テラヘルツ波発生装置及びそれを用いた分光装置

申请号 JP2017503256 申请日 2015-03-03 公开(公告)号 JP6386655B2 公开(公告)日 2018-09-12
申请人 株式会社日立ハイテクノロジーズ; 发明人 愛甲 健二; 志村 啓;
摘要
权利要求

単一波長のポンプ光を発生する波長固定のポンプ光レーザと、 シード光を発生し、当該シード光の波長を可変とすることが可能な波長可変レーザと、 前記ポンプ光のパルスを遅延させる遅延素子と、 前記シード光と、前記遅延素子によって遅延されていない第1のポンプ光と、前記遅延素子によって遅延された第2のポンプ光とが入射されることによってテラヘルツ波が発生する第1の非線形結晶と、 前記第2のポンプ光が前記遅延素子によって遅延された時間に応じて、前記波長可変レーザから出される前記シード光の波長を制御する制御部と、 を備えることを特徴とするテラヘルツ波発生装置。請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置において、 前記波長可変レーザから出力される前記シード光の周波数は、時間に対して非線形に変化することを特徴とするテラヘルツ波発生装置。請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置において、 前記第1のポンプ光と前記第2のポンプ光の合成波のパルスの間隔は非等間隔であることを特徴とするテラヘルツ波発生装置。請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置において、 前記第1のポンプ光の周期が当該第1のポンプ光のパルス幅の2倍以上であることを特徴とするテラヘルツ波発生装置。請求項4に記載のテラヘルツ波発生装置において、 前記第2のポンプ光が前記遅延素子によって遅延される時間は、前記第1のポンプ光の周期の半分より短いことを特徴とするテラヘルツ波発生装置。請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置において、 前記遅延素子が、固有の屈折率を有する遅延物質であることを特徴とするテラヘルツ波発生装置。請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置において、 前記遅延素子が、加圧電圧により屈折率が変化する素子であり、 前記加圧電圧をモニタすることにより、前記波長可変レーザから出力される前記シード光の波長を制御する制御部をさらに備えることを特徴とするテラヘルツ波発生装置。請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置において、 試料に照射された前記テラヘルツ波を検出する検出器と、 前記第1のポンプ光及び前記第2のポンプ光の合成波のパルス発生のタイミングに基づいて、前記検出器からの信号の読み出しタイミングを制御するロックインアンプと、 をさらに備えることを特徴とするテラヘルツ波発生装置。請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置において、 試料に照射された前記テラヘルツ波と、前記第1のポンプ光又は前記第2のポンプ光とが入射されることによって近赤外光を発生する第2の非線形結晶をさらに備え、 前記第2の非線形結晶には、前記第1の非線形結晶を通過した後の前記第1のポンプ光又は前記第2のポンプ光が入射されることを特徴とするテラヘルツ波発生装置。請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置において、 第1の波長のシード光と前記第1のポンプ光によって生じる第1のテラヘルツ波と、第2の波長のシード光と前記第2のポンプ光によって生じる第2のテラヘルツ波は波長が異なることを特徴とするテラヘルツ波発生装置。請求項10に記載のテラヘルツ波発生装置において、 前記第1のテラヘルツ波及び前記第2のテラヘルツ波を試料に照射することで生じる透過光または反射光を検出する検出器と、 前記テラヘルツ波の周波数に対して前記検出器からの信号の強度に相当する情報が表される周波数スペクトルを表示する表示部と、を有することを特徴とするテラヘルツ波発生装置。単一波長のポンプ光を発生する波長固定のポンプ光レーザと、 シード光を発生し、当該シード光の波長を可変とすることが可能な波長可変レーザと、 前記ポンプ光のパルスを遅延させる遅延素子と、 前記シード光と、前記遅延素子によって遅延されていない第1のポンプ光と、前記遅延素子によって遅延された第2のポンプ光とが入射されることによってテラヘルツ波が発生する第1の非線形結晶と、 前記第2のポンプ光が前記遅延素子によって遅延された時間に応じて、前記波長可変レーザから出力される前記シード光の波長を制御する制御部と、 試料に照射された前記テラヘルツ波を検出する検出器と、 を備えることを特徴とする分光装置。請求項12に記載の分光装置において、 前記波長可変レーザから出力される前記シード光の周波数は、時間に対して非線形に変化することを特徴とする分光装置。請求項12に記載の分光装置において、 前記第1のポンプ光と前記第2のポンプ光の合成波のパルスの間隔は非等間隔であることを特徴とする分光装置。請求項12に記載の分光装置において、 前記第1のポンプ光の周期が当該第1のポンプ光のパルス幅の2倍以上であることを特徴とする分光装置。請求項15に記載の分光装置において、 前記第2のポンプ光が前記遅延素子によって遅延される時間は、前記第1のポンプ光の周期の半分より短いことを特徴とする分光装置。請求項12の分光装置において、 前記第1のポンプ光及び前記第2のポンプ光の合成波のパルス発生のタイミングに基づいて、前記検出器からの信号の読み出しタイミングを制御するロックインアンプをさらに備えることを特徴とする分光装置。請求項12の分光装置において、 前記試料に照射された前記テラヘルツ波と、前記第1のポンプ光又は前記第2のポンプ光とが入射されることによって近赤外光を発生する第2の非線形結晶をさらに備え、 前記第2の非線形結晶には、前記第1の非線形結晶を通過した後の前記第1のポンプ光又は前記第2のポンプ光が入射され、 前記検出器が、前記近赤外光を検出することを特徴とする分光装置。

