【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、弱視或いは復視を治療するために特別に製作されたレンズと、これを使用した眼鏡に関するものである。 より詳細にいえば、弱視或いは復視を治療するために従来から使われてきた眼帯の着用上の不便さと美的欠陥ゆえに、着用者がこれを嫌がる場合が多くて大きな効果が得られなかった欠陥を補完し治療効果を高める一方、使用者の満足度を増大させた弱視と復視の治療用レンズとこれを使用した眼鏡の構造に関するものである。 【0002】 【従来の技術】弱視というのは、眼球に病的な異常なしに発生する片目或いは両目の視力低下を指すことで、片目に生ずるのが殆どである。 これは、弱視、不動視(An isometropia )、酷い屈折異常などによって視力の発達に必須かつ適切な視覚的な刺激が幼い頃に遮断されたために生ずるのであり、早期に治療すれば正常に治癒され得る疾患として、その比率は概ね全人口の約2〜5%を占めている。 【0003】復視というのは、眼筋の麻痺などによって物体が重なって見える現象を指す。 その原因としては糖尿病、高血圧などの循環障害による外眼筋の神経麻痺で斜視が生ずるためであり、概ね発病してから6ヵ月以内に回復する。 【0004】上記の弱視の場合においては、9〜10才の時期に適切な治療により視力を改善することができ、 従来は視力のいい目(或いは正常眼)を眼帯で隠して見えないようにする一方、弱視眼のみで見るようにして視力を増進させる方法が主に使われてきた。 復視の場合においても復視を回復させるために眼帯を着用するのが普通の方法であった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、このような眼帯を利用した隠し法または遮断法はいくつかの問題点を抱えている。 まず第1に、眼帯の内側(目と接触させる部分)にくっつく分泌物のために、眼帯を一定周期ごとに替えざるを得ない不便さがあり、特に外傷による斜視の場合には手術後にも復視が残存する場合が多く、一生に亘って眼帯を着けなければならない場合もあり、この場合には問題は深刻である。 第2は、見かけ上の美的欠陥があり、特に子供の場合には眼帯をしきりに外すようになって治療に協調する度合いが落ち、これによって治療効果も低くなる。 第3に、眼帯を着ける時に、接着剤として使われるテープによって顔面部の皮膚炎、発赤、 痒みなどを訴える場合がある。 【0006】 【課題を解決するための手段】従って、本発明はこのような従来の欠点を解消するために案出されたもので、本発明の目的は眼鏡の外側から見ると普通の眼鏡をかけているように目がよく見えるために見かけ上の美的欠陥がなく、眼鏡の内側から見ると外部の物体がよく見えないようにすることによって、従来の眼帯に替わって正常眼を隠す効果のあるレンズとこのレンズを利用した眼鏡を提供して弱視眼と復視眼の視力を増進させることにある。 【0007】このために、本発明はレンズ部の片側面に凹凸を形成して、レンズ部の内側からは外部が見えないようにし、レンズ部の外側からは眼球が見えるようにすることを特徴とする。 本発明のより好ましい実施例は、 凹凸が形成されたレンズ面に無反射のコーティング層を施すことである。 【0008】また、眼鏡に本発明のレンズをはめて利用する際には、弱視の場合は正常眼の方に、また復視の場合は復視眼に上記のレンズをはめる一方、他方には普通のレンズをはめることを特徴とする。 より好ましい実施例は、眼鏡の周辺部に遮断部を形成することである。 【0009】 【発明の実施の形態】以下に、本発明の好ましい実施例を添付した図面により詳細に説明する。 図8は従来の製品化された眼帯1のガーゼ(1a)とテープ(1b)を示す。 図9は一般的に使用される眼帯を示しており、この眼帯はガーゼ(2a)で目を隠しテープ(2b)を利用して顔面に付着するものである。 