【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、乱視の患者のための同心円レンズに係る。 より詳しくは、本発明は、トーリック(円環)軸心ずれに対する患者の感度を低下し、 従って、トーリック製品の在庫品における在庫保管ユニットの必要数(在庫で保存され処方される様々な処方の総数)を減らすようなレンズに関する。 この発明は、乱視、遠視、近視などの屈折異常を乱視の初期矯正で矯正する新規の方法を提供する。 【0002】 【従来の技術】一般にトーリックレンズは、以下の特徴により従来製造されている。 a. レンズの前面および後面のトーリック曲線、 b. レンズ前面のプリズムバラストとスラブなし形状、 c. 非トーリック面は、球面である。 これらの従来技術は、円筒屈折力の軸が乱視の角膜の軸に対して正確に調整される場合のみ、乱視を適当に矯正する。 (10°より大きな)軸の心ずれは結果として実質的な視覚のロスになる。 ソフトヒドロゲルコンタクトレンズでのこの軸の心ずれの主な原因は、不安定な回転である。 【0003】従来技術のトーリックレンズの設計では、 長軸と短軸を含む単一トーリック面が、レンズの前面か後面の光学的部分に配置される。 さらに、トーリックレンズの複数の軸は、レンズの前面に配置されたプリズムのバラスト付き/スラブなし形状か二重のスラブなし形状によって患者の角膜軸に関して通常、安定化される。 これらの特性は、結果として得られたレンズの厚みを増し、装着感と生理的な受容性に妥協する傾向にある。 【0004】さらに、従来のトーリックレンズの設計は、広い乱視の患者ベースに合わせるため、在庫品における多数の在庫保管ユニット(在庫で保存され処方される様々な処方の総数)を必要とする。 例えば、現在のよく取り替えるトーリックレンズ製品は、在庫品のベース毎に800在庫保管ユニット(40球面屈折力×2円筒屈折力×10異なる円筒軸配置)で利用される。 在庫品におけるベース曲線ごとのそのような大量の在庫保管ユニットは、特に使い捨て式製品として製造し、保存するのは不経済である。 在庫品における必要な多数の在庫保管ユニットは、10カ所以上の様々な円筒軸配置を与えるための必要性から主に発生する。 さらに、眼の円筒軸に対する円筒軸の心ずれは、重大な視力の低下をもたらす。 【0005】在庫保管ユニットでの必要な円筒軸配置数を減らす目的で、オーストラリア公開特許出願WO93 /03409号は、非球面をトーリック面と組み合わせて非球面で焦点深度を増大させて軸の心ずれに対応している。 非球面を使用することによってトーリックレンズの焦点深度を増し、トーリックレンズの回転心ずれの効果を最少にする。 複屈折光学素子を用いた屈折光学素子などの複合光学素子もこの特許出願が開示している。 この従来技術の方法を用いる一つの不利な点は、そのような複合光学素子と非球面の製造が困難なことである。 さらに、非球面光学素子に関して患者が解剖学的変化を示し、視力を適当に合わせることになる。 つまり、この従来技術の方法は、現実の世界の患者ベースに関する非球面光学素子の視覚的予測不可能性がハイレベルであり、 非球面やその他の複合光学素子を製造しコントロールする際の困難さのために、好ましくない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の主要な目的は、トーリック軸の心ずれに対する患者の感度を低下させ、トーリック製品の在庫品に保存された必要数の在庫保管ユニットを減らす乱視患者用の同心円レンズを提供することである。 本発明は、従来のトーリックレンズに乱視患者を合わせるのに必要とされた円筒軸配置数を減らすトーリック(円環)レンズを提供することである。 【0007】本発明のいくつかの態様は、トーリック面と、プリズムバラストと、スラブなし形状を除き、基本的な処方球面屈折力Rxでの球面の光学屈折力と、円筒処方屈折力Rxと、球面光学屈折力と円筒光学屈折力間の中間光学屈折力を提供する。 【0008】本発明の他の目的は、多焦点同心環状セグメント(リング)を前面あるいは後面に、トーリック曲線をその反対面に備えて乱視を矯正する同心円レンズを提供することである。 【0009】本発明は、交互の同心環状セグメントを使用してコンタクトレンズの光学的領域を、少なくとも二つの光学屈折力、すなわち、患者の基本的な処方Rxの屈折球面成分に対応する第1光学屈折力と患者の基本的な処方Rxの円筒屈折力に対応する第2光学屈折力、あるいはそれらの部分を有する領域に分ける。 【0010】本発明は、乱視の低レベルの矯正用同心円レンズを用いて乱視の患者の視力を向上させそして改善させ、また選択的に非球面曲線を利用して多量の乱視の視力を向上させる。