【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ケース内に配置されかつヒンジ要素と協働するばね要素を備える眼鏡用ばねヒンジ装置に関する。 【0002】 【従来の技術】前述の形式のばねヒンジ装置は、眼鏡のつるが折りたたまれた休止位置から開かれた支持位置へ持ち来され、またこの位置を超えて移動可能である眼鏡に使用されるものである。 該ばねヒンジ装置によって、 前記つるは眼鏡使用者の頭に押し付けられ、それによって眼鏡の保持が確実となる。 【0003】ばねヒンジ装置は、ケース内に納設されたばね要素を有する。 前記ケースは、通常つるにハンダ付けにより固定され、そのとき高い温度が発生するので、 ばね要素はケースから外しておかねばならない。 従って、ケースを取付けた後、ヒンジ要素とばね要素をケースに納設する別の組み立て段階が必要となる。 このため、経費が著しく高いものとなる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、前述した欠点を有しない当初に述べた形式のばねヒンジ装置を提供することである。 【0005】 【課題を解決するための手段】前記の課題は、本発明により、ケースが蓋体として作用する支台を有し、この支台がばね要素と協働して、ばね要素がケース内に取り付けられている時は予備緊張下にあり、そしてケース内に確実に保持される構成により解決される。 【0006】 【作用および効果】本発明によるばねヒンジ装置は、前記支台が直接にケースにより、すなわち壁厚の大きいケース範囲により形成されるのが有利である。 この範囲は、ケースを眼鏡のつるに取付ける電気溶接法の場合に、溶接電流の導通の用をなす。 それによって、ケースの薄い壁範囲が熱的に大きな負荷を受けることなく、従って望ましからざる変形が防止される。 【0007】ヒンジ要素とばね要素とが、ケース内に取り付け可能でありかつ予め組立可能な構成グループとして構成される実施例が特に有利である。 このため、ばねヒンジ装置の製作に必要な部品の数が減じて、製造が簡単になる。 【0008】さらに、ケースが溶接いぼを備えている実施例が有利である。 これにより、ケースは電気溶接法により特に速やかにかつ簡単につるに取付けることができる。 この方法は、一方において簡単に実施でき、他方においてはんだ付けに必要な補助手段なしで済ませるので、ケースをつるに取り付けた後のクリーニング段階を略することができる。 【0009】その他の本発明の構成は、従属請求項に述べられている。 【0010】 【実施例】以下に、本発明の実施例を図面により説明する。 【0011】図1において、ばねヒンジ装置1は、ばね要素5を具備するヒンジ要素7を内部に装着したケース3を備えている。 ケース3は凹部9を備え、この凹部9 は図1にて左方へ通孔11に接続している。 通孔11 は、ケース3の左側端壁13を貫通する。 凹部9の幅は、通孔11の幅よりも大きい。 ばね要素5の幅は凹部9の幅に適合しているので、凹部9と通孔11との間の移行範囲には、ばね要素5が当接する支台15がある。 支台15は、ばね要素5の第1接合肩部として機能し、 該ばね要素5は支台15に対向する側部にて第2接合肩部17に接合する。 支台15と第2接合肩部17との間の間隔は、ばね要素5が組み込まれた状態で予備緊張を受けるように選択されている。 この予備緊張により、ケース3内に納設された各部品は確実に保持される。 各部品を保持するための従来のロック部品は当然なくすことができるので、ばねヒンジ装置の組み立てが簡単化されるのは明らかである。 このことは経費の節約となり、さらにばねヒンジ装置1の製作に必要な部品の数を低減することになる。 【0012】ヒンジ要素7は、ケース3の内部にてばねヒンジ装置1の縦方向に移動可能に装着されている。 該ヒンジ要素7は、ばね要素5により、図1にて右方に作用する予備緊張力でもって付勢されているので、つるヒンジを形成するヒンジ孔部19は同様に予備緊張力で付勢される。 