【0010】図3と図4は、本発明の眼鏡レンズの1つの実施例であり、このうち図4の構成は図3のX部の拡大図を示し、レンズ3の内側(即ち、眼球の方)と外側に無反射のコーティング面(5)が形成され、内側に凹凸面(4)が形成されたレンズ部(7)を示す。 【0011】このような構造のレンズを作るためには、 度数のないガラスあるいはプラスチィックを利用してレンズ部(7)を加工した後、内側面(即ち、眼球の方) を金剛石の粉またはSanding machine、molding、化学物質を利用して微細な凹凸を形成する。 本実施例では、凹凸面を眼球と対向する面に形成したが、レンズ部(7) の外側面に凹凸面を形成しても差し支えない。 そして、 上記の凹凸面の上とレンズ部(7)の外側面に酸化ジルコニウムあるいは酸化珪素(SiO2)で無反射のコーティングを施工してレンズを完成させることが好ましい。 【0012】この凹凸面で光の散乱が発生して像がぼけるようになり、眼球からは外部の物体がよく見えないが、外部からは眼球がよく見える。 【0013】このような効果の原理は下記の通りである。 即ち、図5はA点が凹凸面に近い所にある場合で、 A点の像が凹凸面で散乱されても、この像を受け入れる眼球の網膜が遠く離れているために、網膜に像が生ずる位置A′、A″との距離は短くなり、従って、比較的明瞭にA点の像が見える。この場合は、外部から凹凸面(4)の後ろにある着用者の眼球を見る場合と一致し、 外部からは凹凸面があるのにも拘らず、着用者の眼球がはっきり見えるようになる。 【0014】これとは反対に、図6のようにA点が凹凸面から遠く離れていると、A点の像は凹凸面を通過した後に散乱が発生し、この凹凸面の近くにある眼球の網膜に像が結ばれる。 この時、像を受け入れる眼球の網膜が近いところにあるため、網膜に像が結ばれる位置A′、 A″の距離が遠くなり、像が区別できなくなる。この場合は、着用者が凹凸面を通じて外部の物体を見る場合と一致し、着用者の目には外部の物体がよく見えなくなる。この原理によれば、凹凸面をレンズ部の内側に設けるのが外側に設けるよりも好ましいといえる。 【0015】また、レンズの内外面には無反射のコーティングを施すのが好ましい。 図7に示すように、レンズ3の屈折率(n)が1.5である場合、レンズの外側面(Sout) での反射率(r')とレンズの内側面(Sin)での反射率(r”)は、 【0016】 【数1】 【0017】であり、レンズの外部から目の方を見ると反射および眼鏡の内面の凹凸による内側面での散乱で透明に見える。 この時、無反射のコーティングはこのような反射を無くしてくれるために、眼鏡の外側から眼球が鮮明に見えるようになる。 【0018】図1と図2は本発明のレンズを適用した眼鏡12の斜視図および平面図であり、片方には本発明のレンズをはめ、他方には通常の度数なしのガラスあるいはプラスチック材質のレンズをはめる。 また、図1で示したように、上側の遮断部(13)と下側の遮断部(1 0)を眼鏡の縁の周りに設置し、眼鏡のつる(14)と眼鏡の縁(8)の連結部位に一定の幅の側面遮断部(1 1)を設定して、横目で外部の物体が見えないようにし治療効果をより高めることができる。 上側遮断部と下側遮断部は眼鏡の縁(8)と一体となるように製作するか、或いは眼鏡の縁を先に製作してから上側と下側の遮断部を取り付けてもよい。 上側と下側の遮断部の幅は横目で外部の物体が見えない程度である。 また、側面遮断部(11)は眼鏡のつる(14)と一体に製作するか、 初めから省略して下側遮断部(10)を眼鏡の縁の側面まで伸ばして設置することもできる。 また、必要ならば適切な色を入れることもできる。 【0019】このようにして製作されたレンズを眼鏡にはめて弱視を治療する場合には、屈折異常がなければ度数のないレンズを、そして屈折異常があれば適切な度数のレンズを弱視眼の方にはめて、正常眼の方に本発明のレンズをはめる。 また、復視を治療する場合には、両眼の視力が同一であればいずれかの一方に、もし視力に差があれば視力の悪い方に本発明のレンズをはめる。 