整形器は、図61に示すように、非線形係数が5.0km−1・km−1であって、例えば高非線形光ファイバによって形成される高非線形光伝送路1a、1b、1c、1d、1eと、非線形係数が1km−1・W−1以下であって、例えば単一モード光ファイバによって形成される低非線形光伝送路2a、2b、2c、2d、2eとが交互に接続された構造を有する。 また、本実施例12にかかる波形整形器は、入力端4からの距離がソリトン周期よりも短くなる位置に光アイソレータ3a、3bが配置された構造を有する。 具体的には、低非線形光伝送路2aと高非線形光伝送路1bとの間に光アイソレータ3aが挿入され、低非線形光伝送路2bと高非線形光伝送路1cとの間に光アイソレータ3bが挿入されている。 なお、高非線形光伝送路1a〜1e並びに低非線形光伝送路2a〜2eは、実施の形態1と同様の構造を有するため、ここでの説明は省略する。
    光アイソレータ3a、3bは、波形整形器内部における誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制するためのものである。 光アイソレータ3a、3bは、長手方向に伝送する光を透過する一方、戻り光を遮蔽する機能を有し、例えば、屈折率に異方性を有する複屈折結晶、波長板、ファラデー回転子等を組み合わせて形成される。
    次に、光アイソレータ3a、3bが入力端4からの距離がソリトン周期よりも短い位置に配置される理由について説明する。 本願発明者等は、光アイソレータが配置される位置と誘導ブリリュアン散乱が発生する入力光の強度(以下、「SBS閾値強度」と称する)との相関関係について測定し、光アイソレータを配置する位置の最適化を行っている。
    まず、本実施例12にかかる波形整形器を高非線形光伝送路1a〜1eと、低非線形光伝送路2a〜2eとを交互に組み合わせた構造のみによって構成し、光アイソレータを配置しない場合について説明する。 光アイソレータを配置しない構成の場合、SBS閾値強度は50mW程度となり、入力光の強度が50mW以上となった場合には誘導ブリリュアン散乱による戻り光の強度が急激に増加し、波形整形器から出力される光の強度は飽和することが確認された。 また、光アイソレータを低非線形光伝送路2dと高非線形光伝送路1eとの間に配置して測定したところ、光アイソレータを配置しない場合と同様に、SBS閾値強度は50mWであった。 波形整形器をさらに長尺化し、入力端4からさらに遠い位置に光アイソレータを配置した場合もSBS閾値強度は50mW程度となり、光アイソレータを挿入することによるSBS閾値強度の改善はみられなかった。
    一方、光アイソレータを低非線形光伝送路2cと高非線形光伝送路2dとの間に配置した構成の場合、SBS閾値強度は75mW程度にまで改善され、光アイソレータを挿入することによるSBS閾値強度が改善されることが明らかとなった。 さらに測定した結果、光アイソレータを低非線形光伝送路2bと高非線形光伝送路2cとの間に配置した場合のSBS閾値強度は100mW、低非線形光伝送路2aと高非線形光伝送路1bとの間に配置した場合には150mWとなった。 かかる測定結果から、入力端4からの距離が一定値以下となる位置に光りアイソレータを配置した場合には、SBS閾値強度が一定の改善がみられることが示された。
    これらの測定結果からSBS閾値強度の改善がみられる光アイソレータの挿入位置について検討したところ、入力端4からの距離がソリトン周期よりも短い位置に光アイソレータを配置することが有効であることが明らかになった。 すでに説明したように、ソリトン周期は入力光がソリトン光に変換されるまでに必要とする伝送路長に対応する値である。 すなわち、誘導ブリリュアン散乱は入力光がソリトン光に変換される途上において主に発生し、入力端4からの距離がソリトン周期よりも短くなる位置に光アイソレータを配置することによって誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制できる。 一方、入力光がソリトン光に変換された後は、誘導ブリリュアン散乱の発生はほとんど無く、ソリトン周期よりも遠方に光アイソレータを配置してもSBS閾値強度の改善はほとんどみられることはない。
