【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、樹脂被覆された眼鏡つるの前端部分の表面側に金属の装飾面を露出させる、眼鏡つるの装飾方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】樹脂被覆された眼鏡つるの表面に金属の装飾面を露出させる従来方法は、図12に示すように、 芯金aを樹脂製の被覆材bで被覆した後、金属装飾を施すべき表面の所要部位に凹所cを切削加工し、該凹所c に金属製の装飾片dを図13に示すように嵌込み、然る後図14に示すように、眼鏡つるの裏面側に座板eを当てがい、該座板e及び芯金aに設けたネジ孔に挿通せしめたビスfを用いて該装飾片dを凹所cにビス固定していた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようにして装飾片をビス固定した場合には、ビスの緩みによって装飾片の取付け状態が不安定化する問題があった。 又かかる眼鏡つるは、座板やビス頭が露出して見栄えが悪い問題もあった。 加えて、装飾片固定用の凹所を形成したり、座板を当てがって装飾片をビス固定する作業を要し、多くの工数がかかってコスト上昇を招く問題があった。 【0004】特に図13に示すように、眼鏡つる前端の上下全幅に亘って金属面gを露出させたときは、図10 に示すように、眼鏡前枠の側縁部hに蝶着した眼鏡つるが展開した状態において、該前端に露出する金属面gが眼鏡前枠の側縁部の端面iに当接することになる。 このように、眼鏡つる前端の上下全幅に亘る金属面gが側縁部の端面iに当接することは、眼鏡つる前端の摩耗が防止されるために、つる展開状態が変わりにくい利点がある。 しかしながら、ビスの緩みによって装飾片の取付け状態に一旦ガタ付きが生じると、眼鏡つるの展開状態がたちまち不安定化する問題が発生した。 ビスを締め直して一時的に元に戻せても再び緩み易く、このような不安定を解消できなかった。 【0005】本発明は、かかる問題点を解決しうる眼鏡つるの装飾方法の提供を目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明は以下の手段を採用する。 即ち本発明に係る眼鏡つるの装飾方法(以下方法という)は、芯金の前端部分の裏面部に、芯金前端よりも内方に控えて蝶番片を設けると共に、該芯金の前端部分の表面部に金属製の装飾片をロウ付した後、該芯金を、前記装飾片の表面を露出させて樹脂製の被覆材で被覆し、その後、前記蝶番片のロウ付部よりも前方に突出する芯金部分の所要長さ分を、 装飾片の前側の部分及び被覆材の前側の部分と共に切除することを特徴とするものである。 【0007】本発明に係る方法の好ましい態様は、芯金の前端部分の裏面部に、芯金前端よりも内方に控えて蝶番片を設けると共に、該芯金の前端部分の表面部に、形成すべき眼鏡つるの前端の上下幅に等しい幅広部を有する金属製の装飾片を、該幅広部を前向きにし且つその幅方向を上下にしてロウ付した後、該芯金を、前記装飾片の表面を露出させて樹脂製の被覆材で被覆し、その後、 前記蝶番片のロウ付部よりも前方に突出する芯金部分の所要長さ分を、装飾片の前側の部分及び被覆材の前側の部分と共に切除して、眼鏡つる前端に、その上下全幅に亘って金属面を露出させることを特徴とするものである。 【0008】 【実施例】以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。 本発明は、先ず図1に示すように、該芯金1の前端部分の表面部に金属製の装飾片2をロウ付すると共に、 芯金1の前端部分の裏面部に、芯金前端よりも内方に控えて蝶番片3をロウ付する。 なお該蝶番片3は、芯金と一体に形成されることもある。 該装飾片2は、本実施例においては、形成すべき眼鏡つるの前端の上下幅(眼鏡の使用状態における上下幅)に等しい幅広部5の後端中央部に幅狭部6を突設したT字状に形成してなり、該幅広部5を前向きにし且つその幅方向を上下にして該装飾片2を芯金表面部にロウ付する。 【0009】本発明は、該芯金1を、図6に示すように、前記装飾片2の表面7を露出させて樹脂被覆9する。 図2は、該被覆に際して用いる被覆材10を示すものであり、形成すべき眼鏡つるの樹脂被覆部の略外形をなす樹脂(各種の合成樹脂を含む)製の棒状体をなし、 前記芯金の長さよりも稍長く形成されている。 そして、 その前端部分の裏面部には、前記蝶番片3の台座部11 (図1(B))を導入させるための裏側切欠部12が設けられ、又その前端部分の表面部には、前記装飾片2を導入させる表側切欠部13が設けられている。 又図3 は、該被覆材10を保持する保持型15を示すものである。 該保持型15は、眼鏡つるの表面部を形成する下型16とこれに対し上下動して眼鏡つるの裏面部を形成する上型17とからなり、その閉鎖によって、図4に示すような、長さ方向の一端が開口した収容部19を形成する。 本実施例において、下型16は上型17よりも稍長く形成されており、前記収容部の開口端より突出する。 