Contact lenses or intraocular lenses and methods for their preparation

申请号 JP2003514332 申请日 2002-07-18 公开(公告)号 JP2004536343A 公开(公告)日 2004-12-02
申请人 オキュラー サイエンシス インコーポレイテッド; 发明人 ニコラ シャトー; ブルーノ フェルミジエール; リシャール レグラ;
摘要 【課題】近視性又は遠視性、及び/又は老眼性が考えられる乱視に起因する視 力 を矯正するためのコンタクトレンズ又は眼内レンズを提供する。
【解決手段】 角 度ずれ許容度を改善する光路を各々が作り出す1つ又はそれ以上の新規な構成を特徴とする補正部分を有するトーリックコンタクトレンズ又は眼内レンズ。 レンズ(1)は、レンズの補正部分(5)を通る光路が非点収差及び非点収差以外の軸対称収差の両方を補正し、異なる補正をもたらす領域間に何の急激な表面不連続性も存在しない(すなわち、「滑らかである」)「滑らかな非トーリック」態様で構成することができる。 別の実施形態においては、レンズの補正部分(5)を通る光路が基準経線平面(8)からの角度分離の関数として変化するように、かつ補正部分が異なる収差補正軸線を有する少なくとも2つの領域(10、11)に分割されるように、レンズ(1)は、光軸(2)の周りに円周方向に配置されたいわゆる「セクター」を用いて構成することができる。 いずれの実施形態においても、補 正面 は、レンズの前面(3)及び後面(4)のいずれか一方又は両方上に設けることができ、角度変位がある場合のレンズの光学性能(角度ずれ許容度)は増大される。 具体的には、角度ずれ許容度は、同じ部類の標準トーリックレンズよりも少なくとも30%増大される。 レンズの特定形状を規定することは、その形状の成形ダイを形成することを可能にし、あるいは、レンズを機械加工する工具を使用することができる。
【選択図】図3
权利要求
  • 近視性又は遠視性、及び/又は老眼性が考えられる乱視眼の視力を矯正するために光軸(2)及び基準経線(8)を備えた補正部分(5)を含むコンタクトレンズ又は眼内レンズであって、
    非点収差のみを補正するために、光軸(2)に対する距離(h)の関数として及び基準経線(8)に対する角度分離(θ)の関数として変化する光路が、少なくともこの距離が0.4mmと2.4mmの間である時に、次式:
    δ A (h,θ)=δ トーリック (h,θ)+δ 非トーリック (h,θ)
    に従って導入され、上式において、
    ・δ トーリック (h,θ)は、放物線近似法に従って、式δ トーリック (h,θ)=C/2h 2 sin 2 (θ−Φ)を満たす円柱光路であり、ここで、Φは、前記基準経線に対する角度分離で表された目の非点収差を補正するために要する軸線、及びCは、前記目の非点収差を補正するために要する円柱値であり、
    ・δ 非トーリック (h,θ)は、hが一定の時、周期2πでθの関数として、sin 2 (θ−Φ)とは異なる仕方で変化する光路であって、この光路は、更に、次の条件:
    ΔΦ'≧1.3ΔΦ
    を満たし、この不等式において、
    ・ΔΦは、変数xの変動範囲[−1/2ΔΦ,1/2ΔΦ]の振幅であり、この振幅は、この区間で取られるxの任意の値に対して次の条件:
    MTFa[δ トーリック (h,θ−x)−δ トーリック (h,θ)]≧MTFa[0.25h 2 /2]
    が証明されるような振幅であり、
    ・ΔΦ'は、変数xの変動範囲[−1/2ΔΦ',1/2ΔΦ']の振幅であり、この振幅は、この区間で取られる任意の値に対して次の条件:
    MTFa[δ A (h,θ−x)−δ トーリック (h,θ)]≧MTFa[0.25h 2 /2]
    が証明されるような振幅であり、
    表記MTFa[f(h,θ)]は、光路f(h,θ)に対して、次式:
    により4と7mmの間の所定の瞳孔径に対してこの光路により作り出された変調伝達関数から計算された光学品質の判断規準を示し、上式において、ν及びχは、角空間周波数平面の極座標であって、νはサイクル/度、χは度で表され、MTF[f(h,θ)](ν,χ)は、前記極座標による光路f(h,θ)の変調伝達関数である、
    ことを特徴とするレンズ。
  • 前記項δ A (h,θ)は、次式:
    を満たし、上式において、
    ・Nは、整数の集合であり、
    ・β i (h)は、次の条件:
    を満たす関数の集合であり、上式において、N'は、0及び2を除外したNに等しく、h min及びh maxは、それぞれ、非点収差を補正するために設けられた補正部分(5)の区域の光軸(2)に対する最小距離及び最大距離である、
    ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
  • 前記関数β i (h)の各々は、
    α iをi∈Nに対する一定の係数とすると、
    次式:
    β i (h)=h 2 α i /2
    を満たす、
    ことを特徴とする請求項2に記載のレンズ。
  • 前記光路δ A (h,θ)は、次式:
    δ A (h,θ)={(C+c)h 2 sin 2 (θ−Φ+η)}/2
    を満たし、上式において、θ−Φが0°と180°の間である時、ηはψに等しく、θ−Φが180°と360°の間である時、ηは−ψに等しく、c及びψは、所定の定数である、
    ことを特徴とする請求項3に記載のレンズ。
  • 前記定数c及びψは、Cの値に応じて、C+cが±0.125ジオプトリー(D)及びψが±1°の時に、下表:
    すなわち、
    により与えられる値を有する、
    ことを特徴とする請求項4に記載のレンズ。
  • 前記定数c及びψは、Cの値に応じて、C+cが±0.125ジオプトリー(D)及びψが±1°の時に、下表:
    すなわち、
    により与えられる値を有する、
    ことを特徴とする請求項4に記載のレンズ。
  • 前記定数cは、ゼロに等しく、
    前記定数ψは、±1°に対して、次式:
    ψ=114/(C.DP)
    により与えられる値をとり、上式において、DPは、ミリメートル(mm)で表した瞳孔径であり、ψは度(°)、及び、Cはジオプトリー(D)で表される、
    ことを特徴とする請求項4に記載のレンズ。
  • 前記光路δ A (h,θ)は、次式:
    δ A (h,θ)={(C+c)h 2 sin 2 (θ−Φ+η)}/2
    を満たし、上式において、θ−Φが0°と90°の間、及び180°と270°の間である時、ηはψに等しく、θ−Φが90°と180°の間、及び270°と360°の間である時、ηは−ψに等しく、c及びψは、所定の定数である、
    ことを特徴とする請求項3に記載のレンズ。
  • 前記定数c及びψは、Cの値に応じて、C+cが±0.125ジオプトリー(D)及びψが±1°の時に、下表:
    すなわち、
    により与えられる値を有する、
    ことを特徴とする請求項8に記載のレンズ。
  • 前記定数c及びψは、Cの値に応じて、C+cが±0.125ジオプトリー(D)及びψが±1°の時に、下表:
    すなわち、
    により与えられる値を有する、
    ことを特徴とする請求項8に記載のレンズ。
  • 前記定数cは、ゼロに等しく、
    前記定数ψは、±1°に対して、次式:
    ψ=90/(C.DP)
    により与えられる値をとり、上式において、DPは、ミリメートル(mm)で表した瞳孔径であり、ψは度(°)、及び、Cはジオプトリー(D)で表される、
    ことを特徴とする請求項8に記載のレンズ。
  • 前記項δ A (h,θ)は、次式:
    を満たし、上式において、
    ・Eは、0から始まる整数を含む有限集合であり、
    ・β i (h)は、以下の条件:
    を満たす関数の集合であり、上式において、E'は、0及び2を除外したEに等しく、h min及びh maxは、それぞれ、非点収差を補正するために設けられた補正部分(5)の区域の光軸(2)に対する最小距離及び最大距離である、
    ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
  • 前記関数β i (h)の各々は、次式:
    β i (h)=h 2 α i /2
    を満たし、上式において、
    i∈Eに対して一定の係数である、
    ことを特徴とする請求項12に記載のレンズ。
  • 前記集合Eは、0から10までの整数を含み、
    前記係数α iは、Cの関数として、それらが以下の不等式:
    を満たすような値を有し、係数α i 'は、下表:
    すなわち、
    および、
    で与えられる値を有する、
    ことを特徴とする請求項13に記載のレンズ。
  • 前記集合Eは、0から10までの整数を含み、
    前記係数α iは、Cの関数として、それらが次の不等式:
    を満たすような値を有し、係数α i 'は、下表:
    すなわち、
    および、
    で与えられる値を有する、
    ことを特徴とする請求項13に記載のレンズ。
  • 前記集合Eは、0から10までの整数を含み、
    前記係数α iは、Cの関数として、それらが次の不等式:
    を満たすような値を有し、係数α i 'は、下表:
    すなわち、
    および、
    で与えられる値を有する、
    ことを特徴とする請求項13に記載のレンズ。