    従って、本実施の形態2にかかる波形整形器では、入力端4からの距離がソリトン周期よりも短くなる位置に光アイソレータ3a、3bを配置することによってSBS閾値強度を改善し、光強度の大きいソリトン光を出力可能な構造としている。
    図62A〜図62Dは、光アイソレータを配置することによるSBS閾値強度の改善の程度を説明するためのグラフである。 具体的には、図62Aは比較のため光アイソレータを配置しない波形整形器における戻り光の強度について示し、図62B〜図62Dは、光アイソレータ3aのみを配置した場合、光アイソレータ3bのみを配置した場合および光アイソレータ3a、3bを配置した場合の戻り光の強度についてそれぞれ示す。
    図62Aのグラフから明らかなように、光アイソレータを配置しない場合には入力光の強度が50mW以上の領域で誘導ブリリュアン散乱に起因した戻り光の強度が急激に増加、すなわちSBS閾値強度が50mWとなる。 一方、図62B〜図62Dに示すように、光アイソレータを配置することによってSBS閾値強度は著しく改善され、特に、光アイソレータ3a、3bの双方を配置した場合にはSBS閾値強度は200mW以上にまで改善される。 図62Dのグラフからも明らかなように、誘導ブリリュアン散乱の発生を効果的に抑制するためには入力端4からの距離がソリトン周期よりも短くなる領域に光アイソレータを複数配置した構造とすることも有効であり好ましい。
    次に、高強度の光を入力した場合に本実施例12にかかる波形整形器によって得られる出力光の光特性について測定を行った。 図63Aは、出力光の自己相関波形を示すグラフであり、上段が光アイソレータを備えない波形整形器に関し、下段が本実施の形態2にかかる波形整形器に関するものである。 また、図63Bは、出力光のスペクトル波形を示すグラフであり、上段が光アイソレータを備えない波形整形器に関し、下段が本実例12にかかる波形整形器に関する。
    高強度の光を入力した場合、光アイソレータを有さない波形整形器では誘導ブリリュアン散乱が発生することによって光伝送路中における光強度の値が制限される。 従って、伝搬中の光強度の値は一定の値に制限され、十分な強度を得られないことからソリトン変換が満足に行われず、図63Aの上段および図63Bの上段に示すようなグラフとなる。
    一方、本実施例12にかかる波形整形器は、光アイソレータを配置することによって伝搬中における誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制することができる。 そのため、ソリトン圧縮現象が生じ、所望のピコ秒ソリトンパルス列が得られていることが図63Aの下段および図63Bの下段のようなグラフを得ることができる。
    なお、光アイソレータ3aまたは光アイソレータ3bは、高非線形光伝送路もしくは低非線形光伝送路の途上に配置する構造としてもよいが、異なる光伝送路の接合部に配置することが好ましい。 接合部に配置することで波形整形器の製造行程の煩雑化を避けられるだけでなく、例えば、異なる光伝送路の端部をそれぞれ両端ピグテイルとした光アイソレータを形成することによって、異なる光伝送路間の融着点数を減少させることが可能となる。 光伝送路間の融着部分においては一定の光損失が発生することから、本実施例2にかかる波形整形器は、融着点数を減少させることによって波形整形器中における光損失を低減できるという利点を有する。
    また、図61に示すように波形整形器が高非線形光伝送路と低非線形光伝送路との組み合わせによって形成される場合には、光アイソレータを高非線形光伝送路の前段に配置することが好ましい。 誘導ブリリュアン散乱は非線形光学効果の一種であるため、非線形係数の高い高非線形光伝送路中において特に発生しやすい。 従って、高非線形光伝送路の前段にアイソレータを設けることによって、高非線形光伝送路中で発生した戻り光を遮蔽することによってより効果的に誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制できる。
    なお、実施例11の変形例にかかる波形整形器に光アイソレータを挿入した構造も誘導ブリリュアン散乱の抑制には効果的である。 この場合であっても、入力端からの距離がソリトン周期よりも短い領域に光アイソレータを配置することで、SBS閾値強度を改善することができ、高い光強度を有するソリトン光を出力することが可能となる。

