医療デバイス

申请号 JP2012543819 申请日 2012-08-10 公开(公告)号 JP6163756B2 公开(公告)日 2017-07-19
申请人 東レ株式会社; 发明人 中村 正孝; 北川 瑠美子; 田宮 竜太;
摘要
权利要求

弾性率が100kPa以上2000kPa以下、 含率が10質量%以下、 引張伸度が50%以上3000%以下、 ホウ酸緩衝液に対する動的接触(前進)が80°以下、 ホウ酸緩衝液による湿潤時の表面摩擦係数比(Qa)が0.8以下、 生理食塩水による湿潤時の表面摩擦係数比(Qb)が1.0以下であり、 基材を含み、該基材の表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が形成され、 前記酸性ポリマーおよび前記塩基性ポリマーのうちの少なくとも一種が、アミド基および水酸基から選ばれた基を有するポリマーであり、 前記基材が、下記成分Aの重合体、または下記成分Aおよび成分Bの共重合体を主成分とする医療デバイス; ただし、Qa=MIUa/MIUo Qb=MIUb/MIUo ここで、MIUaは前記医療デバイスの、前記ホウ酸緩衝液による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す; MIUoは“アキュビュー(登録商標)オアシス”の、前記ホウ酸緩衝液による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す; MIUbは前記医療デバイスの、前記生理食塩水による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す; 成分A:1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物; 成分B:フルオロアルキル基を有する重合性モノマー。前記生理食塩水による湿潤時の表面摩擦係数比(Qb)と、前記ホウ酸緩衝液による湿潤時の表面摩擦係数比(Qa)との差(Qb−Qa)が1.6以下である請求項1に記載の医療デバイス。少なくとも一部に虹彩様のパターンが形成されており、眼に装用される請求項1または2に記載の医療デバイス。前記パターンは、円環状をなす遮光性のパターンであって、前記パターンの中心に直径2.0mm以下の光学的瞳孔が形成された請求項3に記載の医療デバイス。前記パターンは、虹彩の表面を覆うことで前記虹彩を擬似的に着色する請求項3または4に記載の医療デバイス。

说明书全文

本発明は、医療デバイス、コーティング溶液の組合せおよび医療デバイスの製造方法に関するものである。

軟質の医療デバイスの一例として、市販の軟質眼用レンズであるソフトコンタクトレンズがある。市販のソフトコンタクトレンズには25%程度〜80%程度の含率を有するハイドロゲル素材が一般的に用いられている。しかしながら、ハイドロゲル素材からなる含水性ソフトコンタクトレンズは、水を含んでいるためにコンタクトレンズから水が蒸発する現象が生じる。これにより、ある一定割合のコンタクトレンズ装用者は、裸眼のときよりも強い乾燥感をおぼえ、不快と感じる場合があった。中にはコンタクトレンズドライアイといわれる症状を訴える者も存在した。また、ハイドロゲル素材からなる含水性ソフトコンタクトレンズは、涙液中の成分によって汚染されやすく、しかも多量の水を含んでいることから、細菌繁殖のリスクもあった。

一方、高酸素透過性の低含水性ソフトコンタクトレンズとしては、例えば分子鎖両末端がビニルメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとの混合物に白金系の触媒を加え、モールディング法で加熱硬化させる方法で得られるシリコーンラバーレンズが知られている(例えば、特許文献1を参照)。

また、複数の重合性官能基を有するポリシロキサンを主体とした酸素透過性の高いコンタクトレンズ材料も特許文献2〜7等に記載されている。このうち、特許文献6には、2官能性有機シロキサンマクロマー単独で、または他のモノマーと共重合させて得られる重合体からなるコンタクトレンズ材料が開示されており、共重合に用いられるモノマーとしてはアクリル酸フルオロアルキルエステルまたはメタクリル酸フルオロアルキルエステル、およびアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが開示されている。

ところで、従来の高酸素透過性の低含水性ソフトコンタクトレンズにも次のような問題点が見られた。まずシリコーンラバーレンズについては、レンズ表面の疎水性を改善するために施した親水化処理層が剥離したり、弾性が大きすぎるために膜への固着が起こったりするなどの欠点があって、広く実用化されるまでには到らなかった。

また、複数の重合性官能基を有するポリシロキサンを主体とする材料は、酸素透過性が高く、柔軟性も持ち合わせており、コンタクトレンズに適する材料の1つと考えられる。しかしながら、重合後のレンズ表面に粘着性が残るために角膜に固着する懸念があり、またレンズの柔軟性と耐折り曲げ性などの機械物性のバランスが不十分であった。

軟質眼用レンズの表面を改質する方法に関しては、種々知られているが、その中で二種類以上のポリマー材料の層を1層ずつコーティングして積層する方法が知られている(例えば、特許文献8〜10を参照)。中でも二つの反対の荷電を有するポリマー材料を1層ずつ交互にコーティングする方法は、LbL法などと呼ばれ、材料の各々の層が、異なる材料の他の層と非共有結合的に結合されると考えられている。

しかしながら、特許文献1が開示する方法の有用性が明示されている高酸素透過性の軟質眼用レンズは、シリコーンハイドロゲル素材のものだけであり、低含水性の軟質眼用レンズに対する有用性は知られていなかった。また、従来のLbLコーティングは4層〜20層程度といった多層で行われており、製造工程が長くなり製造コストの増大を招くおそれがあった。

また、上述したソフトコンタクトレンズでは、レンズに対して虹彩様の略環状のマスクである虹彩パターンを形成することによって、レンズ装用者の虹彩部分の色または大きさを変えることができるコンタクトレンズが知られている(例えば、特許文献11,12参照)。また、上述した虹彩パターンの略中心に孔(ピンホール)を形成することによって、遠視、近視、老視の区別なく明視することができるコンタクトレンズが知られている(例えば、特許文献13,14参照)。しかしながら、上述した方法により作製したコンタクトレンズ(低含水性軟質眼用デバイス)に対して虹彩パターンを形成すると、上述した問題と同様の問題が生じていた。

さらに、上述したソフトコンタクトレンズにおいて、コンタクトレンズ上に涙液交換促進パターンを形成することによって、レンズ装用中に涙液を交換することができるコンタクトレンズが知られている(例えば、特許文献15〜18参照)。しかしながら、上述した方法により作製したコンタクトレンズに対して涙液交換促進パターンを形成すると、上述した問題と同様の問題が生じていた。

特開昭54−81363号公報

特開昭54−24047号公報

特開昭56−51715号公報

特開昭59−229524号公報

特開平2−188717号公報

特開平5−5861号公報

特表2007−526946号公報

特表2002−501211号公報

特表2005−538418号公報

特表2009−540369号公報

特開2006−309101号公報

特表2007−537492号公報

特表平9−502542号公報

特開平11−242191号公報

特開昭56−161436号公報

特表2004−510199号公報

特表2005−500554号公報

特表2006−515688号公報

ところで、上述した低含水性の軟質眼用レンズのように、体外表面または体内で用いられる低含水性である軟質の医療デバイスにおいても同様の問題があった。特に、体液等を含む体表面と接触する、または体内に導入される医療デバイスでは、体液等の液体と接触した際に表面に貼り付く現象が生じるため、上述した機械物性および低含水性を維持するとともに、易滑性を向上させる必要がある。

本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、機械物性および低含水性を維持するとともに、体表面または体内表面との接触時に表面に貼り付く現象、あるいは角膜への貼り付き感を大幅に低減ないし回避できる医療デバイス、この医療デバイスに適用するためのコーティング溶液の組合せおよび医療デバイスの製造方法を提供することを目的とする。

また本発明は、良好な涙液交換が可能な低含水性軟質コンタクトレンズを提供することを目的とする。また、優れた低含水性軟質コンタクトレンズを簡便なプロセスで安価に製造することを目的とする。

本発明にかかる医療デバイスは、以下の態様を含む。

〔A1〕弾性率が100kPa以上2000kPa以下、好ましくは200kPa以上1200kPa以下、含水率が10質量%以下、引張伸度が50%以上3000%以下、好ましくは150%以上3000%以下、ホウ酸緩衝液に対する動的接触角(前進)が80°以下である医療デバイス。

〔A2〕ホウ酸緩衝液による湿潤時の表面摩擦係数比(Qa)が2以下である〔A1〕に記載の医療デバイス。ただし、Qa=MIUa/MIUo。ここで、MIUaは該医療デバイスの、ホウ酸緩衝液による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す。MIUoは“アキュビュー(登録商標)オアシス”の、ホウ酸緩衝液による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す。ここで、“アキュビュー(登録商標)オアシス”とは、United States Adopted Names において senofilcon A の名称で登録された材質のコンタクトレンズであり、好ましくは2011年8月時点で日本国内で流通している製品と同等のコンタクトレンズである。

〔A3〕生理食塩水による湿潤時の表面摩擦係数比(Qb)が3以下である〔A1〕に記載の医療デバイス。ただし、Qb=MIUb/MIUo。ここで、MIUbは該医療デバイスの、生理食塩水による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す。MIUoは“アキュビュー(登録商標)オアシス”の、ホウ酸緩衝液による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す。

また、上記において、前記生理食塩水による湿潤時の表面摩擦係数比(Qb)が2以下であることが好ましい。

〔A4〕生理食塩水による湿潤時の表面摩擦係数比(Qb)と前記ホウ酸緩衝液による湿潤時の表面摩擦係数比(Qa)の差(Qb−Qa)が1.6以下である〔A1〕に記載の医療デバイス。ただし、Qa=MIUa/MIUo;Qb=MIUb/MIUo;ここで、MIUaは前記医療デバイスの、前記ホウ酸緩衝液による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す。MIUbは前記医療デバイスの、前記生理食塩水による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す。MIUoは“アキュビュー(登録商標)オアシス”の、前記ホウ酸緩衝液による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す。

〔A5〕基材を含み、前記基材の表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が形成される〔A1〕〜〔A4〕のいずれかに記載の医療デバイス。

〔A6〕前記基材が、下記成分Aの重合体、または下記成分Aおよび成分Bとの共重合体を主成分とする〔A5〕に記載の医療デバイス; 成分A:1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物; 成分B:フルオロアルキル基を有する重合性モノマー。

〔A7〕前記成分Bが(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルである〔A6〕に記載の医療デバイス。

〔A8〕前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が、前記酸性ポリマー溶液による処理を1回または2回、および前記塩基性ポリマー溶液による処理を1回または2回、合計で3回処理を行うことにより形成された〔A5〕〜〔A7〕のいずれかに記載の医療デバイス。

〔A9〕前記酸性ポリマー層および塩基性ポリマーからなる層が、2種の酸性ポリマー溶液による処理を2回および塩基性ポリマー溶液による処理を1回行うことにより形成された〔A5〕〜〔A7〕のいずれかに記載の医療デバイス。

〔A10〕前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層を形成する前記酸性ポリマーおよび前記塩基性ポリマーのうちの少なくとも1種が、水酸基およびアミド基から選ばれた基を有するポリマーである〔A5〕〜〔A9〕のいずれかに記載の医療デバイス。

〔A11〕酸素透過係数[(cm2/sec)mLO2/(mL・hPa)]が、113×10−11〜1130×10−11である〔A1〕〜〔A10〕のいずれかに記載の医療デバイス。

〔A12〕眼用レンズである〔A1〕〜〔A11〕のいずれかに記載の医療デバイス。

〔A13〕基材を、第1のポリマーを含有する第1溶液と接触させて、前記第1のポリマーを前記基材上に非共有結合的に適用する第1工程から該基材を第nのポリマーを含有する第n溶液と接触させて、前記第nのポリマーを前記基材上に非共有結合的に適用する第n工程(nは2以上の整数)まで、合計n個の工程を経て、LbLコーティングを基材に適用して医療デバイスを得る、医療デバイスの製造方法であって、前記第1溶液〜第n溶液のいずれか一つの第(k−1)溶液(kは2以上n以下の整数)を、クオーツクリスタルマイクロバランス測定法(QCM)用の水晶振動子センサーに接触させ、その後速やかに水晶振動子センサーを純水で洗浄後、乾燥させて、前記QCMによって共振周波数を測定して測定値Fk−1を得、続けてこの水晶振動子センサーに第k溶液を接触させ、その後速やかに水晶振動子センサーを純水で洗浄後、乾燥させて、前記QCMによって共振周波数を測定して測定値Fkを得た際、前記Fk−前記Fk−1が1500以上である第(k−1)溶液および第k溶液を用いる医療デバイスの製造方法。ここで、前記水晶振動子センサーは、共振周波数9MHz、ATカット、金電極のものを用い、前記QCMは基本周波数27MHz、室温(約25℃)で測定する。 〔A14〕LbLコーティングを医療デバイスに適用するためのコーティング溶液の組み合わせであって、基材上に第1のポリマーを非共有結合的に適用するための、前記第1のポリマーを含有するコーティング溶液を第1溶液とし、該基材上に第kのポリマーを非共有結合的に適用するための、前記第kのポリマーを含有するコーティング溶液を第k溶液(kは2以上n以下の整数、nは2以上の整数)とした、第1溶液〜第n溶液からなるコーティング溶液の組み合わせにおいて、クオーツクリスタルマイクロバランス測定法(QCM)用の水晶振動子センサーを、第1溶液に25℃、30分間浸漬し、その後速やかに水晶振動子センサーを純水で洗浄後、乾燥させて、前記QCMによって共振周波数を測定して測定値F1を得、続けてこの水晶振動子センサーを、第2のポリマーを含有する第2溶液に25℃、30分間浸漬し、その後速やかに水晶振動子センサーを純水で洗浄後、乾燥させて、前記QCMによって共振周波数を測定して測定値F2を得、以後、同様に測定値Fnまでの測定を順次行ったときに、いずれか一つのFk−Fk−1が1500以上となるコーティング溶液の組み合わせ。ここで、前記水晶振動子センサーは、共振周波数9MHz、ATカット、金電極のものを用い、前記QCMは基本周波数27MHz、室温(約25℃)で測定する。

また、本発明は以下の態様を含む。 〔B1〕、弾性率が100kPa以上2000kPa以下、含水率が10質量%以下、引張伸度が50%以上3000%以下、ホウ酸緩衝液に対する動的接触角(前進)が80°以下である眼に装用される低含水性軟質眼用デバイスであって、該低含水性軟質眼用デバイスの少なくとも一部に虹彩様のパターンが形成されている低含水性軟質眼用デバイス。

〔B2〕低含水性軟質基材の表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が形成された低含水性軟質眼用デバイスであって、該低含水性軟質眼用デバイスの少なくとも一部に虹彩様のパターンが形成されている低含水性軟質眼用デバイス。

〔B3〕前記低含水性軟質基材が、下記成分Aの重合体、または下記成分Aおよび成分Bとの共重合体を主成分とする〔B2〕に記載の低含水性軟質眼用デバイス; 成分A:1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物; 成分B:フルオロアルキル基を有する重合性モノマー。

〔B4〕前記成分Aが1分子あたり2個の重合性官能基を有するポリシロキサン化合物である〔B3〕に記載の低含水性軟質眼用デバイス。

〔B5〕前記成分Aが下記式(A1)で表されるポリシロキサン化合物である〔B4〕に記載の低含水性軟質眼用デバイス。

式中、X1およびX2はそれぞれ独立に重合性官能基を表す。R1〜R8はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、および炭素数1〜20のフルオロアルキル基から選ばれた置換基を表す。L1およびL2は、それぞれ独立に2価の基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0〜1500の整数を表す。ただしaとbは同時に0ではない。

〔B6〕前記低含水性軟質基材がケイ素原子を5質量%以上含む〔B3〕〜〔B5〕のいずれかに記載の低含水性軟質眼用デバイス。

〔B7〕前記成分Bが(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルである〔B3〕に記載の低含水性軟質眼用デバイス。

〔B8〕前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が、酸性ポリマーを1種以上、および塩基性ポリマーを1種以上含む〔B2〕〜〔B7〕のいずれかに記載の低含水性軟質眼用デバイス。

〔B9〕前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が、酸性ポリマー溶液による処理を1回または2回、および塩基性ポリマー溶液による処理を1回または2回、合計で3回処理を行うことにより形成された〔B2〕〜〔B8〕のいずれかに記載の低含水性軟質眼用デバイス。

〔B10〕前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が、2種の酸性ポリマー溶液による処理を2回および塩基性ポリマー溶液による処理を1回行うことにより形成された〔B2〕〜〔B8〕のいずれかに記載の低含水性軟質眼用デバイス。

〔B11〕前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層を形成する前記酸性ポリマーおよび前記塩基性ポリマーのうちの少なくとも1種が、水酸基およびアミド基から選ばれた基を有するポリマーである〔B2〕〜〔B10〕のいずれかに記載の低含水性軟質眼用デバイス。

〔B12〕前記パターンは、円環状をなす遮光性のパターンであって、前記パターンの中心に直径2.0mm以下の光学的瞳孔を形成した〔B1〕〜〔B11〕のいずれか一つに記載の低含水性軟質眼用デバイス。

