多焦点レンズおよびその製造方法

申请号 JP2018536337 申请日 2016-09-29 公开(公告)号 JP2018531434A 公开(公告)日 2018-10-25
申请人 レイナー・イントラオキュラー・レンジズ・リミテッド; 发明人 ルックス,キルステン; プランク,ニコーレ; ブレズナ,ウォルフガング; ドラゴスティノフ,ニコラウス;
摘要 本発明は、屈折焦点(F r )と、少なくとも部分的に重なり合う第1および第2の回折構造(6,7)とを有する多焦点レンズ(1)、特に眼内レンズまたはコンタクトレンズに関し、両方の回折構造(6,7)が相違し、第1の回折構造(6)の一次焦点(F 1;1 )が第2の回折構造(7)の一次焦点(F 2,1 )と一致する。さらに本発明は、このような多焦点レンズ(1)を製造する方法に関する。
权利要求

屈折焦点(Fr)と、少なくとも部分的に重なり合う第1および第2の回折構造(6,7)とを有する多焦点レンズ、特に眼内レンズまたはコンタクトレンズにおいて、 前記2つの回折構造(6,7)が相違し、かつ、前記第1の回折構造(6)の一次焦点(F1,1)が前記第2の回折構造(7)の一次焦点(F2,1)と一致することを特徴とする多焦点レンズ。前記2つの回折構造(6,7)は相違する強度分布を有することを特徴とする、請求項1に記載の多焦点レンズ。前記第1の回折構造(6)は屈折焦点(Fr)を中心として非対称の強度分布を有し、前記第2の回折構造(7)は屈折焦点(Fr)を中心として実質的に対称の強度分布を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の多焦点レンズ。前記2つの回折構造(6,7)のプロファイル(8,11)は等しい周期長(p1,p2)を有し、前記第1の回折構造(6)のプロファイル(8)は周期(p1)内で単調増加し、前記第2の回折構造(7)のプロファイル(11)は周期(p2)の前半分で最小値をとるとともに周期の後半分で最大値をとることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の多焦点レンズ。前記第1の回折構造(6)は鋸刃形、エシェレット形、またはキノフォーム形を有するプロファイル(8)を有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の多焦点レンズ。前記第2の回折構造(7)は長方形、台形、または正弦波形を有するプロファイル(11)を有することを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の多焦点レンズ。前記プロファイル(8,11,14)のうち少なくとも1つは丸められた、または面取りされたエッジ(9,10,12,13)を有することを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の多焦点レンズ。前記両方の回折構造(6,7)は前記レンズ(1)の半径方向でアポダイゼーションされ、好ましくは相違する強さであることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の多焦点レンズ。請求項1記載の多焦点レンズを製造する方法において、 a)屈折焦点(Fr)を有するレンズブランク(20)を準備するステップと、 b)第1の回折構造(6)と第2の回折構造(7)との重ね合わせ構造(5)を計算するステップであって、前記2つの回折構造(6,7)は相違し、かつ、前記第1の回折構造(6)の一次焦点(F1,1)が前記第2の回折構造(7)の一次焦点(F1,2)と一致するような重ね合わせ構造(5)を計算するステップと、 c)前記多焦点レンズ(1)を製造するために前記レンズブランク(20)へ前記重ね合わせ構造(5)を刻設するステップと、 を含むことを特徴とする方法。前記レンズブランク(20)への前記重ね合わせ構造(5)の刻設は旋削によって行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。請求項1記載の多焦点レンズを製造する方法において、 a)成形ブランク(22)を準備するステップと、 b)第1の回折構造(6)と第2の回折構造(7)との重ね合わせ構造(5)を計算するステップであって、前記2つの回折構造(6,7)は相違し、かつ、前記第1の回折構造(6)の一次焦点(F1,1)が前記第2の回折構造(7)の一次焦点(F2,1)と一致するような重ね合わせ構造(5)を計算するステップと、 c)前記重ね合わせ構造(5)を雌型として前記成形ブランク(22)に刻設するステップと、 d)前記成形ブランク(22)とレンズ材料(20)を接触させることによって多焦点レンズ(1)を製造するステップであって、前記レンズ材料(20)に屈折焦点(Fr)も与えられるようなステップと、 を含むことを特徴とする方法。前記接触は前記成形ブランク(22)への前記レンズ材料(20)の注型および前記レンズ材料(20)の硬化によって行われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。前記第1の回折構造(6)は屈折焦点(Fr)を中心として非対称の強度分布を有し、前記第2の回折構造(7)は屈折焦点(Fr)を中心として実質的に対称の強度分布を有することを特徴とする、請求項9〜12の何れか一項に記載の方法。前記2つの回折構造(6,7)のプロファイル(8,11)は等しい周期長(p1,p2)を有し、前記第1の回折構造(6)のプロファイル(8)は周期(p1)内で単調増加し、前記第2の回折構造(7)のプロファイル(11)は周期(p2)の前半分で最小値をとるとともに周期(p2)の後半分で最大値をとることを特徴とする、請求項9〜13の何れか一項に記載の方法。前記2つの回折構造(6,7)のうち少なくとも1つは丸められた、または面取りされたエッジを有することを特徴とする、請求項9〜14の何れか一項に記載の方法。前記2つの回折構造(6,7)は前記レンズ(1)の半径方向でアポダイゼーションされ、好ましくは相違する強さであることを特徴とする、請求項9〜15の何れか一項に記載の方法。

