機能性染色眼鏡レンズ

申请号 JP2015547727 申请日 2014-10-30 公开(公告)号 JP6310940B2 公开(公告)日 2018-04-11
申请人 株式会社ニコン・エシロール; 发明人 武富 由佳; 川村 裕子;
摘要
权利要求

レンズ基材を染色してなる機能性染色眼鏡レンズであって、 前記レンズ基材からなる無染色プラスチックレンズに対する視感透過率の差として定義される染色濃度は、2%以上4%以下であり、 530nm〜570nmの波長領域において、前記無染色プラスチックレンズに対する平均透過率の差は、3%以上5%以下であり、且つ前記染色濃度よりも大きく、 430nm〜470nmの波長領域において、前記無染色プラスチックレンズに対する平均透過率の差は、2%以下であり、 630nm〜670nmの波長領域において、前記無染色プラスチックレンズに対する平均透過率の差は、3.5%以下であり、 530nm〜570nmの波長領域における前記無染色プラスチックレンズに対する平均透過率の差は、630nm〜670nmの波長領域における前記無染色プラスチックレンズに対する平均透過率の差よりも大きく、 前記無染色プラスチックレンズの視感透過率は、2mm厚換算で94.5〜99.9%であることを特徴とする機能性染色眼鏡レンズ。前記レンズ基材の少なくとも一方の表面が染色されてなるものである請求項1に記載の機能性染色眼鏡レンズ。前記530nm〜570nmの波長領域において、前記無染色プラスチックレンズの平均透過率は、2mm厚換算で94.5〜99.9%である請求項1又は2に記載の機能性染色眼鏡レンズ。前記430nm〜470nmの波長領域において、前記無染色プラスチックレンズの平均透過率は、2mm厚換算で94.5〜99.9%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の機能性染色眼鏡レンズ。前記630nm〜670nmの波長領域において、前記無染色プラスチックレンズの平均透過率は、2mm厚換算で97.0〜99.9%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の機能性染色眼鏡レンズ。

说明书全文

本発明は、機能性染色眼鏡レンズに関する。

近年、軽量で耐衝撃性に優れ、かつ染色しやすいとの利点からガラスレンズに代わり、プラスチックレンズが多用されている。中でも、眼鏡用プラスチックレンズは、コスメティック効果、目の保護、遮光効果等の目的から全体を所望の色に均一に染色するか、または濃度勾配(グラデーション)をつけて染色することがさかんに行われている。 さらに、近年、コスメティック効果以外に染色により一定の機能を付与した機能性染色眼鏡レンズが提案され(特許文献1、及び2参照)、さかんに発売されている。

特に、機能性染色眼鏡レンズとしては、コントラストアップや眼精疲労軽減などの効果を付与するため、可視光の中でエネルギーが大きい青色光(380nm〜500nm)を効果的にカットするものが主流である。 本出願人の出願に係る特許文献1には、380nm〜450nmの短波長光のみを効果的にカットすることができる特定の化合物を用いて染色して得られた、380nm〜450nmの短波長光吸収性能に優れた染色レンズが開示されている。

また、特許文献2には、可視光に対する眩しさと関連した不快感やコントラストの不鮮明感、視覚疲労等を軽減する防眩性機能を付与するために、565nm〜605nmの間に主吸収ピークを有する有機系色素を含有するプラスチック眼鏡レンズを開示している。 特許文献2に開示の眼鏡レンズは、565nm〜605nmの間に主吸収ピーク波長における透過率の低下が極めて大きく、視感透過率Yが、実施例等に開示されているものでも14.1%〜73.4%であり、視感透過率の低下が大きいものである。 このため、特許文献2に開示の眼鏡レンズでは、585nm付近に波長選択的にシャープな光吸収ピークを有しているため、優れた防眩性能とコントラスト増強効果を付与することができ、特定吸収ピークのシャープさに由来して585nm付近以外での光透過性が良好で明視野が確保できるため、防眩性と視認性のバランスが極めて良好であり、かつグレーやブラウンなどの各種の色調化が実現しやすいとしている。

特開2013−054275号公報

特開2013−061653号公報

しかしながら、一般的に人の晶体は、加齢に伴って黄色く着色することが知られている。このため、図5に示す分光比視感度曲線から明らかなように、人の目は、加齢に伴い、380nm〜500nmの青色光の波長領域において、視感度が低下していく。 したがって、年配者、例えば、40歳以上の年配者においては、元々、短波長帯の青色光を黄色く着色した水晶体でカットしていることになる。このため、年配者が、機能性染色眼鏡レンズとして主流である青色光を効果的にカットした、特許文献1に開示されているような眼鏡レンズを装用しても、若年者ほどの効果が得られないことが予想されると言う問題があった。 また、年配者においては、水晶体が黄色く着色しているため、白色、特に、パソコン(PC)等の画面の白色が、きれいな白に見えないことが予想されると言う問題があった。

さらに、図6に示すように、人の目においては、一般的に言われているように、加齢に伴い、光感度が低下し、必要とする必要照度が増加していく。一方、図7に示すように、人の目では、明るいところで赤色と青色が同じような明るさに見えても、薄暗いところでは赤はくすんで暗く見えることがプルキンエ現象として知られている。 このため、年配者、例えば、40歳以上の年配者においては、若年者より、薄暗いところでは、物が明るく見えない、特に、赤の鮮やかさが失われ、赤がよりくすんで暗く見えるという問題があった。 また、特許文献2に開示のプラスチック眼鏡レンズは、視感透過率が大幅に低い為、極めて明るい高照度の環境下で使用することで防眩効果等を発揮できるものであるが、常用することが想定されておらず、要求照度が増加している年配者が通常装用すると、見えにくく、薄暗いところでは、物が明るく見えない、特に、赤の鮮やかさが更に失われ、赤が更によりくすんで暗く見えるという問題があった。