说明书全文

本発明は、テラヘルツ波発生装置及びそれを用いた分光装置に関する。

遠赤外領域波とは、およそ0.1THz〜10THzの周波数範囲の電磁波である。遠赤外領域波は、より高い周波数帯の電磁波である赤外線と比べて、紙、木、又はプラスチックなどの多くの物質に対する透過性において優れ、一方でより低い周波数帯の電磁波であるミリ波と比べて、直進性や分解能において優れている特徴がある。

また、糖やたんぱく質のような高分子化合物をはじめ、多くの物質の固有の吸収スペクトルが遠赤外波の周波数帯に含まれている。これらの特徴を生かして、遠赤外領域波を対象物質に照射し、その透過波あるいは反射波を観測する手法がある。

上記の観察手法によれば、対象物の内部構造、欠陥・異物の有無、材質や含有成分の違いなどを、対象物を透過性のある容器に入れた状態で、非破壊で観察することができる。そのため、上記観察手法は、材料検査、構造物検査、薬品検査などに適用できると想定されている。

従来の遠赤外領域波の発生方式としては、1990年代に、小型で冷却を必要としないフェムト秒レーザを用いた光源および検出器が実用化された。現在では、この方式を利用した時間領域分光法に基づく汎用の分光測定装置が市販されている。

一方、2000年頃から、コンパクトで広帯域に周波数可変なコヒーレント光源の研究も盛んになり、高出化が進んでいる。さらに、非線形結晶を用いた検出技術も開発されている。

また、高出力QスイッチYAGレーザからの出射と同時に、非線形結晶への光注入(シード光源)を行うことにより、遠赤外領域光での発生周波数の狭帯域化を行うことが可能である。この構成によれば、広帯域の実現と同時に、狭帯域の分光光源を実現することができるため、汎用の分光光源としての活用性が広がった。

特開2003−302666号公報

しかしながら、非線形結晶を励起するパルスレーザのQスイッチYAGレーザでは、寿命及び信頼性の確保から、その駆動周波数は100Hz程度に限定されている。この駆動周波数の限定が、テラヘルツ波(例えば、遠赤外領域光)発生装置の性能を制限することになる。例えば、テラヘルツ波発生装置を汎用の分光機に適用した場合、上記の駆動周波数の制限が、分光検出速度を制限している要因となる。

したがって、テラヘルツ波発生装置の性能をより高めるためには、QスイッチYAGレーザ(以下、ポンプ光レーザと言う)の駆動周波数(100Hz程度)の高速化が必要となるが、上述した通り、現状のポンプ光レーザの駆動周波数には制限がある。したがって、ポンプ光レーザ自身の駆動周波数を改善することは困難である。

以上から、ポンプ光レーザの駆動周波数を変更することなく、テラヘルツ波の発生効率を向上させることが必要となる。

そこで、本発明は、ポンプ光レーザの駆動周波数を変更することなく、テラヘルツ波の発生効率を向上させることが可能な技術を提供する。

上記課題を解決する為に、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例をあげるならば、単一波長のポンプ光を発生する波長固定のポンプ光レーザと、シード光を発生し、当該シード光の波長を可変とすることが可能な波長可変レーザと、前記ポンプ光のパルスを遅延させる遅延素子と、前記シード光と、前記遅延素子によって遅延されていない第1のポンプ光と、前記遅延素子によって遅延された第2のポンプ光とが入射されることによってテラヘルツ波が発生する第1の非線形結晶と、を備えるテラヘルツ波発生装置が提供される。

また、他の例によれば、単一波長のポンプ光を発生する波長固定のポンプ光レーザと、シード光を発生し、当該シード光の波長を可変とすることが可能な波長可変レーザと、前記ポンプ光のパルスを遅延させる遅延素子と、前記シード光と、前記遅延素子によって遅延されていない第1のポンプ光と、前記遅延素子によって遅延された第2のポンプ光とが入射されることによってテラヘルツ波が発生する第1の非線形結晶と、試料に照射された前記テラヘルツ波を検出する検出器と、を備える分光装置が提供される。

本発明によれば、ポンプ光レーザの駆動周波数を変更することなく、テラヘルツ波の発生効率を向上させることができる。

本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。

遠赤外分光装置の参考例の概略構成図である。

遠赤外線周波数と吸光度の分光スペクトル特性の一例である。

遠赤外領域波発生のタイミングチャートの一例である。

第1実施例に関わる遠赤外分光装置の概略構成図である。

第1実施例に関わる遠赤外領域波発生のタイミングチャートの一例である。

第2実施例に関わる遠赤外分光装置の概略構成図である。

第3実施例に関わる遠赤外分光装置の概略構成図である。

以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。以下の実施例と既知の技術との組み合わせや置換による変形例も本発明の範囲に含まれる。

以下の実施例は、テラヘルツ波発生装置に関する。テラヘルツ波は、一般に、0.1THz〜100THzの周波数を有する電磁波である。なお、本明細書においては、テラヘルツ波は、数十GHz〜数百THzの電磁波をも含むものとして定義される。

テラヘルツ波は、イメージング、分光計測等の各種計測、非破壊検査等に用いることができる。以下では、一例として、テラヘルツ波発生装置を遠赤外分光装置に適用した例を説明するが、遠赤外分光装置以外の装置にも適用可能である。

なお、以下の説明では、「テラヘルツ波」という用語を、上述した遠赤外光の領域をも含む用語として用いる。

遠赤外分光装置は、試料中の化学物質成分分布の分析、異種成分あるいは異物の検査等の検査工程において用いられる。この分光装置は、遠赤外領域の光を用いて試料を透過した透過光又は反射した反射光中の吸収スペクトル等の周波数の特徴から試料の成分分析を可能とする装置である。

