Ophthalmic lens capable of reducing chromatic aberration

申请号 JP2007507483 申请日 2005-04-05 公开(公告)号 JP2007531610A 公开(公告)日 2007-11-08
申请人 エイエムオー・フローニンゲン・ベスローテン・フェンノートシャップAMO Groningen B.V.; 发明人 パトリシア・ピールス; ヘンク・ウェーベル;
摘要 眼の色収差および少なくとも1つの単色収差を低減できる屈折パワーおよび回折パワーの両方を持つ非球面の眼科レンズの設計方法は、非球面の屈折面および回折面を組み合わせて、適切な眼モデルを選択し、前記眼モデルでの単色収差を低減する能 力 を持つ少なくとも1つの非球面を有する設計レンズを確立し、眼モデルの色収差を矯正する回折レンズ要素を確立し、レンズ表面設計を調整して、スペクトルメリット(merit)関数を満たすように重み付けされた形式で適切な高い多色像品質を得る。
权利要求
  • 眼の色収差および少なくとも1つの単色収差を低減できる屈折パワーおよび回折パワーの両方を持つ非球面の眼科レンズの設計方法であって、
    非球面の屈折表面および回折表面を組み合わせること、
    適切な眼モデルを選択すること、
    前記眼モデルでの単色収差を低減する能力を持つ少なくとも1つの非球面の表面を有する設計レンズを確立すること、
    モデル眼の色収差を矯正する回折レンズ要素を確立すること、
    レンズ表面設計を調整して、スペクトルメリット関数を満たすように重み付けされた形式で適切な高い多色像品質を得ること、を含むことを特徴とする方法。
  • レンズ設計を調整することは、
    (i)前記少なくとも1つの非球面の表面の非球面性を変化させること、
    (ii)屈折レンズパワーと回折レンズ要素パワーの比率を調整すること、
    (iii)前記回折レンズ要素のプロファイルを調整すること、
    のうちの少なくとも1つを含む請求項1記載の方法。
  • 屈折パワーおよび回折パワーを有する、予め設定した合計レンズパワーを持つ設計レンズを選択することを含む請求項1記載の方法。
  • 前記スペクトルメリット関数は、選択した照明条件に関して、波長依存の眼の感度を記述するようにした請求項1記載の方法。
  • 当該眼は、偽水晶体眼、無水晶体眼または有水晶体眼の中から選択されるようにした請求項4記載の方法。
  • スペクトルメリット関数は、人間の眼のスペクトル視感度関数である請求項5記載の方法。
  • スペクトル視感度関数は、明視野、薄明視野、または暗視野の視感度関数の中から選択されるようにした請求項6記載の方法。
  • スペクトルメリット関数は、関数の組合せから得られるようにした請求項4〜7のいずれかに記載の方法。
  • スペクトル視感度関数は、個人の眼の評価から導かれるようにした請求項5記載の方法。
  • スペクトル視感度関数は、選択した人々の評価から導かれる平均的関数であるようにした請求項9記載の方法。
  • 設計波長を選択することを含む請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  • (a)波長依存のスペクトルメリット関数を選択すること、
    (b)異なる波長での設計レンズを含むモデル眼システムのパワーを評価して、前記眼モデルの色収差を評価すること、
    (c)前記システムが色収差をどのように除去するかを記述する理想的な矯正関数を評価し、前記理想的な矯正関数を近似する波長依存のパワーについての線形矯正関数を評価すること。
    (d)前記近似的な線形矯正関数として、同じ波長依存のパワーを有する設計レンズに関して回折レンズ要素を解釈し、回折レンズ要素の回折パワーを評価し、屈折レンズパワーを調整して、回折パワーおよび屈折パワーの合計が予め設定した合計レンズパワーと適合するようにすること、
    (e)前記スペクトルメリット関数から得られる値を用いた補償からそれぞれ重み付けされた、多くの離散した波長での視覚品質に関する測定基準を計算することによって、前記レンズを含む眼モデルにおいて、視覚品質に関する多色の測定基準を決定すること、
    (f)屈折レンズパワーと回折レンズパワーの比率、設計レンズ表面の非球面性、回折レンズ要素の回折表面パータンのプロファイルまたはこれらの組合せを調整して、最適な重み付け多色視覚品質の測定基準を得ること、を含む請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  • 視覚品質の測定基準は、スペクトルメリット関数により重み付けされた、多くの選択した波長から、変調伝達関数(MTF)から得られる多色変調伝達関数(PMTF)である請求項12記載の方法。
  • 重み付けPMTFの50サイクル/mmでの空間周波数での変調が、理論限界に好適に接近しているかを評価することと、
    許容できる像品質が得られるまで、屈折レンズパワーと回折レンズパワーの比率を調整すること、とを含む請求項13記載の方法。
  • 請求項11に従属する場合、スペクトルメリット関数の最大感度波長から導かれる設計波長を選択して、回折レンズ要素から生ずる高次の焦点が可視光の範囲内で充分に低い効率を有するようにすることを含む請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
  • 設計波長は、470〜545nmである請求項15記載の方法。
  • 設計波長は、500nmである請求項16記載の方法。
  • スペクトルメリット関数の最大感度波長は、550nmである請求項15記載の方法。
  • スペクトルメリット関数は、偽水晶体で、明視野、薄明視野または暗視野の視感度関数である請求項18記載の方法。
  • 回折レンズ要素から生ずる高次の焦点の効率を決定することと、
    前記設計レンズに、可視光の範囲内で、前記高次の焦点が減少した効率を持つように、波長を除去または波長の伝達を減少させるスペクトルフィルタを導入することとを含む請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
  • 高次の焦点は2次の焦点であり、スペクトルフィルタはブルー光フィルタである請求項20記載の方法。
  • ブルー光フィルタは、420nm以下の波長を除去するようにした請求項21記載の方法。
  • 設計レンズは、ある波長範囲を除去、または選択した波長での伝達を減少させる波長フィルタが設けられる請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
  • フィルタは、ブルー光発色団である請求項23記載の方法。
  • フィルタは、特定年齢での生来の水晶体レンズと等価である請求項23記載の方法。
  • 設計波長は、スペクトルメリット関数の最大効率の波長と一致する請求項11記載の方法。
  • 設計波長は、550nmである請求項26記載の方法。
  • 眼モデルは、ナバロ(Navarro)の眼モデルである請求項1記載の方法。
  • レンズは、単焦点レンズである請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
  • 回折レンズ要素は、多くの同心リングからなる回折表面プロファイルである請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
  • 回折レンズ要素のプロファイル高さは、設計レンズと周囲媒体との屈折率の差で乗算した場合、設計波長の整数倍に等しい請求項30記載の方法。
  • (i)設計波長を550nmに選択し、ナバロによる眼モデルを選択し、スペクトルメリット関数として、偽水晶体で明視野の視感度関数を選択し、予め設定した20ジオプターのパワーを持つ非球面シリコーン製設計レンズを選択すること、
    (ii)前記偽水晶体で明視野の視感度関数から得られる値を用いてそれぞれ重み付けされた、可視範囲で離散した波長についての変調伝達関数(MTF)を計算することによって、こうして設計したレンズに関する多色変調伝達関数(PMTF)を決定すること、
    (iii)4.7ジオプターの回折パワーおよび15.3ジオプターの屈折パワーを有する設計レンズが、PMTFの50サイクル/mmの空間周波数での変調によって表されるような、適切に許容できる像品質をもたらすことを評価すること、とを含む請求項12記載の方法。
  • 設計レンズは、前側非球面で重畳された回折表面パターンを持つ等両凸レンズである請求項32記載の方法。
  • 回折表面パターンの第1ゾーンの幅は、0.95mmである請求項32記載の方法。
  • (i)設計波長を550nmに選択し、ナバロによる眼モデルを選択し、生来の人間の水晶体レンズの伝達関数および無水晶体で明視野の視感度関数の両方からなるスペクトルメリット関数を選択し、予め設定した20ジオプターのパワーを持ち、非球面の表面に重畳された回折表面プロファイルを有する非球面等両凸シリコーン製設計レンズを選択すること、
    (ii)前記スペクトルメリット関数から得られる値を用いてそれぞれ重み付けされた、可視範囲で離散した波長についての変調伝達関数(MTF)を計算することによって、こうして設計したレンズに関する多色変調伝達関数(PMTF)を決定すること、