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、年配者の目に好適な機能性染色眼鏡レンズを提供することを目的とする。 即ち、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、年配者が装用した時に、薄暗いところでも、物が明るく鮮やかに、特に、赤の鮮やかさが失われず、赤が明るく見えるようにすることができ、白色、例えば、パソコン(特にLEDバックライト)の白い画面がより白く見えるようにすることができ、その結果、白色を注視する必要のある作業、例えば、パソコン作業をより快適に行うことができる機能性染色眼鏡レンズを提供することにある。

上記目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、彩色されていない無染色のプラスチックレンズを色が付いているのが見えない僅かに染色し、530nm〜570nmの波長領域において、無染色のプラスチックレンズの平均透過率に対して染色後の平均透過率を所定の数%低下させると共に、無染色のプラスチックレンズの視感透過率と染色後の視感透過率との差として定義される染色濃度を所定範囲に規定することにより、薄暗いところでも、物が明るく鮮やかに見え、パソコンの白い画面等の白色がより白く見える年配者の目に好適な機能性染色眼鏡レンズを得ることができることを知見し、本発明に至ったものである。

即ち、本発明の機能性染色眼鏡レンズは、レンズ基材を染色してなる機能性染色眼鏡レンズであって、レンズ基材からなる無染色プラスチックレンズに対する視感透過率の差として定義される染色濃度は、2%以上4%以下であり、530nm〜570nmの波長領域において、無染色プラスチックレンズに対する平均透過率の差は、3%以上5%以下であり、且つ前記染色濃度よりも大きく、430nm〜470nmの波長領域において、無染色プラスチックレンズに対する平均透過率の差は、2%以下であり、630nm〜670nmの波長領域において、無染色プラスチックレンズに対する平均透過率の差は、3.5%以下であり、530nm〜570nmの波長領域における無染色プラスチックレンズに対する平均透過率の差は、630nm〜670nmの波長領域における無染色プラスチックレンズに対する平均透過率の差よりも大きく、無染色プラスチックレンズの視感透過率は、2mm厚換算で94.5〜99.9%であることを特徴とする。

た、レンズ基材の少なくとも一方の表面が染色されてなるものであることが好ましい。

530nm〜570nmの波長領域において、無染色プラスチックレンズの平均透過率は、2mm厚換算で94.5〜99.9%であることが好ましい。 また、430nm〜470nmの波長領域において、無染色プラスチックレンズの平均透過率は、2mm厚換算で94.5〜99.9%であることが好ましい。 また、630nm〜670nmの波長領域において、無染色プラスチックレンズの平均透過率は、2mm厚換算で97.0〜99.9%であることが好ましい。

本発明によれば、以上のように構成されているので、年配者の目に好適な機能性染色眼鏡レンズを提供することができる。 また、本発明によれば、以上のように構成されているので、年配者が装用した時に、薄暗いところでも、物が明るく鮮やかに、特に、赤の鮮やかさが失われず、赤が明るく見えるようにすることができ、白色、例えば、パソコン(特にLEDバックライト)の白い画面がより白く見えるようにすることができ、その結果、白色を注視する必要のある作業、例えば、パソコン作業をより快適に行うことができる。

本発明に係る機能性染色眼鏡レンズ、無染色プラスチック(クリア)レンズ及び従来の青色光カットレンズの各一例のレンズ特性を示すグラフである。

XYZ表色系のxy座標上のホワイトポイントを示す説明図である。

本発明の機能性染色眼鏡レンズの効果を説明する説明図である。

本発明の機能性染色眼鏡レンズの効果を説明する説明図である。

波長に対する対数比視感度で表される人の目の分光比視感度曲線を示すグラフである。

人の年齢に対する要求照度で表される人の目の光視感度を説明する説明図である。

波長に対する絶対視感度で表される人の目のプルキンエ現象を説明する説明図である。

以下、本発明に係る機能性染色眼鏡レンズを添付の図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。 なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。 図1に、本発明に係る機能性染色眼鏡レンズの一例の可視領域における分光透過率曲線で与えられるレンズ特性を示す。 なお、図1には、本発明に係る機能性染色眼鏡レンズに加え、参考のために、無染色プラスチックレンズ(クリアレンズ)及び従来の青色光カットレンズのそれぞれのレンズ特性をも示す。

図1に示すように、本発明の機能性染色眼鏡レンズ(以下、単に、染色レンズという)は、レンズ基材となるプラスチック基材を、好ましくは、プラスチック基材の少なくとも一方の表面を、所定の染色液を用いて染色したものである。ここで用いられるレンズ基材は、染色液による染色を行わない場合には、無染色プラスチックレンズ(以下、クリアレンズという)とすることができる。 図1に実線の分光透過率曲線で示される本発明の染色レンズは、図1に一点鎖線の分光透過率曲線で示されるクリアレンズに対して、530nm〜570nmの波長領域において、分光透過率を低くし、当該波長領域における平均透過率を所定限定範囲(3%以上5%以下)内の値だけ低く、即ち、平均透過率の差を所定限定範囲に設定すると共に、可視領域の全体、特に、大凡430nm〜670nmに亘って透過率を少し低くして、視感透過率τvを所定限定範囲(2%以上4%以下)内の値だけ低く、即ち、視感透過率τvの差を所定限定範囲に設定している。

なお、本発明においては、クリアレンズの視感透過率τv0と、染色されたプラスチックレンズ、即ち、機能性染色眼鏡レンズの視感透過率τvとの差を、染色濃度Δτと定義する。即ち、染色濃度Δτは、染色による視感透過率の低下量であると定義され、下記式(1)によって与えられるので、本発明では、染色濃度Δτは、上記所定限定範囲に設定される。 Δτ=τv0−τv ……(1) その結果、本発明の機能性染色眼鏡レンズは、年配者が装用した時に、クリアレンズに比べ、薄暗いところでも、物が明るく鮮やかに、特に、赤の鮮やかさが失われず、赤が明るく見えるようにすることができ、白色、例えば、パソコン(特にLEDバックライト)の白い画面がより白く見えるようにすることができ、その結果、白色を注視する必要のある作業、例えば、パソコン作業をより快適に行うることができるというものである。