[参考例] 図1は、遠赤外分光装置の参考例の概略構成図である。遠赤外分光装置は、主要な構成要素として、2種類のレーザ光源(ポンプ光レーザ110と波長可変遠赤外光源120)と、光源用の非線形結晶(第1の非線形結晶)130と、照明光学系140と、サンプル(試料)150と、検出用の非線形結晶(第2の非線形結晶)180と、光検出器200と、レーザの発光時間制御と検出信号の分光制御を行う制御部210とを備える。

以下では、遠赤外領域波(以下、遠赤外光と言う)の発生部分から、遠赤外光を信号検出系(光検出器200)で受光するまでの詳細を説明する。

遠赤外光を発生させるための波長可変光源の構成としては、波長の異なる2種類のレーザ光を非線形結晶に照射したときに生じる差周波数発生又はパラメトリック発生によって、遠赤外光を発生させる構成がある。

例えば、非線形結晶130として、MgO:LiNbO3が用いてもよい。また、ポンプ光レーザ110は、単一波長のポンプ光を発生する波長固定のポンプ光レーザであり、例えば、短パルスのQスイッチYAGレーザである。波長可変遠赤外光源(以下、シード光光源と言う)120は、所望の波長のシード光を発生することが可能な光源である。波長可変遠赤外光源120はシード光の波長を変化させることができる。より具体的には、シード光の波長は連続的に変化するものであってもよい。ここで「所望の波長」とは波長を可変にすることができるレーザの仕様の範囲内の波長を意味する。シード光を発生し、当該シード光の波長を可変とする

ポンプ光レーザ110からのポンプ光は、2分の1波長板(以下λ/2板)330で直線偏光の方位が変えられ、その後、偏光ビームスプリッタ(以下PBS)350により透過光と反射光に分岐される。透過光は、λ/2板331を通過し、非線形結晶130に入射する。

シード光光源120からシード光は、2つのミラー121、122を介して、ポンプ光(PBS 350を透過した透過光)とわずかな角度をつけて非線形結晶130に入射する。

この構成によれば、シード光光源120からのシード光を非線形結晶130に入れると、パラメトリック発生によって、波長の異なる遠赤外光を得ることができる。

非線形結晶130の遠赤外光の出口側の所望の位置にSiプリズムを取り付けると、発生した遠赤外光を効率よく取り出すことができる。ここで、シード光光源120の波長を1066nm〜1076nm程度の間で変化させて、また、それに応じて、シード光の非線形結晶130への入射角度を2°〜4°程度の範囲内の最適値で入射させる。この構成によれば、発生する遠赤外光の発生周波数を0.5THz〜3THz程度の範囲で変えることができる。

こうして得られた遠赤外光は、照明光学系140を通して、所望のビーム形状に整形される。整形されたビームは、測定対象となる試料150に照射される。

試料150の中の一部分の分光スペクトルを測定したい時には、試料150に照射されるビーム径は、照明光学系140を介してφ1mm程度に絞り込まれる。別の例として、試料150の平均的な分光スペクトルを測定したい時には、ビーム径を絞り込まないでφ10mm程度のビームを試料150に照射する。

ビームを絞り込む場合には、遠赤外分光装置が、測定対象である試料150を搭載するためのXYステージ(図示せず)を備えてもよい。XYステージによって試料150を2次元軸方向に移動することで、2次元方向に分布した分光スペクトル情報(マップ情報)を得ることもできる。

別の例として、照明光学系140が、ビームの照射方向を変えるための偏向部を備えてもよい。当該偏向部によって測定ビームの照射方向を変えて、1次元又は2次元方向にビームで試料150を走査することで、試料150上の2次元方向に分布した分光スペクトル情報(マップ情報)を求めることも同様に可能である。

このような仕組みにより、遠赤外光が測定対象の試料150を透過、又は試料150から反射させると、その試料150の物質によっては特有の周波数と光量の依存特性が発生する場合がある。このような分光スペクトルの特徴は、試料150の構成分子に特有のスペクトル表しているために、物質の構成分子などの特定につながることから物質の指紋と言われるゆえんである。

図2は、遠赤外線周波数と吸光度の分光スペクトル特性の一例である。図2に示すように、横軸に遠赤外光の周波数、縦軸に吸光度(又は、透過率)を表すとその特性が理解し易い。

この特性は、物質の分子間相互作用により特定の周波数のみに、透過光又は反射光の分光成分に吸収現象が発生するためにあらわれる。このような分子間の相互作用の他に、分子の素結合部による分子共鳴現象の発生、又は、分子の結晶性(結晶かたまり)によっても同様に分子間共鳴現象が起こって、吸収スペクトルが発生する。

このような結晶性による共鳴現象が、吸収スペクトルの変化として検出できることが種々報告されている。例えば、このような共鳴現象として、医薬品などにおいて、液体から結晶化する時に発生する頻度が高い結晶多形と言われる結晶構造の相違、結晶性と非結晶性との相違、及び、結晶多形が鏡像(mirror image)形態(いわゆる、勝手違い(symmetrically opposite)構造)となる光学異性体など、分子の構造形態に係わる共鳴現象がある。

次に、試料150を透過、あるいは、反射した遠赤外光は、その強度情報を得るために、一般的に光電変換する形式の検出器(光検出器200)で検出し易い近赤外光に変換する。