    次に、実施例13にかかる光パルス発生装置について説明する。 図64は、本実施例13にかかる光パルス発生装置の構造を示す模式図である。 光パルス発生装置の構造は、ソリトン光源6と、光パルス圧縮器7とに大別される。 ソリトン光源6は、光パルス圧縮器7に対してソリトン光を供給するためのものであり、光パルス圧縮器7は、入力されたソリトン光に対してソリトン断熱圧縮を施してパルス幅を圧縮するためのものである。
    ソリトン光源6は、例えばビート光を出力する発光部8と、発光部8から出力された光をソリトン光に整形する波形整形器9とを備える。 また、光パルス圧縮器7は、外部から光を入力するための入力端10と、入力端10に接続されたパルス圧縮伝送路11と、出力端12とを備える。 また、パルス圧縮伝送路11と出力端12との間には合波器13が配設され、合波器13には励起光源14が接続され、パルス圧縮伝送路11に対して励起光を供給可能な構造を有する。
    まず、ソリトン光源6について説明する。 ソリトン光源6を構成する発光部8は、本実施の形態3ではビート光を出力するものを用いる。 具体的には、発光部8は、周波数f0のレーザ光を出力する半導体レーザ素子15と、周波数f0+Δfのレーザ光を出力する半導体レーザ素子16と、半導体レーザ素子15、16から出力されるレーザ光を合波するための合波器17とを備えた構造を有する。 周波数f0、f0+Δfのレーザ光を合波することにより、発光部8は、繰り返し周期Δfのビート波を出力する機能を有する。
    また、ソリトン光源6を構成する波形整形器9は、任意の構造のものを用いることが可能であるが、実施の形態1または2に記載された波形整形器を用いることが好ましい。 実施の形態1または2にかかる波形整形器を用いることによって、装置が小型で、高い出力のソリトン光を供給することが可能となるためである。
    次に、光パルス圧縮器7の構造について説明する。 まず、パルス圧縮伝送路11は、異常分散、すなわち正の分散値をする光ファイバによって形成される。 また、パルス圧縮伝送路11は、非線形係数γが例えば3km−1・W−1以上、好ましくは5.0km−1W−1以上、より好ましくは15km−1W−1の値を有する。 以下では、パルス圧縮伝送路11として非線形係数γが15km−1W−1となるものについて説明を行う。
    励起光源14は、パルス圧縮伝送路11に対して励起光を供給するためのものである。 具体的には、励起光源14は、例えば半導体レーザ素子によって構成され、所定の波長のレーザ光をパルス圧縮伝送路11に対して出力する機能を有する。 なお、本実施の形態3では励起光の進行方向と増幅される光の進行方向とが反対方向となるいわゆる後方励起方式によってラマン増幅を行う構造を有することとする。 ただし、励起光と増幅される光の進行方向が同一となる前方励起方式を採用しても良く、前方励起方式と後方励起方式を組み合わせた双方向励起方式を採用しても良い。
    また、励起光源14から出力される光は、増幅される光の波長に対して100nm程度短波長側にシフトした波長を有するものとする。 ラマン増幅においては、励起光の波長に対して100nm程度長波長側にシフトした波長において増幅利得のピークが得られるためである。
    つぎに、本実施例13にかかる光パルス圧縮器の動作について説明する。 まず、外部から所定の条件を満たすソリトン光が入力端10を介してパルス圧縮伝送路11に入力される。 ここで、一例として、本実施例3にかかる光パルス圧縮器に入力されるソリトン光は、基本ソリトン条件を満たすものとする。 入力されたソリトン光は、パルス圧縮伝送路11中において断熱ソリトン圧縮され、パルス圧縮された光が出力端12から外部に出力される。
    パルス圧縮伝送路11中におけるソリトン断熱圧縮について、以下に詳細に説明する。 基本ソリトン条件を満たすソリトン光は、本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器に入力された後も、パルス圧縮伝送路11中を伝搬中に渡って基本ソリトン条件、すなわちソリトン次数が1となる条件を保持しようとする性質を有する。 ソリトン次数Nは、以下の(1)式によって与えられる。