〔B13〕前記パターンは、虹彩の表面を覆うことで前記虹彩を擬似的に着色する〔B1〕〜〔B12〕のいずれか一つに記載の低含水性軟質眼用デバイス。

また、本発明は以下の態様を含む。 〔C1〕眼に装用される低含水性軟質コンタクトレンズであって、前記眼との間の涙液交換を促進するパターンが形成されている低含水性軟質コンタクトレンズ。 〔C2〕前記パターンが、貫通孔、溝、およびひだ構造から選ばれた少なくとも1種である〔C1〕に記載の低含水性軟質コンタクトレンズ。 〔C3〕前記パターンが、前記貫通孔である〔C2〕に記載の低含水性軟質コンタクトレンズ。 〔C4〕基材を含み、該基材の表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が形成されている請求項〔C1〕〜〔C3〕のいずれかに記載の低含水性軟質コンタクトレンズ。 〔C5〕前記基材が、下記成分Aの重合体、または下記成分Aおよび成分Bとの共重合体を主成分とする〔C4〕に記載の低含水性軟質コンタクトレンズ; 成分A:1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物; 成分B:フルオロアルキル基を有する重合性モノマー。 〔C6〕前記成分Bが(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルである〔C5〕に記載の低含水性軟質コンタクトレンズ。 〔C7〕前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が、酸性ポリマー溶液による処理を1回または2回、および塩基性ポリマー溶液による処理を1回または2回、合計で3回処理を行うことにより形成された〔C4〕〜〔C6〕のいずれかに記載の低含水性軟質コンタクトレンズ。 〔C8〕前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が、2種の酸性ポリマー溶液による処理を2回および塩基性ポリマー溶液による処理を1回行うことにより形成された〔C4〕〜〔C6〕のいずれかに記載の低含水性軟質コンタクトレンズ。 〔C9〕前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層を形成する前記酸性ポリマーおよび前記塩基性ポリマーのうちの少なくとも1種が、水酸基およびアミド基から選ばれた基を有するポリマーである〔C4〕〜〔C8〕のいずれかに記載の低含水性軟質コンタクトレンズ。 〔C10〕樹脂製モールドを用いて基材を成型した後、基材を該樹脂製モールドから分離する前に、前記基材の穿孔を行う低含水性軟質コンタクトレンズの製造方法。

本発明にかかる医療デバイス、この医療デバイスに適用するためのコーティング液、コーティング溶液の組合せおよび医療デバイスの製造方法は、機械物性および低含水性を維持するとともに、体外表面または体内表面との接触時に表面に貼り付く現象、あるいは角膜への貼り付き感を大幅に低減ないし回避することができる。また、本発明の医療デバイスは、低含水であることから細菌の繁殖リスクを低減することができる。また、本発明によれば、高い酸素透過性を有し、水濡れ性に優れ、柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた医療デバイスを提供することができる。さらに本発明の医療デバイスは簡便なプロセスで安価に製造できるという利点もある。

本発明の一態様である低含水性軟質コンタクトレンズおよびその製造方法は、前述の効果とともに良好な涙液交換を可能とし、眼の健全性を維持する効果が期待できる。さらに本発明の一態様である低含水性軟質コンタクトレンズは簡便なプロセスで安価に製造できるという利点もある。

図1は、本発明の実施例にかかる医療デバイスのサンプルの表面摩擦係数を測定する装置を示す模式図である。ただし図1は、装置標準の測定治具および摩擦子をセットした状態を示す。

図2は、図1に示すA方向からみた本発明の実施例にかかる医療デバイスのサンプルの表面摩擦係数を測定するための測定治具および摩擦子の要部の構成を示す模式図である。

図3は、本発明の実施例にかかる医療デバイスのサンプルの表面摩擦係数を測定するための測定治具および摩擦子の要部の構成を示す部分断面図である。

図4は、本発明の実施の形態にかかる低含水性軟質眼用デバイスの虹彩パターンの一例を示す模式図である。

図5は、本発明の実施の形態にかかる低含水性軟質眼用デバイスの虹彩パターンの一例を示す模式図である。

図6は、本発明の実施の形態にかかる低含水性軟質コンタクトレンズの涙液交換促進パターンの一例を示す模式図である。

図7は、本発明の実施の形態の変形例1にかかる低含水性軟質コンタクトレンズの涙液交換促進パターンの一例を示す模式図である。

図8は、本発明の実施の形態の変形例2にかかる低含水性軟質コンタクトレンズの涙液交換促進パターンの一例を示す模式図である。

以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。

本発明の医療デバイスは、体液等を含む体表面と接触するデバイス、または体内に導入されるデバイスであって、例えば、コンタクトレンズ(眼用レンズ)、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクタ、アクセスポート、排液バック、血液回路、皮膚用材料および薬剤担体等を含む。

本発明の医療デバイスは、含水率が10質量%以下である低含水性の医療デバイスである。また、本発明の医療デバイスは、引張弾性率が10MPa以下である軟質の医療デバイスである。ここで、含水率は、試験片の乾燥状態の質量(乾燥状態での質量)と、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試験片の表面水分を拭き取った際の質量(湿潤状態での質量)とから、[((湿潤状態での質量)−(乾燥状態での質量))/(湿潤状態での質量)]により与えられる。

本発明の医療デバイスは、低含水性であることから、例えば生体(眼用レンズの場合は眼)表面に接触している間に患者が感じる乾燥感が小さく装用感に優れるという特徴を有する。また、本発明の医療デバイスは、低含水性であることから、細菌の繁殖リスクが小さいという利点を有する。含水率は5%以下がより好ましく2%以下がさらに好ましく、1%以下が最も好ましい。含水率が高すぎると、医療デバイスを使用する患者の乾燥感が大きくなる、細菌の繁殖リスクが高まるなどするために好ましくない。

本発明の医療デバイスの引張弾性率は、100kPa以上であり、200kPa以上が好ましく、250kPa以上がより好ましく、300kPa以上がさらに好ましい。また、本発明の医療デバイスの引張弾性率は、2000kPa以下であり、1200kPa以下が好ましく、1000kPa以下がより好ましく、800kPa以下がさらに好ましく、700kPa以下がよりいっそう好ましく、600kPa以下が最も好ましい。引張弾性率が小さすぎると、軟らかすぎてハンドリングが難しくなる傾向がある。また、引張弾性率が大きすぎると、硬すぎて装用感が悪くなる傾向がある。引張弾性率2000kPa、好ましくは1200kPa以下になると良好な装用感が得られるので、100kPa以上2000kPa以下の範囲であり、好ましくは200kPa以上1200kPa以下の範囲である。引張弾性率は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。

本発明の医療デバイスの引張伸度(破断伸度)は50%以上であり、150%以上が好ましく、170%以上がより好ましく、200%以上がさらに好ましく、300%以上がいっそう好ましく、400%以上がさらに好ましい。また、本発明の医療デバイスの引張伸度は3000%以下であり、2500%以下がより好ましく、2000%以下がさらに好ましく、1500%以下がよりいっそう好ましく、1000%以下が最も好ましい。引張伸度が小さいと、医療デバイスが破れやすくなるので好ましくない。また、引張伸度が大きすぎる場合には、医療デバイスが変形しやすくなる傾向があり好ましくない。引張伸度は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。

本発明の医療デバイスは、表面の濡れ性に優れることが生体への馴染みという観点から重要であり、動的接触角(前進時、浸漬速度:0.1mm/sec)が80゜以下であり、75゜以下がより好ましく、70゜以下がさらに好ましい。患者の角膜への貼り付きを防止する観点からは、動的接触角はより低いことが好ましく、65゜以下が好ましく、60゜以下がより好ましく、55゜以下がさらに好ましく、50゜以下が一層好ましく、45゜以下がさらにいっそう好ましく、40゜以下が最も好ましい。動的接触角は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて、ホウ酸緩衝液に対して測定される。

また、本発明の医療デバイスは、表面の濡れ性に優れることが生体への馴染みという観点から重要であり、患者の生体表面(眼用レンズの場合は角膜)への貼り付きを防止する観点からは、医療デバイスの表面の液膜保持時間が長いことが好ましい。ここで、液膜保持時間とは、ホウ酸緩衝液に浸漬した医療デバイスを液から引き上げ、空中に表面(眼用レンズの場合は直径方向)が垂直になるように保持した際に、医療デバイス表面の液膜が切れずに保持される時間である。液膜保持時間は、5秒以上が好ましく、10秒以上がさらに好ましく、20秒以上が最も好ましい。ここで直径とは、レンズの縁部が構成する円の直径である。また、液膜保持時間はホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。

患者の生体表面(眼用レンズの場合は角膜)への貼り付きを防止する観点からは、医療デバイスの表面が優れた易滑性を有することが好ましい。易滑性を表す指標としては、本明細書の実施例に示した方法で測定される後述の表面摩擦係数比(QaおよびQb)が小さい方が好ましい。

さらに、上述した摩擦において、本発明の医療デバイスは、ホウ酸緩衝液による湿潤時の表面摩擦係数比(Qa)が2以下であることが好ましく、1.6以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。ただし、 Qa=MIUa/MIUo ここで、MIUaは、該医療デバイスの、ホウ酸緩衝液による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す。MIUoは、市販のコンタクトレンズである“アキュビュー(登録商標)オアシス”の、ホウ酸緩衝液による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す。

表面摩擦係数比Qaが小さいほど、表面摩擦が小さく、生体(例えばコンタクトレンズの場合は角膜や眼瞼結膜)との間に擦れが生じたときに、生体に与える影響が小さくなるために好ましい。その意味では、表面摩擦係数比Qaは1以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.6以下が最も好ましい。

また、生理食塩水による湿潤時の表面摩擦係数比(Qb)が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。ただし、 Qb=MIUb/MIUo ここで、MIUbは、該医療デバイスの、生理食塩水による湿潤時における平滑な石英ガラス板との間の表面摩擦係数を表す。

本発明の好ましい態様の一つである、基材の表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が形成された医療デバイスにおいては、QaよりもQbが大きくなる傾向があり、場合によってはQbが非常に大きくなる場合があることが見出された。しかしながら、生理食塩水は体液(例えばコンタクトレンズの場合は涙液)と類似した液体であり、医療デバイスの生体表面(眼用レンズの場合は角膜)への貼り付きを防止する観点からは、生理食塩水による湿潤時の表面摩擦係数比(Qb)もまた小さいことが好ましい。

表面摩擦係数比Qbは小さいほど、表面摩擦が小さく、生体(例えばコンタクトレンズの場合は角膜や眼瞼結膜)との間に擦れが生じたときに、生体に与える影響が小さくなるために好ましい。その意味では、表面摩擦係数比Qbは1.5以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.8以下が最も好ましい。

また、本発明の医療デバイスは、生理食塩水による湿潤時の表面摩擦係数比Qbとホウ酸緩衝液による湿潤時の表面摩擦係数比Qaの差(Qb−Qa)が1.6以下であることが好ましく、1.3以下がより好ましく、1.0以下がさらに好ましい。表面摩擦係数比Qbと表面摩擦係数比Qaとの差が小さいと、医療デバイスを生体に適用したときの易滑性と、適用前(例えば開封時)の易滑性との差が小さくなる傾向があり好ましい。

本発明の医療デバイスの防汚性は、ムチン付着、脂質(パルミチン酸メチル)付着、および人工涙液浸漬試験により、評価することができる。これらの評価による付着量が少ないものほど、装用感に優れるとともに、細菌繁殖リスクが低減されるために好ましい。ムチン付着量は5μg/cm2以下が好ましく、4μg/cm2以下がより好ましく、3μg/cm2以下が最も好ましい。

医療デバイスを使用する患者の生体への大気からの酸素供給の観点から、医療デバイスは高い酸素透過性を有することが好ましい。酸素透過係数[×10−11(cm2/sec)mLO2/(mL・hPa)]は、50以上が好ましく、100以上がより好ましく、200以上がさらに好ましく、300以上が最も好ましい。また、酸素透過係数[×10−11(cm2/sec)mLO2/(mL・hPa)]は、2000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましく、700以下が最も好ましい。酸素透過性を大きくしすぎると機械物性などの他の物性に悪影響が出る場合があり好ましくない。酸素透過係数は、乾燥状態の試料にて測定される。

本発明の医療デバイスは、上述した特性を有するため、機械物性および低含水性を維持するとともに、体外表面または体内表面との接触時に表面に貼り付く現象を大幅に低減ないし回避できる。

また、本発明の医療デバイスは、基材を含み、該基材の表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が形成された医療デバイスであることが好ましい。

基材は、高い酸素透過性を有するため、および、表面にコーティングされるポリマーとの間に共有結合を介さずに強固な密着性を得るために、ケイ素原子を5質量%以上含むことが好ましい。ケイ素原子の含有量(質量%)は、乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として算出される。基材のケイ素原子含有率は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量以上がさらに好ましく、12質量%以上が最も好ましい。また、基材のケイ素原子含有率は、36質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、26質量%以下がさらに好ましい。ケイ素原子の含有率が大きすぎる場合は引張弾性率が大きくなる場合があり好ましくない。

基材におけるケイ素原子の含有量は以下の方法で測定することができる。十分乾燥した基材を白金るつぼに秤取し、硫酸を加えてホットプレートおよびバーナーで加熱灰化する。灰化物を炭酸ナトリウムで融解し、水を加えて加熱溶解した後、硝酸を加え水で定容する。この溶液について、ICP発光分光分析法によりケイ素原子を測定し、基材中の含有量を求める。

基材は、1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6千以上のポリシロキサン化合物である成分Aの重合体、または、前記成分Aおよび重合性官能基を有する化合物であって、成分Aとは異なる化合物との共重合体を主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として50質量%以上含まれる成分であることを意味する。本明細書において、ポリシロキサン化合物とは、Si−O−Si−O−Si結合を有する化合物である。

成分Aの数平均分子量は6000以上であることが好ましい。発明者らは、成分Aの数平均分子量がこの範囲にあることで、柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた医療デバイスが得られることを見出した。成分Aのポリシロキサン化合物の数平均分子量は、耐折り曲げ性などの機械物性により優れた医療デバイスが得られることから、8000以上が好ましく、9000以上がより好ましく、10000以上がさらに好ましい。また、成分Aの数平均分子量は100000以下であることが好ましく、70000以下であることがより好ましく、50000以下であることが一層好ましい。成分Aの数平均分子量が小さすぎる場合には耐折り曲げ性などの機械物性が低くなる傾向があり、特に6000未満では耐折り曲げ性が低くなる。成分Aの数平均分子量が大きすぎる場合には、医療デバイスの柔軟性や透明性が低下する傾向があり好ましくない。

本発明の医療デバイス(特に眼用レンズである場合)は、透明性が高いことが好ましい。透明性の基準としては、目視した際に透明で濁りがないことが好ましい。さらに眼用レンズは、レンズ投影機で観察した場合、濁りがほとんど、または、全く観察されないことが好ましく、濁りが全く観察されないことが最も好ましい。

医療デバイス(特に眼用レンズである場合)においては、成分Aの分散度(質量平均分子量を数平均分子量で除した値)は、6以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましく、1.5以下が最も好ましい。眼用レンズにおいては、成分Aの分散度が小さい場合、他の成分との相溶性が向上し、得られる眼用レンズの透明性が向上する、得られる眼用レンズに含まれる抽出可能な成分が減る、眼用レンズ成型に伴う収縮率が小さくなる、などの利点が生じる。レンズ成型に伴う収縮率は、レンズ成型比=[レンズ直径]/[モールドの空隙部の直径]で評価することができる。レンズ成型比は、1に近いほど高品位のレンズを安定に製造することが容易となる。成型比は0.85以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましく、0.91以上であることが最も好ましい。また、成型比は2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることが最も好ましい。

本発明において、成分Aの数平均分子量は、クロロホルムを溶媒として用いたゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。質量平均分子量および分散度(質量平均分子量を数平均分子量で除した値)も同様の方法で測定される。

なお、本明細書においては、質量平均分子量をMw、数平均分子量をMnで表す場合がある。また分子量1000を1kDと表記することがある。例えば「Mw33kD」という表記は「質量平均分子量33000」を表す。

成分Aは、複数の重合性官能基を有するポリシロキサン化合物である。成分Aの重合性官能基の数は、1分子あたり2個以上であればよいが、より柔軟(低弾性率)な医療デバイスが得られやすいという観点からは、1分子あたり2個が好ましい。成分Aは、重合性官能基を分子鎖のいずれの位置に有していてもよいが、特に分子鎖の両末端に重合性官能基を有する構造が好ましい。

成分Aの重合性官能基としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。2個以上の重合性官能基は、同一でも異なっていてもよい。

なお、本明細書において(メタ)アクリロイルという語はメタクリロイルおよびアクリロイルの両方を表すものであり、(メタ)アクリル、(メタ)アクリレートなどの語も同様である。

成分Aとしては、下記式(A1)の構造を有するものが好ましい。

式(A1)中、X1およびX2はそれぞれ独立に重合性官能基を表す。R1〜R8はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、および炭素数1〜20のフルオロアルキル基から選ばれた置換基を表す。L1およびL2は、それぞれ独立に2価の基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0〜1500の整数を表す。ただしaとbは同時に0ではない。

X1およびX2としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものが好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。