具体的には、試料150を透過した遠赤外光280が、ミラー160によって反射される。反射された遠赤外光は、検出光学系170によって整形され、非線形結晶180に入射する。遠赤外光280を非線形結晶180に入射させると同時に、ポンプ光の一部(PBS 350で反射した反射光)を非線形結晶180に入射させる。遠赤外光とポンプ光の一部の両方を用いた波長変換により、1066nm〜1076nm付近の近赤外光を発生させる。例えば、非線形結晶180としては、LiNbO3、又は、MgO:LiNbO3を用いてもよい。

この発生した近赤外光を検出する。このとき、近赤外光のビーム形状は、検出光学系190によって整形され、その近赤外光は、近赤外光に感度の有する光検出器200で光電変換され、検出信号として検出される。制御部210は、ポンプ光レーザ110及びシード光光源120を制御する。また、制御部210は、光検出器200で検出された検出信号の分光制御を行い、分光情報220を出力する。

近赤外光用の光検出器200は、1つの受光素子でもよいし、複数の受光素子が1次元配列にならんだ受光素子(1Dアレイ検出器)でもよいし、又は、2次元配列に並んだ受光素子(2Dアレイ検出器)などでもよい。近赤外光用の受光素子は、動作速度が速く、安価で、取扱いが容易であり、かつ、種類も多いため、産業応用に適している。

なお、制御部210は、光検出器200からの信号の強度に相当する情報が表される周波数スペクトル(分光情報220)を表示する表示部(ディスプレイなど)を備えてもよい。

上記例のように、非線形結晶180を用いて遠赤外光を近赤外光に波長変換する場合に、遠赤外光の量子エネルギー(hν値、h:プランク定数、ν:遠赤外線周波数)が低いために、PBS 350によってポンプ光の一部(PBS 350で反射した反射光)を分岐させて、調整後に非線形結晶180に入射させる。具体的には、ポンプ光の一部(PBS 350で反射した反射光)を、ポンプ光照射光学系270を通過させ、ミラー344で反射させる。反射されたポンプ光の一部は、λ/2板332で方位角が調整され、非線形結晶180に入射する。

この構成を実現させる場合、非線形結晶180に遠赤外光(テラヘルツ波)280のパルスを入射させるタイミングと同じタイミングで、ポンプ光から分岐したレーザ(PBS 350で反射した反射光)のパルスを入射させることが必要である。この同期させるタイミングの調整をするために、遠赤外分光装置が、光路長補正ステージ320を備える。

光路長補正ステージ320は、複数のミラー321、322を含む移動機構323を備える。移動機構323によって複数のミラー321、322の位置を移動させることにより、ポンプ光から分岐したレーザ(PBS 350で反射した反射光)の光路長の調整をして、非線形結晶180へ入射するタイミングを調整する。ポンプ光から分岐したレーザ(PBS350で反射した反射光)は、2つのミラー341、342を経て、光路長補正ステージ320に入射し、光路長が調整される。光路長補正ステージ320を経たレーザは、ミラー343を経てポンプ光照射光学系270に入射することになる。

ポンプ光レーザ110として、QスイッチYAGレーザを用いる場合には、その駆動周波数に合わせてシード光光源120の周波数を制御して、所望の単波長となる遠赤外光を得る。試料の吸収スペクトルの測定において、この遠赤外光を段階的な種々の周波数に設定することにより、分光情報220が取得される。分光情報220の取得時の測定時間は、QスイッチYAGレーザ(ポンプ光レーザ110)の駆動周波数によって決まる。

図3は、遠赤外領域波発生のタイミングチャートの一例である。図3は、100Hzに同期したシード光光源120の周波数から、対応した周波数の遠赤外光が発生する構成を示す。

例えば、ポンプ光レーザ110の駆動周波数が100Hzである場合に、パルス間隔は、10msecである。制御部210は、ポンプ光レーザ110の駆動に同期して、シード光光源120からのシード光の出射及びその周波数を制御する。ここでは、シード光光源120の設定周波数を10GHz刻みとする。図3の例では、制御部210は、ポンプ光レーザ110の駆動に同期して、周波数f1、f2、・・・、fmでシード光の出射を制御する。なお、図3の例において、シード光の周波数f1、f2、・・・、fmは、時間軸に対して線形的に変化する。

図3に示すように、遠赤外光(テラヘルツ波)280のパルスのタイミングは、ポンプ光レーザ110のレーザのパルスと同じタイミングであり、発生する遠赤外光280の周波数は、1THzから0.01THz刻みとなる。

図3の例において、1〜3THz間で分光情報を取得する場合には、測定回数は、200回である。以上から測定に要する時間は、(2THz/0.01THz)×10msec=2000msecとなり、2秒/1スキャンの所要時間を有することになる。

試料150の種類によっては遠赤外光280の透過率が悪い場合がある。その場合では、透過分光スペクトルを測定すると、SN比が悪いデータとなる。この場合に、SN比を改善させるには、繰り返し測定を実行し、蓄積したデータから平均値を求めることがある。例えば、100回の測定をして、平均値データを採取する場合には、SN比は、(100)1/2=10倍改善できるが、測定時間は、2秒×100回=200秒となる。すなわち、3.3分/1スキャンとなり、測定時間が長くかかることになる。

また、上述したように、XYステージを使用した試料の2次元分布(マップ)の測定を想定する。試料150上において、(X方向)100カ所×(Y方向)100カ所=10000カ所のデータを採取する場合には、測定時間は、2秒×10000箇所=20000秒(333分、すなわち、5.5時間)かかりことになり、産業用途としては、短縮化を求められる。