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明によれば、乱視の患者用多焦点同心円レンズが提供され、このレンズでは、レンズの前面と後面のどちらか一つがトーリック曲線を区画し、そして他方の面が患者の基本的な遠球面処方Rxに対応する少なくとも一つの第1球面環状セグメントと、患者の基本的な円筒処方Rxに対応する少なくとも一つの第2球面環状セグメントとを有する複数の球面同心環状セグメントを区画し、複数の同心環状セグメントによって増大した焦点深度のために上記多焦点トーリックレンズが回転によって感度が低下する。 【0012】より詳細にいえば、第1および第2球面環状セグメントの光学屈折力間の差は、2.00ジオプター未満であるのが好ましい。 第2球面環状セグメントは、全円筒処方Rxの一部に対応する。 その設計は、第1および第2球面環状セグメントの光学屈折力間にある中間の光学屈折力に対応する第3球面環状セグメントを同様に組み入れることができる。 同心環状セグメントは、患者の基本的な遠球面処方Rxを有する中央のディスクを囲む。 さらに、非球面は、レンズの焦点深度効果を増すためにトーリック曲線上で重ねられる。 そのレンズは、ソフトヒドロゲルコンタクトレンズや眼内レンズなどのコンタクトレンズとすることができる。 【0013】本発明は同様に乱視患者用の多焦点同心円レンズであって、前面と後面の一つが球面あるいは非球面曲線を区画し、前記前面と後面の他の一つが、患者の基本的な遠処方Rxに対応する少なくとも一つの第1球面環状セグメントと、患者の基本的な円筒処方Rxに対応する少なくとも一つの第2球面環状セグメントを有する複数の球面同心環状セグメントを区画するレンズも提供する。 【0014】より詳細にいえば、第2球面環状セグメントは、全円筒処方Rxの一部に対応する。 その設計は、 第1および第2球面環状セグメントの光学屈折力間にある中間の光学屈折力に対応する第3の球面環状セグメントを同様に組み入れることができる。 第1球面環状セグメントは、患者の基本的な遠球面処方Rxを有する中央のディスクを含み、少なくとも一つの第3中間屈折力環状セグメントで囲まれ、その第3中間屈折力環状セグメントは、少なくとも一つの第2円筒屈折力環状セグメントで囲まれる。 同心円環状セグメントは、レンズの後面にあるのが好ましく、前面は、非球面曲線を区画してレンズの被写界深度効果を増大させる。 【0015】本発明は同様に乱視患者用の多焦点同心円レンズであって、前面と後面の一つが球面曲線か非球面曲線のいずれかを区画し、前面と後面の他の一つが、患者の基本的な遠処方Rxに対応する少なくとも一つの第1環状セグメントと、患者の基本的な円筒処方Rxに対応する少なくとも一つの第2環状セグメントを有する複数のそれぞれ非球面か球面の同心環状セグメントを区画する。 【0016】より詳細にいえば、上記レンズは、遠光学屈折力を備えた中央部分と、円筒屈折力と遠光学屈折力を略等しく分けて備えた中間部分と、増大した遠屈折力を備えた外側部分を有する。 第1環状セグメントと第2 環状セグメント間の光学屈折力は、2.00ジオプター以下であることが好ましく、非球面曲線は、−0.05 と−0.5の間のK値を持った楕円形を有し、その楕円は球面からわずかにずれる。 【0017】本発明は同様に乱視患者用の多焦点同心円レンズであって、前面と後面の一つが、患者の基本的な遠球面処方Rxに対応する球面を区画し、前面と後面の他の一つが、患者の基本的な球面矯正処方Rxに対応する少なくとも一つの第1トーリック環状セグメントと、 患者の基本的な円筒処方Rxに対応する少なくとも一つの第2トーリック環状セグメントを有する複数の同心トーリック環状セグメントを区画する。 【0018】より詳細にいえば、第2トーリック環状セグメントは、全円筒処方Rxの一部に対応する。 前面は球面を区画し、後面は複数のトーリック環状セグメントを区画する。 その環状セグメントでは、第1および第2 の交互同心トーリック環状セグメント間の光学屈折力の差は、2.00D未満であり、十分な焦点深度効果を与え、基準軸の位置から±20度以下の軸の心ずれを可能にする。 【0019】 【発明の実施の形態】乱視用の同心円レンズに係る本発明の上述の目的と利点は、各図において同じ要素には同一の参照符号を付した添付図面とともに、以下の好ましい数態様の説明を参照すれば、当業者には容易に理解されるであろう。 【0020】図1と図2は本発明により設計された同心円レンズ10の第1例の正面図と側面図をそれぞれ示す。 このレンズは、 a. 同心環状セグメント前面12と、 b. トーリック後面14と、 c. 前面のプリズムバラストとスラブなし形状16を有する。 