说明书全文

本発明は、屈折焦点と、少なくとも部分的に重なり合う第1および第2の回折構造とを有する多焦点レンズ、特に眼内レンズまたはコンタクトレンズに関する。別の態様では、本発明はこのような多焦点レンズを製造する方法に関する。

多焦点の眼内レンズまたはコンタクトレンズ、すなわち、たとえば近見視と遠見視(2焦点式)または近見視と中間見視と遠見視(3焦点式)のために利用することができる複数の焦点を有するレンズは数十年前から知られていて、屈折ベースレンズにある多種多様な回折構造を利用し、それにより屈折焦点に追加して1つまたは複数の回折焦点をつくりだす。

特許文献1および特許文献2によると、そのために、それぞれキノフォームプロファイルを有する2つの回折構造が重ね合わされる。このとき両方の回折構造のうちの一方が一次焦点を有し、これが他方の構造の二次焦点と一致する。出願人が認識しているところでは、このような構造の計算はきわめて複雑である。しかも、このような構造をレンズへ刻設することは、製作するのが難しい数多くのプロファイル先端部をもたらし、ひいてはこのことが、生成される焦点における光強度分布や光収率の低下につながる。

ドイツ実用新案第202009018881号明細書

欧州特許第2503962号明細書

本発明が目的とするのは、従来技術の欠点を克服する改良されたレンズを提供することにある。

本発明の第1の態様によれば、この目的は、冒頭に述べた種類のレンズにおいて、2つの回折構造が相違し、かつ、第1の回折構造の一次焦点が第2の回折構造の一次焦点と一致する構成によって解決される。

それぞれの一次焦点が一致する2つの回折構造が重なり合うことで、重なり合う回折構造の計算を大幅に簡素化することができる。重なり合うべき構造が、互いに等しい周期長を有するプロファイル(断面形状)を有しているからである。したがって、計算中に最善の強度分布を判定するための構造の適合調節を、特別に容易に実行することができる。

2つの回折構造は相違する強度分布を有するのが好ましく、それにより、強度比率の個別的な混合が可能である。

本発明の特別に好ましい実施形態は、第1の回折構造が屈折焦点を中心として非対称の強度分布を有し、第2の回折構造は屈折焦点を中心として実質的に対称の強度分布を有することを特徴とする。

これら2つの回折構造を重ね合わせることにより、近見視、中間見視、および遠見視に利用可能な焦点が従来技術で知られているよりも高い強度割合を有するレンズが創出される。この問題をより厳密に考察するために、以下では、「正」の次数の回折焦点を、レンズとその屈折焦点との間に位置するもの、「負」の次数の回折焦点を、レンズに対し屈折焦点より離れて位置するものと定義する。

たとえば遠見視のために屈折焦点が利用されるとき、回折構造の正の一次焦点は中間見視のための距離に相当し、回折構造の正の二次焦点は近見視のための距離に相当する。回折構造のそれぞれの負の焦点は、このケースでは、レンズの利用者の網膜よりも後方で初めて結像され、それにより、このレンズは利用者にとっては利用可能でなく、画像品質の悪化に寄与する。

それに対して、対称の強度分布を有する回折構造と非対称の強度分布を有する回折構造との本発明に基づく重ね合わせによって、(当初の)負の次数の強度割合が、利用される正の次数またはゼロ番目の(屈折)次数へと結像され、それによって従来技術に比べていっそう色強度が高くコントラストが豊かな画像がもたされる。利用可能な焦点がより高い強度割合を有しているからである。