[第1実施例] 図4は、第1実施例に関わる遠赤外分光装置の概略構成図である。図4において、図1と同じ構成要素については同じ符号を付して、説明を省略する。

発明者は、図1の参考例と同じポンプ光レーザ110を使用して、テラヘルツ波の高周波数駆動が可能な構成を見出した。これにより、遠赤外分光装置において分光測定の高速化が可能となる。QスイッチYAGレーザ(ポンプ光レーザ110)では、パルス発光(CCW発光)によるパルス幅は、500psec程度である。しかし、発光繰り返し駆動周波数は100Hz程度であり、そのパルス間隔は10msecと長い。そこで、10msecの間隔の中に、新たにQスイッチYAGレーザのパルスを挿入する。

本実施例では、遠赤外光の発生を高速にするために、遠赤外分光装置におけるテラヘルツ波発生装置は、100Hzの基本波(ポンプ光レーザ110からのポンプ光)を分岐して、分岐されたもののうち一方を遅延させて遅延波を発生させる。テラヘルツ波発生装置は、この遅延波を、もとの基本波に重畳させて、合成波を生成する。この基本波と遅延波の合成により、周波数は2倍になり、遠赤外領域波の発生速度(効率)を、2倍にすることができる。

ここで、元のポンプ光レーザ110のパルス幅は、1nsecより小さい(パルス幅<1nsec)。一例として、遅延時間は、1nsec以上であれば(遅延時間≧1nsec)、合成波の周波数は2倍にできる。

遅延波の発生のために、遅延素子を用いることができる。例えば、光速度は3×108m/secであるために、1nsec間では、光は0.3m進む。遅延素子として、屈折率がn=3.41のシリコン(Si)を使用する場合を考える。この場合、0.3/3.41=0.088m、したがって、分岐した基本波の一方を、長さ>88mmの遅延素子(物質)に通せばよいことがわかる。一例として、固有の屈折率を有する遅延物質については、その長さを適宜変更することによって遅延時間を調節してもよい。

このように、2波長レーザ励起による遠赤外領域発生の形態では、分岐した励起レーザを遅延素子に通して、遅延パルス波を発生させることによって、ポンプ光レーザ110自体の駆動周波数を変えることなく、テラヘルツ波の高周波数化が可能となる。したがって、周波数可変を利用する分光分析の高速化が可能となる。

なお、基本波を3つ以上に分岐させ、2つ以上の遅延素子を並列化させてもよい。これにより、テラヘルツ波の発生速度を3倍以上に高速化することが可能となる。なお、非線形結晶130からテラヘルツ波を発生させるには、励起するためのレーザパワーが結晶固有の閾値を超える必要がある。分岐の数を増やして、並列数を増やすと、各レーザのパルスのエネルギーは減少する。したがって、この方式での高速化の限界は、レーザパワー依存と想定できる。

図4に示すように、具体的には、ポンプ光レーザの照射光路は、その照射光路と分岐光路とに分けられる。分岐光路を進むポンプ光を、所定の時間だけ遅延した後に元の照射光路にもどし、遅延していないポンプ光に重畳する。重畳したポンプ光を、非線形結晶に照射する。

上記のために、遠赤外分光装置におけるテラヘルツ波発生装置は、ポンプ光レーザ110の照射光路を分岐する光学要素と、分岐光路に配置された遅延素子240と、元の照射光路のポンプ光と遅延素子によって遅延されたポンプ光とを重畳するための光学要素とを備える。

ポンプ光レーザ110の後段には、λ/2板330が配置される。まず、ポンプ光レーザ110から出たポンプ光に関して、λ/2板330で直線偏光の方位角が変えられる。λ/2板330の後段には、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSと言う)351が配置される。ポンプ光は、PBS351で分岐されることによって、反射波(遅延素子240へ分岐する光)291の光量と透過波292の光量とが調整される。

分岐光路上には、ミラー241が配置されており、反射波291は、ミラー241で反射されて、遅延素子240へ導かれる。遅延素子240は、反射波291のパルスに所定の遅延時間を与え、伝達時間を遅らせた遅延波293を生成する。遅延波293は、ミラー242で反射されて、PBS352に入射する。

PBS352は、元の照射光路上に配置されている。透過波(第1のポンプ光)292と遅延波(第2のポンプ光)293は、PBS352を介して重畳される。重畳された光波(以下、合成波300)は、PBS352の後段に配置された偏光板340に入射する。合成波300に関して、偏光板340によって、互いに直行する偏光成分から同一方位角の偏光が取り出される。その後、合成波300は、λ/2板333を透過し、所望の方位角になる。

次に、合成波300の分光比率が、PBS350によって調整される。PBS350によって、反射波(光路長補正ステージ320を介して非線形結晶180へ向かう光)295と透過波(非線形結晶130へ向かう光)296とに分岐される。透過光296については、非線形結晶130に入射させるために、方位角(S偏光・紙面に垂直方向)がλ/2板334で調整される。

反射波295は、光路長補正ステージ320によって光路長が調整される。これにより、反射波295のパルスが非線形結晶180に入射するタイミングと、発生する遠赤外光(テラヘルツ波)280のパルスが非線形結晶180に入射するタイミングとが一致するようになる。なお、本実施例では、光路長を調節するための機構(光路長補正ステージ320)が、ポンプ光照射光学系270の前段に配置されているが、ポンプ光照射光学系270の後段に配置されてもよい。

なお、図1の構成と同様に、シード光光源120からシード光は、2つのミラー121、122を介して、PBS350を透過した透過光296とわずかな角度をつけて非線形結晶130に入射する。

