光増幅器、光増幅システム、波長変換器、光増幅方法および光通信システム |
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申请号 | JP2013503543 | 申请日 | 2012-03-05 | 公开(公告)号 | JPWO2012121223A1 | 公开(公告)日 | 2014-07-17 |
申请人 | 古河電気工業株式会社; | 发明人 | 繁弘 高坂; 繁弘 高坂; 味村 裕; 裕 味村; | ||||
摘要 | シグナル光およびポンプ光が入 力 されるとともに、1つ以上の相対位相シフタを挿入した増幅用光ファイバを備える光増幅器。好ましくは、増幅用光ファイバの長手方向で相対位相が0.5πを含む所定の範囲に収まるように相対位相シフタを挿入する。好ましくは、増幅用光ファイバは、非線形定数が10[1/W/km]以上の高非線形光ファイバである。好ましくは、増幅用光ファイバの分散は、増幅帯域内において-1[ps/nm/km]から1[ps/nm/km]の範囲にある。好ましくは、ゼロ分散波長における増幅用光ファイバの分散スロープの絶対値は0.05[ps/nm2/km]以下である。 | ||||||
权利要求 | シグナル光およびポンプ光が入力されるとともに、1つ以上の相対位相シフタを挿入した増幅用光ファイバを備えることを特徴とする光増幅器。 前記増幅用光ファイバの長手方向で相対位相が0.5πを含む所定の範囲に収まるように前記相対位相シフタを挿入することを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記増幅用光ファイバは、非線形定数が10[1/W/km]以上の高非線形光ファイバであることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記増幅用光ファイバの分散は、増幅帯域内において-1[ps/nm/km]から1[ps/nm/km]の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 ゼロ分散波長における前記増幅用光ファイバの分散スロープの絶対値は0.05[ps/nm2/km]以下であることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタは、光ファイバであることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記光ファイバの長さにより前記相対位相シフト量を調節することを特徴とする請求項6に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタは、誘電体多層膜フィルタであることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記誘電体多層膜フィルタの傾きで前記相対位相シフト量を調節することを特徴とする請求項8に記載の光増幅器。 前記誘電体多層膜フィルタは全波長を通すオールパスフィルタであることを特徴とする請求項8に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタは、誘電体多層膜フィルタと入力と出力に対応した2本のコリメータレンズ付き光ファイバを集積したデバイスであることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記誘電体多層膜フィルタは反射型であり、前記光ファイバに入力した光が前記光ファイバ端の前記コリメータレンズでコリメートされて空間に出力され、前記誘電体多層膜フィルタに入射され、前記誘電体多層膜フィルタは光を前記もう一つのコリメータ付き光ファイバに光が入射するように反射し、前記もう一つのコリメータ付き光ファイバから光が出力されることを特徴とする請求項11に記載の光増幅器。 前記デバイスで用いるコリメータ付き光ファイバの分散が、増幅する前記シグナル光の波長範囲と前記ポンプ光の波長と前記シグナル光に対応して発生するアイドラ光の波長範囲において、-1[ps/nm/km]から1[ps/nm/km]の範囲にあることを特徴とする請求項12に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタはファイバブラッググレーティングであることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記ファイバブラッググレーティングのブラッグ波長における透過ロスの大きさ、もしくは、反射率の大きさにより相対位相シフト量を調節することを特徴とする請求項14に記載の光増幅器。 前記ファイバブラッググレーティングのブラッグ波長を中心波長とする透過ロスの3dB波長帯域の外側に、ポンプ波長を設定し、ポンプ光の位相をシフトさせることを特徴とする請求項14に記載の光増幅器。 前記ファイバブラッググレーティングのブラッグ波長よりも長波長側に前記ポンプ光の波長を設定し、ポンプ光の位相をシフトさせることを特徴とする請求項16に記載の光増幅器。 前記ファイバブラッググレーティングの分散が、増幅する前記シグナル光の波長範囲と前記ポンプ光の波長と前記シグナル光に対応して発生するアイドラ光の波長範囲において、-1[ps/nm/km]から1[ps/nm/km]の範囲にあることを特徴とする請求項14に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタは、ファイバブラッググレーティングのブラッグ波長が温度により変化することを緩和するデバイスであることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタは、ファイバブラッググレーティングを伸縮させることにより、ブラッグ波長を変化させ、前記ポンプ波長における位相シフト量を調節することを特徴とする請求項19に記載の光増幅器。 前記ファイバブラッググレーティングの前段に光アイソレータを設置することを特徴とする請求項14に記載の光増幅器。 前記ファイバブラッググレーティングの後段に光アイソレータを設置することを特徴とする請求項14に記載の光増幅器。 設置した前記光アイソレータモジュールを構成する光ファイバの分散が、増幅する前記シグナル光の波長範囲と前記ポンプ光の波長と前記シグナル光に対応して発生するアイドラ光の波長範囲において、-1[ps/nm/km]から1[ps/nm/km]の範囲にあることを特徴とする請求項21または22に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタはPLCであることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記PLC内の光回路は、ポンプ光の波長とそれ以外の波長の光を分離する回路、ポンプ光の位相をシフトさせる回路、ポンプ光の波長とそれ以外の波長の光を合波する回路で構成されていることを特徴とする請求項24に記載の光増幅器。 前記PLCの熱光学効果を用いて相対位相シフト量を調節することを特徴とする請求項24に記載の光増幅器。 前記PLCは、ペルチェを用いた温度制御素子により、温度が一定に保たれることを特徴とする請求項24に記載の光増幅器。 前記PLCは、温度変化による動作波長変化が無いように、アサーマル化されていることを特徴とする請求項24に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタは、空間光学系の回折格子とLCOSを用いたデバイスであることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタは、LCOSの位相調節機能を利用して、当該光増幅器の利得特性が平坦になるように前記ポンプ光の位相をシフトさせることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記増幅用光ファイバは偏波保持増幅用光ファイバであることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記増幅用光ファイバおよび前記相対位相シフタによって構成される構成物は、長手方向において中心対称性を有することを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記増幅用光ファイバのゼロ分散波長が、前記ポンプ光の波長と一致していることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記ポンプ光の波長が、前記増幅用光ファイバのゼロ分散波長よりも短波であることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記ポンプ光の波長が、前記増幅用光ファイバのゼロ分散波長よりも長波であることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタは、前記増幅用光ファイバ中に周期的に挿入されることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタの配置の周期を後段の相対位相シフタほど長くすることを特徴とする請求項36に記載の光増幅器。 前記相対位相シフタの位相シフト量を、前記シグナル光の利得特性が、パワー変動が0.5dB以下の平坦性を持つ帯域が最も広帯域になるシフト量に設定することを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記ポンプ光を位相変調する位相変調器に入力する電気信号が100MHz以上の帯域を持つ白色雑音であることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 前記ポンプ光のポンプ光源がファブリペローLDであることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。 請求項1〜40のいずれか一つに記載の光増幅器を備えたことを特徴とする光増幅システム。 前記光増幅器の後段に設置した、光の吸収と発光を利用する光増幅器を備えたことを特徴とする請求項41に記載の光増幅システム。 前記光増幅器の前段に設置した、Raman増幅器を備えたことを特徴とする請求項41に記載の光増幅システム。 請求項1〜40のいずれか一つに記載の光増幅器を備えたことを特徴とする光通信システム。 請求項1〜40のいずれか一つに記載の光増幅器を備えたことを特徴とする波長変換器。 前記相対位相シフタの位相シフト量を、アイドラ光の変換パワーが、パワー変動が0.5dB以下の平坦性を持つ帯域が最も広帯域になるシフト量に設定することを特徴とする請求項45に記載の波長変換器。 シグナル光およびポンプ光が入力されるとともに、1つ以上の相対位相シフタを挿入した増幅用光ファイバを用いて光増幅を行うことを特徴とする光増幅方法。 |