これと同じ利点は、たとえば別の実施形態において、屈折焦点が近見視のために利用され、重ね合わせ構造の負の一次焦点が中間見視のための距離に相当し、重ね合わせ構造の負の二次焦点が遠見視のための距離に相当するときにももたらされる。この実施形態では、回折構造の正の次数は近見視焦点よりも前に位置しているので利用可能性が低く、また、負の3次の次数は網膜の後方で初めて焦点を結ぶので利用不可能である。このとき本発明によると、正の次数の強度割合がゼロ番目の(屈折の)負の第1および負の第2の次数に結像され、それによって従来技術に比べて高い光収率が利用可能な焦点にもたらされ、それに伴い色強度が高くコントラストが豊かな画像がもたらされる。

2つの回折構造のプロファイルは等しい周期長を有するのが好ましく、第1の回折構造のプロファイルは周期内で単調増加し、第2の回折構造のプロファイルは周期の前半分で最小値をとるとともに周期の後半分で最大値をとる。それにより、結果として生じるレンズのプロファイルが少ない数のプロファイル先端を有することが実現される。このような種類の先端は製作するのが難しく、不正確に製作されると画像領域での収差につながり、そのために観察者に不鮮明な画像または濁った画像がもたらされる。たとえば第1の回折構造は、すなわち非対称の強度分布を有する構造は、鋸刃形、エシェレット形、またはキノフォーム形を有するプロファイルを有し、第2の回折構造は、すなわち実質的に対称の強度分布を有する構造は、長方形、台形、または正弦波形を有するプロファイルを有する。それにより、挙動が良好に既知である上に容易に製作を可能にするプロファイル形状を適用することができる。

本発明の好ましい構成要件によると、プロファイルのうち少なくとも1つは丸められた、または面取りされたエッジを有する。それにより、公差の小さい製造プロセスを選択することができ、このことは製造コストも製造時間も最小化する。

本発明の別の好ましい実施形態では、両方の回折構造はレンズの中央の領域でのみ重なり合う。たとえば、レンズは中央の領域の外部にはそもそも回折構造を有さない。たとえば光入射が少ないときに瞳孔が大きくなると、非中央の領域または遠見視のための屈折割合の影響が大きくなり、その結果、このような瞳孔サイズのときには強度分布が遠見視だけを含むことになる。別案として、レンズは中央の領域の外部にも両方の回折構造のうちの一方だけを有することができ、それにより、たとえば近見視と遠見視または中間見視と遠見視を、瞳孔が広いときに最大に構成することができる。

両方の回折構造はレンズの半径方向で、好ましくはそれぞれ相違する強さでアポダイゼーションされるのが好ましい。それにより、瞳孔が小さいときに、瞳孔が大きいときと異なる強度分布がもたらされることが実現される。さらに、瞳孔が拡張または縮小するときに、強度分布の変化の連続的な移行がもたらされる。アポダイゼーションがそれぞれ相違する強さで選択されれば、所望の瞳孔サイズに合わせて強度分布を任意に適合化することができる。

本発明のレンズは、基本的に任意の光学器具で適用することができるが、多焦点のコンタクトレンズまたは眼内レンズとして特別に好適である。

本発明の第2の態様では、ここで提案されるレンズを製造する方法も提供される。第1の実施形態では、この方法は次の各ステップを含んでいる。 a)屈折焦点を有するレンズブランクが準備され、 b)第1の回折構造および第2の回折構造からなる重ね合わせ構造が計算され、両方の回折構造は相違し、第1の回折構造の一次焦点は第2の回折構造の一次焦点と重なり、 c)多焦点レンズを製造するためにレンズブランクへ重ね合わせ構造が刻設される。

レンズブランクへ重ね合わせ構造を刻設するステップは旋削によって行われるのが好ましく、このことは多焦点レンズの特別に正確な製作を可能にする。

第2の実施形態では、本方法は次の各ステップを含んでいる。 a)成形ブランクが準備され、 b)第1の回折構造および第2の回折構造からなる重ね合わせ構造が計算され、両方の回折構造は相違し、第1の回折構造の一次焦点は第2の回折構造の一次焦点と重なり、 c)重ね合わせ構造が雌型として成形ブランクへ刻設され、 d)成形ブランクとレンズ材料を接触させることで多焦点レンズが製造され、レンズ材料に屈折焦点も与えられる。

この実施形態では、まず、重ね合わせ構造を有する成形ブランクすなわち「雌型」がたとえば旋削やフライス加工によって作成される。次いで、この雌型によってレンズを注型し、プレスし、検査し、あるいはその他の何らかの成形をすることができる。