【0010】本発明は先ず図4に示すように、前記被覆材10を、所要温度に加熱された軟化状態で、裏側切欠部13を上向きにし且つ前端を収容部の開口20側に位置させて、収容部19に納める。 然る後、該開口20に連なる芯金受台上面21に、芯金後端22を開口20側に向け且つ蝶番片3を上向きにして芯金1を載置する。 この載置状態における芯金1の高さは、被覆材1の厚さ方向略中央に存するように設定される。 【0011】その後、芯金の長さ方向に並設された上下動する押え部材23によって芯金1を押圧すると共に、 ヒータにより所定温度に加熱された状態の該芯金1を、 押し込部材25によって、保持型15に保持された被覆材10に向けて移動させる。 その際、蝶番片3及び押し込部材25と衝合しないように前記押え部材23を順次上昇させる。 この移動によって、収容部に収容された前記被覆材10に芯金3が押入されて行き、蝶番片が上型に衝合しない状態で、図5に示すように、装飾片2が表側切欠部13に納まり且つ蝶番片3が裏側切欠部12に納まって被覆が完了し、図6、図8に示す眼鏡つる26 が得られる。 【0012】本発明に係る方法においては、蝶番片や装飾部材が、図11に示すように芯金端部に寄せて設けられるため、蝶番片の台座部を導入させるための前記裏側切欠部や、装飾片を導入させるための前記表側切欠部が設けられていなくても、軟化状態にある被覆材を切り開いて座板や装飾片が被覆材の端部分に進入できる場合もある。 【0013】樹脂被覆の他の要領としては、図7に示すように、表裏二分割された樹脂製の分割片27,29を用い、前記芯金1を挟んで両分割片27,29を貼り合わせ一体化するものを挙げることができる。 【0014】このように樹脂被覆した後、前記蝶番片のロウ付部よりも前方に突出する芯金部分1a(図8)を該ロウ付部の近傍部分で、装飾片2の前側の部分2a及び被覆材の前側の部分9a(図8)と共に切除する。 これにより、図9に示すように、眼鏡つる表面側に装飾片2の表面7が露出し、且つ眼鏡つる前端の表側部分にその上下全幅に亘って装飾片端面(金属面)30が露出した所定長さの眼鏡つるが得られる。 なお図6〜7において、切断線31を一点鎖線で示す。 【0015】図10は、前記蝶番片3を介して眼鏡前枠31の側縁部32に蝶着された眼鏡つるの展開状態を示す。 該展開状態において、眼鏡つる前端の上下全幅に亘って露出する装飾片端面(金属面)30が、前記側縁部の端面33に当接することになる。 このように、眼鏡つるの金属面30が側縁部の端面33に当接するため、眼鏡つる前端の摩耗が防止され、従ってつる展開状態における開き角度が変わりにくい。 【0016】勿論本発明は、図11に示すような、眼鏡つる前端の一部分にのみ装飾片端面(金属面)30が露出状態となる眼鏡つるも対象とする。 この場合は、同図に示すように、上下幅の小さい装飾片2を芯金1にロウ付すればよい。 【0017】 【発明の効果】本発明は以上のように構成するため、樹脂被覆眼鏡つるに凹所を切削加工して後これに嵌込んだ装飾片をビス固定する従来方法による場合に比し、装飾眼鏡つるを容易且つ能率的に製造できる。 又ビス固定しないことから、従来のようにビス頭や座板が露出することがなく、金属装飾面のみが露出する美観に優れた眼鏡つるを得ることができる。 又、装飾片が芯金と完全に一体化しているため、装飾片をビス固定する従来の眼鏡つるにおけるように、装飾片の取付け状態にガタ付きが生ずるおそれがない。 【0018】特に、眼鏡つるの前端の上下全幅に亘って装飾片端面(金属面)を露出させるように、装飾片の形状や大きさを設定したときは、かかる眼鏡つるを眼鏡前枠の側縁部に蝶着すると、つる展開状態において該金属面が側縁部端面と当接することになる。 従って眼鏡つるの開閉が繰り返されても、眼鏡つる前端の摩耗が防止され、眼鏡つるの展開状態における開き角度が不必要に大きくなるおそれがない。 又前記のように、装飾片の取付け状態にガタ付きが生じるおそれがないため、この安定したつる展開状態が維持されることとなる。 【図面の簡単な説明】 【図1】蝶番片及び装飾片が設けられた芯金を示す斜視図である。 【図2】被覆材を示す斜視図である。 【図3】保持型を示す斜視図である。 【図4】保持型に保持された被覆材に芯金を押入する要領を説明する説明図である。 【図5】被覆材に芯金を押入した状態を示す断面図である。 【図6】樹脂被覆眼鏡つるを示す断面図である。 【図7】樹脂被覆眼鏡つるの他の態様を示す断面図である。 【図8】樹脂被覆眼鏡つるを示す斜視図である。 【図9】樹脂被覆眼鏡つるを示す斜視図である。 【図10】樹脂被覆眼鏡つるの使用状態を示す平面図である。 【図11】装飾片端面が眼鏡つる前端の一部分にのみ露出状態になる眼鏡つるを示す斜視図である。 【図12】眼鏡つるの表面に金属装飾面を露出させる従来方法において、装飾片嵌込み用の凹所を樹脂被覆部に形成した状態を示す斜視図である。 【図13】凹所に装飾片を嵌め込んだ状態を示す斜視図である。 【図14】凹所に嵌め込んだ装飾片をビス固定した状態を示す断面図である。 【符号の説明】 1 芯金 2 装飾片 3 蝶番片 10 被覆材 |