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说明书全文 | 本発明は、光増幅器、光増幅システム、波長変換器、光増幅方法ならびにこれを用いた光通信システムに関するものである。 光通信において、光増幅器は欠かせないものとなっている。 現在の光通信システムにおいて、光通信帯の光増幅器または光増幅システムとして、EDFA(Erbium-Doped Fiber Amplifier)、Ramanアンプ、またはRaman増幅システムが実用化されている。 その一方で、特許文献1に開示されるような、光増幅に光ファイバ中の非線形効果を利用した光パラメトリック増幅器(OPA: Optical Parametric Amplifier)は実用に至っていない。 実用に至らない大きな要因は、増幅帯域が狭いことや、利得スペクトルが平坦でないことが挙げられる。 なお、OPAは波長変換器としても利用される。 また、光ファイバ中の非線形効果を利用した光増幅器としては、位相感応光増幅器(PSA:Phase Sensitive Amplifier)がある。 OPAの利得スペクトルを平坦にする方法に、ポンプ光を2つ用いる方法がある。 ここで、2つのポンプ光の波長は、増幅を行う光ファイバのゼロ分散波長を中心としたほぼ対称の波長にある短波側と長波側の両波長に、それぞれ設定する。 しかしながら、ポンプ光を2つ用いる構成は、コストが増大するため実用的な構成ではない場合がある。 そのため、本明細書では、主にポンプ光を1つだけ用いるOPAについて議論するが、本発明はこれに限定されるものではない。 ポンプ光を1つだけ用いるOPAの典型的な利得スペクトルは、ポンプ光波長における利得が最も小さく、ポンプ光波長から数nmから数十nm離れた長波長側と短波長側の両波長に最大値を持つ形状である。 EDFAやラマンアンプの利得スペクトルとは異なり、上記のようなOPAの利得スペクトルの平坦性は低く、実用的ではない。 OPAやPSAを実用的な光増幅器とするためには、少なくとも、増幅対象の波長帯域における最大利得と最小利得との差が1dB以内であるような利得スペクトラムの平坦性を有することが好ましい。 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、利得スペクトルの平坦性が高い光増幅器、光増幅システム、波長変換器、光増幅方法および光通信システムを提供することを目的とする。 上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光増幅器は、シグナル光およびポンプ光が入力されるとともに、1つ以上の相対位相シフタを挿入した増幅用光ファイバを備えることを特徴とする。 また、本発明に係る光増幅システムは、本発明に係る光増幅器を備えることを特徴とする。 また、本発明に係る光通信システムは、本発明に係る光増幅器を備えることを特徴とする。 また、本発明に係る波長変換器は、本発明に係る光増幅器を備えることを特徴とする。 また、本発明に係る光増幅方法は、シグナル光およびポンプ光が入力されるとともに、1つ以上の相対位相シフタを挿入した増幅用光ファイバを用いて光増幅を行うことを特徴とする。 本発明によれば、利得スペクトルの平坦性を高くできるという効果を奏する。 2 /km]の時の出力シグナル光パワーのスペクトルである。 2 /km]の時の出力シグナル光パワーのスペクトルである。 2 /km]の時の出力シグナル光の相対位相スペクトルである。 2 /km]の時の出力シグナル光の相対位相スペクトルである。 2 /km]の時の光のパワー変動波形図である。 2 /km]の時の光のパワー変動波形図である。 2 /km]の時のシグナル光の相対位相の変動波形図である。 2 /km]の時のシグナル光の相対位相の変動波形図である。 以下に、図面を参照して本発明に係る光増幅器、光増幅システム、波長変換器、光増幅方法および光通信システムの実施の形態を詳細に説明する。 なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。 また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。 以下OPAは、次の状態を指す。 図1は、OPAにおいて光ファイバに入力する光と出力される光を示す図である。 ポンプ光と被増幅光であるシグナル光を増幅媒体である光ファイバ1に入力する。 光ファイバ1中で、ポンプ光とシグナル光との非線形効果によりアイドラ光が発生する。 このアイドラ光の波長λidler[nm]は、ポンプ光の波長λpump[nm]とシグナル光の波長λsignal[nm]と次の関係を持つ。 1/λidler=2/λpump-1/λsignal また、本明細書におけるPSAは次の状態を指す。 図2は、PSAにおいて光ファイバに入力する光と出力される光を示す図である。 ポンプ光とシグナル光に加えて、シグナル光に対して1/10倍〜10倍のパワーを持つアイドラ光を光ファイバ1に入力する。 光ファイバ1の出力では、ポンプ光と増幅されたシグナル光と増幅されたアイドラ光が出力される。 このアイドラ光の波長は、前記OPAのアイドラ光と同じく、次の関係で決まる。 1/λidler=2/λpump-1/λsignal OPAおよびにPSAの利得スペクトル波形を波長領域で平坦かつ広帯域にするために、増幅媒体である光ファイバに相対位相をずらす相対位相シフタを1ヶ所以上挿入する。 図3は、増幅媒体である増幅用の光ファイバ1に相対位相シフタ2を挿入する構成図である。 ここで、相対位相φrelは、シグナル光の位相φsignal[radian]、アイドラ光の位相φidler[radian]、ポンプ光の位相φpump[radian]を用いて、以下の式で記述される量である。 φrel=Δk+φsignal+φidler-2φpump[radian] 相対位相シフタ2は、相対位相φrelを、入力するポンプ光のパワーや光ファイバの分散特性などに応じて、適切な量ずらす。 光ファイバ1の長さや分散は、必要とされる利得スペクトル波形に応じて適切に設定する。 ここで、Δk=ksignal+kidler-2kpumpで定義される。 ksignal、kidler、kpumpは各光の波数である。 相対位相シフタ2の設置により、光ファイバ1に相対位相シフタを挿入しない場合では得られない利得スペクトルの平坦性が実現する。 また、同時に相対位相シフタが無い場合より低い雑音指数(NF:Noise Figure)が得られる。 以下では、最初に光ファイバ増幅器の構成の例を示し、次に、相対位相シフタを挿入した効果について述べる。 OPAもしくはPSAとして動作する光ファイバ増幅器の一構成を図4に示す。 この光ファイバ増幅器200の光ファイバ1にたとえば図3のように相対位相シフタ2を挿入することができる。 OPA動作時は、ポンプ光とシグナル光が光カプラ3により合波される。 PSA動作時は、ポンプ光、シグナル光およびにアイドラ光が光カプラ3により合波される。 合波された各光は、光ファイバ1に入力される。 光ファイバ1中の非線形効果によりシグナル光は増幅される。 シグナル光を選択的に透過する光バンドパスフィルタ4により、光ファイバ1から出力された光から、増幅されたシグナル光が取り出され、光増幅器としての機能が実現する。 ここで、光カプラ3は、WDMカプラやC/Lカプラでも良い。 また、光バンドパスフィルタ4も、WDMカプラやC/Lカプラに置き換え可能である。 さらに、光ファイバ1の非線形定数は、XPM法(Cross Phase Modulation Method)により測定された値で10[1/W/km]以上であると、OPAもしくはPSA動作に必要なファイバ長が1kmよりも短くなり、実装が容易となる。 光ファイバ1の波長分散特性については、ゼロ分散がポンプ光波長λpump[nm]の前後10nm以内にあり、分散スロープの絶対値が0.05[ps/nm 2 /km]以下であると、増幅帯域が広帯域になり、増幅器としての機能が高まる。 または、光ファイバ1の波長分散が、増幅対象の波長帯域において、0.0[ps/nm/km]±1.0[ps/nm/km]の範囲にあっても、光ファイバ1が前記波長分散特性の場合と同様に、増幅帯域が広帯域になり、光増幅器としての機能が高まる。 光ファイバが非偏波保持光ファイバである場合、ポンプ光とシグナル光の偏波が一致するように、本光ファイバ増幅器にこれらの光を入力させる前に、偏波制御器を用いて調整しておくことが望ましい。 図5は、光増幅器の別の構成として、光通信におけるCバンド帯全域を増幅するOPAである光ファイバ増幅器の構成例を示している。 この光ファイバ増幅器300の光ファイバ1にたとえば図3のように相対位相シフタ2を挿入することができる。 Cバンドは波長領域1530nm-1565nmである。 ポンプ光の波長は1565nmよりも長波長に設定することで、Cバンドのシグナル光とCバンド外にあるポンプ光とをC/Lカプラである光カプラ5を用いてロスをより小さくして合波することが可能となる。 ここで、Lバンドとは波長範囲1565nm〜1620nmの領域を指し、C/Lカプラは、ローパスフィルタもしくはハイパスフィルタを利用して両バンドを合波する機能を持つ。 シグナル光は光ファイバ1中の非線形効果により増幅される。 光ファイバ1からの出力光は、C/Lカプラである光カプラ6により、ポンプ光とシグナル光に分離される。 分離されたシグナル光は増幅されたシグナル光として出力される。 OPAを動作させる場合、ポンプ光パワーはシグナル光パワーの10倍以上に設定することが多い。 そのため、C/Lカプラのクロストークにより、Cバンドポートから漏れ出るポンプ光が無視できない場合がある。 この時、出力側にC/LカプラやCバンド用バンドパスフィルタを複数個直列に結合させることで、ポンプ光がCバンド透過ポートから透過するパワーを大きく削減することができる。 図6は、偏波無依存の光増幅を実現する光増幅器の構成図である。 図6の構成の光ファイバ増幅器400によれば、シグナル光の偏波に無依存で光増幅を実現できる。 図6中の太線で示す光ファイバは偏波保持ファイバであることを示している。 光ファイバ増幅部19には、後述するように、増幅媒体である光ファイバに相対位相シフタが挿入されたものである。 任意偏波を持つシグナル光は、光ファイバ10を介して、光サーキュレータ11から、光ファイバ13、14を通過しC/Lカプラである光カプラ5のCバンドポートから入力される。 一方で、ポンプ光は、光ファイバ15から入力され、ポンプ光のパワーを光ファイバ17の2つの偏波軸に分配するポンプパワー両軸分配器16を通過後、C/Lカプラである光カプラ5のLバンドポートから入力される。 ポンプパワー両軸分配器16は偏波ビームスプリッタ(PBS:Polarization Beam Splitter)を用いて実現できる。 ここで、ポンプパワー両軸分配器16によるポンプパワーの両軸への分離比は、出力シグナル光の増幅特性の偏波依存性が最も小さくなるように設定する。 PBSの偏波分岐比が1:1で、光ファイバ増幅部19が中心対称性を有するとき、この割合は1対1である。 