本発明の染色レンズは、上述したように、染色濃度を2%以上4%以下の範囲に限定している。 本発明において、染色濃度を2%以上4%以下の範囲に限定する理由は、染色濃度が、2%未満では、濃度が薄すぎるために装用者が本発明の効果を実感し難いという問題があるからであり、染色濃度が、4%超では、視感透過率が下がりすぎて装用者が暗く感じたり、染色した色が強く感じられるようになり装用者が不快に感じたりするからである。

本発明の染色レンズにおいては、上述したように、530nm〜570nmの波長領域において、クリアレンズの平均透過率と本発明の染色レンズの平均透過率と差を3%以上5%以下の範囲に限定している。 本発明において、この平均透過率差を3%以上5%以下の範囲に限定する理由は、この平均透過率差が、3%未満では、濃度が薄すぎるために装用者が本発明の効果を実感し難いという問題があるからであり、この平均透過率差が、5%超では、視感透過率が下がりすぎて装用者が暗く感じたり、染色した色が強く感じられるようになり装用者が不快に感じたりするからである。

本発明の染色レンズにおいては、上記限定に加え、430nm〜470nmの波長領域において、クリアレンズに対する平均透過率の差が、2%以下であることがより好ましい。 ここで、この波長領域において、クリアレンズの平均透過率と本発明の染色レンズの平均透過率と差を2%以下の範囲に限定するのが好ましい理由は、この平均透過率差が、2%超では、黄味が比較的強く感じられるようになり、装用者が本発明の効果を感じにくくなるからである。

本発明の染色レンズにおいては、上記限定に加え、630nm〜670nmの波長領域において、クリアレンズに対する平均透過率の差は、3.5%以下であることがより好ましい。 ここで、この波長領域において、クリアレンズの平均透過率と本発明の染色レンズの平均透過率と差を3.5%以下の範囲に限定するのが好ましい理由は、この平均透過率差が、3.5%超では、青みが感じられるようになったり、視感透過率が低下することによって、装用者が本発明の効果を実感し難くなったりするからである。

一方、図1に点線の分光透過率曲線で示される特許文献1に開示の従来の青色光カットレンズは、380nm〜450nmの波長範囲では、本発明の染色レンズやクリアレンズに比べて分光透過率がかなり低下しているのに対し、530nm〜570nmの波長範囲では、分光透過率が、クリアレンズに比べて低下しているものの、本発明の染色レンズのように十分に低下し得ておらず、本発明の上記限定範囲を満足せず、670nm〜780nmの波長範囲では、クリアレンズに対して逆に上昇している。このため、従来の青色光カットレンズは、年配者が装用した時に、赤の鮮明度の向上や白の見えの向上が得られないものである。

本発明に用いられる染色前のレンズ基材であるプラスチック基材は、例えば透明なプラスチックであるアクリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、メタクリル系樹脂、アリル系樹脂、エピスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂ポリ4−メチルペンテン−1樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)、ポリ塩化ビニル樹脂、アリルジグリコールカーボネート樹脂、ハロゲン含有共重合体、イオウ含有共重合体等によって形成されたものである。 また、本実施形態では、プラスチック基材の屈折率(ne)としては、例えば、1.50、1.55、1.60、1.67、1.70及び1.74のうちから選択されたものが用いられる。なお、プラスチック基材の屈折率を1.60以上にする場合、プラスチック基材としては、アリルカーボネート系樹脂、アクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、及びチオウレタン系樹脂、エピスルフィド系樹脂等を使用することが好ましい。

本発明に用いられる染色前のプラスチック基材は、クリアレンズとなるものである。 ここで、プラスチック基材、従ってクリアレンズの視感透過率は2mm厚換算で、特に制限的ではないが、94.5〜99.9%であることが好ましい。 また、530nm〜570nmの波長領域において、プラスチック基材の平均透過率は、特に制限的ではないが、94.5〜99.9%であることが好ましい。 また、430nm〜470nmの波長領域において、プラスチック基材の平均透過率は、特に制限的ではないが、94.5〜99.9%であることが好ましい。 また、630nm〜670nmの波長領域において、プラスチック基材の平均透過率は、特に制限的ではないが、97.0〜99.9%であることが好ましい。

本発明において、プラスチック基材の染色に用いる染色液は、染料、界面活性剤、及び水などの溶媒を含むものであることが好ましい。また、1つの染色液は、1種類の染料、即ち、1色の染料を含有するものであっても良いが、2種類以上の染料、即ち、2色以上の染料を含有する混合染色液であっても良い。 即ち、本発明のプラスチック基材の染色においては、複数の染色液、即ち、それぞれ異なる色を持つ複数の染色液を用い、それぞれ個別に染色に用いても良いが、染色の前に、2色以上の染料を調合した混合染色液を用いても良い。 好ましくは、所望の分光特性に応じて全ての色の染料が調合された混合染色液を用いるのが良い。例えば、レッド(赤)、ブルー(青)、イエロー(黄)、もしくは更に、ブラウン(茶)等の染料を予め調合した混合染色液を調製しておくのが好ましい。 なお、混合染色液を、異なる色の複数の染色液を混合して調整しても良いが、予め複数の染料を調合し、調合された染料から調整しても良い。

本発明において用いられる染料は、所定の色を持つ染料であれば良く、特に限定されるものでは無く、複数の色の染料からそれぞれ複数の染色液又は複数の色の染料が調合された混合染色液を調整し、調整された複数の染色液又は混合染色液を用いて染色された本発明の染色レンズが、本発明の染色濃度の限定範囲及び上記所定波長範囲の平均透過率濃度の差の限定範囲内に収まるものであれば、いかなる染料であっても良い。 即ち、本発明において、染色液に含有させる染料としては、分散染料、反応染料、直接染料、複合染料、酸性染料、金属錯塩染料、建染染料、硫化染料、アゾ染料、蛍光染料、樹脂着色用染料、その他機能性染料等を挙げることができるが、これら以外にも染料であれば特に制限されず使用可能である。これらの染料は1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用しても良い。 また、色も特に制限的では無く、例えば、イエロー(Y)染料、レッド(R)染料、ブルー(B)染料、ブラウン染料、バイオレット染料、オレンジ染料、ブラック染料等を挙げることができ、どれを選ぶかは特に限定されるものではない。例えば、ポリエステル用分散染料としては、イエロー(Y)染料、レッド(R)染料、ブルー(B)染料の3色の染料を用いるのが一般的である。

