明視域が広げられ、軸上色収差が補正された3焦点眼内レンズ

申请号 JP2018527014 申请日 2016-08-12 公开(公告)号 JP2018525199A 公开(公告)日 2018-09-06
申请人 フィシオル、ソシエテ、アノニム; PHYSIOL SA; 发明人 クリストフ、ロベール、マリー、アルマン、パヌル; スアド、レッドゾビク; ロール、ボワザン; ダミアン、ガティネル; ジェローム、ジャン、デ.ロワック;
摘要 前面(16)と、後面(18)と、光軸(20)とを含んでおり、前面(16)または後面(18)の少なくとも一方に回折プロフィル(24)が形成され、該回折プロフィル(24)は、遠方視のための回折焦点(30)と、中間視のための回折焦点(32)と、近方視のための回折焦点(34)とを提供する眼内レンズ(10)(IOL)が開示される。前記回折プロフィル(24)は、第1の部分回折プロフィル(26)と第2の部分回折プロフィル(28)との重ね合わせに相当し、第1の部分回折プロフィル(26)は、中間視のための回折焦点(32)または近方視のための回折焦点(30)に一致する次数+nの焦点を有し、第2の部分回折プロフィル(28)は、遠方視のための回折焦点(30)に一致する次数+nの焦点を有し、第2の部分回折プロフィル(28)の+nよりも高い次数の焦点が、近方視のための回折焦点(34)に一致する。
权利要求

前面(16)と、後面(18)と、光軸(20)とを含む眼内レンズ(10)(IOL)であって、 前記前面(16)または後面(18)の少なくとも一方に、回折プロフィル(24)が形成されており、該回折プロフィル(24)は、 遠方視のための回折焦点(30)と、 中間視のための回折焦点(32)と、 近方視のための回折焦点(34)と を提供し、 前記回折プロフィル(24)は、第1の部分回折プロフィル(26)と第2の部分回折プロフィル(28)との重ね合わせに相当し、 前記第1の部分回折プロフィル(26)は、前記中間視のための回折焦点(32)または前記近方視のための回折焦点(30)に一致する次数+nの焦点を有し、 前記第2の部分回折プロフィル(28)は、前記遠方視のための回折焦点(30)に一致する次数+nの焦点を有し、 前記第2の部分回折プロフィル(28)の+nよりも高い次数の焦点が、前記近方視のための回折焦点(34)に一致し、 前記第1および第2の部分回折プロフィル(26、28)の各々は、それぞれの段高さを有する複数の段を有し、前記段高さは、前記回折プロフィルの少なくとも一部分において以下の条件、すなわち、n1+a2 ここで であり、 であり、 は、前記回折プロフィル(24)の前記一部分における前記第1の部分回折プロフィル(26)の段の平均高さであり、 は、前記回折プロフィル(24)の前記一部分における前記第2の部分回折プロフィル(28)の段の平均高さであり、 λ=550nmであり、 n2は、レンズ材料の屈折率であり、 n1=1.3345であり、 n=1またはn=2である、 IOL(10)。n=1であり、前記第2の部分回折プロフィルは、 前記中間視のための回折焦点に一致する次数+2の焦点と、 前記近方視のための回折焦点に一致する次数+3の焦点と を有する、請求項1に記載のIOL(10)。前記第1および第2の部分回折プロフィル(26、28)の前記段高さは、前記回折プロフィル(24)の少なくとも一部分において以下の条件、すなわち a2>a1 を満たす、請求項1または2に記載のIOL(10)。n=1であり、前記第1および第2の部分回折プロフィル(26、28)の前記段高さは、前記回折プロフィルの少なくとも一部分において以下の条件、すなわち 0.51<1、好ましくは0.51<0.7、最も好ましくは0.531<0.62、かつ 0.52<1、好ましくは0.62<0.9、最も好ましくは0.72<0.8 を満たす、請求項1から3のいずれか一項に記載のIOL(10)。n=1であり、前記第1のプロフィルの前記段高さa1が、<1である一方で、前記第2のプロフィルの前記段高さa2が、>1であり、前記第1および第2の部分回折プロフィル(26、28)の前記段高さは、前記回折プロフィルの少なくとも一部分において以下の条件、すなわち、0.251<0.45、好ましくは0.301<0.40、最も好ましくは0.331<0.37、かつ 1.202<1.40、好ましくは1.252<1.35、最も好ましくは1.282<1.32 を満たす、請求項1から3のいずれか一項に記載のIOL(10)。前記中間視および前記遠方視のための回折焦点(32、30)は、+0.5〜+1.5ジオプタの間に相当する互いの距離にて前記光軸(20)上に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載のIOL(10)。前記近方視のための回折焦点(34)および前記遠方視のための回折焦点(30)は、+1.5〜+2.5ジオプタの間に相当する互いの距離にて前記光軸(20)上に位置する、請求項1から6のいずれか一項に記載のIOL(10)。前記中間視および前記遠方視のための回折焦点(32、30)は、+1.5〜+2.0ジオプタの間に相当する互いの距離にて前記光軸(20)上に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載のIOL(10)。前記近方視のための回折焦点(34)および前記遠方視のための回折焦点(30)は、+3.0〜+4.0ジオプタの間に相当する互いの距離にて前記光軸(20)上に位置する、請求項1から5または8のいずれか一項に記載のIOL(10)。4.5mmの瞳孔サイズおよび波長が543nmの緑色光において、前記光軸上の位置の関数としての50サイクル/mmにおける変調伝達関数(MTF)が、前記遠方視、中間視、および近方視のための回折焦点(30、32、34)に対応する識別可能なピークを示す、請求項1から9のいずれか一項に記載のIOL(10)。4.5mmの瞳孔サイズ、50サイクル/mm、および波長が543nmの緑色光において、 前記近方視のための焦点(34)に対応するMTF値が、前記中間視のための焦点(32)に対応するMTF値よりも大きく、 前記近方視のための焦点(34)に対応するMTF値が、前記中間視のための焦点(32)に対応するMTF値よりも小さく、かつ/または 前記遠方視のための焦点(30)に対応するMTF値が、前記近方視のための焦点(34)に対応するMTF値よりも大きい、 請求項1から10のいずれか一項に記載のIOL(10)。2.0mmの瞳孔サイズ、50サイクル/mm、および波長が543nmの緑色光において、前記近方視のための焦点(34)に対応するMTF値が、前記遠方視のための焦点(30)に対応するMTF値よりも大きい、請求項1から11のいずれか一項に記載のIOL(10)。2.0mmの瞳孔サイズ、50サイクル/mm、および波長が543nmの緑色光において、前記光軸(20)上の位置の関数としてのMTFが、前記近方視のための回折焦点(34)から前記遠方視のための回折焦点(30)まで延びる範囲において、常に0.13よりも上、好ましくは常に0.2よりも上にとどまる、請求項1から12のいずれか一項に記載のIOL(10)。第1の拡張された焦点深度が、前記近方視および遠方視のための回折焦点(34、30)の焦点度数の間の差として定義され、 第2の拡張された焦点深度が、前記中間視および遠方視のための回折焦点(32、30)の焦点度数の間の差として定義され 前記第1の拡張された焦点深度は、前記第2の拡張された焦点深度の整数倍であり、とくには2または3倍である、請求項1から13のいずれか一項に記載のIOL(10)。前記回折プロフィルは、4μm〜100μmの間、とくには10μm〜50μmの間の幅を有する非垂直な段を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のIOL(10)。前記回折プロフィルは、0.1μm以上の最小曲率半径を有する丸みを帯びたエッジを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載のIOL(10)。前記第1の部分回折プロフィルは、 に位置する前記光軸に対する半径方向位置rnに中心があり、あるいは該位置からの逸脱が平均で5%未満、好ましくは1%未満である半径方向位置に中心がある段位置を有し、前記第2の部分回折プロフィルは、 の半径方向位置に中心があり、あるいは該位置からの逸脱が平均で5%未満、好ましくは1%未満である半径方向位置に中心がある段位置を有し、 ここで nは、前記プロフィル(24)の中心から数えた段の番号であり、 F1は、前記第1の部分回折プロフィル(26)の次数+1の回折焦点の焦点距離であり、 F2は、前記第2の部分回折プロフィル(28)の次数+1の回折焦点の焦点距離であり、 F2は、F1の整数倍であり、とくにはF2=2・F1またはF2=3・F1である、請求項1から16のいずれか一項に記載のIOL(10)。レンズ本体を有しており、前記光軸(20)は、前記IOLレンズ本体の幾何学的中心に対して偏心させられており、当該IOL(10)は、眼の球面収差および/または眼の色収差を少なくとも部分的に補償し、さらには/あるいは明視野の拡大をもたらすようにさらに構成されている、請求項1から17のいずれか一項に記載のIOL(10)。

