ディセンタタイプのコンタクトレンズおよびディセンタタイプのコンタクトレンズセット

申请号 JP2016505986 申请日 2014-03-04 公开(公告)号 JP5946981B2 公开(公告)日 2016-07-06
申请人 株式会社メニコン; 发明人 後藤 裕二; 中田 充彦;
摘要
权利要求

中央部分に設けられた光学部の外周に周辺部が設けられており、該光学部の光学中心がレンズ幾何中心から偏倚設定されていると共に、装用状態でのレンズ周方向位置を設定する周方向位置合せ機構が設けられたディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、 前記周辺部にはレンズ幾何中心に対する重心偏倚が設定されており、前記光学部の光学中心のレンズ幾何中心に対する偏倚に伴う重心位置ずれが該周辺部の重心偏倚によって相殺的に補正されていることを特徴とするディセンタタイプのコンタクトレンズ。前記周辺部における重心偏倚の設定が、該周辺部における径方向断面形状を周方向で変化させて、該重心偏倚の設定方向となる径方向両側部分において該周辺部の厚さ寸法と幅寸法と径方向重心位置との少なくとも一つを互いに異ならせることによって設定されている請求項1に記載のディセンタタイプのコンタクトレンズ。前記光学部における光学特性として、眼光学系の遠近矯正用光学特性と乱視矯正用光学特性と収差補正用光学特性と近視進行抑制用光学特性との少なくとも一つが設定されている請求項1又は2に記載のディセンタタイプのコンタクトレンズ。前記周辺部における重心偏倚が、レンズ前面の形状によって設定されている請求項1〜3の何れか1項に記載のディセンタタイプのコンタクトレンズ。前記周方向位置合せ機構が、前記周辺部において上下に位置する一対の薄肉部と左右に位置する一対の厚肉部とを有するダブルスラブオフと、該ダブルスラブオフにおいて該一対の厚肉部がそれぞれ下方に偏倚したペリバラストと、前記光学部と該周辺部とを含む領域に亘ってレンズ前後面をずらして下方を厚肉にしたプリズムバラストと、レンズの上下少なくとも一方の端縁部を略弦方向に切除した形状のトランケーションとの、少なくとも一つによって構成されている請求項1〜4の何れか1項に記載のディセンタタイプのコンタクトレンズ。前記周辺部において上下に位置する一対の薄肉部と左右に位置する一対の厚肉部とが設けられて前記周方向位置合せ機構が構成されていると共に、該一対の厚肉部の相互間と該一対の薄肉部の相互間との少なくとも一方において相対的に形状が異ならされることにより、レンズ幾何中心に対する前記重心偏倚が設定されている請求項1〜5の何れか1項に記載のディセンタタイプのコンタクトレンズ。前記光学部においてプラスディオプターの矯正用光学特性が、レンズ幾何中心から偏倚設定された光学中心をもって設定されていると共に、 前記周辺部における重心偏倚が、該レンズ幾何中心に対して、該光学中心の偏倚方向と反対側に設定されている請求項1〜6の何れか1項に記載のディセンタタイプのコンタクトレンズ。前記光学部においてマイナスディオプターの矯正用光学特性が、レンズ幾何中心から偏倚設定された光学中心をもって設定されていると共に、 前記周辺部における重心偏倚が、該レンズ幾何中心に対して、該光学中心の偏倚方向と同じ側に設定されている請求項1〜6の何れか1項に記載のディセンタタイプのコンタクトレンズ。前記光学部の光学中心の前記レンズ幾何中心からの偏倚距離が0.4mm以上である請求項1〜8の何れか1項に記載のディセンタタイプのコンタクトレンズ。前記光学部の光学中心のレンズ幾何中心に対する偏倚に伴う重心位置ずれが前記周辺部の重心偏倚によって相殺的に補正されることにより、レンズ幾何中心に対するレンズ重心位置のずれ率が2%以下に設定されている請求項1〜8の何れか1項に記載のディセンタタイプのコンタクトレンズ。前記周辺部において左右に位置する一対の厚肉部が設けられて、該一対の厚肉部の相互間で厚さ寸法が異ならせることにより前記重心偏倚が設定されていると共に、該一対の厚肉部の相互間の厚さ寸法差が0.01〜0.1mmの範囲内に設定されている請求項1〜10の何れか1項に記載のディセンタタイプのコンタクトレンズ。請求項1〜11の何れか1項に記載のディセンタタイプのコンタクトレンズであって、前記光学部における矯正用のレンズ度数の規格値を異ならせた複数種類のものを組み合わせて構成されたディセンタタイプのコンタクトレンズセットにおいて、 互いに組み合わされた前記それぞれのコンタクトレンズにおいて前記周辺部に設定された重心偏倚の大きさが、前記光学部に設定された矯正用のレンズ度数の規格値に対応して異ならされていることを特徴とするディセンタタイプのコンタクトレンズセット。

说明书全文

本発明は、光学部の光学中心がレンズ幾何中心から偏倚させられたディセンタタイプのコンタクトレンズに係り、特に装用状態での周方向の位置設定機構を備えたコンタクトレンズに関する。

従来から、コンタクトレンズの一種として、その光学領域に、互いに異なるレンズ度数が設定された複数の度数領域を有するものが知られている。例えば老視矯正用のコンタクトレンズでは、近方視に必要とされるレンズ度数と遠方視に必要とされるレンズ度数とが異なることから、近方視用のレンズ度数が設定された近用領域と遠方視用のレンズ度数が設定された遠用領域とを設けたコンタクトレンズが、老視矯正用に処方される。具体的には、特許文献1(特開昭61−272717号公報)に開示されているように、近用領域と遠用領域とがレンズ幾何中心に対して同心円状に形成された構造のコンタクトレンズが知られている。

ところで、人眼の膜にコンタクトレンズを重ね合わせた装用状態において、眼光学系の中心軸上に位置する瞳孔中心は、コンタクトレンズの幾何中心からずれることが多い。その理由は、人眼の角膜表面の曲率分布が一様でないためにコンタクトレンズが側にずれて安定し易いことや、角膜の幾何中心に対して瞳孔中心が鼻側に偏心位置していること等によると考えられる。

このように、装用状態下で瞳孔中心がコンタクトレンズの幾何中心からずれてしまうと、上記特許文献1に記載の如きレンズ幾何中心と同心的に近用領域と遠用領域を設けた従来構造のコンタクトレンズでは、見え方の質(QOV)が十分に得られ難いという問題があった。そこで、本出願人は、特開平6−289329号公報(特許文献2)において、光学領域の光学中心軸をレンズ幾何中心から鼻側に偏倚させたディセンタタイプのコンタクトレンズを提案した。この特許文献2に記載のコンタクトレンズでは、装用状態下での瞳孔中心と光学中心軸との隔たりを抑えることが可能となり、QOVの向上が図られ得る。

ところが、特許文献2に記載の如きディセンタタイプのコンタクトレンズについて、本発明者が更なる検討を加えたところ、QOVの向上について、十分な効果を安定して得難い場合があり、未だ改良の余地があることがわかった。

特開昭61−272717号公報

特開平6−289329号公報

本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、ディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて目的とするQOVの向上効果がより安定して発揮され得る、改良された構造のコンタクトレンズを提供することにある。

かかる課題を解決するために、本発明者が多くの実験と検討を重ねた結果、ディセンタタイプのコンタクトレンズでは、装用状態での周方向位置が所期の位置からずれてしまうことが多く、それによって、ディセンタされた光学中心が瞳孔中心から外れてしまうことで目的とするQOVが得られ難い場合があるという事実を確認し得た。