本実施例では、制御部210は、合成波300のパルスのタイミングに同期して、シード光光源120からのシード光の出射及びその周波数(あるいは波長)を制御する。例えば、シード光光源120の設定周波数を10GHz刻みとする。上述したように、遅延素子240の構成により、遅延波293の遅延時間は、あらかじめ計算することができる。したがって、合成波300のパルスのタイミングは、あらかじめ計算することができる。制御部210には、合成波300のパルスのタイミングがあらかじめ設定されている。制御部210は、合成波300のパルスのタイミングに同期して、周波数f1、f2、・・・、fmでシード光の出射を制御する。

なお、合成波300がPBS350で分岐された後の処理は、図1と同じであり、説明を省略する。合成波300の一部(PBS 350で反射した反射光)と、遠赤外光280とは、同じタイミングで非線形結晶180に入射する。非線形結晶180において、遠赤外光が近赤外光に波長変換される。そして、近赤外光は、近赤外光に感度の有する光検出器200で検出信号として検出される。制御部210に接続された表示部は、遠赤外光(テラヘルツ波)280の周波数に対して光検出器200からの信号の強度に相当する情報が表される周波数スペクトルを表示する。

以上の構成によれば、ポンプ光レーザ110からのレーザの一部を分岐させて遅延させ、その遅延したレーザ光を分岐前のレーザ光と重ねる。これにより、発光パルスの数を2倍に増やす(合成波300)ことができる。

図5は、第1実施例に関わる遠赤外領域波発生のタイミングチャートの一例であり、3msec遅延させた遅延波を発生させる例を説明する。図5の例は、図3と同様に、ポンプ光レーザ110の駆動周波数が100Hzであり、パルス間隔は、10msecである。遅延素子240による遅延時間は3msecに設定されている。

図5に示すように、合成波300のパルスは、ポンプ光レーザ110からのポンプ光(第1のポンプ光)のパルスのタイミングと、遅延波293(第2のポンプ光)のパルスのタイミングとで発生し、これらのパルスの発生が繰り返される。

ポンプ光レーザ110からのポンプ光(第1のポンプ光)のパルスと遅延波293(第2のポンプ光)のパルスとの合成波300のパルスの間隔は、非等間隔となる。例えば、第1のポンプ光のパルス501と第2のポンプ光のパルス502との間の間隔が3msecであるのに対し、第2のポンプ光のパルス502と第1のポンプ光のパルス503との間の間隔が7msecである。

また、遅延素子240によって遅延される遅延時間は3msecであり、ポンプ光レーザ110からのポンプ光の周期は、10msecである。したがって、遅延素子240によって遅延される遅延時間は、ポンプ光レーザ110からのポンプ光の周期の半分(5msec)より短い。このように、遅延波293は、ポンプ光レーザ110からのポンプ光の透過波(基本波)292に対して少しだけずらした状態で基本波と合成される。

なお、ポンプ光レーザ110からのポンプ光のパルス幅を500psecとすると、遅延時間は1nsec程度あればよい。したがって、遅延素子240によって遅延される遅延時間は、ポンプ光レーザ110からのポンプ光のパルス幅より大きければよく、例えば、ポンプ光レーザ110からのポンプ光のパルス幅に対して2倍以上である。

ポンプ光レーザ110からのポンプ光の周期は、ポンプ光レーザ110からのポンプ光のパルス幅の2倍以上であればよい。本例では、ポンプ光レーザ110からのポンプ光のパルス幅は、500psec程度であり、ポンプ光レーザ110からのポンプ光の周期は、10msecである。したがって、ポンプ光レーザ110からのポンプ光の周期は、ポンプ光レーザ110からのポンプ光のパルス幅に対して、107倍以上である。したがって、ポンプ光レーザ110からのポンプ光の周期は、ポンプ光レーザ110からのポンプ光のパルス幅に対して、10n(例えば、1≦n≦7)倍以上であってもよい。

上述したように、本実施例は、テラヘルツ波のパルス幅が短いという特徴を利用する。例えば、パルス幅が大きい光波の場合、より大きな遅延時間が必要となり、結果として、遅延素子が巨大化するという課題がある。一方、テラヘルツ波のパルス幅は短いため、遅延波は、基本波に対して少しだけずらすだけでよい。すなわち、基本波の周期に対して遅延波をちょうど半分だけずらす必要もない。本実施例は、基本波と、その基本波に対して少しずらした遅延波との合成波を生成することにより、テラヘルツ波発生装置の高周波数化できる点に特徴がある。

別の言い方をすれば、テラヘルツ波のパルス幅が短いため、遅延波を発生させるための遅延時間は非常に小さくてよい。例えば、ポンプ光レーザ110からのポンプ光のパルス幅は、500psec程度であるため、遅延時間は1nsec程度でよく、遅延時間は非常に小さくなる。ポンプ光レーザ110からのポンプ光の周期は、ポンプ光のパルス幅に比べて非常に大きいため、1つの周期内に遅延波を挿入する自由度も高い。例えば、ポンプ光のパルス幅が小さく、かつ遅延時間が小さいため、ポンプ光の中に複数の遅延波を入れることも可能であり、多段の分岐による更なる高周波駆動も可能となる。このときでも、基本波の周期の半分の間に、複数の遅延波を入れることも可能である。

制御部210は、遅延素子240によって遅延された遅延時間に応じて、シード光光源120からのシード光の周波数(あるいは波長)を制御する。具体的には、図5に示すように、制御部210は、合成波300のパルスのタイミングに同期して、周波数f1、f2、・・・、fmでシード光の出射を制御する。なお、f1