说明书全文

本発明は、眼内レンズに関し、とくには3つの焦点と前面または後面上の回折プロフィルとを有する眼内レンズに関する。このレンズは、遠距離から近距離までの広い明視域(EROV)を提供し、線形色収差(LCA)を低減する。

眼内レンズ(IOL)は、最も多くの場合には白内障手術の後に晶体を置き換える目的で、眼に埋め込むことができるレンズである。眼内レンズは、通常は、レンズを水晶体嚢内に支持するために用いられる側方の可撓な支持体、いわゆる「ハプティクス」を含む。眼内レンズは、屈折レンズ、回折レンズ、または屈折−回折レンズであってよい。屈折レンズは、屈折によって光軸上の焦点に向かって光を収束させ、この屈折焦点を、0次の回折焦点と呼ぶこともできる。回折レンズは、0次以外の回折次数ごとに1つの焦点を光軸上に形成する回折パターンを生成する。簡単に言えば、n次の焦点は、nの波長の倍数の位相差を有する光波の建設的干渉(constructive interference)によって特徴付けられる。屈折−回折レンズは、両者の特徴を併せ持つ。

水晶体は、毛様体筋の作用による遠方視または近方視への眼の順応を可能にする或る程度の柔軟性を有している。毛様体筋は、水晶体の縁を引っ張ることによって、水晶体を平たくし、その焦点を変位させる。しかしながら、年齢によって毛様体筋が衰え、あるいは水晶体が眼内レンズによって置き換えられることで、患者が、この順応性を少なくとも部分的に失う可能性がある。この問題に対処するために、いくつかの種類の2焦点または多焦点眼内レンズが提案されている。

単焦点IOLは、通常は遠焦点である1つの距離においてのみ視の矯正をもたらすように意図されている。単焦点IOLは、ただ1つの距離においてのみ視力の治療をもたらし、典型的な矯正は遠距離を目的とするため、良好な近方視、および場合によっては中間視のために、通常は眼鏡が必要である。

本明細書において使用されるとき、用語「近方視」は、例えば被検眼からの距離が約30cm〜60cmの間である物体が実質的に眼の網膜上に焦点を有する場合にもたらされる視覚に相当し得る。

用語「遠方視」は、少なくとも約180cm以上の距離にある物体が実質的に眼の網膜上に焦点を有する場合にもたらされる視覚に相当し得る。

用語「中間視」は、被検眼からの距離が約60cm〜約150cmである物体が実質的に眼の網膜上に焦点を有する場合にもたらされる視覚に相当し得る。また、埋め込み用として最も適切なIOLの度数を予測することは、精度に限界があり、IOLの度数が不適切であると、この技術分野において術後の「残余屈折」と呼ばれる異常が、患者に残る可能性があることに、注意すべきである。したがって、場合によっては、IOLの埋め込みを受けた患者が、良好な遠方視を達成するために眼鏡の着用も必要とする可能性がある。

通常はレンズの中心から外縁に向かって減少する変化する屈折度数を有する2焦点または多焦点屈折眼内レンズが、先行技術から知られている。そのような眼内レンズは、例えば、lolab(登録商標)NuVue(登録商標)、Storz(登録商標)Tru Vista(登録商標)、Alcon(登録商標)AcuraSee(登録商標)、loptex(登録商標)、Occulentis M Plus、およびAMO(登録商標)ReZoom(登録商標)という商品名で販売されている。この設計は、例えば読書などの近方視が必要とされる状況においては、通常は明るさが大であり、したがって虹彩が閉じて、レンズの外側部分を隠し、光が最大の屈折度数を有する中央寄りの部分だけを通過できるという事実を利用している。いくつかの場合には、屈折眼内レンズは、膜の非球面収差を部分的または完全に補正することで、偽水晶体眼、すなわち眼内レンズが埋め込まれた眼のコントラスト感度を改善するために、非球面のプロフィルを有することができる。

しかしながら、これらの純粋な屈折2焦点または多焦点レンズは、いくつかの欠点を有する。1つの問題は、それらの挙動が瞳孔の大きさに強く依存することである。さらに、いくつかの焦点を有するがゆえに、高いコントラストをもたらすことができず、とくには遠方視において明るさが少ないときにハローを生じる可能性がある。

加えて、いわゆる「屈折−回折」眼内レンズが、この分野において知られている。典型的には、これらのレンズは、遠方視のための屈折光学焦点(本明細書において使用される用語によれば、「0次回折次数」の焦点に相当する)および近方視のための少なくとも1つの1次回折焦点を提供する。3M(登録商標)によって開発された屈折−回折眼内レンズや、AMO(登録商標)によって開発され、Tecnis(登録商標)という商品名で流通している屈折−回折眼内レンズなど、特定の屈折−回折眼内レンズは、これらの2つの焦点の両方の間で光を実質的に等しい割合で分配している。他方で、Acri.Tec(登録商標)のAcri.LISA(登録商標)366Dという眼内レンズは、コントラストの改善および遠方視におけるハローの形成の低減を目的として、近方視のための焦点よりも遠方視のための焦点の方により多くの光を向ける非対称な光の分布を呈している。

J.A.DavisonおよびM.J.SimpsonによるJ.Cataract Refract.Surg.Vol.32,2006,pp.849−858の論文「History and development of the apodized diffractive intraocular lens」において、回折プロフィルがアポダイズされ、光軸からの距離が増すにつれてプロフィルの高さが小さくなっている屈折−回折眼内レンズが記載されている。これにより、Alcon(登録商標)によってReSTOR(登録商標)という商品名で販売されているこのレンズは、瞳孔の開口に応じて、遠方視のための焦点と近方視のための焦点との間の光の分配を変えることを可能にしている。

しかしながら、技術水準のこれらの屈折−回折眼内レンズも、いくつかの欠点を有する。とりわけ、ほぼ純粋に2焦点であり、遠方視のための焦点と近方視のための焦点との間に、中間視において不快を感じ得るような開きがある。