さて、ポンプ光とシグナル光は合波された後、光ファイバ18を伝播し、偏波ビームコンバイナ(PBC:Polarization Beam Coupler)8において、偏波分離される。 合波された光の片方偏波は透過しTポートから、もう片方は反射しR-ポートから光ファイバ増幅部19の偏波軸の一つに入力される。 ここで、TポートもしくはR-ポートのどちらかは光ファイバ増幅部19と偏波軸を90度ずらした結合をしている。 これにより、合波された光の各偏波成分は、光ファイバ増幅部19の2つの偏波軸のうち片方の偏波軸を、伝播方向が互いに逆であるように伝播する。 そして、光ファイバ増幅部19においてシグナル光は、光パラメトリック増幅される。 光ファイバ増幅部19を伝播した光は、PBC8に再び入力し、光ファイバ18を伝播し、光カプラ5に再び入力する。 ここで、ポンプ光と、光ファイバ19で発生したアイドラ光は、Lバンドポートに出力され、シグナル光はCバンドポートから出力される。 シグナル光は光ファイバ14、13を順次伝播後、光サーキュレータ11を通過し、光ファイバ12から出力される。 ここで、光ファイバ14は偏波保持型であるが、非偏波保持型であっても良い。 また、光カプラ5として、C/Lカプラの代わりに偏波保持カプラやWDMカプラやAWG(Arrayed Waveguide Grating)を用いても、同様の効果が得られる。 この場合は、光サーキュレータ11の出力ポートに、増幅した光のみを透過させる光フィルタを挿入する必要がある。 また、この光ファイバ増幅器400では、PBC8は偏波ビーム分離器(PBS:Polarization Beam Splitter)としても動作している。 光ファイバ増幅部19での相対位相シフタの挿入位置と位相シフト量に関して、望ましい形態は次の通りである。 図7では、光ファイバ増幅部500(光ファイバ増幅部19に相当)では、光ファイバは、光ファイバ20、20、21、21に分割されており、その間に相対位相シフタ2が設置されている。 そして、光ファイバ増幅部500のIn側(たとえばR-Port側)から伝播する信号光とOut側(たとえばT-Port側)から伝播する信号光が、どちらも同じ作用を受けるように、光ファイバ増幅部500の中心で対称となっている。 図7は、光ファイバ増幅部500の長手方向の中心に対称に相対位相シフタ2が設置されている場合を示している。 相対位相シフタ2が3個挿入されている例を示しているが、1個以上の複数で奇数個挿入されていても良い。 中心から対称の位置にある光ファイバ同士(光ファイバ20同士および光ファイバ21同士)は同一の波長分散かつ非線形定数を持ち、各相対位相シフタ2は同一の位相シフト量を与える。 また、光ファイバ20同士または光ファイバ21同士の長さを同一にしてもよい。 図7では、構成の中心が相対位相シフタとなっているが、光ファイバとなっていても良い。 その場合、挿入される相対位相シフタの個数は偶数個となる。 中心に対して対称の位置にある光ファイバや相対位相シフタの特性が同一である。 図8では、光ファイバ増幅部600では、光ファイバは、光ファイバ22、23に分割されており、その間に相対位相シフタ2が設置されている。 図8に示すように、挿入する相対位相シフタ2の数が偶数のときは、構成物の中心は光ファイバ(図8では、光ファイバ23)となる。 図9は、偏波無依存の光ファイバ増幅器(ここではOPA)を実現する別の構成である。 図9の光ファイバ増幅器700は、図6のPBC8から後段の部分を偏波軸交換器30に置き換えている。 光ファイバ18が、非線形効果を用いた増幅を行うファイバとなる。 この光ファイバ増幅器700の光ファイバ18には、相対位相シフタが挿入されている。 光ファイバ18の片方の偏波軸を伝播した光が、偏波軸交換器で偏波軸をもう一方の偏波に変換され、反射されて光ファイバ18のもう一方の偏波軸を逆方向に伝播する。 このことにより光ファイバ18を伝播する各偏波軸の成分は偏波依存群遅延差が補償され、偏波無依存動作が実現する。 ここで、光ファイバ18の部分では、図7や図8に示す態様で、中心対称に相対位相シフタや光ファイバを配置する。 このことで、偏波軸交換器30に向かう信号光と逆方向に伝播する信号光が受ける分散や非線形効果が同一となり、偏波無依存動作が実現する。 次に、相対位相シフタの好適な構成を示す。 相対位相シフタとして、光ファイバを用いる方法がある。 位相シフト量はファイバ長で調整できる。 この光ファイバは、位相シフトの効果のみを与えるために、非線形定数が増幅用の光ファイバの半分よりも小さいことが望ましい。 光ファイバは、すべての入力光に分散を与えることを通して、位相シフトを実現する。 相対位相シフタとして、誘電体多層膜フィルタを用いる方法がある。 バンドパスフィルタ、バンドイリミネートフィルタ、オールパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等の機能により相対位相をシフトさせる。 フィルタがオールパスフィルタの場合、ポンプ波長前後10nmの波長範囲の反射もしくは透過光の位相をシフトさせる特性を持つものを適用することもできる。 ポンプ光の波長近傍の波長範囲のみを位相シフトさせ、範囲外の波長では信号の位相がシフトしない特性を持つフィルタが好ましい。 誘電体多層膜フィルタが透過型フィルタの場合、対向コリメータ光学系中に設置することができる。 設置する際には、光学軸に対する角度を調整することで位相シフト量を調整することができる。 誘電体多層膜フィルタが反射型フィルタの場合、2連のコリメータ光学系800中に設置することができる。 このことで、図10に示すように、光ファイバ31から出力され、片方からのレンズ33からの光が誘電体多層膜フィルタ35で反射されて、もう一方のレンズ34に入力し、光ファイバ32へ相対位相がシフトした光が出力される。 なお、図10では光ファイバ31、32のそれぞれに対しレンズ33と34を組み合わせたものを示しているが、これに限られず、光ファイバ31と32を平行に揃えて並べ、レンズを1つにして同様の光学系を構成しても良い。 この際、光ファイバ31と32の外径の合計と同じ径の孔を有するフェルールに光ファイバ31と32を挿入し固定する二芯ファイバフェルール等を用いることで、正確に平行に配置することができる。 これにより、より簡便な構成にて光学系を構成できるとともに、誘電体多層膜フィルタの入射角をばらつきなく正確に与えることができる。 そのため、増幅媒体に挿入する複数の位相シフタとして誘電体多層膜フィルタを用いる場合に、複数の位相シフタ間における位相シフト量の波長特性を均一にすることができる。 光増幅器に実装する上では、誘電体多層膜フィルタと光ファイバとレンズを集積したデバイスを適用することがのぞましい。 このとき、このデバイスで用いる光ファイバが信号光に分散と非線形の効果を与えない方が良い。 すなわち、このデバイスで用いる光ファイバは、増幅する光信号の波長範囲とポンプ光の波長とシグナル光に対応して発生するアイドラ光の波長範囲において、非線形定数は5[1/W/km]以下であり、分散は-1から1[ps/nm/km]の範囲にあることが望ましい。 相対位相シフタとして、ファイバブラッググレーティング(FBG)を用いる方法がある。 図11A、図11Bはそれぞれ、ファイバブラッググレーティングの典型的な透過スペクトルと透過光の位相シフト量である。 ブラッグ波長は、1565.0[nm]である。 1565[nm]の近傍は、ファイバブラッググレーティングの反射率が高いため、ほとんど透過光が無い。 一方で、図11A、図11B中で破線で囲んだ領域の外側の波長においては、反射率がほぼ無く、ほぼロス無く光が透過する(図11A)。 この波長範囲では、反射率がほとんど無い一方で、ブラッグ波長から遠く離れた波長よりも透過光の位相シフト量が大きくなっている(図11B)。 ポンプ光の波長がこの透過光の位相がシフトする波長領域に入るようにブラッグ波長を設定すると、ポンプ光の位相をシフトすることを通じて、相対位相をシフトする。 すなわち、ファイバブラッググレーティングを相対位相シフタとして利用することができる。 ここで、灰色で示した波長は、透過ロスが3dBとなる波長である。 ファイバブラッググレーティングの位相シフト量は、ブラッグ波長における透過率が小さくなるほど大きくなる。 そこで、ブラッグ波長における光の透過率と透過線幅の適切なものを適用することにより、平坦な利得特性を得る上で適切な相対位相シフト量が得られる。 透過線幅を広げると、位相シフト可能な範囲が広がるので、ポンプ波長のトレランスが増加するので好ましい。 但し、位相シフト量と位相シフト可能な範囲にはトレードオフの関係があるので、必要とする位相シフト量に基づき、個別に設定することが望ましい。 ファイバブラッググレーティングを相対位相シフタとして適用する際には、反射光が発生するため、反射を防止するためにFBGの前段に光アイソレータを挿入することが望ましい。 図12では、光ファイバ増幅部900において、光ファイバ1における光の伝搬方向に対して、FBG41の前段に光アイソレータ40が挿入されている。 複数のFBGを増幅用の光ファイバ中に設置する場合は、後段のFBGからの反射光の伝播をとめるために、FBGの後段にアイソレータを挿入しても良いし、両方に挿入しても構わない。 図13では、光ファイバ増幅部1000において、光ファイバ1における光の伝搬方向に対して、FBG41の後段に光アイソレータ40が挿入されている。 なお、ここで光アイソレータとして光アイソレータモジュールを用いる場合、用いる光アイソレータモジュールを構成する光ファイバが、信号光に分散と非線形の効果を与えない方が良い。 すなわち、増幅するシグナル光の波長範囲とポンプ光の波長とシグナル光に対応して発生するアイドラ光の波長範囲において、光アイソレータモジュールを構成する光ファイバの非線形定数は5[1/W/km]以下と小さく、分散は-1[ps/nm/km]から1[ps/nm/km]の範囲にあり小さいことが望ましい。 ここで、増幅用の光ファイバに(融着接続部は設けずに)直接空間結合系を設け、さらに増幅用光ファイバに直接FBGも書き込んでも良い。 このようにすることで、融着接続部がなく、低損失にすることができる。 ファイバブラッググレーティングのブラッグ波長は、環境温度により大きく変動する。 光ファイバに刻まれた屈折率変動周期が、光ファイバの熱膨張や伸縮に伴い変動するからである。 ブラッグ波長が変動すると、ポンプ光の位相シフト量が変動するため、光パラメトリック増幅特性が変動する。 増幅特性を安定にするためには、ブラッグ波長の温度変動を抑制するのが効果的である。 そのためには、ファイバブラッググレーティングの温度依存性を緩和するようにパッケージしたデバイスを用いるのが好ましい。 一方で、ファイバブラッググレーティングのファイバ長の伸縮に伴ってブラッグ波長が変動することを利用することもできる。 