  • 前記集合Eは、0から10までの整数を含み、
    前記係数α iは、Cの関数として、それらが次の不等式:
    を満たすような値を有し、係数α i 'は、下表:
    すなわち、
    および、
    で与えられる値を有する、
    ことを特徴とする請求項13に記載のレンズ。
  • 前記関数β i (h)の各々は、次式:
    β i (h)=h 2 α i,j /2
    を満たし、上式において、jは、hの関数として段階的に変わる整数であり、各α i jは、i及びjが何であるかに拘わらず、所定の一定の係数である、
    ことを特徴とする請求項12に記載のレンズ。
  • 前記関数β i (h)の各々は、次式:
    を満たし、上式において、Mは所定の整数であり、各α i jは、i及びjが何であるかに拘わらず、所定の一定の係数である、
    ことを特徴とする請求項12に記載のレンズ。
  • 全体として、少なくとも0.4mmと2.4mmとの間に位置するhに対して、δ 0を任意の定数とする次式:
    δ(h,θ)=δ 0 +δ A (h,θ)
    を満たす光路δ(h,θ)が導入されることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のレンズ。
  • 全体として、少なくとも0.4mmと2.4mmとの間に位置するhに対して、
    次の不等式:
    δ inf (h,θ)≦δ(h,θ)≦δ sup (h,θ)
    を満足する光路δ(h,θ)が導入され、
    δ inf (h,θ)及びδ sup (h,θ)は、それぞれ、次式:
    δ inf (h,θ)=δ 0 +δ S (h)+δ P (h)+δ A (h,θ)−0.09h 2
    δ sup (h,θ)=δ inf (h,θ)+0.18h 2
    を満足し、これらの式において、h及び全てのδはメートル(m)で表され、
    ・δ S (h)は、球面補正の場合は、その補正のために準備される光路であって、次式:
    δ S (h)=P VL2 /2
    を満たし、この式において、P VLは、前記目の近視又は遠視を矯正するために必要とされる球面屈折力であって、ジオプトリー(D)で表され、
    ・δ P (h)は、連続的同時視力矯正の場合は、その補正のために準備される光路であって、次式;
    を満たし、一連の係数γ 2kは、以下に記す係数の9つのリスト(SA、SB、SC、MA、MB、MC、LA、LB、LC):
    すなわち、
    および、
    および、
    のうちのそれぞれにより規定される、
    ことを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のレンズ。
  • 全体として、少なくとも0.4mmと2.4mmとの間に位置するhに対して、次の不等式:
    δ inf (h,θ)≦δ(h,θ)≦δ sup (h,θ)
    を満足する光路δ(h,θ)が導入され、
    δ inf (h,θ)及びδ sup (h,θ)は、それぞれ、次式:
    δ inf (h,θ)=δ 0 +δ S (h)+δ P (h)+δ A (h,θ)−0.09h 2
    δ sup (h,θ)=δ inf (h,θ)+0.18h 2
    を満足し、これらの式において、h及び全てのδはメートル(m)で表され、
    ・δ S (h)は、球面補正の場合は、その補正のために準備される光路であって、次式:
    δ S (h)=P VL2 /2
    を満たし、この式において、P VLは、前記目の近視又は遠視を矯正するために必要とされる球面屈折力であって、ジオプトリー(D)で表され、
    ・δ P (h)は、連続的同時視力矯正の場合は、その補正のために準備される光路であって、次式;
    を満たし、ここで、P AADは、レンズの装着者が近くを見るために要するジオプトリー(D)で表された追加量であり、一連の係数γ 2kは、以下に記す9つのリスト(SA、SB、SC、MA、MB、MC、LA、LB、LC):
    すなわち、
    および、
    および、
    のうちのそれぞれにより規定される、
    ことを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のレンズ。
  • 請求項1から請求項22のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ又は眼内レンズの調製方法であって、
    a)レンズの補正部分により導入されるべきである光路を判断する段階と、
    b)前記レンズの装着者に最適な快適さをもたらすために、前記補正部分の後面の形状を一連の所定の形状から選択する段階と、
    c)段階b)において後面に対して選ばれた前記形状から、及び、段階a)において判断された前記光路から始めて、前記補正部分の前面の形状を判断する段階と、
    d)そのように判断された前記前面及び後面を呈する前記補正部分を有する前記レンズを製造する段階と、
    を含むことを特徴とする方法。
  • 請求項1から請求項22のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ又は眼内レンズの調製方法であって、
    a)レンズの補正部分により導入されるべきである光路を判断する段階と、
    b)前記補正部分の前面の形状を一連の所定の形状から選択する段階と、
    c)段階b)において前面に対して選ばれた前記形状から、及び、段階a)において判断された前記光路から始めて、前記補正部分の後面の形状を判断する段階と、
    d)そのように判断された前記後面及び前面を呈する前記補正部分を有する前記レンズを製造する段階と、
    を含むことを特徴とする方法。
  • 光軸及びこれと垂直な基準経線を形成し、更にほぼ凸面の前面及びほぼ凹面の後面を有し、乱視眼の視力を矯正するための部分を含むコンタクトレンズ又は眼内レンズであって、
    前面及び後面のうちの一方は、レンズの補正部分を通る光路が基準経線からの角度分離の関数として変化するという点で非点収差を補正するように成形され、
    前記補正部分は、異なる非点収差補正軸線を有する少なくとも2つのセクターに分割され、
    同じ部類の標準トーリックレンズよりも少なくとも約30%増加した角度ずれ許容度を更に有する、
    ことを特徴とするレンズ。
  • 前記補正部分は、全体的に、約0.4mmと2.4mmの間の半径を有する前記光軸を中心とした円内に形成されることを特徴とする請求項25に記載のレンズ。
  • 前記2つのセクターは、前記光軸を通過する線により分離され、前記目の非点収差を補正するのに必要な名目上の軸線となる角度Φだけ前記基準経線に対して角度が合わせられることを特徴とする請求項25に記載のレンズ。
  • 前記2つのセクターの各々は、Φとは異なる非点収差補正軸線を有することを特徴とする請求項27に記載のレンズ。
  • ゼロと異なるψに対して、前記2つのセクターの一方は、Φ−ψに等しい非点収差補正軸線を有し、前記2つのセクターの他方は、Φ+ψに等しい非点収差補正軸線を有することを特徴とする請求項28に記載のレンズ。
  • 前記補正部分は、4つのセクターに分割され、そのうちの少なくとも2つは、異なる非点収差補正軸線を有することを特徴とする請求項25に記載のレンズ。
  • 前記4つのセクターは、前記光軸を挟んで正反対に位置するセクターの2つの対を形成するように、前記光軸で交差する2つの直交線により分離され、前記直交線の一方は、角度Φだけ前記基準経線に対して角度的に合わせられることを特徴とする請求項30に記載のレンズ。
  • 前記光軸を挟んで正反対に位置するセクターの各対は、等しい非点収差補正軸線を有することを特徴とする請求項31に記載のレンズ。
  • ゼロと異なるψに対して、前記セクターのうちの2つは、Φ−ψに等しい非点収差補正軸線を有し、他の2つのセクターは、Φ+ψに等しい非点収差補正軸線を有することを特徴とする請求項32に記載のレンズ。
  • 前面及び後面を有し、光軸及びこれと垂直な基準経線を形成し、乱視眼の視力を矯正するための部分を含むコンタクトレンズ又は眼内レンズであって、
    前面及び後面の少なくとも一方は、純粋にはトーリックではない非軸対称形状を有し、
    レンズの補正部分を通る光路の分布は、
    非点収差の補正を特徴付ける光路と、
    非点収差以外の非軸対称収差を特徴付ける光路と、
    を少なくとも含むいくつかの光路の総和であり、
    同じ部類の標準トーリックレンズよりも少なくとも約30%増加した角度ずれ許容度を更に有する、
    ことを特徴とするレンズ。
  • 前記前面のみが、非軸対称であることを特徴とする請求項34に記載のレンズ。
  • 前記後面のみが、非軸対称であることを特徴とする請求項34に記載のレンズ。
  • 前記前面及び後面の両方が、非軸対称であることを特徴とする請求項34に記載のレンズ。
  • レンズの前記補正部分を通る前記光路はまた、球面誤差を補正することを特徴とする請求項34に記載のレンズ。
  • レンズの前記補正部分を通る前記光路はまた、老眼に対する多焦点補正を含む ことを特徴とする請求項34に記載のレンズ。
  • レンズの前記補正部分を通る前記光路はまた、老眼に対する連続屈折力補正を含むことを特徴とする請求項34に記載のレンズ。
  • レンズの前記補正部分を通る前記光路はまた、コマ様の収差を補正することを特徴とする請求項34に記載のレンズ。
  • 说明书全文