少なくとも1つの中間焦点を有する多焦点屈折−回折レンズも提案されている。国際公開第94/11765号パンフレットに、中間視のための次数0の焦点と、近方視のための次数+1の焦点と、遠方視のための次数−1の焦点とを有する屈折−回折レンズが提案されている。しかしながら、このレンズは、3つの焦点の間の光の実質的に等しい分配しか可能にておらず、とくには瞳孔の開口とは無関係に、近焦点と遠焦点との間の光の等しい分配しか可能にしていない。

国際公開第2007/092949号パンフレットに、複数の回折プロフィルを含んでおり、各々の回折プロフィルが次数+1の別個の焦点を有している眼内レンズが提案されている。異なるプロフィルは、IOLの光学部分の別個の同心領域に配置され、したがって焦点間の光の分配は、上記で参照した屈折多焦点眼内レンズから知られている様相と同じ様相で、瞳孔のサイズに強く依存する。例えば、焦点の数が、瞳孔の開口につれて変わると考えられ、すなわち瞳孔のサイズが小さいとき、レンズは2焦点であり、第3の焦点は、瞳孔の拡大時にのみ有効である。

さらに、技術水準のほぼ全ての回折および屈折−回折眼内レンズは、+1よりも大きい次数の使用できない焦点へと向かう光のかなりの部分を失うという欠点を有する。

国際公開第2011/092169号パンフレット(以下では、WO’169と称する)が、3つの有用な焦点を提供し、これら3つの焦点の間の光の分配が必ずしも瞳孔のサイズに依存しない眼内レンズを記載している。このレンズは、例えば近方視および中間視にそれぞれ割り当てられる次数+1の2つの異なる焦点を得るために、2つの重ね合わせられた部分回折プロフィルを仮想的に表示する一方で、組み合わせられたプロフィル(すなわち、第1および第2の部分プロフィルの重ね合わせ)の0次が、遠方視に向けられる。したがって、このレンズは、2つの有用な回折焦点および1つの有用な屈折焦点を有する。WO’169のIOLの顕著な利点は、+1よりも大きい回折次数に起因する光の損失が抑えられることにある。このために、第1の部分プロフィルの次数+1の回折焦点は、光軸上で、第2の部分回折プロフィルに関する+1よりも高次(例えば、+2)の焦点に実質的に一致してもよい。このようにして、第2の部分プロフィルのこの高次の前記焦点に向けられた光は、失われず、むしろ典型的には近方視のための焦点である第1の部分プロフィルの次数+1の焦点を補強するために使用される。

上記の3焦点レンズは、とりわけ中間距離における視覚について、多くの患者にとって視覚の質の改善につながるが、さらなる改善が有益であると考えられる。とくには、軸上色収差(LCA)の低減が、視覚の質にとって有益であり得る。多焦点レンズという特定の事例において、LCAの低減が複数の焦点に関係すると考えられる場合、患者は、広大な拡張された距離範囲にわたって像品質の向上という恩恵を受けることができる。

標準的な2焦点レンズの設計は、遠方の度数および近距離のための追加の度数をそれぞれもたらす回折次数0および次数+1の間で光を分割する。このような2焦点レンズは、とりわけ遠焦点において、色収差を充分には補正または処理できない。国際公開第2014/033543号パンフレットに、光を次数+1および次数+2に向けるために適した回折2焦点眼内レンズが記載されているが、0次は有効でなく、あるいは少なくとも有用な焦点を提供するには不充分である。このようなレンズは、Tecnis Symfony(登録商標)という商品名で市販されており、2つの焦点、すなわち次数+1によってもたらされる遠方視のための焦点および次数+2によってもたらされる近方視のための焦点について、有水晶体眼の色収差を低減または補正すると報告されている。

国際公開第94/11765号パンフレット

国際公開第2007/092949号パンフレット

国際公開第2011/092169号パンフレット

国際公開第2014/033543号パンフレット

本発明の根底にある課題は、広い明視域を提供すると同時に、軸上色収差に起因する視覚の低下も回避する眼内レンズを提供することである。

この目的は、請求項1に記載の眼内レンズ(IOL)によって解決される。好ましいさらなる発展が、従属請求項に規定される。

本発明のIOLは、前面、後面、および光軸を含む。前面または後面の少なくとも一方に、回折プロフィルが形成され、この回折プロフィルは、 遠方視のための回折焦点、 中間視のための回折焦点、および 近方視のための回折焦点 を提供する。

回折プロフィルは、第1の部分回折プロフィルと第2の部分回折プロフィルとの重ね合わせに相当し、 第1の部分回折プロフィルは、中間視のための回折焦点または近方視のための回折焦点に一致する次数+nの焦点を有し、 第2の部分回折プロフィルは、遠方視のための回折焦点に一致する次数+nの焦点を有し、 第2の部分回折プロフィルの+nよりも高い次数の焦点が、近方視のための回折焦点に一致する。

ここで、第1および第2の部分回折プロフィルの各々は、それぞれの段高さを有する複数の段を有し、前記段高さは、前記回折プロフィルの少なくとも一部分において以下の条件、すなわち n

1+a

2

を満たし、ここで

であり、

であり、

は、回折プロフィルの前記一部分における第1の部分回折プロフィルの段の平均高さであり、

は、回折プロフィルの前記一部分における第2の部分回折プロフィルの段の平均高さであり、 λ=550nmであり、 n

2は、レンズ材料の屈折率であり、 n

1=1.3345であり、 n=1または2である。

ここで、n1は、1.3345になると想定される埋め込み媒体の屈折率に近い。

さらに、特定の段高さの条件が「前記回折プロフィルの少なくとも一部分に」当てはまるという特徴は、その条件が回折プロフィル全体に当てはまっても、回折プロフィルの一部分だけに当てはまってもよいことを示す。また、本発明の回折プロフィルが前面または後面の少なくとも一方に形成されるという事実は、当然ながら、他のプロフィルがこのIOLの他の領域に形成されることを排除しない。しかしながら、以下で示される実施形態において、本発明による回折プロフィルは、例えば4.5mmなどの大きな瞳孔開口においてさえも、本質的にIOLの有効領域全体に広がる。

したがって、本発明のIOLが3つの回折焦点を有するのに対し、WO’169のIOLは回折焦点を2つだけしか有さず、すなわち近方視および中間視のための回折焦点を有する一方で、遠方視のための焦点は屈折焦点である。回折焦点のみを有するIOLの利点は、軸上色収差(LCA)を低減できることである。LCAは、異なる波長の光が光軸上の異なる位置に集光される現象である。屈折レンズにおいて、LCAは、屈折率の波長依存性に起因する。大部分の材料において、屈折率は、波長が短くなるにつれて大きくなり、すなわち屈折レンズの屈折焦点度数は、波長が短くなるにつれて大きくなる。

他方で、回折光学素子もLCAに悩まされるが、その影響は反対であり、波長が長いほど光学度数が大きくなる(換言すると、焦点距離が短くなる)。これは、屈折および回折の両方の光学度数をもたらすレンズにおいては、2つの反対向きの影響が少なくとも部分的に打ち消し合うため、全体として色収差を大きく軽減できることを意味する。本発明のIOLは、有意な屈折焦点を持たないが、それにもかかわらず屈折度数を有し、したがってLCAへの対応する寄与を示す。したがって、本発明の場合のように、IOLが遠方視のための回折焦点を有する場合、IOLの屈折度数によって影響されたLCAは、遠方視のための焦点においてすでに少なくとも部分的に補償されていると考えることができる。これは、遠方視が、LCAが著しく邪魔になるような弱い光の条件下で必要とされることが多いため、とくに重要である。