しかしながら、そもそも、ディセンタタイプのコンタクトレンズには、ダブルシン等の公知の周方向位置決め手段が設けられて、装用状態での周方向位置が設定されている。この周方向位置決め手段が十分に安定して機能しない理由について、更に本発明者が研究を重ねたところ、光学領域の光学中心軸をレンズ幾何中心から偏倚させるディセンタの設定に起因して、レンズの重心位置がレンズ幾何中心からずれてしまうことが大きな原因であるとの知見を得るに至った。

そして、ディセンタの設定に伴って、コンタクトレンズの重心位置がディセンタのない当初の設計上の重心位置からずれてしまうことにより、装用時におけるコンタクトレンズの角膜上での位置が、重作用に基づいて変化してしまうこととなり、それが大きな原因となって十分なフィット感や装用感が達成され難い場合があったのである。

このような本発明の基礎となる新規な技術思想の理解のために、一つの具体例として、図31〜33に示されている如きディセンタタイプのコンタクトレンズ1を想定して説明する。このコンタクトレンズ1は、中央部分に光学部2が設けられており、当該光学部2の中央部分においてマイナスディオプターの近方視用矯正度数が設定された第一の度数領域3が形成されていると共に、第一の度数領域3の外周側において近方視用矯正度数よりも度数の小さい遠方視用矯正度数が設定された第二の度数領域4が形成されることにより、バイフォーカルレンズとされている。そして、第一の度数領域3の外形中心(本例では光学部2の光学中心と略同位置)が、レンズ外形中心となるレンズ幾何中心5から径方向一方(図33における左右径方向上で右方)に偏倚させられることにより、光学部2の光学中心がレンズ幾何中心5から偏倚したディセンタタイプのコンタクトレンズ1とされている。また、光学部2の外周側は所定幅でレンズ周方向に延びる円環状の周辺部6とされており、コンタクトレンズ1の周方向位置を設定する周方向位置合せ機構が設けられている。このコンタクトレンズ1においては、周方向位置合せ機構としてダブルスラブオフ構造が採用されており、装用状態の上下方向において一対の薄肉部7,7が形成されている一方、装用状態の左右方向において一対の厚肉部8,8が形成されている。

そして、かかるコンタクトレンズ1では、ディセンタのない当初の設計上の重心位置がレンズ幾何中心5に設定されており、周辺部6のダブルスラブオフ構造によって、一対の薄肉部7,7の対向する径方向線が鉛直方向となり且つ一対の厚肉部8,8の対向する径方向線が平方向となって、図31に示される状態で周方向に位置決めされるように設計されている。しかし、光学部2にディセンタを設定したことにより、コンタクトレンズ1の重心位置9が、レンズ幾何中心5から外れて、第一の度数領域3の光学中心とは反対側(図31中の左方)に所定距離Xwだけ偏倚して位置せしめられることとなるのである。

本発明者が検討したところ、この重心位置9の偏倚量と、装用時における所期設定位置からの位置ずれ量とに関連を見出すことができた。即ち、装用状態のコンタクトレンズでは、ディセンタ設定に伴う重力作用で回転モーメントや並進力が及ぼされることに起因して、レンズ位置が所期設定位置からずれてしまうこととなり、このずれによって、瞳孔中心に対して位置合わせされるように設定した所期の光学中心が外れてしまうことで目的とするQOVの向上効果が発揮され難くなるものと考えられる。また、重心位置9の偏倚量や偏倚方向は、光学部2に設定される光学特性や光学中心のディセンタ量によって種々異なることから、装用者の涙液状態などに拘わらず装用状態でのコンタクトレンズの位置ずれ状態が異なることとなり、目的とするQOVの向上効果を安定して発現させることが難しかったものと考えられる。

上述の如き知見結果に基づいて為された本発明の第1の態様は、中央部分に設けられた光学部の外周に周辺部が設けられており、該光学部の光学中心がレンズ幾何中心から偏倚設定されていると共に、装用状態でのレンズ周方向位置を設定する周方向位置合せ機構が設けられたディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、前記周辺部にはレンズ幾何中心に対する重心偏倚が設定されており、前記光学部の光学中心のレンズ幾何中心に対する偏倚に伴う重心位置ずれが該周辺部の重心偏倚によって相殺的に補正されていることを特徴とするものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズによれば、本発明者の考察によって新たに見出されたディセンタ設定に伴う重心偏倚が、光学特性に直接に影響を及ぼすことのない周辺部を巧く利用して、効果的に軽減され得る。それ故、ディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、ディセンタに伴って謂わば予期せずに移動した重心位置を、当初の設定位置であるレンズ幾何中心に近づけるように補正して、当初の設定位置からの重心位置のずれ量を小さく抑えることが可能になる。これにより、コンタクトレンズ装用時に、コンタクトレンズが当初の設定位置に精度良く位置合わせされて、ダブルシン等の周方向位置決め効果も良好に発揮されることで本来の装用状態が安定して発現される。

その結果、ディセンタ設定に起因すると考えられる、光学中心が所期位置からずれたり、瞬目等に際してのレンズの動きが大きくなる等といった問題が効果的に軽減または解消され得て、コンタクトレンズが装用状態で目的とする位置で安定することとなり、ディセンタ設定によって目的とするQOVの向上効果や装用感の向上効果が有効に且つ安定して発揮されるのである。

なお、前述のレンズ幾何中心位置およびレンズ重心位置等としては、本明細書においては、レンズ軸を含む面に対して垂直な面であるXY平面上における距離を用いて説明する。

本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係るディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、前記周辺部における重心偏倚の設定が、該周辺部における径方向断面形状を周方向で変化させて、該重心偏倚の設定方向となる径方向両側部分において該周辺部の厚さ寸法と幅寸法と径方向重心位置との少なくとも一つを互いに異ならせることによって設定されているものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズによれば、周辺部における重心偏倚が対称形状を基本にした簡単な構造をもって設定され得て、効率的で優れた設計自由度が達成される。特に、径方向両側部分が相対的に異なっていればよいことから、径方向の一方のみの形状を変化させてもよいし、径方向両側部分が共働して周辺部の重心偏倚を設定するようにしてもよい。

なお、径方向両側部分において周辺部の厚さ寸法や幅寸法や径方向重心位置を相互に異ならせるには、周辺部の断面形状を異ならせることによって実現される。相対的に厚さ寸法や幅寸法を大きくすることで、大きくした方へレンズ重心位置を移動設定することができるし、相対的に径方向重心位置をレンズ幾何中心から外周側へ離隔させることで、離隔させた方へレンズ重心位置を移動設定することができる。

本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係るディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、前記光学部における光学特性として、眼光学系の遠近矯正用光学特性と乱視矯正用光学特性と収差補正用光学特性と近視進行抑制用光学特性との少なくとも一つが設定されているものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズの光学部における光学特性として、遠近矯正用光学特性、乱視矯正用光学特性、収差補正用光学特性、近視進行抑制用光学特性などがあり、この光学部の光学特性に応じて、例えば屈折型或いは回折型で設計される遠近両用のバイフォーカルやマルチフォーカル等の多焦点レンズおよびレンズ度数が漸次に変化するプログレッシブレンズ、乱視矯正用のトーリックレンズ、コマ様収差度数分布を有する不正乱視矯正用レンズ、非球面式やゼルニケ多項式を利用して収差コントロールしたコンタクトレンズ、近視の進行を抑制する近視進行抑制用レンズ等、各種特性を有するコンタクトレンズが採用され得る。特に、上記の如き光学特性を光学部に設定する場合には、単純な単焦点レンズに比べてQOVの向上効果が発揮されやすいことから、重心位置の補正による効果が、一層有益に享受され得る。

