【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、眼鏡フレームに用いる丁番の改良に関し、さらに詳しくは、面倒なねじ込み作業やネジ締め調整が必要であった丁番ネジを一切必要としない眼鏡の丁番機構に関するものである。 【0002】 【従来の技術】眼鏡フロント枠と耳掛テンプルとをヒンジ連結する丁番は、眼鏡の掛け外しを行うなど、眼鏡取り扱い時に、頻繁に回動動作が行われる部品であり、しかも、丁番の回動性は直接的に、耳掛テンプルの折り畳み操作性に影響を及ぼすため、丁番は眼鏡フレーム自体の使い勝手を大きく左右する眼鏡部品でもある。 【0003】しかるに、従来の丁番にあっては、眼鏡フロント枠(エンドピース)に固定すべき雌こま部品と、 耳掛テンプルに固定すべき雄こま部品とを、微小な丁番ネジを支軸として用いて、回動自在にネジ止め連結して構成されていたため、眼鏡の取扱い性を左右するテンプル開閉操作性(アガキ)は、この丁番ネジの締め具合によって大きく変動することになった。 【0004】例えば、丁番ネジを緊締し過ぎれば、こま部品同士の摺動抵抗が大きくなってテンプル開閉が重きに失することになり、かと言って、このテンプル開閉を軽快なものにしようと丁番ネジを緩めにすると、今度は、眼鏡使用中の振動等によっても簡単に丁番ネジが緩んでしまう事態を生じ、眼鏡フレームを傾けるだけで、 耳掛テンプルが開閉してしまうという実に使い辛い眼鏡フレームとなってしまうのであった。 【0005】従って、このテンプル開閉操作性(アガキ)を適度に保つには、従来、微小な丁番ネジの締め調整が不可欠であったわけであるが、この丁番ネジの調整が大変面倒なものであったのである。 丁番ネジがとても微小であるため、この微調整が至極細かい作業になることに加え、さらに、この調整も一度で済むものではなく眼鏡使用中にも何度か締め直しを行わなねばならなかった。 たとえ、一度調整した丁番ネジがその後、全く緩まなかったとしても、眼鏡を長年使用するうちに、丁番こま部品が摩耗してしまい、やはりテンプル開閉抵抗(アガキ)が低下するからである。 テンプル開閉の回数が多くなればなる程、丁番ネジ調整も頻繁に行う必要が生じ、その都度、眼鏡販売店等に足を運ぶことは大変面倒であったのである。 【0006】 【解決すべき技術的課題】そこで、本発明は、従来の眼鏡丁番に上記のごとき難点があったことに鑑みて為されたものであり、面倒な微調整が必要であった丁番ネジが一切用いられておらず、長年使用していても、耳掛テンプル開閉操作性(アガキ)が、ほぼ一定に維持される眼鏡丁番機構を提供することを技術的課題とするものである。 【0007】また、本発明の他の技術的課題は、丁番ネジが一切用いられておらず、長年使用しても、ほぼ一定のテンプル開閉操作性(アガキ)が維持され、さらに耳掛テンプルを、所定の開閉位置に弾性的に保持することが可能な眼鏡丁番機構を提供することにある。 【0008】さらにまた、本発明の他の技術的課題は、 丁番ネジが一切用いられておらず、長年使用しても、ほぼ一定のテンプル開閉操作性(アガキ)が維持され、さらに耳掛テンプルに対して、テンプル拡開方向またはテンプル折り畳み方向への開閉付勢力を付与することが可能な眼鏡丁番機構を提供することにある。 【0009】 【課題解決のために採用した手段】本発明は、左右一対のレンズLの両外側、または当該レンズLを支持する眼鏡リムRの両外側に固設されたエンドピースEと、左右一対の耳掛テンプルTとを回動自在に連結する眼鏡丁番機構Hにおいて、一端にフランジ11が設けられ、他端側には、前記耳掛テンプルT側へ屈曲して成り当該耳掛テンプルTに接合すべき摺動屈曲部12が形成された回動軸1と;当該回動軸1を挿嵌すべき貫通孔21が穿設され、 この貫通孔21の一端には摺合面22が形成され、同貫通孔 21の他端には係止部25が形成されて成る、前記エンドピースEに接合すべき軸受体2と;前記フランジ11と係止部25との間に圧縮状態で介在し、当該フランジ11と係止部25とを互いに離反方向へそれぞれ付勢する弾性体3 と;を含み、前記耳掛テンプルTが開閉動する際、前記弾性体3の付勢力により、回動軸1の摺動屈曲部12をして、軸受体2の摺合面22上を所望の摺動抵抗で摺動せしめるという技術的手段を採用することによって上記技術的課題を解決した。 【0010】さらに本発明は、耳掛テンプルTが開閉動する際、回動軸1の摺動屈曲部12が摺動移動する摺合面 22に、一つ又は二つ以上の凹部(22a・22b)を設けるという技術的手段を採用して上記課題を解決した。 