    (iii)4.5ジオプターの回折パワーおよび15.5ジオプターの屈折パワーを有する設計レンズが、PMTFの50サイクル/mmの空間周波数での変調によって表されるような、適切に許容できる像品質をもたらすことを評価すること、とを含む請求項12記載の方法。
  • 設計レンズは、前側非球面で重畳された回折表面パターンを持つ等両凸レンズである請求項35記載の方法。
  • 回折表面パターンの第1ゾーンの幅は、1.0mmである請求項37記載の方法。
  • 少なくとも1つの単色収差は、球面収差である請求項1〜37のいずれかに記載の方法。
  • 設計レンズは、モデル角膜からの球面収差を補償するように作成された非球面の表面を有する請求項38記載の方法。
  • モデル角膜は、個人の角膜である請求項39記載の方法。
  • 前記モデル角膜は、選択した人々の平均した角膜トポグラフ決定から得られる平均的角膜である請求項39記載の方法。
  • 前記人々は、白内障手術を受けるために選択されるようにした請求項41記載の方法。
  • 充分に色収差を減少する回折要素を持つ前記設計レンズを通過する波面の収差を意味する収差項が、単色収差項を矯正する予め設定したレンズ能力から逸脱しているか否かを評価し、必要ならば、収差項が、前記予め設定した能力に充分に適合するまで、設計レンズの少なくとも1つの表面を再設計することを含む請求項1〜42のいずれかに記載の方法。
  • 球面収差を意味する収差項を評価することを含む請求項43記載の方法。
  • 前記収差項は、ゼルニケ項である請求項44記載の方法。
  • 表面の再設計は、レンズ表面を表す非球面カーブの変化を含む請求項43〜45のいずれかに記載の方法。
  • 前記設計レンズは、眼内レンズである請求項1〜46のいずれかに記載の方法。
  • 請求項1〜47のいずれかに記載の方法によって設計された眼科レンズ。
  • 色収差および少なくとも1つの単色収差を低減できる屈折パワーおよび回折パワーの両方を持つ非球面の眼科レンズであって、
    スペクトルメリット関数を満たすように重み付けされた形式で適切な高い多色像品質を得るように調整された、少なくとも1つの表面を有することを特徴とする非球面レンズ。
  • レンズ設計の調整は、
    (i)前記少なくとも1つの非球面の表面の非球面性を変化させること、
    (ii)屈折レンズパワーと回折レンズ要素パワーの比率を調整すること、
    (iii)前記回折レンズ要素のプロファイルを調整すること、またはこれらの組合せを含む請求項49記載の非球面レンズ。
  • 前記スペクトルメリット関数は、選択した照明条件に関して、波長依存の眼の感度を記述するようにした請求項49記載の非球面レンズ。
  • 当該眼は、偽水晶体眼、無水晶体眼または有水晶体眼の中から選択されるようにした請求項51記載の非球面レンズ。
  • スペクトルメリット関数は、人間の眼のスペクトル視感度関数である請求項51記載の非球面レンズ。
  • スペクトル視感度関数は、明視野、薄明視野、または暗視野の視感度関数の中から選択されるようにした請求項53記載の非球面レンズ。
  • スペクトルメリット関数は、関数の組合せから得られるようにした請求項51〜54のいずれかに記載の非球面レンズ。
  • スペクトル視感度関数は、個人の眼の評価から導かれるようにした請求項55記載の非球面レンズ。
  • スペクトル視感度関数は、選択した人々の評価から導かれる平均的関数であるようにした求項55記載の非球面レンズ。
  • 可視光の範囲内で、効率を減少させ、または回折表面プロファイルにより生ずる高次の焦点のゼロ効率を提供するスペクトルフィルタを備える請求項49記載のレンズ。
  • 回折レンズ要素に関する最大効率の波長は、スペクトルメリット関数の最大値の波長から逸脱するようにした請求項51〜58のいずれかに記載のレンズ。
  • 高次の焦点の効率を減少または除去するために、波長をフィルタ除去できる発色団を備える請求項49〜59のいずれかに記載のレンズ。
  • 前記発色団は、ブルー光フィルタとして機能する請求項60記載のレンズ。
  • 前記発色団は、420nm以下の波長をフィルタ除去する請求項61記載のレンズ。
  • 前記発色団は、ブルー光を吸収するイエロー色素である請求項61または62記載のレンズ。
  • 特定年齢での人間の生来の水晶体レンズと等価なフィルタ能力を持つスペクトルフィルタを備える請求項49記載のレンズ。
  • 請求項49〜64のいずれかに記載の単焦点レンズ。
  • 回折レンズ要素は、多くの同心リングからなる回折表面プロファイルである請求項49記載のレンズ。
  • 回折レンズ要素のプロファイル高さは、設計レンズと周囲媒体との屈折率の差で乗算した場合、設計波長の整数倍に等しい請求項60記載のレンズ。
  • 回折表面プロファイルは、レンズの後側表面もしくは前側表面、または後側表面および前側表面の両方に設けられる請求項66記載のレンズ。
  • 非球面の前側表面と、後側表面に設けられた回折レンズ要素とを有する請求項68記載のレンズ。
  • 回折レンズ要素は、多くの同心リングからなる回折表面プロファイルであり、プロファイル高さは、設計レンズと周囲媒体との屈折率の差で乗算した場合、スペクトルメリット関数の最大効率の波長より小さい請求項49記載のレンズ。
  • スペクトルメリット関数は、550nmの最大効率波長を持つ明視野の視感度関数である請求項70記載のレンズ。
  • 前記スペクトルメリット関数からの値で重み付けされた、複数の変調伝達関数から得られる多色(PMTF)の50サイクル/mmでの変調値が、少なくとも0.5である請求項49〜71のいずれかに記載のレンズ。
  • 回折パワーが4.7ジオプターに調整され、屈折パワーが15.3ジオプターに調整された、20ジオプターの合計パワーを有し、偽水晶体で明視野の視感度関数から得られる値を用いた補償からそれぞれ重み付けされた、可視範囲での離散した波長についての変調伝達関数(MTF)から計算された、多色変調伝達関数(PMTF)から決定されるような、適切な高い多色像品質を有する請求項49記載のレンズ。
  • PMTFの50サイクル/mmでの変調値が、0.75である請求項73記載のレンズ。
  • 等両凸形状を有し、シリコーン材料で製作された請求項73記載のレンズ。
  • シリコーン材料は、400nm以下の波長の光を阻止するUV吸収剤を含む請求項75記載のレンズ。
  • 非球面の表面に重畳された回折表面プロファイルを有する請求項75記載のレンズ。
  • 回折レンズ要素は、0.95mmの第1ゾーンの幅を有する回折表面パターンである請求項75記載のレンズ。
  • 回折パワーが4.5ジオプターに調整され、屈折パワーが15.5ジオプターに調整された、20ジオプターの合計パワーを有し、生来の人間の水晶体レンズの伝達関数および無水晶体で明視野の視感度関数の両方からなるスペクトルメリット関数から得られる値を用いた補償からそれぞれ重み付けされた、可視範囲での離散した波長についての変調伝達関数(MTF)から計算された、多色変調伝達関数(PMTF)から決定されるような、適切な高い多色像品質を有する請求項49記載のレンズ。
  • PMTFの50サイクル/mmでの変調値が、0.84である請求項79記載のレンズ。
  • 等両凸形状を有し、シリコーン材料で製作された請求項79記載のレンズ。
  • 非球面の表面に重畳された回折表面プロファイルを有する請求項81記載のレンズ。
  • 回折レンズ要素は、回折表面パターンである請求項79記載のレンズ。
  • 回折の第1ゾーンの幅は、1.0mmである請求項83記載のレンズ。
  • 非球面の表面は、前記レンズおよび角膜を備える眼モデルにおいて、角膜により生ずる球面収差を減少できる非球面性を有する請求項49〜84のいずれかに記載のレンズ。
  • 前記角膜は、個人または選択したグループの個人から導出された角膜データからのモデル角膜である請求項85記載のレンズ。
  • 色収差および少なくとも1つの単色収差を低減できる屈折パワーおよび回折パワーの両方を持つ回折レンズ要素および屈折レンズ要素を有する非球面眼科レンズであって、
    ブルー光フィルタとして機能する発色団を含むレンズ。
  • 前記発色団は、420nm以下の波長をフィルタ除去する請求項87記載のレンズ。
  • 前記発色団は、イエロー色素である請求項87記載のレンズ。
  • 回折レンズ要素は、多くの同心リングからなる回折表面プロファイルである請求項87記載のレンズ。
  • 回折表面プロファイルは、波長依存のレンズパワーおよびレンズの色収差を除去するような矯正カーブの最良近似である線形関係に従って波長に依存する回折パワーを有する請求項90記載のレンズ。
  • 非球面の表面は、前記レンズおよび角膜を備える眼モデルにおいて、角膜により生ずる球面収差を減少できる非球面性を有する請求項85〜91のいずれかに記載のレンズ。
  • 前記角膜は、個人または選択したグループの個人から導出された角膜データからのモデル角膜である請求項92記載のレンズ。
  • 発色団は、可視範囲で、回折レンズ要素により生ずるいずれの高次の焦点の効率を除去または減少できる請求項87〜93のいずれかに記載のレンズ。
  • 回折表面プロファイルは、レンズの後側表面もしくは前側表面、または後側表面および前側表面の両方に設けられる請求項90記載のレンズ。
  • 非球面の前側表面と、後側表面に設けられた回折レンズ要素とを有する請求項95記載のレンズ。
  • 说明书全文