【0021】原則的に、交互する前面同心環状セグメントXとYの二つの球面光学屈折力XとYは、患者の基本的な遠球面処方Rxに対応する球面屈折力を有する第1 同心環状セグメントと、患者の円筒処方の一部に対応する患者の円筒処方Rxに対応する第2球面環状セグメントとを含むことができる。 【0022】得られたトーリックレンズは、公開特許出願WO/03409号に開示されたと同様に前面が被写界深度効果を持った非球面であるように回転により感度が低下する。 【0023】図3と図4は、第1例10と同様の本発明に係る同心円レンズ20の第2例のそれぞれ正面図と側面図を示す。 この例では二つの球面光学屈折力XとYに加えて、中間の球面光学屈折力セグメントIもレンズ設計に含まれる。 【0024】以下の例で図1から図4の例における本発明の操作原理を示す。 −3.00/−1.50×180 (ここで−3.00Dは患者の基本的な遠光学屈折力矯正、−1.50Dは患者の基本的な円筒光学屈折力矯正、ただし円筒軸を180°に規定)の処方Rxを有する患者にとって、90°〜270°での屈折力は、− 4.50D(−3.00Dとこの軸で有効な全円筒− 1.50Dの和)であり、一方、0°〜180°軸での屈折力は、−3.00Dである(円筒面は、この軸になんら寄与しない)。 この第1例ではxとyの球面光学屈折力値は、 x=−3.00D,y=−4.50D であり、第2例の場合は、 x=−3.00D,y=−4.50DおよびI=3.7 5D である。 【0025】ほとんどの患者にとって、たとえ基準レンズが測定された屈折力から0.5Dだけ離れていても、 視力はまずまずである。 従って、上記例において効果的な光学屈折力の範囲は、第1例では、 −2.50D≦x≦−3.50D; −4.00D≦ y≦−5.00D であり、第2例では、 −2.50D≦x≦−3.50D; −4.00D≦ y≦−5.00D −3.25D≦I≦−4.25D である。 【0026】従来技術では患者の脳が焦点に合った像を受け入れ、焦点から外れた像を無視する適応能力を有することが認められている。 患者の基本的な適応能力を認めれば、上記処方は、トーリックレンズの軸のわずかな心ずれ(10°〜20°)があっても満足な視力が与えられるはずである。 【0027】乱視患者にとって乱視の眼は下記の三つの領域を含む像を形成することが知られている。 1. 球面屈折力は線として収斂する。 2. 円筒屈折力は同様に線として、特に球面像の線に収斂する。 3. 円形像は、球面屈折力と円筒屈折力に対し中間の屈折力である「最少の曖昧な円」として知られた二つの焦点線に収斂する。 【0028】図5は、本発明に係る同心円レンズ50の第3例の後面の平面図を示し、そのレンズはトーリック面とプリズムバラストとスラブなし形状を取り除き、レンズ50の一面、好ましくは前面に球面か非球面52を用いる。 ただし後面はレンズの反対側の面、好ましくは後面に、多焦点同心球面環状セグメント面54と組み合わせて他の例で用いられ、前面はまた他の例で用いられる。 【0029】この例では、レンズの光学領域の同心環状セグメントは少なくとも三つの異なる光学屈折力を提供する。 A. 円筒軸に沿って存在する基本的な遠処方球面光学屈折力 B. 処方円筒光学屈折力(球面屈折力と円筒屈折力の組み合わせ) C. トーリック面の最少混乱の最良収斂点又は円に基づく中間光学屈折力 この例は、球面屈折力と円筒屈折力に加えて球面に相当する屈折力を合わせる原理を用いる。 【0030】本発明の幾つかの例は、非球面を使用せずにまたそれに伴う複雑さも不具合もなく焦点深度効果を増大させることができる。 非球面の代わりに交互領域間の小さな屈折力差の同心球面あるいはトーリック面を用いて焦点深度効果を増大させることができる。 【0031】図6は、レンズ設計60の他の例の後面の平面図を示す。 このレンズは患者の基本的な球面遠処方に対応する球面の前面62と、交互の光学屈折力P1とP2を有する同心環状セグメントトーリック面66と、 二重のスラブなし形状68を含み、90°か180°の軸位置でレンズを安定化する。 交互の同心環状セグメントは、患者の処方Rxに対応し、患者の遠処方Rxに対応する屈折力P1の第1環状セグメントと、患者の円筒処方Rxに対応する屈折力P2の第2環状セグメント、 好ましくはそれらの一部を有する。 交互の同心環状トーリックセグメント光学屈折力P1とP2間の差は、2. 00D以下である。 この小さな屈折力の差は、十分な焦点深度効果を与え、90°か180°の軸位置などの基準からの+又は−20度以下の軸の心ずれにする。 【0032】図7は本発明のさらに好ましい例を示すものであり、この例では、レンズ70の前面72は90° か180°の軸位置で二重のスラブなし形状76で安定化された単純なトーリック光学領域74を含み、レンズ70の後面78は交互の多重同心球面環状セグメントを含む。 