本発明の第4の態様は、前記第1〜第3の何れかの態様に係るディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、前記周辺部における重心偏倚が、レンズ前面の形状によって設定されているものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズによれば、レンズ前面の形状を設定するのみで周辺部の重心偏倚が実現されることから、構造が簡略なものとされて、コンタクトレンズの設計や製造が容易とされ得る。特に、コンタクトレンズが切削加工により製造される場合には、レンズ前面のみが切削されることからワークのつかみ直し等に伴う加工誤差を小さくすることができる。また、コンタクトレンズがモールド成形にて製造される場合には、後面側の型の種類数を少なくすることができる。しかも、装用時に角膜に重ね合わされるレンズ後面の形状を、重心偏倚量に拘わらず略一定にすることで、良好な装用感を、重心偏倚の設定量に拘わらず略同等に保つことが可能になる。

本発明の第5の態様は、前記第1〜第4の何れかの態様に係るディセンタタイプのコンタクトレンズであって、前記周方向位置合せ機構が、前記周辺部において上下に位置する一対の薄肉部と左右に位置する一対の厚肉部とを有するダブルスラブオフと、該ダブルスラブオフにおいて該一対の厚肉部がそれぞれ下方に偏倚したペリバラストと、前記光学部と該周辺部とを含む領域に亘ってレンズ前後面をずらして下方を厚肉にしたプリズムバラストと、レンズの上下少なくとも一方の端縁部を略弦方向に切除した形状のトランケーションとの、少なくとも一つによって構成されているものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズによれば、周方向位置合せ機構として従来公知である上記の各種構造が適宜に且つ必要に応じて組み合わせて採用されることにより、周辺部を含むレンズ形状の設計が容易とされる。

本発明の第6の態様は、前記第1〜第5の何れかの態様に係るディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、前記周辺部において上下に位置する一対の薄肉部と左右に位置する一対の厚肉部とが設けられて前記周方向位置合せ機構が構成されていると共に、該一対の厚肉部の相互間と該一対の薄肉部の相互間との少なくとも一方において相対的に形状が異ならされることにより、レンズ幾何中心に対する前記重心偏倚が設定されているものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズによれば、周方向位置合わせ機構を構成する一対の薄肉部と一対の厚肉部を巧く利用して、ディセンタ設定に起因する重心移動を補正するための重心偏倚が効率的に実現され得る。特に、一対の薄肉部と一対の厚肉部の両方において、それぞれの形状を相対的に異ならせることにより上下左右何れの方向にも重心偏倚を設定することが可能となり、光学部における多様な設計に対して、それに伴う重心移動の相殺的な補正が効率的に達成され得る。

本発明の第7の態様は、前記第1〜第6の何れかの態様に係るディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、前記光学部においてプラスディオプターの矯正用光学特性が、レンズ幾何中心から偏倚設定された光学中心をもって設定されていると共に、前記周辺部における重心偏倚が、該レンズ幾何中心に対して、該光学中心の偏倚方向と反対側に設定されているものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズによれば、プラスディオプターの矯正光学特性を有する領域の光学中心がレンズ幾何中心から偏倚することにより、光学部のレンズ幾何中心に対する重心位置ずれが当該光学中心の偏倚方向と同方向に惹起されることから、当該光学中心の偏倚方向と反対方向に周辺部の重心偏倚を設定することにより、光学部の重心位置ずれが相殺的に補正され得る。

本発明の第8の態様は、前記第1〜第6の何れかの態様に係るディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、前記光学部においてマイナスディオプターの矯正用光学特性が、レンズ幾何中心から偏倚設定された光学中心をもって設定されていると共に、前記周辺部における重心偏倚が、該レンズ幾何中心に対して、該光学中心の偏倚方向と同じ側に設定されているものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズによれば、マイナスディオプターの矯正光学特性を有する領域の光学中心がレンズ幾何中心から偏倚することにより、光学部のレンズ幾何中心に対する重心位置ずれが当該光学中心の偏倚方向と逆方向に惹起されることから、当該光学中心の偏倚方向と同方向に周辺部の重心偏倚を設定することにより、光学部の重心位置ずれが相殺的に補正され得る。

本発明の第9の態様は、前記第1〜第8の何れかの態様に係るディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、前記光学部の光学中心の前記レンズ幾何中心からの偏倚距離が0.4mm以上のものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズでは、光学部のディセンタ設定に際して比較的に大きな重心偏倚が惹起されて、QOVや装用感の低下などといった不具合が発生し易いが、そのようなコンタクトレンズでも、本発明による重心位置ずれの補正構造を採用することにより、ディセンタ設定に起因するQOVや装用感の低下が十分に改善され得ることとなる。

本発明の第10の態様は、前記第1〜第9の何れかの態様に係るディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、前記光学部の光学中心のレンズ幾何中心に対する偏倚に伴う重心位置ずれが前記周辺部の重心偏倚によって相殺的に補正されることにより、レンズ幾何中心に対するレンズ重心位置のずれ率が2%以下に設定されているものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズによれば、所期の周方向位置での位置決め効果が安定して発揮され得る。蓋し、周辺部の重心偏倚による重心位置ずれの相殺的な補正後のレンズ幾何中心と重心位置とのずれ率が2%より大きいと、重心位置ずれが十分に補正されず、装用時においてコンタクトレンズが揺らいだり目的としない周方向位置で安定する等して、所望の光学特性が得られないおそれがあるからである。なお、「レンズ幾何中心に対するレンズ重心位置のずれ率」とは、レンズ外径寸法(DIA.)に対する補正後のレンズ幾何中心とレンズ重心位置との距離(ずれ量)を百分率で示すものである。

本発明の第11の態様は、前記第1〜第10の何れかの態様に係るディセンタタイプのコンタクトレンズにおいて、前記周辺部において左右に位置する一対の厚肉部が設けられて、該一対の厚肉部の相互間で厚さ寸法が異ならせることにより前記重心偏倚が設定されていると共に、該一対の厚肉部の相互間の厚さ寸法差が0.01〜0.1mmの範囲内に設定されているものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズによれば、一対の厚肉部の厚さ寸法差が0.01mm以上とされることで、重心位置の補正効果がより効果的に発揮されると共に、一対の厚肉部の厚さ寸法差が0.1mm以下とされることで、左右両側の厚肉部に及ぼされる眼瞼圧作用が適切にバランスされてレンズ周方向位置決め作用や装用感の更なる向上が図られ得る。

本発明のディセンタタイプのコンタクトレンズセットに関する第1の態様は、前記第1〜第11の何れかの態様に係るディセンタタイプのコンタクトレンズであって、前記光学部における矯正用のレンズ度数の規格値を異ならせた複数種類のものを組み合わせて構成されたディセンタタイプのコンタクトレンズセットにおいて、互いに組み合わされた前記それぞれのコンタクトレンズにおいて前記周辺部に設定された重心偏倚の大きさが、前記光学部に設定された矯正用のレンズ度数の規格値に対応して異ならされていることを特徴とするものである。

本態様に従う構造とされたディセンタタイプのコンタクトレンズセットによれば、ディセンタタイプのコンタクトレンズにおけるレンズ度数の規格値を異ならせた複数種類のものを組み合わせることから、当該複数種類のものの中から使用者に適したコンタクトレンズを選択することができる。また、レンズ度数の規格値に応じて重心偏倚の大きさが設定されることから、コンタクトレンズセットを構成するコンタクトレンズの種類が必要以上に多岐に亘ることも防止することができる。特に、レンズ度数の規格値に略対応した大きさをもって、ディセンタ設定に起因する重心位置ずれが生ぜしめられることから、それに応じた重心偏倚の相殺的な補正値を、レンズ度数の規格値に対応して効率的に設定することも可能になる。