本発明において用いられる染料は、一般に分散染料と呼ばれる染料であり、水に難溶性で、水等の溶媒に分散した懸濁液として、広く光学用プラスチックレンズの染色に使用される。 具体的には、本発明に用いられる染料としては、例えば、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、ニトロジフェニルアミン系染料、アゾ系染料などの分散染料を用いることができる。分散染料の例としては、例えば、p−アニシジン、アニリン、p−アミノアセトアニリド、p−アミノフェノール、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、o−クロロニトロベンゼン、ジフェニルアミン、m−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、フェノール等のベンゼン系中間物、p−クレシジン(6−メトキシ−m−トルイジン)、m−クレゾール、p−クレゾール、m−トルイジン、2−ニトロ−p−トルイジン、p−ニトロトルエン等のトルエン系中間物、1−ナフチルアミン、2−ナフトール等のナフタレン系中間物、1−アミノ−4−ブロモアントラキノン−2−スルホン酸(ブロマミン酸)、1−アントラキノンスルホン酸、1,4−ジアミノアントラキノン、1,5−ジクロロアントラキノン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン(キニザリン)、1,5−ジヒドロキシアントラキノン(アントラルフィン)、1,2,4−トリヒドロキシアントラキノン(プルプリン)、2−メチルアントラキノン等の無水フタル酸、アントラキノン系中間物などを挙げることができ、これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。

ここで、イエロー染料としては、特に制限的ではなく、公知の種々のイエロー染料を用いることができるが、例えば、カヤロンポリエステルイエロー(Kayaron Polyester Yellow) AL、Kayalon Microester Yellow AQ-LE、Kayalon Microester Yellow C-LS、Kayaron Microester Yellow 5L-E、Kayaron Polyester Yellow 5R-SE(N)200、Kayaron Polyester Yellow BRL-S 200(日本化薬(株)製)、Kiwalon polyester Yellow ESP eco、Kiwalon polyester Yellow KN-SE 200(紀和化学工業(株)製)、FSP-Yellow P-E(双葉産業(株)製)、Dianix Yellow(ダイスタージャパン(株)製)等を挙げることができる。

また、レッド染料としては、特に制限的ではなく、公知の種々のレッド染料を用いることができるが、例えば、カヤロンポリエステルレッド(Kayalon Microester Red)AUL-S、Kayalon Microester Red 5L-E、Kayalon Microester Red C-LS conc、Kayalon Microester Red DX-LS、Kayalon polyester Red AN-SE、Kayalon Polyester Red B-LE、Kayaron Polyester Rubine GL-SE 200(日本化薬(株)製)、Kiwalon polyester Red ESP、Kiwalon polyester Red KN-SE(紀和化学工業(株)製)、FSP-Red BL(双葉産業(株)製)、Dianix Red(ダイスタージャパン(株)製)等を挙げることができる。

また、ブルー染料としては、特に制限的ではなく、公知の種々のブルー染料を用いることができるが、例えば、カヤロンポリエステルブルーAUL−S染料(日本化薬(株)製)、Dianix Blue AC-E(ダイスタージャパン(株)製)、Kiwalon Polyester Blue ESP、Kiwalon Polyester Blue KN-SE(紀和化学(株)製)、Kayalon Microester Blue AQ-LE、Kayaron MicroesterBlue 5L-E、Kayalon Microester Blue C-LS conc、Kayalon Microester Blue DX-LS conc、Kayalon Polyester Blue AN-SE、Kayaron Polyester Blue AUL-S(N)(日本化薬(株)製)、FSP-Blue AUL-S(双葉産業(株)製)等を挙げることができる。

本発明に用いられる界面活性剤としては、特に制限的では無く、特に、上記染料を水等の溶媒に均一に分散できれば、どのようなものでも良い。例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ラウリル硫酸塩などの陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチルアルキルエーテル、アルキルアミンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、又はこれらの界面活性剤の組合せ等を挙げることができる。これらの界面活性剤の中では、陰イオン系界面活性剤が好適である。工業的に容易に入手可能な市販品としては、例えば、ニッカサンソルト#7000(商品名、日華化学社製)等を挙げることができる。

本発明において、染色液に含有される溶媒としては、染料を十分に溶解できるものであれば特に制限的では無く、例えば、水、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、アセトン、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチルエーテル、クロロベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸メチル、シクロヘキサノール、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,1,1−トリクロロエタン(メチルクロロホルム)、トルエン、1−ブタノール、2−ブタノール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、安息香酸エステル、メチルシクロヘキサン等を挙げることができ、1種若しくは2種以上の混合物を用いてもよい。

本発明においては、必要に応じて染色促進剤としてのキャリア剤を添加することが可能である。キャリア剤として、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール等の芳香環を有するアルコール類や、オルトフェニルフェノール、パラフェニルフェノール、トリクロルベンゼン、ジクロルベンゼン、メチルナフタレン等が例示される。 この他、染色液には必要に応じて、pH調整剤、粘度調整剤、レベリング剤、つや消し剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を併用してもよい。

染色液中に含有される染料の含有量は、染料を溶媒に十分に溶解できれば特に制限的ではないが、例えば、0.001質量%〜10質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜5質量%である。染色液の染料の含有量が上記範囲よりも少ない場合、充分な染色レンズが得にくくなる可能性がある。また、上記範囲よりも染料が多い場合、染料によっては凝集などを生じて使用困難となる可能性がある。 また、染色液中に含有される界面活性剤の含有量は、染料を溶媒中に均一に分散できれば特に制限的ではないが、例えば、0.01質量%〜10質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.05質量%〜5質量%である。染色液中の界面活性剤の含有量が上記範囲よりも少ない場合、十分に染料を分散させることができず、染色されたレンズに色ムラが発生する可能性がある。また、上記範囲よりも界面活性剤が多い場合、染色液が泡立ち作業性が低下したり、プラスチック基材の染色性が低下したりする可能性がある。

