光学材料の屈折率を修正する方法および結果として得られた光学視部材

申请号 JP2014513634 申请日 2012-05-29 公开(公告)号 JP2014527839A 公开(公告)日 2014-10-23
申请人 ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッドBausch & Lomb Incorporated; ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッドBausch & Lomb Incorporated; ユニヴァーシティー オブ ロチェスター; ユニヴァーシティー オブ ロチェスター; 发明人 スミス,トーマス; エイチ ノックス,ウェイン; エイチ ノックス,ウェイン; エム ジャニ,ダルメンドラ; エム ジャニ,ダルメンドラ; ディン,リー;
摘要 光学高分子材料の屈折率を修正する方法が開示されている。この方法は、光学高分子材料の所定の領域をフェムト秒レーザパルスで連続的に照射して、その材料内に屈折率分布構造を形成する工程を含む。光学素子は、前面と後面およびそれらの面と交差する光軸を有する光学高分子レンズ材料、および前面と後面との間に配置され、光軸に対して45?から90?で傾斜した第1の軸に沿って配置された少なくとも1つのレーザ修正GRIN層を含み、隣接するセグメントの少なくとも一部の少なくとも1つに亘り、各セグメントに沿って屈折率の変動により特徴付けられる。
权利要求
  • 光学素子の屈折度を変化させる方法において、
    光学素子に、前面と後面およびそれらの面と交差する光軸を有する光学高分子レンズ材料を提供する工程、および 前記前面と前記後面との間に配置された少なくとも1つのレーザ修正屈折率分布(GRIN)層を、可視または近IRレーザからの光パルスを前記光学高分子レンズ材料の領域に沿って走査することによって、該光パルスで形成する工程、
    を含み、
    前記少なくとも1つのレーザ修正GRIN層は、非修正高分子レンズ材料の屈折率に対して屈折率が変化している複数の隣接する屈折セグメントを含み、前記GRIN層は、(i)走査方向に直交する前記隣接する屈折セグメントの部分、および(ii)走査方向に沿った前記屈折セグメントの部分:の少なくとも一方の屈折率の変動によって特徴付けられている方法。
  • 前記前面と前記後面との間に配置された少なくとも1つのレーザ修正GRIN層が、前記光軸に対して約45°から135°の間に向けられた第1の軸に沿って配置されている、請求項1記載の方法。
  • 前記高分子レンズ材料が光増感剤を含む、請求項1または2記載の方法。
  • 前記光増感剤が、750nmから1100nmのレーザ波長範囲の間で少なくとも10GMの2光子吸収断面を有する発色団を含む、請求項3記載の方法。
  • 前記光増感剤が、重合性モノマーの一部であるか、または前記光学高分子レンズ材料内に物理的に分散されている、請求項3または4記載の方法。
  • 前記光パルスを光学高分子レンズ材料の領域に沿って走査する工程が、0.01nJから20nJのパルスエネルギーを有する連続した一条のレーザパルスを含む、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
  • 前記光学素子が眼内レンズまたは角膜内レンズである、請求項1から6いずれか1項記載の方法。
  • 前記複数の隣接する屈折セグメントが1から5μmの独立した線幅を有し、2つの隣接する屈折セグメントのセグメント間の間隔が、該2つの隣接する屈折セグメントの平均線幅より小さい、請求項1から7いずれか1項記載の方法。
  • 前記複数の隣接する屈折セグメントが実質的に平行なセグメントである、請求項1から8いずれか1項記載の方法。
  • 前記複数の隣接する屈折セグメントが、前記第1の軸に沿った中心点から外側に突出した同心セグメントである、請求項1から8いずれか1項記載の方法。
  • 前記複数の隣接する屈折セグメントが弓形または湾曲セグメントである、請求項1から8いずれか1項記載の方法。
  • 前記GRIN層の複数の隣接する屈折セグメントが、(i)走査方向に直交した屈折セグメントの部分、および(ii)走査方向に沿った屈折セグメントの部分:の少なくとも一方の屈折率の一定の正の変化によって特徴付けられる、請求項1から11いずれか1項記載の方法。
  • 前記GRIN層の複数の隣接する屈折セグメントが、(i)走査方向に直交した屈折セグメントの部分、および(ii)走査方向に沿った屈折セグメントの部分:の少なくとも一方の屈折率の一定の率の増加または減少する正の変化によって特徴付けられる、請求項1から11いずれか1項記載の方法。
  • 前記少なくとも1つのレーザ修正GRIN層が二次プロファイルを有する、請求項1から13いずれか1項記載の方法。
  • 前記少なくとも1つのレーザ修正GRIN層がほとんどまたは全く散乱損失を示さない、請求項1から14いずれか1項記載の方法。
  • 前記少なくとも1つのレーザ修正GRIN層を形成する工程が、2から10のレーザ修正GRIN層を形成する工程を含む、請求項1から15いずれか1項記載の方法。
  • 前記少なくとも1つのレーザ修正GRIN層を形成する工程が、前記第1の軸に対して実質的に平行な第2の軸に沿って該少なくとも1つのレーザ修正GRIN層の上かまたは下のいずれかに配置された2から10のレーザ修正GRIN層を形成する工程を含む、請求項1から15いずれか1項記載の方法。
  • 各GRIN層は、2μmから10μmの独立した厚さを有し、前記複数のGRIN層はほとんどまたは全く散乱損失を示さない、請求項17記載の方法。
  • 前記2から10のGRIN層は、5μmから10μmの厚さを有する非修正高分子レンズ材料の層間の間隔を有する、請求項17または18記載の方法。
  • 光学素子において、
    前面と後面およびそれらの面と交差する光軸を有する光学高分子レンズ材料、および 前記前面と前記後面との間に配置され、前記光軸に対して45°から135°の第1の軸に沿って配置された少なくとも1つのレーザ修正GRIN層であって、非修正高分子材料の屈折率に対して屈折率が変化した複数の隣接する屈折セグメントを含み、(i)前記隣接する屈折セグメントの横(transverse)断面、および(ii)前記屈折セグメントの側(lateral)断面:の少なくとも一方の方向に沿った屈折率の変動により特徴付けられる、少なくとも1つのレーザ修正GRIN層、
    を備えた光学素子。
  • 前記複数の隣接する屈折セグメントが線セグメントである、請求項20記載の光学素子。
  • 前記複数の隣接する屈折セグメントは弓形または湾曲セグメントである、請求項20記載の光学素子。
  • 前記高分子レンズ材料が増感剤を含む、請求項20から22いずれか1項記載の光学素子。
  • 前記光増感剤が、750nmと1100nmの間で少なくとも10GMの2光子吸収断面を有する少なくとも1つの2光子吸収発色団を含む、請求項23記載の光学素子。
  • 各GRIN層の複数の隣接する屈折セグメントが、1から5μmの独立した線幅を有することができ、2つの隣接する屈折セグメントのセグメント間の間隔が、該2つの隣接する屈折セグメントの平均線幅より小さい、請求項20から24いずれか1項記載の光学素子。
  • 前記屈折率の変化が、屈折セグメントの横断面、および屈折セグメントの側断面の少なくとも一方に沿った、屈折率の一定の正の変化である、請求項20から25いずれか1項記載の光学素子。
  • 前記屈折率の変化が、屈折セグメントの横断面、および屈折セグメントの側断面の少なくとも一方に沿った、屈折率の一定の率の増加または減少する正の変化である、請求項20から25いずれか1項記載の光学素子。
  • 前記高分子レンズ材料がヒドロゲルである、請求項20から27いずれか1項記載の光学素子。
  • 眼内レンズまたは角膜内レンズから選択される、請求項20から28いずれか1項記載の光学素子。
  • 说明书全文

    本発明の実施の形態は、レーザを使用して、以下に限られないが、眼内レンズ(IOL)、コンタクトレンズ、膜内レンズ(corneal inlays)などの光学成分または素子、ヒドロゲルまたは疎性アクリレート材料を含む他のそのような光学成分または素子の屈折特性を修正する方法、結果として得られる光学成分または素子、および他の用途に関する。

    一般に、眼内レンズには、偽水晶体IOLおよび水晶体IOLと称される、2つのタイプがある。 前者のタイプは、通常は、除去された白内障の水晶体を置き換えるために、眼の天然の水晶体を置き換える。 後者のタイプは、既存の水晶体を補うために使用され、永久的な矯正レンズとして機能する。 この矯正レンズは、眼の屈折率異常を補正するために前眼房または後眼房内に埋め込まれる。 埋め込むべきレンズの度(すなわち、無限遠で発生する光からの網膜上の点焦点)は、各患者の目の長さおよび角膜の曲率の術前測定に基づいて決定される。 この術前測定は、患者が手術後に視矯正を、たとえあるとしても、わずかしか必要ないことを望んで行われる。 残念ながら、測定誤差、変動する水晶体の位置決め、または創傷治癒のために、手術を経験したほとんどの患者は、手術後のある形態の視力矯正なくして、最適な視力を享受できないであろう。 一般的な(非調整式)IOLの度は、固定されており、埋め込み後に原位置で調節できないので、ほとんどの患者は、視力を最適化するための白内障手術の後にメガネやコンタクトレンズなどの矯正レンズを使用しなければならない。

    術後の矯正レンズの見込みある代替物の1つは、その屈折特性が、人の目に挿入した後に修正できる、光調節式眼内レンズである。 そのようなレンズが、以後カルフーン(Calhoun)特許と称する、特許文献1に報告されている。 この光調節式レンズは、(i)第1のポリマーマトリクス、および(ii)刺激誘発重合可能な屈折率修正組成物(RMC)を含むと言われている。 述べられたように、記載されたレンズの一部が十分な強度の光に曝露されると、RMCが第2のポリマーマトリクスを形成する。 このプロセスの結果として、光調節された度の修正されたレンズが形成されると言われている。

    カルフーンの特許に記載されたように、第1のポリマーマトリクスおよびRMCは、RMCを構成する成分が、第1のポリマーマトリクス内に拡散できるように選択される。 言い換えると、ゆるい第1のポリマーマトリクスは、より大きいRMC成分と組み合わされる傾向にあり、きつい第1のポリマーマトリクスは、より小さいRMC成分と組み合わされる傾向にある。 適切なエネルギー源(例えば、熱または光)への曝露の際に、RMCは、一般に、光学部材の曝露領域に第2のポリマーマトリクスを形成する。 曝露後に、未曝露領域のRMCは、時間の経過と共に曝露領域に入り込む。 曝露領域に入り込むRMCの量は、時間依存性であり、制御可能であると言われている。 十分な時間が経過したら、RMC成分は、再度均衡化し、レンズ材料(すなわち、曝露領域を含む第1のポリマーマトリクス)全体に亘り再分布するであろう。 その領域がエネルギー源に再曝露されたときに、その領域に入り込んだRMCは重合して、第2のポリマーマトリクスの形成をさらに増加させる。 このプロセス(曝露に、拡散を可能にする適切な時間間隔が続く)は、光学部材の曝露領域が所望の性質(例えば、度、屈折率、または形状)に到達するまで、繰り返してよい。 次いで、光学部材全体が、エネルギー源に曝露されて、レンズ材料中の残りのRMCを重合させることによって、所望のレンズ特性を「固定化(lock-in)」する。 概して、レンズの度は、RMCの入り込みおよびその後の重合により生じる形状変化によって変わる。

    特許文献2には、カルフーンの特許に記載された光調節式レンズに適量の放射線を適切なパターンで照射する方法および設備が記載されている。 この方法は、あるパターンでレンズに放射線を入射させるように変調放射線源を調整し、入射する放射線の量を制御する各工程を含むと言われている。 入射する放射線の量は、照射の強度および持続期間を制御することによって制御される。

    本出願人は、0.5nJから1000nJのパルスエネルギーを有する可視または近IRレーザからの極短パルスを使用して、光学高分子材料の屈折率を修正する方法を以前に記載した。 特許文献3を参照のこと。 光の強度は焦点体積内の材料の屈折率を修正するのに十分であるが、その焦点体積のすぐ外側の部分は、レーザ光によって最小しか影響を受けない。 焦点体積内の照射によって、大部分(非照射)の高分子材料の屈折率に対して、0.005以上の屈折率の正の変化によって特徴付けられる屈折光学構造が生じる。 特定の照射条件下で、特定の光学材料において、0.06の屈折率変化が測定された。 光学材料の照射領域は、屈折構造が充填された二次元面積または三次元体積の形態をとり得る。 その屈折構造は、高分子材料の選択した領域に亘りレーザを走査して、レンズに球面、非球面、ドーナツ形、または円筒形の矯正を与えることのできる屈折光学構造を生じることによって、形成される。 実際に、レンズに正または負の度の矯正を生じるために、どのような光学構造を形成しても差し支えない。 さらに、光学構造は、単一のレンズ部材として働くように、垂直に積み重ねても、または高分子材料に別々の面に書き込んでも差し支えない。 特許文献4において、出願人等は、調査手法としてラマン分光法を使用して、観察された屈折率の変化を説明するかもしれない、もしあるとしても、何の構造的、化学的または分子の変化が光学高分子材料の焦点体積内で生じているかを決定することを記載した。

    特許文献5において、出願人等は、光増感剤を含有する光学高分子材料中に屈折度の変化を提供するための類似のプロセスを記載している。 この増感剤は、屈折構造を形成するために使用される2光子プロセスの光効率を向上させるために高分子材料中に存在する。 ある場合に、高分子材料を横切ってレーザ光が走査される速度は、光増感剤の含有によって100倍増加させることができ、それでも、その材料の屈折率を同様に変化させる。

    特許文献6は、眼内レンズ用高分子材料の屈折率をレーザ光で修正することによって、その材料に光誘起化学変化を与え、レンズの焦点距離(度)または非球面特徴の変化をもたらすことのできる材料を記載すると言われている。 その材料における光誘起の化学反応は、200nmから1500nmの広いスペクトル域にわたるレーザ光への材料の曝露によって生じると言われている。 200nmから400nmのUV光の場合、光誘起の化学反応は単光子プロセスであると言われるのに対し、2光子プロセスは400nmから1500nmの光に想定されている。 313nmのレーザパルスおよび0.05J/cm 2から2J/cm 2に及ぶ総照射線量を使用した光誘起の化学反応しか記載されておらず、このことは、出願人等にとって意外なことではない。 早くから、出願人等は、高分子材料に光学変化を誘起することを期待して、類似の結合破壊/結合形成手法を調査してきた。 出願人等には、UV光が必要であることが分かり、材料のよく観察された屈折率の変化のような化学的または構造的な変化を誘起するための光効率的な2光子プロセスは、依然として理解しにくいままであった。

    特許文献7は、レーザ焦点(位置(loci))が5μmから50μmの深さまで修正される、眼内レンズなどのレンズを記載すると言われている。 この方法は、2π位相を法とするラッピング技法を利用して、異なる位置でのレンズ材料の屈折率変化(Δn)、例えば、Δn=0.001の最低値からΔn=0.01の最高値までの屈折率変化によって、レンズに屈折度の変化を与えると言われている。 記載された照射方法では、多光子吸収機構により照射された材料の屈折率を変化させるためにフェムト秒(fs)レーザパルスの連射を使用している。 しかしながら、所望の屈折変化を達成するために、その材料に結果として屈折率が修正された光学層は、少なくとも50マイクロメートル(μm)の厚さでなければならない。