交互の多重同心球面環状セグメントは、患者の処方Rxに対応し、患者の遠処方Rxに対応する屈折力P 1の第1環状セグメントと、患者の円筒処方Rxに対応する屈折力P2の第2環状セグメント、好ましくはそれらの一部を有する。 この後面の交互同心球面環状セグメントの屈折力の差は、2.00D以下であり、基準処方位置から+又は−20度以下の軸の心ずれにする。 【0033】前述の二つの例のどちらでも在庫品に保存された基本曲線毎の在庫保管ユニットの数は、160 (40球面屈折力×2円筒屈折力×2軸−90°,18 0°)に減少する。 さらに、同心円レンズによってもたらされた焦点深度効果は、視力の低下もなく軸の心ずれにゆとりがある。 【0034】本発明の幾つかの例は球面屈折力と円筒屈折力を交互させることによって機能し、眼の網膜に十分な双方の屈折力レベルを与える。 実際の円筒屈折力は全円筒屈折力の25%から100%の範囲の全円筒屈折力かそのいずれの部分でもよい。 【0035】いくつかの好ましい例では、同心環状セグメント構造は、中央にディスク状の基本的な遠屈折力を備えたコンタクトレンズの後面に配置される。 以下の表1は、各領域に複数の環状セグメントを有するこの種の多焦点環状セグメントレンズ設計に対して提案された瞳孔の機能性を示す。 対象の瞳孔は、三つの瞳孔に分けられ、最も内側のゾーン(領域)は球であるのが好ましい。 【0036】 〔表1 好ましい瞳孔機能〕 内側ゾーン 中間ゾーン 外側ゾーン タイプA:球面 等しい 球面 (50/50分割) タイプB:球面 等しい 円筒 タイプC:球面 等しい 球面 タイプD:球面 円筒 球面 タイプE:球面 円筒 等しい この表では、円筒は、円筒処方(球面屈折力と円筒屈折力の和)に対応する球面円筒屈折力あるいはその一部を意味する。 【0037】図8はレンズ設計80のタイプの平面図であり、このレンズは様々な照明条件の下で収縮あるいは拡大した瞳孔に対応するレンズの光学ゾーンが、図9と図10の例にも示されているように、三つのゾーン、すなわち、最も内側のゾーン82、中間ゾーン84、外ゾーン86に分かれている。 最も内側のゾーン82は、患者の基本的な遠処方Rxを有する球面のディスクである。 中間ゾーン84は、上記表1による1個以上の環状セグメントからなり、外ゾーン86も同様に上記表1による1個以上の環状セグメントからなる。 図8は本発明による表1のタイプBのレンズ設計100の一つの典型的な設計例を示す。 このレンズは、円筒屈折力のみ有する外ゾーンで囲まれたそれぞれ環状セグメントCSCS を有する中間ゾーンで囲まれた内側球面ゾーンSを有し、8.4mmの遠曲線半径と、8.51173mmの近曲線半径と、8.39209mmの中間曲線半径と、 9.832mmの周縁曲線半径を有する。 【0038】本発明は、視力を増大し改良する乱視矯正用の同心円レンズに関連する。 これらのいくつかのレンズ設計は経験的な基礎に基づいて臨床的に評価され、たいていの場合、−1.50DC以下のの円筒屈折力で効果的であり、−2.00DC以下で積極的な効果があることがわかった。 これらのレンズ設計の効果は、同心円レンズと非球面光学面を組み合わせることによって− 1.50DCから−2.00DCまでの範囲で増大する。 【0039】 【0040】図9は表2にリストした、同心多焦点球面又は非球面環状セグメント後面92とそれぞれ非球面又は球面の前面94を有する典型的なレンズ90の例の後面の平面図である。 図10は表2にリストした、同心多焦点球面又は非球面環状セグメント前面102とそれぞれ非球面又は球面の後面104を有する典型的なレンズ100の例の前面の平面図である。 【0041】上記例は、レンズ(異なった瞳孔サイズに対応する)光学ゾーンを、交互の球面と円筒光学屈折力で別の同心ゾーンに分ける。 それらの屈折力ゾーンの配置は、レンズの中央部が遠光学屈折力を有し、中間サイズの瞳孔が近等分割を有し、最大の瞳孔サイズが増大した遠光学屈折力を有した際に得られた球面光学屈折力と非球面光学屈折力間の最適分割を提供するであろう。 【0042】非球面は以下の一般方程式で記載される。 この式は一般円錐方程式であり、球面、放物線、楕円、 双曲線を有する全ての円錐曲線を含む。 【数1】 ここでk=0のときは球面、k=−1のときは放物線、 0>k>−1のときは楕円、k<−1のときは双曲線である。