【0011】 【実施例】以下、本発明を添付図面に示す実施例に基づいて詳しく説明する。 なお、図1は本実施例の眼鏡丁番機構を用いた眼鏡フレームの全体斜視図、図2は同実施例眼鏡丁番機構の構成を説明する拡大部分断面図、図3 は同眼鏡丁番機構の構成を説明する拡大分解蛙瞰図、図4は本発明に係る実施変形例の眼鏡丁番機構の構成を説明する要部拡大蛙瞰図である。 【0012】図1中、符号Rで指示するものは、左右一対のレンズLを嵌め込んだ眼鏡リムであり、この左右一対の眼鏡リムRは、鼻当パッドPを垂設するブリッジB にて左右対称に連結保持されて、この眼鏡リムRの両外側には、左右一対のエンドピースEが設けられている。 図1中、符号Hで指示するものが、本発明に係る眼鏡丁番機構であり、本実施例丁番機構Hによって前記エンドピースEと耳掛テンプルTとが回動自在にヒンジ連結される。 【0013】図2及び図3に示す如く、本実施例の丁番機構Hは、ヒンジ連結の支軸となる回動軸1と、この回動軸1を軸受けする貫通孔21を有する軸受体2と、後述するテンプル開閉抵抗(アガキ)を担う、コイルバネで形成された弾性体3とから構成されている。 【0014】丁番機構Hの回動軸1は、上端に雄ネジ1 aが形成され、回動軸1の軸径より大径の球形フランジ 11を螺合着設するようになっており、他端側は、耳掛テンプルT側へ略垂直に屈曲加工されて、水平面(テンプル開閉動平面)上を回動する摺動屈曲部12となっている。 なお、本実施例においては、この摺動屈曲部12と耳掛テンプルTとを連続線状に一体形成しているが、勿論、これらを別個に形成して、フレーム組立て時に接合するにようにしても良い。 【0015】丁番機構Hの軸受体2は、前記フランジ11 よりも大径な略球形を成しており、前記貫通孔21の上端部には、このフランジ11よりも若干大径な沈み孔26を穿設することによって、コイルバネ弾性体3を係止すべき係止部25が形成されている。 一方、この貫通孔21の下端部には、図3に示す如く、ほぼ水平(テンプル開閉動平面)に摺合面22が形成され、垂直方向には互いに略直交関係にある2つの当接面23・24が形成されている。 なお、本実施例では、この軸受体2とエンドピースEとは一体に形成されているが、勿論、これらを別個に形成し、フレーム組立て時に接合するようにしても良い。 【0016】丁番機構Hのコイルバネ弾性体3は、回動軸1上端に設けたフランジ11と、軸受体2の係止部25との間に、回動軸1に遊嵌されて圧縮状態に介在されるものであり、このコイルバネ弾性体3はフランジ11と係止部25とが互いに離反する如くそれぞれを離反方向へ付勢する。 このことによって、回動軸1の摺動屈曲部12と軸受体2の摺合面22とは、コイルバネ弾性体3の付勢力により互いに押圧し合うことになり、回動軸1の回動時においても、この押圧関係は保たれ、摺動屈曲部12は、ある一定の摺動抵抗をもって摺合面22上を摺動移動することになる。 【0017】このように、本発明に係る丁番機構Hを採用した眼鏡フレームにあっては、丁番ネジを一切必要とせず、したがって、耳掛テンプルTの開閉抵抗(アガキ)を従来の如き丁番ネジの締結力によってではなく、 コイルバネ弾性体3の付勢力によっているので、面倒な「丁番ネジ調整」を行う必要もなく、また「ネジ緩み」 に患わされることもなくなるのである。 しかも、眼鏡を長年使用した結果、前記摺動屈曲部12や摺合面22が摩耗したとしても、コイルバネ弾性体3により両者は常に押圧し合っているので、ヒンジ連結部がガタつくことがないばかりか、テンプル開閉抵抗(アガキ)も、ほぼ一定に保たれることになる。 【0018】また、本実施例丁番機構Hは、軸受体2の下方内側に、前記摺合面22と共に、互いに略直交関係にある2つの垂直な当接面23・24が形成されているので、 耳掛テンプルTの拡開動作、或いは折り畳み動作を所定位置で確実に止めることができる。 つまり、耳掛テンプルTが拡開する場合には、摺動屈曲部12が当接面23に当接することによって、これ以上のテンプル拡開が規制され、逆に、耳掛テンプルTを折り畳む場合には、摺動屈曲部12が当接面24に当接することにより、これ以上のテンプル折り畳みが規制されるのである。 【0019】このように、本実施例丁番機構Hにあっては、耳掛テンプルTの開閉規制を、軸受体2の下方内側に形成した当接面23・24で行うようにしているので、丁番摺動部分だけでなく所謂「合口」も丁番機構の内側に隠れ、眼鏡フレームの見栄えが良好になる(図1参照)。 さらに、本実施例は、この摺合面22、及び当接面 23・24が互いに隣り合っているので、軸受体2への簡単な切削加工で摺合面22及び当接面23・24を形成できる利点もある。 