    米国特許第6450642号明細書

    米国特許第7105110号明細書

    米国特許出願公開第2008/0001320号明細書

    米国特許第7789910号明細書

    米国特許出願公開第2009/0287306号明細書

    米国特許出願公開第2009/0157178号明細書

    米国特許出願公開第2010/0228345号明細書

    人の視力を改善するための、新規の改善された技法および材料、および結果としてそれから生じた視力部材が引き続き必要とされている。 そのような部材は、白内障手術の後に使用するためのIOLを含んでよく、または角膜内レンズまたは他の埋め込み可能な視力矯正素子の形態にあってよい。 屈折特性(例えば、屈折率、屈折度)の現位置修正を可能にする、そのような技法および部材から生じるであろう利点および恩恵もある。

    本発明の実施の形態は、光学素子の屈折度を変化させる方法に関する。 この方法は、光学素子に、前面と後面およびそれらの面と交差する光軸を有する光学高分子レンズ材料を提供する工程を含む。 この方法は、前面と後面との間に配置された少なくとも1つのレーザ修正屈折率分布(GRIN)層を、可視または近IRレーザからの光パルスで形成し、光学高分子材料の領域に沿ってパルスを走査する工程も含む。 この少なくとも1つのレーザ修正GRIN層は、複数の隣接する屈折セグメントを含み、(i)走査方向に直交する隣接する屈折セグメントの部分、および(ii)走査方向に沿った屈折セグメントの部分の少なくとも一方の屈折率の変動によって、さらに特徴付けられる。 様々な非限定的態様において:
    ・ 少なくとも1つのレーザ修正GRIN層が、第1の軸に沿って配置されており、光軸に対して約45°から135°傾斜している;
    ・ 高分子レンズ材料が光増感剤を含む;
    ・ 光増感剤が、750nmと1100nmの間で少なくとも10GMの2光子断面を有する少なくとも1つの2光子吸収発色団を含む;
    ・ 光増感剤は、重合性モノマーの一部である、または光学ポリマー内に物理的に分散されている;
    ・ 少なくとも1つのレーザ修正屈折率分布(GRIN)層を形成する工程が、光学高分子レンズ層の選択された領域に、0.01nJから20nJのパルスエネルギーを有する連続した一条のレーザパルスを照射する工程を含む;
    ・ 約650ナノメートル(nm)から約950nmのスペクトル波長を有する、所定の焦点体積を有する複数の極短レーザパルスを材料に集束させる。 このレーザパルスは、10MHzから300MHzの繰返し周波数、10fsから500fsのパルス持続時間、20mWから260mWの平均出力、および0.01nJから20nJのパルスエネルギーを有する;
    ・ 光学素子は、その屈折特性が、人の目の中に眼内レンズを手術で挿入する前に修正される眼内レンズである。 この態様において、照射プロセスは製造環境で行ってもよい。 屈折特性は、患者の視力矯正の必要に対してレンズを適合させるように特別に作るために、様々な度の選択された領域を作製するように、またはレンズの被写界深度を向上させるように設計されてもよい。 あるいは、屈折特性は、多焦点レンズを作製するように設計されてもよい;
    ・ 光学素子は、眼内レンズ、または角膜内レンズであり、少なくとも1つのレーザ修正GRIN層を形成する工程は、例えば、眼科開業医によって、患者の目内にその光学素子を手術により配置した後に行われる;
    ・ GRIN層の複数の隣接する屈折セグメントは、1から5μmの独立した線幅を有し、2つの隣接する屈折セグメントのセグメント間の間隔は、2つの隣接するセグメントの平均線幅より小さい;
    ・ 複数の隣接する屈折セグメントは線セグメントである;
    ・ 複数の隣接する屈折セグメントは、第1の軸に沿った中心点から外側に突出した同心セグメントである;
    ・ 複数の隣接する屈折セグメントは、弓形または湾曲セグメントである;
    ・ GRIN層の複数のセグメントは、レンズ材料の屈折率に関して、(i)走査方向における屈折セグメントの部分、および(ii)屈折セグメントに直交する軸の一部に沿った、の少なくとも一方の屈折率の一定の正の変化によって特徴付けられる;
    ・ GRIN層の複数のセグメントは、レンズ材料の屈折率に関して、(i)走査方向における屈折セグメントの部分、および(ii)屈折セグメントに直交する軸の一部に沿った、の少なくとも一方の屈折率の一定の率の増加または減少する正の変化によって特徴付けられる;
    ・ 少なくとも1つのレーザ修正GRIN層は二次プロファイルを有する;
    ・ 少なくとも1つのレーザ修正GRIN層は、わずかしかまたは全く散乱損失を示さない、すなわち、形成されたGRIN層は、そのGRIN層がある形態の画像強調なくして人の目にとって実質的に透明であるように、位相差強調のない適切な拡大ではっきりとは目に見えない;
    ・ 少なくとも1つのレーザ修正GRIN層を形成する工程は、2から10のレーザ修正GRIN層を形成する工程を含む;
    ・ 少なくとも1つのレーザ修正GRIN層を形成する工程は、第1の軸に対して実質的に垂直な第2の軸に沿って少なくとも1つのレーザ修正GRIN層の上かまたは下のいずれかに配置された2から10のレーザ修正GRIN層を形成する工程を含む;
    ・ GRIN層は、2μmから10μmの独立した厚さを有し、GRIN層はほとんどまたは全く散乱損失を示さない;
    ・ 2から10のGRIN層は、5μmから10μmの厚さを有する非修正高分子レンズ材料の層間の間隔を有する。

    本発明の実施の形態は、屈折率分布構造を有する光学素子に関する。 この素子は、前面と後面およびそれらの面と交差する光軸を有する光学高分子レンズ材料を含む。 この素子は、前面と後面との間に配置され、光軸に対して45°から135°に配置された第1の軸に沿って配置された少なくとも1つのレーザ修正GRIN層も含む。 この少なくとも1つのレーザ修正GRIN層は、複数の隣接した屈折セグメントを含み、(i)隣接する屈折セグメントの横(transverse)断面、および(ii)屈折セグメントの側(lateral)断面の少なくとも一方の屈折率の変動により特徴付けられる。 様々な非限定的態様において、
    ・ 複数の隣接する屈折セグメントは線セグメントである;
    ・ 複数の隣接する屈折セグメントは、同心セグメントおよび弓形または湾曲セグメントからなる群より選択される;
    ・ 高分子レンズ材料は増感剤を含む;
    ・ 光増感剤は、750nmと1100nmの間で少なくとも10GMの2光子吸収断面を有する発色団を含む;
    ・ GRIN層の複数の隣接する屈折セグメントは、1から5μmの独立した線幅を有し、2つの隣接するセグメントのセグメント間の間隔が、2つの隣接するセグメントの平均線幅より小さい;
    ・ GRIN層の複数の屈折セグメントは、非修正高分子レンズ材料に対する屈折率の変化である、第1の軸および横の第2の軸の少なくとも一方に沿った屈折率の一定の正の変化によって特徴付けられる;
    ・ GRIN層の複数の屈折セグメントは、非修正高分子レンズ材料に対する屈折率の変化である、第1の軸および横の第2の軸の少なくとも一方に沿った屈折率の一定または可変の率の増加または減少する正の変化によって特徴付けられる;
    ・ 高分子レンズ材料はヒドロゲルである;
    ・ 素子は眼内レンズまたは角膜内レンズである。

    具体化した本発明のこれらと他の特性、属性、および特徴を、添付図面を参照して、ここに詳しく説明する。

    具体化された本発明は、以下の説明から、添付図面を鑑みて、よりよく理解されるであろう。 しかしながら、図面の各々は、本発明の実施の形態を単に図解し説明するために提供されたものであり、本発明の請求項に記載された実施の形態をさらに制限することは意図されていないことを明白に理解すべきである。

    レーザ照射によって光学高分子材料に書き込まれた線格子の顕微鏡写真

    図1Aの顕微鏡写真の概略図

    レーザ照射によって光学高分子材料における別の線格子の上に、それに対して垂直に書き込まれた線格子の顕微鏡写真

    図2Aの顕微鏡写真の概略図

    レーザ照射によって光学高分子材料にエッチングされた円柱のアレイの顕微鏡写真

    図3Aの顕微鏡写真の概略図

    レーザ照射によって光学高分子材料における円柱の別のアレイ(20×20)の上にわずかにずれてエッチングされた円柱のアレイ(20×20)の顕微鏡写真

    図4Aの顕微鏡写真の概略図

    レーザ照射によって生じさせられる、光学高分子材料における三次元構造の概略図

    正または負の矯正を生じるために光学高分子材料に凸面、平面または凹面構造を形成する概略図

    図1から4、9、10および12に示された構造を書き込むために使用されるレーザおよび光学系の概略図

    光増感剤を含まない、水和Akreos(登録商標)IOLの透過スペクトル

    17質量%のクマリン−1を含有する溶液がドープされた水和「Akreos」IOLの透過スペクトル

    50μm/秒の走査速度および160mWの平均出力で微細加工された、光増感剤を含まない水和「Akreos」IOLの位相差顕微鏡写真

    50μm/秒の走査速度および160mWの平均出力で微細加工された、17質量%のクマリン−1を含有する溶液がドープされた水和「Akreos」IOLの位相差顕微鏡写真

    1mm/秒の走査速度および160mWの平均出力で微細加工された、17質量%のクマリン−1を含有する溶液がドープされた水和「Akreos」IOLの位相差顕微鏡写真

    1mm/秒の走査速度および60mWの平均出力で微細加工された、17質量%のクマリン−1を含有する溶液がドープされた水和「Akreos」IOLの位相差顕微鏡写真

    光増感剤を含まない、水和ピュアビジョン(PureVision(登録商標))シリコーンヒドロゲルの透過スペクトル

    0.17質量%のフルオレセインが添加された水和「Pure Vision」シリコーンヒドロゲルの透過スペクトル

    0.5μm/秒の走査速度および60mWの平均出力で微細加工された、光増感剤を含まない水和「ピュアビジョン」シリコーンヒドロゲルの位相差顕微鏡写真

    5.0μm/秒の走査速度および60mWの平均出力で微細加工された、0.17質量%のフルオレセインが添加された水和「ピュアビジョン」シリコーンヒドロゲルの位相差顕微鏡写真

    バラフィルコン(balafilcon)Aフィルム(フルオレセインおよびクマリン−1が添加されたものと未添加のもの)における走査速度に対する屈折率変化のプロット

    実施例5のヒドロゲル材料の透過スペクトル

    実施例5のヒドロゲル材料に関する異なる走査速度での屈折率の測定変化のプロット

    実施例5Aおよび実施例5Eのヒドロゲル材料に関する、1.5nJの平均パルスエネルギーでの様々な波長での屈折率の測定変化のプロット

    実施例5Aおよび実施例5Eのヒドロゲル材料に関する、2nJの平均パルスエネルギーでの様々な波長での屈折率の測定変化のプロット

    実施例5Aおよび実施例5Eのヒドロゲル材料に関する、1.5nJの平均パルスエネルギーおよび1mm/秒の走査速度での様々な波長での屈折率の測定変化のプロット

    含水率が可変のヒドロゲル材料に関する、屈折率の測定変化のプロット

    様々な含水率のヒドロゲル材料に関する、様々な波長での屈折率の測定変化のプロット

    82MHzの繰返し周波数での100fsのレーザパルスを有する800nmでの370mWの平均出力でのBBSにおける2%のX−モノマーを有する「Akreos」タイプのヒドロゲルに関する走査速度(横軸)に対する屈折率変化(Δn)の変化(縦軸)を示すグラフ

    光学高分子材料に書き込まれた重複する屈折率分布層の断面図

    本発明の説明のための実施の形態による、各線が約2マイクロメートル幅であり、線の間隔が1マイクロメートルである、GRIN層における多数の走査線の概略図

    図22のGRIN層605−1のx軸に沿った選択された走査セグメントの屈折率分布プロファイルのグラフ

    図22のy軸に沿ったGRIN層605−1の屈折率分布プロファイルのグラフ

    光学高分子材料に負の屈折度を提供するために使用できる走査方向に直交する軸に沿ったGRIN層の屈折率分布プロファイルのグラフ

    セグメントが書き込まれているときのGRIN層のセグメントの屈折率分布プロファイルのグラフ

    セグメントが書き込まれているときのGRIN層のセグメントの別の屈折率分布プロファイルのグラフ

    セグメントが書き込まれているときのGRIN層のセグメントの別の屈折率分布プロファイルのグラフ

    走査方向に直交する軸に沿ったGRIN層の屈折率分布プロファイルのグラフ

    走査方向に直交する軸に沿ったGRIN層の別の屈折率分布プロファイルのグラフ

    走査方向に直交する軸に沿ったGRIN層の別の屈折率分布プロファイルのグラフ

    本発明の説明のための実施の形態による、「Akreos」:Xモノマーに書き込まれた1.8mm幅で4mm長(矩形)である一次元二次屈折率分布素子のTwyman Greenインターフェログラム(曲線セグメントは二次位相面を示す)

    図27AのTwyman Greenインターフェログラムの概略図

    本発明の説明のための実施の形態による、リアルタイム・集束フィードバックの適応光学ガルボ走査システムの説明図

    本発明の説明のための態様による、光学高分子材料に書き込まれた単層屈折率分布構造の説明図

    本発明の説明のための態様による、光学高分子材料に書き込まれた三層屈折率分布構造の説明図

    本発明の説明のための態様による、ガルボ制御システムによりチオール・エン:ITXに書き込まれた二次元単一GRIN層

    図31AのGRIN層の概略図

    光学高分子材料を照射するために、十分なエネルギーの極短レーザパルスが使用される場合、焦点体積内の光の強度によって、光子の非線形吸収(一般に、多格子吸収)が生じ、その焦点体積内の材料に屈折率変化がもたらされる。 さらに、焦点体積のすぐ外側の材料は、レーザ光によって最小しか影響を受けない。 説明のために具現化された本発明に関するフェムト秒のレーザパルスシーケンスは、高繰返し周波数、例えば、80MHzで作動し、その結果、熱拡散時間(>0.1マイクロ秒)は、隣接するレーザパルス間の時間間隔(約11ナノ秒)よりもずっと長い。 そのような条件下で、吸収されたレーザエネルギーは、焦点体積内に蓄積し、局所温度を増加させ得る。 この熱機構は、光学高分子材料におけるレーザ誘起屈折構造の形成に役割を果たすと思われる。 さらに、高分子材料中の水の存在は、屈折構造の形成に都合よい影響を与えると考えられる。 それゆえ、光学ヒドロゲルポリマーは、含水率がゼロであるかまたは低い光学ポリマー、例えば、疎水性アクリレートまたは低含水(1%から5%の含水率)アクリレート材料と比べて、屈折構造の形成においてずっと大きい加工順応性を提供する。

    前記方法は、例えば、光学ヒドロゲル材料などの光学高分子材料の選択された領域にレーザを照射する工程を含む。 照射された領域は、ほとんどまたは全く散乱損失を示さず、これは、焦点体積内に結果として形成される屈折構造が、位相差強調のない適切な拡大ではっきりとは目に見えない。 言い換えれば、屈折構造は、ある形態の画像強調なくして、人の目にとって実質的に透明である。 光学材料は、可視光の少なくとも80%がそれを透過できる高分子材料、すなわち、光学材料は可視光を感知できるほどは散乱または遮断しない。

    例えば、光学ヒドロゲル材料などの光学高分子材料が光増感剤を含む場合、例示の方法はより都合よく実施されるであろう。 光増感剤の存在により、走査速度を、材料中に光増感剤が存在しない場合の走査速度よりも少なくとも50倍大きい、または少なくとも100倍大きい値に設定し、それでも、焦点体積内の材料の屈折率の観察された変化に関して同様の屈折構造を提供することができる。 あるいは、高分子材料中の光増感剤により、平均レーザ出力を、材料中に光増感剤を含まない場合の平均レーザ出力よりも、少なくとも2倍低い値、特に4倍まで低い値に設定し、それでも、類似の屈折構造を提供することができる。 比較的大きい多光子吸収断面を有する発色団を有する光増感剤は、より大きい効率で光放射(光子)を捕獲し、次いで、そのエネルギーを焦点体積内の光学高分子材料に伝達すると本出願人は考えている。 伝達されたエネルギーによって、屈折構造が形成され、焦点体積内の材料の屈折率変化が観察される。