プラスチック基材の少なくとも一方の表面を染色し、染色レンズを得る方法としては、下記2通りの方法が挙げられる。 (1)染色液をプラスチック基材(レンズ)の表面にコーティングして加熱し、染色液中レンズ表面を染色する方法(コート法) (2)加温した染色液中にプラスチック基材(レンズ)を浸漬して、レンズ表面を染色する方法(ディップ法) これら2種の方法のうち、染色液の使用量が少なく、生産コストを抑えられる点では、上記(1)のコート法が好ましいが、均一に塗布するのが容易である点では、上記(2)のディップ法が好ましいので、用途に合わせて選択すればよい。 本発明の染色レンズを得るために、複数の染色液を用いる場合には、複数の染色液による染色を、上記(1)のコート法、又は上記(2)のディップ法で行うのが好ましいが、両者を併用して用いても良い。

上述したコート法におけるプラスチック基材への染色液の塗布(コーティング)方法としては、刷毛塗り、ディップ、スピンコート、ロール塗り、スプレー塗装、流し塗り、インクジェット型塗布などの通常の塗布方法を用いることができる。塗布面に関しては、プラスチック基材(レンズ)片面にコートしてもよいし、染色濃度をさらに上げるために両面コートしてもよい。プラスチック基材への染色液のコート厚は、特に制限されず、適宜調整可能であり、例えば、0.01μm〜10μmの範囲とすることができる。

コート法による染色において、プラスチック基材(レンズ基材)全面に均一な染色濃度で染色(着色加工)を行う場合には、染色液をレンズ表面にコートした後に加熱処理を行うことにより、染色液中の染料をレンズ表面に浸透、拡散させることが好ましい。染色液をコートしたプラスチック基材(レンズ)の加熱条件としては、加熱温度は70℃〜180℃が好ましく、加熱時間は10〜180分間が好ましい。加熱方法としては、エアオーブン加熱以外に、遠赤外線照射加熱、UV照射加熱なども用いることができる。 コート法による染色において、プラスチック基材(レンズ基材)になだらかな濃度勾配をもった染色(着色加工)を行う場合には、染色液をレンズにコートした後、コーティング液面(染色液面)を加熱領域が徐々に変化するようにしながら加熱することにより、レンズ基材内部に前記濃度勾配に対応した量の染料を浸透させることができる。

染色液をプラスチック基材(レンズ基材)にコートし、染色液をコートしたプラスチック基材(レンズ基材)を加熱処理した後、レンズ基材を洗浄することにより、レンズ基材表面上のコート層(塗布された染色液)を除去することにより、又は複数の染色液を個々に用いる場合には、これらの処理を繰り返すことにより、本発明の染色レンズを得ることができる。加熱処理後のレンズ基材の洗浄方法としては、レンズ基材表面のコート層(塗布された染色液)を除去することができれば特に限定されないが、有機溶剤による拭き取りもしくはアルカリ洗浄剤による洗浄が好ましい。中でも、有機溶剤としてアセトンまたはメチルエチルケトンを使用して拭き取ることがさらに好ましい。

上述したディップ法によりプラスチック基材(レンズ基材)を染色する場合は、染色液中にレンズ基材を浸漬して、レンズ基材表面から染色液中の染料を浸透、拡散させることにより、又は複数の染色液を個々に用いる場合には、これらの処理を繰り返すことにより、染色レンズを得ることができる。なお、複数の染色液を用いる場合、レンズ基材を浸漬する順序は、特に制限的ではない。 ディップ法による染色においては、80℃〜95℃に加熱した染色液にレンズ基材を浸漬することが好ましい。 浸漬終了後のレンズ基材を、例えば水洗い、溶剤による拭き取りなどにより洗浄してレンズ外面に付着した染色液を除去することにより、本発明の染色レンズを得ることができる。なお、洗浄によるレンズ外面に付着した染色液の除去は、染色液が変更される毎に行うのが好ましい。 本発明の染色レンズは、プラスチック基材(レンズ基材)の表面からレンズ基材内部に上記染料が浸透、拡散して、所望の色(染色濃度)に染色されている。

こうして染色液によって染色された染色レンズには、ハードコート膜および反射防止膜が形成されているのが好ましい。 ハードコート膜としては、特に制限的ではないが、従来公知のハードコート膜を挙げることができ、例えば、ウレタン系耐衝撃性向上コート膜や、シリコーン系耐擦傷性向上ハードコート膜等を挙げることができる。 このようなハードコート膜は、例えばシリコン系ハードコート組成物からなるものを適用することができ、その中でも、(A)金属酸化物粒子、(B)有機ケイ素化合物又はその加水分解物、(C)硬化触媒を含むシリコン系ハードコート組成物からなるものを好適に用いることができる。

具体的に、(A)金属酸化物粒子としては、例えば、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ベリリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化セリウムなどの金属酸化物の微粒子を挙げることができ、これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。また、これら金属酸化物の中から選ばれる2種以上の金属酸化物から構成された複合金属酸化物微粒子を用いてもよい。 また、これら金属酸化物微粒子又は複合金属酸化物微粒子については、その粒径が1〜100nmのものを用いることが好ましく、水、メタノール又はその他の有機溶媒に分散したときにゾル化するものを用いることが好ましい。

(B)有機ケイ素化合物又はその加水分解物としては、下記式(2)で表されるものを用いることができる。 R1aR2bSi(OR3)4−(a+b) … (2) (但し、上記式(2)中、R1は、官能基を有する有機基又は不飽和二重結合を有する炭素数4〜14の有機基であり、R2は、炭素数1〜6の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基であり、R3は、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり、a及びbは、それぞれ0又は1であり、且つa+bは、1又は2である。)