ファイバブラッググレーティングの温度を調整してパラメトリック利得特性がもっとも平坦になる位相シフト量に調節することができるように、ファイバブラッググレーティングを伸縮できるデバイスにファイバブラッググレーティングを集積することが好ましい。 相対位相シフタとして、平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)を用いる方法がある。 位相シフト量や波長の温度変化を抑制するために、PLCをペルチェ素子やヒータなどの温度制御素子に接触させ、サーミスタや熱電対などの温度センサでPLCの温度を測定しながら、PLCの温度が一定になるように温度制御素子を制御することが望ましい。 温度素子と温度センサを用いた温度制御は、電力を消費する。 消費電力を削減するために、PLCに熱による変動と反対の動作をする機構を備え付け、アサーマル化することは、さらに望ましい形態である。 相対位相シフタとして、空間光学系回折格子とLCOS(Liquid Crystal on Silicon)を用いた位相調整器を用いる方法がある。 信号光の各波長に対して、任意量の位相シフトを与えることができ調整が容易である。 このとき、利得の波長特性が平坦になるように、LCOSに印加する電圧を増減させることにより、各波長の光の位相シフト量を増減させる。 次に、シミュレーションを用いて、増幅用光ファイバに相対位相シフタを挿入する効果を説明する。 光の伝播をシミュレートするために、次の微分方程式を用いた。 ここで、Ep、Es、Eiは、ポンプ光、シグナル光、アイドラ光の複素振幅である。 また、z[km]は光ファイバの伝播距離、αは光ファイバのロス係数、γ[1/W/km]は光ファイバの非線形定数である。 Δk[1/km]は位相整合を示す定数で、 OPAのシミュレーションとして、増幅用の光ファイバ(長さ200m)の中間に1つ相対位相シフタを挿入した系を考える。 図14はシミュレーションの条件(ポンプ光波長、ポンプ光パワー、シグナル光パワー、ゼロ分散波長、分散スロープ、非線形定数、増幅用光ファイバのファイバ長および損失、相対位相シフタの設置位置、相対位相シフト量)を示している。 図14に示す条件において、図1に示す構成に相対位相シフタを挿入した場合とそうでない場合とにおける光の伝播シミュレーション結果を次に示す。 図15A、15Bは、それぞれ、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときのシグナル光パワーのスペクトルである。 相対位相シフタが無いとき(図15A)に比較し、相対位相シフタがあるとき(図15B)は、波長1565nmにおける光パワーとスペクトルの最大パワーとの差が13dBから4.2dBと小さくなり、波長1520nm〜1620nmの範囲においてより平坦なスペクトルが得られた。 図16A、16Bは、それぞれ、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときのファイバ出力における相対位相を示す。 シグナルスペクトルの平坦性が得られている波長1520nm〜1620nmの範囲において、相対位相シフタがある方(図16A)が、位相整合を示す相対位相であるπ/2に、より近づいていることがわかる。 図17A、17Bは、それぞれ、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときの各光のパワーのファイバ長手方向における変化を示す。 ここで、シグナル光の波長λsは、1560nmに設定した。 相対位相シフタが在るときは、ファイバ長100mのところに相対位相シフタ設置してあるため、その場所からシグナル光とアイドラ光の増加率が変化していることがわかる。 このことから、相対位相シフタは、シグナル光とアイドラ光の利得率増大に寄与していることがわかる。 図18A、18Bは、それぞれ、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときの相対位相のファイバ長手方向における変化を示す。 ここで、シグナル光の波長λsは、1560nmに設定した。 相対位相シフタが無いとき(図18A)は、相対位相がπ/2から始まった後、一様に増加したあと0.9π付近に収束していることがわかる。 一方で、相対位相シフタが在るとき(図18B)は、相対位相がπ/2から始まった後、徐々に増加するが、0.83πあたりに到達したファイバ長100mの地点で、相対位相シフタにより−0.66πだけずらされる。 その点から、徐々に相対位相が増加し、再び、0.83πあたりに到達したあたりで出力される。 一般に、OPA利得は、相対位相が、位相整合が取れている相対位相π/2に近いほど、利得率が高い。 相対位相シフタが在る方は、ファイバ100m伝播以降に、利得の高くなる相対位相領域を通過している。 図17Bにおいて、ファイバ伝播100m以降の利得率が増加していることが、相対位相の面から説明できた。 OPAのシミュレーションとして、増幅用の光ファイバ(長さ200m)中に50m周期で相対位相シフタを挿入する系を考える。 図19に示す条件において、図1に示す構成におけるシグナル光の伝播シミュレーション結果を次に示す。 図20A、20Bは、それぞれ、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときのシグナル光パワーのスペクトルである。 相対位相シフタが無いときは、ポンプ光波長の周辺のパワーが低く、ポンプ光波長から50nm程度離れた波長のパワーが高くなっていることがわかる。 一方、相対位相シフタが在るときは、波長1530nm〜1600nmの範囲でシグナル光パワーが0.3dBの平坦性を示していることがわかる。 この結果から、相対位相シフタが、シグナル光パワーの利得の平坦性を獲得するのに有効であることが明らかである。 図21A、21Bは、それぞれ、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときのファイバ出力における相対位相を示す。 相対位相シフタが無いときには、波長1530nm〜1600nmの範囲で、相対位相が0.75π以上であり、かつ、相対位相が波長に応じて大きく変動することがわかる。 一方で、相対位相シフタがあるときには、相対位相が0.61πから0.69πの幅0.08πの狭い範囲にあり、波長依存性が小さいことがわかる。 図22A、22Bは、それぞれ、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときの各光のパワーのファイバ長手方向における変化を示す。 ここで、シグナル光の波長λsは、1560nmに設定した。 ファイバ出力におけるシグナル光のパワーは、相対位相シフタが無いときに-9.3dBmであるのに対し、相対位相シフタが在るときには0.89dBmと10.1dB程度の差が在る。 このことからも、相対位相シフタは、シグナル光とアイドラ光の利得率増大に寄与していることがわかる。 図23A、23Bは、それぞれ、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときの相対位相のファイバ長手方向における変化を示す。 ここで、シグナル光の波長λsは、1560nmに設定した。 相対位相シフタが在るときは、相対位相がπ/2から始まった後、徐々に増加するが、0.75πあたりに到達したファイバ長50m地点で、相対位相シフタにより0.25πあたりにずらされる。 その点から、徐々に相対位相が増加し、再び、0.75πあたりに到達したファイバ長100m、150mのそれぞれで、相対位相シフタにより0.25πあたりにずらされることを周期的に繰り返している。 このように、相対位相シフタが、相対位相を、パワー利得が高い相対位相π/2を中心に振動させることが、図22における利得の差となった。 これは、動的に位相整合した条件でシグナル光が伝播していると考えられる。 いわば、擬似位相整合(pseudo phase matching)している状態と言える。 相対位相シフタの挿入により、位相整合条件が緩和され、その結果、シグナル光の利得が平坦化している。 図19の条件は、増幅用の光ファイバ中に50m周期で相対位相シフタを挿入した場合に、もっとも利得スペクトルが平坦となるように、相対位相シフタによる相対位相シフト量を調節している。 一方、図24は、図19の条件のまま、相対位相シフト量を変化させたものである。 相対位相シフト量を0.0πから0.6πまで変化させたシグナル光の利得スペクトルを図24Aに、相対位相シフト量を0.6πから1.0πまで変化させたシグナル光パワーのスペクトルを図24Bに示す。 相対位相シフト量0.0πから0.6πまで増大するとともにシグナル光パワーのスペクトルの平坦性が高まる。 このとき、相対位相シフト量の増大するにつれ、利得帯域の3dB利得帯域は120nmから80nm程度に減少している。 一方で、相対位相シフト量0.6πより位相シフト量を増大するにつれ、平坦性が維持されたままだが、スペクトルが平坦な波長帯域が狭くなっていくことがわかる。 すなわち、シグナル光のパワーのスペクトルの平坦性を満たし、かつ、動作波長帯域が最大となる最適な位相シフト量があることがわかる。 相対位相シフト量を0.0πから0.6πまで変化させたシグナル光の出力相対位相スペクトルを図25Aに、相対位相シフト量を0.6πから1.0πまで変化させたシグナル光の出力相対位相スペクトルを図25Bに示す。 図24A、24Bとの比較から、相対位相の平坦性と利得スペクトルの平坦性に相関のあることがわかる。 すなわち、図25Aでは、相対位相が0.0πから増加するにつれて、相対位相の平坦性と波長帯域の増加がある。 図25Bでは、相対位相が0.6πより増加するにつれて、相対位相が平坦な波長領域が狭くなっていくことがわかる。 図26A、26Bは、それぞれ、図19の条件でポンプ光のパワーを変化させた時の、シグナル光パワーのスペクトルと、ファイバ出力における相対位相スペクトルである。 なお、各ポンプ光パワーにおいてシグナル光パワーのスペクトルが平坦で、かつ、波長帯域が最大となるように、相対位相シフト量(図中φで示している)を調整している。 図26Aより、ポンプパワーの増大に伴い、1)シグナル光の出力パワーが増大すること、2)最適な相対位相シフト量が増大すること、3)スペクトルが平坦となっている波長領域は変化しないこと、がわかる。 図26Bより、ポンプパワーの増大に伴い、シグナル光の出力の相対位相が徐々に増大していることがわかる。 これは、ポンプパワーの増大に伴い、ファイバ長手方向の非線形位相シフトの変化率が増大しているため、その補償に必要な位相シフト量が増大しているためである。 相対位相シフタの設置周期依存性を説明する。 図27A、27Bは、それぞれ、相対位相シフタの設置周期を変化させたときのシグナル光パワーのスペクトルと、相対位相スペクトルである。 なお、各設置周期において、シグナル光パワーのスペクトルが平坦、かつ、平坦な波長領域が最大となるように、相対位相シフト量(図中φで示している)を調整した。 