接触をさせることは、成形ブランクへのレンズ材料の流し込みとレンズ材料の硬化によって行われるのが好ましい。このときレンズ材料は自然に硬化させることができ、または、たとえば光や熱処理によって硬化させることができる。

本発明による方法の両方の実施形態は、たとえば2つの構造が容易な加算によって重なり合わされることによって、重ね合わせ構造が容易に計算されるという特徴があり、このことは少ない計算能しか必要としない。

両方の実施形態において、第1の回折構造が屈折焦点を中心として非対称の強度分布を有し、第2の回折構造が屈折焦点を中心として実質的に対称の強度分布を有するのが特に好ましい。

多焦点レンズを製造する本発明の方法のさらに別の構成要件や利点に関しては、本発明によるレンズの前述した構成要件や利点を援用する。

次に、添付の図面に示されている実施例を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面には次のものが示されている。

本発明によるレンズを示す模式的な平面図である。

図1のレンズを示す模式的な側面図である。

第1および第2の回折構造のプロファイル、ならびに、第1および第2の構造の重ね合わせからもたらされる重ね合わせ構造のプロファイルを、図1のレンズについて示す図である。

図3の重ね合わせ構造を有する図1のレンズを示す拡大した半断面図である。

図3の第1の回折構造を備えるレンズの強度分布である。

図3の第2の回折構造を備えるレンズの強度分布である。

図1の本発明によるレンズの強度分布である。

図1のレンズを製造する本発明の方法の第1の実施形態を示す模式的なブロック図である。

図1のレンズを製造する本発明の方法の第2の実施形態を示す模式的なブロック図である。

本発明によるレンズと従来技術に基づくレンズの強度分布の比較を示す図である。

図1および図2は、前面2と、裏面3と、光学軸4とを有するレンズ1を示している。レンズ1は、中央のゾーンZ1と、後でさらに詳しく説明する2つの環状のゾーンZ2,Z3とを有している。説明しているレンズ1は眼内レンズまたはコンタクトレンズとして利用されるが、光学器具で使用することもできる。

レンズ1は、下で説明するように遠見視または近見視のために利用することができる、以下においてゼロ次焦点とも呼ぶ光学軸4の上に位置する屈折焦点Frを有している。レンズ1の裏面または前面2,3に、回折構造5が刻設されている。図4を参照。それは、レンズ1を近見視だけでなく、中間見視と遠見視のためにも適合させるためである。

回折構造5は、光学軸4の上に位置する多数の別の焦点Fg,i,i=...,−2,−1,1,2,...を生成し、これらは屈折焦点Frを中心として実質的に対称に分布していて、屈折焦点Frは、設けられる回折構造5に関わりなく、レンズ1の形状によって与えられる。回折焦点Fg,1,Fg,2は、回折構造5の正の一次焦点または二次焦点と呼ばれ、レンズ1と屈折焦点Frとの間で光学軸4の上に位置する。回折焦点Fg,−1,Fg,−2は、回折構造5の負の一次焦点または二次焦点と呼ばれ、レンズ1と反対を向くほうの屈折焦点Frの側に位置する。

焦点Fg,iの(位置的)分布は屈折焦点Frを中心として実質的に対称であるが、それぞれの焦点Fg,iに割り当てられる強度分布は対称ではないのがよい。たとえば3焦点レンズの場合、特に3つの最大の強度が構成されるのがよく、すなわちそれは遠見視、中間見視、および近見視のためである。このことは、回折構造5が下記のように、ゾーンZ1,Z2,Z3のうちの少なくとも1つで互いに重なり合う第1および第2の回折構造6,7から構成されることによって実現される。

図3は、上側のグラフに第1の回折構造6のプロファイル11を示している(横軸:半径r2[mm2]、縦軸:プロファイル深さT[mm])。第1の回折構造6は、半径rに依存する、厳密にいえばr2に依存する、格子周期p1(r)を有している。第1の回折構造6を横軸スケールとしてのr2に対してプロットすると、横軸上で等間隔の繰り返しとして周期p1が現れる。

第1の回折構造6は、屈折焦点Frを中心として非対称の強度分布をその回折焦点F1,iに有し、この点に関しては後の図5参照。そのために、平方半径r2に対してプロットされている非対称の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジ9,10を含むプロファイル8を有し、エッジ9,10のうち一方は垂直であり得る。