    例えば、色収差が波面に対して付与されるなど、眼を通過する波面は眼の光学部品によって影響を受ける。 その理由は、眼の光学部品での材料の屈折率が、異なる波長で相違するからである。 異なる波長を持つ光は、異なる量で屈折され、網膜(retina)上で別々の場所に入射して、異なる色は同じ点に結像できない。 これを色収差(chromatic aberration)と称する。

    近年、眼の単色(monochromatic)収差の矯正に多くの関心が集まっている。 全ての単色収差が人間視覚システムにおいて矯正されると、眼の色収差を正体を暴くことができることが判明した。 文献「Yoon G. and Williams DR: "Visual performance after correcting the monochromatic and chromatic aberrations of the eye". J. Opt. Soc. Am. A, 19,266- 275 (2002)」を参照のこと。 従って、眼の光学品質を最適化するために、単色収差および色収差の組合せが矯正に必要になる。 回折パターンは、眼からの色収差として、反対符号の色収差で通過する波面を提供するように構成できるであろう。 こうして回折パターンは、眼の光学部品からの波面に導入される色収差を矯正するために使用できる。

    色収差についての幾つかの背景的な理論は、例えば、文献「David A. Atchison and George Smith, "Optics of the Human Eye"」の第17章で見つかる。 回折パターンの理論的背景は、論文「"Practical design of a bifocal hologram contact lens or intraocular lens", Allen L. Cohen, Applied Optics 31(19)(1992)」で見つかる。

    少なくとも1つの表面に、色収差を矯正するための回折パターンを備える眼科(ophthalmic)レンズは、例えば、米国特許第5895422号、米国特許第5117306号、米国特許第5895422号から知られている。 しかしながら、これらのレンズは、眼の表面により提供される他の収差を補償していない。 国際公開第01/89424号は、球面収差を補償する非球面レンズを設計する方法を教示している。 しかしながら、幾つかの応用では、これらのレンズは、眼に、色収差の増加をもたらすことになる。 従って、単色収差および色収差も矯正できて、屈折誤差を矯正する眼科レンズのニーズが存在する。

    眼の色収差は、文献「Thibos et. al., "Theory and measurement of ocular chromatic aberration", Vision Res. , 30,33-49 (1990)」、文献「Marcos et. al, Vision Research, 39,4309-4323, (1999)」に概説された方法に類似した、バーニヤ(vernier)法を用いて測定できる。 色収差を測定する代替の方法は、教本「"Optics of the Human Eye" 著者David A. Atchison、George Smith, 発行者Butterworth-Heinemann, ISBN 0-7506-3775-7」に記載されている。

    眼の軸上(longitudinal)色収差は、極めてよく理解されており、あらゆる被験者で極めて類似した値を持つことが示されている(文献「Thibos et. al. , "The chromatic eye: a new reduced eye model of ocular chromatic aberration in humans", Applied Optic, 31,3594-3600, (1992)」)。 それは、年齢で安定していることも示されている(文献「Mordi et. al., "Influence of age on chromatic aberration of the human eye", Amer. J. Optom. Physiol. Opt., 62, 864-869 (1985)」)。 これにより、眼の平均的な色収差を矯正する眼科レンズが設計可能になる。

    国際公開第02/084381号は、ハイブリッド屈折/回折眼科レンズを設計する方法を記載しており、色収差は、回折要素により減少するようになり、球面収差は、非球面要素の使用により減少するようになる。 米国特許第6338559号はまた、アポディゼーション(apodization)フィルタを用いることによって、単色収差および色収差を原理的に低減するレンズを提案している。 これらの努は意義深いものであるが、レンズを人間の眼のニーズに適合するように更に最適化しつつ、色収差の低減および視覚品質を更に改善するニーズが未だ存在している。

    発明の説明 本発明の主な目的は、スペクトルメリット(merit)関数及び/又はスペクトルフィルタを用いて、屈折回折レンズ要素を最適化することによって、改善した視覚品質および色収差を低減可能な改善した能力を持つ、少なくとも1つの高次単色収差を矯正できる屈折パワーおよび回折パワーの両方を持つタイプの眼科レンズを提供することである。

    添付クレームを含む下記セクションでは、ここで定義される多くの用語が使用されている。 用語「非球面」は、回転対称、非対称及び/又は不規則な表面、即ち、球面と異なる全ての面を参照する。 用語「単色収差」は、3次以上の次数の半径のゼルニケ(Zernike)多項式(ピストン(piston)、先端(tip)および傾斜(tilt)を除く)によって表される光学的収差、あるいは当業者に理解される他の測定規準(metrics)によって記述されるものと等価の収差を参照する。 国際公開第01/89424号を参照すると、収差項の意義はより詳細に記載されている。 単色収差は、例えば、非点収差(astigmatism)、コマ(coma)収差、球面収差、トライフォイル(trifoil)、テトラォイル(tetrafoil)または高次の収差項とできる。

    「色収差」は、該用語は当業者に理解されるものとして従来から定義されているが、好ましくは、軸方向または軸上の色収差を実質的に参照する。 この用語、およびパワーに依存した回折波長で回折レンズ要素を用いて色収差を低減する可能性については、国際公開第02/084381号により詳細に説明されており、これは、参照によりここに組み込まれる。

    「モデル眼」は、眼の生理学的特性を再現するために用いられる光学的表現である。 それは、典型的には、膜(cornea)、様液(aqueous humor)、レンズ、ガラス質(vitreous)のものなど、眼の全ての又は選択した要素を含む。 それは、非球面または球面の構成要素を用いてもよい。 それは、単色または多色の説明でもよい。 これらの要素は、どの特性を再現したいかに応じて定義される。

    当業者は、ナバロ(Navarro)により記述された(1985)眼のモデルを含むような、幾つかの異なるモデルに知識を有する。 眼のモデルは、個々の患者の個々の眼または選択したグループの眼についての測定をベースとしてもよい。 当業者は、本発明に従って設計されたレンズの正確なパラメータは、選択した眼モデルに依存することは理解している。

    「スペクトルメリット関数」は、多色の光学品質を損なうレンズ設計での欠点を減少させるために用いられる波長依存の関数である。 それは、可視域での光の波長に対応した重み因子を提供する任意の関数である。 この関数は、離散した波長についての視覚品質の単色測定基準を計算して、これらの単色測定基準を、波長依存のスペクトルメリット関数の離散値で重み付けすることによって用いられる。

    これらの重み付け値を合計すると(二乗の合計の使用も可能である)、設計者に対して所定のレンズ設計の多色光学品質を示す単一の値が得られる。 これは、多色像品質として定義される。 眼の光学品質の測定基準は、非限定的ではあるが、次のようなものがある。

    a)多色性または単色性の収差。 収差が減少すると、眼の光学品質が改善する。 収差の量は、球面収差、コマ収差または非点収差などの個々の収差の量を示すことによって、あるいは2乗平均平方根の波面収差を示すことによって、記述できる。

    b)スプレッド(spread)関数。 スプレッド関数は、網膜上に形成される像の形状を記述する。 スプレッド関数の例は、ポイントスプレッド関数やラインスプレッド関数などである。 これらの関数から導かれる測定値、例えば、ストレール(Strehl)比などは、光学品質の測定基準としても使用される。

    c)伝達(transfer)関数。 伝達関数は、網膜上に形成される像の相対コントラストを記述する。 光学伝達関数、あるいはその構成要素、変調伝達関数と位相伝達関数は、光学品質の測定基準としても使用される。

    上述のように、光学品質についての3つの測定基準は、網膜上に形成される像の欠点を示す。 結果として、これらは被験者の視覚品質を損なうものであり、これらの測定基準の各々を「視覚品質の測定基準」と称する。