    その上、本出願人等は、以前に、記載した2光子プロセスによる結果として形成された屈折構造が、ヒドロゲル高分子材料において、化学結合の破壊または形成に関して、著しい化学変化をもたらすか否かを調査した。 その開示をここに引用する特許文献4を参照のこと。 本出願人等は、レーザパルスに曝露された高分子材料の領域と、曝露されなかった領域との間に、ラマンスペクトルにほとんどまたは全く差がないことが分かって極めて驚いた。 一般に、ラマン分光法は、材料中に生じる構造変化または分子変化についての情報を提供するために使用される。 ラマン散乱実験において、ヒドロゲルポリマーサンプルを、ナノメートルの分解能を有するX−Y走査ステージが設けられた共焦点マイクロラマン分光計内に配置した。 ラマン散乱信号を得るために、材料の表面に632.8nmのHe−Neレーザの焦点を合わせた。 バルク領域の屈折率と照射領域の屈折率との間の差により、その界面で散乱した光をモニタした。 2つのスペクトルの比較によって、照射領域と基礎材料との間に著しい構造変化または化学変化がないことが強く示唆される。

    上記のラマン結果は、フェムト秒のレーザパルスにより改質された溶融シリカの最近のラマンスペクトル分析の観点から意外であった。 JW Chan, T. Huser, S. Risbud, DM Krol, in “Structural changes in fused silica after exposure to focused femtosecond laser pulses,” Opt. Lett. 26, 1726-1728 (2001)を参照のこと。 しかしながら、本出願人等のラマン実験の結果は、高分子ヒドロゲル材料中の照射領域(屈折構造)による光散乱がなぜ観察されないかを説明するであろう。 そのラマンスペクトルは、屈折率変化が、溶融シリカに得られた変化よりずっと大きい場合でさえ、光学ヒドロゲル材料の低パルスエネルギーのフェムト秒の照射により、その材料に強力な構造変化が生じないことも示唆している。

    現在まで、本出願人等は、可変式球面収差補正を有する、60倍の開口数0.70のOlympus LUCPlanFLN長い作動距離の顕微鏡対物レンズを使用してきた。 以下の方程式:

    により示されるように、局所瞬間温度は、パルス強度および2光子吸収(TPA)係数の大きさの両方に依存する。 純粋に屈折特徴のものである、すなわち、非吸収または非散乱の材料の光学変調を生じるために、光学損傷、すなわち、高分子材料に観察される焼け(スコーチング)または炭化を避けることが重要である。 そのような材料または光学損傷は、臨界自由電子密度を超える励起強度によって生じ得る。 かなりの量の水を含有するヒドロゲルポリマーについて、その光学的破壊閾値は、シリカガラスにおける閾値よりもずっと低い。 この破壊閾値により、ヒドロゲルポリマーが耐えられ、それでも焦点体積内の屈折率の観察された変化を提供するパルスエネルギーが(多くの場合、約0.1nJから20nJに)制限される。

    ここに記載された照射プロセスおよび条件は、ずっと大きいパルスエネルギーおよびずっと大きい温度上昇(数千ケルビン)が観察される、シリカにおけるフェムト秒のレーザ微細加工研究に報告されてきたものとは非常に異なる。 SM Eaton et al. in “Heat accumulation effects in femtosecond laser-written waveguides with variable repetition rate,” Opt. Express 2005, 13, 4708-16を参照のこと。 また、水の比熱定数C pは、シリカガラスの比熱定数(C p =840JK -1 kg -1 )よりもずっと大きく、したがって、ヒドロゲル高分子材料中の水の存在によって、焦点体積内の温度上昇が抑えられると考えられる。

    所定の強度レベルでエネルギー吸収を増加させる別の方法は、光学高分子材料に特定の発色団を添加し、短パルスレーザをその発色団の2光子転移の近くに調整することによって、非線形吸収係数βを増加させることである。 この点に関して、本出願人等は、非重合性光増感剤または重合性光増感剤が添加された光学ヒドロゲル材料を調製した。 この光増感剤は、750nmから1100nmのレーザ波長範囲の間の少なくとも10GMの2光子吸収断面を有する発色団を含む。 非重合性光増感剤の前者の場合、本出願人等は、光増感剤を含有する溶液を調製し、光学ヒドロゲル高分子材料をそのような溶液と接触させて、光増感剤をポリマーの高分子マトリクス中に取り込ませた。 重合性光増感剤の後者の場合、本出願人等は、発色団が高分子マトリクスの一部になるように、モノマー混合物中に、発色団を含有するモノマー、例えば、フルオレセイン系モノマーを使用した。

    重合性光増感剤と共にすでに調製した光学高分子材料をドーピングするために、非重合性光増感剤を含有する溶液を容易に使用できることが当業者には認識されるであろう。 発色団は、それぞれの光増感剤において同じであっても異なっても差し支えないことも理解されよう。

    本出願人等の研究は、溶液ドーピングまたは重合性光増感剤の使用のいずれかにより、ヒドロゲル材料に光増感剤を添加することによって、局所温度上昇が、ポリマーの転移点に到達できることを示した;その目的は、屈折率の所望の変化を提供するためにこの転移点に到達するが、それでも、ヒドロゲル材料の損傷閾値レベルより低い強度の安全域を維持することである。

    2光子プロセスの光効率を増加させ、それによって、高分子ヒドロゲル材料の屈折率の観察される変化をもたらす屈折構造を製造する光効率を増加させるために、本出願人等が依存する光増感剤は、そのプロセスにおいて、著しい構造的転移または化学的転移を経ないことも重要である。 重ねて、照射領域と非照射領域との間に、光増感高分子材料のラマンスペクトルの変化が観察されない。 このことは、光増感剤が添加された材料で屈折構造を形成するための観察される効率における大規模な増加と整合性がとれる。 例えば、本出願人等は、光増感に必要な発色団を有する重合性モノマー0.17質量%を所定のヒドロゲル材料に単に添加することによる、100倍以上の、屈折構造を形成する効率の増加を観察した。 この非常に低い濃度で添加された光増感剤は、それだけでは、観察された効率の増加を説明することができない。

    光学材料、好ましくは光学ヒドロゲル材料中に2光子発色団を有する重合性単量体光増感剤の濃度は、0.05質量%ほど低く、かつ10質量%ほど高くて差し支えない。 光学ヒドロゲル材料中の2光子発色団を有する重合性モノマーの例示の濃度範囲は、0.1質量%から6質量%、0.1質量%から4質量%、および0.2質量%から3質量%である。 様々な態様において、光学ヒドロゲル材料中の2光子発色団を有する重合性モノマー光増感剤の濃度範囲は、0.4質量%から2.5質量%である。

    照射プロセスに使用される高繰返し周波数パルスシーケンスのために、蓄積した局所温度上昇は、単一レーザパルスにより誘起される温度上昇よりもずっと高くなり得る。 吸収される出力および散逸した出力が動的に釣り合うまで、蓄積した温度は上昇する。 ヒドロゲルポリマーについて、ポリマー網目構造内の熱により誘起された追加の架橋により、局所温度が転移温度を超えたときに、屈折率の変化を生じ得る。 温度上昇が、転移温度よりもいくぶん高い温度である第2の閾値を超えた場合、そのポリマーは、熱分解により劣化し、炭化された残留物および水泡が観察される。 言い換えれば、その材料は、目に見える光学損傷(スコーチング)を示す。 ここに記載された調査の結果として、レーザ繰返し周波数、レーザ波長とパルスエネルギー、TPA係数、および材料の水濃度などの先の実験パラメータの各々は、光学損傷なく、ヒドロゲルポリマーに屈折率の所望の変化を誘起できるように検討すべきである。

    レーザのパルスエネルギーと平均出力、および照射領域が走査される速度は、一部には、照射されている高分子材料のタイプ、屈折率のどれだけの変化が望ましいか、および材料内に作製したい屈折構造のタイプに依存する。 選択されるパルスエネルギーは、走査速度およびポリマー材料に屈折構造を書き込むレーザの平均出力にも依存する。 一般に、走査速度が速く、レーザ出力が低いほど、より大きいパルスエネルギーが必要となる。 例えば、ある材料は、0.05nJから100nJまたは0.2nJから10nJのパルスエネルギーを要求する。

    上述したパルスエネルギー内で、光学ヒドロゲル高分子材料は、少なくとも0.1mm/秒から10mm/秒または0.4mm/秒から4mm/秒の走査速度で照射される。

    上述したパルスエネルギー内であり、かつ上述した走査速度内で、照射プロセスに使用される平均レーザ出力は、10mWから400mW、または40mWから220mWである。

    1つの態様において、平均パルスエネルギーは0.2nJから10nJであり、平均レーザ出力は40mWから220mWである。 このレーザは、650nmから950nmの波長内で作動する。 上述したレーザ作動出力内で、光学ヒドロゲル高分子材料は、0.4mm/秒から4mm/秒の走査速度で照射される。

    光増感剤は、600〜1000nmのスペクトル範囲に固有線形吸収がほとんどまたは全くない発色団を含む。 その光増感剤は、記載された屈折構造の形成に必要な2光子吸収の光効率を向上させるために、光学ヒドロゲル高分子材料中に存在する。 特に興味深い光増感剤としては、以下の化合物が挙げられるが、それらに制限されない。 下記の化合物は単なる例示である。

    実施例の項により詳しく説明するように、ボシュロム社(Bausch & Lomb)により現在市販されているIOL材料である「Akreos」に、ここに記載されたプロセスにしたがってレーザ照射を施した。 「Akreos」IOLは、含水率が26%から28%のHEMA系ヒドロゲル材料である。 光増感剤を含まない「Akreos」IOLおよび17質量%のクマリン−1を含有する溶液をドープした「Akreos」IOLに屈折構造をインプリントするために、微細加工プロセスを使用した。 この照射実験は、乾燥材料と水和材料の両方に行った。 屈折構造は、水和材料のみに形成された。

    手短に言えば、屈折率の測定変化の大きさは、所定の走査速度および平均レーザ出力で、クマリンを含まない「Akreos」IOLよりも、クマリン溶液がドープされた「Akreos」IOLにおけるほうが、少なくとも10倍大きかった。 驚いたことに、160mWの平均レーザ出力で走査速度を1mm/秒に増加させると、屈折構造に、0.02から0.03の屈折率変化が与えられた。 さらに、レーザ出力を60mWに減少させても、まだ屈折構造に約0.005の屈折率変化が与えられた。

    別の説明のための態様において、重合性光増感剤としてのフルオレセインモノマー(0.17質量%)を重合性モノマー混合物に加えることによって、バラフィルコンAシリコーンヒドロゲルを調製した。 次いで、フルオレセインが添加されたバラフィルコンAに、ここに記載されたプロセスにしたがってレーザ照射を行った。 重ねて、光増感剤を含まないシリコーンヒドロゲルおよび0.17質量%のフルオレセインモノマーが添加されたシリコーンヒドロゲルに屈折構造をインプリントするために、記載の照射プロセスを使用した。 重ねて、乾燥材料と水和材料の両方に実験を行い、重ねて、屈折構造は水和材料のみに形成された。 手短に言えば、屈折率の測定変化の大きさは、60mWの平均レーザ出力で、光増感剤を含まないバラフィルコンAシリコーンヒドロゲルよりも、0.17質量%のフルオレセインモノマーが添加されたバラフィルコンAシリコーンヒドロゲルにおけるほうが、少なくとも10倍大きかった。 屈折率の変化のこの10倍の差は、光増感材料において走査速度を10倍増加させた場合、すなわち、未添加の材料における0.5mm/秒と光増感材料における5.0mm/秒の場合でさえも、観察された。

    ある場合には、記載されたような屈折構造を形成するには、パルスのピーク出力が、光学高分子材料の非線形吸収閾値を超えるのに十分に強力であるように、パルス幅を維持することが必要である。 しかしながら、集光対物レンズのガラスが、このガラスの正の分散のために、パルス幅を著しく増加させる。 集光対物レンズによって導入される正の分散を補償できる対応する負の分散を提供するために、補償スキームが使用される。 したがって、集光対物レンズにより導入される正の分散を矯正するために、補償スキームを使用できる。 この補償スキームは、集光対物レンズにより導入される正の分散を補償するための、少なくとも2つのプリズムと少なくとも1つのミラー、少なくとも2つの回折格子、チャープミラーおよび分散補償ミラーからなる群より選択される光学素子を含むことができる。

    異なる態様において、前記補償スキームは、集光対物レンズの正の分散を補償するための、少なくとも1つのプリズム、多くの場合には、少なくとも2つのプリズム、および少なくとも1つのミラーを含んだ。 別の態様において、前記補償スキームは、集光対物レンズにより導入される正の分散を補償するための少なくとも2つの回折格子を含んだ。 補償スキームに、プリズム、回折格子および/またはミラーのどのような適切な組合せを使用しても差し支えない。

    前記レーザは、紫から近赤外の範囲の波長を有する光を生成する。 様々な態様において、レーザの波長は、400nmから1500nm、400nmから1200nm、または650nmから950nmの範囲にある。

    例示の態様において、レーザは、10mWから1000mWの平均出力を有する励起Ti:サファイアレーザである。 そのようなレーザシステムは、約800nmの波長を有する光を生成する。 別の例示の態様において、1000nmから1600nmの波長を有する光を生成できる増幅ファイバレーザを使用してもよい。

    前記レーザは、10 13 W/cm 2超の焦点ピーク強度を有する。 時々、10 14 W/cm 2超、または10 15 W/cm 2超の焦点ピーク強度を有するレーザを提供することが都合よいであろう。

    光学高分子材料に屈折構造を形成する能力により、光学素子、例えば、眼内レンズまたは角膜内レンズの屈折率を修正するための重要な機会が眼科医または開業医に与えられる。 その方法は、各患者に要求される視力矯正に基づいて照射領域における屈折率を調節することによって、レンズまたはインレー(inlay)の屈折特性を調節することも可能にする。 例えば、選択された度(患者の眼の要件にしたがって異なる)から出発して、患者の個々の必要性に基づいて患者の視力を矯正するためにレンズの屈折特性をさらに調節することができる。 基本的に、眼内レンズは、患者の目の屈折率異常を個別に矯正するために、コンタクトレンズまたはメガネのように本質的に機能するであろう。 一般に、光学ヒドロゲル高分子材料の照射部分は、約0.01以上の屈折率の正の変化を示す。 1つの実施の形態において、その領域の屈折率は、約0.03以上増加する。 本出願人等は、水和「Akreos」IOL材料において約0.06の屈折率の正の変化を測定した。

    具体化された方法は、非反応モノマーを有する光学材料(屈折率変調組成物)を注型し、その後、レーザ照射して、上述したカルフーンの特許に記載されたように追加の重合化学反応を促進させるのではなく、すでに完全に重合した光学材料の屈折率の変化によって、材料の屈折特性を修正する。 開示された方法に使用される光学材料を特徴付けるために使用される場合、「完全に重合した」という用語は、その光学材料が95%以上重合されていることを意味する。 重合した光学材料の完全性を測定する1つの方法は、近赤外分光法によるものであり、これは、材料のビニル含有量を定量的に決定するために使用される。 単純な重量分析を使用しても差し支えない。