本発明の構造に従うディセンタタイプのコンタクトレンズによれば、光学部の光学中心がレンズ幾何中心から偏倚していることに起因する重心位置ずれに対して、周辺部に重心偏倚を設定することにより、当該重心位置ずれを相殺的に補正して、コンタクトレンズの重心位置ずれを小さく抑えることができる。その結果、従来のディセンタタイプのコンタクトレンズで問題となっていた、QOVや装用感の更なる向上と安定化が達成され得るのである。

本発明の第一の実施形態としてのコンタクトレンズを示す正面図。

図1におけるII−II断面図。

図1におけるIII−III断面図。

図1に示されたコンタクトレンズにおいて、一対の厚肉部の厚さ寸法の違いを示すために、両厚肉部の断面形状を重ね合わせた説明図。

図1に示されるコンタクトレンズのレンズ幾何中心から重心位置までの距離とコンタクトレンズのレンズ度数との関係を説明するためのグラフであって、係数kの値を0.000から0.008まで0.001毎に変化させたグラフ。

図1に示されるコンタクトレンズにおける左右の厚肉部の相対的な厚さ寸法差εとコンタクトレンズのレンズ度数との関係を説明するためのグラフであって、係数kの値を図5に対応して変化させたグラフ。

図1に示されるコンタクトレンズにおけるレンズ外径寸法に対するレンズ幾何中心から重心位置までの距離とコンタクトレンズのレンズ度数との関係を説明するためのグラフであって、係数kの値を図5に対応させて変化させたグラフ。

本発明の第一の実施形態としてのコンタクトレンズの別の態様を示す正面図。

図8におけるIX−IX断面図。

図8におけるX−X断面図。

本発明の第一の実施形態としてのコンタクトレンズの更に別の態様を示す正面図。

図11におけるXII−XII断面図。

図11におけるXIII−XIII断面図。

本発明の第二の実施形態としてのコンタクトレンズを示す正面図。

図14におけるXV−XV断面図。

図14におけるXVI−XVI断面図。

本発明の第二の実施形態としてのコンタクトレンズの別の態様を示す正面図。

本発明の第二の実施形態としてのコンタクトレンズの更に別の態様を示す正面図。

本発明の第三の実施形態としてのコンタクトレンズを示す正面図。

図19におけるXX−XX断面図。

図19におけるXXI−XXI断面図。

本発明の第三の実施形態としてのコンタクトレンズの別の態様を示す正面図。

本発明の第三の実施形態としてのコンタクトレンズの更に別の態様を示す正面図。

本発明の第四の実施形態としてのコンタクトレンズを示す正面図。

図24におけるXXV−XXV断面図。

本発明の第四の実施形態としてのコンタクトレンズの別の態様を示す正面図。

本発明の第四の実施形態としてのコンタクトレンズの更に別の態様を示す正面図。

本発明の第五の実施形態としてのコンタクトレンズを示す正面図。

本発明のコンタクトレンズにおける別の態様を示す正面図。

本発明のコンタクトレンズにおける更に別の態様を説明するための説明図であって、レンズ前面の半周における厚さ変化を示す図。

従来公知の構造からなるディセンタタイプのコンタクトレンズの重心位置を説明するための説明図であって、周方向位置合せ機構としてダブルスラブオフを採用したコンタクトレンズの正面図。

図31におけるXXXII−XXXII断面図。

図31におけるXXXIII−XXXIII断面図。

以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。

先ず、図1〜3には、本発明の第一の実施形態としてのコンタクトレンズ10が示されている。このコンタクトレンズ10は、全体として部分的な略球殻形状を有しており、良く知られているように、眼球における角膜の表面に重ねて装用されることによって使用されるようになっている。なお、図1のコンタクトレンズ10は右眼用を示しており、コンタクトレンズ10の装用状態上下方向とは図1中の上下方向であると共に、装用状態の鼻側が図1中の右方、耳側が図1中の左方である。また、以下の説明において、レンズ幾何中心やレンズの重心位置等は、レンズ軸方向(図3中の上下方向)に対して垂直なXY平面を想定して、当該XY平面上における距離を用いて説明するものとする。

なお、本発明は、ソフトタイプおよびハードタイプの何れのコンタクトレンズにも適用可能である。その材質も限定されるものでなく、例えばソフトタイプのコンタクトレンズとしては、従来から公知のPHEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート)やPVP(ポリビニルピロリドン)等の含水性材料の他、アクリルゴムやシリコーン等の非含水性材料等も採用可能である。特に、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)やSiMA/MMAポリマー等のガス透過性レンズ(RGPレンズ)などからなるハードコンタクトレンズへの適用も可能である。更に、ソフトタイプとハードタイプの特長を併せ持つ2種材コンタクトレンズも採用可能であり、ハードタイプとソフトタイプのそれぞれの材質から形成した複合材質等も採用され得る。

より詳細には、コンタクトレンズ10は、図1に示された正面視において円形状とされており、図2,3に示されているように、略凸状球面とされたレンズ前面12と、略凹状球面とされたレンズ後面14を有している。また、かかるコンタクトレンズ10は、構造上、中央部分において正面視でレンズ幾何中心16から略円形に広がる光学部18と、光学部18の周囲を取り囲むようにして正面視で略円環形状に広がる周辺部20と、周辺部20の周囲でレンズ最外周縁部に位置してレンズ前後面12,14を接続するエッジ部22とによって構成されている。

そして、光学部18は、要求される視力矯正機能等の光学特性として、例えば単一焦点や二以上の多焦点のレンズ度数を実現するように、レンズ前面12とレンズ後面14に対して適当な曲率半径の球面や非球面をベースとした光学面形状が与えられている。

ここにおいて、人眼の角膜表面の曲率分布が一様でないためにコンタクトレンズが耳側にずれて安定し易いことや、角膜の幾何中心に対して瞳孔中心が鼻側に偏心位置していること等により、人眼の角膜にコンタクトレンズを重ね合わせた装用状態において、眼光学系の中心軸上に位置する瞳孔中心は、コンタクトレンズの幾何中心から意図せずにずれることが多い。または、コンタクトレンズとして交代視型のバイフォーカルレンズが採用される場合には、レンズ幾何中心に対して鼻側や下方に意図的に光学中心をずらすことが好適である。かかるずれを考慮して、コンタクトレンズ10では光学部18の光学中心がレンズ幾何中心16から偏倚して位置しており、コンタクトレンズ10はディセンタタイプのコンタクトレンズとされている。

すなわち、本実施形態では、光学部18はレンズ幾何中心16から偏倚設定された光学中心を有する光学領域とされており、光学部18の中央部分には、第一のレンズ度数が設定された円形の第一の度数領域24が設けられている。そして、光学部18における第一の度数領域24の周辺部分が、第二のレンズ度数が設定された第二の度数領域26とされている。特に、本実施形態では、第一のレンズ度数として近方視用の近用レンズ度数が設定されている一方、第二のレンズ度数として遠方視用の遠用レンズ度数が設定されている。即ち、第一のレンズ度数として略一定なマイナスのディオプター値が設定されている一方、第二のレンズ度数として第一のレンズ度数より小さい、略一定のマイナスディオプター値が設定されている。従って、本実施形態のコンタクトレンズ10は、二つの焦点を有するバイフォーカルレンズとされている。