    視覚品質の他の測定基準は、視覚性能の直接的な測定であって、非限定的ではあるが、視力(acuity)法、コントラスト感受性法などがある。

    最初の一般態様では、本発明は、眼またはモデル眼の色収差および少なくとも1つの単色収差を低減できる屈折パワーおよび回折パワーの両方を持つ非球面の眼科レンズの設計方法に関する。 一般に、この設計方法は、これらの最適な関係を見つけるための球面および回折面の組合せと、適切な眼モデルの初期の選択と、眼モデルでの単色収差を低減する能力を持つ非球面設計レンズの確立とを含む。 さらに、少なくとも部分的に、眼モデルの色収差を矯正する回折レンズ要素が導入され、スペクトルメリット関数を用いて重み付けされた形式での多色の像品質が評価される。 多色の像品質は、レンズ表面を変化させることによって、最適化される。 最適な表面設計を見つけることは、屈折レンズパワーと回折レンズパワーの比率またはレンズ表面の非球面性を調整すること、あるいは、こうした再設計を組合せることによって、回折レンズ要素のプロファイルまたは組合せを調整することを含む。 スペクトルメリット関数は、好ましくは、選択した照明及び/又は観察の条件について、眼の波長依存の感受性を記述する。 より好ましくは、スペクトルメリット関数は、人間の眼のスペクトル視感度(luminosity)関数である。 スペクトルメリット関数について異なる眼の条件は、適切に選択可能である。 従って、有水晶体(phakic)眼、無水晶体(aphakic)眼または偽水晶体(pseudophakic)眼についてのスペクトルメリット関数が採用できる。 特に好ましいスペクトルメリット関数は、明視野(photopic)、暗視野(scotopic)または薄明視野(mesopic)の視感度関数の中で選択される。 スペクトルメリット関数の組合せ、そして個人または選択した人々のグループについて導出されるスペクトルメリット関数は、本発明を用いた使用法にも想定可能である。 こうしたグループは、白内障(cataract)外科に適しているなど、ある眼の病気を持っていたり、角膜屈折手術などの特定の眼科手術処理を経験した等、異なる基準に従って選択できる。

    設計レンズは、好ましくは、開始する屈折パワーおよび回折パワーを有する、予め設定された合計レンズパワーを有している。 この方法は、好ましくは、適切な設計波長の選択をさらに含む。

    上記セクションで概説したような方法は、異なる波長での設計レンズを含むモデル眼システムのパワーの評価をも含むことができ、これにより、眼モデルの色収差の評価、該システムが色収差をどの程度除去しているかを記述する理想矯正関数の評価、そしてこのことから前記理想矯正関数に近似する、波長依存のパワーの線形矯正関数が評価可能であるかの評価を含むことができる。

    そして、近似的な線形矯正関数と同じ波長依存のパワーを有する設計レンズについての回折レンズ要素は解釈することができ、そして、回折レンズ要素の回折パワーを評価し、回折パワーおよび屈折パワーの合計が予め設定された合計レンズパワーに適合するように、屈折レンズパワーを調整する。 この方法は、視覚品質についての多色の測定基準の決定をさらに含み、これは、多くの離散した波長で視覚品質についての測定基準を計算することによって得られ、それらの各々は、スペクトルメリット関数から得られる対応した値を用いて重み付けされる。 このことから、レンズ表面設計は、最適な重み付け多色視覚品質の測定基準が得られるまで調整される。 好ましくは、視覚品質の測定基準は、スペクトルメリット関数から得られる対応した値によってそれぞれ重み付けされた、離散した波長についての単色の変調伝達関数(MTF)であり、視覚品質の多色測定基準は、より詳細に後述するように、前記MTFから解釈される多色の変調伝達関数(PMTF)である。 充分に高い視覚品質が得られているか否かを評価するのに適した方法は、重み付けPMTFの、ミリメートル当り50サイクルの空間周波数での変調が理論限界に接近しているか否かを検討することである。 そして、屈折レンズパワーと回折レンズパワーの比率、レンズ表面の非球面性または回折面のプロファイル、あるいはこれらの組合せは、許容できる像品質が得られるまで調整可能である。 代替として、軸上色収差(スペクトルメリット関数を用いて重み付けされている)を最小化する場合、他の波長依存の像品質の測定基準、例えばストレール比などが、最適化の際に採用できる。 レンズ表面の非球面性を変化させることは、典型的には、こうした表面を記述する非球面性の式において円錐定数(CC)を変化させることで行ってもよい。 これは、詳細な明細書で後述している。

    本発明の方法で採用されるスペクトルメリット関数は、種々の原理に従って選択することができる。 このメリット関数は、人間の眼のスペクトル視感度関数、または光の異なる波長に対する眼の感度であってもよい。 眼の視感度関数は、周囲の照明条件に応じて変化する。 こうして眼科レンズは、スペクトルメリット関数として薄明視野の視感度関数の使用を選択することによって、薄明視野の条件について最適化されることになる。 文献「Kinney, JA (1955) "Sensitivity of the eye to spectral radiation at scotopic and mesopic intensity levels": J Opt Soc Am 45 (7): 507-14」、文献「Kokoschka, S. and WK Adrian (1985) "Influence of field size on the spectral sensitivity of the eye in the photopic and mesopic range": Am J Optom Physiol Opt 62 (2): 119-26」を参照。 さらに、スペクトルメリット関数として明視野の視感度関数の使用を選択することによって、眼科レンズは明視野の条件について最適化できる(CIE Technical Report (1990). CIE1988 2 spectral luminous efficiency function for photopic vision, CIE Publ. No. 86)。 あるいは、スペクトルメリット関数として暗視野の視感度関数の使用を選択することによって、レンズは暗視野のの条件について最適化できる(CIE Proceedings 1951)。 視感度関数は、人種(Dwyer, WO and L. Stanton (1975). "Racial differences in color vision: do they exist? " Am J Optom Physiol Opt 52 (3): 224-9)、眼科の病気(Alvarez, SL , PE King-Smith, et al. (1983). "Spectral threshold: measurement and clinical applications. " Br J Ophthalmol 67 (8): 504-7)、色覚欠損(第一色盲者(protanope)、第二色盲者(deuteranope)、第三色盲者(tritanope))の存在(Wyszecki, G. , Stiles WS, (1982). Science: Concepts and Methods, Quantitative Data and Formulae, 2nd Edition."John Wileyand Sons, New York)でも変化する。これらの全ての要因は、スペクトルメリット関数の設計者の選択に入ってもよい。生来の人間のレンズなど、眼の媒体の透過率やスペクトルフィルタの存在も、人間の眼の視感度関数に影響を与える。例えば、無水晶体被験者の視感度関数は、有水晶体被験者のものとは極めて異なる。生来の人間のレンズは、光のある波長をフィルタリングするためである(波長当りのフィルタリングする量は、被験者の年齢に依存する)(FS and RA Weale (1959). "The variation with age of spectral tranmissivity of the living human crystalline lens."Gerontologia 3: 213-231)。スペクトルメリット関数は、これらの波長依存のパラメータを反映するように選択してもよい。視感度関数は、観察する目標エリアおよび観察する角度でも変化し(Kokoschka, S. and WK Adrian (1985). "Influence of field size on the spectral sensitivity of the eye in the photopic and mesopic range. " Am J Optom Physiol Opt 62 (2): 119-26)、メリット関数は、軸上(中心窩(foveal))または周辺の観察条件にレンズを設計するために使用できる。 スペクトルメリット関数は、異なるスペクトル内容を持つ照明条件のため、または特定のスペクトル内容を持つ異なる物体の観察のために用いられる眼科レンズを設計するためにも使用できる。 これらの場合、視覚風景及び/又は照明条件のカラースペクトルは、スペクトルメリット関数での重み付け因子として含んでいてもよい。 従って、本発明では、眼科レンズは、色収差および少なくとも1つの単色収差を矯正するように設計可能であり、明視野の照明条件、暗視野の照明条件、薄明視野の照明条件下の患者、色盲患者(第一色盲者、第二色盲者、第三色盲者)、あるいは軸上(中心窩)観察または軸外観察(周辺)の患者に対して視覚品質を改善する。

    本発明のレンズの最適化の方法では、多くの設計パラメータを考慮する必要があり、得られるレンズは、多くの異なる構成を有することができるとともに、回折面及び/又は非球面の形状は、スペクトルメリット関数を用いて最適化されるようになる。 屈折/回折レンズを含む眼モデルのMTFは、波長依存性を有するようになる。 波長依存のMTFは、スペクトルメリット関数により重み付けされ、レンズ設計は、重み付けMTFを最大化するように最適化されるようになる。 像品質の波長依存の何れの測定基準もスペクトルメリット関数によって重み付け可能であり、レンズ設計を最適化するために用いられる。

    本発明の1つの好ましい実施形態によれば、スペクトルメリット関数は、人間の眼のスペクトル視感度関数である。 視感度関数は、個人から由来するものでもよく、人種的な背景、特定の眼科の病気の存在、色覚欠損で変化するため、選択した特定の人々から導いてもよい。 より詳しくは、スペクトルメリット関数は、明視野の視感度関数、薄明視野の視感度関数、暗視野の視感度関数、あるいはこれらの関数の組合せの中から選択される。