    例示の態様において、光学高分子材料の照射領域は、二次元または三次元構造によって画成できる。 二次元または三次元構造は、別個の円柱のアレイを含み得る。 あるいは、二次元または三次元構造は、一連の線、または円柱のアレイと一連の線の組合せを含んで差し支えない。 さらに、二次元または三次元構造は、それぞれ、面積または体積充填構造を含んでも差し支えない。 これらの面積または体積充填構造は、高分子材料の選択された領域に亘りレーザを一定の走査速度で連続的に走査することによって形成することができる。 ナノメートルサイズの構造は、R. Menon et al., Proc. SPIE , Vol. 5751, 330-339 (May 2005); Materials Today , p. 26 (February 2005)により記載されたゾーン・プレート・アレイリソグラフィー方法によって形成することもできる。

    1つの実施の形態において、光学ポリマーの照射領域は、0.2μmから5μmの線幅、特に、0.6μmから3μmの線幅、および0.4μmから8μmの高さ、とりわけ、1.0μmから4μmの高さ(高さは、レーザ光の方向に平行な、材料のz方向に測定される)を有する二次元平面における一連の線セグメントによって画成される。 例えば、各線セグメントが、任意の所望の長さ、約0.8μmから約3μmの幅、および約2μmから5μmの高さのものである、複数の線セグメントを含むセグメントアレイを生成することができる。 線セグメントは、1.0μmほど狭い(0.5μmの間隔)により隔てられて差し支えなく、材料にいくつの線セグメントが含まれていても差し支えない。 さらに、そのセグメントアレイは、どのような選択された深さ(z方向)に配置しても差し支えなく、その材料に様々な深さで、いくつのセグメントアレイを生成しても差し支えない。

    図1Aは、光学材料に書き込まれた20の線を含む線セグメントアレイの対照的な背景の顕微鏡写真である。 図1Bは、図1Aの顕微鏡写真の概略図である。 各線セグメントは、長さが約100μmであり、幅が約1μmであり、セグメント間の距離が5μmである。 それらの線セグメントは、約3μmの高さを有するものであり、材料の上面から約100μmの距離で材料に書き込まれた。 線セグメントアレイを示す同様の顕微鏡写真が、材料の上面から約200μmと約400μmの距離で得られ、それによって、屈折構造を任意の選択された深さで光学材料に書き込めることが示された。

    図2Aは、別のセグメントアレイの上に、それに対して垂直に書き込まれた1つのセグメントアレイの対照的な背景の顕微鏡写真である。 図2Bは、図2Aの顕微鏡写真の概略図である。 これらのアレイの各々は、上記に図1について記載した構造と類似の寸法構造を有する。 一方のセグメントアレイは材料中に約100μmに位置しており、他方のセグメントアレイは、中心線のセグメントアレイの間隔距離が約10μmで、材料中に約110μmに位置している。 重ねて、これらのセグメントアレイの各々は、約3μmの高さ(深さ)を有し、それゆえ、z方向におけるセグメント間の距離が約7μmとなる。

    図3Aは、光学材料に書き込まれた円柱のアレイの対照的な背景の顕微鏡写真である。 図3Bは、図3Aの顕微鏡写真の概略図である。 各円柱は、高さが約3μmで、直径が約1μmである。 円柱は約5μm離れている。 円柱は、材料の上面から約100μmの距離で材料にレーザエッチングされた。

    図4Aは、円柱の別のアレイ(20×20)の上にわずかにずれて書き込まれた円柱のアレイ(20×20)の対照的な背景の顕微鏡写真である。 図4Bは、図4Aの顕微鏡写真の概略図である。 円柱の各々は、上記に図3について記載した構造と類似の寸法構造を有する。 一方のアレイは材料中に約100μmに位置しており、他方のアレイは、中心線のセグメントアレイの間隔距離が約5μmで、材料中に約105μmに位置している。 円柱の各々は、約3μmの高さ(深さ)を有する。

    光学高分子材料の選択された領域に亘りレーザを一定の走査速度で連続的に走査することによって、面積充填された二次元構造または体積充填された三次元構造を形成することができる。 先の述べたように、屈折構造は、選択された領域にフェムト秒パルスの強集束ビームを繰り返し走査して、複数の線セグメントを作製することによって、光学高分子材料の体積内に書き込むことができる。 線セグメントの体積は、図5に示されるような、球面、非球面、ドーナツ形または円柱形状を有する三次元形状のレンズを製造するように、走査の深さに対応して変えることができる。 屈折率変化は正(+0.02から+0.06)であるが、これらの屈折矯正レンズは、図6に示されるように、正の矯正または負の矯正を生じるように、凸面、平面、または凹面の様々な組合せで製造して差し支えない。 屈折構造は、単一レンズ素子として働くように、垂直に積み重ね、異なる面に別々に書き込んでも差し支えない。 追加の屈折構造を要望どおりに書き込んで差し支えない。

    面積充填二次元構造または体積充填三次元構造として記載された屈折構造の顕微鏡写真により示されるように、光学材料に線、円柱、および放射状のパターンを作製することができる;しかしながら、ここに記載された照射方法を使用して他の光学特徴を作製することも可能である。 例えば、レーザビームを材料内の別個の点またはスポットに向けることによって、ドット(例えば、ナノメートル範囲の寸法を有する)のアレイを作製することができる。 そのようなアレイは、実質的に1つの平面上に配置しても差し支えない、またはいくつかのそのようなアレイを材料内の異なる深さに作製しても差し支えない。 そのように改質された材料は、光がそれらのドットにより実質的に散乱されない場合、都合よく有用であり得る。

    1つの態様において、屈折構造は、眼内レンズの前面の最も近くに形成される。 例えば、正または負のレンズ素子(三次元)が、レンズの前面から300μmの体積内、または100μmの体積内に形成される。 「前面」という用語は、人の目の前眼房に面するレンズの表面である。

    光学材料を修正するためのレーザおよび光学構成 光学高分子材料にレーザを照射して、その材料の屈折率を選択された領域において修正するためのレーザシステム10の非限定的な実施の形態が図7に図解されている。 レーザ源は、4Wの周波数二倍Nd:YVO4レーザ14により励起されたカーレンズモード同期Ti:サファイアレーザ12(コロラド州、ボールダー所在のKapteyn-Murnane Labs)を含む。 このレーザは、300mWの平均出力、30fsのパルス幅、および800nmの波長での93MHzの繰返し周波数のパルスを発生する。 光路においてミラーとプリズムからの屈折力損失、特に、対物レンズ20からの屈折力損失があるので、材料上の対物レンズの焦点で測定される平均レーザ出力は約120mWであり、これは、フェムト秒レーザのパルスエネルギーが約1.3nJであることを示す。

    対物レンズの焦点での制限されたレーザパルスエネルギーのために、パルス幅は、パルスピーク出力が、材料の非線形吸収閾値を超えるのに十分に強力であるように、維持しなければならない。 集束対物レンズの内部の多量のガラスが、そのガラスの内部の正の分散のために、パルス幅を著しく増加させるので、集束対物レンズにより導入される正の分散を補償する負の分散を提供するために、共振器外補償スキームが使用される。 2つのSF10プリズム24と28および1つの末端ミラー32が、2パス1プリズム対(two-pass, one-prism-pair)の構成を形成する。 特別な例において、本出願人等は、光路内の顕微鏡の対物レンズおよび他の光学素子の正の分散を補償するために、プリズムの間に37.5cmの分離距離を使用した。

    対物レンズの焦点でパルス幅を測定するために、三次高調波発生を使用した共線自己相関器40が使用される。 二次高調波発生および三次高調波発生の両方は低NA又は高NAの対物レンズに対して自己相関測定において使用されてきた。 本出願人等は、高開口数対物レンズの焦点でのパルス幅を特徴付けるために三次高調波発生(THG)自己相関器を選択した。 何故ならば、それが単純で、高い信号対雑音比を有し、二次高調波発生(SHG)結晶が通常にもたらす材料分散がないからである。 THG信号は、空気と通常カバースリップ42(Corning No. 0211 亜鉛チタニアガラス)との界面で発生し、光電子増倍管44およびロックイン増幅器46を用いて測定される。 異なる高開口数対物レンズのセットを用い、そして2つのプリズムの間の分離距離および挿入されるガラスの量を注意深く調節した後、変換限界(transform-limited)27fsパルスを使用する。 このパルスは、60×0.70NAオリンパスLUCPlanFLN長作動距離対物レンズ48により集束される。

    レーザビームは、それがレーザから出てきた後に、空間的に発散するので、レーザビームが対物レンズ開口を最適に満たすことができるようにレーザビームの寸法を調節するために、凹型ミラー対50および52を光路内に追加する。 3D 100nm解像度DCサーボモータステージ54(Newport VP−25XAリニアステージ)および2D 0.7nm解像度ピエゾナノ位置決めステージ(PI P−622.2CDピエゾステージ)は、サンプルを支持し位置付ける走査台として、コンピュータ56により制御され、プログラムされる。 サーボステージはDCサーボモータを有し、それにより、隣接ステップ間で円滑に移動できる。 1msの時間解像度でコンピュータにより制御される光学シャッターが、レーザ露光時間を正確に制御するためにシステム内に配置される。 特別仕様のコンピュータプログラムを用いて、光学シャッターを走査ステージとともに操作して、様々な走査速度で、光学材料の様々な位置または深さで、様々なレーザ露光時間で、材料に様々なパターンを微細加工することができる。 その上、対物レンズ20の横に、モニタ62とともにCCDカメラ58を用いて、リアルタイムでプロセスをモニタする。

    先に記載した方法および光学素子を使用して、ヒトの目に眼内レンズを手術で移植した後(またはレンズが目に移植される前)に眼内レンズの屈折率を変更することができる。

    したがって、本発明の実施の形態は、患者にIOLを提供する手術手順から生じる収差を特定し、測定する工程を含む方法に関する。 一旦、眼科の技術分野においてよく知られた方法を用いて収差を特定し、定量化したら、この情報をコンピュータで処理する。 もちろん、各患者に必要な視力矯正に関する情報も特定し、決定することができ、そしてこの情報もコンピュータにより処理することができる。 収差を測定するために使用される市販の診断装置が数多く存在する。 たとえば、今日使用される一般的な波面センサは、Schemersディスク、Shack Hartmann波面センサ、Hartmannスクリーン、およびFizeau干渉計、およびTwyman−Green干渉計に基づく。 このShack Hartmann波面測定システムは、当該技術分野において公知であり、米国特許第5849006号、同第6261220号、同第6271914号および同第6270221号の各明細書に部分的に記載されている。 このようなシステムは、目の網膜を照らし、反射された波面を測定することにより作動する。

    一旦、収差を特定しそして定量化したら、コンピュータプログラムは、収差を補正する、または患者の視力矯正を行うために、レンズ材料中に書き込むべき屈折構造の位置と形状を決定する。 これらのコンピュータプログラムは当業者によく知られている。 次いで、コンピュータはレーザ光学システムと通信し、そしてレンズの選択領域が、ここに記載されたように0.05nJから1000nJのパルスエネルギーを有するレーザで照射される。

    光学ヒドロゲル高分子材料 本出願に記載された方法にしたがってレーザで照射され得る光学ヒドロゲル高分子材料は、高分子レンズの技術分野の当業者、特に眼内レンズを製造するために使用される光学高分子材料に精通している当業者に公知のいかなる光学ヒドロゲル高分子材料であっても差し支えない。 そのような材料の非限定的な例としては、シロキシ含有ポリマー、アクリル親水性または疎水性ポリマー、もしくはそのコポリマーなどの眼用素子の製造に使用されるものが挙げられる。 屈折構造の形成が、高分子光学シリコーンヒドロゲル、または高分子光学非シリコーンヒドロゲルの選択された別個の領域において屈折率を変更するために特に適している。

    「ヒドロゲル」という用語は、総水和質量に基づいて10質量%超の水を吸収できる光学高分子材料を称する。 実際に、光学ヒドロゲル高分子材料の多くは、15%超または20%超の含水率を有するであろう。 例えば、光学ヒドロゲル高分子材料の多くは、15%から60%、または15%から40%の含水率を有するであろう。

    光学ヒドロゲル高分子材料は、十分な光学透明性のものであり、約1.40以上、好ましくは1.48以上の比較的高い屈折率を有するであろう。 これらの材料の多くは、約80パーセント以上の比較的高い伸び率によっても特徴付けられる。

    1つの実施の形態において、光学高分子材料は、少なくとも3種類のモノマー成分からコポリマーとして調製される。 第1のモノマー成分、好ましくは、芳香族官能基を有するモノマー成分は、少なくとも60質量%の量でコポリマー中に存在し、そしてそのホモポリマーは、少なくとも1.50、特に少なくとも1.52または少なくとも1.54の屈折率を有するであろう。 第2のモノマー成分、好ましくはアルキル(メタ)アクリレートは、3質量%から20質量%または3質量%から10質量%の量でコポリマー中に存在する。 第1と第2のモノマー成分は合計で、コポリマーの少なくとも70質量%を占める。 「ホモポリマー」という用語は、実質的に完全にそれぞれのモノマー成分から誘導されるポリマーを称する。 ホモポリマーの形成を促進するために、少量の触媒、開始剤などを、従来の場合と同様に含んで差し支えない。

    特に有用な第1のモノマー成分としては、スチレン、ビニルカルバゾ−ル、ビニルナフタレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレートおよびそのいずれかの混合物が挙げられる。 特に有用な第2のモノマー成分としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロペルフルオロブチル(メタ)アクリレートおよびそのいずれかの混合物が挙げられる。

    第3のモノマー成分は親水性モノマー成分である。 この親水性成分はコポリマーの2質量%から30質量%の量で存在する。 親水性成分は特に、コポリマーの約20質量%未満の量で存在する。 約10質量%以上の親水性モノマー成分を含むコポリマーは、水性環境下に置かれた場合、ヒドロゲルを形成する傾向にある。 「親水性モノマー成分」という用語は、ヒドロゲル形成性ホモポリマー、すなわち、水溶液と接触する状況下に置かれた場合、ホモポリマーの質量に基づいて、少なくとも25%の水と結合するホモポリマーを生じる化合物を称する。

    有用な親水性モノマー成分の特定の例としては、N−ビニルピロリドン;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミドなどのN−アルキルアクリルアミド;アクリル酸;メタクリル酸など、および、そのいずれかの混合物が挙げられる。

    別の実施の形態において、光学高分子材料は、少なくとも2種類のモノマー成分および光増感剤から、コポリマーとして調製される。 この光増感剤は、重合性であっても、形成されたポリマー内に取り込まれても差し支えない。 第1のモノマー成分は親水性モノマー成分である。 この親水性成分は、コポリマーの50質量%から90質量%の量で存在する。 この親水性成分は特に、コポリマーの60質量%から85質量%の量で存在する。 第2のモノマー成分、特にアルキル(メタ)アクリレートは、コポリマー中に5質量%から20質量%、または3質量%から10質量%の量で存在する。 第1と第2のモノマー成分は合計でコポリマーの少なくとも90質量%を占める。

    高分子光学材料は、少なくとも第1または第2のモノマー成分と架橋を形成することができる架橋成分を含むことがある。 その架橋成分は、多官能性であり、第1と第2のモノマー成分の両方と化学反応することができるのが都合よい。 架橋成分は、たいてい、第1と第2のモノマー成分の量に対して少量で存在する。 特に、架橋成分は、コポリマー中に、コポリマーの約1質量%未満の量で存在する。 有用な架橋成分の例としては、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレートなど、およびその混合物が挙げられる。

    1つの態様において、光学高分子材料は式:

    (式中、RはHまたはCH 3であり;mは0から10より選択される整数であり;Yは、存在しないか、O、SまたはNR 1であり;R 1はH、CH 3 、C 2 〜C 6アルキル、イソ−OC 37 、フェニルまたはベンジルであり;Arは、未置換であっても、H、CH 3 、C 25 、n−C 37 、イソ−C 37 、OCH 3 、C 611 、Cl、Br、フェニルまたはベンジルにより置換されていてもよい、いずれかの芳香環、例えば、フェニルである)を有する1種類以上の芳香族(メタ)アクリレート、および架橋成分から調製することができる。

    例示の芳香族(メタ)アクリレートモノマーとしては、以下に限られないが、2−エチルフェノキシ(メタ)アクリレート、2−エチルチオフェニル(メタ)アクリレート、2−エチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、3−フェニルプロピル(メタ)アクリレート、4−フェニルブチル(メタ)アクリレート、4−メチルフェニル(メタ)アクリレート、4−メチルベンジル(メタ)アクリレート、2−2−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−3−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−4−メチルフェニルエチル(メタ)アクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレートなどが挙げられる。

    一般に、光学高分子材料が上記式により定義されるような芳香族アクリレートおよび芳香族メタクリレートの両方で調製される場合、その材料は、一般に、アリールメタクリレートエステル残基より大きなモル%のアリールアクリレートエステル残基を含むであろう。 アリールアクリレートモノマーは、ポリマーの約20モルパーセントから約60モルパーセント%を構成し、一方で、アリールメタクリレートモノマーは、ポリマーの約5モルパーセントから約20モルパーセント%を構成することが好ましい。 約30〜40モルパーセントの2−フェニルエチルアクリレートおよび約10〜20モル%の2−フェニルエチルメタクリレートを含むポリマーが、最も好ましい。 親水性モノマーも約20〜40モルパーセントで存在する。

    別の態様において、光学高分子材料は、5質量%から15質量%の完全水和(平衡)含水率を有するであろう。 このことは、記載されるとおりの熱応力後の曇り度合いを最小にすると同時に、生体内で水胞を形成するのを最小にするのに役立つ。 所望の含水率を達成するために、重合性組成物中に式:G−D−Ar(式中、Arは、親水性置換基を有するC 6 〜C 14芳香族基であり、Dは二価の結合基であり、Gは重合性エチレン部位である)を有する親水性芳香族モノマーを含んでよい。

    1つの特別な親水性芳香族モノマーは、式:

    により表され、式中、Rは水素またはCH 3であり;Dは、直鎖または分岐鎖C 1 〜C 10炭化水素(例えば、−(CH 2 CH 2 O) n −)からなる群より選択される二価基であり;Eは、水素(Dがアルキレンオキシドである場合)、カルボキシ、カルボキサミド、および一価および多価アルコール置換基からなる群より選択される。 例示の親水性置換基としては、以下に限られないが、−COOH、−CH 2 −CH 2 OH、−(CHOH) 2 CH 2 OH、−CH 2 −CHOH−CH 2 OH、ポリ(アルキレングリコール)、−C(O)O−NH 2および−C(O)−N(CH 32が挙げられる。

    例示の親水性芳香族モノマーは、以下の式:

    により表され、式中、Rは水素またはCH 3であり;R 1は−C(O)O−NH 2または−C(O)−N(CH 32である。

    別の態様において、光学高分子材料は、5〜25質量%で存在する第1の芳香族モノマー成分;30〜70質量%で存在する第2のモノマー成分である親水性モノマー成分、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;および5〜45質量%の別のアルキル(メタ)アクリレートから調製され、この別のアルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、および2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される。 アルキル(メタ)アクリレートのうち、1から3の炭素原子のアルキル基を含むものが特に好ましい。

    例示の芳香族モノマー成分としては、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート(EGPEA)、ポリ(エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート)(ポリEGPEA)、フェニルメタクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルフェノキシアクリレート、ヘキシルフェノキシメタクリレート、ヘキシルフェノキシアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルベンジルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートなどが挙げられ、また対応するメタクリレートおよびアクリレートが挙げられ、そしてその混合物が挙げられる。 EGPEAおよびポリEGPEAは、より好ましい第1のモノマー成分の内の2つである。

    別の態様において、光学高分子材料は、約90(質量)%のN−ビニルピロリドン(NVP)および約10(質量)%の4−t−ブチル−2−ヒドロキシシクロヘキシルメタクリレートを含む親水性アクリルから調製される。 このメタクリレートヒドロゲルは、高い比率のNVPのために、約80(質量)%の水を吸収することができる。 水和したときのその屈折率は、水の屈折率に非常に近い。 興味深い別の親水性アクリルはHEMA Bと称され、それは、約0.9(質量)%のエチレングリコールジメタクリレート(「EGDMA」)と架橋したポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)である。 このHEMA−ヒドロゲルは約37(質量)%の水を吸収することができる。

    1つの特定の興味深い親水性アクリル材料は、ボシュロム社により「Akreos」の商標名で市販されているIOLに基づく。 このアクリル材料は約80質量%のHEMAおよび20質量%のMMAを含む。

    光学高分子材料は、ペルフルオロオクチルエチルオキシプロピレン(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、下記一般式:

    (式中、Rは水素またはメチルであり;R 1は、直鎖または分岐鎖C 4 〜C 12アルキル基である)のアルキル(メタ)アクリレート、親水性モノマー、および架橋性モノマーを含む特定のモノマー混合物を共重合することによっても調製できる。 アルキル(メタ)アクリレートモノマーの例示のリストとしては、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレートなどが挙げられる。

    ペルフルオロオクチルエチルオキシプロピレン(メタ)アクリレートは5質量%から20質量%で存在し、2−フェニルエチル(メタ)アクリレートは20質量%から40質量%で存在し、アルキル(メタ)アクリレートモノマーは20質量%から40質量%で存在し、親水性モノマーは20質量%から35質量%で存在し、架橋剤は0.5質量%から2質量%で存在する。

    前記光学高分子材料は架橋剤を含むことがある。 本発明のコポリマー材料を形成するのに有用な共重合可能な架橋剤としては、複数の不飽和基を有する任意の末端エチレン性不飽和化合物が挙げられる。 特に、その架橋剤としては、ジアクリレートまたはジメタクリレートが挙げられる。 架橋剤としては、少なくとも2つの(メタ)アクリレート基および/またはビニル基を有する化合物が挙げられるであろう。 特に好ましい架橋剤としては、ジアクリレート化合物が挙げられる。

    前記光学高分子材料は、一般に、それぞれのモノマー成分から従来の重合方法によって調製される。 選択された量のモノマーの重合混合物を調製し、従来のフリーラジカル熱開始剤を加える。 この混合物を適切な形状の型内に導入して、光学材料を形成し、穏やかな加熱によって、重合を開始させる。 典型的なフリーラジカル熱開始剤の例としては、ベンゾフェノン過酸化物などの過酸化物、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどのペルオキシカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾにトリル等が挙げられる。 特別な開始剤は、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(PERK)である。 あるいは、前記モノマーは、これらのアクリルモノマーの重合をそれ自体で開始できる波長の化学線に対して透明な型を使用することによって光重合させても差し支えない。 従来の光開始剤化合物、例えば、ベンゾフェノンタイプの光開始剤を導入して、重合を促進しても差し支えない。

    実施例1. 17%のクマリン−1を有する「Akreos」IOLの調製 クマリン1染料(2.5g)を、10mLのエタノールおよび5mLの水を含有するエタノールと水の混合物中に溶解させる。 「Akreos」サンプルの乾燥質量を記録する。 これらのサンプルを純水中で水和させ、その質量を記録する。 水和工程後、サンプルを、一定の質量に到達するまで、クマリン1染料を含有するエタノールと水の混合物中に浸漬する。 染料溶液中の浸漬後の質量を記録する。 添加した染料の質量は、溶液中の浸漬後の質量と、エタノールと水の混合物中の染料の質量濃度で乗じた乾燥質量との間の差として計算される。 添加した染料の百分率は、乾燥質量に対する添加されたクマリン1染料の質量を100で乗じた比として計算される。

    実施例2. 「Akreos」IOL材料における構造の形成 先に記載された光学システムを使用して、光学材料の選択された領域に線セグメントを形成した。 実験は、光増感剤を含む場合と含まない場合で、「Akreos」IOL材料に行った。 「Akreos」IOL材料は、約80質量%のHEMAおよび約20質量%のMMAを含み、上述したのと同様のプロセス条件を使用し、約26%の含水率である。

    水和サンプルを走査台上に水平に取り付け、フェムト秒レーザビームを、高開口数の対物レンズを通じて垂直に下方に向け、図7に示されるように、サンプルの上面から約100μmの深さで、バルク材料の内部に焦点を合わせた。 レーザビームに対して垂直なX−Y平面において0.4μm/秒の走査速度で周期的格子構造を形成した。 オリンパスBX51モデルの顕微鏡を使用して、これらの3種類の材料の内部に形成された格子を観察した。

    顕微鏡画像は、5μmの間隔で、サンプルの内部の周期的で平行な線セグメントの形成を示している。 これらのセグメントは明視野顕微鏡で見るのは難しく、それらのセグメントが低い散乱を示すことが示唆している。 これらのセグメントの線幅は約1μmであり、これは、ナイフ・エッジ法を使用して測定した2.5μmのレーザ焦点の直径よりも著しく小さい。

    照射された材料の断面は、線セグメントの断面は、長軸がレーザビームの方向に合わせられた楕円であることを明らかにし、この方向に、より大きいレーザ強度分布があることを示した。 対物レンズのカバースリップ補正を注意深く調節することによって、この球面収差を最小にできた。

    図8Aおよび8Bに示されるように、クマリン−1を「Akreos」IOL中に含ませることによって、「Akreos」IOL材料の透過スペクトルに約50nmの赤方偏移が与えられた。 クマリン−1を有する「Akreos」IOL材料は、400nmから約425nmで比較的著しい吸収プロファイルを有し、一方で、光増感剤を含まない「Akreos」IOL材料は、これらの波長では実質的に透明である。

    図9Aおよび9Bは、屈折線セグメントが、照射された上面から約200μmの深さで材料内に書き込まれた、「Akreos」IOL材料の位相差顕微鏡写真である。 この照射プロセスは、160mWの平均出力および50μm/秒の走査速度で行った。 図9Aに示されるように、光増感剤を含まない「Akreos」IOL材料に書き込まれた屈折線セグメントは、たとえあるとしても、Δn<<0.005(構造の可視検出限界)と、わずかしか屈折率を変化させない。 実際に、位相差強調によってさえも、材料における屈折線セグメントを見ることは非常に難しい。 対照的に、図9Bに示されるように、同じ出力と走査速度で、17%のクマリン−1を有する「Akreos」IOL材料に書き込まれた屈折線セグメントは、Δn>0.06と、非常に著しい変化を与える。 これらの線セグメントは、位相差強調ではっきりと見える。

    図10Aおよび10Bは、書き込まれた線セグメントの屈折力(屈折率の変化の大きさ)が一定の走査速度とレーザ出力に基づいてどのように変えられるかを示している。 図10Aは、1mm/秒の走査速度で、17%のクマリン−1を有する「Akreos」IOL材料に、約0.02から0.3のΔnを有する屈折線セグメントを形成できることを示している。 光増感剤を含まない「Akreos」IOL材料に約0.02から0.3のΔnを有する同様の線セグメントを生成するために、約10μm/秒で走査しなければならないであろうから、このことは意外な結果である。 クマリン−1が存在することにより、走査速度を100倍近く増加させることができる。 さらに、比較的小さいレーザ出力、すなわち、60mWでさえ、依然として、約0.005のΔnを有する屈折線セグメントを生成することができる。

    実施例3. 0.07質量%のフルオレセインを有する「ピュアビジョン」シリコーンヒドロゲルの調製 フルオレセイン(0.25g)染料を、50mLのエタノールおよび50mLの水を含有するエタノールと水の混合物中に溶解させる。 「ピュアビジョン」サンプルの乾燥質量を記録する。 これらのサンプルを純水中で水和させ、その質量を記録する。 水和工程後、サンプルを、一定の質量に到達するまで、フルオレセイン染料を含有するエタノールと水の混合物中に浸漬する。 染料溶液中の浸漬後の質量を記録する。 添加した染料の質量は、溶液中の浸漬後の質量と、エタノールと水の混合物中の染料の質量濃度で乗じた乾燥質量との間の差として計算される。 添加した染料の百分率は、乾燥質量に対する添加されたフルオレセイン染料の質量を100で乗じた比として計算される。

    実施例4. バラフィルコンAシリコーンヒドロゲルにおける構造の形成 実施例2に記載された光学システムを使用して、水和したバラフィルコンA(「ピュアビジョン」)シリコーンヒドロゲル材料の選択された材料に線セグメントを形成した。 光増感剤のフルオレセインを含む場合と含まない場合で、実験を行った。

    図11Aおよび11Bに示されるように、フルオレセインをバラフィルコンAシリコーンヒドロゲル中に含ませることによって、少なくとも150nmの透過スペクトルの赤方偏移が与えられた。 フルオレセインを含むバラフィルコンAシリコーンヒドロゲルは、500nmで比較的著しい吸収プロファイルを有する(図12B)のに対し、光増感剤を含まないシリコーンヒドロゲルは、これらの波長で実質的に透明である(図12A)。

    図12Aは、照射された上面から約200μmの深さで微細加工されたバラフィルコンAシリコーンヒドロゲルの位相差顕微鏡写真である。 照射プロセスは、60mW、および0.5μm/秒の一定の走査速度で行った。 図12Aにより示されるように、光増感剤を含まないバラフィルコンAシリコーンヒドロゲル中に書き込まれた屈折線セグメントは、たとえあるとしても、Δn<<0.005(構造の可視検出限界)と、わずかしか屈折率を変化させない。 実際に、位相差強調によってさえも、材料における線セグメントを見ることは非常に難しい。 対照的に、図12Bに示されるように、同じ出力と5.0μm/秒(未添加のバラフィルコンAと比べて10倍の増加)の一定の走査速度で、0.17質量%のフルオレセインを有するバラフィルコンAシリコーンヒドロゲルに書き込まれた屈折線セグメントは、約0.02から0.03のΔRIと、屈折率に非常に著しい変化を与える。 これらの屈折線セグメントは、位相差強調で明らかに見える。 さらに、比較的小さいレーザ出力、すなわち、60mWでさえ、依然として、1mm/秒の一定の走査速度で、約0.01のΔnを有する屈折線セグメントを生成することができる。

    図13は、フルオレセインまたはクマリン−1が未添加の場合か添加された場合の、バラフィルコンA材料における走査速度に対する屈折率変化を示すプロットである。 このプロットは、光増感剤が添加されたヒドロゲル材料における光調節効力の著しい向上を示している。 材料に添加することによって、材料を通るレーザの走査速度を100倍近く増加させ、すなわち、材料に屈折線セグメントを形成して、材料の屈折率の類似の修正を行うことができる。

    実施例2および4において、屈折構造(線セグメントアレイ)を、これらのアレイに632.8nmの波長を有する未偏光He−Neレーザビームの焦点を合わせ、回折パターンをモニタすることによって、調査した。 回折角は下記の回折式と良好な一致を示した:

    式中、mは回折次数であり、λは、ここでは632.8nmである入射レーザビームの波長であり、dは格子周期である。

    書き込まれたセグメントアレイの回折効率は測定することができ、その効率は屈折率変化の関数であるので、レーザ照射領域の屈折率変化を計算するためにその回折効率を用いることができる。 格子を位相格子と考えると、その透過関数は、