驚くべきことに、上記定義のパラメータa1およびa2を適切に選択することによって、以下でさらに詳しく示されるように、LCAの悪影響の大幅な軽減を可能にする純粋に回折焦点を有するきわめて有用な3焦点IOLを得ることができる。同時に、このIOLは、3つの焦点を提供するがゆえに、やはり以下で示されるように、良好な広い明視野を呈する。本発明のIOLのさらなる利点は、第2の部分プロフィルの+1(n=1の場合)よりも大きい次数の焦点に対応する光が失われず、近方視の焦点に寄与することにある。

好ましい実施形態においては、n=1であり、IOLの第2の部分回折プロフィルは、 中間視のための回折焦点に一致する次数+2の焦点と、 近方視のための回折焦点に一致する次数+3の焦点と を有する。

好ましい実施形態によれば、第1および第2の部分回折プロフィルの段高さは、前記回折プロフィルの少なくとも一部分において以下の条件、すなわち、a2>a1を満たす。

好ましい実施形態においては、n=1であり、第1および第2の部分回折プロフィル26、28の段高さは、前記回折プロフィル24の少なくとも一部分において以下の条件、すなわち、0.5

1<1、好ましくは0.5

1<0.7、最も好ましくは0.53

1<0.62、かつ0.5

2<1、好ましくは0.6

2<0.9、最も好ましくは0.7

2<0.8を満たす。n=2の場合、段高さは、上述のように2

1+a

2<3という条件を満たし、さらに1

1<1.5および1

2<1.5という条件を満たす。

別の好ましい実施形態においては、第1のプロフィルの段高さa1が、<1である一方で、第2のプロフィルの段高さa2が、>1である。とくに好ましい実施形態において、第1および第2の部分回折プロフィルの段高さは、前記回折プロフィルの少なくとも一部分において以下の条件、すなわち 0.25

1<0.45、好ましくは0.30

1<0.40、最も好ましくは0.33

1<0.37、かつ 1.20

2<1.40、好ましくは1.25

2<1.35、最も好ましくは1.28

2<1.32 を満たす。

このパラメータの選択により、近方視のための回折焦点の強度を犠牲にして、中間視のための回折焦点における強度を、高めることができ、これは、一部の患者にとって好ましいことが明らかになっている。

好ましくは、中間視および遠方視のための回折焦点は、+0.5〜+1.5ジオプタの間に相当する距離にて光軸上に位置する。これに加え、あるいはこれに代えて、近方視および遠方視のための回折焦点は、+1.5〜+2.5ジオプタの間に相当する距離にて光軸上に位置する。

とくにはa1<1かつa2>1である実施形態において、中間視および遠方視のための回折焦点は、いくつかの実施形態において、+1.5〜+2.0ジオプタの間に相当する距離にて光軸上に位置し、とくには+1.75ジオプタに相当する距離にて光軸上に位置する。これに加え、あるいはこれに代えて、近方視および遠方視のための回折焦点は、+3.0〜+4.0ジオプタの間に相当する距離にて光軸上に位置し、とくには+3.5ジオプタに相当する距離にて光軸上に位置する。

4.5mmの瞳孔サイズおよび波長が543nmの緑色光において、光軸上の位置の関数としての50サイクル/mmにおける好ましい実施形態によるIOLの変調伝達関数(MTF)は、遠方視、中間視、および近方視のための回折焦点に対応する識別可能なピークを示す。換言すると、この実施形態によれば、IOLの「3焦点性」は、瞳孔開口が充分に大きい場合に、光軸上の識別可能なMTFピークに示される。以下の具体的な実施形態に関連して理解されるように、より小さい瞳孔開口において、ピークは、MTF図においてもはや識別不可能であるように、MTFダイアグラムにおいて混ざり合うことができる。好ましい実施形態によれば、焦点は、50サイクル/mmにおけるMTFが0.1以上、好ましくは0.15以上であることを特徴とする。

好ましくは、4.5mmの瞳孔サイズ、50サイクル/mm、および波長が543nmの緑色光において、 近方視のための焦点に対応するMTF値が、中間視のための焦点に対応するMTF値よりも大きく、かつ/または 遠方視のための焦点に対応するMTF値が、近方視のための焦点に対応するMTF値よりも大きい。

この実施形態によれば、遠方視が、弱い光の条件下で生じる大きな瞳孔サイズにおいて優先される。これに加え、あるいはこれに代えて、2.0mmの瞳孔サイズ、50サイクル/mm、および波長が543nmの緑色光において、近方視のための焦点に対応するMTF値が、遠方視のための焦点に対応するMTF値よりも大きい。この実施形態によれば、例えば2.0mmという小さい瞳孔開口において、近方視のための焦点が優先される。これは、近方視は、通常は例えば読書時などの良好な光条件において必要とされるがゆえに、好都合である。WO’169のIOLを含む通常のIOLにおいて、焦点間の光の分布は、瞳孔開口とはほとんど無関係であることに留意されたい。以下の具体的な実施形態の説明から明らかになるとおり、本発明のIOLでは、開口に大いに依存する光の分配を提供することで、(光の弱い条件に対応する)大きな瞳孔サイズにおいては遠方視のための焦点に光の多くの部分を集めることができ、(良好な光条件に対応する)小さな瞳孔サイズにおいては、中間視および近方視のための焦点における強度の利益のために、遠方視のための焦点に集められる光の割合を著しく小さくすることができる。

別の実施形態においては、4.5mmの瞳孔サイズ、50サイクル/mm、および波長が543nmの緑色光において、 近方視のための焦点に対応するMTF値が、中間視のための焦点に対応するMTF値よりも小さい。

これは、a1<1およびa2>1の場合にとくに有用であることが判明している。

2.0mmの瞳孔サイズ、50サイクル/mm、および波長が543nmの緑色光において、光軸上の位置の関数としてのMTFは、好ましくは、近方視のための回折焦点から遠方視のための回折焦点まで延びる範囲において、常に0.13よりも上、好ましくは常に0.2よりも上にとどまる。これにより、広い焦点範囲にわたる良好な視覚が可能になる。当業者であれば理解できるとおり、MTFは、優先日において有効なバージョンのISO 11979−2ガイドライン「Ophtalmic implants−Intraocular lenses part 2:optical properties and test methods」の附属書Cに従って測定することができる。

好ましい実施形態においては、 第1の拡張された焦点深度が、近方視および遠方視のための回折焦点の焦点度数の間の差として定義され、 第2の拡張された焦点深度が、中間視および遠方視のための回折焦点の焦点度数の間の差として定義され 第1の拡張された焦点深度は、第2の拡張された焦点深度の整数倍であり、とくには2または3倍である。

好ましい実施形態において、回折プロフィルは、4μm〜100μmの間、とくには10μm〜50μmの間の幅を有する非垂直な段を有する。これに加え、あるいはこれに代えて、回折プロフィルは、段の上部に0.1μm以上の最小曲率半径を有する丸みを帯びたエッジを有する。したがって、好ましい実施形態において、回折プロフィルは、垂直な段と鋭いエッジとを有する従来からの鋸歯状構造に相当しないが、より良好な光学性能のために平滑化されている。このような平滑化は、当技術分野において「軟化子」とも呼ばれる適切な平滑化関数による鋭い鋸歯状構造の畳み込みによって数学的に記述することができる。