そして、光学部18の光学中心が第一の度数領域24の外形中心28と略同位置に位置しており、当該外形中心28がレンズ幾何中心16から偏倚させられている。本実施形態では、第一の度数領域24の外形中心28が、レンズ幾何中心16を通る水平な径線30上に位置して、レンズ幾何中心16から鼻側にδ(図1参照)だけ偏倚している。これにより、コンタクトレンズ10の装用状態において、第一の度数領域24の外形中心28と装用眼の瞳孔中心線が重なるようにされている。

なお、一般的に、レンズ幾何中心16と装用眼の瞳孔中心線との水平方向におけるずれは正面視において0.5mm〜1.5mm程度とされることから、レンズ幾何中心16と第一の度数領域24の外形中心28との離隔距離δは、好適には0.4mm≦δの範囲内とされると共に、更に好適には0.5mm≦δ≦4.0mmの範囲内、最も好適には0.5mm≦δ≦2.0mmの範囲内に設定されて、本実施形態では、δ=1.0mmとされている。蓋し、δが0.4mmより小さいと、レンズ幾何中心16(5)からの光学部18(2)の光学中心の偏倚に伴う重心位置ずれ量Xwが小さすぎて、後述する周辺部20に設定される重心偏倚による補正効果を十分に得られないおそれがあるからである。

さらに、コンタクトレンズ10には、装用状態でのレンズ周方向位置を設定するための周方向位置合せ機構が設けられており、本実施形態では、ダブルスラブオフ構造が採用されている。即ち、コンタクトレンズ10の周辺部20における径方向の断面形状が周方向で変化させられており、上下方向に一対の薄肉部32a,32bが設けられていると共に、左右方向に一対の厚肉部34a,34bが設けられている。そして、薄肉部32a,32bと厚肉部34a,34bとの周方向間は、レンズ厚さが滑らかに変化する移行領域36とされている。なお、本実施形態では、上記の如き周辺部20の厚さ変化が、レンズ前面12に厚さ変化を付することによって実現されている。尤も、周辺部20の厚さ変化は、レンズ後面14に厚さ変化を付してもよいし、レンズ前後面12,14に厚さ変化が分配されてもよい。また、図2,3に示されている第一の度数領域24、薄肉部32a,32bおよび厚肉部34a,34bは、見易さのために、実際よりも曲率を大きくして図示している。

これらの薄肉部32a,32bおよび厚肉部34a,34bは、周上の部分的に、周方向に連続して形成されており、正面視においては、水平径線30および、水平径線30に直交する鉛直径線38に対して線対称に形成されている。なお、図1中で薄肉部32a,32bおよび厚肉部34a,34bを示す二点鎖線は、分かり易さのために特に薄肉および厚肉とされている領域を示すものであって、薄肉および厚肉とされている領域を制限するものではない。

ここにおいて、本実施形態のコンタクトレンズ10では、図4に示されているように、一方の厚肉部34b(図1中では右方)の厚さ寸法を、他方(図1中の左方)の厚肉部34aに比して大きくしている。即ち、他方の厚肉部34aの厚さ寸法をTa、一方の厚肉部34b厚さ寸法をTbとすると、Ta

上記のような形状とされたコンタクトレンズ10では、右方の厚肉部34bの厚さ寸法を左方の厚肉部34aの厚さ寸法に比して相対的に大きくすることにより、周辺部20にレンズ幾何中心16に対する重心偏倚が設定されている。これにより、左右の厚肉部が同形状とされた図31に示される如きコンタクトレンズ1に比べてレンズ全体の重心位置が右方に偏倚させられている。即ち、図31では、重心位置9がレンズ幾何中心5(16)に対して左方に位置しているが、左方の厚肉部34aに対して右方の厚肉部34bの厚さ寸法を大きくして周辺部20の右方に重心偏倚を惹起することにより、本実施形態のコンタクトレンズ10の重心位置40が重心位置9に対して右方に相殺的に補正させられて、図中では実質的にレンズ幾何中心16と重なっている。尤も、レンズ幾何中心16と重心位置40は必ずしも一致させる必要はなく、レンズ幾何中心16と重心位置40を近づけることで後述する本発明の効果は発揮され得る。なお、図1では、分かり易さのために、図31に示されたコンタクトレンズ1の重心位置9も併せて示されている。また、これらの重心位置9,40は、例えばコンピュータ上でコンタクトレンズ1,10を仮想的に作製して、ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社製「SolidWorks」等の3次元CADソフトウェアを使用することにより算出することができる。或いは、以下の式を用いて、設計値から重心位置を算出することができる。 Xw=Σ(mi ・xi )/Σmi Yw=Σ(mi ・yi )/Σmi ここにおいて、XwはX軸方向(図1中の左右方向)の重心位置ずれ量、YwはY軸方向(図1中の上下方向)の重心位置ずれ量、mi が質量を示していると共に、微小領域iでの位置が(xi ,yi )とされている。

このようなレンズ幾何中心に対する重心位置のずれ量Xw(図1および図31参照)は、コンタクトレンズに設定されるベース度数の関数として捉えることができる。即ち、図31に示されるコンタクトレンズ1においては、レンズ幾何中心5に対する重心位置9のずれ量Xwはベース度数である第二の度数領域4に設定されるレンズ度数の関数とされて、第二の度数領域4のレンズ度数が−5.0Dに設定される場合には、図5の黒色の実線(k=0.000、kは後述する係数)のグラフに示されるように、レンズ幾何中心5と重心位置9との距離Xwは0.18mmとされる。なお、図5のグラフの縦軸は、幾何中心から重心位置までの距離Xw(mm)とされており、縦軸の値が大きくなるほど鼻側に、縦軸の値が小さくなるほど耳側に重心位置がずれていることを表している。また、重心位置が耳側にずれている場合、縦軸の値は負の数値で表されているが、幾何中心から重心位置までの距離はその絶対値である。

そして、かかる形状とされたコンタクトレンズ1における一方の厚肉部において他方の厚肉部に比べて相対的に厚さ寸法を大きくすることにより、左右の厚さ寸法Ta,Tbが異ならされた厚肉部34a,34bが形成され得て、本実施形態のコンタクトレンズ10が構成されている。この両厚肉部34a,34b間の厚さ寸法差εは、例えば他方の厚肉部34aの厚さ寸法Taを更に大きくして一方の厚肉部34bの厚さ寸法Tbとすることによって実現され得て、他方の厚肉部34aに付加される厚さ寸法εは、図6に示されているように、コンタクトレンズのレンズ度数(P)の関数として捉えることができる。即ち、他方の厚肉部34aに付加される厚さ寸法εは(k×P)で表される。なお、kは任意に設定し得る係数であると共に、Pはベース度数(D)であり、本実施形態では第二の度数領域26に設定される第二のレンズ度数である。また、図6では、係数kの値が0.000から0.008まで0.001毎にグラフ化されているが、kの値はこれらの何れかに限定されるものではない。更に、図6の縦軸は、耳側の厚肉部34aに付加される付加厚さε(mm)を示しており、εが負の数値になる場合は、その絶対値の厚さ量だけ厚肉部34aが相対的に肉薄に、即ち鼻側の厚肉部34bが相対的に肉厚となるようにされる。

従って、例えば、第二のレンズ度数が−5.0Dとされて、k=0.003を設定すると、付加厚さε=−0.015(mm)とされることから、耳側の厚肉部34aに比して、鼻側の厚肉部34bが0.015(mm)だけ肉厚とされる。そして、図5中のkの値と図6中のkの値は対応するものであって、このような厚さ寸法差εを設定することにより、前述の図5のk=0.003(黒色の二点鎖線)のグラフが示すように、レンズ幾何中心16から重心位置40までの距離Xwは0.11(mm)とされる。即ち、光学部18の光学中心のレンズ幾何中心16からの偏倚に伴う重心位置のずれが、左右厚肉部34a,34bの厚さ寸法変化に伴う周辺部20の重心偏倚により相殺的に補正されて、上記例では重心位置のずれが0.07(mm)相殺的に補正されている。なお、k=0.000の場合は、厚さ寸法差ε=0となり、左右の厚肉部が同形状とされることから、図31に示されるコンタクトレンズ1を表している。また、このような係数kの値は、装用される眼の形状や付加される厚さ寸法εの値を考慮して、適宜設定され得る。