    本発明の1つの設計原理によれば、設計波長は、スペクトルメリット関数の最大効率の波長と一致し、一例として、550nmに設定される。

    本発明の方法の特定の態様によれば、設計レンズには、所望の波長範囲を除去または部分的に除去する波長フィルタが設けられる。 フィルタは、例えば、ブルー光の発色団(chromophore)でもよく、特定の年齢での生来の水晶体レンズと等価な光吸収を提供するフィルタでもよい。 適切なブルー光の発色団は、イエロー色素でもよい。 当業者は、数多くの適切なイエロー色素および、これらをレンズの中に一体化する方法、例えば、モノマーを形成するレンズとの共重合による方法について認識している。 ここでは、米国特許第5274663号、第5528322号、第5543504号、第5662707号、第5693095号、第5919880号、第6310215号、第6448304号が参照される。 その他に、下記セクションで説明するような二焦点性を矯正する際、該発色団は、網膜上に結像されずに、望しくない色収差に関与するであろう波長をフィルタ除去するために使用できる。 発色団材料の含有は、色収差の矯正を助ける。 その理由は、フィルタ除去された波長は、最適化手順に組み込む必要がなくなったり、あるいはスペクトルメリット関数においてより低い重み因子を提供するようになり、得られるレンズ設計は、残りの波長またはスペクトルメリット関数においてより高い重み因子を持つ波長に関して、より良好に矯正される。 代替として、異なる波長を異なる程度にフィルタ除去するスペクトルフィルタが、本発明では使用できる。 例えば、生来の人間のレンズに類似した伝達プロファイルを持つスペクトルフィルタが選択できる。 これにより、少なくともより短い波長が部分的に除去されるようになる。

    本発明の方法の他の特定の態様によれば、回折レンズ要素によって導入されるようなレンズの二焦点性は、回避または少なくとも部分的に除去できる。 回折レンズの効率は、波長に依存して変動する。 回折レンズを通常設計波長550nm(眼のピーク感度)で用いた場合、レンズ効率は、より低い波長およびより高い波長で低くなるが、これらの波長に関して高次の焦点の効率が増加するようになる。 その結果、特定の波長において、レンズは二焦点レンズとして振る舞うようになる。 可視光の範囲内では、具体的にはこれがより低い波長で生ずるようになり、1次および2次の焦点がほぼ等しい効率を持つようになる。 この現象を回避するために、本発明では、550nmより低い設計波長を採用することを提案しており、これにより可視光の範囲外の二焦点波長を除去している。 一実施形態では、設計波長を500nmに設定し、選択したスペクトルメリット関数は、偽水晶体(pseudophakic)で明視野の視感度関数(最大感度を有し、またはスペクトルメリット関数のピークが550nm)である。 代替として、設計したレンズの多焦点性を回避するために、高次の焦点(回折レンズ要素から生ずる)についてレンズの著しい効率となる波長が評価され、これらの波長の伝達を除去したり、かなり減少できるスペクトルフィルタが備えられ、これにより多焦点性の問題を本質的に除去できる。 一実施形態では、スペクトルフィルタは、好ましくは420nm以下の波長を除去するブルー光フィルタである。

    本発明の方法で設計したレンズで矯正される予め設定された単色収差は、好ましくは、球面収差である。 好適には、設計レンズは、個々の患者の角膜形状から解釈されるモデル角膜、あるいは、選択された人々、例えば、前述した国際公開第01/89424号で詳しく説明しているように、白内障手術を受けた選択された人々の平均化した角膜形状の決定から得られる平均的な角膜であるモデル角膜からの球面収差を補償する非球面の表面を有する。

    国際公開第02/084381号でも説明しているように、この方法では、充分に色収差を減少する回折要素を持つ前記設計レンズを通過する波面の収差を意味する収差項が、単色収差項を矯正する予め設定したレンズ能力から逸脱しているか否かを評価し、必要ならば、収差項が、前記予め設定した能力に充分に適合するまで、設計レンズの少なくとも1つの表面を再設計している。

    回折レンズ要素は、多くの同心リングからなる回折表面プロファイルとすることができ、回折表面プロファイルのプロファイル高さは、設計レンズと周囲媒体との間の屈折率の差を乗算すると、設計波長の整数倍に等しい。

    1つの特定の実施形態では、設計波長は550nmに設定され、ナバロ(Navarro)の眼モデルが選択され、偽水晶体で明視野の視感度関数がスペクトルメリット関数として用いられる。 20ジオプターの予め設定したパワーを持つ非球面のシリコーン製設計レンズが選択される。 そのように設計したレンズの多色変調伝達関数(PMTF)は、偽水晶体で明視野の視感度関数から得られる値を用いた補償からそれぞれ重み付けされた、可視範囲での離散した波長についての変調伝達関数(MTF)を計算することによって得られる。 4.7ジオプターの回折パワーおよび15.3ジオプターの屈折パワーを有する設計レンズが解釈され、PMTFの1ミリメートル当り50サイクルの空間周波数での変調によって表されるような、適切に許容できる像品質をもたらすことが判る。 変調伝達関数および得られる多色伝達関数を解釈するために、390〜760nmの可視範囲で10nmステップの38個の離散した波長を使用した。 そのように設計したレンズは、0.95mmゾーン幅の回折表面パターンの第1ゾーンを用いて前側非球面で重畳された回折表面パターンを持つ等両凸レンズ(equi-biconvex)である。

    他の特定の実施形態では、設計波長は550nmであり、眼モデルはナバロによるものであり、スペクトルメリット関数は、生来の人間の水晶体レンズの伝達関数および無水晶体で明視野の視感度関数の両方からなる。 20ジオプターの予め設定したパワーを持つ非球面のシリコーン製設計レンズが、非球面で重畳された回折表面プロファイルとともに用いられる。 そのように設計したレンズの多色変調伝達関数(PMTF)は、選択したスペクトルメリット関数から得られる値を用いた補償からそれぞれ重み付けされた、可視範囲での離散した波長についての変調伝達関数(MTF)を計算することによって得られる。 4.5ジオプターの回折パワーおよび15.5ジオプターの屈折パワーを有する設計レンズが解釈され、PMTFの1ミリメートル当り50サイクルの空間周波数での変調によって表されるような、適切に許容できる像品質をもたらすことが判る。 変調伝達関数および得られる多色伝達関数を解釈するために、390〜760nmの可視範囲で10nmステップの38個の離散した波長を使用した。 そのように設計したレンズは、1.0mmゾーン幅の回折表面パターンの第1ゾーンを用いて前側非球面で重畳された回折表面パターンを持つ等両凸レンズである。

    本発明の方法を採用する1つの適切な方法は、下記のステップを含む。
    ・適切なスペクトルメリット関数および設計波長を選択するステップ。
    ・所定の屈折パワーおよび少なくとも1つの単色収差の所定の量の非球面(レンズ内の発色団材料有りまたは無し)を有する屈折非球面の眼科レンズを持つ眼モデルを選択するステップ。
    ・異なる波長で前記眼モデルのパワーを評価して、前記眼モデルの色収差を決定するステップ。
    ・パワーが波長でどのように変化するかを近似的に再現する矯正関数を評価して、スペクトルメリット関数により重み付けされた眼モデルの色収差を理想的に補償するステップ。
    ・前記矯正関数を適切に近似する、パワーが波長でどのように変化するかの線形関数を見つけるステップ。
    ・この線形関数に対応した回折プロファイルの暫定ゾーンを計算して、この回折プロファイルの回折パワーを計算するステップ。
    ・回折プロファイルに関して計算したパワーの量だけ、屈折眼科レンズの屈折パワーを減少させるステップ。
    ・多色MTF(スペクトルメリット関数により重み付けした)を計算するステップ。
    ・多色MTFを評価し、必要に応じて、適切に高い多色像品質が得られたPMTFにより得られ、眼科レンズの合計パワーを所定の値に維持するようになるまで、屈折対回折パワーを調整するステップ。

    必要に応じて、得られたPMTFで表される視覚品質を更に改善するために、レンズ表面の非球面性を変更したり、または回折表面パターンのプロファイル高さやプロファイルステップの設計を変更するなどして、追加のレンズ設計変更を行ってもよい。