図27Aより、設置周期を短くするにつれ、平坦な波長範囲がほぼ変わらずに出力パワーが増大していることがわかる。 設置周期を短くすることが、シグナル光の利得を増加させることが明らかになった。 図27Bより、設置周期を短くすると、出力シグナル光の相対位相スペクトルの、1)平坦な波長領域がほぼ変わらないこと、2)位相整合を示す相対位相である0.5πに徐々に近づくことがわかる。 設置周期が短いほどシグナル光の利得が高いことは、利得が最も高くなる位相である相対位相0.5πにより近くなることで、説明できる。 したがって、増幅光ファイバの長手方向で相対位相が0.5πを含む所定の範囲に収まるように相対位相シフタを挿入するのが好ましい。 増幅用光ファイバのゼロ分散波長を1565nmに設定したまま、分散スロープを0.05[ps/nm 2 /km]と、図19の条件である0.02[ps/nm2/km]よりも増大させ、両者を比較して、分散スロープの影響を示す。 このときのシミュレーション条件を図28に示す。 図29A、29Bは、それぞれ、分散スロープが0.02[ps/nm 2 /km]時における出力シグナル光パワーのスペクトル、分散スロープが0.05[ps/nm 2 /km]時における出力シグナル光パワーのスペクトルである。 分散スロープが大きくなっても、平坦なスペクトルは得られるが、平坦なスペクトルの波長範囲が狭くなることがわかる。 図30A、30Bは、それぞれ、分散スロープが0.02[ps/nm 2 /km]時における出力シグナル光の相対位相スペクトル、分散スロープが0.05[ps/nm 2 /km]時における出力シグナルの相対位相スペクトルである。 どちらの相対位相も波長1565nmにおいて0.69πと同じ値を持つ。 しかし、分散スロープが増大することで、平坦な相対位相スペクトルを有する波長範囲が狭くなることがわかる。 このことは図29の平坦な光パワースペクトルの波長範囲が狭くなることに対応している。 図31A、31Bは、それぞれ、分散スロープが0.02[ps/nm 2 /km]時における光パワーの長手方向の変化、分散スロープが0.05[ps/nm 2 /km]時における各光の光パワーの長手方向の変化である。 ここで、シグナル光の波長λsは、1560nmに設定した。 分散スロープが0.02[ps/nm 2 /km]時にシグナル光の出力パワーは0.89[dBm]、分散スロープが0.05[ps/nm 2 /km]時にシグナル光の出力パワーは0.92[dBm]とほとんど同じ値であることがわかる。 平坦なスペクトルをもつ波長範囲内において、分散スロープの違いがシグナル光の利得に与える影響は、ほとんどないことがわかる。 図32A、32Bは、それぞれ、分散スロープが0.02[ps/nm2/km]時におけるシグナル光の相対位相の長手方向の変化、分散スロープが0.05[ps/nm2/km]時におけるシグナル光の相対位相の長手方向の変化である。 ここで、シグナル光の波長λsは、1560nmに設定した。 相対位相の変化は、ほぼ一致することがわかる。 以上から、分散スロープの主な影響は、シグナル光の光パワーの平坦な波長範囲に与えることがわかる。 分散スロープが小さいほど、平坦な利得特性が得られる波長範囲が広帯域であることから、増幅用光ファイバのゼロ分散波長における分散スロープは、小さければちいさいほど望ましい。 例えば、増幅用光ファイバは、ゼロ分散波長における分散スロープの絶対値が、0.05[ps/nm 2 /km]よりも小さいものが、平坦な利得特性の広帯域化に有効である。 ここまで、増幅用光ファイバのゼロ分散波長とポンプ光波長が一致した場合の議論を行ってきた。 図33A、33Bは、それぞれ、増幅用光ファイバのゼロ分散波長を範囲1564.0-1565.0nm、1565.0-1565.5nmで変えた場合における出力シグナルスペクトルである。 最大でも1nm程度であるが、ゼロ分散波長がポンプ波長(1565nm)より短波側にずれるに従い、シグナル光の出力パワースペクトルが平坦である波長範囲が狭くなる(図33A)。 一方で、最大でも1nm程度であるが、ゼロ分散波長がポンプ波長より長波側ずれるに従い、シグナル光の出力パワースペクトルが平坦である波長範囲が広くなると同時に、平坦性が劣化する(図33B)。 図34A、34Bは、図33A、33Bに対応する相対位相スペクトルである。 シグナル光パワースペクトルの平坦な波長帯域と平坦性の劣化は、相対位相スペクトルが0.5πである帯域とずれに相関があることがわかる。 すなわち、増幅用光ファイバのゼロ分散とポンプ光の波長を一致させることは、シグナル光の出力パワースペクトルの平坦性が優れた状態を保ったまま、広帯域なスペクトルを獲得するために、重要である。 環境温度等でファイバの分散特性が変動する可能性を考える。 光増幅器の機能として、増幅帯域幅が平坦性よりも重要な場合、ファイバのゼロ分散波長をポンプ光波長よりも短波側に設定することが望ましい。 逆に、光増幅器の機能として、平坦性が増幅帯域幅よりも重要な場合、ファイバのゼロ分散波長をポンプ光波長よりも長波波側に設定することが望ましい。 ここまでは、増幅用光ファイバの4次の分散値を零として議論してきた。 つぎに、増幅用光ファイバの4次の分散(分散スロープの波長微分)を考慮した場合のシミュレーション結果を示す。 シミュレーションの条件は、図35に示すとおりである。 50mおきに相対位相シフタを設置しており、その相対位相シフト量は0.52πである。 図36A、36Bは、それぞれ、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときのシグナル光パワーのスペクトルである。 相対位相シフタが無いときは、ポンプ光波長の周辺のパワーが低く、ポンプ光波長から30nm程度離れた波長のパワーが高くなっていることがわかる。 一方、相対位相シフタが在るときは、波長1520nm〜1610nmの範囲でシグナル光パワーが1.3dBの平坦性を示していることがわかる。 この結果から、相対位相シフタが、シグナル光パワーの利得の平坦性を獲得するのに有効であることが再確認できる。 図37A、37Bは、それぞれ、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときのファイバ出力におけるシグナル光の相対位相を示す。 相対位相シフタが無いときには、波長1520nm〜1610nmの範囲で、相対位相が0.75π以上であり、かつ、相対位相が波長により大きく変動することがわかる。 一方で、相対位相シフタがあるときには、相対位相が0.59πから0.70πと幅0.11πの狭い範囲にあり、波長依存性が小さいことがわかる。 図38A、38Bは、それぞれ、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときの各シグナルパワーのファイバ長手方向における変化を示す。 ここで、シグナル光の波長λsは、1560nmに設定した。 ファイバ出力におけるシグナル光のパワーは、相対位相シフタが無いときに-8.6dBmであるのに対し、相対位相シフタが在るときには1.3dBmと9.9dBの差が在る。 このことからも、相対位相シフタは、シグナル光とアイドラ光の利得率増大に寄与していることがわかる。 図39A、39Bは、相対位相シフタが無いとき、相対位相シフタが在るときの相対位相のファイバ長手方向における変化を示す。 ここで、シグナル光の波長λsは、1560nmに設定した。 相対位相シフタが在るときは、相対位相がπ/2から始まった後、徐々に増加するが、0.75πあたりに到達したあたりで、相対位相シフタにより0.25πあたりにずらされる。 その点から、徐々に相対位相が増加し、再び、0.75πあたりに到達したあたりで、相対位相シフタにより0.25πあたりにずらされることを周期的に繰り返している。 相対位相が、パワー利得が高い位相である相対位相π/2を中心に振動していることが、図38Bにおける利得の差となっている。 これは、動的に位相整合した条件でシグナル光が伝播していると考えられる。 相対位相シフタの挿入により、位相整合条件が緩和され、擬似位相整合(pseudo phase matching)する。 その結果、シグナル光の利得が平坦化している。 相対位相シフタの効果を改めて確認する。 シグナル光の利得と、発生するアイドラ光のパワーとの各波長依存性を、相対位相シフタの有無の各場合で調べた。 ポンプ光の波長は3つの波長で計算した:1)ゼロ分散波長、2)ゼロ分散波長+1[nm]の波長、3)ゼロ分散波長−1[nm]。 ポンプ光のパワーは5種類、100、500、1000、1500、2000[mW]のパワーで計算した。 シグナル光の入力パワーは-20[dBm](0.01[mW])である。 増幅用光ファイバのファイバ長は200[m]、分散スロープは0.02[ps/nm 2 /km]、4次の分散は−0.0002[ps/nm 3 /km]、非線形定数は12[1/W/km]、伝送損失は0.8[dB/km]である。 相対位相シフタは50m周期で光ファイバに挿入した。 相対位相シフト量は、各条件においてシグナル光の利得特性がもっとも平坦(シグナルの波長帯域内における最大と最小のシグナル光パワーの差をΔとした時に、Δが最も小さくなる)かつもっとも広帯域になるシフト量に設定した。 図40A〜40Dは、ポンプ波長が増幅用光ファイバのゼロ分散波長に一致しているときの増幅用光ファイバからの出力光のスペクトルの計算結果である。 図40Aは相対位相シフタが無いときのシグナル光出力パワースペクトル、図40Bは相対位相シフタが在るときのシグナル光出力パワースペクトル、図40Cは相対位相シフタが無いときのアイドラ光出力パワースペクトル、図40Dは相対位相シフタが在るときのアイドラ光出力パワースペクトルである。 相対位相シフタの位相シフト量は、シグナル光の波形がパワー変動0.5dB以内の平坦性を保ちつつ平坦な帯域が最大となるシフト量に設定した。 ポンプ光の波長がゼロ分散波長に一致しているときは、相対位相シフタが無くとも利得波形、アイドラ波形共に平坦性が高い。 しかし、相対位相シフタがある場合は、ポンプ光のパワーが同じ波形と比較すると、平坦な波形の帯域と利得が共に拡大していることがわかる。 すなわち、相対位相シフタの挿入は、利得特性と波長変換効率を共に増大する効果がある。 図41A〜41Dは、ポンプ波長を増幅用光ファイバのゼロ分散波長よりも1[nm]長波長側設定したときの増幅用光ファイバ出力光のスペクトルの計算結果である。 図41Aは相対位相シフタが無いときのシグナル光出力パワースペクトル、図41Bは相対位相シフタが在るときのシグナル光出力パワースペクトル、図41Cは相対位相シフタが無いときのアイドラ光出力パワースペクトル、図41Dは相対位相シフタが在るときのアイドラ光出力パワースペクトルである。 相対位相シフタの位相シフト量は、シグナル光の波形がパワー変動0.5dB以内の平坦性を保ちつつ帯域が最大となるシフト量に設定した。 相対位相シフタが無い場合、シグナル波形とアイドラ波形は平坦性を失い、ポンプ波長の両サイドに一つずつピークを有する波形となる。 