【0043】同心環状球面セグメントを有する後面と組み合わされた非球面を有する前面を備えたレンズは、設計と実施が容易なため好ましい例である。 乱視矯正用のたいていの屈折力差矯正は、同心円レンズで実施され、 従って、わずかな補助だけを与える非球面が視力を向上するため必要である。 これを達成するため小さな非球面K値が必要とされる。 K値は、球面および円筒双方の屈折力のぼけた円(最少の曖昧な円)径を小さくするのにそれら自身に必要なK値より小さい。 最適な形状は、K 値が−0.05と−0.5の間の楕円形である。 従って、この明細書で用いられた楕円は、球面からわずかにそれただけである。 【0044】本発明は分離した同心環状帯を滑らかな非球面関数で代えることもできる。 この意味で非球面は、 円錐非球面と、変化する偏心を備えた円錐非球面又は、 関数の分離屈折力分割をシュミレートする多項式関数を示すことができる。 【0045】図11はレンズの前面か後面の非球面によって生じた代表的な屈折力のプロフィールを示す。 図1 1は、球面遠視野%の非球面多焦点レンズのグラフを瞳孔%の関数として示し、瞳孔のパーセントが大きなものは、レンズの光学ゾーンの外周を区画する半径以下の大きな半径方向距離に対応する。 【0046】本明細書においては、乱視用の同心レンズ設計に対する本発明のいくつかの態様と変形例を詳細に説明したが、本発明の開示内容は当業者に多くの代替設計を示唆することが、明らかである。 【0047】なお本発明の具体的な実施態様は、以下の通りである。 1)第1および第2球面環状セグメントの光学屈折力間の差は、2.0ジオプター未満である請求項1記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 2)前記少なくとも一つの第2球面環状セグメントは、 全円筒処方Rxの一部に対応する請求項1記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 3)前記第1および第2球面環状セグメントの光学屈折力の中間にある中間屈折力に対応する少なくとも一つの第3球面環状セグメントをさらに有する請求項1記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 4)前記同心環状セグメントは、患者の基本的な遠処方Rxを有する中央のディスクを囲む請求項1記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 5)前記同心環状セグメントは、レンズの後面にある請求項1記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 【0048】6)トーリック曲線上に重なった非球面をさらに有してレンズの焦点深度効果を向上させる請求項1記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 7)前記レンズは、ソフトヒドロゲルコンタクトレンズなどのコンタクトレンズである請求項1記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 8)前記レンズは、眼内レンズである請求項1記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 9)前記少なくとも一つの第2球面環状セグメントは、 全円筒処方Rxの一部に対応する請求項2記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 10)第1および第2環状セグメントの光学屈折力間にある中間光学屈折力に対応する少なくとも一つの第3球面環状セグメントをさらに有する請求項2記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 【0049】11)前記第1および第2球面環状セグメントの光学屈折力間の差は、2.0ジオプター未満である請求項2記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 12)前記少なくとも一つの第1環状セグメントは、患者の基本的な球面遠処方Rxを有する中央のディスクを有し、少なくとも一つの第3環状セグメントは、前記中央のディスクを囲み、少なくとも一つの第2環状セグメントは、前記第3環状セグメントを囲む上記実施態様1 1)記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 13)前記同心環状セグメントは、前記レンズの後面にある請求項2記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 14)前記一つの面は、非球面曲線を区画し、前記レンズの被写界深度効果を増大する請求項2記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 15)前記レンズは、コンタクトレンズである請求項2 記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 