ヒンジ要素7は、さらに通孔11内に挿着される案内部分21を有し、この案内部分21はばね要素5用の受容部分23に移行する。 【0013】図示の実施例では、ばね要素5がコイルばねとして形成され、このコイルばねを前記案内部分21 を始端とするピン25が貫通し、そして該コイルばねは第2接合肩部17を形成するリング27に押し当てられる。 ピン25は前記リング27を貫通する。 ピン25の最終端部は、リング27が特に広く押しつぶされたピン25の端部区域を超えてずり出ることのないように成形されている。 リング27がピン25に前述のように固定されることにより、ばね要素5のコイルばねが第2接合肩部17として作用するリング27と第1接合肩部を形成する支台15との間で予備緊張を受けることが可能となっている。 【0014】観察者の方を向いたばねヒンジ装置1の下側に、溶接いぼ29、31、33として機能する突起が設けられている。 右端に位置しばねヒンジ装置1の縦方向に対しほぼ横に位置する長く延びた突起は、数個の溶接いぼに分割されている。 溶接いぼ29は、ここでは比較的大きな壁厚を有するケース3の凹部9の右に位置する。 溶接いぼ31、33は、通孔11にすぐ隣接して配置され、通孔11の幅は凹部9の幅より小さいように選択されている。 その結果、この場合も凹部9の隣接部よりも大きな壁厚が与えられ、そして上述したばね要素5 用支台15が構成されている。 【0015】前述のように構成されたケース3は、特に電気溶接法、すなわち点溶接法に好適であり、高い電流がケース3を通って流れ、それによって金属製つる上の溶接いぼが著しく加熱され、ケース3と付属のつるとの溶接が行われる。 【0016】溶接いぼ31、33の範囲に案内部分21 を設け、この案内部分21が特にその縦方向に対し横に延びる溝35として構成した凹部を備えるようになし、 溶接過程に際し生ずる溶接いぼ31、33の材料が前記凹部に流入し、ケース3内における案内部分21またはヒンジ要素7の運動性が限定されることがないようにすることができる。 【0017】図1の下側面図に示すように、ヒンジ要素7はヒンジ孔部19の範囲にて案内部分21または通孔11よりも広く構成され、その結果ヒンジ要素7が端壁13に接合する肩部37が形成されている。 従って、その限りではヒンジ要素7のケース3内での運動性が限定されるが、他方においてヒンジ要素7はケース3内に確実に保持されるので、当該ばねヒンジ装置1は、ヒンジ要素7がケース3から抜け出る危険性なしに取扱うことのできる組立ユニットを形成する。 特にばねヒンジ装置1は、第1の段階で予め組み立て、後で別の独立の段階で眼鏡のつるに取り付け、特に溶接することができる。 【0018】図2において、ばねヒンジ装置1は、眼鏡要素に、この場合は眼鏡のつる39に溶接されている。 ケース3は、眼鏡のつる39の表面41上に平面的に載っている。 【0019】さらに図2より、案内部分21の高さが通孔11の深さに適合しており、従って案内部分21が上方では通孔11の上部限定壁部にガイドされ、他方その下側では眼鏡のつる39の表面41上に位置していることが判る。 この図では、案内部分21の下側に穿孔された溝35が明確に見て取れる。 【0020】ケース3の内部におけるヒンジ要素7のガイドを改善するために、ばね要素5の高さを凹部9の高さまたは深さに適合させることができる。 同じことが、 接合肩部17として機能するリング27に当て嵌まる。 リング27の直径は、一方で眼鏡のつる39の表面41 上にて、そして他方で凹部9の表側にてのガイドが保証されるように選択されている。 なお、この場合次のことを指摘する。 すなわち、案内部分21の幅は通孔11の幅に適合し、ばね要素5および接合肩部17またはリング27の幅は凹部9の幅に適合しており、その結果ケース3内部におけるヒンジ要素7の最適のガイドが保証されると言うことである。 【0021】図2より、さらに次のことが判る。 