上記の2つの場合において、本発明のレンズは外部の物体がよく見えなくなるため、実質的に眼帯を着用したときと同じ効果が得られる。 また、外部から見たとき、本発明のレンズを着用した目がよく見えるようになり、従来の眼帯の美的な欠陥を除くことができて治療への協調度を高めることができる。 【0020】実際に、弱視あるいは復視という目の病を抱えている患者を対象にして本発明のレンズをはめた眼鏡を使用して治療した実施例は次の通りである。 【0021】 【実施例】 (弱視の治療)従来の隠し法にあまり協調しなかったために弱視の治療効果がなかった49人に、本発明の眼鏡を着用させてから約3ヵ月後にSmellen acuityによって治療の効果を測ってみると、視力の増加は35人(7 1.4%)で2.54±1.43ラインであり、このうち視力増加が1ラインであった群は10人(20.4 %)、2ラインであった群は10人(20.4%)、3 ラインであった群は6人(12.2%)、4ライン以上であった群は9人(18.2%)、そして視力の増加がなかった群は14人(28.5%)であった。 【0022】満足度の検査で患者の満足度は85.8% であり、保護者の満足度は95.2%であり、本発明の眼鏡の着用は患者と保護者の両方に美容上の効果があった。 患者の満足度による視力改善の度合いは、「非常にいい」、「いい」、「まあまあ」と答えた群は各々3. 88±5.61ライン増加(P<0.05)、0.95 ±0.95ライン増加(P<0.01)、0.67± 0.86ライン増加(P<0.05)であって、「悪い」と答えた群の0.43±0.67ライン増加(P< 0.05)より意味のある視力の増加を見せた。 【0023】年齢別の視力改善の度合いは、4才未満群で2.67±2.31ライン増加、4才〜7才群で1. 71±1.38ライン増加、7才以上群で1.64± 2.31ライン増加であり、4才以下群が一番高かった(P<0.05)。 弱視を引き起こした原因による視力改善は、斜視性の弱視群では3.10±5.76ライン増加、不動視性の弱視群では1.52±1.73ライン増加、視神経に対する刺激欠乏症の弱視群では0.82 ±6.42ライン増加であり、斜視性の弱視群と不動視性の弱視群において効果を表した。 【0024】(復視の治療)復視を訴える大人10人を対象にして本発明の眼鏡を着用させた結果、10人全員に復視がなくなり、また着用による見かけから生じる問題にも全員が満足した。 【0025】 【発明の効果】このように本発明のレンズを利用した眼鏡は、弱視あるいは復視を治療するために従来使われてきた眼帯の不便さと美的欠陥のために、着用者が眼帯を避ける場合が多くて治療にあまり大きな効果が得られないという欠点を補完し、治療効果を高めて着用者の満足度が増大し、治療効果をより高めることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の眼鏡を示す斜視図である。 【図2】本発明の眼鏡を示す平面図である。 【図3】本発明のレンズを示す断面図である。 【図4】図3のX部分を示す拡大断面図である。 【図5】眼鏡の外側から着用者の眼球を見る場合の説明図である。 【図6】着用者が外部を見る場合の説明図である。 【図7】無反射のコーティングが施されていないレンズの内外側面からの反射率を示す図である。 【図8】従来の製品化された眼帯を示す図である。 【図9】従来の一般的なガーゼで作った眼帯を示す図である。 【符号の説明】 1 眼帯 1a ガーゼ 1b テープ 2 眼帯 2a ガーゼ 2b テープ 3 レンズ 4 凹凸面 5 無反射のコーティング面 7 レンズ部 8 眼鏡の縁 10 下側遮断部 11 側面遮断部 12 眼鏡 13 上側遮断部 14 眼鏡のつる フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl. 6 ,DB名) A61F 9/00 580 G02C 7/02 |