R1〜R8の好適な具体例は、水素;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。これらの中で、医療デバイスに良好な機械物性と高酸素透過性を与えるという観点からさらに好ましいのは、水素およびメチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。

L1およびL2としては、炭素数1〜20の2価の基が好ましい。中でも式(A1)の化合物が高純度で得られやすい利点を有することから、下記式(LE1)〜(LE12)で表される基が好ましく、中でも下記式(LE1)、(LE3)、(LE9)および(LE11)で表される基がより好ましく、下記式(LE1)および(LE3)で表される基がさらに好ましく、下記式(LE1)で表される基が最も好ましい。なお、下記式(LE1)〜(LE12)は、左側が重合性官能基X1またはX2に結合する末端、右側がケイ素原子に結合する末端として描かれている。

式(A1)中、aおよびbは、それぞれ独立に0〜1500の整数を表す。ただしaとbは同時に0ではない。aおよびbはそれぞれ独立に0〜1500の範囲が好ましい。aとbの合計値(a+b)は、80以上が好ましく、100以上がより好ましく、100〜1400がより好ましく、120〜950がより好ましく、130〜700がさらに好ましい。

R1〜R8が全てメチル基の場合、b=0であり、aは、80〜1500が好ましく、100〜1400がより好ましく、120〜950がより好ましく、130〜700がさらに好ましい。この場合、aの値は、成分Aのポリシロキサン化合物の分子量によって決まる。

本発明の成分Aは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。

成分Aと共重合させる他の化合物としては、フルオロアルキル基を有する重合性モノマーである成分Bが好ましい。成分Bはフルオロアルキル基に起因する臨界表面張力の低下により、撥水撥油性の性質を持ち、これにより、医療デバイス表面が体液(眼用レンズの場合は涙液)中のタンパク質や脂質などの成分によって汚染されることを抑える効果がある。また、成分Bは、柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた医療デバイスを与える効果がある。成分Bのフルオロアルキル基の好適な具体例は、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。より好ましくは、炭素数2〜8のフルオロアルキル基、例えば、トリフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、オクタフルオロペンチル基、およびドデカフルオロオクチル基であり、最も好ましくはトリフルオロエチル基である。

成分Bの重合性官能基としてはラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などであるが、これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。

柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた医療デバイスが得られる効果が大きいことから、成分Bとして最も好ましいのは(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルである。かかる(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルの具体例としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、およびトリデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレートが挙げられる。トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。最も好ましくはトリフルオロエチル(メタ)アクリレートである。

本発明のB成分は1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。

共重合体中における成分Bの好ましい含有量は、成分A100質量部に対して、10〜500質量部、より好ましくは20〜400質量部、さらに好ましくは20〜200質量部である。成分Bの使用量が少なすぎる場合は、基材に白濁が生じたり、耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向がある。

また、基材に用いる共重合体としては、成分Aおよび成分Bに加えて、成分Aおよび成分Bとは異なる成分(以下成分C)をさらに共重合させたものを用いてもよい。

成分Cとしては、共重合体のガラス転移点を室温あるいは0℃以下に下げるものがよい。これらは凝集エネルギ−を低下させるので、共重合体にゴム弾性と柔らかさを与える効果がある。

成分Cの重合性官能基としてはラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などであるが、これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。

成分Cとして、柔軟性や耐折り曲げ性などの機械的特性の改善のために好適な例は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびn−ステアリル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、より好ましくは、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレートである。これらの中でアルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルはさらに好ましい。アルキル基の炭素数が大きすぎると得られる医療デバイスの透明性が低下する場合があり好ましくない。

さらに、機械的性質、表面濡れ性、医療デバイスの寸法安定性などを向上させるためには、所望に応じ、以下に述べるモノマーを共重合させることができる。

機械的性質を向上させるためのモノマーとしては、例えばスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物等が挙げられる。

表面濡れ性を向上させるためのモノマーとしては、例えばメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、およびN−ビニル−N−メチルアセトアミド等が挙げられる。中でもN,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、およびN−ビニル−N−メチルアセトアミドなどのアミド基を含有するモノマーが好ましい。

医療デバイスの寸法安定性を向上させるためのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビニルメタクリレート、アクリルメタクリレートおよびこれらのメタクリレート類に対応するアクリレート類、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。

成分Cは、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。

成分Cの好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.001〜400質量部、より好ましくは0.01〜300質量部、さらに好ましくは0.01〜200質量部、最も好ましくは0.01〜30質量部である。成分Cの使用量が少なすぎる場合は成分Cに期待する効果が得られにくくなる。成分Cの使用量が多すぎる場合は得られる医療デバイスに白濁が生じたり耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向がある。

さらにまた、基材に用いる共重合体として、成分Aに加えて、成分Mをさらに共重合させたものを用いてもよい。成分Mは、「1分子あたり1個の重合性官能基、およびシロキサニル基を有する単官能モノマー」である。本明細書において、シロキサニル基とはSi−O−Si結合を有する基を意味する。

成分Mのシロキサニル基は直鎖状であることが好ましい。シロキサニル基が直鎖状であれば、得られる医療デバイスの形状回復性が向上する。ここで直鎖状とは、重合性基を有する基と結合したケイ素原子を起点とする、一本の線状に連なるSi−(O−Si)n−1−O−Si結合で示される構造を指す(ただし、nは2以上の整数を表す)。得られる医療デバイスが十分な形状回復性を得るためにはnは3以上の整数が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、6以上が最も好ましい。また、「シロキサニル基が直鎖状である」とはシロキサニル基が前記の直鎖状構造を有し、かつ直鎖状構造の条件を満たさないSi−O−Si結合を有さないことを意味する。

成分Mの数平均分子量は、300〜120000であることが好ましい。成分Mの数平均分子量がこの範囲にあることで、柔軟(低弾性率)で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた基材が得られる。成分Mの数平均分子量は、耐折り曲げ性などの機械物性により優れ、かつ形状回復性に優れた基材が得られることから、500以上がより好ましい。成分Mの数平均分子量は、1000〜25000の範囲にあることがより好ましく、5000〜15000の範囲にあることが一層好ましい。成分Mの数平均分子量が小さすぎる場合には耐折り曲げ性や形状回復性などの機械物性が低くなる傾向があり、特に500未満では耐折り曲げ性、および形状回復性が低くなることがある。成分Mの数平均分子量が大きすぎる場合には、柔軟性や透明性が低下する傾向があり好ましくない。

成分Mの重合性官能基としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。

成分Mとしては、下記式(ML1)の構造を有するものが好ましい。

式中、X3は重合性官能基を表す。R11〜R19はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、および炭素数1〜20のフルオロアルキル基から選ばれた置換基を表す。L3は2価の基を表す。cおよびdは、それぞれ独立に0〜700の整数を表す。ただしcとdは同時に0ではない。

X3としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものが好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。

また、成分Mの重合性官能基は、良好な機械物性の医療デバイスが得られやすいことから、成分Aの重合性官能基と共重合可能であることがより好ましい。成分Mと成分Aが均一に共重合されることで良好な表面特性を有する医療デバイスが得られやすい。成分Mの重合性官能基は、成分Aの重合性官能基と同一であることがさらに好ましい。

R11〜R19の好適な具体例は、水素;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。これらの中で、医療デバイスに良好な機械物性と高酸素透過性を与えるという観点からさらに好ましいのは、水素およびメチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。

L3としては、炭素数1〜20の2価の基が好ましい。中でも式(ML1)の化合物が高純度で得られやすい利点を有することから、下記式(LE1)〜(LE12)で表される基が好ましく、中でも下記式(LE1)、(LE3)、(LE9)および(LE11)で表される基がより好ましく、下記式(LE1)および(LE3)で表される基がさらに好ましく、下記式(LE1)で表される基が最も好ましい。なお、下記式(LE1)〜(LE12)は、左側が重合性官能基X3に結合する末端、右側がケイ素原子に結合する末端として描かれている。

式(ML1)中、cおよびdは、それぞれ独立に0〜700の整数を表す。ただしcとdは同時に0ではない。cとdの合計値(c+d)は、3以上が好ましく、10以上がより好ましく、10〜500がより好ましく、30〜300がより好ましく、50〜200がさらに好ましい。

R11〜R18が全てメチル基の場合、d=0であり、cは、3〜700が好ましく、10〜500がより好ましく、30〜300がより好ましく、50〜200がさらに好ましい。この場合、cの値は、成分Mの分子量によって決まる。

本発明の医療デバイスの基材において、成分Mは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。

本発明の医療デバイスの基材が適当な量の成分Mを含有することにより、架橋密度が減少してポリマーの自由度が大きくなり、適度に柔らかい低弾性率の基材を実現することができる。これに対し、成分Mの含有量が少なすぎると架橋密度が高くなり、基材が硬くなる。また、成分Mの含有量が多すぎると基材が軟らかくなりすぎ、破れやすくなるため好ましくない。

また、本発明の医療デバイスの基材において、成分Mと成分Aとの質量比は、成分A100質量部に対して成分Mが5〜200質量部、より好ましくは7〜150質量部、最も好ましくは10〜100質量部、であることが好ましい。成分Mの含有量が、成分A100質量部に対し5質量部を下まわると、架橋密度が高くなり、基材が硬くなる。また、成分Mの含有量が、成分A100質量部に対し200質量部を超えると、軟らかくなりすぎ、破れやすくなるため好ましくない。

本発明の医療デバイスは、紫外線吸収剤、色素、着色剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬および栄養補助成分、相溶化成分、抗菌成分、離型剤等の成分をさらに含んでいてもよい。上記した成分はいずれも、非反応性形態または共重合形態で含有され得る。

紫外線吸収剤を含む場合、医療デバイスを使用する患者の体組織(眼用レンズの場合は眼)を有害紫外線から保護することができる。また、着色剤を含む場合、医療デバイスが着色されて、識別が容易になり、取扱時の利便性が向上する。

上記した成分はいずれも、非反応性形態または共重合形態で含有され得る。上記成分を共重合した場合、すなわち重合性基を有する紫外線吸収剤、重合性基を有する着色剤などを使用した場合は、該成分が基材に共重合されて固定化されるので溶出の可能性が小さくなるので好ましい。

基材は、紫外線吸収剤および着色剤から選ばれる成分、ならびに、これら以外の2種類以上の成分C(以下、成分Ck)からなることが好ましい。その場合、成分Ckとしては、炭素数1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから少なくとも1種類、前記表面濡れ性を向上させるためのモノマーから少なくとも1種類が選ばれることが好ましい。成分Ckを2種類以上使用することにより、紫外線吸収剤や着色剤との親和性が増し、透明な基材を得ることが容易になる。

紫外線吸収剤を用いる場合、その好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.01〜20質量部、より好ましくは0.05〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜2質量部である。着色剤を用いる場合、その好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.00001〜5質量部、より好ましくは0.0001〜1質量部、さらに好ましくは0.0001〜0.5質量部である。紫外線吸収剤や着色剤の含有量が少なすぎる場合は、紫外線吸収効果や着色効果が得られにくくなる。逆に、多すぎる場合はこれらの成分を基材中に溶解せしめることが難しくなる。成分Ckの好ましい使用量は、それぞれ、成分A100質量部に対して、0.1〜100質量部、より好ましくは1〜80質量部、さらに好ましくは2〜50質量部である。成分Ckの使用量が少なすぎる場合は、紫外線吸収剤や着色剤との親和性が不足して透明な基材を得るのが難しくなる傾向がある。成分Ckの使用量が多すぎる場合も得られる医療デバイスに白濁が生じたり耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向があり好ましくない。

また、本発明の医療デバイスの基材は、架橋度が2.0〜18.3の範囲であることが好ましい。架橋度は、下記式(Q1)で表される。

上記式(Q1)において、Qnは1分子あたりn個の重合性基を有するモノマーの合計ミリモル量、Wnは1分子あたりn個の重合性基を有するモノマーの合計質量(kg)を表す。また、モノマーの分子量が分布を有する場合は、数平均分子量を用いてミリモル量を計算することとする。

本発明の基材の架橋度が、2.0より小さくなると、柔らかすぎてハンドリングが難しくなり、18.3より大きくなると硬すぎて装用感が悪くなる傾向があるので好ましくない。架橋度のより好ましい範囲は3.5〜16.0であり、さらに好ましい範囲は8.0〜15.0であり、最も好ましい範囲は9.0〜14.0である。

医療デバイスの基材を製造する方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、いったん、丸棒や板状の重合体を得て、これを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト重合法などを使用することができる。医療デバイスを切削加工で得る場合には、低温での冷凍切削が好適である。

一例として、成分Aを含む原料組成物をモールド重合法により重合して眼用レンズを製造する方法について説明する。まず、一定の形状を有する2枚のモールド部材間の空隙に原料組成物を充填する。モールド部材の材料としては、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。光重合を行う場合は光学的に透明な素材が好ましいので、樹脂またはガラスが好ましく使用される。モールド部材の形状や原料組成物の性状によっては、眼用レンズに一定の厚みを与え、かつ、空隙に充填した原料組成物の液モレを防止するために、ガスケットを用いてもよい。空隙に原料組成物を充填したモールドは、続いて紫外線、可視光線またはこれらの組み合わせなどの活性光線を照射されるか、もしくはオーブンや液槽中などで加熱されることにより、充填した原料組成物を重合する。2通りの重合方法を併用する方法もありうる。すなわち、光重合の後に加熱重合したり、または加熱重合後に光重合することもできる。光重合の具体的態様は、例えば水銀ランプや紫外線ランプ(例えばFL15BL、東芝)の光のような紫外線を含む光を短時間(通常は1時間以下)照射する。熱重合を行う場合には、組成物を室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めて行く条件が、眼用レンズの光学的な均一性および品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。

重合においては、重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤または光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度において最適な分解特性を有するものが選択される。一般的には、10時間半減期温度が40〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合を行う場合の光開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、および金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独または混合して用いられる。重合開始剤の量は、重合混合物に対し最大で5質量%までが好ましい。

重合する際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。溶媒の例としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、テトラヒドロリナロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびポリエチレングリコール等のアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチルおよび安息香酸メチル等のエステル系溶媒;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタンおよびノルマルオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロへキサンおよびエチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;並びに石油系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。

本発明の医療デバイスは、基材表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層(以下、コーティング層と呼ぶ)が形成されていることが好ましい。コーティング層を有することで、レンズの表面に良好な濡れ性と易滑性が付与され、優れた装用感を与えることができる。

発明者らは、本発明の医療デバイスが、低含水性かつ軟質であるにも関わらず、また基材が中性であっても、表面に酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなるコーティング層を形成することによって、医療デバイス表面に十分な濡れ性、易滑性および防汚性を付与することが可能であることを見出した。これにより、本発明の医療デバイスは、従来の医療デバイスにおいて問題とされていた、装用時に角膜に貼り付く現象(体表面または体内表面との接触時に表面に貼り付く現象)を大幅に低減ないし回避することができる。

コーティング層は、基材との間に共有結合を有する必要はない。簡便な工程での製造が可能となることから、コーティング層は基材との間に共有結合を有さないことが好ましい。コーティング層は、基材との間に共有結合を有さなくても、実用的な耐久性を有する。

コーティング層は、下記に詳細に説明する酸性ポリマー溶液(「溶液」は、水溶液を意味する)、および塩基性ポリマー溶液(「溶液」は、水溶液を意味する)で基材表面を処理することにより形成する。ここで、水溶液とは水を主たる成分とする溶液を意味する。

コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー、および1種以上の塩基性ポリマーからなることが好ましい。2種以上の酸性ポリマーまたは2種以上の塩基性ポリマーを用いると、医療デバイス表面に易滑性や防汚性などの性質を発現させやすいためにより好ましい。特に2種以上の酸性ポリマーと1種以上の塩基性ポリマーを使用した場合にその傾向が強まるのでさらに好ましい。

ここで1種のポリマーとは、1の合成反応により製造されたポリマー群を意味する。また、構成するモノマー種が同一であっても、配合比を変えて合成したポリマーは1種ではない。

コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理を1回以上、および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理を1回以上行うことにより形成されることが好ましい。

また、コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理を、好ましくはそれぞれ1〜5回、より好ましくはそれぞれ1〜3回、さらに好ましくはそれぞれ1〜2回行うことにより基材の表面に形成される。酸性ポリマー溶液による処理の回数と塩基性ポリマー溶液による処理の回数は異なっていてもよい。

発明者らは、本発明の医療デバイスにおいて、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理が合計2回または3回という極めて少ない回数で優れた濡れ性や易滑性を付与しうることを見出した。これは製造工程の短縮化という観点から、工業的に非常に重要な意味を持つ。その意味で、本発明の医療デバイスにおいて、コーティング層を形成する酸性ポリマー溶液処理および塩基性ポリマー溶液処理による合計の処理回数は2回または3回が好ましい。

コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理を2回および塩基性ポリマー溶液による処理を1回行うことが好ましく、2種の酸性ポリマー溶液により2回(各1回)、塩基性ポリマー溶液による処理を1回行うことが好適である。

なお、発明者らは、コーティング層が、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーのいずれか一方のみを含むだけでは、濡れ性や易滑性の発現がほとんど見られないことも確認している。