    【技術分野】
    【0001】
    本発明は、近視性又は遠視性、及び/又は老眼性が考えられる乱視に起因する視を矯正するためのコンタクトレンズ又は眼内レンズに関する。
    【背景技術】
    【0002】
    近視又は遠視は、一般的に、曲率中心がレンズの光軸上にあるべきである球面により矯正されることが公知であり、為される矯正を規定するために通常使用されるパラメータは、一般に「球面値」と呼ばれる導入された球面屈折力である。
    また、老眼の矯正は、連続的同時視力矯正をもたらす複合面により有利に達成されることも公知であり、この連続的同時視力矯正は、いくつかの画像が網膜上に同時に形成されて、皮質による選別の結果として有用な画像が選択されるように、その球面屈折力が、矯正区域の中心と周辺部との間で微妙に(急激にではなく)変化する矯正である。
    【0003】
    また、乱視の矯正は、一般的に、矯正される目の経線平面、つまりこの目の光軸を含む平面に沿って左右対称平面が方向付けされるべきであるトーリック面により達成されることも公知であり、為される矯正を規定するために通常使用されるパラメータは、一方では、トーリック面が方向付けられるべき経線平面とレンズ装着者が立っている時の平経線平面に相当する基準経線平面との間の、通常は矯正の「軸線」と呼ばれる度分離であり、他方では、通常「円柱値」と呼ばれる導入された円柱屈折力である。
    【0004】
    コンタクトレンズのトーリック面を目に対して正しい位置に保持するために、目に対するレンズの角度を安定させる手段が設けられるべきであり、これらの手段としては、特に、重量によりレンズを定位置に維持することを可能にするバラストプリズム、又は、レンズが永久的に正しい位置に保たれるように瞼の瞬きにより生じる動的効果を利用する仏国特許第2,760,853号に説明されたようなボスがあり、又は、ここでもまた、米国特許第4,095,878号に説明されたように、目の垂直方向に対応すべき方向に沿ってレンズの上部及び下部を連続的に薄く又は軽くすることができ、又は、米国特許第4,324,461号に説明されたようなレンズの上部部分にバラスト及び軽量化を含む安定化手段がある。 これら全ての安定化手段は、バラストプリズムを除いて、矯正される目の瞳孔の高さにおけるレンズの中心、例えばレンズの光軸を中心とした半径4mmの円内に位置するコンタクトレンズの補正部分の外側に置かれる。
    【0005】
    これらの角度安定化手段の各々は、良好な結果をもたらし、コンタクトレンズは、全体的に正しい向きを保つ。 しかし、経時的にレンズが確実に取る異なる向きの平均値は、目標とする値に対応するが、この平均値に対する向きの変化の振幅は、時としてその角度変位が光学性能を大きく低下させるような振幅である。
    角度安定化に関するこのような問題は、半径方向に突出する保持用フックを備えた目の中の内部インプラントの形態に作られた眼内レンズにあっては生じないが、それにもかかわらず、インプラントの配置中に公称位置からの角度変位を生じる可能性がある。
    【0006】
    角度変位を補正するために、米国特許第5,570,143号は、球面収差を防止するために通常使用される技術をトーリックレンズに適用することを提案しており、この技術は、被写界深度を改善する効果を有し、提案されたトーリックレンズは、少なくとも1つの表面の上に、角度的配置分離の光学的効果を補正するのに十分なほど高いと思われる球面屈折力を有する被写界深度の効果を生じる光学的トポグラフィーを呈する。
    【0007】
    米国特許第5,652,638号は、被写界深度を改善するための従来的技術が同心リングで置換されることを除けば、同様の解決方法を提案している。
    米国特許第5,796,462号は、経線が円ではなく球面収差を防止するために使用される古典的な円錐形状の部類に属する曲線である一方の表面を有するトーリック型であるレンズにより被写界深度効果を得ることを提案している。 レンズの他方の面は、球面であるか又は同心リングを有する。
    【0008】
    【特許文献1】
    仏国特許第2,760,853号【特許文献2】
    米国特許第4,095,878号【特許文献3】
    米国特許第4,324,461号【特許文献4】
    米国特許第5,570,143号【特許文献5】
    米国特許第5,652,638号【特許文献6】
    米国特許第5,796,462号【非特許文献1】
    M・ボルン及びE・ウルフ著「光学の原理」、第6版、編集パーガモン・プレス、480頁、1980年【非特許文献2】
    P・Z・モロリス及びX・チェン著「光工学」、33:2626−2631、1994年【非特許文献3】
    D・A・アチソン他著「目の主観的焦点深度」、「Optom.Vis.Sci.」、74:511−520、1997年【発明の開示】
    【発明が解決しようとする課題】
    【0009】
    従って、トーリック型コンタクトレンズ又は眼内レンズの角度変位の影響を低減することが必要である。
    【課題を解決するための手段】
    【0010】
    本発明は、1つ又はそれ以上の新規な構成により特徴付けられた補正部分を設けることにより、トーリックコンタクトレンズ又は眼内レンズに対する角度変位の影響を低下させることを意図している。 慣習に従って、「光路」という用語は、光軸上の無限遠に置かれた点光源から発せられた光線上に置かれたレンズにより導入される光路の相違を表す。
    一実施形態においては、レンズは、レンズの補正部分を通る光路が非点収差及び非点収差以外の軸対称収差の両方を補正し、何の急激な表面不連続性も存在しない(すなわち、「滑らかである」)「滑らかな非トーリック」態様で構成することができる。 別の実施形態においては、レンズの補正部分を通る光路が基準経線平面からの角度分離の関数として変化するように、かつ補正部分が異なる収差補正軸線を有する少なくとも2つの領域に分割されるように、レンズは、光軸の周りに円周方向に配置されたいわゆる「セクター」を用いて構成することができる。 いずれの実施形態においても、補正面は、レンズの前面及び後面のいずれか一方又は両方上に設けることができ、角度変位がある場合のレンズの光学性能(角度ずれ許容度)は増大される。 具体的には、角度ずれ許容度は、同じ部類及び同じ条件(すなわち、同じ円柱及び瞳孔直径)の標準トーリックレンズよりも少なくとも30%増大される。
    【0011】
    本発明のコンタクトレンズ又は眼内レンズは、補正部分を通る目標とする光路により最も良く説明され、そのような光路を作り出すための補正部分を構成するいくつかの方法が存在することが当業者には理解されるであろう。 例えば、レンズの特定形状を規定することは、その形状の成形ダイを形成することを可能にする。 レンズを機械加工する工具を使用することもできる。 製造方法が何であれ、本発明は、特定の光路を有するように形成されたレンズを包含するものである。
    【0012】
    この目的のために、本発明は、近視性又は遠視性、及び/又は老眼性が考えられる乱視眼の視力を矯正するために光軸及び基準経線を備えた補正部分を含むコンタクトレンズ又は眼内レンズを提供し、本レンズは、非点収差のみを補正するために、光軸に対する距離の関数として及び基準経線に対する角度分離の関数として変化する光路を、少なくともこの距離が0.4mmと2.4mmの間である時に、次式:
    δ A (h,θ)=δ トーリック (h,θ)+δ 非トーリック (h,θ)
    に従って導入することを特徴とし、上式において、
    ・δ トーリック (h,θ)は、放物線近似法に従って、式δ トーリック (h,θ)=C/2h 2 sin 2 (θ−Φ)を満たす円柱光路であり、ここで、Φは、上述の基準経線に対する角度分離として表された目の非点収差を補正するために要する軸線、及びCは、この目の非点収差を補正するために要する円柱値であり、
    ・δ 非トーリック (h,θ)は、hが一定の時、周期2πでθの関数として、sin 2 (θ−Φ)とは異なる仕方で変化する光路であって、この光路は、更に、30%増大された「角度ずれ許容度」を表す条件:
    ΔΦ'≧1.3ΔΦ
    を満たし、この不等式において、
    ・ΔΦは、変数xの変動範囲[−1/2ΔΦ,1/2ΔΦ]の振幅であり、この振幅は、この区間のxの任意の値に対して下記条件:
    MTFa[δ トーリック (h,θ−x)−δ トーリック (h,θ)]≧MTFa[0.25h 2 /2]
    が正しいことが証明されるような振幅であり、
    ・ΔΦ'は、変数xの変動範囲[−1/2ΔΦ',1/2ΔΦ']の振幅であり、この振幅は、この区間の任意の値に対して下記条件:
    MTFa[δ A (h,θ−x)−δ トーリック (h,θ)]≧MTFa[0.25h 2 /2]
    が正しいことが証明されるような振幅である。
    【0013】
    表記MTFa[f(h,θ)]は、光路f(h,θ)に対して、次式により4と7mmの間の所定の瞳孔径に対してこの光路により作り出された変調伝達関数から生じた計算光学品質判断規準を示す。
    【0014】