    のように記載することができ、式中、aは格子線幅であり、dは溝間隔であり、φ 2およびφ 1は、それぞれ線および周囲領域を通じた位相遅れ、

    であり、bは格子線の厚さであり、nは材料の平均屈折率であり、Δnは格子線における平均屈折率変化であり、λは測定の入射光の波長(632.8nm)である。 ここで、格子線幅は1μmであり、厚さは3μmである。 レーザ効果領域内の屈折率変化は、ほぼ均一と近似できる。 以下のように、重畳積分定理を使用して、格子のスペクトルを計算することができる。

    そこで、回折格子パターンの強度分布は以下のとおりである。

    この式から、0次(I 0 )、1次(I 1 )および2次(I 2 )回折光の強度は以下のとおりである。

    および

    1次、2次および0次の回折次数の光強度を比較することにより、格子線内の屈折率変化を決定することができる。 図3は、それぞれ、0.1374および0.0842である、PV2526−164における格子の0次回折次数の光強度に対する1次回折次数および2次回折次数の光強度の比を示しており、分析により決定される対応する屈折率変化は約0.06である。 同じ方法を用いて、RD1817およびHEMA Bの平均屈折率変化は0.05±0.0005および0.03±0.0005であると決定した。 このように、材料の屈折率変化は超高速レーザを適用することにより変更できることが示された。

    実施例5.
    690nmから1040nmの調整可能な波長範囲で100fsのパルス幅および80MHzの繰返し周波数のパルスを発生する、カーレンズモード同期Ti:サファイアレーザ(ニューポートのMaiTai HP)を備えたフェムト秒レーザ発振器を以下の実施例で使用した。 実験において、対物レンズの焦点での平均レーザ出力を可変減衰器により減衰させ、調節し、そして、ヒドロゲルポリマーにおける総光学損傷を回避するために160mW(2nJのパルスエネルギー)未満に設定した。 100nmの解像度の3つのNewport VP−25XAリニアサーボステージは、コンピュータにより制御されプログラムされた3Dの平坦な走査台を形成した。 焦点対物レンズは60×0.70NAオリンパスLUCPlanFLN長作動距離対物レンズであった。 この対物レンズは、球面収差を正確に補正することができ、材料表面の下の様々な深さでほぼ回折限定レーザ焦点スポットを形成することができた。

    レーザパルス照射シーケンスの最中に、光学ヒドロゲル高分子材料を、2つのカバースリップ間のサンドイッチ構造中の水性環境内に維持し、そして走査台上で水平に取り付けた。 フェムト秒レーザパルスを、焦点対物レンズを通してヒドロゲルサンプル内部に垂直に焦点合わせした。 0.4μm/秒から4mm/秒の様々な水平一定走査速度を、様々な高分子ヒドロゲルおよび様々な平均レーザ出力とともに用いた。 CCDカメラを使用して照射プロセスをモニタし、プラズマ発光を検出した。 これにより、レーザ誘起材料破壊の進行が示された。 レーザ照射の後に、材料を取り外し、様々なモードで校正済みのオリンパスBX51顕微鏡で観察した。 被照射領域の屈折率変化を、L.Ding等”Large refractive index change in silicon-based and non-silicon-based hydrogel polymers induced by femtosecond laser micro-machining,” Opt. Express 2006, 124, 11901-11909に記載された格子実験、または、校正済みの微分干渉(DIC)顕微鏡いずれかによって測定した。

    実施例5Aから5D.
    ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メチルメタクリレート(MMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)および様々な濃度のフルオレセイン−メタクリレート(Fluo−MA)を含む光学ヒドロゲル高分子材料を調製し、それらが表1に纏められている。 HEMA(83.7質量%)、MMA(13.7質量%)、EGDMA(0.51質量%)およびAIBN(0.1質量%)開始剤を含有するマスターモノマーバッチを調製した。 適量のFluo−MAを個別のモノマー調製物に添加して、表1に列挙されたFluo−MAを記載の質量%で含むモノマー混合物を提供した。 これらのモノマー混合物を当該技術分野において周知の方法にしたがって重合し、700μm厚の平坦フィルムの形態で硬化させた。

    HEMA系のヒドロゲルポリマーは、約28質量%の含水率、および1.44の平均屈折率を有する。 通常、Ocean Optics HR4000分光計を使用して、その透過スペクトルを測定した。

    図14は、光増感されていないヒドロゲル材料および様々な濃度のFluo−MAが添加されたほぼ同一のヒドロゲル材料の透過スペクトルを示している。 図示されるように、約350nmから約450nmを中心とする吸収ピークは、Fluo−MAの濃度の増加とともに増加した。 Fluo−MAを添加したヒドロゲル材料の各々は、近赤外領域において透明のままであったが、より高い添加濃度ではある程度の散乱損失が観察された。

    HEMA系のヒドロゲル材料の各々を、800nmおよび120mWの平均出力のフェムト秒パルスシーケンスを用いて微細加工(照射)した。 水平周期線アレイを、一般に、材料の上面から約100〜150μm下に様々な一定の走査速度で書き込んだ。 様々な走査速度での屈折率変化を各材料について測定し、その変化が図15に示されている。 屈折率の変化の度合いは、走査速度の増加とともに減少した。 例えば、未添加の材料における最も大きな屈折率変化は3μm/秒の走査速度での0.03±0.005であった。 走査速度が2μm/秒未満であった場合、未添加の材料で炭素損傷スポットが観測された。 また、屈折率変化の度合いは、走査速度の増加とともに急速に減少した。 10μm/秒を超える一定の走査速度では、屈折率の変化は我々の実験では小さすぎて測定できなかった(<0.005)。

    対照的に、添加されたヒドロゲル材料では、蓄積した熱により誘発されると考えている材料の光学損傷(炭化)を回避するために、走査速度を著しく増加させる必要があった。 0.0625%のFluo−MAを用いた実施例5Bでは、材料への炭化損傷を回避するために、少なくとも40μm/秒の一定の走査速度が必要であった。 0.5%のFluo−MAを用いた実施例5Eでは、500μm/秒の走査速度でさえも材料内の損傷を示す小さなスポットによる証拠が観察されるであろう。 また、600μm/秒の一定の走査速度での実施例5Eの照射では、0.085±0.005の屈折率変化が測定された。

    一般に、屈折率の変化の度合いは、一定の走査速度でFluo−MAの濃度が減少するにつれて減少した。 例えば、1mm/秒の走査速度では、0.5%および0.0625%のFluo−MAが添加された材料についての屈折率の測定値変化は、それぞれ、0.065±0.005および0.005±0.002であった。 実際に、0.5%Fluo−MA材料では、0.025±0.005の屈折率変化が走査速度4mm/秒で得られた。 これらの結果は、Fluo−MAをポリマー網目構造中に共重合させた場合、ヒドロゲルポリマー内の非線形吸収が大幅に増加し得ることを示している。

    屈折率の大きい変化が、未添加の材料よりも1000倍速い一定の走査速度で観測され得る。 実施例5のヒドロゲル材料中のFluo−MA濃度が高すぎると、すなわち、3質量%よりも大きい場合、ヒドロゲルポリマー網目構造内に凝集体(散乱中心)が見え始めた。 したがって、実施例5のHEMA系の材料では、Fluo−MA濃度は、約0.05質量%から約2質量%、または約0.1質量%から約1.5質量%である。 要約すると、光増感剤モノマーであるFluo−MAの高分子ヒドロゲル中の濃度が増加するにつれて、一定の走査速度を著しく速くしたとしても、焦点体積内の屈折率の変化の度合いが対応して増加することが観測された(図15)。

    図16Aおよび16Bに、2つの異なるパルスエネルギー:(a)1.5nJ(120mWの平均出力);および(b)2nJ(160mWの平均出力)を使用して、実施例5A(未添加)および実施例5E(0.5%のFluo−MA)に関する我々の実験調査が要約されている。 両方のヒドロゲル材料について、フェムト秒レーザを、一定の走査速度で、より長い波長で作動するように調整するにつれて、屈折率の変化の度合いは低下した。 実施例5Aでは、屈折率の変化の度合いは、全てのレーザ波長について0.01未満であった。 パルスエネルギーを増加させるか、または走査速度を減少させようと試みると、光学損傷を生じるだけであった。 850nmより長い全ての波長では、走査速度が100μm/秒超であったとしても、いずれのパルスエネルギーでも実施例5Aでは屈折率の変化は観測されなかった。 この波長領域において、より高いパルスエネルギーおよびより遅い走査速度も試験したが、屈折率の変化なしに光学損傷のみが観察された。 対照的に、屈折率の著しく大きい変化が実施例5Eで観察された。 さらに、光増感された材料により提供される非線形吸収改善のために、材料損傷はより短い波長で観測された。 例えば、2mm/秒の走査速度および1.5nJのパルスエネルギーでさえ、775nm未満の波長ではある程度の光学損傷が観察される。

    より長い波長(800nmより長い)での実施例5Eの照射では、材料の焦点体積内で屈折率の比較的大きい変化が得られた。 図16Aは、0.5mm/秒の一定の走査速度で、900nmの波長では、材料の焦点体積内で0.06の屈折率変化が達成され得ることを示している。 また、平均レーザパルスエネルギーを1.5nJから2.0nJに増加させることにより、屈折率のさらに大きい変化を達成できるが、ある程度の光学損傷が観測された。 図16Aおよび図16Bのデータおよびプロットを比較すると、パルスエネルギーを1.5nJから2nJに増加させることにより、900nmの波長および0.5mm/秒の走査速度で光学損傷がもたらされことが示される。 また、走査速度を1mm/秒に増加させた場合、屈折率の変化が非常に小さい(約0.005程度)ことが観測された。

    焦点体積内での屈折変化に関する波長依存性をさらに調査するために、実施例5Aから実施例5Eを、1.5nJの平均パルスエネルギーで、様々な走査速度で、700nmから1000nmの波長範囲にわたって照射した。 各ヒドロゲル材料について、屈折率の変化の度合いは、レーザ波長の増加とともに減少し、Fluo−MAの濃度とともに増加した。 図17は、1mm/秒の走査速度での実施例5Eのデータおよびプロットを示している。 図17のデータは、ヒドロゲル材料中に屈折構造を形成することができ、なおも、材料内に著しい光学損傷(散乱特性)を形成させない安全な作動距離を維持することができる作動パラメータの範囲を示唆しているので、非常に有用である。 実施例5Dおよび5Eについて、850nmから900nmでの照射により、光学損傷のない安全な作動距離を提供し、なおも、所定の走査速度および平均レーザ出力で、屈折率の著しい感知できる変化、すなわち、0.01から0.04の変化を提供する。 実施例5Eでは、950nmでさえも、感知できる屈折率変化を観察することができる。

    すでに記載したとおり、水和ヒドロゲル材料の場合のように、ポリマーマトリクス内の水の存在が、焦点体積内に屈折率の観察変化をもたらすのに重要な役割を果たすと考えられる。 したがって、実施例5Bから5Eのヒドロゲル材料並びに同様の組成であるが含水率が低減した材料において、水の濃度が屈折率に変化の度合いに与える影響について調査した。 HEMA(68.6質量%)、MMA(28.9質量%)、EGDMA(0.51質量%)およびAIBN(0.1質量%)開始剤を含有するマスターモノマーバッチを調製した。 個別のモノマー調製物に適量のFluo−MAを添加して、表2に列挙された質量%のFluo−MAを含むモノマー混合物を提供した。 それらのモノマー混合物を当該技術分野において周知の方法にしたがって重合させ、700μm厚の平坦フィルムの形態で硬化させた。 実施例6のヒドロゲルポリマーは21%の含水率を有する。

    同様に、実施例7のヒドロゲル材料を、HEMA(49.0質量%)、MMA(48.4質量%)、EGDMA(0.51質量%)およびAIBN(0.1質量%)開始剤を含有するマスターモノマーバッチから調製した。 個別のモノマー調製物に適量のFluo−MAを添加して、表2に列挙された質量%のFluo−MAを含むモノマー混合物を提供した。 それらのモノマー混合物を当該技術分野において周知の方法にしたがって重合させ、700μm厚の平坦フィルムの形態で硬化させた。 実施例7のヒドロゲルポリマーは12%の含水率を有する。

    示したとおり、実施例5から7の各組の材料は、様々な濃度の光増感剤、Fluo−MAを有する。 図18は、800nmの照射波長、1.5nJの平均パルスエネルギーおよび1mm/秒の走査速度での、これらのヒドロゲル材料中の屈折率変化の結果を示している。 図示されるように、屈折率の変化の度合いは、全ての光増感されたヒドロゲル材料において、水濃度の減少とともに低下した。 ヒドロゲルの局所水濃度は、材料の熱力学的特性、例えば、比熱、熱容量など、並びに材料密度に影響を及ぼすものと考えられる。 屈折率の最大の変化は、実施例5のヒドロゲルで得られ、そのヒドロゲルは約28%の最大の含水率を有する。 さらに、比較的に含水率が多いヒドロゲルでは、材料に対する光学損傷なしに屈折構造を形成するための安全作動距離が最も長くなる。

    我々は、実施例5E、実施例6Dおよび実施例7Dのヒドロゲル材料で、各々が0.5%のFluo−MAを含むが、含水率が異なるものの波長依存性も調べた(図19参照のこと)。 光学損傷が全くなく、屈折率の比較的大きい変化(0.02を超える)が、1.5nJの平均パルスエネルギーで、実施例5Eにおいてのみ観測された。 しかしながら、この調査においては1mm/秒の比較的速い走査速度を使用したことにも留意しなければならない。 示されるように、レーザ波長が約750nm未満である場合、光学損傷しか観測されなかった。 レーザパルスが、800nm超の波長で作動している場合、実施例7のヒドロゲル材料(12%の含水率)で屈折率の変化は観測されず、光学損傷が観測される。 実施例6のヒドロゲル材料(21%の含水率)では、照射波長が約875nmである場合、光学損傷なしに0.01の屈折率変化が観測される。

    記載されたプロセスに使用できる光学ヒドロゲル材料を、表4に列挙された高分子モノマー配合物から調製する。

    記載されたプロセスに使用できる光学ヒドロゲル材料を表5に列挙された高分子モノマー配合物から調製し、それらの材料が実施例8および9として列挙されている。 実施例8および9を、90度の最高温度への穏やかな昇温の加熱によって1mm厚のフィルムとして熱的に硬化させ、その後、高圧滅菌によって滅菌した。 材料の高圧滅菌後に安定である光学的に透明な高分子材料を得るために、重合中に溶媒相溶化剤を含ませる必要があった。 そのような溶媒相溶化剤としては、酢酸エチルやDMFなどの極性有機溶媒が挙げられる。 溶媒相溶化剤の量は、モノマー成分の総質量に基づいて、7質量%と20質量%の間で様々であった。

    モノマーXは、2−[3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−(3”−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−5−クロロベンゾトリアゾールであり:
    HEMAは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートであり:
    MMAは、メチルメタクリレートであり:
    EGDMAは、エチレングリコールジメタクリレートであり:
    AIBNは、アゾビス(イソブチロニトリル)である。