好ましい実施形態において、 第1の部分回折プロフィルは、

に位置する光軸に対する半径方向位置rnに中心があり、あるいはこれらの位置からの逸脱が平均で5%未満、好ましくは1%未満である半径方向位置に中心がある段位置を有し、第2の部分回折プロフィルは、

の半径方向位置に中心があり、あるいはこれらの位置からの逸脱が平均で5%未満、好ましくは1%未満である半径方向位置に中心がある段位置を有し、 ここで nは、プロフィルの中心から数えた段の番号であり、 F1は、第1の部分回折プロフィルの次数+1の回折焦点の焦点距離であり、 F2は、第2の部分回折プロフィルの次数+1の回折焦点の焦点距離であり、 F2は、F1の整数倍であり、とくにはF2=2・F1またはF2=3・F1である。

好ましい実施形態において、IOLは、レンズ本体を有し、光軸は、IOLレンズ本体の幾何学的中心に対して偏心させられる。

好ましくは、本発明のIOLは、眼の球面収差および/または眼の色収差を少なくとも部分的に補償し、さらには/あるいは明視野の拡大をもたらすようにさらに構成される。

本発明の一実施形態によるIOLの概略の平面図である。

図1によるIOLの概略の断面図であり、近方視、中間視、および遠方視用のための回折焦点、ならびに仮想のそれぞれの焦点が示されている。

図4aおよび図4bに示される第1および第2の部分プロフィルの重ね合わせによって生成できる本発明のIOLのための回折プロフィルの概略図である。

図3の回折プロフィルの構築に使用される第1の部分プロフィルの概略図である。

図3の回折プロフィルの構築に使用される第2の部分プロフィルの概略図である。

図3のプロフィルの最初の2つの段の拡大図であり、2つの典型的な分散を有するガウス軟化子による畳み込みを用いた平滑化を示している。

本発明の3焦点IOLについて、種々の瞳孔開口に関して、回折度数の関数としての50サイクル/mmにおけるMTFを示している。

先行技術による3焦点IOLについて、種々の瞳孔開口に関して、回折度数の関数としての50サイクル/mmにおけるMTFを示している。

本発明の実施形態による3焦点IOLについて、瞳孔開口の関数としての遠方視、中間視、および近方視のための焦点の間の光エネルギの分配を示している。

先行技術による3焦点IOLについて、瞳孔開口の関数としての遠方視、中間視、および近方視のための焦点の間の光エネルギの分配を示している。

遠方視、中間視、および近方視のための焦点における軸上色収差(LCA)を、先行技術による2つの3焦点IOLおよび本発明による2つの3焦点IOLについて示しており、各々の場合において、一方のIOLはPMMAから製作され、一方のIOLは国際公開第2006/063994号A1パンフレットに記載の本出願の出願人の独自の疎水性アクリル材料GFから製作されている。

本発明の一実施形態によるIOLの平面図であり、光学部分をIOLの幾何学的中心に対して0.3mmだけ偏心させた非対称設計を有している。

次に、本発明の原理の理解を促進する目的で、図面に示した好ましい実施形態を参照し、特定の言葉を使用して説明する。しかしながら、それらが決して本発明の技術的範囲を限定しようとするものではなく、説明されるIOLにおけるそのような変更およびさらなる改良、ならびに本明細書に示されるとおりの本発明の原理のそのようなさらなる応用が、本発明が関係する技術分野の当業者にとって現時点または将来において普通に想到され得ると考えられることを、理解できるであろう。

本発明の実施形態による眼内レンズ10の全体的な構成が、図1および図2に示されている。これらの図に見られるように、レンズは、中央光学体12を含むとともに、レンズが患者の眼に埋め込まれたときにレンズを水晶体嚢内に支持するために、この典型的な構成においては2つの可撓な支持体14であるいわゆる「ハプティクス(図2には示されていない)をレンズ10の外縁に備えている。しかしながら、例えば、より多数のハプティクス、ループ状のハプティクス、など、他の代案の構成が、当業者にとって知られており、本発明による眼内レンズに適用可能である。

本発明の図示の実施形態による眼内レンズ10は、回折型のレンズである。中央光学体12は、前面16および後面18を含み、実質的に前後方向の軸20を有する。前面16および/または後面18は、レンズ10が光軸上の屈折焦点22または「回折次数ゼロ」の焦点へと入射光の一部分を向けるような曲率を有する。換言すると、前面16または後面18に回折プロフィルが存在しない場合、図2の左側から光軸20に平行に伝搬する入射光ビームは、屈折焦点22に集光される。しかしながら、以下でより詳細に説明されるように、本発明による回折プロフィルの特定の選択によれば、実際に屈折焦点に導かれる光はごくわずかである。図示されているように、本発明の好ましい実施形態において、屈折焦点22は、「無効化」され、あるいは図2において斜線によって示されている「仮想焦点」である。

図示の実施形態において、レンズ10は、5.0mmの開口または瞳孔サイズにおいて−0.11μmの非球面収差を有する非球面性を有する。この非球面性は、無水晶体眼の適度の正の球面収差を引き起こすことによって、コントラストに対する感度と視野深度との間の自然なバランスを保証し、人間の角膜の平均球面収差は、約+0.28マイクロメートルである。別の実施形態においては、非球面性がさらに高く、角膜収差をより高度に補償することができる。これは、さらに良好な像品質を可能にすると考えられるが、レンズの光学性能が、眼におけるレンズの偏心および傾きの影響を受けやすくなるという代償を伴う。

レンズ10は、その前面16に、図1に概略的にのみ示されている回折プロフィルに似たレリーフ24を有する。回折プロフィル24は、図3に示されており、図4aに示される第1の回折プロフィル26および図4bに示される第2の回折プロフィル28の重ね合わせによって形成される。図3、図4a、および図4bにおいて、両方の軸の全ての単位は、μmである。したがって、これらの図において、プロフィルの高さが、光軸20からの半径距離rに対して大幅に誇張されていることを、見て取ることができる。

第1の回折プロフィル26は、下記の関数を近似的に満たすキノフォーム型のプロフィルである。

式1:

用語「キノフォームプロフィル」は、例えば、Donald O’Sheaらによる「Diffractive Optics−Design,Fabrication and Test」(SPIE tutorial texts;TT62(2004))に説明されており、位相制御面が滑らかに変化する回折光学素子を指す。これは、例えば入射波面に0およびπの位相差を導入する表面などの離散的ないくつかの位相制御面を有するいわゆる「バイナリ光学素子」とは異なる。この式において、H1(r)は、光軸に対する半径方向距離rの関数としての第1の部分回折プロフィル26の高さであり、Rは、レンズの外縁から光軸までの半径方向距離であり、λは、眼の感度が最大である波長(一般に、550nm)であり、n2およびn1は、レンズの材料およびその埋め込み媒体の屈折率であり、a1は、振幅パラメータ(図示の実施形態においては、0.57)であり、F1は、この第1の部分回折プロフィル26の次数+1の焦点の焦点距離(この実施形態においては、+1.8ジオプタについて555mm)である。

第2の部分回折プロフィル28も、下記の関数を近似的に満たすキノフォーム型のプロフィルである。

式2:

この式において、H2(r)は、光軸に対する半径方向距離rの関数としての第2の回折プロフィル28の高さであり、a2は、振幅パラメータ(図示の実施形態においては、0.74)であり、F2は、この第2の部分回折プロフィル28の次数+1の焦点の焦点距離(この実施形態においては、+0.9ジオプタについて1110mm)である。

式1および2は、モジュロ関数によって定義される垂直な段および鋭いエッジを有する第1および第2の部分プロフィル26,28を定めるが、実際のプロフィルのエッジは丸みを帯び、段は垂直ではなくて傾斜を有すると考えられる。第1および第2の部分プロフィル26,28の適切な形状は、上述のプロフィル関数H1(r)およびH2(r)を、この技術分野において「軟化子」と称される対応する平滑化関数によって畳み込むことによって得られる。鋭いエッジおよび段の傾斜について所望の平滑化または丸みをもたらすと考えられる種々の適切な軟化子が存在する。実際に、当業者であれば理解できるとおり、任意の畳み込みが、ステップ関数の鋭いエッジの丸みおよび垂直な段の傾斜をもたらすと考えられる。

好ましい実施形態においては、軟化子M(r)を、以下のようにガウス関数によって表すことができる。

プロフィル関数H(r)と軟化子M(r)との畳み込みは、通常の方法で以下のように定義される。

図4cが、分散σ2が下記のように畳み込みパラメータ「conv」(単位は、マイクロメートル)に関して表現される軟化子M(r)による組み合わせ後のプロフィルH(r)(後述の式3を参照)の畳み込みの結果を示している。

図4cには、convの3つの値、すなわちconv=0μm、25μm、および50μmについて、畳み込みの結果の例が示されている。conv=0μmの場合、軟化子M(r)は、ディラック(Dirac)のデルタ関数に相当し、元のプロフィルH(r)は影響を受けず、そのままである。convの値が大きくなるにつれて、段のエッジは丸みを増し、元の垂直な段の傾きが増加する。

プロフィルの鋭い段を畳み込みによって丸めることが、上述の先行の出願WO’169にすでに記載されており、傾斜した段および丸いエッジを図3、図4a、および図4bにおいても見ることができることに、注意されたい。

したがって、図3に示されるとおり、これらの部分プロフィル26,28の両者の重ね合わせからもたらされるレリーフまたは「プロフィル」24は、以下の式にほぼ当てはまる。

式3: H(r)=H1(r)+H2(r) この実施形態においては、F2=2・F1であり、すなわち第1の部分プロフィル26の1つおきの段の位置が、第2の部分プロフィル28の段に一致し、あるいは換言すると、第2の回折プロフィルは、第1の回折プロフィルの半分の平均空間周波数を有する。したがって、組み合わせによるプロフィル24は、第1の部分プロフィル26の段に第2の部分プロフィル28の段が加わることによる大きな段を、第1の部分プロフィル26の2つの段のうちの1つに対応する小さな段と交互に有する。

プロフィルがアポダイズされない場合、式1および2における係数(1−r3/R3)は、本明細書に示される実施形態の場合のように、単に1であることに留意されたい。

さらに、このようにして、第2の部分プロフィル28の次数+2の焦点は、光軸20上で、第1の部分プロフィル26の次数+1の焦点と一致する。

図3、図4a、および図4bに示した実施形態において、a1は0.57であり、a2は0.74である。これは、例えばa1=0.44およびa2=0.27であるWO’169に示された実施形態ときわめて異なる。この異なる振幅の選択は、全く異なる光学的挙動をもたらす。実際に、IOL 10は、 第2の部分回折プロフィル28の次数+1の焦点に一致する遠方視のための焦点30(図2を参照) 第2の部分回折プロフィル28の次数+2の焦点に一致し、第1の部分回折プロフィル26の次数+1の焦点にも一致する中間視のための焦点32、および 第2の部分回折プロフィル28の次数+3の焦点に一致する近方視のための焦点34 を有すると理解される。

別の実施形態においては、第2の部分プロフィル28の段が、第1の部分プロフィル26の2つおきの段に一致することができ、その場合、第1の部分プロフィル26の次数+1の回折焦点は、近方視のための焦点34に一致および寄与すると考えられる。

図示の実施形態において、光軸20上の屈折焦点22に対応する位置、すなわち次数0の回折焦点に集光される光の量は、無視できる程度でしかない。

第1および第2の部分プロフィル26,28が、或る意味で、主に「全体プロフィル」24の構築に役立つ仮想または「補助」プロフィルにすぎないことを、理解されたい。とくに、部分プロフィルの所与の焦点が、全体としての組み合わせられたプロフィルの回折パターンにも存在することは、それ自体は明らかではない。しかしながら、係数a1およびa2が適切に選択されると、全体プロフィル24は、個々の部分プロフィル26,28の回折焦点に実際に起因する回折焦点を示すと理解される。さらに、係数a1およびa2を適切に選択することによって、以下で示されるように、全体プロフィル24の異なる焦点間のエネルギの分配を、きわめて有用な方法で分配することができる。

本発明の発明者は、本発明の実施形態において、近方視のための焦点34に向けられる光の割合が、a1およびa2の合計に良好な近似にて依存する一方で、遠方視の焦点30に向けられる光の割合に対する中間視の焦点32に向けられる光の割合の比が、基本的に比a1/a2によって支配されることを発見した。さらに、本発明の発明者は、近方視、中間視、および遠方視のための3つの焦点の間の光の分配を見積もるための経験式を、以下のように導出した。

式4:%Near=20*[(a1+a2)EXP(2*(a1+a2)/1.5)] 式5:%Inter/%Far=1*[(a1/a2)EXP(2*(a1/a2))] 式6:%Far=[100−Eq4]/[1+Eq5] 式7:%Inter=100−Eq6−Eq4 ここで、「%Near」、「%Inter」、および「%Far」は、近方視、中間視、および遠方視のそれぞれの焦点34,32,30に向けられる光エネルギの割合を示し、3つの割合は、合計で100%になるように選択される。換言すると、これらの式は、それぞれの焦点の間の光の分配のみを反映し、それぞれの焦点の周囲の光の分布は反映していない。

上記の式4〜式7が、1

1+a

2<2かつ0.5

1<1かつ0.5

2<1という条件で、光の実際の分布のかなり良好な予測を与えると理解される。

眼内レンズの光学的優先度を見積もる方法は、その変調伝達関数(MTF)を実験的に決定することを含む。光学系のMTFは、例えばISO 11979−2の附属書Cに従って測定可能であり、所定の空間周波数の試験パターンにおいて光学系を透過するコントラストの割合を反映し、ここで周波数は「サイクル/mm」または「lp/mm」として定義され、「lp」は「線ペア」を意味する。一般に、空間周波数が高くなると、コントラストは低下する。第一近似として、所与の焦点に向けられた光の割合(E f%)は、50サイクル/mmにおけるMTF peak値から、以下の式 式8:%E f=MTF peak/(MTF far+MTF inter+MTF near)*100 によって得られ、 ここでfは、遠焦点、中間焦点、または近焦点のうちの1つを指す。