    【0015】


    上式において、ν及びχは、角周波数平面の極座標であって、νはサイクル/度、χは度で表され、MTF[f(h,θ)](ν,χ)は、この極座標による光路f(h,θ)の変調伝達関数である。


    【0016】


    ここでもまた、上記で使用され、より一般的に本明細書において使用される「光路」という表現は、より具体的には、光軸上の無限遠に置かれた点光源から発せられた光線上に置かれたレンズにより導入された光路の相違を指し、従って、このレンズにより導入される位相シフトφは、本明細書の意味においては、次の関係:


    φ=2πδ/λ


    により光路δに結び付けられ、ここで、λは光線の波長、δ及びφの負の値は、光波上に導入される遅れに対応し、正の値は、進みに対応する。


    【0017】


    当然のことながら、この光路は、可視光線範囲内の波長、特に基準波長550×10

    -9 mに対して有効である。


    実際には、φ(h,θ)、及び、より一般的には、レンズにより導入された位相シフト又は光路は、干渉分光法により、又は光学位相シフトを測定する別の方法により判断することができ、又は、それらは、シャック・ハートマン分析器又は別の種類の波面分析器を用いて達成されるレンズから発せられた波面の分析から得ることができる。


    【0018】


    変調伝達関数「MTF」は、公知のアルゴリズムに従って、位相シフト又は所定の瞳孔サイズに対する光路から計算することができる(参考文献:M・ボルン及びE・ウルフ著「光学の原理」、第6版、編集パーガモン・プレス、480頁、1980年)。 上述の式に従って「MTF」を積分することにより計算される「MTFa」は、光学システムの性能をこのシステムが生み出す画像の主観的品質と良好に相関させて特徴付けることを可能にする数値的判断基準である(参考文献:P・Z・モロリス及びX・チェン著「光工学」、33:2626−2631、1994年)。


    【0019】


    0.25h

    2 /2の項は、0.25ジオプトリー(D)の焦点ぼけに相当するということに注意すべきである。 上記の「MTFa」閾値は、0.25Dの純粋球面不良を考える時に得られる値として選択される。 6mmレンズでの0.25Dの焦点ぼけは、レンズの装着者がちょうど検知することができる焦点ぼけであると仮定される(D・A・アチソン他著「目の主観的焦点深度」、「Optom.Vis.Sci.」、74:511−520、1997年)。 従って、「MTFa」の対応する値は、最小許容値として選択される。 本発明によれば、この閾値は、非点収差を補正するためのレンズの容認することができる角度許容値の定義を可能にする。


    【0020】


    上述の米国特許第5,570,143号、第5,652,638号、及び第5,796,462号の各々において、古典的トーリックレンズに関して提案された変更は、1つの表面の形状の半径方向依存性、すなわち変数hによる依存性に関するものであり、他方、本発明は、角度依存性(変数θ)にのみ、又は、これと半径方向依存性との組合せに関して考えることを提案していることに注意すべきである。


    より具体的には、古典的トーリックレンズに対する変更(この変更は、δ

    トーリックにより表される)は、hが一定のままでθが変化する時、δ

    非トーリック (h、θ)が一定のままではなく、360°(2π)というθの周期でsin

    2 (θ−Φ)とは異なる仕方で変動するような変更である。


    すなわち、本発明によるレンズにおいては、非軸対称成分は、全てトーリックであるというわけではない。


    【0021】


    更に、米国特許第5,570,143号、第5,652,638号、及び第5,796,462号の各々は、従来のトーリックレンズに対して行われた変更を専ら屈折力に基づいて定量化しているという点に注意すべきである。


    これに対して、本発明によれば、古典的トーリックレンズに関して為される変更は、屈折力判断基準に基づいてではなく、「MTFa」により表される光学品質判断基準に基づいて評価される。


    これまで「MTFa」は光学器械のために使用され、目及びレンズにより形成されるシステムのためには使用されなかったという点に注意すべきである。


    【0022】


    第1の好ましい実施形態によれば、項δ

    A (h,θ)は次式を満たす。


    【0023】


    【0024】


    上式において、


    ・Nは、整数の集合であり、


    ・β

    i (h)は、次の条件を満たす関数の集合である。


    【0025】


    【0026】


    上式において、N'は、0及び2を除外したNに等しく、h

    min及びh

    maxは、それぞれ、非点収差を補正するために設けられた補正部分の区域の光軸に対する最小距離及び最大距離である。


    δ

    A (h,θ)は、従って、余弦関数によるそのフーリエ級数分解に従って表されることに注意すべきである。 実際には、この級数は収束級数であるから、Nは、ゼロから数十までの整数で例えることができる。


    【0027】


    β

    i (h)が、h

    2 α

    i /2の型である場合には、α

    iが定数であるならば、以下の項はα

    iに相当する。


    【0028】


    【0029】


    他方、α

    iが定数でないならば、上記の項は、hの変動範囲に亘るα

    iの重み付け平均値に相当することに注意すべきである。


    【0030】


    指数i=0及びi=2に対する関数δ

    A (h,θ)の成分が、協働して球面円柱型の補正を表すとすれば、i=0及びi=2に対するもの以外の平均係数α

    iの2乗の和が0とは異なるという事実は、本発明によるレンズにより提供される補正が、トーリック以外つまり非トーリック補正により得られる非軸対称成分を含むという事実として特徴的なことである。


    この総和に対する0.005m

    -2という値は、実験により判断される最小閾値に対応し、大きな光学効果を得るためには、この値よりも大きな値を使用することが好ましい。


    【0031】


    その単純さのために好ましい構造的形状において、関数β

    i (h)の各々は、


    α

    iをi∈Nに対する一定の係数とすると、


    次式:


    β

    i (h)=h

    2 α

    i /2


    を満たす。


    補正が純粋に球面円柱であったとすれば、P

    VLを球面屈折力とすると、


    α

    0 =P

    VL +C/2


    α

    2 =−C/2


    であることに注意すべきである。


    【0032】


    この構造的形状の第1の好ましい実施例においては、光路δ

    A (h,θ)は、次式を満たす。


    δ

    A (h,θ)={(C+c)h

    2 sin

    2 (θ−Φ+η)}/2


    上式において、θ−Φが0°と180°の間である時、ηはψに等しく、θ−Φが180°と360°の間である時、ηは−ψに等しく、c及びψは、所定の定数である。 これは、レンズを異なる非点収差補正軸線を有する180°「セクター」に分割する。


    【0033】


    より具体的には、本発明によるレンズの補正部分は、基準経線平面により分離された2つのセクターに分割され、一方のセクターの補正軸線は、従来のトーリックレンズに対して第1の方向へ角度ψだけ傾けてあり、他方のセクターの補正軸線は、他の方向へ角度−ψだけ傾けてある。


    従って、例えば、理想的な位置に対するレンズの角度変位が5°であり、かつ角度ψが8°である場合、セクターの一方は、理想位置から3°、他方のセクターから13°だけ分離される。


    【0034】


    以下の説明から分かるように、これら2つのセクターにより網膜上で得られる全体画像は、純粋なトーリックレンズに対する同じ角度変位の場合に得られる画像よりも良質で判断基準「MTFa」に適合するという結果を達成することができる。


    最良の結果は正確な円柱屈折力Cを使用して得られるのではなく、C+cに等しい僅かに異なる屈折力を用いて得られるという点に注意すべきである。


    【0035】


    得られた良好な結果を考慮すると、C+cが±0.125ジオプトリー(D)で、ψが±1°の時、定数c及びψは、Cの値に応じて下表により与えられる値を有することが好ましい。


    【0036】


    【表1】


    【0037】


    これらの値は、6mmの瞳孔径に対して特に適する。


    好ましくは、同じ理由により、C+cが±0.125ジオプトリー(D)で、ψが±1°の時、定数c及びψは、Cの値に応じて下表により与えられる値を有する。


    【0038】


    【表2】


    【0039】


    これらの値は、8mmの瞳孔径に対して特に適する。


    同じ理由により、また実験により明らかな法則と一致させるために、定数cはゼロに等しく、定数ψは、±1°に対して、次式:


    ψ=114/(C.DP)


    により与えられる値をとることも好ましい。 上式において、DPは、ミリメートル(mm)で表した瞳孔径、ψは度(°)、及び、Cはジオプトリー(D)で表される。


    【0040】


    この構造的形状の代替の好ましい第2の実施例においては、光路δ

    A (h,θ)は、次式を満たす。


    δ

    A (h,θ)={(C+c)h

    2 sin

    2 (θ−Φ+η)}/2


    上式において、θ−Φが0°と90°の間、及び180°と270°の間である時、ηはψに等しく、θ−Φが90°と180°の間、及び270°と360°の間である時、ηは−ψに等しく、c及びψは、所定の定数である。


    【0041】


    従って、本発明によるレンズの補正部分は、基準経線平面とこれに直交する経線平面とにより4つのセクターに分割され、これらのセクターの補正軸線は、従来のトーリックレンズに対して第1の方向へ角度ψ、及び他の方向へ角度−ψだけ交互に傾けられる。


    すなわち、これら4つのセクターにより、全体的に、純粋トーリックレンズが同じ角度変位を生じた場合に得られる画像よりも良質で判断基準「MTFa」に適合した画像を網膜上で得ることができる。


    【0042】


    上記で開示した第1の好ましい実施例のように、最良の結果は非常に正確な円柱屈折力Cを使用して得られるのではなく、C+cに等しい僅かに異なる屈折力を用いて得られる。


    また、この好ましい実施例によるコンタクトレンズは、上記で開示した2つの相対するセクターを有する好ましい実施例によるレンズと比べて、中心からのずれに対する感受性が低いという利点を提供することにも注意すべきである。


    センタリング誤差は、実際に、相対するセクターにより互いに相殺される。


    【0043】


    好ましくは、得られた良好な結果を考慮に入れると、C+cが±0.125ジオプトリー(D)で、ψが±1°の時、定数c及びψは、Cの値に応じて下表により与えられる値を有する。


    【0044】


    【表3】


    【0045】


    これらの値は、6mmの瞳孔径に対して特に適する。


    好ましくは、同じ理由により、C+cが±0.125ジオプトリー(D)で、ψが±1°の時、定数c及びψは、Cの値に応じて下表により与えられる値を有する。


    【0046】


    【表4】


    【0047】


    これらの値は、8mmの瞳孔径に対して特に適する。


    同じ理由により、また、実験により観察される法則により、定数cはゼロに等しく、定数ψは、±1°に対して、次式:


    ψ=90/(C.DP)