塩基性ポリマーとしては、塩基性を有する複数の基をポリマー鎖に沿って有するホモポリマーまたは共重合ポリマーを好適に用いることができる。塩基性を有する基としてはアミノ基およびその塩が好適である。たとえば、このような塩基性ポリマーの好適な例は、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアミン)、ポリアニリン、ポリ(アミノスチレン)、ポリ(N,N−ジアルキルアミノエチルメタクリレート)などのアミノ基含有(メタ)アクリレート重合体、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)などのアミノ基含有(メタ)アクリルアミド重合体およびこれらの塩などである。以上はホモポリマーの例であるが、これらの共重合体(すなわち前記塩基性ポリマーを構成する塩基性モノマーどうしの共重合体、あるいは塩基性モノマーと他のモノマーの共重合体)も好適に用いることができる。

塩基性ポリマーが共重合体である場合、該共重合体を構成する塩基性モノマーとしては、重合性の高さという点でアリル基、ビニル基、および(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが最も好ましい。該共重合体を構成する塩基性モノマーとして好適なものを例示すれば、アリルアミン、ビニルアミン(前駆体としてN−ビニルカルボン酸アミド)、ビニルベンジルトリメチルアミン、アミノ基含有スチレン、アミノ基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、およびこれらの塩である。これらの中でも重合性の高さからアミノ基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、およびこれらの塩がより好ましく、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、およびこれらの塩が最も好ましい。

塩基性ポリマーは、第四級アンモニウム構造を有するポリマーであってもよい。第四級アンモニウム構造を有するポリマー化合物は、医療デバイスのコーティングに使用されると、医療デバイスに抗生物性を付与することができる。

酸性ポリマーとしては、酸性を有する複数の基をポリマー鎖に沿って有するホモポリマーまたは共重合ポリマーを好適に用いることができる。酸性を有する基としては、カルボキシル基、スルホン酸基およびこれらの塩が好適であり、カルボキシル基およびその塩が最も好適である。たとえば、このような酸性ポリマーの好適な例は、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(ビニル安息香酸)、ポリ(チオフェン−3−酢酸)、ポリ(4−スチレンスルホン酸)、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびこれらの塩などである。以上はホモポリマーの例であるが、これらの共重合体(すなわち前記酸性ポリマーを構成する酸性モノマーどうしの共重合体、あるいは酸性モノマーと他のモノマーの共重合体)も好適に用いることができる。

酸性ポリマーが共重合体である場合、該共重合体を構成する酸性モノマーとしては、重合性の高さという点でアリル基、ビニル基、および(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが最も好ましい。該共重合体を構成する酸性モノマーとして好適なものを例示すれば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩である。これらの中で、(メタ)アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩がより好ましく、最も好ましいのは(メタ)アクリル酸、およびその塩である。

塩基性ポリマーおよび酸性ポリマーのうちの少なくとも1種が、アミド基および水酸基から選ばれた基を有するポリマーであることが好ましい。塩基性ポリマーおよび/または酸性ポリマーがアミド結合を有する場合、濡れ性のみならず易滑性のある表面を形成できるために好ましい。塩基性ポリマーおよび/または酸性ポリマーが水酸基を有する場合、濡れ性のみならず涙液に対する防汚性に優れた表面を形成できるために好ましい。

前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーのうちの2種以上が、水酸基およびアミド基から選ばれた基を有するポリマーであることがより好ましい。すなわち、医療デバイスが、水酸基を有する酸性ポリマー、水酸基を有する塩基性ポリマー、アミド基を有する酸性ポリマーおよびアミド基を有する塩基性ポリマーから選ばれた2種以上を含むことが好ましい。この場合、易滑性のある表面が形成される効果、または涙液に対する防汚性に優れた表面を形成できる効果がより顕著に発現できるために好ましい。

また、コーティング層が、水酸基を有する酸性ポリマーおよび水酸基を有する塩基性ポリマーから選ばれた少なくとも1種、ならびにアミド基を有する酸性ポリマーおよびアミド基を有する塩基性ポリマーから選ばれた少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。この場合、易滑性のある表面が形成される効果、および涙液に対する防汚性に優れた表面を形成できる効果の両方が発現できるために好ましい。

アミド基を有する塩基性ポリマーの例としては、アミノ基を有するポリアミド類、部分加水分解キトサン、塩基性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。

アミド基を有する酸性ポリマーの例としては、カルボキシル基を有するポリアミド類、酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。

水酸基を有する塩基性ポリマーの例としては、キチンなどのアミノ多糖類、塩基性モノマーと水酸基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。

水酸基を有する酸性ポリマーの例としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロースなどの酸性基を有する多糖類、酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。

アミド基を有するモノマーとしては、重合の容易さの点で(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーおよびN−ビニルカルボン酸アミド(環状のものを含む)が好ましい。かかるモノマーの好適な例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、およびアクリルアミドを挙げることができる。これらの中でも易滑性の点で好ましいのは、N−ビニルピロリドンおよびN,N−ジメチルアクリルアミドであり、N,N−ジメチルアクリルアミドが最も好ましい。

水酸基を有するモノマーの好適な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、ヒドロキシスチレン、ビニルアルコール(前駆体としてカルボン酸ビニルエステル)を挙げることができる。水酸基を有するモノマーとしては、重合の容易さの点で(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルモノマーはより好ましい。これらの中で、涙液に対する防汚性の点で好ましいのは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびグリセロール(メタ)アクリレートであり、中でもヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。

塩基性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/N−ビニルピロリドン共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N−ビニルピロリドン共重合体、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。最も好ましくはN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。

酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、(メタ)アクリル酸/N−ビニルピロリドン共重合体、(メタ)アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/N−ビニルピロリドン共重合体、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。最も好ましくは(メタ)アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。

塩基性モノマーと水酸基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体である。最も好ましくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体である。

酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、(メタ)アクリル酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体である。最も好ましくは(メタ)アクリル酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体である。

前記塩基性モノマーあるいは酸性モノマーと他のモノマーの共重合体を用いる場合、その共重合比率は、[塩基性モノマーあるいは酸性モノマーの質量]/[他のモノマーの質量]が、1/99〜99/1が好ましく、2/98〜90/10がより好ましく、10/90〜80/20がさらに好ましい。共重合比率がこの範囲にある場合に、易滑性や涙液に対する防汚性などの機能を発現しやすくなる。

コーティング層の種々の特性、たとえば厚さを変えるために、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの分子量を変えることができる。具体的には、分子量を増すと、一般にコーティング層の厚さは増す。しかし、分子量が大きすぎる場合、粘度増大により取り扱い難さが増す可能性がある。そのため、本発明で使用される酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーは、2000〜150000の分子量を有することが好ましい。より好ましくは、分子量5000〜100000であり、さらに好ましくは、75000〜100000である。酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(水系溶媒)で測定されるポリエチレングリコール換算の質量平均分子量である。

コーティング層の塗布は、たとえばWO99/35520、WO01/57118または米国特許公報第2001−0045676号に記載されているような多数の方法で達成することができる。

本発明の医療デバイスは、基材表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層(以下、コーティング層と呼ぶ)が形成されているが、該層内の少なくとも一部が架橋されていても良い。また、本発明の医療デバイスにおいては、上記基材と上記層との間で少なくとも一部が架橋されていても良い。ここで、架橋とは、ポリマー同士が自らの官能基または架橋剤を用いて橋架け構造を作って結合することである。

上記架橋は、基材に少なくとも酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーを付着させた状態で放射線を照射することにより生じさせることができる。放射線は、各種のイオン線、電子線、陽電子線、エックス線、γ線、中性子線が好ましく、より好ましくは電子線およびγ線である。最も好ましくはγ線である。

上述のようにコーティング層内やコーティング層と基材との間で架橋を生じさせることにより、医療デバイスの表面に良好な濡れ性と易滑性が付与され、優れた装用感を与えることができる。一方で、放射線照射により基材内部にも架橋を生じ、医療デバイスが硬くなりすぎる場合がある。その場合は基材中の成分Aを適宜、成分Mに置き換えて共重合することにより、基材内部の過度の架橋を抑制することができる。

また、発明者らは、湿潤状態および準湿潤状態で使用することが好ましいデバイス(本発明の医療デバイスを含む)において、基材に複数のポリマーを非共有結合的に適用するいわゆるLbLコーティングに用いるコーティング液を、基材のかわりに水晶振動子センサー(共振周波数9MHz、ATカット、金電極)に対して適用したときに、測定される各ポリマーの共振周波数が増加する(大きくなる)という特異な現象を見出した。また、発明者らは、共振周波数の増加幅が大きい場合のコーティング層が、かかるデバイス(例えば医療デバイス)として良好な表面を形成しうることを見出した。かかるデバイスは軟質樹脂デバイス(引張弾性率が10MPa以下)であることが好ましい。かかるデバイスは低含水性(含水率が10質量%以下)であることが好ましい。

ここで、水晶振動子は、電極に交流電圧を印加すると圧電効果により共振振動するが、電極表面に物質が付着するなどして質量が増加すると共振周波数が低下する(小さくなる)。この際、電極表面の質量変化は、測定される共振周波数変化と比例する。この原理を利用して共振周波数の変化により物質の付着、反応などによる質量変化を検出する方法が、クオーツクリスタルマイクロバランス測定法(QCM)である。

例えば、上述した水晶振動子センサーと第1のポリマーを含有する第1溶液とを接触させて得られた水晶振動子センサーに対して上述したQCMによって測定した共振周波数をF1とし、続けてこの水晶振動子センサーと第2のポリマーを含有する第2溶液とを接触させて得られた水晶振動子センサーに対して測定した共振周波数をF2とし、さらにこの水晶振動子センサーと第3のポリマーを含有する第3溶液とを接触させて得られた水晶振動子センサーに対して測定した共振周波数をF3とする。このとき、良好な表面を形成しているコーティング層として、F2からF1を引いた値(F2−F1、共振周波数の増加幅)またはF3からF2を引いた値(F3−F2)が、1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましく、4000以上であることが最も好ましい。第1溶液または第2溶液、がポリ(メタ)アクリル酸またはポリエチレンイミンである場合、特に、上記の条件を満たすことが好ましい。最表面部分が表面の特性に大きな影響を与えると考えられるので、第3のポリマーが最表面である場合、F3−F2が、1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましく、4000以上であることが最も好ましい。

なお、上述した第1〜第3のポリマーに限らず、第1〜第nのポリマーを前記基材上に非共有結合的に適用する合計n個の工程を含むLbLコーティングであっても同様の効果を得ることができる。このとき、基材を、第1のポリマーを含有する第1溶液と接触させて、前記第1のポリマーを前記基材上に非共有結合的に適用する第1工程から該基材を第nのポリマーを含有する第n溶液と接触させて、前記第nのポリマーを前記基材上に非共有結合的に適用する第n工程(nは2以上の整数)まで、合計n個の工程を経て、LbLコーティングを基材に適用して医療デバイスを得る、医療デバイスの製造方法において、前記第1溶液〜第n溶液のいずれか一つの第(k−1)溶液(kは2以上n以下の整数)を、クオーツクリスタルマイクロバランス測定法(QCM)用の水晶振動子センサーに接触させ、その後速やかに水晶振動子センサーを純水で洗浄後、乾燥させて、前記QCMによって共振周波数を測定して測定値Fk−1を得、続けてこの水晶振動子センサーに第k溶液を接触させ、その後速やかに水晶振動子センサーを純水で洗浄後、乾燥させて、前記QCMによって共振周波数を測定して測定値Fkを得た際、FkからFk−1を引いた値(Fk−Fk−1)が、1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましく、4000以上であることが最も好ましい。後述の実施例では、(Fk−Fk−1)が4000以上6000以下の場合に特に良好な結果が示されている。また、最表面部分が表面の特性に大きな影響を与えると考えられるので、(Fn−Fn−1)が、1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましく、4000以上であることが最も好ましい。

Fk−Fk−1は30000以下であることが好ましく、20000以下であることがより好ましく、10000以下であることがさらに好ましい。

最表面部分が表面の特性に大きな影響を与えると考えられるので、FnからFn−1を引いた値(Fn−Fn−1)が、1500以上、より好ましくは2000以上、さらに好ましくは3000以上、最も好ましくは4000以上となる第n溶液が適用されることが好ましい。

LbLコーティングを医療デバイスに適用するためのコーティング溶液の組み合わせであって、基材上に第1のポリマーを非共有結合的に適用するための、前記第1のポリマーを含有するコーティング溶液を第1溶液とし、該基材上に第kのポリマーを非共有結合的に適用するための、前記第kのポリマーを含有するコーティング溶液を第k溶液(kは2以上n以下の整数、nは2以上の整数)とした、第1溶液〜第n溶液からなるコーティング溶液の組み合わせにおいて、いずれか一つのFk−Fk−1が、1500以上、より好ましくは2000以上、さらに好ましくは3000以上、最も好ましくは4000以上となることが好ましい。Fk−Fk−1は30000以下であることが好ましく、20000以下であることがより好ましく、10000以下であることがさらに好ましい。最表面部分が表面の特性に大きな影響を与えると考えられるので、コーティング液の組合せは、Fn−Fn−1が、1500以上、より好ましくは2000以上、さらに好ましくは3000以上、最も好ましくは4000以上となる第(n−1)溶液および第n溶液が適用されることが好ましい。コーティング液は、上述したような酸性ポリマーもしくは塩基性ポリマーの溶液、またはこれらの組合せであることが好ましい。コーティング層は、上述したような酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層であることが好ましい。さらに、そのポリマーを含有する溶液のポリマー含有濃度が高いことが好ましい。

また、水晶振動子センサーにLbLコーティングを適用した際に共振周波数が大きく増加することが、基材に良好な表面を形成する指標となることの機序は必ずしも明確ではないが、水晶振動子センサーにLbLコーティングを適用した際に共振周波数が大きく増加することが基材に良好な表面を形成する指標となることは、後述の実施例からも明らかなように検証された事実である。

次に、本発明の医療デバイスの製造方法について説明する。本発明の医療デバイスは、成型体(基材)の表面に、酸性ポリマー溶液と塩基性ポリマー溶液をそれぞれ1〜5回、より好ましくはそれぞれ1〜3回、さらに好ましくはそれぞれ1〜2回塗布してコーティング層を形成することにより得られる。酸性ポリマー溶液の塗布工程と塩基性ポリマー溶液の塗布工程の回数は異なっていてもよい。

発明者らは、本発明の医療デバイスの製造方法において、1種以上の酸性ポリマー溶液の塗布工程および1種以上の塩基性ポリマー溶液の塗布工程が合計2回または3回という極めて少ない回数で優れた濡れ性や易滑性を付与しうることを見出した。これは製造工程の短縮化という観点から、工業的に非常に重要な意味を持つ。その意味で、酸性ポリマー溶液の塗布工程および塩基性ポリマー溶液の塗布工程の合計は2回または3回が好ましく、2回が最も好ましい。

なお、発明者らは、本発明の医療デバイスにおいて、酸性ポリマー溶液の塗布工程または塩基性溶液の塗布工程のいずれか一方のみを1回施すだけでは、濡れ性や易滑性の発現がほとんど見られないことも確認している。

濡れ性、易滑性、および製造工程短縮の観点から、コーティング溶液の塗布は、下記の構成1〜4から選ばれたいずれかの構成で施されることが好ましい。下記の表記は、成型体表面に左から順に各塗布工程が施されることを表している。

構成1:塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布 構成2:酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布 構成3:塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布 構成4:酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布 これらの構成の中でも、構成4が、得られる医療デバイスが特に優れた濡れ性を示すためにより好ましい。

上記構成1〜構成4において、各塗布工程で使用する酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーのうちの少なくとも1種は、水酸基およびアミド基から選ばれた基を有するポリマーであることが好ましい。特に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーのうちの少なくとも1種が、水酸基を有するポリマーであることが好ましい。また、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーのうちの少なくとも2種は、水酸基およびアミド基から選ばれた基を有するポリマーであることがより好ましい。

また、上記構成1〜構成4において、1種以上の塩基性ポリマー溶液および/または1種以上の酸性ポリマー溶液を使用できる。例えば、構成4で最初に塗布される溶液と最後に塗布される溶液に使用する酸性ポリマー溶液は、同一種類および同濃度(もしくは異なる濃度)の酸性ポリマー溶液であってよく、あるいは異なる種類の酸性ポリマー溶液を使用してもよい。

酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液を塗布するにあたって、基材の表面は、未処理であっても、処理済みであってもよい。ここで基材の表面が処理済みであるとは、基材の表面を公知の手法によって表面処理または表面改質することをいう。表面処理または表面改質の好適な例としては、プラズマ処理、化学的改質、化学的官能化、およびプラズマコーティングなどである。

本発明の医療デバイスの製造方法の好ましい態様の1つは、下記工程1〜工程4をこの順に含むものである。 <工程1> 1分子あたり複数の重合性官能基を有するポリシロキサン化合物であって数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物である成分A、および、フルオロアルキル基を有する重合性モノマーである成分Bを含む混合物を重合し、成型体を得る工程。 <工程2> 成型体を酸性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該酸性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。 <工程3> 成型体を塩基性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該塩基性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。 <工程4> 成型体を酸性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該酸性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。