【0050】16)前記レンズは、ソフトヒドロゲルコンタクトレンズである上記実施態様15)記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 17)前記レンズは、眼内レンズである請求項1記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 18)前記レンズは、遠光学屈折力を備えた中央部と、 略等分割の円筒および遠光学屈折力を備えた中間部と、 増大した光学屈折力を備えた外部を有する請求項3記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 19)前記球面曲線は、前記前面にある請求項3記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 20)前記第1および第2環状セグメント間の前記光学屈折力は、2.00ジオプター以下である請求項3記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 【0051】21)各々非球面環状セグメントは、− 0.05と−0.5の間のK値を備えた楕円形状を有し、前記楕円は球面からわずかに離れている上記実施態様19)記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 22)前記少なくとも一つの第2環状セグメントは、前記全円筒処方Rxの一部に対応する請求項3記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 23)前記同心環状セグメントは、前記患者の基本的な球面遠処方Rxを有する中央ディスクを囲む請求項3記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 24)前記レンズは、コンタクトレンズである請求項3 記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 25)前記レンズは、ソフトヒドロゲルコンタクトレンズである上記実施態様24)記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 【0052】26)前記レンズは、眼内レンズである請求項3記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 27)前記レンズは、遠光学屈折力を備えた中央部と、 略等分割の円筒および遠光学屈折力を備えた中間部と、 増大した光学屈折力を備えた外部を有する請求項4記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 28)前記非球面曲線は、前記前面にある請求項4記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 29)前記第1および第2環状セグメント間の前記光学屈折力は、2.00ジオプター以下である請求項4記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 30)各々非球面環状セグメントは、−0.05と− 0.5の間のK値を備えた楕円形状を有し、前記楕円は球面からわずかに離れている上記実施態様28)記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 【0053】31)前記少なくとも一つの第2環状セグメントは、前記全円筒処方Rxの一部に対応する請求項4記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 32)前記同心環状セグメントは、前記患者の基本的な球面遠処方Rxを有する中央ディスクを囲む請求項4記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 33)前記レンズは、コンタクトレンズである請求項4 記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 34)前記レンズは、ソフトヒドロゲルコンタクトレンズである上記実施態様33)記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 35)前記レンズは、眼内レンズである請求項4記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 【0054】36)前記第1および第2の交互同心トーリック環状セグメント間の前記光学屈折力差は、2.0 