なお、両厚肉部34a,34bに厚さ寸法差εを設けることによって重心位置ずれが相殺的に補正された後の、レンズ幾何中心16と重心位置40との距離Xwは0.25mm以下とされることが好ましく、更に好適には0.15mm以下とされる。蓋し、レンズ幾何中心16と重心位置40との距離Xwが0.25mmより大きいと、重心位置ずれの補正効果が十分に発揮されず、装用時に揺らいだり予期しない傾きで安定して所望の光学特性が得られないおそれがあるからである。

また、図7に示されているグラフには、両厚肉部34a,34bに厚さ寸法差εを設けることによって重心位置ずれが相殺的に補正された後の、レンズ外径寸法(DIA.)に対する上記レンズ幾何中心16と重心位置40との距離Xwがずれ率Rw(=(Xw/DIA.)×100)(%)として示されている。当該ずれ率Rwは2%以下とされることが好ましく、更に好適には1%以下とされる。これにより、後述する重心位置ずれの補正効果が発揮されて、所望の光学特性が享受され得る。なお、図7中のkの値は、図5,6中のkの値と対応するものである。また、本実施形態のレンズ外径寸法(DIA.)は14.2mmとされている。

上記の如き形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ10では、光学部18の光学中心がレンズ幾何中心16から偏倚させられたディセンタタイプとされているが故に、重心位置(9)がレンズ幾何中心(5)からずれていたが、周辺部20に形成された一対の厚肉部34a,34bの厚さ寸法Ta,Tbを異ならせることにより、周辺部20に重心偏倚が惹起されて、重心位置のずれを相殺的に補正することができる。これにより、重心位置40とレンズ幾何中心16を近づけることができて、周辺部20に設けられた周方向位置合せ機構に従う所期の周方向位置にコンタクトレンズ10を一層確実に位置決めすることができると共に、コンタクトレンズ10の装用時に揺らいだり予期しない傾きで安定することが効果的に回避され得る。

また、コンタクトレンズ10における光学部18の光学中心(第一の度数領域24の外形中心28と略同位置)を装用眼の瞳孔中心線に安定して合わせることができてQOVの向上が図られ得ると共に、レンズ幾何中心16を装用眼の角膜中心に安定して合わせることができることから、良好なフィット感および装用感を得ることができる。

さらに、本実施形態のコンタクトレンズ10では、周辺部20における両厚肉部34a,34bの厚さ寸法差εがレンズ前面12の形状によって設定されることから、コンタクトレンズ10の製造が容易とされ得る。即ち、例えばコンタクトレンズ10が切削加工により製造される場合には、レンズ前面に対してのみ加工が施されることから、ワークのつかみ直し等に伴う加工誤差等が小さく抑えられて、QOVの向上が図られ得る。また、コンタクトレンズ10がモールド成形により製造される場合には、レンズ後面を形成する型数の種類を少なくすることができて、製造コストの削減や製造効率の向上が図られ得る。

次に、図8〜10には、本実施形態における別の態様のコンタクトレンズ42が示されている。前述の図1に示したコンタクトレンズ10では、周辺部20に形成された左右の厚肉部34a,34bの厚さ寸法を異ならせることにより、周辺部20の重心位置を偏倚させていたが、本態様では、左右の厚肉部34a,34bの幅寸法(図8中の上下方向寸法)を異ならせることにより、周辺部20の重心位置を右方に偏倚させている。なお、以降の説明において、第一の実施形態と同一の部材および部位には、図中に、第一の実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。

すなわち、一方の厚肉部34bの幅寸法Wb(図8参照)が他方の厚肉部34aの幅寸法Wa(図8参照)よりも大きくされている(Wa

また、図11〜13には、本実施形態における更に別の態様のコンタクトレンズ44が示されている。本態様では、周辺部20の径方向重心位置を異ならせることにより、重心位置ずれを相殺的に補正するように重心偏倚を設定している。特に、本態様では、レンズ幾何中心16からの左右の厚肉部34a,34bの径方向距離を異ならせることにより、周辺部20の径方向重心位置を右方に異ならせている。

すなわち、他方の厚肉部34aにおける周方向および径方向中央とレンズ幾何中心16との距離をDa(図11,13参照)、一方の厚肉部34bにおける周方向および径方向中央とレンズ幾何中心16との距離をDb(図11,13参照)とすると、Da

従って、上記の如き構造とされたコンタクトレンズ42,44においても、図1に示されたコンタクトレンズ10と同様の効果が発揮され得る。

次に、図14〜16には本発明の第二の実施形態としてのコンタクトレンズ46が示されている。本実施形態では、第一の度数領域24に設定される第一のレンズ度数としてプラスディオプターの近用レンズ度数が設定されている一方、第二の度数領域26に設定される第二のレンズ度数として第一のレンズ度数よりも度数の小さいプラスディオプターの遠用レンズ度数が設定されている。このように、ベース度数がプラスディオプターとされる場合には、前述の図5のk=0.000のグラフが示すように、Xwの数値は正を示して、即ち重心位置9はレンズ幾何中心5に対して鼻側(図14中の右方)にずれることとなる。

かかる重心位置ずれを補正するために、本実施形態では、左右の厚肉部34a,34bの厚さ寸法が異ならされている。即ち、第一のレンズ度数がプラスディオプターとされる場合には、前述の図6に示されるように、左右の厚肉部34a,34bの相対的な厚さ寸法差εが正の数値とされることから、一方の厚肉部34bの厚さ寸法Tb’(図16参照)に対して他方の厚肉部34aの厚さ寸法Ta’(図16参照)が大きくされている(Tb’

さらに、図17,18には、本実施形態の別の態様のコンタクトレンズ48,50が示されている。即ち、図17に示されるコンタクトレンズ48では、一方の厚肉部34bの幅寸法Wb’(図17参照)に対して他方の厚肉部34aの幅寸法Wa’(図17参照)が大きくされている(Wb’

従って、図14〜18に示される本実施形態のコンタクトレンズ46,48,50についても、第一の実施形態のコンタクトレンズ10と同様の効果が発揮され得る。

次に、図19〜21には、本発明の第三の実施形態としてのコンタクトレンズ52が示されている。本実施形態では、第一の度数領域24が近方視用とされる一方、第二の度数領域26が遠方視用とされて、第一及び第二のレンズ度数としてマイナスディオプターのレンズ度数が設定されている。そして、第一の度数領域24の外形中心28がγ(図19参照)だけレンズ幾何中心16から偏倚して、鉛直径線38上において、装用状態の下方に位置している。なお、好適には0.4mm≦γ、更に好適には0.5mm≦γ≦3.0mm、最も好適には0.5mm≦γ≦1.5mmとされて、本実施形態では、γ=1.0mmとされている。蓋し、γが0.4mmより小さいと、レンズ幾何中心16(5)からの光学部18(2)の光学中心の偏倚に伴う重心位置ずれ量が小さすぎて、周辺部20に設定される重心偏倚による補正効果を十分に得られないおそれがあるからである。

このように、マイナスディオプターとされたレンズ度数を有する第一の度数領域24がレンズ幾何中心16に対して下方に設定されることにより、重心位置9はレンズ幾何中心16(5)に対して上方にずれることとなる。そして、かかる重心位置ずれを補正するために周辺部20に対して重心偏倚が設定されており、本実施形態では、周辺部20の上下に設けられている薄肉部32a,32bの厚さ寸法が異ならされている。