上記のように、成型体を酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液に順次接触させることにより、該成型体上に酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層を形成することができる。その後、余剰のポリマーを十分に洗浄除去することが好ましい。

該成型体を酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液に接触させる方法としては、浸漬法(ディップ法)、刷毛塗り法、スプレーコーティング法、スピンコート法、ダイコート法、スキージ法などの種々のコーティング手法を適用できる。

溶液の接触を浸漬法で行う場合、浸漬時間は、多くの因子に応じて変化させることができる。酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液への成型体の浸漬は、好ましくは、1〜30分間、より好ましくは2〜20分間、そして最も好ましくは1〜5分間の間行う。

酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液の濃度は、酸性ポリマーないし塩基性ポリマーの性質、所望のコーティング層の厚さ、およびその他の多数の因子に応じて変化させることができる。好ましい酸性ポリマーまたは塩基性ポリマーの濃度は、0.001質量%より大きく10質量%未満、より好ましくは0.6質量%より大きく5質量%未満、そして最も好ましくは1質量%より大きく3質量%未満である。

酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液のpHは、好ましくは2〜5、より好ましくは2.5〜4.5に維持することが好ましい。

余剰の酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの洗浄除去は、一般に清浄な水または有機溶媒を用いて、コーティング後の成型体をすすぐことによって行われる。すすぎは該成型体を水または有機溶媒に浸漬したり、水流や有機溶媒流にさらしたりすることで行うことが好ましい。すすぎは、1つの工程で完了させてもよいが、すすぎの工程を複数回行うほうが、効率的であることが認められた。2〜5の工程ですすぎを行うのが好ましい。すすぎ溶液へのそれぞれの浸漬には、1〜3分間を費やすのが好ましい。

すすぎ溶液としては純水も好ましいが、コーティング層の密着を高めるために、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5、そしてさらにより好ましくは2.5〜4.5のpHに緩衝された水溶液も好適に用いられる。

過剰のすすぎ溶液の乾燥または除去を行う工程を含んでも良い。成型体を大気雰囲気下に単に放置することによって、成型体はある程度乾燥させることができるが、緩やかな空気流を表面に送ることによって、乾燥を亢進することが好ましい。空気流の流速は、乾燥する材料の強度、および材料の機械的固定(fixturing)の関数として調節することができる。成型体を完全に乾燥してしまう必要はない。ここでは、成型体の乾燥よりはむしろ、成型体表面に密着した溶液の液滴を除去することが重要である。したがって、成型体表面上の水または溶液の膜が除去される程度にまで乾燥するだけでよく、その方が工程時間の短縮のつながるために好ましい。

酸性ポリマーと塩基性ポリマーとは交互に塗布することが好ましい。交互に塗布することで、どちらか一方のみでは得られない優れた濡れ性や易滑性、さらには優れた装用感を有する医療デバイスを得ることができる。

コーティング層は、非対称であることができる。ここで「非対称」とは、医療デバイスの第一の面と反対側の第二の面とで異なるコーティング層を有することをいう。ここで「異なるコーティング層」とは、第一の面に形成されたコーティング層と第二の面に形成されたコーティング層とが、異なる表面特性または機能性を有することをいう。

コーティング層の厚さは、塩化ナトリウムなどの一つまたはそれ以上の塩を酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液に加えることによって、調節することができる。好ましい塩濃度は、0.1〜2.0質量%である。塩の濃度が上昇するにつれて、高分子電解質は、より球状の立体構造をとる。しかし濃度が高くなりすぎると、高分子電解質は、成型体表面に、沈着するとしても良好には沈着しない。より好ましい塩濃度は、0.7〜1.3質量%である。

本発明の医療デバイスの製造方法の別の好ましい態様の1つは、さらに下記工程5を含むものである。 <工程5> 前記工程1〜4をこの順に含む方法で得た成型体に放射線を照射する工程。

放射線の照射は、成型体をコーティング液に浸漬した状態で行っても良いし、成型体をコーティング液から引き出して洗浄した後で行っても良い。また、成型体をコーティング液以外の液体に浸漬した状態で放射線の照射を行うことも好ましく行われる。この場合、照射線がより効率的に作用するために好ましい。この場合、コーティングした成型体を浸漬するために使用する液体のための溶媒は有機系、無機系の各種溶媒が適用可能であり特に制限はない。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノールなどの各種アルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラファインなどの各種脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶媒であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。これらのうち、最も好ましいのは水である。成型体を水系の液体に浸漬した状態で放射線の照射を行う場合、水系の液体としては、純水のほかに、生理食塩水、リン酸系の緩衝液(好ましくはpH7.1〜7.3)、ホウ酸系の緩衝液(好ましくはpH7.1〜7.3)が好適である。

成型体を容器に密閉した状態で放射線を照射すれば、成型体の滅菌を同時に行うことができるという利点がある。

放射線としては、好ましくはγ線を用いると良い。この場合、照射するγ線の線量は少なすぎると成型体とコーティング層の十分な結合が得られず、多すぎると成型体の物性低下を招くことから、0.1〜100kGyが好ましく、15〜50kGyがより好ましく、20〜40kGyが最も好ましい。これにより、コーティング層内の少なくとも一部およびコーティング層と成型体との間の少なくとも一部が架橋され、コーティング層の耐久性(例えば擦り洗い耐久性)を向上させることができる。

なお、本発明の医療デバイスは、低含水性ソフトコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレイ、角膜オンレイ、メガネレンズなどの眼用レンズとして有用である。中でも低含水性ソフトコンタクトレンズに特に好適である。また、本発明の医療デバイスの形状を変えることによって、上述した医療デバイスとして適用可能である。

以下、本発明に係る低含水性軟質眼用デバイスの実施の形態を説明する。本実施の形態は、弾性率が100kPa以上2000kPa以下、含水率が10質量%以下、引張伸度が50%以上3000%以下、ホウ酸緩衝液に対する動的接触角(前進)が80°以下である、眼に装用される低含水性軟質眼用デバイスであって、該低含水性軟質眼用デバイスの少なくとも一部に虹彩様のパターンが形成されている低含水性軟質眼用デバイスである。

また、本発明に係る低含水性軟質眼用デバイスの別の実施の形態は、低含水性軟質基材の表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が形成された低含水性軟質眼用デバイスであって、該低含水性軟質眼用デバイスの少なくとも一部に虹彩様のパターンが形成されている低含水性軟質眼用デバイスである。

ここで、低含水性とは含水率が10質量%以下であることを意味する。また、軟質とは引張弾性率が10000kPa以下であることを意味する。

虹彩パターンの形成箇所は、基材表面であってもよいし、基材の内部であってもよいし、コーティング層の内部であってもよい。換言すれば、虹彩パターンは、低含水性軟質眼用レンズの外表面に露出しない箇所に形成可能である。

ここで、従来のような含水性のレンズであって酸素透過性が低い眼用レンズに対して上述した虹彩パターンを適用した場合、虹彩パターンをプリント、または挟み込むことによって一段と酸素透過性が低くなる。酸素透過性の低いレンズは、長時間装用することで目が充血し、装用者に対して疲労感を与えてしまうおそれがある。一方、本発明に係る低含水性軟質眼用デバイスは、高い酸素透過性を有するため、虹彩パターンを付与した場合であっても高い酸素透過性を維持し、装用者に疲労感を与えないことはもちろん、角膜が深刻な酸素不足になることを防止するという効果を奏する。

また、本発明に係る低含水性軟質眼用デバイスは、低含水性であるため、含水性のレンズと比して装用時のレンズの眼の中での動きが小さい傾向があり、これにより、装用時の虹彩パターンのずれを防止し、美粧性に優れた眼用レンズとして使用することができる。なお、装用時のレンズの眼の中での動きが大きいと、装用者の虹彩と虹彩パターンがずれて、例えば、装用者が楕円様の虹彩を有するように見えたり、虹彩パターンと虹彩との間から白目部分が露出して、美粧性が損なわれたりするために好ましくない。 (実施の形態1) 本発明に係る低含水性軟質眼用デバイスの実施形態の一つである低含水性ソフトコンタクトレンズについて説明する。本実施の形態において、虹彩様のパターンは、眼の虹彩の表面を覆うことで虹彩を擬似的に着色するものである。

本実施の形態1にかかる低含水性軟質眼用レンズには、虹彩を模写したパターンである虹彩パターンが形成されている。

本実施の形態1にかかる低含水性軟質眼用レンズには、一例として図4に示すような虹彩パターンがプリントによって付与されている。虹彩パターンの付与はプリント以外の方法でも可能である。好ましい一例として、虹彩パターンを有するフィルム状物を低含水性軟質眼用レンズの基材上または基材中に付与する方法が挙げられる。図4に示す低含水性軟質眼用レンズ41の虹彩パターン410は、外周が虹彩と同等または虹彩より大きい径の略円環状をなし、中心に向かうに従って、光の透過性が上がるようなパターンである。虹彩パターン410は、眼にレンズを装用したときに、虹彩上に位置して虹彩の少なくとも一部を覆うことによって、虹彩部分を擬似的に着色する。したがって、虹彩パターン410を形成することによって、レンズ装用者の虹彩部分の色または大きさを擬似的に変えることができ、レンズ装用者に優れた美粧性を与えることができる。また、虹彩パターン410は、低含水性軟質眼用レンズ41自体の意匠性を向上させることができる。

なお、虹彩パターン410は、外周側の直径が9.0〜11.0mmであることが好ましい。また、装用者に良好な視覚を与えるという観点から、虹彩パターンは、レンズの中心部に光学的透明部を有することが好ましい。この光学的透明部は、レンズの中心を中心とする半径1mmの円の内側の全領域であることが好ましい。光学的透明部は、より好ましくはコンタクトレンズの中心を中心とする半径1.5mmの円の内側の全領域であり、さらに好ましくは半径2mmの円の内側の全領域、最も好ましくは半径2.5mmの円の内側の全領域である。光学的透明部は着色されていてもよいが、実質的に無色であることが好ましい。 (実施の形態2) 本発明に係る低含水性軟質眼用デバイスの他の実施形態の一つである低含水性ソフトコンタクトレンズについて説明する。本実施の形態において、虹彩様のパターンは、円環状をなす遮光性のパターンであって、前記パターンの中心に直径2.0mm以下の光学的瞳孔が形成されたものである。

図5は、本実施の形態2にかかる低含水性軟質眼用レンズの虹彩パターンの一例を示す模式図である。図5に示す低含水性軟質眼用レンズ42の虹彩パターン420は、円環状をなす遮光性のパターンであって、中心部に直径2.0mm以下となるような光学的瞳孔421(ピンホール)が形成されている。虹彩パターン420は、光学的瞳孔421のような絞り(孔)を設けることによって、遠視、近視、乱視、老視の区別なく、あらゆる距離の対象物を連続的に明視することができる。このため、レンズを替えることなく、鮮明なままの状態の対象物を眼の中心で追い続けることが可能となる。

光学的瞳孔421の形状は、鮮明な視覚を得るためには略円形が好ましく、真円が最も好ましい。なお、光学的瞳孔421の直径は、1.0〜1.6mmであることが好ましい。ここで、光学的瞳孔421の直径とは、光学的瞳孔の周(円形の場合は円周)上の任意の2点間を結ぶ線分の長さのうちの最大値である。

なお、虹彩パターン420は、外周側の直径が4.0〜9.0mmであることが好ましい。また、虹彩パターンの形成箇所は、基材表面であってもよいし、基材の内部であってもよいし、コーティング層の内部であってもよい。換言すれば、虹彩パターンは、低含水性軟質眼用レンズの外表面に露出しない箇所に形成可能である。

本発明の別の一態様である低含水性軟質コンタクトレンズには、眼に装用される低含水性軟質コンタクトレンズであって、前記眼との間の涙液の交換を促進する涙液交換促進パターンが形成されている。なお、涙液交換促進パターンは、基材に対して形成される。その後、涙液交換促進パターンが形成された基材に対して、上述したコーティング層が形成されることが好ましい。

また、基材に対して涙液交換促進パターンを形成し、上述したコーティング層(酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層)によってコーティングされた低含水性軟質コンタクトレンズは、装用時に角膜に対して接触する表面積を減少させるとともに、粘着性物質(ムチン)等を含む涙液の滞留を減少させることができるため、角膜への固着をより低減する効果が期待できる。また、良好な涙液交換を可能とすることにより眼の健全性を維持する効果が期待できる。

本発明において、涙液交換促進パターンは、装用時のコンタクトレンズの後面(眼球側)から前面(眼瞼側)に貫通する孔(以下、貫通孔)、溝、および、ひだ構造から選ばれた少なくとも1種が好適であり、これらの組合せからなるものであってもよい。また、貫通孔は、多角形、円形および楕円形から選ばれた形状が好ましく、円形および楕円形から選ばれた形状がより好ましい。

貫通孔の径は、小さすぎると涙液交換促進効果が小さくなり、また涙液中の成分が汚れとして付着したときに貫通孔が塞がれる可能性があり、好ましくない。貫通孔の径は0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましく、0.8mm以上が最も好ましい。貫通孔の径は、大きすぎると、コンタクトレンズが破損しやすくなる傾向があり好ましくない。貫通孔の径は5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましく、2mm以下が最も好ましい。ここで、貫通孔の径は、貫通孔の周(例えば円形の場合は円周)上の任意の2点間を結ぶ線分の長さのうちの最大値である。

貫通孔の数は、少なすぎると涙液交換促進効果が小さくなる傾向があり、好ましくない。貫通孔の数は、コンタクトレンズ1枚あたり、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、6個以上がさらに好ましく、8個以上が最も好ましい。貫通孔の数は、多すぎるとコンタクトレンズが破損しやすくなる傾向があり好ましくない。貫通孔の数1000個以下が好ましく、240個以下がより好ましく、120個以下がさらに好ましく、60個以下が最も好ましい。

前記の溝は、好ましくは成型体の後面に形成される。溝は、その一部が成型体の前面に貫通していても好ましい。溝は、好ましくは、コンタクトレンズの半径方向に沿って形成されることが好ましい。また、溝は複数配置されることが好ましいが、溝どうしが別の溝でつながったような構造であってもよい。

溝の幅は、小さすぎると涙液交換促進効果が小さくなる傾向があり、好ましくない。溝の幅は0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましく、0.8mm以上が最も好ましい。溝の幅は、大きすぎると、コンタクトレンズが破損しやすくなる傾向があり好ましくない。貫通孔の径は5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましく、2mm以下が最も好ましい。

溝の数(数えられる場合)は、少なすぎると涙液交換促進効果が小さくなる傾向があり、好ましくない。貫通孔の数は、コンタクトレンズ1枚あたり、2本以上が好ましく、3本以上がより好ましく、6本以上がさらに好ましく、8本以上が最も好ましい。溝の数(数えられる場合)は、多すぎるとコンタクトレンズが破損しやすくなる傾向があり好ましくない。溝の数1000本以下が好ましく、240本以下がより好ましく、120本以下がさらに好ましく、60本以下が最も好ましい。

なお、装用者に良好な視覚を与えるという観点から、涙液交換促進パターンは、低含水性軟質コンタクトレンズの中心部には形成されないことが好ましい。涙液交換促進パターンが形成されるべき領域は、好ましくはコンタクトレンズの中心を中心とする半径1mmの円の外側であり、より好ましくは同じく半径2mmの円の外側であり、さらに好ましくは同じく半径3mmの円の外側である。

また、涙液交換促進パターンを角膜の触覚の敏感な領域を避けて配置することにより、装用感の優れた低含水性軟質コンタクトレンズを得るという観点からは同じく半径3.5mmの円の外側が好ましく、同じく半径4mmの円の外側がより好ましく、同じく半径4.5mmの円の外側がさらに好ましい。

例えば、図6に示す低含水性軟質コンタクトレンズ51の涙液交換促進パターン510は、低含水性軟質コンタクトレンズ51の径方向の中央部と外縁との間に形成される複数の貫通孔511が設けられている。

上述した涙液交換促進パターン510の貫通孔511を介して低含水性軟質コンタクトレンズ51と眼との間の涙液交換を促進することによって、眼の健全性を維持することができる。また、涙液交換促進パターン510が形成された低含水性軟質コンタクトレンズ51は、涙液交換を促進できるため、優れた装用感を得ることができる。

図7は、本発明の実施の形態の変形例1にかかる低含水性軟質コンタクトレンズの涙液交換促進パターンの一例の模式図である。図7に示す低含水性軟質コンタクトレンズ52の涙液交換促進パターン520は、略楕円形状をなす複数の貫通孔521が、この楕円の長軸方向と低含水性軟質コンタクトレンズ52の径方向とが一致するように配列されて設けられる。

図8は、本発明の実施の形態の変形例2にかかる低含水性軟質コンタクトレンズの涙液交換促進パターンの一例の模式図である。図8に示す低含水性軟質コンタクトレンズ53の涙液交換促進パターン530は、略矩形をなす複数の溝531が、長軸の一方の端部が低含水性軟質コンタクトレンズ53の外縁に沿うとともに、長軸方向と低含水性軟質コンタクトレンズ3の径方向とが一致するように配列されて設けられる。