    本発明はまた、該方法の原理を用いて設計した眼科レンズを含むものであり、好ましくは、眼科レンズは、欠陥のある生来の水晶体レンズとの置換を助ける眼内(intraocular)レンズである。 レンズの前側表面は、回折プロファイルが重畳した、非球面の表面とすることができる。 代替として、レンズの前側表面は、非球面の表面で、レンズの後側表面は、平面で、回折プロファイルを有する。 さらに他の組合せが可能である。 例えば、回折プロファイルは、前側表面および後側表面の両方に設けることができる。 当業者は、代替のレンズ構成を容易に識別できる。 眼科レンズは、有水晶体または偽水晶体の眼内レンズ(IOL)、眼鏡レンズまたはコンタクトレンズに構成することができる。 後述する例では、レンズは、偽水晶体IOLである。 後述する例のレンズで用いられる材料は、米国特許第5444106号に記載された折り畳み可能なシリコーン製高屈折率材料である。 他の材料もこれらのレンズに使用することができる。 例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ヒドロゲル(hydrogels)、ポリアクリレート(acrylics)が適切な材料である。 例示したレンズは、20Dのパワーを有する。 しかしながら、レンズは、他の何れの適切なパワーを有するように設計できる。 負のレンズも可能である。

    最も一般的には、本発明に係る非球面眼科レンズは、屈折パワーおよび回折パワーの両方を有し、色収差および少なくとも1つの単色収差を低減できるとともに、先に定義したようなスペクトルメリット関数を用いて重み付けした形式で高い多色像品質を得るために、上述で提案したように調整されたレンズ形状を有する。 レンズは、ブルー光フィルタとして機能する発色団を含んでもよい。 適切には、発色団は、ブルー光を吸収するイエロー色素である。 回折レンズ要素は、好ましくは、多くの同心リングからなる回折表面プロファイルであり、回折表面プロファイルのプロファイル高さは、設計レンズと周囲媒体との間の屈折率の差で乗算した場合、レンズ設計プロセスで採用される設計波長の整数倍に等しい。

    本発明の詳細で例示する説明 本発明における回折表面プロファイルの形状は、いわゆる位相関数によって特徴付けることができる。 この位相関数は、光線が回折表面を通過するときに付与される、追加的位相を記述している。 この追加的位相は、光線が表面に入射するときのレンズの半径に依存している。 放射状に対称な回折表面に関して、この関数は、下記の式(1)を用いて記述することができる。

    ここで、rは半径座標、λは波長、DF0,DF1等は多項式の係数である。 回折表面は、この位相関数に依存した単焦点または多焦点の特性を有するように設計することができる。

    球面収差を補償するために、好ましくは、式(2)で記述される側面高さを持つ非球面の表面がレンズの屈折部分に導入される。 非球面の表面は、眼の光学部品およびレンズの回折部分によって導入される球面収差を打ち消すように構成できる。 眼の光学部品全部は、必ずしも考慮する必要はない。 一実施形態では、眼の角膜により導入される球面収差を測定して、角膜によりもたらされる球面収差だけを補償し、必要ならばレンズの回折部分により導入される球面収差も補償することで足りている。 例えば、ゼルニケ項は、眼の光学表面を記述するために使用でき、そして、球面収差を補償するように適合したレンズの非球面の表面を構成するためにも使用できる。 (表1)は、最初の15個の正規化したゼルニケ項および各項が意味する収差を示している。 球面収差は、11番目の正規化したゼルニケ項である。 ゼルニケ項で表される収差を補償するのに適合したレンズの設計は、国際公開第01/89424号でより詳細に説明している。

    ここで、Rはレンズの半径座標、ccは円錐定数、AD,AEは、多項式拡大の係数である。

    レンズの球面収差は、レンズの形状因子によって影響を受ける。 球面の屈折レンズの球面収差は、凸平(convex-plano)レンズによって最小化できる(Atchison DA, "Optical Design of Intraocular lenses. I: On-axis Performance", Optometry and Vision Science, 66 (8), 492-506, (1989))。 眼全体の球面収差は、波面センサを用いて測定することができる。 角膜だけを検討する場合は、周知のトポグラフ測定法が使用できる。 こうしたトポグラフ法は、例えば、文献「"Comeal wave aberration from videokeratography: accuracy and limitations of the procedure", Antonio Guirao and Pablo Artal, J. Opt. Soc. Am. Opt. Image Sci. Vis. , Jun, 17 (6), (2000)」に開示されている。 波面センサは、米国特許第5777719号(Williams et. al.)に記載されている。

    本発明では、球面収差の量はレンズの形状因子に依存している。 球面収差そして色収差を少なくとも部分的に矯正する回折パターンを使用することも可能である。 これは、回折プロファイルの位相関数の高次を変更することによって行うことができる(低次またはr の項(式(1))は、レンズの近軸特性を記述する)。

    他のタイプの単色収差も、非球面の屈折表面により矯正することができる。 表面の形状は、矯正される収差の次数が高くなるほど、より複雑になる。 非球面の表面を用いて一般的な収差を補償するために、側面高さが下記の式によって記述できる。

    これに拘わらず、他の記述も可能である。

    ここで、asiは多項式の係数である。

    本発明に従って設計した眼科レンズは、眼とともに、MTF(50)(50サイクル/mmでの変調伝達関数)として表したとき、色収差を補償せずに、本発明のレンズと同じ球面収差を補償する非球面レンズよりも少なくとも約40%高い性能を発揮する多色像品質を提供することが大いに望ましい。 多色像品質の高い値は、色収差の量が小さく、単色収差の量も小さいことを示す。

    本発明では、多色像品質iは、異なる照明条件下、または異なる観察条件下、あるいは異なる人々のために異なる光の波長に対する眼の感度を反映するように重み付けされる(即ち、明視野、暗視野、薄明視野の視感度関数、観察する風景または観察する風景を照明するのに用いる光の異なるスペクトル内容を反映する視感度関数、異なる人種の人々、眼の病気の存在または色覚欠損のための視感度関数を用いて)。 こうして、これらの特定の状況または人々のグループに関してレンズは最適化されるようになる。

    多色像品質は、下記のように定義できる。

    多色MTF−それぞれ計算または測定した波長についてのMTFは、スペクトルメリット関数f(λ)により重み付けされる。

    レンズの形状は、特定の波長範囲(例えば、眼により伝達される波長または可視範囲の波長)についてPMTFを最大化することによって最適化される。

    軸上色収差(LCA)(即ち、設計波長とλ との間の有効焦点距離の差)は、検討した各波長に関してスペクトルメリット関数により重み付けされる。 そして、レンズの形状は、この重み付け軸上色収差(wLCA)を最小化するように最適化される。

    該レンズは、モデル眼で定義されたような球面収差および色収差を矯正することができる。 眼の球面収差は、ゼロと1.5ジオプターの間になるが、色収差は、典型的には、2.5ジオプターに達する("Optics of the Human Eye" written by David A. Atchison and George Smith)。

    本発明で例示した回折レンズ要素は、多くの同心リングからなる回折表面プロファイルである。 リング間の距離は、レンズ中心から減少している。 2つのリング間のエリアは、ゾーンと呼ばれる。 第1ゾーンの幅は、他の全てのゾーンの幅を定義する定数である。 文献「AL Cohen in Applied Optics 31 (19)(1992)」を参照。 ゾーン幅は、レンズの回折パワーを定義する。 パラメータは、スペクトルメリット関数を用いて最適化されるようになる。

    第1の例によれば、レンズは、単焦点レンズとなり、プロファイル高さは、設計レンズと周囲媒体との間の屈折率差で乗算すると、設計波長の整数倍に等しい。 設計波長として550nmが用いられる。 これは、明視野条件で、網膜が最大感度(明視野の視感度関数のピーク)を有する波長だからである。 この例では、明視野の照明条件に関してレンズの性能を最適化するように選ばれる。 プロファイル高さは、設計レンズと周囲媒体との間の屈折率差で乗算すると、1個の設計波長に等しく、レンズは、第1次数で最大の効果を有するようになる。 一般には、設計波長は、回折/屈折レンズの設計における変数と考えてもよく、スペクトルメリット関数を選択する際に検討してもよい。 一方、プロファイル高さは、設計波長(λ /Δn)の任意の整数倍に比例してもよく、選択した設計波長は、レンズが最適化される照明および観察条件に依存することになる。 暗視野条件については、設計波長は、510nm、暗視野の視感度関数のピーク近傍になるであろう。 設計波長として、何れの波長も使用できる。 そして、レンズは、この波長の光に対して単焦点となろう。