図3は、鋸刃形を有する第1の回折構造6を示しているが、別案として、エシェレット形やキノフォーム形を有することもできる。格子周期p1(r)は、第1の回折構造6により生成される焦点F1,iの屈折焦点Frからの距離を規定する。

図3は、中央のグラフに第2の回折構造7のプロファイルを示している(横軸:半径r2[mm2]、縦軸:プロファイル深さT[mm])。第2の回折構造7は、半径rに依存する、厳密にいえばr2に依存する、格子周期p2(r)を有している。構造7を横軸スケールとしてのr2に対してプロットすると、横軸上で等間隔の繰り返しとして周期p2が現れる。

第2の回折構造7は、後で図5を参照してさらに詳しく説明するように、屈折焦点Frを中心として実質的に対称の強度分布をその回折焦点F2,iに有する。そのために構造7は、平方半径r2に対してプロットされている互いに実質的に対称の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジ12,13を含むプロファイルを有し、これらのエッジは好ましくは垂直である。「実質的に対称」という概念は、ここではそのつど対称性からのわずかな逸脱も含んでいる。

図3はバイナリ構造としての、すなわち長方形を含む、第2の回折構造7を示している。しかしながら別案として、たとえば台形や正弦波形を有することもできる。格子周期p2(r)は、第2の回折構造7により生成される焦点F2,iの屈折焦点Frからの距離を規定する。

図5は、図3の一番上のグラフに基づく第1の回折構造6だけが設けられたレンズの強度分布を示している(横軸:レンズからの距離D[mm]、縦軸:相対強度I[1])。示されているとおり、回折焦点F1,iの強度分布は屈折焦点を中心として非対称である。

図6は、図3の中央のグラフに基づく第2の回折構造7だけが設けられたレンズ1の強度分布を示している(横軸:レンズからの距離D[mm]、縦軸:相対強度I[1])。示されているとおり、正の次数の焦点F2,1,F2,2,...には、負の次数の焦点F2,−1,F2,−2,...と実質的に等しい強度割合が割り当てられる。

図3に示すとおり、格子周期p1(r)およびp2(r)は等しい大きさであり、その結果、図5および図6のように、第1の回折構造6の第1の正の焦点F1,1は、第2の回折構造7の第1の正の焦点F2,1の距離に相当する距離を屈折焦点Frからおいている。

図3の一番下のグラフでは、組み合わされて「重ね合わされた」回折構造5が、両方の構造6,7の加算的な重ね合わせによって得られている(横軸:半径r2[mm2]、縦軸:プロファイル深さT[mm])。重ね合わされた回折構造5は立ち上がりエッジと立ち下がりエッジ15,16を含むプロファイル14を有し、その結果、回折構造5のプロファイル14は実質的に1つの周期の内部で単調増加する。プロファイル14を有する回折構造5は、レンズ1の面2,3の一方に設けられる。図4を参照。製造を簡易化するために、プロファイル8,11,14は丸められた、または面取りされたエッジ9,10,12,13,15,16を有することができる。

図3の3つのグラフに示すとおり、第1の回折構造6のプロファイル8は周期p1(r)の内部で単調増加し、第2の回折構造7のプロファイル11は周期p2(r)の前半分で最小値をとるとともに周期の後半分で最大値をとる。このことは、重ね合わされた回折構造5のプロファイル14が周期p1(r),p2(r)の内部で単調増加し、それに伴って当該周期の内部で1つの最大値だけを有することに帰結する。別案の実施形態(図示せず)では、第2の回折構造7が周期p2(r)の前半分で最大値をとり、周期の後半分で最小値をとることもでき、このことは、周期ごとに2つの最大値を有する、重ね合わされた回折構造5をもたらす。製造の理由から、周期ごとに1つの最大値だけを有する、最初に挙げた態様のほうが好ましい。

図7は、加算された、または重ね合わされた構造6,7からなる回折構造5が刻設されたレンズ1の強度分布を示している(横軸:レンズからの距離D[mm]、縦軸:相対強度I[1])。屈折焦点Frはここでは遠見視のために利用され、第1の正の回折焦点Fg,1は、その位置に関して回折構造6,7の(正の)一次焦点F1,1,F2,1に相当するとともに中間見視のために利用され、第2の正の回折焦点Fg,2は、その位置に関して回折構造6,7の(正の)二次焦点F1,2,F2,2に相当するとともに近見視のために利用される。別案として、エッジ9,10,12,13の傾斜をそれぞれ反転させることもでき、それにより、たとえば屈折焦点Frを近見視のために利用し、および一次の回折焦点F1,1,F2,1または二次の回折焦点F1,2,F2,2を中間見視または遠見視のために利用することができる。