なお、上述した図6〜8に示す涙液交換促進パターン510〜530は、基材に対して形成される。その後、涙液交換促進パターンが形成された基材に対して、上述したコーティング層が形成される。また、基材に形成する涙液交換促進パターンは、上述した図6〜8に示す涙液交換促進パターン510〜530の組合せからなるものであってもよい。

本態様の低含水性軟質コンタクトレンズの製造方法の好ましい態様の1つ(態様P1)は、下記工程1〜工程3をこの順に含むものである。 <工程1> モノマーの混合物を重合し、涙液交換促進パターンを有するレンズ形状の成型体を得る工程。 <工程2> 成型体を塩基性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該塩基性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。 <工程3> 成型体を酸性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該酸性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。

上記のように、レンズ形状の成型体を酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液に順次接触させることにより、該成型体上に酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層を形成することができる。その後、余剰のポリマーを十分に洗浄除去することが好ましい。

工程1では、涙液交換促進パターンを与える形状のモールドを使用し、涙液交換促進パターンを有するレンズ形状の成型体を得ることが、好ましい。

本発明の低含水性軟質コンタクトレンズの製造方法の別の好ましい態様の1つ(態様P2)は、下記工程1〜工程4をこの順に含むものである。 <工程1> モノマーの混合物を重合し、レンズ形状の成型体を得る工程。 <工程2> 成型体に対して涙液交換促進パターンを形成する工程。 <工程3> 成型体を塩基性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該塩基性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。 <工程4> 成型体を酸性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該酸性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。

ここで、涙液交換促進パターンが貫通孔である場合、態様P2におけるレンズ形状の成型体に対して涙液交換促進パターンを形成する工程(工程2)では、成型体を成型する樹脂製モールドから分離する前に涙液交換促進パターンを形成することが好ましい。これにより、成型体が固定された状態で安定的に孔(涙液交換促進パターン)を穿つことができる。貫通孔の形成方法としては、ドリル、ポンチ、型抜き刃などで機械的に穿孔する方法、レーザーで穿孔する方法、および、化学薬品により穿孔する方法が適用できる。

以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。 <ホウ酸緩衝液> 本明細書においてホウ酸緩衝液とは、特表2004−517163号公報の実施例1中に記載の「塩溶液」である。具体的には塩化ナトリウム8.48 g、ホウ酸9.26g、ホウ酸ナトリウム(四ホウ酸ナトリウム十水和物)1.0 g、およびエチレンジアミン四酢酸0.10 gを純水に溶かして1000mLとした水溶液である。 <生理食塩水> 本明細書において生理食塩水とは、塩化ナトリウムを純水に溶かして0.9質量%とした水溶液のことを指す。 <湿潤状態> 本明細書において、湿潤状態とは、試料を室温(25℃)の純水あるいは所定の水溶液中に24時間以上浸漬した状態を意味する。湿潤状態での物性値の測定は、試料を純水あるいは所定の水溶液から取り出した後、可及的速やかに実施される。 <乾燥状態> 本明細書において、乾燥状態とは、湿潤状態の試料を40℃で16時間真空乾燥した状態を意味する。該真空乾燥における真空度は2hPa以下とする。乾燥状態での物性値の測定は、上記真空乾燥の後、可及的速やかに実施される。

<分析方法および評価方法> (1)分子量 GPC法により、以下の条件で基材に用いる各成分等のポリスチレン換算の質量平均分子量ならびに数平均分子量を測定した。 ポンプ 東ソー DP-8020 検出器 東ソー RI-8010 カラムオーブン 島津 CTO-6A オートサンプラ 東ソー AS-8010 カラム:東ソー TSKgel GMHHR-M(内径7.8mm×30cm、粒子径5μm)×2本 カラム温度:35℃ 移動相:クロロホルム 流速:1.0mL/分 サンプル濃度:0.4質量% 注入量:100μL 標準サンプル:ポリスチレン(分子量1010〜109万)。

(2)透明性 ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料を目視観察し、下記の基準で透明性を評価した。 A:濁りがなく透明; B:AとCの中間程度の白濁; C:白濁があり半透明; D:CとEの中間程度の白濁; E:白濁し透明性が全くない。

(3)含水率 コンタクトレンズ形状またはフィルム形状の試験片を使用した。試験片をホウ酸緩衝液に浸漬して室温で24時間以上おいて含水させた後、表面水分をワイピングクロス(日本製紙クレシア製”キムワイプ”(登録商標))で拭き取って質量(Ww)を測定した。次に、該試験片を真空乾燥器で40℃、16時間乾燥させ、質量(Wd)を測定した。その後、次式にて含水率を求めた。得られた値が1%未満の場合は、「1%未満」と表記した。 含水率(%)=100×(Ww−Wd)/Ww。

(4)水濡れ性 試験片を、室温でビーカー中のホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した。試験片とホウ酸緩衝液の入ったビーカーを超音波洗浄器にかけた(1分間)。試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、空中に表面(試験片がコンタクトレンズ形状の場合は直径方向)が垂直になるように保持した際の表面の様子を目視観察し、下記の基準で判定した。ここで直径とはコンタクトレンズの外縁部が形成する円の直径である。 A:表面の液膜が20秒以上保持する; B:表面の液膜が10秒以上20秒未満で切れる; C:表面の液膜が5秒以上10秒未満で切れる; D:表面の液膜が1秒以上5秒未満で切れる; E:表面の液膜が瞬時に切れる(1秒未満)。

(5)動的接触角測定 ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルにて測定した。動的接触角サンプルとして、フィルム状に成型したサンプルから切り出した5mm×10mm×0.1mm程度のサイズのフィルム状の試験片、またはコンタクトレンズ状サンプルから切り出した幅5mmの短冊状試験片を使用し、ホウ酸緩衝液に対する前進時の動的接触角を測定した。測定装置として、株式会社レスカ(RHESCA)製 動的濡れ性試験器 WET-6000を使用し、浸漬速度は0.1mm/sec、浸漬深さは7mmとした。

(6)引張弾性率、引張伸度(破断伸度) ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルを用いて測定した。コンタクトレンズ形状のサンプルから規定の打抜型を用いて幅(最小部分)5mm、長さ14mm、厚さ0.2mmの試験片を切り出した。該試験片を用い、オリエンテック社製のRTG−1210型試験機(ロードセルUR−10N−D型)を用いて引張試験を実施した。引張速度は100mm/分で、グリップ間の距離(初期)は5mmであった。また、フィルム形状のサンプルの場合は、5mm×20mm×0.1mm程度のサイズの試験片を用いて、同様の方法で測定した。

(7)易滑性 易滑性はホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプル(コンタクトレンズ形状またはフィルム形状)を人指で5回擦った時の感応評価で行った。 A:非常に優れた易滑性がある; B:AとCの中間程度の易滑性がある; C:中程度の易滑性がある; D:易滑性がほとんど無い(CとEの中間程度); E:易滑性が無い。

(8)ムチン付着 ムチンとしてCALBIOCHEM社の Mucin, Bovine Submaxillary Gland(カタログ番号499643)を使用した。コンタクトレンズ形状のサンプルを0.1%濃度のムチン水溶液に20時間37℃の条件で浸漬させた後、BCA(ビシンコニン酸)プロテインアッセイ法によってサンプルに付着したムチンの量を定量した。

(9)脂質付着 500mlのビーカーに攪拌子(36mm)を入れ、パルミチン酸メチル1.5gと純水500gを入れた。ウォーターバスの温度を37℃に設定し、前述のビーカーをウォーターバスの中央に置き、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。回転速度は600rpmとした。コンタクトレンズ形状のサンプルを1枚ずつレンズバスケットに入れ、前述のビーカー内に投入し、そのまま攪拌した。1時間後、攪拌を止め、レンズバスケット内のサンプルを40℃の水道水と家庭用液体洗剤(ライオン製“ママレモン(登録商標)”)でこすり洗いした。洗浄後のサンプルをホウ酸緩衝液の入ったスクリュー管内に入れ、氷浴に1時間浸漬した。スクリュー管を氷浴が取り出した後、にサンプルの白濁を目視観察し、下記の基準でサンプルへのパルミチン酸メチルの付着量を判定した。 A:白濁が無く透明である; B:白濁した部分がわずかにある; C:白濁した部分が相当程度ある; D:大部分が白濁している; E:全体が白濁している。

(10)人工涙液浸漬試験 人工涙液として、オレイン酸プロピルエステルの代わりにオレイン酸を使用する以外は国際公開第2008/127299号パンフレット、32頁、5〜36行に記載の方法にしたがって調製した涙様液(TLF)緩衝液を使用した。培養用マルチプレート(24ウェル型、材質ポリスチレン、放射線滅菌済み)の1ウェル中に人工涙液2mLを入れ、サンプル(コンタクトレンズ形状)1枚を浸漬した。100rpm、37℃で24時間振とうした。その後サンプルを取り出し、リン酸緩衝塩溶液(PBS;pH約7.2)で軽く洗浄した後、人工涙液2mLを入れ替えたウェル中にサンプルを浸漬した。さらに、100rpm、37℃で24時間振とうした後、PBSで軽く洗浄し、目視でサンプルの白濁度合いを評価することで付着物量を観察した。評価は下記基準で行った。 A:白濁が観察されない; B:白濁した部分がわずかにある(面積で1割未満); C:白濁した部分が相当程度ある(面積で1割〜5割); D:大部分(面積で5割〜10割)が白濁しているが裏側が透けて見える; E:全体が濃く白濁しており、裏側が透けて見えにくい。

(11)着色度 ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルの着色度(青色の濃さ)を目視観察し、下記の基準で評価した。 A:一見して着色が認められる; B:AとCの中間程度の着色度; C:わずかに着色が認められる; D:CとDの中間程度の着色度; E:着色が認められない。

(12)表面摩擦係数 コンタクトレンズ形状のサンプルまたは直径14mmの円状に切り取ったフィルム形状のサンプルを用いて測定を実施した。測定装置としては、摩擦感テスターKES−SE(カトーテック株式会社)を使用した。図1は、表面摩擦係数を測定する装置を示す模式図である。図2は、図1に示すA方向からみた測定治具11および摩擦子20の要部の構成を示す模式図である。図3は、測定治具11および摩擦子20の要部の構成を示す部分断面図である。まず、装置1の試料台10にテフロン(登録商標)製の板(65mm×100mm×1.0mm、図3では省略)を水平に置き、その上に表面が平滑な石英ガラス板10a(55mm×90mm×1.0mm)を水平に置き固定した。テフロン(登録商標)製の板と石英ガラス板は十分に平面性の高いものを用いた。ここで、石英ガラス板10aは、測定毎に表面を“キムワイプ”で拭き取って清浄で乾いた状態とする。測定では、図2,図3に示す測定治具11(重さ62g=W)の摩擦子20にサンプルSを3枚取り付けて測定を行った。このとき、サンプルSは、摩擦子20の取付ホルダ21の先端に載置された後、パッキン22によって押えられ、ナット23で固定される。サンプルSが摩擦子20の端部から突出して固定された状態で、3枚のサンプルの各々の中央部に、下記条件Aにおいてはホウ酸緩衝液を、下記条件Bにおいては生理食塩水を、各0.1mL垂らした。その後、速やかに測定治具11を装置1に取り付け、3枚のサンプルSがすべて石英ガラス板10aと接触した状態で、試料台10を水平方向(矢印Y)に1.0mm/秒の速度で移動させたときの水平方向の応力(F)が、摩擦検出部12が検出し、力計13によって測定される。表面摩擦係数(MIU)は次式で求めた。 MIU=F/W 移動距離は30mmとし、MIUの測定は0.1秒毎に実施した。

表面摩擦係数は、移動距離5〜25mmにおけるMIUが安定した区間(最低5mm)におけるMIUの平均値(区間内の各時刻におけるMIUの合計をMIUのデータ数で除した値)とした。このときの条件Aにおける表面摩擦係数をMIUa、条件Bにおける表面摩擦係数をMIUbとした。 条件A:ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルを用いて測定を実施した。 条件B:生理食塩水による湿潤状態のサンプルを用いて測定を実施した。

なお、図3中、測定治具11の摩擦子20を支持する支持板の厚みをd1とする。また、摩擦子20において、測定治具11からの突出長さをd2とし、取付ホルダ21のレンズと接触する部分の直径をd3とし、ナット23の外周の直径をd4としたとき、d1=1.5(mm)、d2=22.4(mm)、d3=14(mm)、d4=18(mm)である。

(13)表面摩擦係数比 前記(12)に記載の方法で“アキュビュー(登録商標)オアシス”(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)の条件Aでの表面摩擦係数(MIUo)を測定した。表面摩擦係数比QaとQbは以下の式で求めた。 Qa=MIUa/MIUo Qb=MIUb/MIUo。

(14)煮沸耐久性 密閉バイアル瓶中にサンプルを清浄なホウ酸緩衝液に浸漬した状態で入れた。121℃、30分間、オートクレーブ滅菌を行った後、室温まで冷却した。これを1サイクルとして、5サイクルを繰り返した。その後、前記水濡れ性評価を行った。

(15)擦り洗い耐久性 A.手のひらの中央に窪みを作ってそこにホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプル(コンタクトレンズ形状)を置いた。そこに洗浄液(日本アルコン、“オプティフリー(登録商標)”)を加えて、もう一方の手の人差し指の腹で表裏10回ずつ擦った後、清浄な“オプティフリー(登録商標)”の入ったスクリュー管に入れ4時間以上静置した。以上の操作を1サイクルとして、15サイクル繰り返した。その後、サンプルを純水で洗浄し、ホウ酸緩衝液中に浸漬した。その後、前記水濡れ性評価を行った。

B.手のひらの中央に窪みを作ってそこにホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプル(コンタクトレンズ形状)を置き、そこに洗浄液(ボシュロム、“レニュー(登録商標)”)を加えて、もう一方の手の人差し指の腹で表裏10回ずつ擦った。その後、さらに親指と人差し指でサンプルを挟み洗浄液をサンプルにかけながら両面を20回擦った。擦り洗い後のサンプルをホウ酸緩衝液中に浸漬した。その後、上述の易滑性評価を行った。他の評価法と区別する必要がある場合、この評価方法を「擦り洗い耐久性−RN」と表記した。 (16)装用感 ホウ酸緩衝液による湿潤状態のコンタクトレンズ形状のサンプルを、2名の被験者が6時間装用した。下記の基準で評価した。乾燥感には乾燥に伴う異物感(いわゆるゴロゴロ感)も含めた。 A:2名とも乾燥感を感じなかった; B:1名のみが乾燥感を感じた; C:2名とも乾燥感を感じた; D:1名が乾燥感もしくは眼への貼り付き感を強く感じたので装用中止した; E:2名が乾燥感もしくは眼への貼り付き感を強く感じたので装用中止した。

(17)酸素透過係数 フィルム形状のサンプル(20mm×20mm×0.1mm)を2枚重ねるか、あるいはフィルム形状のサンプル(20mm×20mm×0.2mm)を測定に用いた。酸素透過率測定装置OX−TRAN2/21形(株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて酸素透過係数測定を行った。キャリアガスとして窒素98%/水素2%の混合ガスを用い、測定ガスとして窒素79.3%/酸素20.7%の混合ガスを用いた。また、ガスの加湿は行わなかった。

(18)クオーツクリスタルマイクロバランス測定法(QCM) 水晶振動子バイオセンシングシステムQCM934(セイコー・イージーアンドジー株式会社)およびQCM測定ソフトウエアWinQCM(Ver1.05、セイコー・イージーアンドジー株式会社)により測定を行った。水晶振動子センサーは、QA−A9M−AU(E)(セイコー・イージーアンドジー株式会社)を用いた。 QA−A9M−AU(E)仕様 ・共振周波数:9MHz ・カットタイプ:ATカット ・電極材料:金 ・電極厚さ:下地チタン約100nmの上に電極材料約300nmをスパッタにより製膜 ・電極直径:5mmφ ・形状:角型7.9mm×7.9mm QCMは、室温(約25℃)にて、基本周波数27MHz(QCM測定ソフトウエアへの入力値は26.95MHz)で測定した。

(19)装用感 ホウ酸緩衝液による湿潤状態のコンタクトレンズ形状のサンプルを、2名の被験者が6時間装用した。下記の基準で評価した。乾燥感には乾燥に伴う異物感(いわゆるゴロゴロ感)も含めた。 A:2名とも乾燥感を感じなかった; B:1名のみが乾燥感を感じた; C:2名とも乾燥感を感じた; D:1名が乾燥感もしくは眼への貼り付き感を強く感じたので装用中止した; E:2名が乾燥感もしくは眼への貼り付き感を強く感じたので装用中止した。

(20)涙液動態 被験者1名がコンタクトレンズを装用した。フローレス試験紙(昭和薬品化工株式会社製)で涙液を染色し、スリットランプSL−203型(製造元株式会社オーヒラ)で観察しながら、装用したコンタクトレンズ表面を綿棒で軽く押すことをゆっくり数回繰り返した。この際、涙液交換促進パターンによる涙液交換(涙液の流れ)が確認できた場合はA、できない場合はBと表記した。Aであれば装用時に眼瞼からの圧力を受けることで涙液が交換すると考えられる。