    N=(γPT2/|β2|)1/2・・・(1)
    ここで、γはパルス圧縮伝送路11の非線形係数であり、β2はパルス圧縮伝送路11の2次分散値である。 また、Pはパルス圧縮伝送路11中におけるソリトン光のピーク強度、Tはパルス圧縮伝送路11中におけるソリトン光のパルス幅である。
    パルス圧縮伝送路11中を伝搬するソリトン光は、ソリトン次数を1に保持する性質を有するため、パルス圧縮伝送路11中全般に渡って(1)式における左辺の値が1となる。 また、パルス圧縮伝送路11中では、励起光源14によって励起光が供給されることでラマン増幅が生じ、伝搬するソリトン光のピーク強度Pは増大する。
    従って、(1)式の右辺ではソリトン光が伝搬するに従ってPの値が増大する。 これに対して、基本ソリトン条件を維持するため、パルス圧縮伝送路11中の伝搬中においてはN=1が維持され、かつ非線形係数γは特に変動しない。 従って、(1)式の等号を維持するために、伝搬するソリトン光のパルス幅Tが減少することとなり、パルス幅Tの圧縮が行われることとなる。
    本実施例13にかかる光パルス圧縮器は、高い非線形係数γを有することから、入力されたソリトン光に対して、短いファイバ長で効率良くラマン増幅を行うことができる。 ラマン増幅は、非線形光学効果の一種であることから、非線形係数γの値が大きいほど単位ファイバ長あたりの増幅効率を高めることが可能となる。
    このため、所定のピーク強度Pを得るために必要なファイバ長を短くすることが可能となり、光パルス圧縮に使用するパルス圧縮伝送路11のファイバ長は2km程度と、非常に短くすることができる。 このことは光パルス圧縮器の小型化の観点からは非常に重要な利点であって、パルス圧縮伝送路11を使用することによって小型の光パルス圧縮器を実現できるという利点を有する。 具体的には、従来の光パルス圧縮器と比べてパルス圧縮伝送路11を1/10程度の伝送路長とすることが可能であり、小型の光パルス圧縮器によってパルス発生装置を構成することができる。
    また、光パルス圧縮器7によれば、所定の2次分散値β2の絶対値に対して、入力されるソリトン光の強度を従来よりも低減することが可能である。 図65は、2次分散値β2の絶対値に対して基本ソリトン励起に必要な入力光の強度の依存性を示すグラフである。 図65において、曲線11は従来の光パルス圧縮器について示し、曲線12は、本実施例13における光パルス圧縮器7について示す。
    図65からも明らかなように、例えば|β2|=1ps2/kmの場合において、従来は入力光が150mW程度の強度を必要としていたのに対し、本実施の形態3における光パルス圧縮器7は、20mW程度の強度の光を入力することによってパルス圧縮を行うことができる。 半導体レーザ素子を光源とした場合20mW程度の出力であれば低い注入電流で容易に実現できるため、本実施例13にかかる光パルス発生装置では、光増幅器を省略することが可能であると共に、低消費電力の光パルス発生装置を実現することができる。
    また、本実施例13における光パルス圧縮器7は、高い非線形係数γを有するために、従来の光パルス圧縮器よりも2次分散値β2の値が大きな光ファイバを用いることが可能である。 上記したように、入力されるソリトン光は、基本ソリトン条件、具体的には(1)式においてN=1を満たすことが好ましい。 従って、非線形係数γの値が小さい場合、2次分散値β2の値を大きくするためには、入力されるソリトン光が高い強度が必要となることから、一般に2次分散値β2の値は低く抑える必要があった。 本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器では、非線形係数γが高い値を有することから、これに対応して2次分散値β2も高い値に設定しても入力されるソリトン光の強度を高くする必要はなく、低強度の入力光によって高効率のパルス圧縮を行うことが可能である。