上記式(2)で表される具体的な有機ケイ素化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどを挙げることができる。 また、上記式(2)で表される有機ケイ素化合物のうち、R1が官能基としてエポキシ基を有するもの以外(a=0のものを含む)としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、フエニルトリメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどの各種トリアルコキシシラン、トリアシロキシシラン、トリアルコキシアルコキシシランなどを挙げることができる。

(C)硬化触媒としては、例えば、金属アルコキシド、有機金属塩、錫化合物や、アミン類(特開2004−315556号公報参照)、フォスフィン類、第4級アンモニウム塩類、第4級ホスホニウム塩類、第3級スルホニウム塩類、第2級ヨードニウム塩類、鉱酸類、ルイス酸類、有機酸類又はその無水物類、ケイ酸類、四フッ化ホウ酸類、過酸化物、アゾ系化合物、アルデヒドとアンモニア系化合物の縮合物、グアニジン類、チオ尿酸類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類、酸性リン酸エステル類などが挙げられ、この中では第4級アンモニウム塩類が好ましく、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドがより好ましい。これらの硬化触媒は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。

(C)硬化触媒の具体的な例として例えば、アミン類では、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、エチレンジアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モルホリン、トリエタノールアミン、ジアミノプロパン、アミノエチルエタノールアミン、ジシアンジアミド、トリエチレンジアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。また、各種金属錯体化合物としては、Li、Zn、Mn、Mg、Fe、Cu、Co、Ca、Bi、Al、Ni、Cr、Zr、Vを中心金属に含むアセチルアセトネート金属錯体化合物、エチレンジアミン四酢酸キレート金属錯体化合物などである。これら具体例として、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート、モノアセチルアセトネート、アルミニウム−ジ−n−ブトキシド−モノエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−iso−プロポキシド−モノメチルアセトアセテート、クロムアセチルアセトネート、チタニルアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネート、鉄(III)アセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート、インジウムアセチルアセトネート、エチレンジアミン四酢酸鉄、エチレンジアミン四酢酸アルミニウム、エチレンジアミン四酢酸亜鉛、エチレンジアミン四酢酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム、エチレンジアミン四酢酸銅、エチレンジアミン四酢酸コバルト、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、エチレンジアミン四酢酸ビスマス等が挙げられる。

これらの金属錯体化合物は、一種類で使用しても良いし、2種類以上混合して使用しても良い。さらに、金属アルコキシドの例として、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、テトラエトキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン等が挙げられる。 また、有機金属塩では、例えば、酢酸ナトリウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、また、過塩素酸塩では、例えば、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アンモニウム等が挙げられる。 さらに有機酸又はその無水物の例として、マロン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、アゼライン酸、マレイン酸、O−フタル酸、テレフタル酸、フマル酸、イタコン酸、オキザロ酢酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、1,2−ジメチルマレイン酸無水物、無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水ナフタル酸等が挙げられる。 また、ルイス酸では、例えば、塩化第二鉄、塩化アルミニウムが挙げられ、また、ハロゲン化金属では、例えば、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化スズ、塩化亜鉛、臭化亜鉛、臭化チタン、四塩化チタン、臭化タリウム、塩化ゲルマニウム、塩化ハフニウム、塩化鉛、臭化鉛等が挙げられる。

ところで、上述の硬化触媒は、単独で使用しても目的に応じて2種類以上混合して使用しても良いものである。また、これら硬化触媒の他に、(B)成分としてエポキシ基を有するシラン化合物を用いる場合、エポキシ基の開環重合を兼ねるものを使用することもできる。例えば、アルミニウムキレート化合物は、好ましい触媒の一つである。

ハードコート膜を形成する際は、上記(A)〜(C)成分を含むハードコート組成物のコート液を、例えばディップ法や、スプレー法、スピンコート法などの方法を用いてプラスチックレンズの表面に塗布する。また、塗布されたハードコート組成物は、熱硬化によって塗膜を形成する。この塗膜の硬化温度は、70〜140℃の範囲が好ましく、より好ましくは90〜120℃の範囲である。また、塗膜の厚さは、1.0〜10.0μmの範囲が好ましく、より好ましくは1.5〜4.0μmの範囲である。 なお、ハードコート膜を形成する際は、上記(A)〜(C)成分の他にも、コート液の固形分を調整するため溶媒を添加することができる。溶媒の例としては、水、低級アルコール、アセトン、エーテル、ケトン、エステルなどを挙げることができる。 また、その他にも各種の添加剤を併用してもよい。添加剤の例としては、pH調節剤、粘度調節剤、レベリング剤、つや消し剤、染料、顔料、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを挙げることができる。

また、さらに必要に応じて、ハードコート層の上にSiO2、TiO2等の無機酸化物からなる単層又は多層の反射防止膜層を形成させてもよい。この反射防止膜層は、多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。高屈折率膜としては、ZnO、TiO2、CeO2、Sb2O5、SnO2、ZrO2、ZrO2、Ta2O5等の膜があり、低屈折率膜としては、SiO2膜等が挙げられる。反射防止膜層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、CVD法などの乾式法が挙げられる。 反射防止膜層の上には、必要に応じて防曇コート膜層又は汚れ防止膜層を形成させることが可能である。

上述したように、本発明の染色レンズは、クリアレンズに対して所定の分光透過率の差を持つように所定染色液を用いて染色したものとなっているので、クリアレンズに対して、530nm〜570nmの中波長領域における平均透過率の差を所定範囲内に収めて、この中波長領域の光を選択的にカットすると共に、染色濃度(可視波長領域に亘る視感透過率の差)を所定範囲内に収めて、可視波長領域の大部分において僅かに光をカットするものである。