    収差の矯正は、全て完全な矯正でもよく、部分的な矯正でもよい。 さらに、全ての矯正は、眼の1つ又はそれ以上の部品の収差に基づくものでもよい。 矯正は、一定の人々の平均値または個々の患者の測定値、あるいは平均値と個々の測定値の組合せに基づくものでもよい。 一定の人々は、特定の年齢範囲にある人々のグループでもよく、例えば、眼の病気や角膜手術を有する人々のグループでもよい。 色収差に関して、値は、人類全てと実質的に同じであり、全ての種類の人々の平均値を利用して、レンズの色収差を矯正することが可能である。 当然ながら、球面収差について同じことを行うことができるが、この場合、人々のグループを選択したり、全ての個人について球面収差を測定することが好ましいであろう。 球面収差は、色収差と比べて、眼ごとに大きく異なるからである。

    本発明に係るレンズの設計に関して、別々の可能性が存在している。 1つの可能性は、個人ごとにレンズを設計することである。 そして、色収差、球面収差、選択した照明条件についての視感度関数、および患者の眼の屈折誤差が測定され、上述した方法によるこれらの値から、1つのレンズが設計される。 もう1つの可能性は、選択したカテゴリーの人々からの平均値を使用して、このカテゴリーに属するほぼ全ての人々に適合するレンズを設計することである。 そして、異なるパワーを有するものの、これらのグループの人々の範囲内の患者に対して球面収差および色収差について同じ減少を提供するようなレンズを設計することが可能になる。 このグループの人々は、例えば、年齢グループ、または特定の眼の病気を持った人々のグループ、あるいは角膜手術を受けた人々のグループでもよい。 さらに、色収差の平均値と、各パワーにつき球面収差のある範囲で異なる値を有するレンズキットを提供することも可能である。 これは、大部分の人間の眼では色収差がほぼ同じであることから、好まれるであろう。 これにより、個々の眼(あるいは、自分が設計していた場合の角膜、および眼内レンズ)の屈折誤差および球面収差を測定して、これらの測定値に一致するように、このレンズキットから1つのレンズを選択することが必要であろう。

    下記のセクションでは、眼内レンズ(IOL)の3つの例について説明し、スペクトルメリット関数を用いて設計している。 例示したIOLは、偽水晶体眼の球面収差および色収差を矯正している。

    各例は、球面収差を矯正するための非球面レンズ表面と、色収差を矯正するための回折表面プロファイルを使用している。 各例において、レンズ形状は、スペクトルメリット関数を用いて球面収差および色収差を矯正するように最適化されている。 各例において、色消しレンズ(achromat)の設計を最適化するように選択されたスペクトルメリット関数は、無水晶体眼の明視野視感度関数である。 代替として、暗視野の視感度関数、薄明視野の視感度関数、または他の適切に選択した波長依存のメリット関数が、他の対応した条件についてのレンズ設計を最適化するように使用することもできる。 非球面レンズ表面は、眼の表面の球面収差だけでなく、回折レンズプロファイルにより導入される球面収差を矯正する。 以下の実施例2では、IOL材料は、発色団(スペクトルフィルタ)を含有している。 この発色団は、生来の人間の眼に類似したフィルタ特性を有し、その結果、より低い波長を少なくとも部分的にフィルタ除去する。 これは、最適化手順において手助けとなる。 実施例4では、IOL材料が、UVブロッカーおよびイエロー色素を含有している。 例としたIOLの構成は、論文「Navarro et al, "Accommodation dependent model of the human eye with aspherics." JOSA A , 2 (8), 1273-1281, (1985)」からの眼モデルとポリシロキサンの眼内レンズ材料のデータに基づいて、以下に全て説明している。 光学評価は、OSLO光学設計ソフトウエア(Lambda Research Corporation, Littleton, MA, USA)を用いた光線追跡によって行われる。

    (実施例1)
    スペクトル感度メリット関数として、無水晶体眼の明視野の視感度関数を用いて、新しいレンズが最適化される。

    背景理論:
    角膜および屈折眼内レンズ(IOL)の両方とも、長い波長とともに焦点距離が増加することを意味する正の色収差を有する。 生来のレンズの代わりに20ジオプターのシリコーン製屈折眼内レンズとともに、ナバロの眼モデル(1985)を使用した場合、色収差は、異なる波長で眼モデルのパワーを計算することによって評価できる。 その結果は、図1に類似したグラフとなる。 回折プロファイルは、負の色収差を有する。 プロファイルは、多くのリング(ゾーン)からなる。 1次の回折次数で働く回折レンズに関して、レンズのパワーは、下記の式によって定義できる。

    ここで、Pはレンズパワー、λは設計波長(m)、wは回折プロファイルの第1ゾーンの半幅(半径)である。 色収差(CA)は、下記の式のように記述できる。

    回折レンズパワーは、波長に対して線形的に関連している。 屈折レンズパワーと波長との関係は、屈折系では、一般には線形ではない。 このことは、図1に示している。 眼モデルは、非線形の関係を有し、回折レンズは、線形の関係を有する。 眼モデルについての理想的な矯正を代表するカーブも示している。 従って、完全な矯正は、回折レンズを用いて行うことができない。 スペクトルメリット関数(f(λ))の使用により、回折プロファイルの特性は最適化することができ、この例で説明するように、この不完全な矯正の影響を最小化している。

    レンズの説明:
    例としたレンズは、ポリシロキサン材料で製作されている。 この材料は、標準のUVフィルタを含有し、これは、波長400ナノメートル以下の全ての光が阻止されることを意味する。 これらのフィルタは、通常、眼内レンズの中に組み込まれる。 このレンズに関して選択した設計波長は、550nmである。 さらに、レンズは、偽水晶体眼の明視野の視感度関数に基づいたスペクトルメリット関数を用いて最適化した。

    この偽水晶体眼の明視野の視感度は、無水晶体眼の視感度関数およびポリシロキサン材料のUVフィルタ特性から導くことができる。 無水晶体眼の視感度関数は、代表的なグループの人間の被験者で測定した(Verriest, G. (1974). "The spectral curve of relative luminous efficiency in different age groups of aphakic eyes. " Mod Probl Ophthalmol 13(0): 314-7 Griswold, MS and WS Stark (1992). "Scotopic spectral sensitivity of phakic and aphakic observers extending into the near ultraviolet. " Vision Res 32(9): 1739-43))。 この例で使用したスペクトルメリット関数は、図2に示している。

    この例で使用したレンズの形状は、等両凸レンズである。 レンズの前側表面は、非球面の屈折表面を備え、そこに回折プロファイルが重畳している。 このレンズの回折パワーと屈折パワーの比率は、スペクトルメリット関数を用いて最適化し、眼モデルの重み付け色収差は最小化し、眼モデルの多色変調伝達関数(これも重み付け)は最大化した。 回折プロファイルは、4.7ジオプターのレンズパワーを有し、一方、非球面の屈折レンズは、15.3Dのレンズパワーを有する。 得られる合計レンズパワーは、20ジオプターである。 回折プロファイルの第1ゾーン幅は、0.95mmであり、38個のリングが、完全な6.0mmのIOL光学系を充足するために必要となる。

    眼の寸法、屈折率および眼の媒体の分散は、ナバロ(1985)が記述したように用いている。 この眼モデルは、非球面の角膜を含む。 眼モデルおよびレンズに関する表面情報は、(表2)で与えられる。 設計したレンズは、選択した眼モデルに依存する。 別の眼モデルあるいは個々の患者または患者グループからの実際の生理学データから構築される眼モデルを用いて、レンズを設計することが可能であることに留意すべきである

    レンズの挙動:
    設計したレンズの性能は、眼モデルにおいて、390〜760nm(10nmステップ)の可視範囲の38個の離散波長に関して評価される。 焦点は、ここでは、多色MTF(変調伝達関数)が50サイクル/mmでその最大値を持つポイントとして定義される。 多色MTFは、眼が伝達する全ての波長でのMTF結果の重み付け平均により決定される。 波長依存のMTFの重み付けは、異なる波長に関する網膜の相対感度を表す、明視野照明条件下で無水晶体眼の視感度を用いて行った。 下記の計算は、4.5mmアパーチャ(瞳)について行われる。

    異なる波長に関する実際の後側焦点距離(ABFL)値は、色の焦点差の存在、定義上は、軸上色収差の量を示す。 図3は、焦点変化−波長を示す。 組合せ屈折/回折レンズは、焦点の変動量が小さく、色収差が低い程度であることを示す。 最大偏差が生ずる波長は、低い値のスペクトルメリット関数を持つ波長であり、これらの偏差は、眼が(設計波長550nmから最も異なる波長)に対して比較的鈍感になる波長で生ずることを示している。

    (表3)および図4は、球面屈折レンズ、非球面屈折レンズおよび組合せ屈折/回折レンズに関する50サイクル/mmでの変調を示す。 屈折/回折レンズもまた非球面の前側表面を持つことに留意する。 下記の表は、2つの非球面レンズが球面収差を矯正し、単色条件下で回折限界の性能が得られることを示している。 屈折/回折レンズについて、多色性能も回折限界に近づいている。