    パルス圧縮伝送路11において、2次分散値β2の値を高くすることによる利点について説明する。 断熱ソリトン圧縮によるパルス幅の圧縮は、基本的には上記した(1)式に従って行われるが、実際には高次の分散値によってパルス幅の圧縮は制限されることが知られている。 具体的には、3次分散値β3、4次分散値β4等が2次分散値β2と比較して所定以上の値を有する場合、ソリトン光のパルス幅の圧縮を効率的に行うことができなくなる。 本実施例13のように、2次分散値β2の値が高くなるパルス圧縮伝送路11を用いた場合には、相対的に高次の分散値の値は低下することから、ソリトン光のパルス圧縮を行う際に高次分散値の影響を排除することが可能となる。 さらに、パルス圧縮伝送路11は3次分散値β3の値を従来よりも低くすることが可能であって、例えばβ3の値を従来の1/3程度である0.03ps3/km程度とすることができる。 このことによって、出力光のパルス幅をより小さい値にまで圧縮することが可能となる。
    図66は、パルス圧縮伝送路11に入力する光の強度と圧縮パルス幅の限界との関係を示すグラフである。 ここで、曲線13は、本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器について示す曲線であり、曲線14は、比較のため従来の分散シフト化ファイバを用いた光パルス圧縮器について示す曲線である。 曲線13と曲線14との比較から明らかなように、本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器は、同一の入力光強度に対してより狭い範囲にまでパルス圧縮を行うことが可能である。 具体的には、従来の分散シフト化ファイバを用いた場合には10mW程度の入力光強度の場合には数ps程度であっても圧縮することが困難であるのに対して、本実施例13にかかる光パルス圧縮器では、200fs程度にまでパルス幅を圧縮することができる。
    また、100fsまでパルス幅を圧縮する場合、従来は250mW程度の入力光強度が必要であったのに対し、本実施例13における光パルス圧縮器では、非線形係数γ=15km−1・W−1、3次分散値β3=0.1ps3/kmの場合は46mWで足り、γ=15km−1/W−1、β3=0.03ps3/kmの場合は15mWで足りる。 さらに、γ=25km−1・W−1、β3=0.03ps3/kmの場合には入力光の強度を8.3mWであっても100fsのパルス幅を実現することができる。
    なお、パルス圧縮伝送路11は、従来の分散シフト化ファイバと比較して高次の分散値を低い値とすることが可能である。 例えば、3次分散値β3の値について、分散シフト化ファイバでは0.1ps3/km程度が一般的なのに対して、パルス圧縮伝送路11では、0.03ps3/km程度にまで3次分散値を低減することが可能である。 3次分散値等の値を低減することが可能であることから、パルス圧縮伝送路11では、高次の分散値に対して2次分散値の値を相対的に高めることが可能となる。 例えば、パルス圧縮伝送路11の3次分散値が0.03ps3/kmの場合には、100fs程度にまでパルス幅を圧縮する場合に必要な2次分散値は、従来の分散シフト化ファイバでは2ps2/km程度必要となるのに対して、本実施例13にかかる光パルス圧縮器では、0.6ps2/km程度でも十分となる。
    (実施例13の変形例)
    次に、実施例13にかかる光パルス発生装置の変形例について説明する。 図67は、変形例にかかる光パルス発生装置の構造を示す模式図である。 変形例においては、ソリトン光源6と光パルス圧縮器7との間に誘導ブリリュウアン散乱の発生を抑制するSBS発生抑制部20と、光増幅器21とを配置した構造を有する。 ここで、SBS発生抑制部20は、従来用いられて来たものを用いても良いが、実施の形態2と同様に光伝送路中に光アイソレータを配置する構造としても良い。 また、SBS発生抑制部20および光増幅器21のいずれか一方のみを配置する構造としても良い。
    以上、本発明を実施例11〜13に渡って説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるのではなく、当業者であれば様々な変形例、実施例に想到することが可能である。 例えば、実施例11および実施例12において、入力端4の前段にもう一対の高非線形光伝送路および低非線形伝送路を配設する構造としても良い。 ここで、前段に配設する高非線形光伝送路の伝送路長を高非線形光伝送路1aよりも短くすることで、より効率的にソリトン変換を行うことが可能となる。