    により与えられる値をとることも好ましい。 上式において、DPは、ミリメートル(mm)で表した瞳孔径、ψは度(°)、及び、Cはジオプトリー(D)で表される。


    【0048】


    第2の好ましい実施形態においては、項δ

    A (h,θ)は、次式を満たす。


    【0049】


    【0050】


    上式において、


    ・Eは、0から始まる整数を含む有限集合であり、


    ・β

    i (h)は、以下の条件を満たす関数の集合である。


    【0051】


    【0052】


    上式において、E'は、0及び2を除外したEに等しく、h

    min及びh

    maxは、それぞれ、非点収差を補正するために設けられた補正部分の区域の光軸に対する最小距離及び最大距離である。


    【0053】


    この第2の実施形態の第1の好ましい構造的形状においては、その単純さのために、関数β

    i (h)の各々は、次式:


    β

    i (h)=h

    2 α

    i /2


    を満たし、上式において、各α

    iは、


    i∈Eに対して一定の係数である。


    この好ましい構造的形状は、特に、上記で開示した2つ又は4つのセクターを有する実施例の1つに対応しており、第1の係数α

    iのみを例えば最大i=10まで、又は最大i=3までのみ維持することから成る光路の低域通過フィルタリング、及び、これらの係数の最適化を行う。


    従って、補正軸線が異なる方向へ傾いたセクター間のレンズ上の頂部の存在が防止され、このことは、レンズの製造を容易にし、そのような頂部により生じ得る装着者の不快さを防止する。


    【0054】


    好ましくは、2つの相対するセクターを有する上記で開示した第1の好ましい実施例によるレンズにより得られた良好な結果のために、集合Eは、0から10までの整数を含み、係数α

    iは、Cの関数として、それらが以下の不等式を満たすような値を有する。


    【0055】


    【0056】


    係数α

    i 'は、下表に与えられた値を有する。


    【0057】


    すなわち、


    【表5】


    【0058】


    および、


    【表6】


    【0059】


    これらの値は、6mmの瞳孔径に対して特に適する。


    好ましくは、2つの相対するセクターを有する上記で開示した第1の好ましい実施例によるレンズに同じく基づく同様な理由により、集合Eは、0から10までの整数を含み、係数α

    iは、Cの関数として、それらが次の不等式を満たすような値を有する。


    【0060】


    【0061】


    係数α

    i 'は、下表に与えられた値を有する。


    【0062】


    【表7】


    【0063】


    および、


    【表8】


    【0064】


    これらの値は、8mmの瞳孔径に対して特に適する。


    4つの相対するセクターを有する上記で開示した第2の好ましい実施例によるレンズに基づき、集合Eは、0から10までの整数を含み、係数α

    iは、Cの関数として、それらが次の不等式を満たすような値を有することも好ましい。


    【0065】


    【0066】


    係数α

    i 'は、下表に与えられた値を有する。


    【0067】


    【表9】


    【0068】


    および、


    【表10】


    【0069】


    これらの値は、6mmの瞳孔径に対して特に十分に適する。


    好ましくは、上記で開示した4つの相対するセクターを有する第2の好ましい実施例によるレンズに同じく基づく同様の理由により、集合Eは、0から10までの整数を含み、係数α

    iは、Cの関数として、それらが次の不等式を満たすような値を有する。


    【0070】


    【0071】


    係数α

    i 'は、下表に与えられた値を有する。


    【0072】


    すなわち、


    【表11】


    【0073】


    および、


    【表12】


    【0074】


    これらの値は、8mmの瞳孔径に対して特に十分に適する。


    第2の実施形態の第2の構造的形状においては、関数β

    i (h)の各々は、次式:


    β

    i (h)=h

    2 α

    i,j /2


    を満たし、上式において、jは、hの関数として段階的に変わる整数であり、各α

    i

    jは、i及びjが何であるかに拘わらず、所定の一定の係数である。


    当然のことながら、各段階は、レンズの補正部分の環状区域に対応する。


    この構造的形状は、瞳孔径が個人と物を見る条件(主として照明や遠近)とに応じて異なるという事実に良く適応する。


    【0075】


    第2の実施形態の第3の構造的形状においては、関数β

    i (h)の各々は、次式を満たす。


    【0076】


    【0077】


    上式において、Mは所定の整数であり、各α

    i

    jは、i及びjが何であるかに拘わらず、所定の一定の係数である。


    この構造的形状は、hの関数として段階的に変化する関数β

    i (h)を有する代わりにそれらが連続的にゆっくり変化するということを除いて、上述の構造的形状と同様である。


    【0078】


    本発明はまた、第2の態様によれば、上記で開示したコンタクトレンズ又は眼内レンズの調製方法に関し、本方法は、


    a)レンズの補正部分により導入されるべきである光路を判断する段階と、


    b)前記レンズの装着者に最適な快適さをもたらすために、前記補正部分の後面の形状を一連の所定の形状から選択する段階と、


    c)段階b)において後面に対して選ばれた前記形状、及び段階a)において判断された前記光路から、前記補正部分の前面の形状を判断する段階と、


    d)上記のように判断された前面及び後面を呈する前記補正部分を有する前記レンズを製造する段階と、


    を含むことを特徴とする。


    レンズを調製するこのような方法は、直接的な機械加工により製造するのに特に十分に適しており、特に、補正部分が必要とされる光路を導入するように、また、コンタクトレンズの場合には、このレンズに角度安定化手段を設けるために、レンズの後面に比較的単純な形状を持たせ、全ての複雑な形状を前面に移すことができる。


    【0079】


    本発明はまた、同じくその第2の態様によれば、上記で呈示したようなコンタクトレンズ又は眼内レンズの代替調製方法に関し、本方法は、


    a)レンズの補正部分により導入されなくてはならない光路を判断する段階と、


    b)前記補正部分の前面の形状を、各々が軸対象である一連の所定の形状から選択する段階と、


    c)段階b)において前面に対して選ばれた前記形状、及び段階a)において判断された前記光路から、前記補正部分の後面の形状を判断する段階と、


    d)上記のように判断された前記後面及び前面を呈する前記補正部分を有する前記レンズを製造する段階と、


    を含むことを特徴とする。


    この調製方法は、成形法によりレンズを製造するのに特に十分に適する。


    【0080】


    勿論、角度維持手段、すなわち、コンタクトレンズの場合には角度安定化手段は、一般にレンズの前面上に置かれるので、本実施形態においては、角度維持手段と非点収差の補正をもたらす表面とが、それぞれ、前面側と後面側に位置する状況になる。


    このことは、同じ円柱値及び同じ球面値に対して、全ての軸線が同じ2つの半成形型を使用することを実現させ、一方の半成形型を他方に対して回転させることにより、異なる値の非点収差軸線が得られる。


    ここで、非限定的に例示目的で掲げた好ましい実施形態例の説明を用いて、添付図面を参照しながら本発明を引き続き開示する。


    【発明を実施するための最良の形態】


    【0081】


    図面に示すコンタクトレンズ1は、従来通り光軸2を中心として、凸面の前面3と凹面の後面4とを呈する。


    後面は球面であり、前面3は、後面4と協働して装着者のために必要な視力矯正ができるような形状であり、かつ、瞼のまたたきにより規則的に生じる動的効果により、このレンズの目に対するセンタリングと回転の両方に対する安定化を得ることを可能にする形状を呈する。


    【0082】


    より具体的には、視力矯正は、光軸2とこの光軸から4mmに位置する図2及び3の破線で示す円との間に位置する部分5により得られ、一方、安定化手段は、公知のように、レンズの上部6と下部7をそれぞれ垂直方向(瞼の瞬きの軸線)に沿って縁部に向かって連続的に薄く又は軽くすることにより構成され、部分6及び7は、それぞれ上瞼及び下瞼と協働して、軸線2を装着者の目の光軸と一致させ、レンズ1の基準経線平面8を装着者の目の水平経線平面と一致させる。


    【0083】


    図示のレンズは、基準経線平面8に対する角度分離Φを表す平面9(図3)に沿った方向の補正である軸線Φを用いて非点収差の補正を行うように設計されている。


    Aをレンズ前面3上の任意の点とすると、A点の位置は、座標h及びθで定義される。 この場合、hは、レンズの光軸2から点Aまでの距離、θは、点Aを含む経線平面と基準面8との角度差である。


    【0084】


    図4から6に示す実施形態においては、補正部分5は、その全体が平面9に沿って方向付けされているわけではなく、この同じ平面により2つのセクター10及び11に分割され、軸線が軸線Φに対する角度ψだけ一方に傾斜されて次に他方に傾斜される非点収差の補正をもたらす。


    より具体的には、図5の曲線12で示すように、角度θ−Φが0°と180°の間である点Aの集合に対応するセクター10においては、非点収差の補正は、軸線Φ−ψに沿う方向であり、他方、角度θ−Φが180°と360°の間である点Aの集合に対応するセクター11においては、非点収差の補正は、軸線Φ+ψに沿って傾斜している。


    【0085】


    公知のように、非点収差を補正するために従来のレンズにより導入される光路は、放物線近似法に従って次式を満たす。


    【0086】


    【0087】


    この式において、Cは、非点収差を補正するために必要とされる円柱値である。


    図4に示す補正部分を有するレンズの場合、セクター10においては、角度Φは、角度Φ−ψで置換され、セクター11においては、角度Φ+ψで置換される。 セクター10及び11のためにできるだけ最良の結果を得るために、円柱屈折力Cをそのまま適用しないで、値C+c(cは定数)というCに近い屈折力を適用する。