図5aに、焦点度数(単位は、ジオプタ)に対する本発明の実施形態による3焦点レンズ10のMTF曲線が、50サイクル/mmおよび単焦点緑色光(543nm)において、ISO 1規格による眼モデルにおける種々の瞳孔開口について示されている。点線の曲線は、4.5mmの瞳孔サイズに対応し、18.25dptの遠方視のための焦点、19.15dptの中間視のための焦点、および20.05dptの近方視のための焦点にそれぞれ対応する3つのピークを示している。2つの連続するMTFピークの間のジオプタ(dpt)での間隔は、0.9dptであり、したがって遠焦点に対する+0.9dptおよび+1.8dptの2つの度数の追加にそれぞれ対応する。このレンズの場合、4.5mmの開口において、3つの焦点の間の光の分配は、遠方視に46.67%、近方視に33.33%、中間視に20%である。

これは、遠方視に45.06%、中間視に22.89%、近方視に32.05%の分布をもたらす上記の式4、式6、および式7による光の分布によく一致する。したがって、経験的な式4〜式7が、焦点間の光の分配を非常に良好に表現することが分かる。

さらに、図5aにおいて、4.5mmの瞳孔開口において、これら3つの焦点以外の場所へと向かう光がかなり少なく、とくには図5aにあくまでも説明の目的で示されているにすぎない屈折または「0次」の焦点に対応する17.35dptの位置に向かう光が少ないことを、見て取ることができる。したがって、0次の焦点は、単に「仮想の焦点」であり、あるいは「無効化」されていると理解される。

さらに図5aは、50サイクル/mmにおけるMTF曲線を、3.75mmの瞳孔開口について一点鎖線で、3.0mmの瞳孔開口について実線で、2.0mmの瞳孔開口について破線で示している。図5aから分かるように、瞳孔開口を4.5mmから3.0mmに減少させることによって、近方視および中間視のMTFピークが、より広い単一のピークへと混ざり合うため、これらの小さな瞳孔開口において、IOLは本質的に2焦点となる。瞳孔開口を2.0mmへとさらに絞ることにより、2つの残りのMTFピークは、単一のきわめて広くかつきわめて高いピークをもたらす。これは、少なくとも部分的には、光の波面が穴の縁によってより大きな影響を被る小さな開口においてより顕著になる周知の「ピンホール」回折に起因し得る。

このピンホール回折が、焦点深度の拡大に寄与し、すなわち瞳孔開口が小さいほど、焦点の間のMTFの落ち込みがますます少なくなることは、注目に値する。2.0mmという小さい瞳孔開口においては、ピンホール効果が最大化され、MTFは、18dptと20.5dptの間の全範囲、すなわち近方視から遠方視までの全範囲にわたって、0.2よりも上である。さらに、2.0mmなどの小さな瞳孔サイズにおいて、18.25dpt(遠方視)のMTFはかなり低下するが、近方視および中間視(20.05dptおよび19.15dpt)のMTFは劇的に向上することを、見て取ることができる。これは、本発明の実施形態によるIOLの所与の焦点に向けられた光の割合を瞳孔開口の関数として示している図6aにおいても見て取ることができ、光の割合は、上記の式8で定義されるやり方でMTFに関係している。

図6aに見られるように、大きな瞳孔開口(4.5mm)においては、遠方視のための焦点へと向けられる光の割合が、近方視および中間視のための割合を上回るが、開口が小さくなるにつれて、近方視および中間視のための焦点へと向けられる光の割合が増加する一方で、遠方視のための焦点に向けられる光の割合は減少し、実際に他の2つの焦点の割合よりも低くなる。この挙動は、3焦点IOLにおいては珍しいが、実際にはきわめて好都合であり、なぜならば、遠方視は、多くの場合、瞳孔の自然な調節反射ゆえに瞳孔サイズが大きくなる傾向にある光の乏しい条件において必要とされる一方で、近方視および中間視は、典型的には、例えば読書またはコンピュータ作業などの良好な光の条件下で必要とされるからである。したがって、本発明の好ましい実施形態によるIOLは、両方の要求をきわめてよく満たす。とくに、光の乏しい条件下で近方視および中間視のための焦点よりも遠方視のための焦点により多くの光をもたらすことは、大きな瞳孔開口および薄明視の条件のもとでハローなどの光現象を抑えることにより、焦点外のより近くの像があまり激しくないことで、像品質を改善するはずである。

本発明のIOLの挙動を、MTFが図5bに比較用に示されており、それぞれの焦点間の光エネルギの分配が図6bに示されているWO’169の3焦点IOLの挙動と比較すべきである。WO’169による実施形態においては、アポダイゼーションが使用されていたことに留意されたい。図5bから分かるように、本発明のIOLと同様に、瞳孔のサイズが4.5mmから3.0mmへと減少するとき、近方視および中間視のための焦点に対応するピークが合流し、焦点深度が増加する。しかしながら、本発明のIOLとは異なり、WO’169の先行技術の三焦点レンズでは、アポダイゼーションがないと、3つの焦点の間の光の相対的分配は、瞳孔のサイズにほぼ無関係である(図6bを参照)。したがって、アポダイゼーションのないこの先行技術のIOLは、同じレンズにおいて光の少ない条件(大きな瞳孔開口)では遠方視を優位にし、良好な光条件(小さな瞳孔開口)では近方視を優位にすることが、不可能である。

本発明の3焦点IOL10のさらなる利点は、軸上色収差(LCA)を減少または補正を可能にすることである。図7が、本発明による2つのIOLおよびWO’169による2つのIOLについて、遠方視、中間視、および近方視のための焦点における軸上色収差(LCA)を示している。ここで、「LCAf」は、所与の焦点(f)における軸上色収差を示し、「f」は、焦点のうちの該当の1つ(すなわち、遠方視、中間視、または近方視)を表す。これらの焦点の各々は、図7の横軸に示されている遠方視のための焦点と比べたときの追加の光学度数(単位は、ジオプタ)に対応する。したがって、典型的な実施形態においては、図7の横軸において、遠方視のための焦点は0dptに対応し、中間視のための焦点は0.9dptに対応し、近方視のための焦点は1.8dptに対応する。

LCAfの数値は、光が単色の赤色(650nm)から単色の青色(480nm)へと変化したときに、50サイクル/mmおよび4.5mmの瞳孔サイズで光学ベンチにおいて測定され、ジオプタで表されるMTFピークのシフトによって得られる。このシフトを、3つの焦点に対応する3つのMTFピークの各々について測定することができ、その結果が図7に示されている。

図7において、実線は、異なる材料、すなわちPMMA(x印)およびGF(黒丸)から作られたW0’169による2つのIOLのLCAfの値を示しており、ここでGFは、国際公開第2006/063994号A1パンフレットに開示の本出願の出願人の独自の疎水性アクリル材料である。PMMAおよびGFのアッベ数は、それぞれ53.23および42.99である。アッベ数は、材料の分散、すなわち波長による屈折率の変化の尺度であり、大きな値は分散が少ないことを示している。WO’169の3焦点レンズにおいて、遠方視のための焦点(図7の0dpt)は、純粋に屈折焦点である。0dptにおいて、先行技術の3焦点レンズは両方とも、LCAfについて正の値を示し、PMMAの場合には0.3dptであり、GFの場合には0.65dptである。これらの材料においては、波長が短くなるにつれて屈折率が大きくなり、青色光についての光学度数が赤色光についての光学度数よりも大きくなるため、LCAfの正の値が予想される。さらに、アッベ数が小さいため、GFレンズの方が、PMMAレンズに比べてLCAfの値が大きくなることが分かる。