    また、実施例13では波形整形器9と光パルス圧縮器7とを別個配置する構造としたが、これらを一体的に形成することとしても良い。 光パルス圧縮器7を構成するパルス圧縮伝送路11は、高い非線形係数を有することからビート光に対してソリトン断熱圧縮を行うことが可能であるため、例えばパルス圧縮伝送路11の伝送路長を増大させることによって波形整形器9と光パルス圧縮器7とを一体的に形成することができる。

    次に、実施例14について説明する。 実施例14にかかる光再生システムは、実施例11もしくは12にかかる波形整形器、または実施例13にかかる光パルス発生装置を利用したものである。 図68は、実施の形態4にかかる光再生システムの構造を示す模式図である。 以下、図68を参照して、上述した波形整形器を用いた光再生システムについて説明する。
    図68に示す光再生システム100は、増幅装置102と、合波器103と、クロック抽出装置104と、実施の形態1または2にかかる波形整形器(図58、図62参照)を備えた光パルス発生装置もしくは実施例3にかかる光パルス発生装置(図64、図67を参照)から構成される光クロックパルス列発生装置106と、光シャッター装置108とを含む。 増幅装置102は、減衰した信号光を増幅するもので、例えばエルビウム添加ファイバ型増幅器、ラマン増幅器、半導体増幅器、パラメトリック増幅器等をあげることができる。
    クロック抽出装置104は、信号光パルスの繰返し周波数を抽出するもので、図示しないが、例えば、受光素子、電気的クロック抽出回路、半導体レーザから構成される電子回路を基本とする装置を含んで形成される。 この他にも、増幅装置、非線形光学媒質、光フィルタから構成される全光型クロック抽出装置もあげられる。 ここで、非線形光学媒質とは、例えば高非線形ファイバおよび半導体素子があげられる。
    光クロックパルス列発生装置106は信号光パルス繰り返し周波数を有する光クロックパルス列を発生されるもので、上述した波形整形器(図58、図62を参照)を備えた光パルス発生装置もしくは光パルス発生装置(図64、図67を参照)を利用する。 構成、機能等については既に述べたため、ここでの説明は省略する。
    光シャッター装置108は、合波器103で分波された信号光によって光クロックパルス列発生装置106の出力光を光変調する装置である。
    実施例14にかかる光再生システム100では、伝送されてきた信号光を、まず増幅装置102によって増幅し、増幅された信号光を合波器103によって分岐し、一方の信号光はそのまま伝播されて光シャッター装置108に入射される。 他方の信号光は、クロック抽出装置104に入射される。 クロック抽出装置104の出力電気信号によって制御される光クロックパルス列発生装置106の出力光は光シャッター装置108に入射される。 光シャッター装置108において、合波器103から伝播された信号光で光クロックパルス列を光変調されることによって、信号光タイミングが再生される。
    このように、光クロックパルス列発生装置106として、本発明の光パルス発生装置を使用すると、光パルスの強度揺らぎや時間揺らぎの少ない光クロックパルス列が得られる。
    (光整形器、光再生システムの効果)
    以上説明したように、この発明によれば、高非線形光伝送路と低非線形光伝送路とを複数配設し、高非線形光伝送路と低非線形光伝送路の2次分散値の絶対値を互いに相違させることとしたため、等価的に分散減少伝送路を実現することができ、かつ高非線形光伝送路を用いたことで全体として高い分散特性を有する波形整形器を実現することができるという効果を奏する。
    また、この発明によれば、ソリトン周期以下となる距離に光アイソレータを配置することとしたため、波形整形器中における誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制することができ、強度の高いソリトン光を出力することができるという効果を奏する。
    また、この発明によれば、光伝送路の接合部に光アイソレータを配設することとしたため、融着点数を減少させることが可能となり、光損失を低減した波形整形器を実現することができるという効果を奏する。