    従って、図4に示す補正部分5により導入される光路は、次式を満たす。


    【0088】


    【0089】


    上式において、θ−Φが0°と180°の間である時、ηはψに等しく、θ−Φが180°と360°の間である時、ηは−ψに等しく、ψは定数である。


    【0090】


    図6に実線で表す曲線13は、円柱値が2ジオプトリーである場合、関数2δ

    トーリック /h

    2がθ−Φの関数としてどのように変化するかを示し、つまり、実際には、それは関数2sin

    2 (θ−Φ)を表しており、これは、更に、関数1−cos[2(θ−Φ)]に等しい。


    破線で表す曲線14は、関数2δ

    A (h、θ)/h

    2を示し、つまり、


    ・0°と180°の間のθ−Φに対しては(セクター10)、(C+c)sin

    2 [θ(Φ−ψ)]、及び・180°と360°の間のθ−Φに対しては(セクター11)、(C+c)sin

    2 [θ−(Φ+ψ)]であり、cは、ゼロ又は無視することができる値である。


    従って、曲線14は、0°と180°の間のθ−Φに対しては(セクター10)、値ψだけ右へ移動された曲線13に相当し、他方、180°と360°の間のθ−Φに対しては(セクター11)、値ψだけ左へ移動された曲線13に相当する。


    【0091】


    上述のように、本実施例においては、円柱屈折力Cは2ジオプトリーである。 以下において説明するように、6mmの瞳孔径に対して最適となるように判断さられたc及びψの値は、それぞれ、0.04ジオプトリー及び9.1°である。


    図4に示す補正部分5により導入された光路を、フーリエ級数展開の形で表現することができるということに注意すべきである。


    【0092】


    【0093】


    この式において、


    ・Nは整数の集合、及び、


    ・i∈Nに対する各α

    iは、一定の係数である。


    【0094】


    セクター10及び11のようなセクターを含むレンズを実際に製造することを容易にするために、また、特にセクター間に頂部が生じる可能性を回避して、レンズ装着者にこの頂部による不快感を与えないようにするために、第1調波のみを例えば最大i=3又はi=10までに保つこと(低域通過フィルタリングに相当する)が可能であり、また、最良の結果を得るために、以下に説明する方式で残りの係数α

    iを最適化することが可能である。


    そのようにすることにより、10までのiに対して、6mmの瞳孔径を有して2ジオプトリーの円柱屈折力を要する目を更に矯正するために、例えば下記の係数が得られる。


    【0095】


    【表13】


    【0096】


    図8は、光路の差:


    δ

    トーリック (h,θ−x)−δ

    トーリック (h,θ)


    を求めるために、6mmの瞳孔径を有する「MTFa」の計算値を曲線16で表したグラフであり、ここで、δ

    トーリック (h,θ)は、円柱値が2ジオプトリーである従来のトーリックレンズにより導入された光路であり、xは、そのレンズの理想的位置からの角度変位であり、この角度変位を横座標、「MTFa」を縦座標にプロットしている。 異なる円柱値又は瞳孔径を有する場合には、異なる曲線が得られるということに注意すべきであり、一般に、従来のレンズの角度ずれ許容度は、円柱及び瞳孔サイズが増大するにつれて減少する。 本用途におけるレンズの「部類」とは、一般に、同一の円柱及び瞳孔径を有するレンズのことを意味する。


    【0097】


    従って、曲線16は、xの各値に対して、6mmの瞳孔径を有する正常な視力を有する目と、上述したレンズの角度変位により導入された摂動に相当する仮想レンズとにより形成された光学システムの「MTFa」を表している。


    摂動が無い場合(変位が0°)、「MTFa」値は約9.3であり、角度変位が増大するにつれて、「MTFa」は、この値から規則的に減少することが分かる。


    この同じ目とほぼ0.25ジオプトリーの球面屈折力を呈するレンズとで構成されたシステムの「MTFa」を計算すると、約3.75の「MTFa」値が得られる。


    しかし、レンズ装着者が光学性能の劣化を感知する閾値が、球面屈折力の変位0.25ジオプトリーに大体相当するということが考慮される。


    従って、本実施例において、3.75という「MTFa」値は、それ以下ではレンズ装着者が劣化を感知し始める閾値に相当する。


    図8に破線で示した水平線17は、この感知閾値を表している。


    【0098】


    曲線16及び17の交点は、大体7°の角度変位に対して位置することが分かる。


    このことは、本実施例の条件下において(瞳孔径が6mm、円柱値が2ジオプトリー)、レンズが理想的な向きから±7°を超えて角度変位した場合には、従来の乱視矯正用レンズの装着者は、そのレンズの性能低下を感知し始めることを意味する。


    【0099】


    図9は、図8と同様に、同一条件下で(すなわち、同一部類のレンズを用いて)計算された「MTFa」を表している。 しかし、この場合は、δ

    トーリック (h,θ−x)は、図7に示す光路であるδ

    A (h,θ−x)で置換され、実線で示す曲線18は、この「MTFa」を表しており、破線で示す線19は、図8と同じ閾値を表している。


    曲線18は、各x値に対して、正常な視力及び6mmの瞳孔径を有する目と、従来のレンズを図7に示す光路を有するレンズで置換して後者のレンズが角度変位するのと全く同時に導入される摂動に相当する仮想レンズとで形成された光学システムの「MTFa」を表している。


    変位が存在しない場合には(x=0)、「MTFa」は、線19で示す通りの閾値を有し、これは、変位が約±2°に達するまで維持され、変位が約±2°を超えると、「MTFa」値は、増大して実質的に角度ψに相当する9°よりも僅かに大きな変位値の最大値に達し、次に、規則的に減少して、約13°の変位において線19と交差することが分る。


    【0100】


    曲線13でその光路を表した従来レンズは、変動範囲が[−7°,7°]である14°の角度許容度ΔΦを呈するが、曲線15によりその光路を示した本発明によるレンズは、変動範囲が[−13°,13°]、又は、変動範囲の振幅の利得が90%である26°の角度許容度を呈する。


    上述のように、このような結果を呈する上記の係数α

    i (最大10のiに対して)は、最適化法により判断された。 これは、ΔΦ'の最大値の取得を探求することから成る。


    【0101】


    より具体的には、以下において説明するように予め判断されたいくつかの係数α

    i (iは最大で10)から始めて、最初に各係数に対して始点での関数全体の偏導関数、従ってナップの変化方向を判断するために各係数をある量だけ個別に変化させることから成るシンプレックス法のような古典的最適化法が使用され、次に、ΔΦ'に対する最大値が得られるまで係数を交互に変化させることができる。


    始めの係数α

    i (iは最大で10)は、単に曲線14に相当する光路のフーリエ級数分解により判断された。


    曲線14それ自体は、c及びψに対する最良の性能値を同様な方式で求めることにより、予め最適化する必要があった。


    【0102】


    より一般的に言えば、円柱値Cを用いて非点収差を補正するために、従来のトーリックレンズの角度ずれ許容度ΔΦは、光路δ

    トーリック (h,θ)を導入することにより判断することができ、本発明によるレンズの角度ずれ許容度ΔΦ'は、以下のように光路δ

    A (h,θ)を導入することにより判断することができる。 すなわち、


    ・ΔΦは、変数xの変動範囲の振幅[−(1/2)ΔΦ,(1/2)ΔΦ]であり、この振幅は、この区間の任意の値xに対して下記の条件が確認されるような振幅である。


    MTFa[δ

    トーリック (h,θ−x)−δ

    トーリック (h,θ)]≧MTFa[0.25h

    2 /2]


    ・ΔΦ'は、変数xの変動範囲[−(1/2)ΔΦ',(1/2)ΔΦ']の振幅であり、この振幅は、この区間にけるxの任意の値に対して下記条件が確認されるような振幅である。


    MTFa[δ

    A (h,θ−x)−δ

    トーリック (h,θ)]≧MTFa[0.25h

    2 /2]


    【0103】


    レンズの補正部分5が図4に示すように構成されている時にΔΦ'の最適化を進めることにより、円柱値に応じて、6mmの瞳孔径に対して以下の結果が得られる。


    【0104】


    【表14】


    【0105】


    同様に、8mmの瞳孔径に対して下記の値が得られる。


    【0106】


    【表15】


    【0107】


    全ての場合に、角度許容度が非常に一貫性を有して増大することが分かる。


    一般に、以下のことが観察される。 すなわち、


    ・一方では、cは比較的低い値をとり、全ての場合にCに対して比例的に非常に小さい、及び・ミリメートルで表された瞳孔径、ジオプトリーで表されたC、及び度で表されたψの積は、114に非常に近い値を維持する。


    従って、実際には、セクター10及び11の各々に対してCを円柱値として直接とることができ(すなわち、cをゼロと見なすことができる)、次式を満たす角度ψを選ぶことができる。


    ψ=114/(C.DP)