(参考例1)酸型UniBlue Aの調製 50mLスクリュー瓶に20g純水を入れた。UniBlue A(品番298409、シグマアルドリッチ)を0.5g加え、37℃のインキュベータ中で溶解させた。溶解後、1N塩酸を4g添加し、pH試験紙でpH約1〜2を確認した。酢酸エチルを24g添加し、軽く攪拌した。100mLナスフラスコに移し、静置した。UniBlue Aが酢酸エチル側に移るので下層の水層を捨てた。酢酸エチル層を100mLナスフラスコに移し、20℃のエバポレータで蒸発させた。その後、真空乾燥器で40℃、16時間乾燥させ、酸型UniBlue A[推定構造式(M1)]を得た。

(参考例2)基材Aおよび基材AFの作成 成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、JNC、式(M2)の化合物、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(48質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業)(45質量部)、成分Cとして片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM0725、JNC、式(M3)の化合物、質量平均分子量13.3kD、数平均分子量12.8kD)(2質量部)、成分Cとして2−エチルヘキシルアクリレート(3質量部)、成分Cとしてジメチルアミノエチルアクリレート(1質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1質量部)、成分Cとして酸型UniBlue A(参考例1)(0.04質量部)、重合開始剤“イルガキュア(登録商標)”819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)およびt−アミルアルコール(5質量部)を混合し撹拌した。これをメンブレンフィルター(0.45μm)でろ過して不溶分を除いてモノマー混合物を得た。このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した。窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ベースカーブ側ポリプロピレン、フロントカーブ側ゼオノア)製のコンタクトレンズ用モールドにモノマー混合物を注入し、蛍光ランプ(東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(1.71mW/cm2、20分間)して重合した。重合後に、モールドごとイソプロピルアルコール中に浸漬して、モールドからコンタクトレンズ形状の成型体を剥離した。得られた成型体を、大過剰量のイソプロピルアルコール中に60℃、2時間浸漬した。さらに、得られた成型体を、清浄なイソプロピルアルコール中に室温で1分間浸漬した後、成型体を取り出し、室温で12時間以上風乾した。これを基材Aとした。なお、基材Aは、縁部の直径約13mm、中心部厚み約0.07mmである。また、モールドとして2枚のガラス板とガスケットを使用して同様の操作を行い、30mm×30mm×0.1mmのフィルム状サンプルを得た。これを基材AFとした。

(参考例3)基材Bの作成 成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、JNC、式(M2)の化合物、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(48質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業)(48.5質量部)、成分Cとしてメチル(メタ)アクリレート(0.5質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1質量部)、重合開始剤“イルガキュア(登録商標)”819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)およびt−アミルアルコール(5質量部)を混合し撹拌した。その後、参考例2と同様の操作を行い、レンズを作製した。これを基材Bとした。なお、基材Bは、縁部の直径約13mm、中心部厚み約0.07mmである。

(参考例4)基材Cの作成 式(M4)で表されるシリコーンモノマー(13.4質量部)、N,N−ジメチルアクリルアミド(37.0質量部)、式(M5)で表されるシリコーンモノマー(36.6質量部)、光開始剤イルガキュア1850(1.26質量部)、紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1.26質量部)メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(9.2質量部)、トリエチレングリコールジメタクリレート(1.26質量部)、UniBlue A(品番298409、シグマアルドリッチ、式(M6)の構造、0.02質量部)、テトラヒドロリナロール(23.9質量部)を混合し撹拌した。これをメンブレンフィルター(0.45μm)でろ過して不溶分を除いてモノマー混合物を得た。このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した後、窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ベースカーブ側ポリプロピレン、フロントカーブ側ゼオノア)製のコンタクトレンズ用モールドにこのモノマー混合物を注入し、蛍光ランプ(東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(1.71mW/cm2、20分間)して重合した。重合後、モールドごと60質量%イソプロピルアルコール水溶液中に浸漬して、モールドからコンタクトレンズ形状の成型体を剥離した。得られた成型体を、大過剰量の80質量%イソプロピルアルコール水溶液に60℃、2時間浸漬した。さらに、成型体を大過剰量の50質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の25質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の純水に室温、30分間浸漬した。これを基材Cとした。なお、基材Cは、縁部の直径約14mm、中心部厚み約0.07mmである。

(コーティング用ポリマーの合成) 実施例においてコーティングに供した共重合体の合成例を示すが、本合成例において各共重合体の分子量は以下に示す条件で測定し、ポリエチレンオキシド換算の分子量を求めた。 装置:島津製作所製 Prominence GPCシステム ポンプ:LC−20AD オートサンプラ:SIL−20AHT カラムオーブン:CTO−20A 検出器:RID−10A カラム:東ソー社製GMPWXL(内径7.8mm×30cm、粒子径13μm) 溶媒:水/メタノール=1/1(0.1N硝酸リチウム添加) 流速:0.5mL/分 測定時間:30分 サンプル濃度:0.1質量% 注入量:100μL 標準サンプル:Agilent社製ポリエチレンオキシド標準サンプル(0.1kD〜1258kD)。

(合成例1)

500mL三口フラスコにN−ビニルピロリドン(NVP、90.02g、0.81mol)、アクリル酸(6.49g、0.09mol)、ジメチルスルホキシド(386.8g)、重合開始剤VA−061(和光純薬、0.1408g、0.562mmol)、2−メルカプトエタノール(2−ME、43.8μL、0.63mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液を室温まで冷却し、水100mLを加えた後、アセトン500mL中に注ぎ入れて一晩静置した。その後、アセトンをさらに200mL、ヘキサンを100mL加えた後、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分をアセトン/水=500mL/100mLで7回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量は、Mn:35kD、Mw:130kD(Mw/Mn=3.8)であった。

(合成例2)

500mL三口フラスコにN,N−ジメチルアクリルアミド(59.50g、0.600mol)、アクリル酸(21.62g、0.300mol)、純水(325.20g)、重合開始剤VA−061(和光純薬、0.1408g、0.562mmol)、2−メルカプトエタノール(43.8μL、0.63mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液をエバポレータで400gまで濃縮し、2−プロパノール/n−ヘキサン=500mL/500mL中に注ぎ入れて静置後、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分を2−プロパノール/n−ヘキサン=250mL/250mLで3回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量は、Mn:55kD、Mw:192kD(Mw/Mn=3.5)でZあった。

(合成例3)

300mL三口フラスコに2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、10.3g、0.09mol)、アクリル酸(AA、2.2g、0.03mol)、ジメチルスルホキシド(49.8g)、重合開始剤VA−061(和光純薬、0.009g、0.038mmol)、2−メルカプトエタノール(2−ME、7.8μL、0.111mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、60℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、4.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液を室温まで冷却し、エタノール20mLを加えた後、水500mL中に注ぎ入れて一晩静置した。その後、上澄み液を捨て、得られた固形分を水500mLでさらに2回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量は、Mn:50kD、Mw:96kD(Mw/Mn=1.9)であった。

(参考例5)コーティング溶液の調製 以下、純水とは逆浸透膜で濾過して精製した水を表す。

ポリエチレンイミン(P3143、シグマアルドリッチ、分子量75万)を純水に溶解して1.1質量%水溶液とした。

ポリアクリル酸(169−18591、和光純薬工業、分子量25万)を純水に溶解して1.2質量%水溶液とした。

合成例1で得られたCPVPAを純水に溶解して1.1質量%水溶液とした。

合成例2で得られたCPDAを純水に溶解して1.1質量%水溶液とした。

合成例3で得られたCPHAを純水に溶解して0.01質量%水溶液とした。

ポリアクリル酸水溶液(シグマアルドリッチ、カタログ番号52392−5、分子量10万)を純水で希釈して0.001Mとし、その後pHが約2.5になるように1M塩酸を加えて調整した。ポリアクリル酸の濃度は、繰返し単位(アクリル酸)に基づいて計算した。

ポリアクリル酸水溶液(シグマアルドリッチ、カタログ番号52392−5、分子量10万)を純水で希釈して0.0001Mとし、その後pHが約2.5になるように1M塩酸を加えて調整した。ポリアクリル酸の濃度は、繰返し単位(アクリル酸)に基づいて計算した。

ポリ(塩酸アリルアミン)(シグマアルドリッチ、カタログ番号28322−3、分子量5.6万)を純水に溶解して0.0001Mとし、その後pHが約2.5になるように1M塩酸を加えて調整した。ポリ(塩酸アリルアミン)の濃度は、繰返し単位(塩酸アリルアミン)に基づいて計算した。

CPDA溶液を純水で希釈して0.01Mとし、その後pHが約2.5になるように1M塩酸を加えて調整した。CPDAの濃度は、繰返し単位のモル平均分子量に基づいて計算した。

CPDA溶液を純水で希釈して0.0001Mとし、その後pHが約2.5になるように1M塩酸を加えて調整した。CPDAの濃度は、繰返し単位のモル平均分子量に基づいて計算した。

氷酢酸を純水に溶解して1.1質量%水溶液とした。

合成例2で得られたCPDAを純水に溶解して1質量%水溶液とした。

(実施例1) 基材A(参考例2)を第1溶液(PAA溶液)に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に第2溶液(PEI溶液)に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に第3溶液(PAA溶液)に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。コーティングされた基材Aを、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行って低含水性ソフトコンタクトレンズを得た。得られた低含水性ソフトコンタクトレンズの評価結果を表1に示した。

(実施例2〜8) 表1中に示した基材を、表1中に示した第1溶液(PAA溶液)に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に該基材を表1中に示した第2溶液(PEI溶液)に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に該基材を表1中に示した第3溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。コーティングされた基材を、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行って低含水性ソフトコンタクトレンズを得た。得られた低含水性ソフトコンタクトレンズの評価結果を表1に示した。なお、第3溶液は、上述したPAA溶液,CPVPA溶液,CPDA溶液,CPHA溶液のうちのいずれかから選択される。

(実施例9) 基材A(参考例2)に対し、特表2005−538418号公報の実施例4に記載のコーティングEを施した。コーティングEはポリアクリル酸をPAA、ポリ(塩酸アリルアミン)をPAHと表記するとPAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAAの順にコーティングを行うものである。ただし、PAA溶液(PAA1溶液、0.01M,pH2.5)の代わりにCPDA1溶液(0.01M,pH2.5)およびCPDA2溶液(0.0001M,pH2.5)を用いた。すなわち、CPDA/PAH/CPDA/PAH/CPDA/PAH/CPDA/PAH/CPDAの順にコーティングを行った。具体的には、(a)基材AをCPDA1溶液(0.01M,pH2.5)に30分間浸漬して最も内部側の層として形成する。その後、(b)得られた基材Aに対し、すすぎを行わずに、PAH1溶液(0.0001M,pH2.5)に5分間浸漬する。さらに、(c)得られた基材Aに対し、すすぎを行わずに、CPDA2溶液(0.0001M,pH2.5)に5分間浸漬する。(d)得られる基材Aに対し、工程(b)および(c)をさらに3回繰り返してコーティングEによってコーティングされた基材Aを得る。このコーティングEによってコーティングされた基材Aを、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行って低含水性ソフトコンタクトレンズを得た。得られた低含水性ソフトコンタクトレンズの評価結果を表1に示した。

(実施例10) 基材B(参考例3)に対し、特表2005−538418号公報の実施例4に記載のコーティングEを施した。ただし、PAA溶液(PAA1溶液、0.01M,pH2.5)の代わりにCPDA1溶液(0.01M,pH2.5)およびCPDA2溶液(0.0001M,pH2.5)を用いた。すなわち、CPDA/PAH/CPDA/PAH/CPDA/PAH/CPDA/PAH/CPDAの順にコーティングを行った。具体的には、(a)基材AをCPDA1溶液(0.01M,pH2.5)に30分間浸漬して最も内部側の層として形成する。その後、(b)得られた基材Aに対し、すすぎを行わずに、PAH1溶液(0.0001M,pH2.5)に5分間浸漬する。さらに、(c)得られた基材Aに対し、すすぎを行わずに、CPDA2溶液(0.0001M,pH2.5)に5分間浸漬する。(d)得られる基材Aに対し、工程(b)および(c)をさらに3回繰り返してコーティングEによってコーティングされた基材Aを得る。このコーティングEによってコーティングされた基材Aを、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行って低含水性ソフトコンタクトレンズを得た。得られた低含水性ソフトコンタクトレンズの評価結果を表2に示した。

(実施例11) 基材AF(参考例2)を第1溶液(PAA溶液)に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に第2溶液(PEI溶液)に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に第3溶液(CPDA溶液)に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。コーティングされた基材を、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行って医療デバイスを得た。得られた医療デバイスの評価結果を表2に示した。

(比較例1) 基材A(参考例2)に対し、特表2005−538418号公報の実施例4に記載のコーティングCを施した。コーティングCはポリアクリル酸をPAA、ポリ(塩酸アリルアミン)をPAHと表記するとPAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAAの順にコーティングを行うものである。具体的には、(a)基材AをPAA2溶液(0.0001M,pH2.5)に30分間浸漬して最も内部側の層として形成する。その後、(b)得られた基材Aに対し、すすぎを行わずに、PAH1溶液(0.0001M,pH2.5)に5分間浸漬する。さらに、(c)得られた基材Aに対し、すすぎを行わずに、PAA2溶液(0.0001M,pH2.5)に5分間浸漬する。(d)得られる基材Aに対し、工程(b)および(c)をさらに3回繰り返してコーティングCによってコーティングされた基材Aを得る。このコーティングCによってコーティングされた基材Aを、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行って低含水性ソフトコンタクトレンズを得た。得られた低含水性ソフトコンタクトレンズの評価結果を表2に示した。

(比較例2) 比較例1と同様の手順で基材A(参考例2)に対し、特表2005−538418号公報の実施例4に記載のコーティングCを施した。ただし最終層のコーティングはPAA2溶液(0.0001M,pH2.5)の代わりにCPDA2溶液(0.0001M,pH2.5)を用いた。すなわちPAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/CPDAの順にコーティングを行った。得られた基材を、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行って低含水性ソフトコンタクトレンズを得た。得られた低含水性ソフトコンタクトレンズの評価結果を表2に示した。

(参考例12) 比較例1と同様の手順で基材A(参考例2)に対し、特表2005−538418号公報の実施例4に記載のコーティングCを施した。ただしPAA2溶液(0.0001M,pH2.5)の代わりにCPDA2)溶液(0.0001M,pH2.5)を用いた。すなわちCPDA/PAH/CPDA/PAH/CPDA/PAH/CPDA/PAH/CPDAの順にコーティングを行った。得られた基材を、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行って低含水性ソフトコンタクトレンズを得た。得られた低含水性ソフトコンタクトレンズの評価結果を表2に示した。

(比較例3) 基材A(参考例2)に対し、特表2005−538418号公報の実施例4に記載のコーティングEを施した。コーティングEはポリアクリル酸をPAA、ポリ(塩酸アリルアミン)をPAHと表記するとPAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAAの順にコーティングを行うものである。具体的には、(a)基材AをPAA1溶液(0.01M,pH2.5)に30分間浸漬して最も内部側の層として形成する。その後、(b)得られた基材Aに対し、すすぎを行わずに、PAH1溶液(0.0001M,pH2.5)に5分間浸漬する。さらに、(c)得られた基材Aに対し、すすぎを行わずに、PAA2溶液(0.0001M,pH2.5)に5分間浸漬する。(d)得られる基材Aに対し、工程(b)および(c)をさらに3回繰り返してコーティングEによってコーティングされた基材Aを得る。このコーティングEによってコーティングされた基材Aを、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行って低含水性ソフトコンタクトレンズを得た。得られた低含水性ソフトコンタクトレンズの評価結果を表2に示した。

(比較例4) 参考例12と同様の手順で基材A(参考例2)に対し、特表2005−538418号公報の実施例4に記載のコーティングEを施した。ただし最終層のコーティングはPAA2溶液(0.0001M,pH2.5)の代わりにCPDA2溶液(0.0001M,pH2.5)を用いた。すなわちPAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/CPDAの順にコーティングを行った。得られた基材を、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行って低含水性ソフトコンタクトレンズを得た。得られた低含水性ソフトコンタクトレンズの評価結果を表2に示した。

(比較例5) 市販シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズ製品“アキュビュー(登録商標)オアシス”(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)の評価を行った。評価結果を表3に示した。

(比較例6) 基材C(参考例4)に対し、第1溶液(PAA溶液)に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に該基材を第2溶液(PEI溶液)に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に該基材を第3溶液(CPDA溶液)に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。得られた基材を、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行ってソフトコンタクトレンズを得た。得られたシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズの評価結果を表3に示した。

(比較例7) 基材C(参考例4)に対し、特表2005−538418号公報の実施例4に記載のコーティングEを施した。コーティングEはポリアクリル酸をPAA、ポリ(塩酸アリルアミン)をPAHと表記するとPAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAAの順にコーティングを行うものである。具体的には、(a)基材BをPAA1溶液(0.01M,pH2.5)に30分間浸漬して最も内部側の層として形成する。その後、(b)得られた基材Cに対し、すすぎを行わずに、PAH1溶液(0.0001M,pH2.5)に5分間浸漬する。さらに、(c)得られた基材Cに対し、すすぎを行わずに、PAA2溶液(0.0001M,pH2.5)に5分間浸漬する。(d)得られる基材Cに対し、工程(b)および(c)をさらに3回繰り返してコーティングEによってコーティングされた基材Cを得る。このコーティングEによってコーティングされた基材Cを、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行ってソフトコンタクトレンズを得た。得られたシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズの評価結果を表3に示した。