WO’169の先行技術のIOLにおいては、近方視(1.8dpt)のための焦点が、第1の部分回折プロフィルの次数+1の回折焦点に対応し、これに第2の部分回折プロフィルの次数+2の焦点の寄与が追加される。中間視(0.9dpt)のための焦点は、第2の部分回折プロフィルの次数+1の回折焦点に対応する。本発明の概要において説明したように、回折焦点のLCAは、波長が長くなるにつれて回折光学度数が大きくなるという意味で、「負」である。したがって、回折焦点における負のLCAが、中間視のための焦点における全体としてのLCAfを0.05(PMMA)および0.40(GF)へと低下させ、近方視のための焦点における全体としてのLCAfを0.08(PMMA)および0.15(GF)へとさらに低下させる。

さらに図7には、破線で、本発明による2つのIOLについてのLCAfの値が示されており、ここでx印は、やはりPMMAに基づく実施形態を表し、黒丸印は、GFでの実施形態を表している。図7に見られるように、本発明のIOLについて、LCAf曲線は、同じ材料で作られたそれぞれの先行技術のIOLと比べてより低い値へと垂直方向に移動している。とくに、遠方視(0dpt)のための焦点に関して、GFレンズの値LCAfは0.4ジオプタまで低下し、PMMAレンズのLCAf値は−0.03dptまで低下し、これは、本発明のこのPMMAに基づく実施形態において、遠方視のための焦点について実質的に軸上色収差がないことを意味する。

遠方視のための焦点におけるLCAがWO’169の先行技術の3焦点レンズと比べて小さくなる理由は、本発明によれば、遠方視のための焦点が回折焦点、すなわち第2の部分プロフィルの次数+1の焦点であり、したがってレンズの屈折度数に起因する正のLCAを少なくとも部分的に補償する負のLCAをもたらすからである。したがって、とくにはGF材料が使用される場合に、本発明の3焦点レンズは、WO’169の先行技術の3焦点レンズと比べ、LCAに関して明らかに好ましいと理解される。

PMMAに基づく先行技術のIOLに関しては、LCAfの平均値がすでにかなり低く、遠方視のための焦点において適度な正の値であり、近方視のための焦点において適度な負の値であり、中間視のための焦点において軸上色収差がほとんど消失する。実際、先行技術のPMMA製3焦点レンズのLCAは、GFに基づく本発明の3焦点レンズのLCAに類似している。本発明の3焦点IOLのPMMA版は、遠方視についてLCAが消失するという利点を有するが、近方視のための焦点においてLCAが−0.7dptという大きな負の値になるという代償を伴う。近方視におけるLCAfの負の値は、無水晶体眼のLCA、すなわち角膜LCAを補正するために好都合であるかもしれない。

三焦点IOLは、遠方視(例えば、+0dpt)から近方視(例えば+1.8dpt)までの広い明視域(EROV)を、中間距離における視覚の不連続または大きなギャップを伴うことなくもたらすと考えられる。図5aおよび図5bのMTF図から、このようなEROVを本発明の3焦点レンズならびにWO’169のIOLで実際に得られることが分かる。レンズのEROV性能は、USAFターゲットのキャプチャをターゲットを「デフォーカスする」ことによって行うこと、すなわち対象画像を記録しながらIOLの光軸に沿ってUSターゲットを変位させることによって、より直接的な方法でバイタル条件下で評価することができる。本出願の出願人は、本発明のIOLおよびWO’169のIOLについて、種々の波長(緑色、赤色、および青色)および種々の瞳孔開口(2.0、3.0、3.75、および4.5mm)におけるUSAF像を体系的にキャプチャした。単色の緑色光について、本発明のIOLおよびWO’169のIOLの両方が、一定の像品質を有する0dptから+2dptまでのEROVを示すことが確認された。とくに、どちらの3焦点IOLも、とりわけ2.0mmを超える瞳孔開口において0.75dpt〜1.25dptの間で像品質の低下を示した市販の2焦点IOLよりも優れていた。

光源を緑色光から赤色光または青色光に変化させると、2つの回折焦点を有する市販の回折2焦点レンズは、赤色光および青色光において基本的に遠距離および近距離のそれぞれの単焦点となり、それに付随して近距離および遠距離のそれぞれの画像品質が低下した。これとは対照的に、WO’169および本発明による2つの3焦点IOLは、青色光および赤色光のどちらにおいても3焦点のままであり、緑色光における性能と比べて像品質が青色光については遠距離で、赤色光については近距離でわずかに影響を被るが、0dptから2.25dptまでの完全なEROVを有する。

さらに、本発明のIOLのUSAF画像をWO’169によるIOLのUSAF画像と比較すると、図5aおよび図5bの比較ならびに図6aおよび図6bの比較から予想されるとおり、本発明のIOLの像品質が、大きな瞳孔開口(4.5mmなど)における遠方視および小さな瞳孔開口における近方視について優れていることが分かる。すなわち、そこに示されるとおり、本発明のIOLは、焦点間の光の分配が瞳孔のサイズにおおむね無関係であるWO’169のIOLとは対照的に、小さな瞳孔開口での近方視および大きな瞳孔開口での遠方視に有利である。

眼の軸上色収差は、眼の軸上色収差と同量かつ反対の軸上色収差を有する光学素子によって補正することができるが、そのような素子の整列がきわめて重要であり、さもないと、偏心量に比例して追加の横色収差が引き起こされる(Zhang X,Bradley A,Thibos LN.Achromatizing the human eye:the problem of chromatic parallax.J Opt Soc Am,1991;8:686−91を参照)。しかしながら、人間の瞳孔の中心は、水晶体嚢の中心に対して同心には位置せず、光軸および視軸と同軸ではない。節点によって凝視点を中心窩へと結ぶ視軸の近傍において、軸上色収差の補正は、横色収差の発生をもたらさない。一実施形態においては、光学眼内レンズ(IOL)のハプティクスを、IOLの光学中心を推定される視軸の位置または入射瞳の中心に一致させることができるよう、非対称となるように好都合に設計することができる。図8が、本発明の実施形態によるIOL10の概略の平面図であり、光学部分、すなわち回折プロフィル24が、IOLの外径に関して0.3mmだけ偏心している。

本発明を、特定の典型的な実施形態を参照して説明してきたが、特許請求の範囲によって定義される本発明の全体的な範囲を変更することなく、これらの例について修正および変更を行うことができることは明らかである。

例えば、代案の実施形態において、本発明による眼内レンズは、キノフォーム以外の種々の回折プロフィルを有してもよく、あるいは2つの重ね合わせられる部分回折プロフィルの段の周期性および距離の間の異なる比を示してもよい。部分回折プロフィルは、レンズの前面または後面の一部分においてのみ重ね合わせられてもよい。レンズは、その前面および/または後面に異なる曲率を有してもよく、さらには/あるいは曲率を有さなくてもよく、これらの曲率は、必要に応じて、非球面であっても、非球面でなくてもよい。さらに、3つの焦点を達成するために、とりわけ本明細書において上述した本発明によるレンズよりも次数が1単位だけ上であるなど、回折次数の他の組み合わせを考慮することができる。この特定の場合、段の高さは、条件2

1+a

2<3に従うと考えられる。

好ましい典型的な実施形態を、図面および以上の説明において詳細に図示および明記したが、これらは純粋に例示であり、本発明を限定するものではないと考えられるべきである。これに関して、好ましい典型的な実施形態のみが図示および明記されており、特許請求の範囲に定義される本発明の保護の範囲に現在または将来において包含される全ての変種および変更が保護されるべきであることに、留意されたい。

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