    (実施例2)
    発色団材料を含むスペクトル感度メリット関数として、無水晶体眼の明視野の視感度関数を用いて、新しいレンズが最適化される。

    この例は、屈折/回折レンズ材料が発色団を含有する場合(レンズが波長依存の伝達関数を有することを意味する)での手順を説明する。 この例では、屈折/回折眼内レンズ設計が、スペクトルメリット関数を用いて、実施例1で概説したものと類似した手順に従って波長依存MTFを重み付けして、再び最適化される。 この場合、スペクトルメリット関数を用いて最適化した発色団およびレンズの回折部分の組合せは、色収差をより良好に最小化し、多色MTFを最大化する。 材料は、一定の波長を完全または部分的にフィルタ除去するスペクトルフィルタを含有し、影響のある波長が多色MTFにほとんど関与しなくなるためである。 最適化のために、スペクトルフィルタは眼モデルに含めることができ、スペクトルメリット関数が最適化手順に適用される前に、その影響が多色MTFに含まれるようになり、等価には、フィルタが眼モデルから無視でき、レンズの伝達因子が、スペクトルメリット関数での他の重み付け関数に追加できる(波長の関数として)。

    レンズの説明:
    例としたレンズは、生来の水晶体レンズと等価な発色団を含有するポリシロキサン材料で製作される。 このレンズに関して選択した設計波長は、550nmであり、その形状は等両凸レンズである。 レンズの前側表面は、非球面の屈折レンズを備え、そこに回折プロファイルが重畳している。

    レンズの屈折部分とレンズの回折部分とのパワー比率は、スペクトルメリット関数により重み付けした多色MTFを用いて最適化している。 この場合、スペクトルメリット関数は、生来の人間のレンズの伝達関数(波長の関数として)および偽水晶体眼の明視野の視感度関数の両方からなる。 スペクトルメリット関数は、生来のレンズの伝達関数を含むように調整したため、屈折パワーと回折パワーの最適な比率は、実施例1のものと異なる。 この場合、回折プロファイルは、4.5ジオプターのレンズパワーを有し、一方、非球面の屈折レンズは、15.5Dのレンズパワーを有する。 得られる合計レンズパワーは、再び20ジオプターである。 回折プロファイルの第1ゾーン幅は、1.0mmであり、36個のリングが、完全な6.0mmのIOL光学系を充足するために必要となる。 レンズの周辺では、回折リングが互いに40ミクロン離れている。

    眼の寸法、屈折率および眼の媒体の分散は、ナバロ(1985)が記述したように用いている。 この眼モデルは、非球面の角膜を含む。 眼モデルおよびレンズに関する表面情報は、(表4)で与えられる。 設計したレンズは、選択した眼モデルに依存する。 別の眼モデルあるいは個々の患者または患者グループからの実際の生理学データから構築される眼モデルを用いて、レンズを設計することが可能であることに留意すべきである

    レンズの挙動:
    屈折/回折IOLを含む眼モデルを評価するために、390〜760nm(10nmステップ)の可視スペクトルにある38個の離散波長を用いた。 焦点は、ここでは、多色MTF(変調伝達関数)が50サイクル/mmでその最大値を持つポイントとして定義される。 多色MTFは、使用した全ての波長でのMTF結果の重み付け平均により決定される。 波長の重み付けは、スペクトルメリット関数−異なる波長に関する網膜の相対感度を表す、明視野照明条件下で眼の標準的な視感度を用いて行った(明視野照明条件下での無水晶体眼の視感度に対する生来のレンズの伝達関数の追加と等価である)。 計算は、4.5mmアパーチャ(瞳)について行われる。

    図5は、現在の例および非球面屈折レンズに関して、ABFLまたは焦点変化−波長を示す。 レンズを設計するために用いたスペクトルメリット関数も図5に示している。 組合せ屈折/回折レンズは、焦点の変動が小さく、色収差が低い程度であることを示す。 最大偏差が生ずる波長は、低い値のスペクトルメリット関数を持つ波長であり、これらの偏差は、眼が(設計波長550nmから最も異なる波長)に対して比較的鈍感になる波長で生ずることを示している。

    (表5)および図6は、球面レンズ、非球面屈折レンズおよび組合せ屈折/回折レンズに関する50サイクル/mmでの変調を示す。 屈折/回折レンズもまた非球面の前側表面を持つことに留意する。 この表は、2つの非球面レンズが球面収差を矯正し、単色条件下で回折限界の性能が得られることを示している。 屈折/回折レンズについて、多色性能もほぼ回折限界である。

    (実施例3)
    回折レンズ要素の二焦点挙動を回避。 実施例1の設計レンズ(単焦点)に関し、回折レンズ要素は、光の波長に依存する効率を有する。 設計波長では、レンズの効率は100%であり、これは、光の100%が、意図した焦点に向けられることを意味する。 他の波長では、第1次焦点の効率が減少するが、他の回折次数の焦点の効率は増加する。

    図7では、別々の回折次数についての効率の変化を示している。 グラフは、一定の波長についてレンズが二焦点になることを示している。 図7では、回折レンズは、550nmの設計波長を有する。 このレンズは、397nmと1070nmの波長で二焦点となる。 低い波長(397nm)だけが可視光の範囲内になる。

    可視光範囲での二焦点挙動を回避するには、2つの方法がある。

    1. 特定の波長での光を阻止する。 例えば、この場合、±420nm以下の波長の光は、スペクトルフィルタにより、少なくとも部分的に阻止されるべきである。

    2. 回折レンズの設計波長を変える。 例えば、設計波長を500nmに低くすると、二焦点のポイントは369nmまでシフトする。 図8を参照。 この波長は、かろうじて可視であり、現行市販のIOLで通常用いられるUVブロッカーによっても阻止されるようになる。

    (実施例4)
    代替のスペクトルフィルタを用いて、レンズ材料に関して最適化した新しいレンズ。 実施例2では、波長の関数として、生来の人間の眼と同一である特定の伝達関数を有するレンズ材料を使用した。 スペクトルメリット関数は、無水晶体眼の視感度関数を、生来の水晶体レンズの伝達関数と組み合わせている。 この組合せは、眼の標準(有水晶体眼)視感度と等価である。 ここでは、例えば、ブルー光について網膜を保護したり、全体の像品質を改善したり、レンズ設計の二焦点性を回避したり、あるいは他の目的のために、眼科レンズでの使用に特別に設計された代替スペクトルフィルタを使用している。

    レンズの説明:
    この例でのレンズは、伝達特性を除いて、実施例2のレンズと同様である。 レンズは、ポリシロキサンまたはPMMAで製作され、UVおよび短波長のブルー光を阻止するために、UVブロッカーとイエロー色素(例えば、Eastman Yellow 035- MA1)を含有する。 レンズは、図9に示すような伝達カーブを有する。 スペクトルメリット関数を得るために、レンズ伝達は、眼の無水晶体の明視野視感度と組み合わされる。 新しいスペクトルメリット関数の場合、実施例2と同じ方法を用いて、レンズが最適化されている。 最適化したレンズは、4.7Dの回折レンズパワーを有し、一方、合計レンズパワーは、再び20ジオプターである。

    レンズの挙動:
    最適化したレンズは、50サイクル/mmで、0.82の多色MTFを有する。 予想したように、この値は、実施例1と実施例2の設計の間であり、実施例1はフィルタ無し、実施例2は比較的強いフィルタを有する。 挙動は、一般的な規則に従い、多くの光がフィルタ除去されるほど、システムは、単色システムのように振る舞うようになる。

    眼モデルおよび回折レンズに関して、屈折パワーと波長の関係の図を示す。

    実施例1で設計したレンズを最適化するのに用いたスペクトルメリット関数を示し、明視野の照明条件下での偽水晶体眼のスペクトル感度関数である。

    実施例1によって設計したレンズに関して、50サイクル/mmでの最良結像位置を示す。

    実施例1で設計した屈折/回折レンズに関する多色MTFを示し、球面屈折レンズおよび非球面屈折レンズの多色MTFと比較して示す。

    実施例2で説明した最終のレンズ設計の実際の後側焦点距離を示し、このレンズを設計するのに用いたスペクトルメリット関数も併記している。

    実施例2で設計した屈折/回折レンズに関する多色MTFを示し、球面屈折レンズおよび非球面屈折レンズの多色MTFと比較して示す。

    550nmの設計波長を持つレンズに関して、390〜1190nmの波長範囲内で別々の焦点の効率を示す。

    設計波長が500nmに変化した場合の効率の変化を示す。

    UVブロッカーおよびイエロー色素を有するレンズの伝達曲線を示す。

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