0D以下であり、十分な焦点深度効果を与え基準軸位置から+又は−20度以下の軸の心ずれにする請求項4記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 37)前記少なくとも一つの第2トーリック環状セグメントは、前記全円筒処方Rxの一部に対応する上記実施態様36)記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 38)前記前面は球面を区画し、前記後面は複数のトーリック環状セグメントを区画する請求項5記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 39)前記少なくとも一つの第2トーリック環状セグメントは、前記全円筒処方Rxの一部に対応する請求項5 記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 40)前記同心環状セグメントは、患者の基本的な球面遠処方Rxを有する中央ディスクを囲む請求項5記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 【0055】41)前記第1および第2環状セグメント間の前記光学屈折力は、2.00ジオプター以下である請求項5記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 42)各々トーリック環状セグメントは、−0.05と−0.5の間のK値を備えた楕円形状を有し、前記楕円は球面からわずかに離れている請求項5記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 43)前記レンズは、ソフトヒドロゲルコンタクトレンズなどのコンタクトレンズである請求項5記載の乱視患者用の多焦点同心円レンズ。 【0056】 【発明の効果】以上のように、本発明によれば、トーリック軸の心ずれに対する患者の感度を低下させ、トーリック製品の在庫品に保存された必要数の在庫保管ユニットを減らす乱視患者用の同心円レンズを提供することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】第1および第2光学屈折力XとYを有する同心環状セグメント前面と、トーリック後面を備えた本発明により設計された同心円レンズの第1例の正面図である。 【図2】第1および第2光学屈折力XとYを有する同心環状セグメント前面と、トーリック後面を備えた本発明により設計された同心円レンズの第1例の側面図である。 【図3】第1および第2球面光学屈折力XとYに加えて、中間の球面光学屈折力セグメントIをレンズ設計に含む、図1と図2のレンズと同様の本発明に係る同心円レンズの第2例の正面図である。 【図4】第1および第2球面光学屈折力XとYに加えて、中間の球面光学屈折力セグメントIをレンズ設計に含む、図1と図2のレンズと同様の本発明に係る同心円レンズの第2例の側面図である。 【図5】トーリック面を取り除き、レンズの一面に球面か非球面を用い、レンズの反対面に多焦点同心環状セグメント面を組み合わせた本発明に係る同心円レンズの第3例の後面の平面図である。 【図6】患者の基本的な球面遠処方に対応する球面の前面と、同心環状セグメントトーリック面を有するレンズ設計の他の例の後面の平面図である。 【図7】レンズの前面は、光学ゾーンに単純なトーリック曲線を含み、レンズの後面は交互の多重同心球面環状セグメントを含む本発明のさらに好ましい例を示す図である。 【図8】レンズの光学ゾーンが三つのゾーン、すなわち、患者の基本的な遠処方Rxを有する球面ディスクである最も内側のゾーン、球面および円筒光学屈折力を有する一つ以上の環状セグメントからなる中間ゾーン、主に円筒光学屈折力を有する一つ以上の環状セグメントからなる外ゾーンに分けられるレンズ設計の好ましい例の平面図である。 【図9】同心多焦点球面又は非球面環状セグメント後面とそれぞれ非球面又は球面の前面を有する典型的なレンズ90の例の後面の平面図である。 【図10】同心多焦点球面又は非球面環状セグメント前面とそれぞれ非球面又は球面の後面を有する典型的なレンズの例の前面の平面図である。 【図11】非球面多焦点レンズの代表的な屈折力のプロフィールを示し、瞳孔のパーセントが大きなものは、レンズの光学ゾーンの大きな半径方向距離に対応する瞳孔%の関数としての球面遠視野%のグラフ図である。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ジェフリー・エイチ・ロフマン アメリカ合衆国、32233 フロリダ州、ジ ャクソンビル、ブラディ・プレイス・ブー ルバード 12389 (72)発明者 エドガー・ヴィ・メネゼス アメリカ合衆国、32224 フロリダ州、ジ ャクソンビル、チコラ・ウッド・プレイス 3951 |