    屈折率分布を有する屈折構造 任意のレンズ材料または材料の改質、例えば、光増感剤の含有、または先に記載されたレーザパラメータに関する除外なく、先に開示された技法および装置を用いて、以下に限られないが、IOLまたは角膜内レンズの形態にある、光学高分子材料、典型的に、光学ヒドロゲル材料の屈折特性、およびそれゆえ屈折度を、光学材料の一次元、二次元または三次元の屈折率分布を有する屈折構造を作製(機械加工)することによって、修正することができる。 分布屈折構造は、走査速度および/または平均レーザ出力を変えながら(これにより、セグメントに沿ってポリマー内に屈折率分布が形成される)、光学材料中の少なくとも1つの連続セグメント(走査線)内にそれに沿って制御された焦点体積を有する連続した一条のフェムト秒レーザパルスを連続的に走査することによって形成できる。 したがって、材料における屈折率が一定に変化した屈折構造の別個の、個々の、または群を成したまたは束になった、隣接セグメントを形成するのではなく、連続した一条のパルスを連続的に走査することによって、分布屈折率が屈折構造内に、それによって光学材料において形成される。 以下により詳しく説明されるように、材料における屈折変更は多光子吸収プロセスにより生じるので、球面(および他の)収差について補正された十分に制御された焦点体積が、走査長に亘り、一貫した、所望であれば、一定の深さを有するセグメントを生成する。 さらに述べるように、高繰返し周波数のフェムト秒パルスからなる強集束レーザビームが、レーザの入射波長で公称上透明である材料に入射したときに、焦点領域から離れた材料には、もしあるとしてもわずかしか影響がない。 しかしながら、焦点領域において、その強度は、平方センチメートル当たり1テラワットを超えることができ、2以上の光子を同時に吸収する可能性が著しくなり得る。 特に、2光子吸収の量は、適切な波長(例えば、750nmと1100nmの間)で大きい2光子吸収断面を示す選択された発色団を被照射材料に添加するか、他の様式で含ませることによって調節できる。 このように発色団を有することにより、既に記載したように走査速度を著しく増加させることができる。 また、様々なセグメントについて異なる走査速度および/または異なる平均レーザ出力レベルを使用して、層に亘り、すなわち、走査方向に対して垂直に屈折率分布を形成することによって、材料中に層状に多数のセグメントを書き込むことができる。 さらに、患者の目の高次収差のいくつか、ほとんど、または全てを矯正する所望の屈折率変化を材料に与えるために、z方向(すなわち、概して、材料を通る光の伝搬方向)に沿って材料に多数の間隔の置かれた屈折率分布(GRIN)層を書き込むことができる。

    材料に屈折GRIN層または構造を書き込むために、焦点体積内の材料の屈折率の測定変化に対して走査速度およびレーザ出力の効果を校正することが都合よい場合がある。 一例として、全ての他のパラメータを一定にしながら、様々な書込み速度で回折格子の形態にある屈折構造を10個調製し、結果として得られた回折効率を測定し、それによって、材料の屈折率変化を決定した。

    図20は、所定の組の作動条件:400mWの平均レーザ出力、100fsのパルス幅、800nmの波長、および0.7NAの空気中(air immersion)顕微鏡対物レンズによる集束について、mm/秒で表された走査速度の関数として、「Akreos」様材料における屈折率変化の変化を示している。 図20は、データへの経験的近似も示している。 この経験的近似を使用することにより、その関係を単に逆にすることによって、屈折率の所望の変化の関数としての走査速度を得ることができる。 その後、図20に示された校正曲線を使用することにより、走査速度を変えることによって、所望の屈折率勾配を有する屈折構造を書き込むことができる。 あるいは、または走査速度の変更と組み合わせて、レーザ(平均)出力を変えることによって、所望の屈折率分布を有する屈折構造を書き込むことができる。

    眼用用途について、GRIN屈折構造が低散乱性であり(先に記載したように)、高い光学品質のものであることは、非常に興味深い。 図21は、断面で、1μmから10μmの厚さを有し、層間で(z方向における)ある距離だけ隔てられた横のGRIN層605−Nが光学高分子材料に書き込まれている、前面602および後面604を有する眼用ヒドロゲル材料600を示している。 図示されたように、光610(波の形態で示されている)が、前面602を通って光学材料600に入り、最初の屈折率分布層605−1に当たる前に、距離Dだけ材料を通って伝搬する。 各屈折率分布層605−Nは、x方向またはy方向に走査することによって、上述したように書き込めるまたは形成できるセグメントからなる。 特定のxy平面内の任意の方向に(z軸の周りの回転)またはz軸に対して45°から135°の任意の角度で、走査しても差し支えないことが、当業者により確実に理解されるであろう。 しかしながら、説明を簡単にするために、分布層605−Nは、z軸並びに入射光波610に対して実質的に90°に示されており、x軸に沿って延在するか、またはそれに沿ってセグメント(すなわち、線セグメント)を走査することによって形成される。 重ねて、簡単にするため、かつ説明目的のためだけに、走査方向に沿った線セグメントは、走査方向に沿って一定の走査速度および一定の平均レーザ出力を維持することによって形成される。 したがって、各線セグメントは、走査方向に沿って一定である、材料の屈折率に対する屈折率変化を提供する。

    x方向に沿った1つの線セグメントの書込み後、隣接する線セグメントが書き込まれる。 隣接する線セグメントは、同じ走査速度とレーザ出力を使用することによって書き込むことができ、それによって、先に書き込まれた線セグメントと同じ屈折率変化を提供できる。 あるいは、レーザ出力を変えずに、走査速度を減少させて、先に書き込まれた線セグメントと比べて、より大きい屈折率変化を生じさせることもできる。 述べたように、隣接するセグメント間に、屈折率修正を免れる光学材料がないかほとんどないことを確実にするために、隣接するセグメント間の間隔は、2つの隣接するセグメントの平均線幅より小さいことが好ましい。 線セグメントを書き込むこのプロセスは、複数のセグメントに亘り、すなわち、GRIN層の寸法に亘り、所望の数のセグメントが所望の屈折率分布で書き込まれるまで、続けられる。

    最後に、光波が複数のGRIN層605−Nを通過するときに、それらの光波は、各GRIN層からの寄与により曲がり、後面604から出る。 光波の曲がりにより矯正波面612が提供され、これは、材料に屈折度変化を与え、次に、患者の視力の矯正に使用することができる。

    図22は、図21に関して記載したばかりのプロセスによって光学材料内に書き込まれたGRIN層を表している。 図22は、図21の最初の分布層605−1を見下ろした平面図として最もよく記載される。 図示されるように、GRIN層605−1は、実質的に平行な複数のN個の線セグメント705−1,705−2,705−3,・・・705−Nを含み、各線セグメントは、約1から5μm(例えば、2μm、3μm、または4μm)の線幅およびセグメントの線幅(図示されるような、ほぼ等しい線幅のセグメントについて)より小さいセグメント間の間隔を有するか、または2つの隣接する走査セグメントのセグメント幅が変わる場合には、セグメント間の間隔は、2つの隣接する走査セグメントの平均線幅より小さい。 図21を参照すると、セグメントは、x方向に沿って4mmに亘り走査することによって形成され、各セグメントは、走査方向に沿って一定の屈折率変化で書き込まれる。 説明目的のためだけに、セグメントは、705−1,705−2,705−3,・・・705−Nと番号がふられているが、各代表的な線セグメントは、実際には、材料に書き込まれた数百の線セグメントの集合である。 このことは、各々が、例えば、それぞれ、5μmおよび4μmの線幅およびセグメント間の間隔を有する、描写された15のセグメントは、約60μmのy方向の距離しか及ばないのに対し、形成された実際の構造は、y方向に約1.8mm延在することが直ちに認識されるので、当業者には十分に理解される。 したがって、書き込まれたセグメントの実際の数は、合計で4500に近いセグメントがある(描写されたセグメントの各々は、約300個の書き込まれたセグメントを表す)。 また、各セグメントの間に描かれた白い線セグメントは、それぞれのセグメントの書込みを区別するためだけに表されている。 実際に、セグメント間には、非屈折率変更材料の間隔はないかまたはほとんどない。 特に、分布層605−1の一番左側から始めると、各隣接するセグメントは、y方向に横に移動しながら書き込まれる。 この一例において、所望の幅の分布層が達成されるまで、合計で15のセグメントが表されているまたは描かれている。 図示されるように、分布層605−1は、1.8mmの幅を有し、y方向に沿った屈折率分布変化およびx方向に沿った一定の屈折率変化を含む。

    示されたように、屈折率分布層605−1は、セグメント705−1から705−8までy方向に右に動くにつれて増加する屈折率変化を有する放物線屈折率分布プロファイルを含む。 重ねて、セグメントに亘り屈折率を増加できる方法が少なくとも2つある:1つは、y方向に沿って動くにつれて、それぞれのセグメントの走査速度を減少させること、もう1つは、y方向に沿って動くにつれて、それぞれのセグメントの平均レーザ出力を増加させること。 セグメント705−8が一旦完了したら、セグメント705−9について、走査速度を増加させるか、または平均レーザ出力を減少させ、それによって、セグメント705−15が書き込まれるまで、y方向に沿って動き続けるのにつれて、屈折率の減少する傾向を設定する。

    図23Aおよび23Bは、図22のGRIN層605−1の屈折率分布プロファイルを表すグラフである。 図23Aは、分布層605−1の選択されたセグメント705−Nに関する屈折率変化を表すグラフである。 記載された屈折率変化は、焦点体積の外側の光学材料の屈折率に対するものである。 示されたように、セグメント705−4および対応するセグメント705−12は、セグメントの全長に沿って0.02の材料の屈折率変化を提供するように、選択された走査速度および平均レーザ出力で書き込まれている。 同様に、セグメント705−6および対応するセグメント705−10は、0.03の材料の屈折率変化を提供するように、選択された走査速度および平均レーザ出力で書き込まれている。 セグメント705−8は、0.04の材料の屈折率変化を提供するように、選択された走査速度および平均レーザ出力で書き込まれている。 図23Bは、分布層605−1のy軸に沿った屈折率分布プロファイルを示すグラフである。 図23Bは、y方向に滑らかな連続曲線として描かれているが、一部には、記載されたプロセス、焦点体積に関連した寸法、およびレーザシステムの走査座標を正確に設定する能力のために、実際の分布プロファイルには、ある程度のばらつきまたはギザギザが存在する可能性があることが当業者には理解されるであろう。

    また、y方向に沿った屈折率分布プロファイルは、どのような予め設定された形状を有してもよいことも当業者に理解される。 図23Bに描かれた分布プロファイルは、正のレンズ素子の効果を有するのに対し、逆の分布プロファイルを有する1つ以上の屈折率分布層を容易に調製し、それによって、図24のように、負のレンズ素子の効果を提供することもできる。

    y方向に沿って書き込まれた屈折率分布プロファイルに加えて、またはそれに代わって、走査方向に沿って屈折率分布層を書き込んむこともできる。 図25Aから25Cは、走査方向に沿った分布層のいくつかの好ましい屈折率分布プロファイルを例示している。 記載されるように、そのような分布層は、走査中、すなわち、各セグメントが書き込まれているときに、レーザ出力を変調することにより、または走査速度を変えることにより、形成することができる。 図25Aは、材料の屈折率変化が、全走査方向に沿って実質的に一定の比率でどのように増加できるかを例示している。 同様に、当業者には、材料の屈折率変化が、全走査方向に沿って実質的に一定の比率でどのように減少できるかも考えられる(図示せず)。 図25Bは、材料の屈折率変化が、セグメントの中点まで、走査方向の半分に沿って実質的に一定の比率で増加し、次いで、セグメントの端部まで実質的に一定の比率で減少できるかを例示している。 同様に、当業者には、材料の屈折率変化が、セグメントの中点まで、走査方向の半分に沿って実質的に一定の比率で減少し、次いで、セグメントの端部まで実質的に一定の比率で増加できるかも考えられる(図示せず)。 図25Cは、材料の屈折率変化が、走査方向に沿ってある転移点まで実質的に一定の比率で増加し、次いで、セグメントの端部まで同じ比率で減少するかを例示している。 同様に、当業者には、材料の屈折率変化が、走査方向に沿ってある転移点まで実質的に一定の比率で減少し、次いで、セグメントの端部まで同じ比率で増加するかも考えられる(図示せず)。 記載された屈折率分布プロファイルは、説明目的のためだけに与えられており、当業者は、いくつの屈折率分布プロファイルもきっと考えられるであろう。 例えば、セグメントに沿った材料の屈折率変化は、一定である、または複数の変化比率でセグメントに沿って連続的にまたは段階的に増減しても差し支えないことが、当業者には十分に理解される。

    走査方向に沿った上述した全ての例示の屈折率分布プロファイルについて、1つ以上の屈折率分布層の類似の屈折率分布プロファイルは、GRIN層の少なくとも5以上の隣接するセグメント(例えば、5から1000セグメント)、少なくとも30以上の隣接するセグメント(例えば、30から1000セグメント)、少なくとも100以上の隣接するセグメント(例えば、100から1000セグメント)に亘り、またはそれらの間に屈折率の変化を変えることによって達成することができる。 図26Aから26Cは、異なるセグメントに亘り、すなわち、走査方向に対して実質的に垂直な、分布層のいくつかの好ましい屈折率分布プロファイルを例示している。 先に述べたように、そのような分布層は、隣接するセグメントの領域において、レーザ出力を変調させることにより、または走査速度を変更することにより、形成できる。 図26Aは、材料の屈折率変化が、一連の隣接するセグメントに沿って実質的に一定の比率でどのように増加できるかを例示している。 同様に、当業者には、材料の屈折率変化が、一連の隣接するセグメントに沿って実質的に一定の比率でどのように減少できるかも考えられる(図示せず)。 図26Bは、材料の屈折率変化が、第1の領域の隣接するセグメントに沿って実質的に一定の比率で増加し、次いで、第2の領域の隣接するセグメントに沿って実質的に一定の比率で減少するように進行できるかを例示している。 同様に、当業者には、材料の屈折率変化が、第1の領域の隣接するセグメントに沿って実質的に一定の比率で減少し、次いで、第2の領域の隣接するセグメントに沿って実質的に一定の比率で増加するように進行できるかも考えられる(図示せず)。 図26Cは、材料の屈折率変化が、第1の領域の隣接するセグメントに沿って実質的に一定の比率で増加し、次いで、第2の領域の隣接するセグメントに沿って異なる比率で減少するように進行できるかを例示している。

    図26Aから26Cは、走査方向に対して垂直な屈折率分布層のいくつかの屈折率分布プロファイルを例示している。 分布プロファイルはこれらの形状に制限されることは決してない。 例えば、複数のセグメントに亘り材料の屈折率変化は、一定であっても、複数の変化比率でセグメントに沿って連続的にまたは段階的に増減しても差し支えないことが当業者に十分に理解される。

    眼用素子に屈折率分布微細構造を書き込む場合、ある条件下では、その構造のいくつかの領域における累積位相差は2πを超える可能性がある。 それらの領域において、屈折率分布構造の設計は、モジュロ−2πである位相シフトを提供するように変更できる。 言い換えれば、位相シフトが2πと4πの間である領域において、全位相シフトから2πの一定の位相シフトを除算することができる。 同様に、この設計による位相シフトが位相シフトを4πから6πの範囲にする場合、その領域における設計から一定の4π位相シフトを除算することができる。 位相シフトの原因となるこのプロセスは、素子書込み時間の合計を減少させるのに役立つ上で、ある場合には、有用であり得る。

    上述したように、屈折率の変化は、素子の所望の機能要件にしたがって、所定の様式で各屈折率分布層内で異なるであろう。 例えば、集束レンズが望ましい場合、屈折率変化が二次的に変化することが都合よいであろう。 最大屈折率変化が中心にあり、その変化が縁へと外方に減少する場合、その構造は、集束力を提供する。 屈折率変化が縁で最大でありり、中心に向かって減少する、逆の場合には、そのような構造は、発散力、すなわち負の集束力を提供する。 さらに、所定の大きさと向き(例えば、x方向)の二次屈折率変化によって1つ以上の層605が書き込まれ、異なる大きさと向き(例えば、y方向)の二次屈折率変化によって1つ以上の異なる層が書き込まれる場合、乱視用交差円柱レンズが形成され、これは、眼内レンズにおける視力矯正に適用できる。 屈折セグメントは、中心位置から外側に放射状の同心セグメントとして、もしくは弓形または湾曲セグメントとして書き込んでも差し支えない。 また、屈折セグメントは平面層(比較的厚さが一定の)として書き込んでも差し支えなく、または屈折セグメントは、z方向に変動しても、すなわち、厚さが変動しても差し支えない。