一方で、相対位相シフタがある場合は、シグナル波形とアイドラ波形はパワー変動0.5dB以内の平坦性をもつ。 さらに、利得特性と波長変換効率が共に増大する。 図42A〜42Dは、ポンプ波長を増幅用光ファイバのゼロ分散波長よりも1[nm]短波長側に設定したときの増幅用光ファイバ出力光のスペクトルの計算結果である。 ポンプ波長が増幅ファイバのゼロ分散波長に一致している場合に比較し、波形の平坦性、帯域、及びに利得と波長変換効率が小さくなっている。 なお、図42Aは相対位相シフタが無いときのシグナル光出力パワースペクトル、図42Bは相対位相シフタが在るときのシグナル光出力パワースペクトル、図42Cは相対位相シフタが無いときのアイドラ光出力パワースペクトル、図42Dは相対位相シフタが在るときのアイドラ光出力パワースペクトルである。 相対位相シフタの位相シフト量は、シグナル光の波形がパワー変動0.5dB以内の平坦性を保ちつつ帯域が最大となるシフト量に設定した。 図40−図42において、相対位相シフタがある場合に限り、ポンプ波長の設定に関わらず平坦な波長特性が得られることがわかった。 そこで、平坦な波長特性の帯域とパワーがポンプ光の波長に対してどのような振る舞いを示すか調べた(図43A、43B)。 図43Aは、アイドラ光の1dB帯域幅のポンプ波長依存性、図41Bは、アイドラ光が平坦な特性を持つ示す波長領域のパワーのポンプ波長依存性を示す。 ここで、アイドラ光のパワーが、シグナル光の入力パワーである-20[dBm]よりも大きい時、シグナル光とアイドラ光のパワーは一致するため、シグナル光はアイドラ光と同じ振る舞いを示す。 図44A、44Bは、図40−図42の中で、ポンプパワーが1000[mW](30dBm)のスペクトルを抽出し、再プロットしたものである。 相対位相シフタが無いとき(図44A)は、ポンプ光波長の1[nm]の変動に対して利得スペクトルの波形が大きく変動する。 一方で、相対位相シフタが在るとき(図44B)は、ほぼ同じ利得でかつ、利得範囲が0.5dBの範囲に収まる平坦性を有する。 ただし、ポンプ長波長を長波長側に設定するほど、平坦な利得帯域は拡大するが、同時に平坦性が徐々に失われる。 図44Bは、ポンプ波長が長波長であるほど、平坦な特性を持つ波長帯域が広帯域であることを示す一方で、ポンプ波長が長波長になるほど、波長特性の平坦性が劣化し、波長特性のパワー変動が大きくなることを示している。 すなわち、波長帯域と平坦性はトレードオフの関係がある。 このことは、光増幅器を適用するシステムの要求に応じて、最適なポンプ波長があることを意味する。 シグナルの利得特性とアイドラ光の波長変換特性に関して、相対位相シフタの挿入周期依存性を、増幅用光ファイバに4次の分散がある場合で改めて計算した。 ポンプ光の波長はゼロ分散波長+1[nm]で、ポンプ光のパワーは1500[mW]のパワーで計算した。 シグナル光の入力パワーは-20[dBm](0.01[mW])である。 増幅用光ファイバのファイバ長は200[m]、分散スロープは0.02[ps/nm 2 /km]、4次の分散は−0.0002[ps/nm 3 /km]、非線形定数12[1/W/km]、伝送損失0.8[dB/km]である。 相対位相シフト量は、各条件においてシグナル光の利得特性がもっとも平坦かつもっとも広帯域になるシフト量に設定した。 図45Aは、シグナル光パワースペクトルである。 図45Bは、アイドラ光パワーのスペクトルである。 挿入周期は、100m、50m、25m、12.5mである。 挿入周期が短いものほど、利得や変換効率が高くなっていることがわかる。 また、挿入周期が短くなるにつれて、平坦な波長特性が得られるための各相対位相シフタの最適な位相シフト量が小さくなる。 図45Cは、各条件における相対位相の光ファイバの長手方向での変化である。 挿入周期が短いものほど、位相整合を示すシフト量である相対位相シフト量0.5π[radian]からのずれが小さくなっている。 すなわち、挿入周期が短いものほど、より理想的なPSAの条件に近い条件で光が伝播する。 位相整合条件に近いほど、利得や変換効率は高い。 そして、位相整合条件に近いほど、ノイズ指数(Noise figure)が小さくなる。 図45A、45Bにおける計算では、伝送損失が0.8[dB/km]と無視できるほど小さいため、相対位相シフタの挿入周期を一定としている。 しかし、実際の増幅用光ファイバには伝送損失があるため、ポンプ光パワーは伝播するに従い減衰する。 その結果、後段を伝播する光ほど、損失分だけ利得や変換効率が下がる。 増幅ファイバや相対位相シフタのロスによる増幅率低下を補償するように、後段に行くほど相対位相シフタの挿入周期を長くして、相対位相シフタ間の増幅ファイバのファイバ長を増加させることは、より高い利得を得る上で有利である。 なお、上記のシミュレーションは、主にOPAとして動作する場合である。 一方、図2に示すように、ポンプ光、シグナル光、アイドラ光を同時に増幅用光ファイバに入力する光の伝播シミュレーションを行うと、PSAとしての動作、およびその効果を確認できる。 PSAの場合に、相対位相シフタを増幅用光ファイバに1箇所以上導入したときの効果は、OPAとしての動作時と同様である。 以上において、本発明の実施の形態に係る、増幅用光ファイバ中に相対位相シフタを挿入したOPAもしくはPSAを開示した。 開示した光増幅器はNFが小さくかつNFが波長に依存せずほぼ同じ値を持つ特長がある。 そこで、EDFAやYDFA(Ytterbium doped fiber amplifier)やEYDFA(Erbium Ytterbium doped fiber amplifier)等の光の吸収と発光を利用する従来の光増幅器の前段に開示した光増幅器を設置し、プリアンプとして動作させることで、システム全体で低ノイズかつ高出力な光増幅システムを実現することが可能となる。 図46は、本発明の一実施の形態である光増幅器1200を、EDFAである光増幅器1300の前段に設置し、光増幅器をカスケード接続した光増幅システム1100を示している。 この光増幅システム1100は、光増幅器1200の低ノイズ特性によって、システム全体で低ノイズかつ高出力な光増幅システムである。 同様に、Raman効果を利用した光増幅システムの後段に提案した光増幅器を設置することで、増幅帯域内全体でNFの小さい光増幅システムを構築することができる。 図47は、本発明の一実施の形態であるOPAとして動作する光増幅器1200を、ラマン増幅用光ファイバ50と励起光源合波用の光カプラ51とラマン増幅用励起光源52とからなるラマン増幅システム1500の後段に設置した光増幅システム1400を示している。 図47において、光出力を増加させるために、光増幅システム1400の最終段に、EDFAやYDFAやEYDFA等の光の吸収と発光を利用する従来の光増幅器1300を設置して光増幅システム1600を構成しても良い(図48)。 本発明の一実施の形態として開示した光増幅器を利用した、光通信システムを構築することも可能である。 図49に示す光通信システム1700では、送信器1800から中継器1900を介して受信器2000にまでいたる伝送用の光ファイバ60の経路中の任意の場所に任意の個数、開示した光増幅器1200を挿入する。 挿入箇所の例として、図示したような送信器1800の後段や、中継器1900前段や、中継器1900後段、受信器2000の前段が挙げられる。 送信器1800内や受信器2000内に、提案する光増幅器1200を設置しても良い。 このことで、従来のEDFAを光増幅器として用いている光通信システムの伝送距離を伸ばす、送信パワーを減らして消費電力を削減するなどが、可能となる。 上記のシミュレーションで得られた結果を以下の実験により確認する。 ポンプ光発生には、TLS(tunable laser source)71、PC(polarization controller)73、PM(phase modulator)74、EYDFA77、BPF(Band pass filter)78で構成したポンプ光発生源を用いた。 TLS71は、コヒーレンスコントロールを用いずにCW(continuous wave)を出力する。 出力光をPM74に入力する。 このとき、PM74の偏波軸と入力光の偏波軸が同一であると効率よく位相変調を行える。 そこで、PC73を用いて入力光の偏波を調節した。 PM74の出力光パワーが最大になるように偏波の調節を行った。 PM74の中にポラライザが入っているため、PM74への入射光の偏波軸とポラライザの偏波軸が一致しているとき、出力光のパワーが最大になるからである。 偏波調整の自由度を高めるため、PM74の後段にPC73を設置した。 このPC73の出力光をEYDFA77にて増幅しポンプ光を発生した。 PM74を駆動する信号源には、帯域1.2GHzの白色雑音源75を用いた。 この白色雑音を広帯域RF増幅器76で27dBm程度まで増幅し、PM74を駆動する。 その結果、ポンプ光を広帯域かつ高強度に位相変調することができる。 このことは、増幅用光ファイバとしてのFUT(fiber under test)84で発生するSBS(stimulated Brillouin scattering)による反射光を抑制する。 なお、広帯域かつ高強度に位相変調された光を発生する方法として、図50に示した方法のほかに、ファブリペローLD(laser diode)を用いる方法もある。 シグナル光の発生には、TLS72、PC73を用いた。 TLS72はコヒーレンスコントロールを用いずにCW光を出力する。 OPA利得やPSA利得もしくは波長変換効率を最大にするためには、シグナル光の偏波をポンプ光の偏波に一致させる必要があるため、PC73を配置している。 EYDFA77の後段に光サーキュレータ79を設置した。 実験中にFUT84からSBSによる反射光が、EYDFA78に戻るのを避けると同時に、戻り光のパワーをパワーメータ80で測定するためである。 ポンプ光とシグナル光は17dBカプラ81を介して合波した。 ここで、ポンプ光は透過ポートを通過し、シグナル光は-17dBポートを通過する。 実験では、ポンプ光は、ほとんどの場合30dBm以上のパワーを用いるため、できる限り損失を避けたい、一方で、シグナル光は-20dBm程度あれば良いからである。 FUT84に入力する光パワーをパワーメータ83で測定するために、20dBカプラ82をFUT84の前段に設置した。 20dB82カプラの-20dBポートの光パワーを光パワーメータで測定した。 FUT84として高非線形光ファイバを使用し、FUT84に挿入する相対位相シフタとしてFBG85を用いた。 FUT84の出力光を直接OSA(optical spectrum analyzer)87に入力すると、入力パワーがOSA87の入力上限を超える可能性があるため、OSA87直前には光減衰器(ATT)86を設置し、OSA87を保護した。 PM74を駆動するRF信号源である1.2GHzの広帯域の白色雑音源75を次のように発生した(図51に示す白色雑音原88)。 