すなわち、上方の薄肉部32aの厚さ寸法をSa(図20参照)、下方の薄肉部32bの厚さ寸法をSb(図20参照)とすると、Sa

さらに、図22,23には、本実施形態の別の態様としてのコンタクトレンズ54,56が示されている。図22に示されたコンタクトレンズ54では、周辺部20に設けられた上下の薄肉部32a,32bの幅寸法(図22中の左右方向寸法)が異ならされている。即ち、下方の薄肉部32bの幅寸法Vb(図22参照)に比して上方の薄肉部32aの幅寸法Va(図22参照)が大きくされている(Vb

従って、上記の如き構造とされた本実施形態のコンタクトレンズ52,54,56を採用することにより、コンタクトレンズが装用眼の角膜中心よりも下方で安定し易い人に対しても瞳孔中心線と第一の度数領域24の外形中心28とを効果的に位置合わせすることができると共に、レンズ幾何中心16を角膜中心に位置させやすいことから、第一の実施形態のコンタクトレンズ10と同様の効果が発揮され得る。

次に、図24,25には、本実施形態の第四の実施形態としてのコンタクトレンズ58が示されている。本実施形態では、第一の度数領域24が近方視用とされる一方、第二の度数領域26が遠方視用とされて、第一及び第二のレンズ度数としてプラスディオプターのレンズ度数が設定されている。そして、第一の度数領域24の外形中心28がレンズ幾何中心16からγだけ偏倚して、鉛直径線38上において、装用状態の下方に位置している。

このように、プラスディオプターとされたレンズ度数を有する第一の度数領域24がレンズ幾何中心16に対して下方に設定されることにより、重心位置9はレンズ幾何中心16(5)に対して下方にずれることとなる。そして、かかる重心位置ずれを補正するために周辺部20に対して重心偏倚が設定されており、本実施形態では、周辺部20の上下に設けられている薄肉部32a,32bの厚さ寸法が異ならされている。

すなわち、上方の薄肉部32aの厚さ寸法をSa’(図25参照)、下方の薄肉部32bの厚さ寸法をSb’(図25参照)とすると、Sb’

さらに、図26,27には、本実施形態の別の態様としてのコンタクトレンズ60,62が示されている。図26に示されたコンタクトレンズ60では、周辺部20において、上方の薄肉部32aの幅寸法Va’(図26参照)に比して上方の薄肉部32bの幅寸法Vb’(図26参照)が大きくされている(Va’

従って、上記の如き構造とされた本実施形態のコンタクトレンズ58,60,62においても、第一の実施形態のコンタクトレンズ10と同様の効果が発揮され得る。

次に、図28には、本実施形態の第五の実施形態としてのコンタクトレンズ64が示されている。本実施形態では、第一の度数領域24が近方視用とされる一方、第二の度数領域26が遠方視用とされて、第一及び第二のレンズ度数としてマイナスディオプターのレンズ度数が設定されている。そして、第一の度数領域24の外形中心28がレンズ幾何中心16から鼻側にδ、下方にγだけ偏倚している。このように、マイナスディオプターとされたレンズ度数を有する第一の度数領域24がレンズ幾何中心16に対して鼻側下方に設定されることにより、重心位置9はレンズ幾何中心16(5)に対して耳側上方にずれることとなる。そして、かかる重心位置ずれを補正するために周辺部20に対して重心偏倚が設定されている。

すなわち、本実施形態では、水平方向の重心位置ずれを相殺的に補正するために、周辺部20に設けられた左右の厚肉部34a,34bの厚さ寸法ta,tb(図示せず)が異ならされており、他方の厚肉部34aの厚さ寸法taに比して一方の厚肉部34bの厚さ寸法tbが大きくされている。また、鉛直方向の重心位置ずれを相殺的に補正するために、左右の厚肉部34a,34bにおける周方向および径方向中央が水平径線30からh(図28参照)だけ下方に位置している。

これにより、周辺部20にはレンズ幾何中心16に対する重心偏倚が設定されており、光学部18の光学中心のレンズ幾何中心16に対する偏倚に伴う重心位置ずれが、相殺的に補正されている。この結果、コンタクトレンズ64の重心位置40がレンズ幾何中心16に近づけられて、第一の実施形態のコンタクトレンズ10と同様の効果が発揮され得る。

[実施例] 実施例として、本発明に従う構造とされたコンタクトレンズを試作して、従来技術に従う構造とされたコンタクトレンズと比較することにより、本発明構造に従うコンタクトレンズが従来構造に従うコンタクトレンズに比して、重心位置がレンズ幾何中心に近づいているか、および装用時に所期の周方向位置で安定して装用されるかを確認した。なお、本発明構造に従う試験レンズとしては図1に示される構造のコンタクトレンズを採用する一方、従来構造に従う対照レンズとしては図31に示される構造のコンタクトレンズを採用した。また、それぞれのレンズ材料としてはasmofilcon Aを使用して、ベースカーブ(B.C.)を8.60mm、レンズ径(DIA.)を14.2mm、レンズ幾何中心から第一の度数領域の外形中心までの距離δを1.0mmとして設計した。更に、これらのコンタクトレンズはバイフォーカルレンズであり、それぞれベース度数である第二のレンズ度数を−5.00(D)とすると共に、付加度数として+2.00(D)を設定した。

そして、対照レンズをコンピュータ上で仮想的に作製して、ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社製「SolidWorks」で重心位置を算出したところ、重心位置はレンズ幾何中心に対して耳側にずれており、レンズ幾何中心から重心位置までの距離Xwは0.18(mm)であって、ずれ率Rwはおよそ1.3%であった。なお、この対照レンズにおける左右の厚肉部は同形状とされていることから、左右の厚肉部の相対的な厚さ寸法差εは0.000(mm)としている。

かかる形状とされた対照レンズの鼻側の厚肉部の厚さ寸法を大きくした試験レンズをコンピュータ上で仮想的に作製して、重心位置を算出した。なお、両厚肉部の相対的な厚さ寸法差εを設定する際の係数kとしては、k=0.003を採用して、耳側の厚肉部の厚さ寸法に対して鼻側の厚肉部の厚さ寸法を0.015(mm)だけ大きくした。この結果、試験レンズの重心位置はレンズ幾何中心に対して耳側にずれており、レンズ幾何中心から重心位置までの距離Xwは0.11(mm)であって、ずれ率Rwはおよそ0.8%であった。

以上のことから、対照レンズに対して試験レンズは、レンズ幾何中心からの重心位置のずれ率を小さくすることができて、重心位置が0.07(mm)だけレンズ幾何中心に近づいたことが確認できた。

また、これらの試験レンズおよび対照レンズを人眼に装用して、所期の周方向位置での安定性を確認した。なお、測定方法としては、対象者の両眼に試験レンズまたは対照レンズの同一レンズを各々装用させて、装用15分後に細隙灯顕微鏡により各レンズの周方向位置を測定した。かかる測定に際しては、各レンズの下方に鉛直方向に延びるガイドマークを付しており、このガイドマークの傾きを30秒ごとに5回測定して、その平均値を安定する周方向位置として算出した。かかるガイドマークの傾きは、鉛直方向下方を0°として、時計回り方向、即ち耳側への傾斜をプラスで示すと共に、反時計回り方向、即ち鼻側への傾斜をマイナスで示した。なお、測定は4名8眼で実施した。この結果を[表1]に示す。

上記[表1]中においては、対照レンズのガイドマークの傾きに対して、試験レンズのガイドマークの傾きが0°に近づいたものを太字で示している。即ち、試験を実施した8眼中少なくとも6眼において、本発明による効果を確認することができた。