(比較例8) 比較例1と同様の手順で基材AF(参考例2)に対し、特表2005−538418号公報の実施例4に記載のコーティングCを施した。すなわちPAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAA/PAH/PAAの順にコーティングを行った。得られた基材を、ホウ酸緩衝液で満たしたガラス瓶に入れて密封し、オートクレーブ処理(121℃、30分)を行って医療デバイスを得た。得られた医療デバイスの評価結果を表3に示した。

(実施例12) 水晶振動子センサー(共振周波数9MHz、ATカット、金電極)をPAA溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴(各100mL)にそれぞれ1分間浸漬し、乾燥窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、QCM(基本周波数27MHz、室温(約25℃))によって共振周波数(F1)を測定した。次に該水晶振動子センサーをPEI溶液に30分間浸漬した後、(各100mL)にそれぞれ1分間浸漬し、乾燥窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、QCM(基本周波数27MHz、室温(約25℃))によって共振周波数(F2)を測定した。次に該水晶振動子センサーをPAA溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴(各100mL)にそれぞれ1分間浸漬し、乾燥窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、QCM(基本周波数27MHz、室温(約25℃))によって共振周波数(F3)を測定した。測定結果を表4に示した。

(実施例13〜15) 表4中に示した第1溶液〜第3溶液を用いて、実施例12と同様にして共振周波数F1〜F3を測定した。実施例13〜15それぞれの測定結果を表4に示した。

(比較例9) 表4中に示すような特表2005−538418号公報の実施例4のコーティングCに準じた方法を実施した。具体的には、水晶振動子センサー(共振周波数9MHz、ATカット、金電極)をPAA2溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴(各100mL)にそれぞれ1分間浸漬し、乾燥窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、QCM(基本周波数27MHz、室温(約25℃))によって共振周波数(F1)を測定した。次に該水晶振動子センサーをPAH1溶液に5分間浸漬した後、(各100mL)にそれぞれ1分間浸漬し、乾燥窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、QCM(基本周波数27MHz、室温(約25℃))によって共振周波数(F2)を測定した。次に該水晶振動子センサーをPAA2溶液に5分間浸漬した後、3つの純水浴(各100mL)にそれぞれ1分間浸漬し、乾燥窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、QCM(基本周波数27MHz、室温(約25℃))によって共振周波数(F3)を測定した。以下同様に表4中に記載の第4溶液〜第9溶液に5分間浸漬した後、純水で洗浄、乾燥窒素ガスによる乾燥後、共振周波数F4〜F9を測定した。測定結果を表4に示した。

(比較例10) 比較例8と同様に、特表2005−538418号公報の実施例4に記載のコーティングCに準じた方法を実施した。表4中に示した第1溶液〜第9溶液を用いて、比較例9と同様にして共振周波数F1〜F9を測定した。測定結果を表4に示した。

(比較例11) 比較例8と同様に、特表2005−538418号公報の実施例4に記載のコーティングEに準じた方法を実施した。表4中に示した第1溶液〜第9溶液を用いて、比較例9と同様にして共振周波数F1〜F9を測定した。測定結果を表4に示した。

(参考例13) 表4中に示した第1溶液〜第3溶液を用いて、実施例12と同様にして共振周波数F1〜F3を測定した。測定結果を表4に示した。

(参考例6) 成分Aとして下記式(M2)

で表される両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、JNC、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(50質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業)(46質量部)、成分Cとしてメチルメタクリレート(3質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1質量部)、成分Cとして重合開始剤“イルガキュア(登録商標)”819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)およびt−アミルアルコール(10質量部)を混合して撹拌し、均一で透明なモノマー混合物を得た。

このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した。その後、窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ4−メチルペンテン−1)製のコンタクトレンズ用フロントカーブ(FC)モールドに、前記モノマー混合物を注入し、そこに遮光部(直径8.0mm)と、該遮光部本体に開口部(直径1.5mm)を有する黒色のポリエチレンテレフタレートフィルム製遮光材料を入れた。その上にさらにモノマー混合物を加え、ピンセットで遮光材料をモールド中央に調節した。

ここで、ベースカーブ(BC)モールドを載せ、遮光材料がモールド中央からずれた際には、BCモールドを回転させて調整した。蛍光ランプ(東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(8000ルクス、20分間)して重合した。モールドを裏返して、さらに20分間光照射して重合した。重合後、治具を用いてモールドを外し、モールドを100質量%イソプロピルアルコール水溶液中に浸漬して、60℃に加温した。30分後、モールドからコンタクトレンズ形状の成型体を剥がした。得られた成型体を、大過剰量の100質量%イソプロピルアルコール水溶液に60℃、2時間浸漬し、抽出した。抽出後、キムワイプ上にレンズを置き、乾燥した後、トレイに移した。得られた成型体は、縁部の直径約14mm、中心部厚み約0.07mmであった。

(参考例7) 成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、チッソ、前述の式(M2)の化合物、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(49質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業)(45質量部)、成分Cとして2−エチルヘキシルアクリレート(5質量部)、成分CとしてN,N−ジメチルアクリルアミド(1質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1質量部)、成分Cとして重合性基を有する着色剤[(Uniblue A、シグマアルドリッチ、式(M3)](0.1質量部)、重合開始剤“イルガキュア(登録商標)”819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)およびt−アミルアルコール(10質量部)を混合し撹拌した。メンブレンフィルター(0.45μm)でろ過して不溶分を除いてモノマー混合物を得た。

このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した。その後、窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ4−メチルペンテン−1)製のコンタクトレンズ用モールドにモノマー混合物を注入し、蛍光ランプ(東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(8000ルクス、20分間)して重合した。重合後、モールドごと60質量%イソプロピルアルコール水溶液中に浸漬して、モールドからコンタクトレンズ形状の成型体を剥離した。得られた成型体を、大過剰量の80質量%イソプロピルアルコール水溶液に60℃、2時間浸漬した。抽出後、キムワイプ上にレンズを置き、乾燥した後、トレイに移した。得られた成型体は、縁部の直径約14mm、中心部厚み約0.07mmであった。

さらに、成型体を大過剰量の50質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温で30分間浸漬し、次に大過剰量の25質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温で30分間浸漬し、次に大過剰量の純水に室温で30分間浸漬した。最後に、成型体を密閉バイアル瓶中に清浄な純水に浸漬した状態で入れ、121℃、30分間、オートクレーブ滅菌を行った。得られた成型体の含水率は1%未満であった。

また、この参考例7の成型体の酸素透過係数を測定するため、上述したモールドのかわりに2枚のガラス板とスペーサ(ガスケットを兼ねる)を用いる他は上記と同様の手順によって60mm×60mm×0.25mmのフィルム形状のサンプルを得た。このサンプルの酸素透過係数は、380×10−11[(cm2/sec)mLO2/(mL・hPa)](510Barrer)であり、眼用レンズ素材として非常に高い値であった。

(参考例8) 参考例7で得られた成型体(コンタクトレンズ)のフロントカーブ表面に図4の虹彩パターン410をプリントしてコンタクトレンズ形状のサンプルを得た。プリントされた虹彩パターンの直径は、約11mmであった。虹彩パターン中央部の光学的透明部の最大の直径は、約6.5mmであった。また、得られた成型体は、縁部の直径約14mm、中心部厚み約0.07mmであった。

(参考例9) 参考例7で得られた成型体(コンタクトレンズ)のフロントカーブ表面に図5の虹彩パターン420をプリントしてコンタクトレンズ形状のサンプルを得た。プリントされた虹彩パターンの直径は、約8.0mmであって、光学的瞳孔の直径は、約1.35mmであった。

(参考例10) 成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、チッソ、前述の式(M2)の化合物、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(50質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業)(46質量部)、成分Cとしてメチル(メタ)アクリレート(3質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1質量部)、成分Cとして重合開始剤“イルガキュア(登録商標)”819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)およびt−アミルアルコール(10質量部)を混合して撹拌し、均一で透明なモノマー混合物を得た。

このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した。その後、窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ4−メチルペンテン−1)製のコンタクトレンズ用FCモールドに、前記モノマー混合物を注入した。コンタクトレンズ用BCモールドを上から載せた。蛍光ランプ(東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(8000ルクス、20分間)して重合した。BCモールドを外し、レンズ表面に図4の虹彩パターン410(参考例8と同じもの)をプリントした。その上に、さらにモノマー混合物を入れた。BCモールドを載せ、さらに20分間光照射して重合した。重合後に、治具を用いてモールドを外した。モールドを100質量%イソプロピルアルコール水溶液中に浸漬して、60℃にて加温した。30分後にモールドからコンタクトレンズ形状の成型体を剥がした。得られた成型体を、大過剰量の100質量%イソプロピルアルコール水溶液に60℃、2時間浸漬し、抽出した。抽出後、キムワイプ上にレンズを置き、乾燥した後、トレイに移した。得られたレンズは、縁部の直径約14mm、中心部厚み約0.07mmであった。

(参考例11) 図5の虹彩パターン420(参考例9と同じもの)に変える以外は、参考例10と同様の操作を行い、レンズを作製した。得られたレンズは、縁部の直径約14mm、中心部厚み約0.07mmであった。

(実施例16) 参考例6で得られた成型体をPAA溶液に室温で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングしたレンズを密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。乾燥感が少なく、かつピンホールを有し、遠方も近方も焦点が合うようなレンズが得られた。また、得られたレンズの物性評価結果を表5に示した。該レンズを23℃、湿度60%条件下で24時間静置したところ、レンズの収縮や変形は認められなかった。

(実施例17) 参考例8で得られた成型体をPAA溶液に室温で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングしたレンズを密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。乾燥感が少なく、かつ装用者の瞳孔を大きく見せ、意匠性の良いレンズが得られた。また、得られたレンズの物性評価結果を表5に示した。該レンズを23℃、湿度60%条件下で24時間静置したところ、レンズの収縮や変形は認められなかった。

(実施例18) 参考例9で得られた成型体をPAA溶液に室温で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングしたレンズを密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。乾燥感が少なく、かつピンホールを有し、遠方も近方も焦点が合うようなレンズが得られた。また、得られたレンズの物性評価結果を表5に示した。該レンズを23℃、湿度60%条件下で24時間静置したところ、レンズの収縮や変形は認められなかった。

(実施例19) 参考例10で得られた成型体(レンズ)をPAA溶液に室温で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングしたレンズを密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。乾燥感が少なく、かつ装用者の瞳孔を大きく見せ、意匠性の良いレンズが得られた。また、得られたレンズの物性評価結果を表5に示した。該レンズを23℃、湿度60%条件下で24時間静置したところ、レンズの収縮や変形は認められなかった。

(実施例20) 参考例11で得られた成型体(レンズ)をPAA溶液に室温で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングしたレンズを密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。乾燥感が少なく、かつピンホールを有し、遠方も近方も焦点が合うようなレンズが得られた。また、得られたレンズの物性評価結果を表5に示した。該レンズを23℃、湿度60%条件下で24時間静置したところ、レンズの収縮や変形は認められなかった。

(参考例14) 参考例7で得られた成型体をPAA溶液に室温で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングしたレンズを密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。参考例14では、意匠性に乏しい、単焦点のレンズが得られた。該レンズを23℃、湿度60%条件下で24時間静置したところ、レンズの収縮や変形は認められなかった。

(比較例12) 市販カラーコンタクトレンズ(含水率58%)を被験者AおよびBが6時間装用した。A、Bともに眼の乾燥感を感じて快適ではなかった。また、レンズを23℃、湿度60%条件下で24時間静置させると水分が蒸発することにより、収縮し、しわが入って変形した。

(比較例13) 参考例6で得られた成型体を1質量%PVP K90水溶液(ポリビニルピロリドン、シグマアルドリッチジャパン、分子量36万)に室温で30分間浸漬した後、取り出して人指で触ったところ非常に優れた易滑性があった。易滑性評価基準でAであった。その後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いし、人指で触ったところ易滑性がなかった。易滑性評価基準でEであった。また、このレンズにおける他の物性評価結果を表5に示した。

(比較例14) 参考例8で得られた成型体を1質量%PVP K90水溶液(ポリビニルピロリドン、シグマアルドリッチジャパン、分子量36万)に室温で30分間浸漬した後、取り出して人指で触ったところ非常に優れた易滑性があった。易滑性評価基準でAであった。その後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いし、人指で触ったところ易滑性がなかった。易滑性評価基準でEであった。また、このレンズにおける他の物性評価結果を表5に示した。

(比較例15) 参考例9で得られた成型体を1質量%PVP K90水溶液(ポリビニルピロリドン、シグマアルドリッチジャパン、分子量36万)に室温で30分間浸漬した後、取り出して人指で触ったところ非常に優れた易滑性があった。易滑性評価基準でAであった。その後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いし、人指で触ったところ易滑性がなかった。易滑性評価基準でEであった。また、このレンズにおける他の物性評価結果を表5に示した。

(比較例16) 参考例10で得られた成型体(レンズ)を1質量%PVP K90水溶液(ポリビニルピロリドン、シグマアルドリッチジャパン、分子量36万)に室温で30分間浸漬した後、取り出して人指で触ったところ非常に優れた易滑性があった。易滑性評価基準でAであった。その後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いし、人指で触ったところ易滑性がなかった。易滑性評価基準でEであった。また、このレンズにおける他の物性評価結果を表5に示した。

(比較例17) 参考例11で得られた成型体(レンズ)を1質量%PVP K90水溶液(ポリビニルピロリドン、シグマアルドリッチジャパン、分子量36万)に室温で30分間浸漬した後、取り出して人指で触ったところ非常に優れた易滑性があった。易滑性評価基準でAであった。その後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いし、人指で触ったところ易滑性がなかった。易滑性評価基準でEであった。また、このレンズにおける他の物性評価結果を表5に示した。

(実施例21〜40および比較例18) 表6中に記載の基材を用いて、表6中に記載の各参考例に記載の方法で虹彩パターンの付与と表面処理を行ってコンタクトレンズを得た。評価結果を表6に示した。

(実施例41) 参考例2の基材Aの作製法に従って、図6に示す涙液交換促進パターン510のような貫通孔(径0.8mm)を複数有するコンタクトレンズA1を得た(縁部の直径約13mm、中心部厚み約0.07mm)。ただし、コンタクトレンズを重合後、モールドとコンタクトレンズを分離する前の段階で、専用の打ち抜き型を使用してコンタクトレンズにモールドごと貫通孔を穿孔した。

(実施例42) 専用形状のモールドを使用する以外は参考例2の基材Aの作製法に従って、図7に示す涙液交換促進パターン520のような貫通孔〔長径(径)3mm、短径0.8mm〕を複数有するコンタクトレンズA2を得た(縁部の直径約13mm、中心部厚み約0.07mm)。

(実施例43) 専用形状のモールドを使用する以外は参考例2の基材Aの作製法に従って、図8に示す涙液交換促進パターン530のような後面側の溝(長4mm、幅1mm)を複数有するコンタクトレンズA3を得た(縁部の直径約13mm、中心部厚み約0.07mm)。

(比較例19) 参考例4の基材Cの作製法に従って、図6に示す涙液交換促進パターン510のような貫通孔(径0.8mm)を有するコンタクトレンズC1を得た(縁部の直径約13mm、中心部厚み約0.07mm)。ただし、コンタクトレンズを重合後、モールドとコンタクトレンズを分離する前の段階で、専用の打ち抜き型を使用してコンタクトレンズにモールドごと貫通孔を穿孔した。

(実施例44〜73、比較例20および比較例21) 表7中に記載のコンタクトレンズ(または基材)を基材として用いて、表7中に記載の参考例に記載の方法で表面処理を行ってコンタクトレンズを得た。評価結果を表7に示した。

本発明は医療デバイス、この医療デバイスに適用するためのコーティング溶液の組合せおよび医療デバイスの製造方法に関するものであり、体液等を含む体表面と接触するデバイス、または体内に導入されるデバイス、例えば、眼用レンズや皮膚用材料に好適に使用できる。特に低含水性軟質眼用レンズ、例えば、ソフトコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレイ、角膜オンレイ、メガネレンズなどの眼用レンズとして有用である。中でも視力矯正用途やコスメティック用途に用いられる低含水性軟質コンタクトレンズに好適である。

1 装置 10 試料台 10a 石英ガラス板 11 測定治具(アルミニウム製) 12 摩擦検出部 13 力計 20 摩擦子 21 取付ホルダ(アルミニウム製) 22 パッキン(“テフロン(登録商標)”製) 23 ナット(アルミニウム製) S サンプル 41,42 低含水性軟質眼用レンズ 410,420 虹彩パターン 421 光学的瞳孔 51,52,53 低含水性軟質コンタクトレンズ 510,520,530 涙液交換促進パターン 511,521 貫通孔 531 溝

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