ケース3の端壁13の上方がいくらか凹んでおり、これに対し肩部37でもって前記端壁13に接合するヒンジ孔部1 9は突部43を形成し、この突部43がヒンジ要素7をケース3内に取付けた後の該ヒンジ要素7の付加的な保証の用をなしていることである。 従って、ヒンジ要素7 は、摩擦力によってのみならず、形状拘束的にもケース3内に保持される。 ヒンジ孔部19がばね要素5によりケース3の端壁13に対し押圧されることにより、ケース3の内部従って通孔11や凹部9の汚れるのが防止される。 【0022】図3は、図1および図2に示すばねヒンジ装置1の平面図であり、同一部品には同一符号を付している。 よって、図1および図2について前述したことを参照にすることにより、図3は明らかである。 図3から、ケース3がその上側を全面的に覆われていることが判り、このことはさらにその他の側壁にも当てはまることである。 【0023】図4は、眼鏡のつるとの溶接前のヒンジ装置1の断面図であり、図1および図2に示す同一部品には同一符号を付しており、これら部品には前述したことを参照にすることことができる。 【0024】図4に示す実施例において、ばね要素5の受容部分123は一体的に構成されており、案内部分2 1は受容彎曲体125にとなって移行し、この受容彎曲体125の終端は接合肩部117となっている。 本実施例ではコイルばねとして構成されたばね要素5の1側が、前記接合肩部117に接合している。 他方において、前記ばね要素5は案内部分21により形成された支台15に支持されている。 支台15と接合肩部117との間の間隔は、無負荷のばね要素5の最大伸長よりも小さいように選択される。 従って、前記ばね要素5は、支台15と接合肩部117との間に挿着されるとき、予備緊張を受けるので、ばね要素5は摩擦力により受容部分123内に保持される。 さらに、前記ばね要素5の接合面が突出部を備え、この突出部がばね要素5と形状拘束部を形成するように構成することが可能である。 とくに、ばね要素5がコイルばねとして構成されているときは、前記突出部は該コイルばねの内部へ容易に係入し、 受容部分123内での確実な保持を達成することができる。 【0025】ヒンジ要素107の構成は、ばね要素5を容易に受容部分123内に挿着することができるので、 非常に有利であることが判る。 ヒンジ要素107はヒンジ孔部19、案内部分21、および受容部分123を具備し、かつ一体的に構成されているので、その製作は著しく廉価とすることが可能である。 【0026】図4に示す受容彎曲体125の幅は、その長さにわたり一定ではない。 この場合、ヒンジ要素10 7に突起42を設け、この突起42がケース3内の適宜の突出部に当接するようにして、ケース3内におけるヒンジ要素107の移動距離を限定することができる。 【0027】ヒンジ要素107においては、受容彎曲体125の範囲においても、該受容彎曲体125が案内部分21に適合するように、案内部分21の幅が選択されている。 受容彎曲体125の幅は、突起42のところで始めて案内部分21の範囲におけるよりも大きいように選択されている。 突起42は、ばねヒンジ装置1の軸方向に見て、支台15に対し右方へ位置がずれている。 【0028】最後に、図5はヒンジ要素207の別の実施例を示すが、その特徴とするところは、案内部分21 とばね要素205とが一体的に構成されていることである。 【0029】この場合、要素205は蛇行形状に構成された2つのばね部分45、47を有し、これらばね部分は案内部分21から端面板51まで延びる延長部49に隣接して配置され、前記端面板51にばね部分45、4 7が取り付けられている。 【0030】延長部49に隣接する両ばね部分45、4 7の全幅は、例えば図1に示すケース3の凹部9にぎりぎり収まるように選択される。 案内部分21の厚みは、 図5に示すヒンジ要素207の実施例の場合においても、ケース3の通孔11(例えば図1参照)の範囲における案内が保証されるように選択されている。 【0031】特に図5から判るように、ばね要素が最終的にどのように構成されるか、また該ばね要素がヒンジ要素とどのように協働するかは、ばねヒンジ装置1の機能に対し重要ではない。 