    角度ψは度、円柱値Cはジオプトリー、及び、瞳孔径DPはミリメートルで表される。


    【0108】


    光路が曲線15と同様に変化するように低域通過フィルタリング及び最適化法が適用されたことを除いて図4に示す部分5と同一種類の補正部分を有するレンズの場合、係数α

    iのiが最大10までに維持された時、6mmの瞳孔径に対して下記の数値が得られる。


    【0109】


    【表16】


    【0110】


    および、


    【表17】


    【0111】


    および、


    【表18】


    【0112】


    同様に、8mmの瞳孔径に対して下記の数値が得られる。


    【0113】


    【表19】


    【0114】


    および、


    【表20】


    【0115】


    および、


    【表21】


    【0116】


    ΔΦ'とΔΦの間の利得は、86%と92%の間で変動することが認められる。


    更に、係数α

    iに関しては、α

    0とα

    2とを除いて、α

    iの二乗の和は、0.095と0.119の間で変化することが認められる。 このことは、導入された屈折力が純粋に球面円柱ではないことを示しており、その理由は、もしそうであれば、当該の総和はゼロであった筈だからである。


    これに関連して、もたらされた補正が純粋に球面円柱であったならば、α

    0及びα

    2以外の全ての係数はゼロであることが想起され、また、係数α

    0はC/2に等しく、係数α

    2は−C/2に等しい。


    【0117】


    図10から12に示す実施形態においては、補正部分5は、平面9により2つのセクターに分割されるのではなく、平面9及びこれと直交する平面20により4つのセクターに分割される。 このように区切られたセクター21から24は、軸線が軸線Φに対する角度ψだけ一方の方向及び他方の方向へ交互に傾けられる非点収差の補正をもたらす。 より具体的には、図11の曲線25で示されているように、角度θ−Φが0°と90°の間及び180°と270°の間である点Aの集合に対応する相対するセクター21及び23においては、非点収差の補正は、軸線Φ−ψに沿った向きであり、他方、角度θ−Φが90°と180°の間及び270°と360°の間である点Aの集合に対応する相対するセクター22及び24においては、非点収差の補正は、軸線Φ+ψに沿った向きである。


    【0118】


    図4にその補正部分5が図解されているレンズに対する表記と同じ表記を再度使用すると、図10に図解された補正部分5により導入される光路は、次式:


    δ

    A (h,θ)=((C+c)/2)h

    2 sin

    2 (θ−Φ+η)


    を満たし、上式において、θ−Φが0°と90°の間及び180°と270°の間である時、ηはψに等しく、θ−Φが90°と180°の間及び270°と360°の間である時、ηは−ψに等しく、c及びψは定数である。


    【0119】


    図12に実線で示した曲線26は、図6の曲線13と正確に同一であり、つまり、円柱値が2ジオプトリーである場合に、それは、関数2δ

    トーリック /h

    2がθ−Φの関数としてどのように変化するかを示している。


    破線で示した曲線27は、関数2δ

    A (h,θ)/h

    2を示し、すなわち、


    ・θ−Φが0°と90°の間(セクター21)及び180°と270°の間(セクター23)である場合は、(C+c)sin

    2 [θ−(Φ−ψ)]であり、


    ・θ−Φが90°と180°の間(セクター22)及び270°と360°の間(セクター24)の場合は、(C+c)sin

    2 [θ−(Φ+ψ)]であり、cは、ゼロ又は無視することができるほど小さい。


    【0120】


    従って、θ−Φが0°と90°の間(セクター21)及び180°と270°の間(セクター23)の場合、曲線27は、値ψだけ右へ変位した曲線26に相当し、一方、θ−Φが他の値(セクター22及び24)の場合、曲線27は、ψだけ左へ変位した曲線13に相当する。


    より具体的には、図示の実施形態においては、円柱屈折力Cは、2ジオプトリーであり、上述のような最適化法により判断された6mmの瞳孔径に対するcとψの値は、それぞれ、0.00ジオプトリー及び7.4度である。


    【0121】


    曲線15で表される光路が曲線14で表される光路から得られたのと同様な方式を曲線27で表される光路に対して行うことにより、図13の曲線28で表される光路が得られ、係数α

    iは次の通りである。


    【0122】


    【表22】


    【0123】


    一方において、θ−Φ=0°及びθ−Φ=180°の近くでは、曲線28はW字形ではなく、平坦化されたW字形状に相当する単純なU字形を呈し、他方においては、θ−Φ=90°及びθ−Φ=270°に対してそれぞれ到達する最大値が曲線27の最大値よりも重要でないという点を除外すれば、一般に、曲線28は、曲線27と全く同様であることが分かる。


    曲線14及び15は、2πの周期性を有し、曲線27及び28は、πの周期性を有することが認められる。


    【0124】


    上述のような最適化法を行うことにより、図10に示す補正部分に対応した補正部分5を有するレンズの場合、6mmの瞳孔径に対して次の値が得られる。


    【0125】


    【表23】


    【0126】


    同様に、8mmの瞳孔径に対して下記の値が得られる。


    【0127】


    【表24】


    【0128】


    許容範囲の増大は、46%と55%の間で変動すること、及び、上述の実施形態例の場合と同様に、cの値は低いままであることが認められる。


    曲線28で表される種類の光路、つまり係数の低域通過フィルタリング及び最適化を受けた光路を有するコンタクトレンズは、6mmの瞳孔径に対して次の数値を与える。


    【0129】


    【表25】


    【0130】


    および、


    【表26】


    【0131】


    および、


    【表27】


    【0132】


    同様に、8mmの瞳孔径に対して下記の数値が得られる。


    【0133】


    【表28】


    【0134】


    および、


    【表29】


    【0135】


    および、


    【表30】


    【0136】


    i=0及びi=2を除いた係数α

    iの二乗の和は、いずれの場合も0.007であることが分かる。


    角度変位に対する許容度の改善は、41と53%の間である。


    従って、第2の実施形態例によるレンズは、角度変位に対する許容度のあまり重要でない拡大をもたらす。 しかし、補正軸線が同じ傾きを有するセクターを互いに対向させた構成を考慮したこの実施形態例の構成は、センタリングの欠陥、すなわち、レンズの光軸2と目の光軸との間の一致の欠陥に対する優れた許容度を呈することが注目される。


    【0137】


    図4に示す補正部分5に関して、ここで一般に以下のことが観察される。 すなわち、


    ・一方において、cは、いずれの場合も比較的低い値、つまりCに対して比例的に非常に小さい値であり、


    ・ミリメートルで表された瞳孔径、ジオプトリーで表されたC、及び度で表されたψの積は、90に非常に近い値を保ち続ける。


    従って、実際には、Cをセクター21から24の各々に対する円柱値として直接とることができ(すなわち、cはゼロに等しい)、次式を満足する角度ψを選ぶことができる。


    ψ=90/(C.DP)


    角度ψは度、円柱値Cはジオプトリー、及び、瞳孔径DPはミリメートルで表される。


    図4及び10に示す補正部分5においては、それぞれ、角度ψは正であるが、それが負であっても何の問題もない。


    示されていない補正部分5の変形例において、セクターの数は2又は4以外の数であり、及び/又は、セクターの各々において、軸線及び/又は円柱値は、異なっている。


    【0138】


    連続的成分と周期πの成分とをそれぞれ表す係数α

    0及びα

    2に関して上述したことに加えて、係数α

    iに関して以下のことが注目される。 すなわち、


    ・全ての場合において、iが増大する時、係数α

    iは急速に非常に小さくなり、


    ・曲線15(図7)の場合、i=4から始まる全ての偶数係数はゼロであり、また、係数α

    9は、全て0.01のオーダーであり、


    ・曲線28(図13)の場合、係数α

    0及びα

    2を除外すれば、係数α

    4とα

    8のみがゼロではない。


    【0139】


    一般に、本発明に適合するレンズにより導入される光路δ

    A (h,θ)、特に、曲線14、15、27、及び28で表される光路は、次の形:


    δ

    A (h,θ)=δ

    トーリック (h,θ)+δ

    非トーリック (h,θ)


    で表すことができ、δ

    非トーリック (h,θ)は、一定のhにおいて、周期2を有するθの関数として変化し、かつsin

    2 (θ−Φ)とは異なる仕方で変化するような関数である。


    【0140】


    光路14及び27の場合、光路δ

    A (h,θ)の非トーリック成分であるδ

    非トーリック (h,θ)は、曲線14で表される光路と曲線13でそれぞれ表される光路との差に相当し、曲線27で表される光路と曲線26で表される光路との差に相当する。


    曲線15及び28でそれぞれ表される光路の場合、δ

    非トーリック (h,θ)は、図14の曲線29及び30でそれぞれ表される。


    より具体的には、これらの曲線の各々は、上記の係数α

    1 、及び、α

    3からα

    10により、つまりα

    0及びα

    2を除外した係数α

    iの集合により与えられる。


    【0141】


    曲線29は、曲線13と曲線15との差に近いが、この差に等しくはないことが注目されるが、その理由は、α

    0 =1.034(及び、C/2又は2/2=1.000ジオプトリーではない)、また、α

    2 =−0.942(及び、−C/2又は−1.000ではない)であるから、曲線15で表される光路のトーリック成分δ

    トーリック (h,θ)が曲線13で表される光路と正確には等しくないからである。


    α

    0 =0.830、及びα

    2 =−0.940であるから曲線26と曲線28との間の差には相当しない曲線30に対しても同じことが適用される。


    【0142】


    曲線29が2πの周期を有すること、及び、0とπ(180°)との間及びπと2π(360°)との間に位置する曲線29の部分がそれぞれ対称であり、一方が他方の鏡像であることが注目される。


    曲線29は、約θ−Φ=45°までは減少し、約θ−Φ=135°までは増大し、θ−Φ=180°までは減少し、θ−Φ=約225°までは増大し、約θ−Φ=315°までは減少し、次に、θ−Φ=360°までは増大する。