上記従来技術において、図7を用いて説明したように、人の目は、明るい所では視感度(視感効率)自体は低く、感度ピークは、555nm付近となるが、光が足りなくなって暗くなってくると、視感度は上昇して高くなり、感度ピークは、短波長側にシフトし、ずれてくる。このため、人の目には、明るいところで赤色と青色が同じような明るさに見えても、薄暗いところでは赤はくすんで暗く見えるプルキンエ現象が生じる。 このため、530nm〜570nmの中波長領域における光を選択的にカットすると共に、可視波長領域の大部分において僅かに光をカットしている薄い赤色の眼鏡レンズである本発明の染色レンズを装用することによって、薄暗いところでも物が明るく鮮やかに見えると言う効果を得ることができる。

本発明者らが、PC(パソコン:LEDバックライト)、及びiPad(登録商標)等のPDA(Personal Digital Assistant)の白い画面を輝度計で測定すると、図2に示すXYZ表色系で定義されているホワイトポイント(白色点:図3及び図4に丸で示す)よりも、図3及び図4に菱形の点(レンズ無し)で示すように、YL、GR方向に分布していることが分かった。なお、図3及び図4は、図2の白色点を囲む矩形領域のみを拡大して示したものである。 そこで、本発明者らは、XYZ表色系の白色点からズレている図3及び図4に示すPC及びPDAの白画面の輝度が、無染色プラスチックレンズであるクリアレンズを装用しても、図3及び図4にアスタリスクの点(クリアレンズ)に移るだけで白色点に近づくことは無いが、本発明の薄い赤色の染色レンズを装用することにより、図3及び図4に長方形の点(本発明の染色レンズ)に移り、白色点に近づくことを確認した。 即ち、本発明においては、530nm〜570nmの中波長領域における光の選択的なカット及び可視波長領域の大部分における僅かな光のカットの相乗効果として、PC(特に、LEDバックライト)やiPad(登録商標)等のPDAの白い画面がより白く見えるためパソコン作業がより快適になると言う効果を得ることができる。

以下に、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

(実施例1) (染色液の調整) まず、染料、界面活性剤、純水から以下のようにして染色液を調整した。 純水1000重量部を容器に取り、イエロー染料としてカヤロンポリエステルイエローAL染料(日本化薬株式会社製)2.0重量部、ニッカサンソルト♯7000(商品名、日華化学社製)1.0重量部を加えたものを染色液1とした。また、純水1000重量部を容器に取り、ブルー染料としてカヤロンポリエステルブルーAUL−S染料(日本化薬株式会社製)2.0重量部、ニッカサンソルト♯7000を1.0重量部加えたものを染色液2とした。また、純水1000重量部を容器に取り、レッド染料としてカヤロンポリエステルレッドAUL−S染料2.0重量部、ニッカサンソルト♯7000を1.0重量部加えたものを染色液3とした。

(プラスチックレンズの染色及び染色レンズの作製) 次に、準備した3つの染色液1、2及び3をそれぞれ90℃に加温し、屈折率1.67のプラスチックレンズ(ニコン・エシロール社製、ニコンライト4AS、サイズ80φ、中心厚2mm)をそれぞれの染色液1、2、及び3に、それぞれ浸漬した。 次に、得られた染色レンズの表面に厚さ約1μmのウレタン系耐衝撃性向上コート膜及び厚さ約2μmのシリコーン系耐擦傷性向上ハードコート膜等のハードコート膜、及び更にその上に真空蒸着法により厚さ約0.3μmの無機酸化物により形成される多層膜反射防止コート膜等の反射防止膜を施し、目的の染色レンズを得た。

(染色レンズの装用評価) このプラスチック染色レンズをフレームに枠入れし、眼鏡レンズとして40〜60歳代の被験者による装用テストを実施し、官能評価を行った。 また、このプラスチック染色レンズ、及び染色がなされていないクリアレンズの分光透過率を測定して、このプラスチック染色レンズの染色濃度と、530nm〜570nmの波長領域、430nm〜470nmの波長領域、及び630nm〜670nmの波長領域のそれぞれにおける平均透過率を求めた。

プラスチック染色レンズの被験者による装用テストの官能評価は、以下の基準で行った。官能評価においては、被験者として、40〜60歳代の一般的な人を選び、先入観を持たせないためにブラインド試験という形で本発明の染色レンズを装用させてアンケートにより効果を確認した。 また、ホワイトポイント(Whitening)に関しては、パソコンの白画面(特にエクセルファイルでの作業)で被験者が画面をより白く感じるか否かをアンケートした。 また、色の明るさ(Brightening)に関しては、室内や夕方から夜にかけての薄暗い屋外で被験者に装用させて明るく無染色クリアレンズと比較して明るさを感じるか否かをアンケートした。 染色がなされていないクリアレンズとは明らかに異なり、薄暗い環境で風景や物、特に赤が鮮やかに明るく見えたり、白いパソコン画面がより白く見えたりするという効果が得られた場合には、○と評価し、クリアレンズの場合と同様に、赤がくすんで見えたり、白いパソコン画面の白の見えがクリアレンズの場合とは差が無い場合には、×と評価した。 実施例1のプラスチック染色レンズは、○と評価された。 なお、クリアレンズの視感透過率は、96.6%であり、530nm〜570nm、430nm〜470nm、及び630nm〜670nmの各波長領域における平均透過率は、それぞれ、96.1%、96.8%、及び98.5%であった。 これらの結果を表1に示す。

(実施例2) 実施例1と同じ3つの染色液1、2及び3に屈折率1.67のプラスチックレンズ(ニコンライト4AS)を浸漬した。得られた染色レンズに、実施例1と同様に、ハードコート膜および反射防止膜を施し、目的の染色レンズを得た。このプラスチック染色レンズをフレームに枠入れし、実施例1と同じ40〜60歳代被験者による装用テストを実施し、官能評価を行った。また、このプラスチック染色レンズの分光特性を測定した。 このプラスチック染色レンズの装用テストの官能評価結果では、実施例1と同じような○の評価が得られた。 また、このプラスチックレンズの染色濃度は3.6%であった。 これらの結果を表1に示す。