両方の構造6,7は、それぞれレンズ1の面2,3の表面全体に設けることができ、または、図1に示すようにゾーンごとにのみ設けることができる。たとえば、組み合わされた構造5をレンズ1のもっとも内部のゾーンZ1にのみ、すなわち中央の領域に設けることができる。その周囲の環状のゾーンZ2には、両方の構造6,7のうちの一方のみが設けられていてよく、もっとも外側の環状のゾーンZ3にはいずれの構造5,6,7も設けられない。それにより、瞳孔サイズに依存する強度分布が実現され、屈折焦点Frにおける強度の重みづけは瞳孔サイズに伴って増加していく。

その代替または追加として、このような効果を構造5,6,7のアポダイゼーションによって実現することができる。このことは、構造5,6,7のプロファイル8,11,14の深さTが、レンズ半径rの増加に伴って減少していくことを意味する(図3には示さず)。

図8および図9は、多焦点レンズ1を製造するための方法の2つの態様を示している。「重ね合わせ構造」5とも呼ぶ回折構造5を計算するために、計算ユニット17で、屈折焦点Frを中心として非対称の強度分布を有する第1の回折構造6と、屈折焦点Frを中心として実質的に対称の強度分布を有する第2の回折構造7とが重ね合わされ、たとえば加算される。構造6,7は、計算ユニット17で記憶装置18,19により提供することができ、または、計算ユニット17自体で計算もしくは判定することができる。

図8は、計算ユニット17で計算された重ね合わせ構造5が、たとえば旋盤21での旋削などの切削加工によってレンズブランク20に刻設され、そのようにして多焦点レンズ1を製造する、製造方法の第1の態様を示している。ここではたとえばレンズブランク20がその光学軸を中心として回転させられ、旋盤21の旋削工具がレンズブランク20の回転中に重ね合わせ構造5をレンズブランク20へ刻設する。切削加工の後、レンズ1を任意選択で研磨することができる。

あるいはレンズブランク20は、単に3Dプリンタ用の加工性のある出発材料であってもよく、その場合、レンズブランク5への重ね合わせ構造5の刻設は、出発材料20の3D印刷によって多焦点レンズ1をなすように行われる。

図9は、計算ユニットで計算された重ね合わせ構造5がまず雌型として、同じく旋盤21または3Dプリンタによって成形ブランク22へ刻設される製造方法の第2の態様を示している。次いで、レンズ材料20が成形ブランク22と接触させられ、そのようにして多焦点レンズ1を製作する。レンズ材料20は、たとえばすでにレンズブランクをなすように予備製作されていてよく、これに重ね合わせ構造5が「スタンプ」としての成形ブランク22によって押印もしくは刻印される。別案として、レンズ材料20が液体または粘性の状態で存在していて、たとえば鋳型の中で成形ブランクへ注ぎかけることができる。次いで、たとえば光供給または熱供給によってレンズ材料20が硬化される。

図10は、ここで提案されるレンズ1の強度推移23と、従来技術に基づくレンズの強度推移24との比較を示している(横軸:レンズからの距離D[mm]、縦軸:相対強度I[1])。従来技術に基づく対照レンズは、非対称の強度分布を有する2つの回折構造(たとえば鋸刃形を有する構造)が重ね合わされた構造を備えていて、第1の回折構造の一次焦点は、第2の回折構造の二次焦点に一致する。

それにより、屈折焦点Frの領域では強度分布の類似の推移がもたらされる。しかし図10から良く認められるとおり、従来技術に基づくレンズ1は、組み合わされた回折構造5の第2の負の焦点Fg,−2の領域(または、第2の回折構造7の第1の負の焦点F2,−1の領域)で大きい強度値を有している。これとは対照的にここで提案されるレンズ1では、負の次数に由来する利用可能でない強度が利用可能な正の次数へとシフトしていて、その様子は、焦点Fg,1および焦点Fg,2における推移17の明らかに高い強度、ならびに焦点Fg,−2における推移23の明らかに低い強度を参照すれば明瞭である。このように、上述したレンズ1の利用者にとっては、従来技術に基づくレンズよりも色強度が高くコントラストが豊かな画像がもたらされる。

それに応じて本発明は、図示した実施形態だけに限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲の枠内に収まる一切の変形、改変、およびこれらの組み合わせを含んでいる。

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