以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、コンタクトレンズの周方向位置を設定する周方向位置合せ機構としてダブルスラブオフ構造が採用されていたが、例えば図29に示される如きペリバラスト構造であってもよい。即ち、コンタクトレンズ66の上方に薄肉部32aが設けられていると共に、水平径線30よりも下方の左右に厚肉部34a,34bが設けられていてもよい。そして、例えばこれらの厚肉部34a,34bのうちの一方の厚肉部(図29中では鼻側の厚肉部34b)が、他方の厚肉部よりも相対的に厚さ寸法を大きくされることにより、周辺部20に重心偏倚が惹起されて、光学部18の光学中心がレンズ幾何中心16から偏倚することに伴う重心位置ずれが相殺的に補正され得る。なお、図29に示されるコンタクトレンズ66の第一のレンズ度数はマイナスディオプターに設定されている。また、図示は省略するが、コンタクトレンズ66において、下方の厚肉部34a,34bの周方向間も、相対的に薄肉な領域とされる。

かかる周方向位置合せ機構としては、ダブルスラブオフ構造やペリバラスト構造の他、例えば光学部18と周辺部20とを含む領域に亘ってレンズ前後面12,14をずらして下方を厚肉にしたプリズムバラスト構造や、レンズの上下方向において少なくとも一方の端縁部を略弦方向に切除したトランケーション構造、またはこれらの形状が組み合わされた構造とされてもよい。なお、周方向位置合せ機構として、例えばペリバラスト構造やプリズムバラスト構造等、意図的に重心位置を偏倚させる構造が採用される場合には、当該重心偏倚効果が維持されるように、重心位置を補正することが好ましい。

また、前記実施形態では、光学部12の光学特性として二つの焦点を有するバイフォーカルレンズが採用されていたが、例えばレンズ度数が径方向で滑らかに又は漸次に或いは段階的に変化するプログレッシブやマルチフォーカル等のレンズであってもよい。なお、光学部に採用され得る光学特性としては、このような遠視や近視の矯正用の光学特性に限定されるものではなく、乱視矯正用の光学特性やコマ様収差度数分布を有する不正乱視矯正用の光学特性、非球面式やゼルニケ多項式を利用して収差をコントロールした光学特性、近視の進行を抑制する光学特性、或いはこれらの特性を組み合わせた各種特性が採用され得る。尤も、単一の焦点を有する単焦点レンズも採用され得るが、光学部に上記の如き光学特性が設定される場合には、単純な単焦点レンズに比べて重心の偏倚が惹起されやすいことから、重心位置ずれの補正効果が一層有益に享受され得る。

さらに、前記実施形態では、第一及び第二のレンズ度数として略一定のレンズ度数が採用されていたが、これらのレンズ度数は、例えば径方向で変化してもよい。また、例えば第一の度数領域と第二の度数領域との境界部分に、第一のレンズ度数と第二のレンズ度数の中間のレンズ度数が設定された中間領域が設けられてもよく、光学部の全体に亘ってレンズ度数が漸次にまたは段階的に変化するようにしてもよい。

更にまた、前記第一及び第二の実施形態では、一対の厚肉部34a,34bの一方に対して厚さ寸法を付加したり、幅寸法を大きくしたり、レンズ幾何中心16からの径方向距離を大きくしたりして周辺部20に重心偏倚を惹起していたが、両厚肉部34a,34bの形状は相対的に異なっていればよいことから、他方の厚肉部の厚さ寸法または幅寸法を小さくしたり、レンズ幾何中心16からの径方向距離を小さくする等してもよい。また、厚さ寸法差や幅寸法差、レンズ幾何中心16からの径方向距離差を左右の厚肉部34a,34bで分配するようにしてもよい。前記第三及び第四の実施形態についても同様であり、一対の薄肉部32a,32bの一方だけでなく、他方或いはその両方に対して厚さ寸法差や幅寸法差等を設定してもよい。

さらに、例えば上記の如き本発明に係るコンタクトレンズを複数種類組み合わせてコンタクトレンズセットを構成してもよい。このコンタクトレンズセットは、光学部18に設定される矯正用のレンズ度数における規格値としてのベースパワーが異なる複数種類のコンタクトレンズを組み合わせることにより構成される。そして、かかるコンタクトレンズセットを構成するそれぞれのコンタクトレンズにおいては、光学部18(特に第二の度数領域26)に設定されるパワーと重心位置ずれの大きさが略対応することから、光学部18に設定されるパワーと周辺部20に設定される、重心位置ずれを補正するために必要な重心偏倚の大きさとを対応させることができる。このように、設定度数(パワー)と重心偏倚の大きさを対応させることにより、光学部18と周辺部20の組み合わせ数、即ちコンタクトレンズセットを構成するコンタクトレンズの種類数が過剰に多くなることが避けられるし、管理等も効率的に行うことができる。

なお、前記実施形態に記載のコンタクトレンズ10,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66には、レンズの左右や上下を判別するためのガイドマーク等が付されることが好ましい。かかるガイドマークはレンズの鼻側下方や耳側下方等に、印刷等によって形成され得て、直線状や点状等の各種形状が採用され得る。

また、本発明に従って重心位置ずれを補正するに際しては、ディセンタ設定による重心位置ずれを必ずしもゼロにする必要はなく、レンズの重心位置をレンズ幾何中心に近づける補正を行うことにより、前述の如き本発明の効果が発揮され得る。

さらに、前記実施形態では、光学部18の光学中心がレンズ幾何中心16に対して左右方向(図中では右方)または鉛直方向下方に偏倚していたが、コンタクトレンズは重力等の作用により瞳孔中心よりも下方で安定し易いことから、瞳孔中心と光学中心を近づけることを目的として光学中心がレンズ幾何中心16に対して鉛直方向上方に偏倚しているディセンタタイプのコンタクトレンズが採用されてもよい。かかるコンタクトレンズにおいても、光学中心のレンズ幾何中心16に対する偏倚に伴う重心位置ずれが惹起されることから、周辺部20の重心偏倚による相殺的な重心位置の補正により、重心位置40をレンズ幾何中心16に近づけることができて、コンタクトレンズ装用時に当初の設定位置に近づけることができる。

また、前記実施形態における厚肉部34a,34bの少なくとも一方に対して、図30に示されているように、凹部68が設けられてもよい。このような凹部68が設けられることにより、周辺部20にレンズ幾何中心16に対する重心偏倚を設定することができて、光学部18の光学中心の偏倚に伴う重心位置ずれが相殺的に補正され得る。なお、図30では、例えば図1に示されるコンタクトレンズ10の左側に位置する半周の、レンズ幾何中心16から適当な径方向距離におけるレンズ前面12の厚さ寸法の変化が示されている。即ち、最左端を上側、最右端を下側としており、耳側の厚肉部34aに凹部68が設けられている。一方、鼻側の厚肉部34bにはかかる凹部68が設けられなくてもよいし、凹部68の深さ寸法αを小さくしたり、周方向寸法βを小さくしたりしてもよい。

更にまた、前記実施形態では、装用状態でのレンズ周方向位置を設定するための周方向位置合せ機構を利用して周辺部20の重心偏倚が設定されていたが、周辺部20における重心偏倚の設定手段は周方向位置合せ機構とは別の構成で設けられていてもよい。

10,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66:コンタクトレンズ(ディセンタタイプのコンタクトレンズ)、12:レンズ前面、14:レンズ後面、16:レンズ幾何中心、18:光学部、20:周辺部、32a,32b:薄肉部、34a,34b:厚肉部、40:重心位置

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