    曲線30は、π/2の周期を有する。 それは、θ−Φ=0°からθ−Φ=45°までは減少し、次に、θ−Φ=90°までは増大する。


    8mmの瞳孔径に対しては、曲線29及び30と同様にそれぞれ変化するが、これらよりも変化の振幅が小さい曲線が得られる。


    【0143】


    これまでに与えられた数値に関しては、以下のことが注目される。 すなわち、


    ・図4及び10に示す種類の補正部分5の場合、C+cの値については±0.125ジオプトリー、及び、ψの値については±1°だけ外れるまでは依然として良好な結果が得られ、


    ・図7及び13に示す種類の光路を導入する補正部分の場合には、数学的な意味において距離が0.05よりも小さいままである限り、つまり、下記の数式である限り、上述の係数α

    iから逸脱させることができる。


    【0144】


    【0145】


    この式の係数α

    iは、実際に存在する(許容度を有する)係数であり、係数α

    i 'は、名目係数、つまり、図面の助けを借りて為されたこれまでの説明中に示された表で与えられた係数である。


    【0146】


    示されていない実施形態例においては、光路はまた、hの関数としても変化する。


    この種類の第1の実施例において、レンズの補正部分により導入される光路は、次の形で書かれる。


    【0147】


    【0148】


    この式において、


    ・Eは、0から始まる整数を含む有限集合、及び・β

    i (h)は、次式:


    β

    i (h)=h

    2 α

    i,j /2


    を満たす関数の集合であり、ここで、jは、hの関数として段階的に変化する整数であり、各α

    i,jは、i及びjが何であるかに拘わらず、所定の一定の係数である。


    従って、一定のθにおいて、円柱屈折力は、各段階に対応する区域においてhの関数として一定のままである。


    【0149】


    上述した種類の別の実施例においては、β

    i (h)は、次式を満たす関数の集合である。


    【0150】


    【0151】


    この式において、Mは所定の整数、各α

    i,jは、i及びjが何であるかに拘わらず、所定の一定の係数である。


    従って、一定のθにおいて、円柱屈折力は、多項式関数によりhの関数として緩やかに変化する。


    【0152】


    後面4の形状(本実施例においては球面)及びレンズ材料の屈折率は公知であるから、レンズの厚みがその中心部において固定されている場合は、前面3の異なる点Aの光路δ(h,θ)からの座標は、公知の方式で判断することができ、この場合、この光路は、少なくとも0.4mmと2.4mmとの間に位置するhに対して、次式:


    δ(h,θ)=δ

    0 +δ

    A (h,θ)


    を満たすように選択され、この式において、δ

    0は任意の定数であり、δ

    A (h,θ)は、上述の許容度を有するものとして扱われる。


    このように形成された光路は、補正部分5の前面に適する形状の判断を可能にする。


    【0153】


    レンズ1の変形例においては、後面4は、純粋に球面である代わりに、このレンズを装着しようとする目の角膜の幾何学的形状に機械的に適合する非球面形状を呈し、この後面は、実際には、レンズが装着される目に対して行われる検査に基づいて一連の所定の形状から選択される。


    レンズ1の他の一変形例においては、前面3の形状は、判断された後面4に適した形状である一連の公知の表面から選択される。


    【0154】


    示されていない他の変形例においては、軽量化部分6及び7は、センタリング及び回転に対する安定化のための異なる手段により、特に、仏国特許第2,760,853号に説明されたような動的ボス、又は、下部に置かれたバラストプリズムでおそらくは上部を軽量化部分により完成されたものにより置換される。


    他の実施形態においては、本発明によるレンズは、乱視の矯正のみならず、近視又は遠視の矯正、及び/又は、老眼の連続的同時視力矯正を行うために提供される。


    【0155】


    上述した光路δ(h,θ)は、次に、以下の不等式:


    δ

    inf (h,θ)≦δ(h,θ)≦δ

    sup (h,θ)


    を満足するように完成され、ここで、δ

    inf (h,θ)及びδ

    sup (h,θ)は、それぞれ、次式を満足する。


    δ

    inf (h,θ)=δ

    0 +δ

    S (h)+δ

    P (h)+δ

    A (h,θ)−0.09h

    2


    δ

    sup (h,θ)=δ

    inf (h,θ)+0.18h

    2


    これらの式において、h及び全てのδはメートル(m)で表され、


    ・δ

    S (h)は、球面補正の場合は、その補正のために準備される光路であって、次式:


    δ

    S (h)=P

    VL

    2 /2


    を満たし、この式において、P

    VLは、上述の目の近視又は遠視を矯正するために必要とされる球面屈折力であって、ジオプトリー(D)で表され、


    ・δ

    P (h)は、連続的同時視力矯正の場合は、その補正のために準備される光路であって、次式を満たす。


    【0156】


    【0157】


    一連の係数γ

    2kは、以下に記す係数の9つのリスト(SA、SB、SC、MA、MB、MC、LA、LB、LC)のうちのそれぞれにより規定される。


    【0158】


    【表31】


    【0159】


    および、


    【表32】


    【0160】


    および、


    【表33】


    【0161】


    E及びこれに続く数値は、10の累乗の指数を表す。


    【0162】


    この実施形態の変形例においては、老眼の矯正は、補正部分5の周辺部ではなく中心部のより高い屈折力を用いて上述のように達成されるのではなく、逆方向の変化を用いて、つまり、補正部分の周辺部よりも中心部の方が低い屈折力を用いて行われる。


    その場合に、連続的同時視力矯正により導入される光路は、上記の式ではなく次式により与えられる光路である。


    【0163】


    【0164】


    AADは、レンズ装着者が近くを見るために要するジオプトリー(D)で表される追加量であり、一連の係数γ

    2kは、上述の9つのリスト(SA、SB、SC、MA、MB、MC、LA、LB、LC)のうちのそれぞれにより規定される。


    示されていない変形例においては、部分5のような補正部分は、明らかにコンタクトレンズではなく、インプラントの形態で実現される眼内レンズである。


    状況に応じて他の多くの変形例が可能であり、この意味において、本発明は、説明及び提示された実施例に限定されないということが想起される。


    【図面の簡単な説明】


    【0165】


    【図1】本発明によるコンタクトレンズの垂直経線平面に沿った断面図である。


    【図2】図1のレンズの上面図である。


    【図3】図2のレンズの中心部分を拡大して示した部分上面図である。


    【図4】補正部分が2つのセクターに分割され、トーリック型の補正軸線が必要な軸線Φに対してそれぞれプラス又はマイナスの角度ψだけ傾いている、第1の実施形態例によるレンズの補正部分の上面図である。


    【図5】度(°)で表された角度θ−Φを横座標、トーリック型の補正軸線を縦座標にプロットした、トーリック型の補正軸線がどのように変化するかを示すグラフである。


    【図6】補正に要する円柱値が2ジオプトリーである場合に、度(°)で表された角度θ−Φを横座標、最も近いh

    2 /2に対する光路を縦座標にプロットした、トーリック型の従来の補正部分により導入された光路(実線曲線)と図4に示す補正部分により導入された光路(破線曲線)とがどのように変化するかを示すグラフである。


    【図7】図6に実線で示す光路の低域通過フィルタリング及び最適化を行うことにより得られる光路を示す、図6と同様なグラフである。


    【図8】必要な位置に対する度(°)で表された角度変位を横座標にプロットし、一方、従来のトーリックレンズによりそれが角度変位している時に導入された光路と、その角度位置が正しい時に同じレンズにより導入された光路との間の差を求めるために計算された「MTFa」値を縦座標にプロットした、円柱値が2ジオプトリーで瞳孔径6mmである従来のトーリックレンズの角度許容度を示すグラフである(円柱又は瞳孔径の値が異なれば、異なる曲線が得られると考えられ、一般に、従来のレンズの角度ずれ許容度は、円柱及び瞳孔サイズが増大すれば減少する)。


    【図9】図7に示す光路を有するレンズにより導入された光路と、上述の従来のトーリックレンズ(円柱値が2ジオプトリー)によりその角度位置が正しい時に導入された光路との差を求めるために計算された「MTFa」値を表していることを除いて、図8と同様なグラフである。


    【図10】補正部分が4つのセクターに分割され、その軸線が交互にプラス又はマイナスの角度ψだけ傾いた本発明の第2の実施形態例に対するものであることを除いて、図4と同様の図である。


    【図11】補正部分が4つのセクターに分割され、その軸線が交互にプラス又はマイナスの角度ψだけ傾いた本発明の第2の実施形態例に対するものであることを除いて、図5と同様の図である。


    【図12】補正部分が4つのセクターに分割され、その軸線が交互にプラス又はマイナスの角度ψだけ傾いた本発明の第2の実施形態例に対するものであることを除いて、図6と同様の図である。


    【図13】補正部分が4つのセクターに分割され、その軸線が交互にプラス又はマイナスの角度ψだけ傾いた本発明の第2の実施形態例に対するものであることを除いて、図7と同様の図である。


    【図14】曲線15及び28でそれぞれ表した光路の非トーリック成分を示す図7及び13と同様なグラフである。


    【符号の説明】


    【0166】


    2 光軸5 レンズの補正部分8 基準経線平面9 角度分離を表す平面A レンズ前面上の任意の点Φ 角度分離

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