EDFA89を入力信号光無しに駆動する。 すると、ASE(amplified spontaneous emission)光が出力される。 ASE光を光レシーバ90で受け、白色雑音RF信号に変換する。 ここで、光レシーバ90は、10GHz広帯域PDと10GHz広帯域TIA(trans-impedance amplifier)とlimiting amplifierで構成されたモジュールである。 発生した白色雑音RF信号を帯域2GHz以上の広帯域RF増幅器76で56dBだけ増幅した。 広帯域白色雑音75で駆動されたPM74で変調された、TLS71の出力光のスペクトルの、光レシーバ90に入力したASEパワー依存性を図52に示す。 図52において、「M」はマイナスの符号を意味する。 たとえばM29.5dBmとは、−29.5dBmを意味する。 光レシーバ90に入力するASE光のパワーを増加するにつれ、光スペクトルのピークが減少し、同時にスペクトルの線幅が広帯域になっている。 SBSを抑制するために、一般的には増幅された複数のRF信号でPM74を駆動する。 このとき、光スペクトルの線幅は広がっているが、光信号はRF信号の間隔を持つ櫛状のスペクトルを持つ。 櫛状の光スペクトル間には光パワーがないため、光スペクトルの線幅が広くなってもSBS抑圧の効果が小さい。 一方で、白色雑音信号で変調された光信号は、隙間の無い光スペクトルを持つため、SBS抑圧の効果がより高い。 図53は、非線形定数12[1/W/km]の高非線形光ファイバに対して、入力した信号光のパワーに対するSBSにより反射された光パワーである。 変調されていない信号光を入力した場合、入力パワーが20dBmを越えたあたりから反射パワーが増大する、すなわち、SBS閾値は20.8[dBm]である。 一方で、2.0GHzのRF信号で位相変調した場合、SBS閾値は29.3[dBm]と増大する。 さらに、RF信号と同じRFパワーを持つ白色雑音で位相変調した場合、SBS閾値は34dBmを超えている。 このように、白色雑音はRF信号よりもSBSを抑圧する効果が高いことがわかる。 以上の光学系2100を用いて、相対位相シフタとしてFBGを挿入した高非線形光ファイバのシグナル利得特性とアイドラ光の特性を調べる。 図54Aは、100mの高非線形ファイバの端部から50mの地点にITU-T(国際電気通信連合) G.652に準拠のSMF(single mode fiber)で製作した長さ5cmのFBGを挿入したときのアイドラ光パワーのスペクトルである。 ポンプ光波長は1566.3nmである。 図54Bは、同高非線形光ファイバにおいてFBGが挿入されていない、すなわち、高非線形光ファイバのみの時のアイドラ光パワーのスペクトルである。 入力したポンプ光のパワーは、32.4dBmで、シグナル光のパワーは-20dBmである。 ポンプ光波長は1566.0nmである。 高非線形光ファイバの特性は、ゼロ分散波長が1564nm、ゼロ分散波長での特性として、分散スロープが0.014[ps/nm 2 /km]、非線形定数は18[1/W/km]、損失は0.9[dB/km]である。 図55A、55Bは、それぞれ、挿入したFBG(FBG85)の透過スペクトルと反射スペクトルである。 ブラッグ波長が1565nmで線幅が0.6nmである。 透過スペクトルにおけるブラッグ波長でのロスは-38.5dBである。 高非線形光ファイバに、このFBGを挿入する際の融着ロスは、FBGの両端合わせて2.5dBである。 図50におけるOSA87の前段の減衰器86の減衰量は-20dBに設定した。 図54Aと54Bとを比較すると、FBGの挿入の効果がわかる。 FBGの挿入が無い場合、ポンプ波長がゼロ分散波長よりも長波長にあることから、MI(modulation instability)によりポンプ波長の両サイドにピークを持つ波形となり、平坦性は無い。 一方で、FBGを挿入した波形は、台形状である。 さらに、1dB帯域が53nmある。 このことから、FBGの挿入により相対位相がファイバ長50mの地点でシフトされ、その結果平坦な波形特性が得られることが確認された。 図54Aの平坦な波長領域におけるアイドラ光パワーは-43.2dBmである。 FBG融着ロスが2.5dB、減衰器の設定が-20dBで、ポンプ光の白色雑音を用いた位相変調により、アイドラ光のピークパワーが総パワーの-10dB程度であることを考慮すると、アイドラ光のファイバ出力パワーはおよそ-10dBm程度であると推定できる。 このパワーは、FBGが無いときのアイドラ光スペクトルにおいて、ポンプ波長近傍のへこみの底のパワーとほぼ同一である。 図56Aは、ポンプ波長をFBGのブラッグ波長よりも長波長側に設定したときのアイドラ光パワーのスペクトルである。 凡例はポンプ光の波長を示している。 1dB平坦帯域の差があるにせよ、1566.3nmよりも長波長の時はほぼ同一の平坦な波形特性を持つスペクトル波形を示している。 図56Bは、ポンプ光の波長をブラッグ波長よりも短波長側に設定した時のアイドラ光パワーのスペクトルである。 ポンプ光の波長を短波長にするに従い、ポンプ波長付近のアイドラ光パワーがより小さくなることがわかる。 このことは、ブラッグ波長の長波長側と短波長側で位相シフトする向きが逆であることを示している。 長波長側では、ポンプ光の波長近傍のパワーを増加させて平坦な波形特性を形成するのに貢献する。 一方で、短波長側ではポンプ光の波長近傍のパワーを減衰させるため、平坦性が失われることを示唆している。 図57A、57Bは、図56Aで示された平坦な波形特性が、FBGの分散の効果ではないことを示すために、高非線形光ファイバの端部から50mの地点に長さ5cmのSMFを挿入した時のシミュレーション計算結果である。 図57Aはポンプ波長がゼロ分散波長よりも長波長側にあるとき、図57Bはポンプ波長がゼロ分散波長よりも短波長側にあるときのアイドラ光パワーのスペクトルのシミュレーション計算結果である。 高非線形光ファイバの特性は実験で用いた特性の通りで、ポンプ光パワー1500mW(31.8dBm)として計算した。 図57A、57Bでは、どちらも平坦な波形特性が得られないことがわかった。 このシミュレーション計算結果は、図56Aの平坦な波形特性が、FBGの位相シフトの効果によるものであることを支持している。 図54Aの平坦なスペクトルの1dB帯域は53nmであるが、SMFで製作したFBGがもつ分散による影響を受け、FBGの分散を無視できる場合よりも平坦な帯域が狭くなっている。 そこで、分散を無視できるFBGとして、実験で用いた高非線形光ファイバ(HNLF)と同じ特性のHNLFでFBGを製作し、2個直列に結合して相対位相シフタとして適用した。 図58は、相対位相シフタにHNLFを用いて製作したFBGを適用した時とFBGが無い時のシグナル光の利得スペクトルである。 ポンプ光の波長は1565.9[nm]で、ゼロ分散波長より1.0[nm]だけ短波側である。 FBGが在る時のスペクトルが、無い時のスペクトルに比較し利得が2dB増加し、1dB帯域は40nmから56nmに増加した。 このように、FBGが相対位相シフタとして動作していることと共に、利得と帯域を拡大することが明らかになった。 図60A〜60Dは、HNLFで製作したFBGを適用した時と適用しない時のシグナル光の利得スペクトルとアイドラ光パワーのスペクトルである。 図60AはFBGが無いときのシグナル光利得スペクトル、図60BはFBGが在るときのシグナル光利得スペクトル、図60CはFBGが無いときのアイドラ光パワーのスペクトル、図60DはFBGが在るときのアイドラ光パワーのスペクトルである。 なお、図60Cの測定時にはOSAの前段の減衰器の減衰量を-20dBに設定し、図60Dの測定時には-15dBに設定した。 図60Aと60Cの波形は、高非線形光ファイバ単体のスペクトルとしては典型的である。 ポンプ波長がゼロ分散波長より短くなるにつれて1dB帯域が狭くなり、ポンプ波長がゼロ分散波長よりも長くなるにつれてスペクトルの平坦性を失い、ポンプ波長の両サイドのピークが成長する。 図60Bと60Dは、平坦な波形特性がいくつかのポンプ光波長で得られている。 典型的な利得スペクトルとそのNFを測定した結果を図61に示す。 黒丸がFBG2個を相対位相シフタとして適用した時を示し、白四角がFBGの適用が無い時の波形である。 FBGを適用した時のポンプ波長は1565.9nm、適用しなかった時はゼロ分散である1566.9nmに設定した。 そのほかの条件は、上記実験と同じである。 なお、NFの測定は光スペクトルにおいて、増幅ファイバの入力スペクトル及び出力スペクトルを基に、利得と出力光のASEレベルを測定し、これらの測定値を用いてNFを算出するという、EDFAのNF測定の方法を踏襲した。 ここで注意するべきは、本光学系2100の構成では、ポンプ光の偏波に垂直な成分は増幅されない偏波依存光増幅器であるため、NFの最小値は3dBでは無く、0dBとなる点である。 偏波無依存の構成時のNFに換算するためには、図61に示す得られたNFに3dB加えれば良い。 図61は、ポンプ波長から1530nmまでの範囲では、FBGの適用の有無によらずNFは0.9dB以下でほぼ一定の値であることを示す。 ポンプ光の波長をゼロ分散波長よりも長波長側に設定した時の利得スペクトルを図62に示す。 FBGを挿入により、利得が2dB増大し、3dB帯域が65[nm]から85[nm]に増大した。 ポンプ波長よりも長波長側の利得は、ポンプ光によるラマン増幅の結果、短波側よりも0.5dB程度利得が増大した。 一方で、短波側は1540[nm]からポンプ光の波長1567.65[nm]の範囲で、利得が9.31dB〜9.61dBと0.3dBの範囲に収まる平坦さが実現した。 利得が0.5dBの範囲に収まる平坦さをより広帯域にするためには、ファイバの4次分散ができる限りゼロに近い高非線形光ファイバを用い、ポンプ光波長をゼロ分散波長よりも1[nm]以内で長波長側(異常分散側)に設定するのが好ましい。 ただし、ゼロ分散波長よりも1[nm]以上長波長であるポンプ光波長は、利得の3dB帯域を増大させるものの、0.5dBの範囲に収まる平坦な利得範囲は狭くなる。 なお、高非線形光ファイバは、長さが200m、ゼロ分散が1566.9nm、ゼロ分散波長での特性として、分散スロープが0.02[ps/nm 2 /km]、非線形定数が12[1/W/km]、ロスが0.9[dB/km]である。 FBGは、高非線形光ファイバの端部から100mの地点に挿入した。 ポンプ光の波長は1567.65[nm]で、入力パワーは31.7[dBm]である。 ポンプ光を1.5GHz-広帯域白色雑音信号27dBmで駆動された位相変調器(PM)により位相変調しているため、SBSは発生せず、入力したポンプパワーすべてがHNLFを伝播している。 図63は、図62の条件におけるOPAの利得とノイズ指数(NF)のスペクトルである。 NFは0.98dBから1.6dBの範囲に収まっており、ほぼ一定である。 