(比較例1) 実施例1と同じ3つの染色液1、2及び3に屈折率1.67のプラスチックレンズ(ニコンライト4AS)を浸漬した。得られた染色レンズに、実施例1と同様に、ハードコート膜および反射防止膜を施し、目的の染色レンズを得た。このプラスチック染色レンズをフレームに枠入し、実施例1と同じ40〜60歳代被験者による装用テストを実施し、官能評価を行った。また、このプラスチック染色レンズの分光特性を測定した。 このプラスチック染色レンズの装用テストの官能評価結果では、実施例1に記載されているような効果を感じることができず、実施例1と異なる×の評価であった。 また、このプラスチックレンズの染色濃度は1.4%であった。 これらの結果を表1に示す。

(比較例2) 実施例1と同じ3つの染色液1、2及び3に屈折率1.67のプラスチックレンズ(ニコンライト4AS)を浸漬した。得られた染色レンズに、実施例1と同様に、ハードコート膜および反射防止膜を施し、目的の染色レンズを得た。このプラスチック染色レンズをフレームに枠入れし、実施例1と同じ40〜60歳代被験者による装用テストを実施し、官能評価を行った。また、このプラスチック染色レンズの分光特性を測定した。 このプラスチック染色レンズの装用テストの結果では、実施例1に記載されているような効果を感じることができず、実施例1と異なる×の評価であった。 また、このプラスチックレンズの染色濃度は4.4%であった。 これらの結果を表1に示す。

(比較例3) 実施例1と同じ3つの染色液1、2及び3に屈折率1.67のプラスチックレンズ(ニコンライト4AS)を浸漬した。得られた染色レンズに、実施例1と同様に、ハードコート膜および反射防止膜を施し、目的の染色レンズを得た。このプラスチック染色レンズをフレームに枠入れし、実施例1と同じ40〜60歳代被験者による装用テストを実施し、官能評価を行った。また、このプラスチック染色レンズの分光特性を測定した。 このプラスチック染色レンズの装用テストの官能評価結果では、実施例1に記載されているような効果を感じることができず、実施例1と異なる×の評価であった。 また、このプラスチックレンズの染色濃度は2.4%であった。 これらの結果を表1に示す。

(比較例4) 実施例1と同じ3つの染色液1、2及び3に屈折率1.67のプラスチックレンズ(ニコンライト4AS)を浸漬した。得られた染色レンズに、実施例1と同様に、ハードコート膜および反射防止膜を施し、目的の染色レンズを得た。このプラスチック染色レンズをフレームに枠入れし、実施例1と同じ40〜60歳代被験者による装用テストを実施し、官能評価を行った。また、このプラスチック染色レンズの分光特性を測定した。 このプラスチック染色レンズの装用テストの官能評価結果では、実施例1に記載されているような効果を感じることができず、実施例1と異なる×の評価であった。 また、このプラスチックレンズの染色濃度は0.4%であった。 これらの結果を表1に示す。

(比較例5) 実施例1と同じ3つの染色液1、2及び3に屈折率1.67のプラスチックレンズ(ニコンライト4AS)を浸漬した。得られた染色レンズに、実施例1と同様に、ハードコート膜および反射防止膜を施し、目的の染色レンズを得た。このプラスチック染色レンズをフレームに枠入れし、実施例1と同じ40〜60歳代被験者による装用テストを実施し、官能評価を行った。また、このプラスチック染色レンズの分光特性を測定した。 このプラスチック染色レンズの装用テストの官能評価結果では、実施例1に記載されているような効果を感じることができず、実施例1と異なる×の評価であった。 また、このプラスチックレンズの染色濃度は2.5%であった。 これらの結果を表1に示す。 なお、表1は、上記実施例1から比較例5までの結果をまとめたものである。

実施例1及び2は、クリアレンズに対する視感透過率τvの差である染色濃度及び530〜570nmにおける平均透過率τの差が、本発明の限定範囲に収まるもので、薄暗い環境での物、特に赤の見えの鮮やかさ及び明るさの向上効果、並びに白いパソコン画面等の白の見えの向上効果が見られ、評価が○であった。 これに対し、比較例1、2及び4は、視感透過率τvの差である染色濃度及び530〜570nmにおける平均透過率τの差の両方とも、本発明の限定範囲から外れるものであり、本願発明の効果が得られず、評価が×であった。 また、比較例3及び5は、視感透過率τvの差である染色濃度が本発明の限定範囲に収まるものの、530〜570nmにおける平均透過率τの差が、本発明の限定範囲から外れるものであり、やはり、本願発明の効果が得られず、評価が×であった。 以上の結果から、本発明の効果は明らかである。

なお、実施例1〜2及び比較例1〜5の評価の違いは、染色液1,2及び3へのクリアレンズの浸漬時間によって調整されたクリアレンズに対する染色状態によるものであるが、これらの染色状態を得るための浸漬時間は、染色液1,2及び3の状態、特に、新鮮さ等に大きく依存するので、同一条件での特定が難しい。 このため、実施例2及び比較例1〜5における浸漬時間は、実施例1における浸漬時間に対する長短で表した。浸漬時間は、実施例2では染色液1,2及び3で実施例1よりもやや長い時間であり、比較例1では染色液1,2及び3で実施例1よりもやや短い時間であり、比較例2では染色液1,2及び3で実施例2よりも長い時間であり、比較例3では実施例1よりも染色液2で長い時間で、染色液3で短い時間であり、比較例4では実施例1よりも染色液1で長い時間で、染色液3で短い時間であり、比較例5では実施例1よりも染色液1で長い時間であった。

以上から、本発明によれば、年配者が装用した時に、薄暗いところでも、物が明るく鮮やかに、特に、赤の鮮やかさが失われず、赤が明るく見えるようにすることができ、白色、例えば、パソコンの白い画面がより白く見えるようにすることができ、その結果、パソコン作業等の白色を注視する作業をより快適に行うことができる年配者の目に好適な機能性染色眼鏡レンズを提供することができることが明らかである。

QQ群二维码
意见反馈