    また、この発明によれば、光アイソレータが高非線形光伝送路の前段に配設されることとしたため、誘導ブリリュアン散乱の発生をより効果的に抑制することができる。 誘導ブリリュアン散乱は非線形光学効果の一種であることから、高非線形光伝送路において発生しやすい。 そのため、高非線形光伝送路の前段に光りアイソレータを配設することによって誘導ブリリュアン散乱の発生をより効果的に抑制することができるという効果を奏する。
    また、この発明によれば、高非線形光伝送路中を伝送する光に対してラマン増幅を行うこととしたため、高非線形光伝送路の伝送路長を短縮化できると共に、出力光のパルス幅をより圧縮することができるという効果を奏する。
    また、この発明によれば、光再生システムを形成する光クロックパルス列発生装置として、上記の波形整形器および/または光パルス発生装置を使用する構成としたため、光パルスの強度揺らぎや時間揺らぎの少ない光クロックパルス列が得られるという効果を奏する。
    (本発明にかかるその他の実施形態)
    更に、本発明にかかるその他の実施形態について説明する。
    この実施形態は、単一周波数光源をもとに、多様な光パルス列を作成する方法に関する。 基本的には、1つないし複数の単一周波数光源を組み合わせた後、非線形光学媒体を介して互いに相関のある複数の周波数を発生する。 これら互いに相関のある複数の周波数をアレー型導波路グレーティングにておのおのに分波し、それぞれの位相と強度を調整した後、同種のアレー型導波路グレーティングを介して再び合波する. この際、それぞれの位相と強度を調整することで所望のパルス列を実現することができ、また、このパルス列の波形を任意に可変できる.
    本実施形態の構成は下記のように示される。
    図69に示すように、本発明は光源と、スペクトル線数を増やす非線形媒質、そして、スペクトル成分ごとに位相と強度を調整する調整部、及び、これをモニターし制御する部分からなる. 調整部による制御によって所望の時間波形を自在に操ることができる。
    この実施形態では、2波長ないし、互いに位相相関を有する数波長からなる光源の出力が、非線形媒質を介して、周波数間隔を一定に保った多数の周波数を生成する。 この過程は、入射した光が非線形相互作用を通じて生じるため、生成された複数の周波数は互いに位相相関を有する. この位相相関を保持したまま、おのおのの周波数成分の位相を制御し強度を調整することで、原則的に周波数間隔の逆数に対応した繰り返し周期を持つ自在なパルス波形を合成することができる. パルス波形の時間幅は非線形媒質によって広がったスペクトル包絡線幅の逆数で与えられる. すなわち、本発明では、フーリエ級数展開されたパルス列のフーリエ成分を自在に調整し合成することを基本としている.
    従来技術では、パルスの波形は自在に変更できない. 媒質の非線形、分散、損失特性、及びその帯域やスペクトルなどで固定的に決まってしまう. また、従来の材料でこれらを揃え所望の特性を実現する際、帯域や長さなどの限界がある。 従来技術では、良質なパルス波形を得るために断熱過程を用いる必要がありそのためパルス整形器としては、長さ、寸法が大きくなるという問題があった. 本方式では、パルス波形は可変にでき、精密な制御も可能である上、帯域による制限は、従来方式に比べ、無いため、逆に寸法や長さ、さらには、消費電力で有利にできる. したがって、本発明は、従来技術に比べ、パルス波形の可変性、大きさや消費電力、帯域などにおいて、優れている.
    本発明にかかる実施例として下記が挙げられる。

    光源は、2つの異なる発振波長を有するDFBレーザなどの単一周波数光源(可変波長でも良い)を合波したビート光源でもよいし、一つの該単一周波数光源と外部変調器からなるパルス光源でも良い. 非線形媒質は、PPLN、光ファイバ、フォトニック結晶などを用いる. 位相・強度調整部には、PLC技術を用いたアレー型導波路グレーティング(AWG)と熱光学効果を応用した可変光減衰器(VOA)と位相シフタを用いる。 位相シフタは、光の波長程度の位相遅延を制御できれば良い. PLC技術に基づき集積回路上にこれらの調整部を具備することにより位相制御の安定性と制御性が飛躍的に向上する。 これらの系は、偏波保持系で行うとさらに安定性が向上する。

    QQ群二维码
    意见反馈