また、発生する遠赤外光280の周波数は、1THzから0.01THz刻みとなる。すなわち、第1の波長のシード光(周波数f1に対応するシード光)と第1のポンプ光501によって生じる第1のテラヘルツ波と、第2の波長のシード光(周波数f2に対応するシード光)と遅延波(第2のポンプ光)502によって生じる第2のテラヘルツ波は波長が異なる。

制御部210には、例えば、図5に示す合成波300のパルスのタイミング及び各タイミングでの周波数f1、f2、・・・、fmがあらかじめ設定されていればよい。図5の例では、シード光の周波数f1、f2、・・・は、合成波300のパルスのタイミングに従って、時間軸に対して非線形的に変化するように設定されている。なお、シード光の周波数f1、f2、・・・は、時間軸に対して曲線的に変化させてもよい。

3msec遅延させた場合には、非線形結晶130に入射するポンプ光レーザ110の駆動周波数100Hzを、2倍の200Hzにすることができる。この時の、1〜3THzに可変する時間は、半減することができて、検出時間の短縮化ができる。さらに、遅延素子240を多段にすることにより、遅延時間の多重化が可能である。例えば、2つの遅延素子を配置し、基本波を3つに分岐させると、3倍の駆動周波数を実現することができる。すなわち、ポンプ光レーザ110の駆動周波数100Hzを、3倍の300Hzにすることができる。なお、分割によるレーザ強度の減衰が発生するために、非線形結晶130での変換しきい値の確保が必要となると想定できる。

次に、遅延素子240について以下に説明する。パルス発光(CCW発光)によるパルス幅をパルス幅500psecとすると、遅延時間が1nsec程度あれば、合成波周波数を2倍にすることができる。

例えば、光速度は、3×108m/secであり、0.3m/1nsecの距離を光は進む。遅延素子240として、屈折率n=3.41の物質を使用した場合には、0.3m/3.41=0.088mとなる。したがって、長さ>88mmの遅延素子(物質)240を通せばよい。

上記の事例では、遅延素子240の屈折率はn=3.14と仮定したが、このように固定値を持つ素子に限定されるものではなく、屈折率が加圧電圧により変化する電気光学効果のある素子、例えば、ポッケルス効果のある素子や、カー効果のある素子など、屈折率が可変できる素子を用いることも可能である。これらの素子を使用することにより、電圧制御することから遅延時間を制御することが可能となり、ひいてはパルスの遅延時間のタイミング制御が可能である。

なお、上記の素子を用いる場合、遅延素子240には、電圧を印加する電圧制御部(図示せず)が接続される。電圧制御部は、遅延素子240への加圧電圧の制御することにより、遅延素子240による遅延時間を制御する。この場合、制御部210は、遅延素子240又は電圧制御部に電気的に接続される。制御部210は、遅延素子240への加圧電圧をモニタするように構成される。制御部210は、加圧電圧のモニタ結果に応じて遅延素子240による遅延時間を算出し、合成波300のパルスのタイミングに従ってシード光の周波数f1、f2、・・・、fmを制御する。なお、制御部210が、上記の電圧制御部の機能を備えてもよい。

以上の構成によれば、非等間隔で高周波数駆動のできるテラヘルツ波発生装置の実現が可能である。2種類のレーザ光(ポンプ光、シード光)を非線形結晶に入射させて、遠赤外領域波を発生させる構造において、テラヘルツ波の発生の効率は、ポンプ光レーザの駆動周波数に依存していたが、本例では、ポンプ光レーザの駆動周波数を変えることなく、テラヘルツ波の発生の効率を向上させることができる。したがって、本例のテラヘルツ波発生装置を遠赤外分光装置に適用した場合、遠赤外領域波の発生効率を上げて、分光測定時間を短縮することができる。

上記の例では、ポンプ光レーザ110として、QスイッチYAGレーザを使用し、その周波数が100Hzであり、パルス幅が500psecである事例を説明したが、レーザ周波数は、もっと高くても本方式を適用できる。

上記の方式は、レーザの周波数によって決まるパルス間隔時間と、パルス幅との時間差が大きい場合に、上記に説明したビームの分岐、遅延、合成による駆動周波数の高周波数化が可能となる。

なお、本実施例では、ポンプ光レーザ110として、短パルスのQスイッチYAGレーザを用いる例を示したが、基本となるスペクトルの線幅が細ければよいので、モードロックレーザを用いてもよい。当該レーザは繰り返しが早い機種も存在するため、高速な測定が可能となる場合もある。

また、遅延素子240で一定時間だけ遅延した遅延波(パルス波)を基本波に合成して合成波を生成する場合には、駆動周波数あげることができるが、基本波のパルスと遅延波のパルスとの間の間隔は、遅延素子240の条件によって決まる。したがって、基本波のパルスと遅延波のパルスとの間の間隔は、一定ではない場合がある。そのために、制御部210は、シード光光源120の周波数を、合成波300のパルスに合わせて可変させるように構成される。

上記の例では、基本波を2つに分岐して、分岐したもののうち一方を所定の時間だけ遅延させた後に、基本波と合成し、2倍の駆動周波数を得る。他の例によれば、基本波を3つに分岐して、それらの中の2つの分岐に対して異なる遅延時間を有する2つの遅延素子を配置する。そして、2つの遅延素子から生成された2つの遅延波を基本波と合成する。これにより、3倍の駆動周波数を得ることも可能である。このように、基本波を多段に分岐し、かつ、各分岐に対して異なる遅延時間を設定し、それらの合成波の生成することが可能である。