    説明のための態様において、円柱レンズ構造に、10μmだけ離れて(z方向)、図22に示されるような各5μm厚の3つのGRIN層を有する、図21に示された一次元二次屈折率分布構造を書き込んだ。 したがって、各GRIN層の間には、約5μmから7μmの厚さを有する非修正光学材料の層が存在する。 結果として得られた円柱レンズは、素子の長手方向に沿って均一な約1ジオプトリーの非点収差を与えるように設計されていた。

    図27は、レンズ領域に公称二次位相軌跡1802を示すレンズ構造1801(矩形領域)のTwyman Green干渉計画像(図27Bは図27Aの概略図である)を示している。 挿入画像は、位相の読取り値の放物面特性を確認する位相トポグラフィー測定を示す。 xyz高速圧電平行移動ステージおよび走査手法における不完全さのために、ランダム位相シフトを生じる局所屈折率の変動が生じるが、縁の一般的な外観は予測されたとおりである。 観察された位相シフトは、走査速度か、または線の間隔のいずれかにおける、走査プロセスの不均一性によって生じると推測できる。 さらに、使用した3D高速超音波圧電ステージ(PolyTek PI)はある程度の回帰誤差(retracing error)を示し、ここで、戻り走査線は、最初に走査した線の高さより数マイクロメートル下に位置し、これにより、ある程度のランダム位相誤差が生じ得る。 測定した非点収差(ガラスおよびヒドロゲル基質における任意の基線非点収差について補正された)は、サンプルの長手方向に沿って、+0.3と+0.9との間で変動した。

    屈折率分布を有する屈折構造は、非常に多用途のものであり、記載したように、異なる結果を達成するように各GRIN層が異なる、垂直に間隔が置かれた(z方向)複数の層として書き込むことができる。 ヒドロゲル材料について、例えば、高い屈折率変化を維持するために、GRIN層の間の間隔を5μmから10μmかその辺りの範囲に維持することが都合よい。 例えば、素子をコンパクトに維持するために、GRIN層の間の間隔を最小にする、例えば、5μm、6μm、7μm、8μm、または9μmの間隔にすることが望ましい。

    視力矯正において球体および円柱を補正するだけでなく、高次収差も補正できることが望ましい。 老視の症状を緩和するために、多焦点効果を提供できる改良設計を提供することも望ましい。 さらに、「レインボー」の作用を最小にすることが望ましい。 この作用は、回折ピークが、角度mλ=dsinθで見られる回折による作用であり、式中、mは回折次数であり、λは所定の波長であり、dは格子周期である。 線の間隔が、観察に使用されている光の波長よりも大きいときに、この作用が予測される。 例えば、記載したGRIN屈折構造の開発において、隣接するセグメントの平均セグメント線幅より大きいセグメント間の間隔を有する隣接するセグメントは、目に見える着色またはレインボー効果を示したが、セグメント間の間隔を、隣接するセグメントの平均セグメント線幅未満に、例えば、1μmの平均セグメント線幅について、0.8μmから0.5μmに減少させることによって、観察される「レインボー」効果は著しく減少する。 隣接するセグメントのセグメント間の間隔が、隣接する平均セグメント線幅より小さい場合、隣接するセグメントの焦点体積には、ある程度の重複が必ずある。 したがって、材料の体積を複数回照射することから生じ得る材料損傷を最小にすることが望ましい。 何故ならば、材料損傷により、光の散乱が生じることが分かっているからである。

    公知の適応光学系および技法の使用に加え、患者の角膜の前面からIOL中に5mm(以上)の深さでIOLに書き込むことのできる屈折セグメントまたは屈折率分布層を形成するためにレーザからの短い光パルスを精密に制御することが記載される。 2光子蛍光信号により提供される能動フィードバックを使用して、走査作動中にフィードバックがリアルタイムの適用光学素子によって、高度な(ほぼ回折制限の)焦点が維持される。

    高分子材料において屈折率変更を書き込むために効果的に使用される高開口数(NA>0.7)顕微鏡対物レンズが、約3.2mmの最大作用深さを有することが公知である。 埋め込まれたIOLが、角膜の前面の後ろの5mm以上の深さに配置できることが、さらに認識されている。 さらに、角膜表面に誘起された収差は、集束ビームの品質を酷く劣化させる。 水浸(water immersion)対物レンズの使用によって、焦点合わせの品質が向上するが、それでもまだ、深さの解像度は限られている。 また、水浸の使用には、一般に、手術中に角膜表面の圧平が必要である。 その上、IOL内に屈折矯正を書き込むために、著しく軸から外れた角膜の領域を走査することが好ましく、これにより、大きい高次の収差が導入され、集束ビームの品質が劣化するであろう。

    これらの認識された問題のために、焦点のリアルタイム制御を提供し、走査すなわち書込みプロセス中に制御を維持する走査システムと一体化された、長い作動距離(例えば、12mmまで)、高NA(すなわち、>0.5)の対物レンズを使用して、空気中での回折制限焦点合わせを達成できる方法および素子の形態の解決策が促進された。

    非限定的な例示の実施の形態によれば、リアルタイムフィードバックの適応光学走査システム1900が図28に図解されている。 短パルスレーザビーム1901が、コンピュータ制御されたビーム減衰器1903を通過して、所望のレーザ出力を設定する。 次いで、そのビームは、顕微鏡対物レンズ1976の入射瞳を最適に満たすように設計された拡大リレー望遠鏡1905を通過する。 リレーレンズ系の倍率および設計も、二次元ガルバノ・スキャナ1907を顕微鏡対物レンズの入射瞳に結像するように設定される。 この二次元ガルバノ・スキャナは、一般に約20マイクロ秒以内のビームの高速リターゲティングを提供できる。 ガルバノ・スキャナの後に、ビームは可変鏡1904で反射される。 この可変鏡は、コンピュータにより制御され、制御装置1911からの信号に応答して形状を変える。 この光は、10〜12mmの作動距離で100×NA0.70の仕様を有する長作動距離製品検査対物レンズ(Mitutoyo M PLAN NIR HR BF 100X NA0.70,WD10.0mm、またはM PLAN NIR BF 100X NA0.50,WD12.0mm)を使用して、目1998および埋め込まれたIOL1999の内部に焦点が合わせられる。 Z軸または集束寸法は、顕微鏡対物レンズに取り付けられたZ軸スキャナ(図示せず)により制御されるのに対し、X−Y走査は、ガルバノメータ・システムにより提供される。 患者の頭部の走査、あるいは、集束レンズを有する適応光学素子の走査を提供する追加の走査構成部材が含まれてもよい。

    1つの光学系の実施の形態において、エピ・モード(epi-mode)(背面検出)の外因性または内因性(IOLにおける2光子エンハンサーとして使用される2光子発色団からの)2光子蛍光信号が、焦点品質の検出要素として使用される。 例えば、IOLに書き込むべき屈折構造、好ましくは、記載されたGRIN構造の数およびタイプを決定するために、最初に波面収差試験が患者に行われる。 一旦、患者が適切に配置されたら、OCT(光干渉断層法)システム1913により予備走査が行われて、IOLの界面を突きとめる。 次いで、レーザを低出力(約5mW)で作動させ、2光子蛍光信号を検出する。 所定の格子点の各々での2光子蛍光信号は、その2光子信号が収差補正格子の各走査点で最適化されるように最適化される。 各点で、最大の2光子蛍光信号を与える可変鏡の最適設定を決定できる。 次いで、その設定は、走査または書込みプロセスのためにセーブされる。 次いで、レーザ出力を増大させ、屈折構造の走査または書込みが始まる。 各ガルバノ走査点で、可変鏡は、最適焦点および最大の2光子蛍光信号を提供した波面補正設定に戻り、それによって、走査領域の全体に亘りほぼ回折制限焦点を提供する。

    収差補正格子は、マイクロ機械加工された格子ほど微細である必要はないが、走査プロセス中ずっと焦点がほぼ回折制限に維持されるほど十分に微細な規模で収差が補正されるほど十分に微細であるべきである。 例えば、粗い補正格子を補間ルーチンと組み合わせて使用しても差し支えなく、より高い効率のためには、格子点の内部で収差補正を補間しても差し支えない。

    材料中に深く書き込んだときに生じる光学収差を補償することも考えなければならない。 NAが0.7の顕微鏡対物レンズを使用すると、ダイナミック・レンジ(基線より上で得られる、損傷が起こる前の屈折率変化の範囲)に関して最適の実験結果が提供される。 そのような高いNAでは、関連する収差、最も重要なことには、球面収差を完全に補償する必要がある。

    屈折率分布(GRIN)層の議論 xyz移動システムを使用して、屈折率分布(GRIN)層を書き込むことができる。 薄(1〜10μm)層により、平面内で可変位相シフトを生じ、結果として光の位相面に曲率が生じる。 図29は、高分子材料の平らな一片に書き込まれた1つの薄いGRIN層の三次元表示である。 既に論じたように、屈折構造を書き込むことのできるモードがいくつかある。 屈折率分布の変化は、走査速度および/または光出力の変動に依存するので、モードのいずれかまたは両方を一緒に使用して、屈折素子を書き込むことができる。 ここでは、便宜上、これらを「速度モード」および「出力モード」と称する。

    1)1D速度モードにおいて、1つの薄いGRIN層を書き込むために、最初に、移動システムを、材料内部の層の高さを設定するために必要なz位置に設定する。 移動システムは、1つ以上のセグメントを書き込むために、y方向に沿って均一であり、x方向に沿って変動する速度でy方向に沿って走査する。 例えば、速度は、放物線屈折率変化を生じるようにプログラムすることができる。 これにより、y方向に均一なx方向における屈折力を有する円柱レンズが生成される。 2D速度モードにおいて、移動システムは、屈折率変化がy方向に沿って不均一となるように、不均一な速度でy方向に沿って走査する。 この不均一なy速度は、x方向に沿っても変化させることができ、その結果、二次元の屈折率分布層が形成される。

    2)1D出力モードにおいて、1つの薄いGRIN層を書き込むために、最初に、移動システムを、材料内部の層の高さを設定するために必要なz位置に設定する。 移動システムは、y方向に沿って均一な速度で走査し、フェムト秒レーザパルスの強度は、各y走査について、音響光学または電気光学変調装置などの光変調装置によって異なる平均出力に設定される。 その結果、屈折率変化は各x位置について異なる。 例えば、その強度は、x方向に沿って二次屈折率変動を生じるように設定してもよい。 2D出力モードにおいて、光強度は、y走査中にy方向に沿って連続的に変えられ、光強度は、各x位置について変えることができる。 これにより、二次元の屈折率分布層が形成される。

    これらの技法のいずれを繰り返しても差し支えなく、各層がz軸に沿って書き込まれた後、GRIN層は、5から10マイクロメートル、例えば、6マイクロメートル、7マイクロメートル、8マイクロメートルまたは9マイクロメートルだけ間隔が置かれている、すなわち、離れている。 図30は、光学高分子材料に書き込まれた3つのGRIN層を示している。 各個別のGRIN層は、その下または上のGRIN層と同じ屈折率分布プロファイルを有していても、違う屈折率分布プロファイルを有していても差し支えない。 例えば、1つの層は、x方向に屈折率分布を有してよく、別の層はy方向に屈折率分布を有してもよい。 これにより、「交差円柱」光学手法が得られ、これは、特定の設計の自由度を提示できることを除いて、球面レンズと似ている。

    3)速度および出力複合モード。 ある場合には、速度モードと出力モードを組み合わせることが都合よいであろう。 例えば、出力モードを使用して、y方向に沿って屈折率変化を変動させ、走査速度を、x方向に沿って変動させても差し支えなく、および/またはその逆も同様である。

    4)ガルバノメータ制御システム。 ガルバノメータタイプの制御システムに依存する走査システムの場合、無作為のパターンの高速でサンプル内の様々な点にアドレスし、複雑な屈折率分布の可能性をもたらすこともできる。 この場合、局所的な屈折率変化は、レーザ出力変調および局所走査速度に依存する。 特注の光学リレーレンズ系を有する二次元ガルボシステムを使用して、ITXが添加されたチオール・エンタイプの光学材料に二次元屈折率分布構造を書き込むことができた。 図31は、位相が異なる反復パターンでガルバノメータを駆動することによって得られたいくつかの予備結果を示している。 これらは通常、リサジュー・パターンと称される。 そのようなシステムを使用して、放射対照屈折率分布を有する二次元屈折率分布パターンを書き込むことが可能であり、そのような書き込む手法のための制御システムは、xyz走査の場合について先に記載したように、可変の走査速度制御および光学出力制御の組合せを使用して差し支えない。

    一般に、高NA集束のために設計されたガルボ制御システムは、その短い有効焦点距離の結果として小さい面積(例えば、直径350〜450μm)に亘る走査に制限される。 比較的大きい屈折構造を書き込むために、高NA大視野光学系を必要とするようである。 走査システムを重ねても差し支えない。 例えば、ガルボ走査とサンプル移動の組合せを仕様しても差し支えない。 図31に示された構造などの平面屈折率分布構造は、図31に示されたように多層で書き込むことができ、さらに、各層の屈折率分布プロファイルは同じであっても異なっても差し支えない。

    ここに列挙された、刊行物、特許出願、および特許を含む全ての文献は、各文献が個別に具体的に引用により含まれ、ここに全てが述べられているのと同程度に引用により含まれる。 本発明を説明する文脈(特に、以下の特許請求の範囲の文脈)において単数形の対象の使用は、ここにそうではないと示されるか、または文脈により明らかに相反していない限り、単数と複数の両方を網羅すると考えられる。 「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」とう用語は、別記しない限り、制約のない用語(すなわち、「含むが、それらに限られない)ことを意味するであると考えられる。

    ここでの値の範囲の列挙は、別記しない限り、その範囲内に入る各別個の値を個別に参照する略記方法として働くことが単に意図されており、各別個の値は、この中に個別に列挙されているかのように明細書に含まれる。

    ここに記載された全ての方法は、ここにそうではないと示されるか、または文脈により明らかに相反していない限り、どのような適切な順序で行っても差し支えない。 ここに与えられた任意の全ての実施例、または例示の用語(例えば、「などの」)の使用は、本発明の実施の形態を単によりはっきりと説明することが意図されており、他に請求項に記載されていない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。

    明細書のどの言語も、本発明の実施に必須であると請求項に記載されていない要素を示すものと考えるべきではない。

    本発明の精神および範囲から逸脱せずに、ここに記載された本発明に様々な改変および変更を行っても差し支えないことが当業者には明白である。 開示された特定の形態に本発明を制限することは意図しておらず、反対に、請求項により定義された、本発明の精神および範囲内に入る全ての改変、代わりの構成、および同等物を網羅することが意図されている。 それゆえ、本発明は、本発明の改変および変更を、それらが、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲に入るという条件で、網羅することが意図されている。

    10 レーザシステム 12 カーレンズモード同期Ti:サファイアレーザ 14 周波数二倍Nd:YVO4レーザ 20 対物レンズ 24,28 SF10プリズム 32 末端ミラー 40 共線自己相関器 44 光電子増倍管 46 ロックイン増幅器 48 長作動距離対物レンズ 1900 適応光学走査システム 1901 短パルスレーザビーム 1903 ビーム減衰器 1904 可変鏡 1905 拡大リレー望遠鏡 1911 制御装置 1913 OCT(光干渉断層法)システム 1976 顕微鏡対物レンズ 1998 目 1999 IOL

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