重要なのは、ばね要素がヒンジ要素に押圧力を及ぼし、それによりヒンジ要素がケース3の内部に引き込まれるが、しかし少なくとも設定距離にわたりばね要素の力に抗してケース3から引き出し可能であることである。 従って、ヒンジ要素はばねヒンジ装置1の縦方向に移動可能に装着されねばならない。 【0032】さらに、重要なことは、眼鏡のつるに取り付ける前に、ばねヒンジ装置を組み立てて組立ユニットとなすことができ、この組立ユニットではヒンジ要素をばね要素とともにケース内に取り付け可能であることである。 前述したことより明らかなように、ヒンジ要素とばね要素を予め組立て可能な構成グループとして形成することができ、その場合図5の実施例では、両要素を一体的に製作することも可能であることを示しており、このときは前記構成グループを予め組立てることを省くことができる。 【0033】基本的には、ヒンジ要素が特に金属より製作可能であることを前提とする。 しかし、生起する引張力を受容可能な材料が選択される限り、特殊の合成物質を用いることも可能である。 【0034】ばねヒンジ装置1のケース3は金属よりなる。 凹部9および通孔11は、ケース3の製作時に、例えば鋳造過程または焼結過程時に形成するか、あるいは特に切削加工により形成する。 凹部9または通孔11の幅と深さは、取付けるべき要素に適合させる。 【0035】結局、ケース3の壁厚は、特に溶接いぼ2 9、31、33として機能する突起の範囲において、例えば凹部9に隣接する範囲よりも著しく高い。 とくに、 従来のばねヒンジ装置の場合に使用される金属板より形成されたケースに比して高くなっている。 ケース3の壁厚が高くなっているために、電気溶接に際し生ずる最適の強さの電流を溶接いぼ29、31、33に導入することができ、それによって該溶接いぼを溶かしてケース3 をつる39に確実に保持することができる。 ケース3のその他の壁範囲は、損傷されることのないままである。 溶接過程は、ケース3内に取付けられた各要素、特にばね要素が過度に加熱される恐れのないように、速やかに行うことができる。 かくして、例えばばね要素の焼きなまし現象を防止することができる。 これらのことは、上に述べた形式のばねヒンジ装置が、付属のばね要素およびヒンジ要素を既に組み込んだ組立ユニットとして使用できることの理由である。 【0036】前述の溶接技術により、完成ばねヒンジ装置の製作における合理化が可能である。 特に、眼鏡を掛けた人のアレルギーの増大の故にニッケルなしの材料が用いられる。 当該ばねヒンジ装置をチタンから製作し、 例えばチタンつるに取付けることも可能である。 【0037】当該ばねヒンジ装置の特徴とすることは、 封鎖体と称する通常のケース用蓋体をなくし得ることである。 ケースにより形成される支台はばね要素のストッパをなし、そしてさもなければ当該ばねヒンジ装置に普通である蓋体部品をなくことを可能にする。 従って、ばねヒンジ装置の製作に必要な部品の数が減じ、その結果予め製作した組立ユニットの製作が簡単であることによっても、製作費が低減する。 【図面の簡単な説明】 【図1】眼鏡のつるに組立る前の本発明によるばねヒンジ装置の下側面図であり、1部を断面にて示す。 【図2】眼鏡のつるに取り付けたばねヒンジ装置の縦断面図である。 【図3】図2に示すばねヒンジ装置の平面図である。 【図4】本発明によるばねヒンジ装置の別の実施例の縦断面図である。 【図5】本発明によるばねヒンジ装置のさらに別の実施例の斜視図である。 【符号の説明】 1 ばねヒンジ装置 3 ケース 5、205 ばね要素 7、107、207 ヒンジ要素 9 凹部 11 通孔 15 支台 17、117 接合肩部 23、123 受容部分 29、31、33 溶接いぼ ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 オットー レーネルト ドイツ デー・74889 ジンスハイム ア ードラーシュトラーセ 3 |