【0020】さらにまた、本実施例丁番機構Hにあっては、軸受体2の貫通孔21上端に形成すべき係止部25を、 球形の軸受体2上部に沈み孔26を穿設することよって、 軸受体2内部に形成するようにしているので(図2参照)、コイルバネ弾性体3は軸受体2に隠すことができ、眼鏡フレームの見栄えが良くなる。 なお、コイルバネ弾性体3を圧縮状態に、上方において係止するフランジ11は、本実施例では回動軸1上端に刻設した雄ねじ1 aに螺合することによって設けているが、回動軸1上端にフランジ11をかしめて設けるようにしても良い。 【0021】本発明の具体例である実施例は概ね上記のように構成されているが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能である。 【0022】例えば、上記実施例では、弾性体3として圧縮コイルバネを採用しているが、前述したように、この弾性体3は、フランジ11と係止部25とを離反方向に付勢できれば良いのであって、この弾性体3を、例えば円筒形状の合成ゴムや軟質プラスチック等の各種ゴム材で形成しても良く、弾性体3として、摺動抵抗の大きな合成ゴムを採用すれば、この合成ゴム弾性体3とフランジ 11、および合成ゴム弾性体3と係止部25との間における摩擦抵抗も、耳掛テンプルTの開閉抵抗(アガキ)に寄与することになる。 弾性体3による離反付勢力のみでは、所望のテンプル開閉抵抗(アガキ)が得られない場合に好適である。 【0023】また、上記実施例では、摺動屈曲部12がある一定の摺動抵抗をもって摺動移動する摺合面22を、テンプル開閉動平面と平行な、水平面形状に形成しているが、この摺合面22を、テンプル開閉動平面に対して斜面として設けるようにすれば、テンプル拡開時の抵抗(拡開アガキ)と、テンプル折り畳み時の抵抗(折り畳みアガキ)とを異ならしめることができる。 この斜面勾配を大きくすれば、耳掛テンプルTが自動的に拡開する、或いは自動的に折り畳まれる眼鏡フレームを提供することも可能となる。 【0024】さらにまた、図4に示すように、摺合面22 の所定位置に凹部22a・22bを設けることよって、耳掛テンプルTを所定の開閉位置で弾性的に保持することも可能となる。 即ち、摺合面22上を摺動移動する摺動屈曲部12が、凹部22aに嵌合すれば、耳掛テンプルTが拡開位置で弾性的に安定することになり、一方、摺動屈曲部 12が、摺合面22の凹部22bに嵌合すれば、耳掛テンプルTは折り畳み位置で、弾性的に安定することになるのである。 このように、本発明に係る眼鏡丁番機構は、弾性体3による付勢力を利用しているので、所謂「バネ丁番」として構成することも簡単にできる。 【0025】 【本発明の効果】以上、実施例をもって説明したとおり、本発明に係る丁番機構を適用した構成した眼鏡フレームにあっては、耳掛テンプルの開閉抵抗(アガキ) を、弾性体で付勢した摺動屈曲部と摺合面との押圧による摺動抵抗で得ているので、面倒な微調整が必要な「丁番ネジ」を追放することが可能となり、「ネジ緩み」に患わされることもなくなる。 しかも、眼鏡を長年使用した結果、丁番摺動部分が摩耗したとしても、ヒンジ連結部がガタつくことがないばかりか、摺動屈曲部と摺合面とは常に押圧関係にあるので、テンプル開閉抵抗(アガキ)も長期間に亙って略一定に保たれる。 つまり、殆どメンテナンスフリーな眼鏡フレームを提供することが可能なのである。 【0026】また、本発明に係る丁番機構は、弾性体の付勢力によって摺動屈曲部と摺動面とを互いに押圧せしめているので、当該摺合面を、耳掛テンプル開閉動平面に対して斜めに形成したり、この摺動面の所定位置に凹部を設けたりするなど、頗る簡単な変更だけで、耳掛テンプルを所定の開閉位置に弾性的に保持できるバネ丁番機構として、あるいは耳掛テンプルをして自動的に開閉動作を行わしめる丁番機構として構成することも簡単にできる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本実施例の眼鏡丁番機構を用いた眼鏡フレームの全体斜視図である。 【図2】同実施例の眼鏡丁番機構の構成を説明する拡大部分断面図である。 【図3】同実施例の眼鏡丁番機構の構成を説明する拡大分解蛙瞰図である。 【図4】本発明に係る実施変形例の丁番機構の構成を説明する要部拡大蛙瞰図である。 【符号の説明】 H 丁番機構 1 回動軸 11 フランジ 12 摺動屈曲部 2 軸受体 21 貫通孔 22 摺合面 22a・22b 凹部 25 係止部 3 弾性体 L レンズ R 眼鏡リム E エンドピース T 耳掛テンプル |