ここで注意するべきは、本光学系2100の構成では、ポンプ光の偏波に垂直な成分は増幅されない偏波依存光増幅器であるため、NFの最小値は3dBでは無く、0dBとなる点である。 偏波無依存の構成時のNFに換算するためには、図63に示す得られたNFに3dB加えれば良い。 次に、シグナル光の利得がさらに大きくなるように長さ200mの増幅用光ファイバであるHNLFに、HNLFで製作したFBGを50m周期で配置したときのスペクトルを測定した。 なお、各FBGの前段にアイソレータモジュールを設置した。 したがって、HNLFである増幅ファイバは4段構成となる。 図64は、相対位相シフタとしてHNLFを用いて製作したFBGを、50m周期で長さ200mのHNLFに配置した時と、FBGが無い時のシグナル光の利得スペクトルである。 FBGが在る時のスペクトルが、無い時のスペクトルに比較し利得が4dB増加した。 FBGが在る場合の増幅帯域の減少は、FBGの前段に設置した光アイソレータを構成する長さ10cmのSMFの分散が各段で帯域を狭くしているからである。 なお、FBGが在るときのスペクトルを測定したポンプ光の波長は、1568.0nmで、FBGが無い時のスペクトルを測定したポンプ光の波長は1567.0nmである。 長さ200mのHNLFのゼロ分散波長が1567.0nmである点を除き、その他の条件は、上記実験と同じである。 図65A〜65Dは、HNLFで製作したFBGを適用した時と適用しない時のシグナル光の利得スペクトルとアイドラ光パワーのスペクトルである。 図65AはFBGが無いときのシグナル光利得スペクトル、図65BはFBGが在るときのシグナル光利得スペクトル、図65CはFBGが無いときのアイドラ光パワーのスペクトル、図65DはFBGが在るときのアイドラ光パワーのスペクトルである。 なお、図65C、65Dの測定時にはOSAの前段の減衰器の減衰量を-20dBに設定した。 図65Aと65Cの波形は、高非線形光ファイバ単体のスペクトルとしては典型的である。 ポンプ波長がゼロ分散波長より短くなるにつれて1dB帯域が狭くなり、ポンプ波長がゼロ分散波長よりも長くなるにつれてスペクトルの平坦性を失い、ポンプ波長の両サイドのピークが成長する。 図65Bと65Dは、平坦な波形特性がいくつかのポンプ光波長で得られている。 図66A、66Bは、波長200mのHNLFに50m周期でFBGを挿入した時に、FBG前段にアイソレータを挿入した時のポンプ光の出力スペクトル(図66A)とアイソレータを挿入しなかった時のポンプ光の出力スペクトル(図66B)である。 光アイソレータの挿入が無い時のスペクトルは、次のように解釈できる。 まず、FBG間で共振器が構成される。 つぎに、ブラッグ波長の光ノイズが共振器内を往復する際にパラメトリック増幅される。 そして、増幅された光が基となり、FWMにより高次の光が発生する。 このことから、FBGを相対位相シフタとして、複数個挿入する場合には、FBGの前段もしくは後段にアイソレータを挿入することが好ましい。 なお、上記実施形態においては、長手方向に相対位相が増大する増幅用光ファイバを用いているが、本発明はこれに限られない。 例えば、長手方向に相対位相が0.5πから減少する増幅用光ファイバを用い、所定位置に相対位相を増加させるような相対位相シフタを挿入しても構わない。 増幅用光ファイバと相対位相シフタの対を追加して、対の段数を増やすと利得スペクトルの帯域がどのように変化するかをシミュレーションによって調べた。 計算に用いた増幅用光ファイバの特性は、次の通りである。 非線形定数:12[1/W/km]、損失:0.8[dB/km]、ゼロ分散波長:1565[nm]、分散スロープ0.02[ps/nm 2 /km]、4次の分散-0.00025[ps/nm 3 /km]。 増幅用光ファイバと相対位相シフタの対一段あたりで用いる増幅用光ファイバのファイバ長は50mである。 すなわち、相対位相シフタは50m周期で挿入した。 ポンプ光とシグナル光の入力パワーは、それぞれ、31.77dBm(1500mW)、-20dBmである。 まず、相対位相シフタの有無、ポンプ波長の違いによる利得スペクトルを比較した。 図67A、67Bは、それぞれ、位相シフタが無いときと位相シフタを用いた時の利得スペクトルである。 ポンプ波長は、ゼロ分散波長と、ゼロ分散波長+1[nm]、ゼロ分散波長-1[nm]に設定した。 0.3dB帯域の値を図に示している。 ここで、0.3dB帯域はゼロ分散波長における利得を基準に、基準より0.3dBだけ利得が小さくなる波長とゼロ分散波長との間の波長差とした。 相対位相シフタが無いときの0.3dB帯域は、ポンプ光の波長がゼロ分散波長の時、ゼロ分散波長-1[nm]の時で、それぞれ、14.3[nm]、5.0[nm]である。 ここで、ポンプ光波長がゼロ分散波長+1[nm]の時の0.3dB帯域は定義できないため記載していない。 位相シフタを用いた時の0.3dB帯域は、ポンプ光の波長が、ゼロ分散波長+1[nm]、ゼロ分散波長、ゼロ分散波長-1[nm]のとき、それぞれ、41.2[nm]、30.5[nm]、19.9[nm]である。 相対位相シフタを用いたこのときの相対位相シフト量は、ポンプ光波長がゼロ分散波長+1[nm]、ゼロ分散波長、ゼロ分散波長-1[nm]のとき、それぞれ、0.28π、0.32π、0.31π[radian]である。 相対位相シフタを用いた時は、利得波形が平坦で、0.3dB帯域も2倍以上に増大していることがわかる。 次に、ポンプ光波長がゼロ分散波長+1[nm]の時の、相対位相のファイバ長方向での変化を、シグナル光波長が1540[nm]、1550[nm]、1560[nm]のそれぞれの時で調べた。 増幅用光ファイバの長さは200mで計算した。 図68Aは相対位相シフタが無いときの相対位相の変化、図68Bは相対位相シフタがあるときの相対位相変化である。 相対位相シフタが無いときは、相対位相は0.8π-0.9π[radian]に収束している。 相対位相シフタを用いた時は、50mおきに周期的に変化している。 上記で基本特性を調べたので、増幅用光ファイバと位相シフタの対の段数を増やした時の帯域を調べた。 図69Aは、増幅用光ファイバと相対位相シフタの対の段数を増やした時の利得スペクトルである。 図69Aでは、0.3dB帯域と増幅用光ファイバの長さの総和を記載している。 たとえば、「Fiber 150m point」では、増幅用光ファイバと相対位相シフタの対の段数が3である。 図69Bは増幅用ファイバの長さの総和、すなわち(対の段数×50)mに対する、利得スペクトルの0.3dB帯域である。 対の段数を増やしても利得帯域がほとんど変化しないことがわかる。 また、利得スペクトルも平坦な形状を維持することがわかる。 注意すべき点は、利得が増えてシグナル光と対となるアイドラ光のパワーが増大すると、ポンプ光からのエネルギー移動が無視できないほど大きくなるため、利得スペクトル形状が変化したり、一段ごとの利得率が小さくなることである。 なお、上述した相対位相シフタとして使用できるオールパスフィルタとしては、以下のものがある。 図70は、計算により求めた誘電体多層膜フィルタを用いた反射型オールパスフィルタの位相及び反射特性の一例を示す図である。 図70に示す特性から明らかなように、波長1560nmと1570nmの間にポンプ光の波長を設定した場合、本フィルタによって反射したポンプ光は、本フィルタの位相特性により位相がずれる。 その一方で、波長1560nmより短波長の領域と、波長1570nmより長波長の領域との間では、位相特性は、反射によってほぼ2πずれる、すなわち光の位相が、ほぼ一定であること示している。 よって、本フィルタは、ポンプ光の位相のみをずらし、シグナル光とアイドラ光とには位相を変化させない、ポンプ光位相シフタとして機能する。 このような特性を有するオールパスフィルタとしては、例えば、図71に示すような構成を有するものがある。 但し、図示したものは説明のために模式化したもので、各層の厚みは実際のものとは異なる。 ここで、オールパスフィルタ35Aは、ガラス基板35Aa上に誘電体多層膜フィルタにより構成されたバンドパスフィルタ(BPF)層35Abと、その上に構成された全反射ミラー層35Acからなる。 BPF層35Abは、図70において反射特性として現れているように、1560nmから1570nmにかけて透過率を有し(BPF層35Abだけでいえばほぼ100%の透過率)、それ以外の波長ではほぼ100%に近い反射率を有する。 また、全反射ミラー層35Acは、少なくとも本発明によるOPAもしくはPSAにおいて使用される全波長域において、ほぼ100%に近い反射率を有している。 すなわち、図71に示したように、このオールパスフィルタ35Aにおいては、入射したシグナル光はBPF層35Abにて反射されるが、ポンプ光はBPF層35Abを透過した後に全反射ミラー層35Acで反射され、再度BPF層35Abを透過して、最終的にオールパスフィルタ35Aからの反射光となる。 この際、BPF層35Abを透過することでポンプ光に位相差が与えられ、その結果、オールパスフィルタ35Aは相対位相シフタとして機能することになる。 なお、図70に示したオールパスフィルタは、ポンプ波長付近において0.2〜0.3dB程度のロスを有するが、これは全反射ミラー層の若干のロスによってBPF層の透過特性の一部が現れたものである。 つまり、BPF層の透過率の絶対値とは異なるものの、その波長プロファイルを反映している。 これについては、全反射ミラー層の反射率を、誘電体多層膜の層数を増加させるなどして更に高めることにより、図70の反射率を更に低減させて実質的にはほぼゼロにすることが可能である。 また、上記実施形態においては、位相シフトを与えるものとしてBPF層を用いているが、これに限られず、BPF層の代わりにポンプ光波長付近で位相差を与える長波長透過フィルタ層や、短波長透過フィルタ層を用いてもよい。 また、上記実施形態では、増幅媒体に複数の相対位相シフタを挿入するものとしてFBGを用いるもの、あるいは誘電体多層膜フィルタを用いるものを開示しているが、FBGによる相対位相シフタと誘電体多層膜フィルタによる相対位相シフタの両方を組み合わせて、増幅媒体に挿入しても構わない。 上記のように、本発明の1つ以上の相対位相シフタを挿入した増幅用光ファイバによって、OPAもしくはPSAにおいて、好ましくは1dB以下の平坦性を有する利得特性を実現できる。 上記実施の形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。 また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。 よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。 以上のように、本発明は、光通信の用途に利用して好適なものである。 1、10、12、13、14、15、17、18、20、21、22、22、23、31、32、60 光ファイバ 2 相対位相シフタ 3、5、6、51 光カプラ 4 光バンドパスフィルタ 8 PBC |