なお、駆動周波数アップの制約条件は、ポンプ光レーザ110(QスイッチYAGレーザ)からの基本波の分岐によるパワーダウンが、非線形結晶130における波長変換しきい値未満になることである、と想定できる。非線形結晶130に入射するレーザパワーがしきい値未満となると、非線形結晶130からテラヘルツ波の発生をさせることが出来なくなるので、テラヘルツ波の発生用光源として使用できなくなる。したがって、そのしきい値を上回るパルスエネルギーを確保できる分岐数が本方式での最大分岐となり、最高の駆動周波数となることが想定できる。

[第2実施例] 図6は、第2実施例に関わる遠赤外分光装置の概略構成図である。本例は、遠赤外光を直接検出できる遠赤外分光装置である。

第1実施例では、ポンプ光の分岐と、合成波及びテラヘルツ波の非線形結晶180への入射タイミングの制御とが必要で有ったが、本実施例では、遠赤外光を変換せずに直接検出するため、それらが必要ない。すなわち、図6の例では、図1で必要であった構成、例えば、ポンプ光の分岐(PBS350での分岐)、光路長補正ステージ320、及び、非線形結晶180などが必要なくなる。

近年、遠赤外光を直接検出できる素子(遠赤外領域検出器250)が開発されている。図6に示すように、遠赤外領域検出器250が、検出光学系170の後段に配置されている。この構成では、試料150を透過した遠赤外光280が、ミラー160によって反射され、反射された遠赤外光は、検出光学系170によって整形され、遠赤外領域検出器250に入射する。

なお、遠赤外領域検出器250が、熱変換をするボロメータ系の検出素子である場合、その検出素子は、構造上、msecオーダの時定数を有する。したがって、ポンプ光レーザ110の駆動周波数の高速化は、このボロメータの時定数の時間制約の中でのみ可能となる。

本実施例によれば、非線形結晶180によって遠赤外光を周波数変換しないために、ポンプ光の分岐が不要で、合成波及びテラヘルツ波の非線形結晶180への入射タイミングの制御を必要としないことに利点がある。したがって、第1実施例に比べて簡易な構成で遠赤外光の検出が可能となる。

一方、本例では、低ノイズ化のために、駆動信号とのロックイン制御を行うことが好ましい。このため、遠赤外分光装置は、ロックイン制御部(ロックインアンプ)260を備える。ロックイン制御部260は、遠赤外領域検出器250からの検出信号の読み出しの制御を行うものである。具体的には、ロックイン制御部260は、合成波300から分岐したもの(同期信号)をモニタし、遠赤外領域検出器250からの検出信号の読み出しの時間制御を行う。

合成波300の分岐のために、偏光板340の後段には、ビームサンプラー370が配置される。ビームサンプラー370は、合成波300の一部を分岐する。分岐された合成波300の一部は、受光素子360で検出される。ロックイン制御部260は、受光素子360で検出された検出信号を同期信号として、遠赤外領域検出器250からの検出信号をロックイン制御する。この構成により、雑音の影響を受けにくくすることができる。

なお、本実施例では、遠赤外光を直接検出する構成にロックイン制御を適用した場合を説明したが、ロックイン制御の構成は、第1実施例、以降で説明する第3実施例にも適用可能である。ロックイン制御を適用した場合、より高感度の検出が可能となる。

[第3実施例] 図7は、第3実施例に関わる遠赤外分光装置の概略構成図である。第1実施例では、非線形結晶130に入射する前のポンプ光を分岐させているが、本実施例では、非線形結晶130の通過後のポンプ光を利用する。

図7に示すように、非線形結晶130の後段には、ミラー381が配置される。非線形結晶130を通過した、合成波300(透過波292及び遅延波293の合成波)は、ミラー382を介して、光路長補正ステージ320に入射する。光路長補正ステージ320を経た合成波300は、ミラー383を経てポンプ光照射光学系270に入射することになる。その他の構成は、図1と同じである。

本実施例によれば、図4の非線形結晶130の前に分岐する方式と比較して、ポンプ光レーザ110からのポンプ光の全光量を非線形結晶130によるテラヘルツ波の発生に使用することができる。したがって、テラヘルツ波発生させるためのレーザ光のロスが少なくて、効率が良いテラヘルツ波発生装置を構築することができる。

なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることがあり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。

実施例の制御部210などの機能は、ソフトウェアのプログラムコードによって実現してもよい。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。

最後に、ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントの如何なる相応しい組み合わせによってでも実装できる。更に、汎用目的の多様なタイプのデバイスが使用可能である。ここで述べた方法のステップを実行するのに、専用の装置を構築するのが有益である場合もある。つまり、制御部210などの各種機能の一部又は全部が、例えば集積回路等の電子部品を用いたハードウェアにより実現されてもよい。

さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。

110 :ポンプ光レーザ 120 :波長可変遠赤外光源(シード光光源) 121 :ミラー 122 :ミラー 130 :非線形結晶 140 :照明光学系 150 :試料 160 :ミラー 170 :検出光学系 180 :非線形結晶 190 :検出光学系 200 :光検出器 210 :制御部 220 :分光情報 240 :遅延素子 241、242 :ミラー 250 :遠赤外領域検出器 260 :ロックイン制御部 270 :ポンプ光照射光学系 320 :光路長補正ステージ 321、322 :ミラー 323 :移動機構 330、331、332、333、334 :2分の1波長板(λ/2板) 340 :偏光板 341、342、343、344 :ミラー 350、351、352 :偏光ビームスプリッタ(PBS) 360 :受光素子 370 :ビームサンプラー 381、382、383 :ミラー

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