【発明の詳細な説明】 【0001】 (技術分野) 本発明は光学に関するものであり、詳細には、日除け用,装飾用,広告用,およびクラブ用のホログラフ眼鏡用レンズの構造に関するものである。 このレンズの効果は、自然光および人工光のレンズ照射により生ずるカラーのホログラフ像を含むホログラフ像によって確保される。 本発明の目的は、ホログラフ像の観察が可能な角度範囲、すなわちホログラムを再生させる光の入射角範囲を拡大し、 またホログラムから再生された物体像の鮮明度を増大することにより、光の通過の際に生じるレンズの開口による色コントラストを減少させることである。 【0002】 (従来の技術水準) 装飾および広告の目的に用いられているホログラフ眼鏡においては、ホログラフ像の鮮明度と表現力とを増大するため、不均質な空間特性を伴った物体のホログラムが利用されているが、そのためにレンズの開口によるホログラムの回折効果の空間的な変化が生ずる。 すると、このことによりレンズの通過光の空間的変調が生じ、歪められた部分が形成されて使用者の不快と眼精疲労とを来すことになる。 この問題は、同様の目的のため、記録された物体の様々な要素の間で色がめまぐるしく変化する多色のホログラフ像が利用される場合にさらに大きくなる。 【0003】 現在知られている大半の型式のホログラフ眼鏡は、形成される像の鮮明度と表現力の高さと、眼鏡を通過する光の流れの空間的均質性の高さ−レンズの開口による色コントラストを減少させる−とを同時に確保することができない。 これは、このような眼鏡においては、ホログラム層が像の形成以外に、透過光線の強度を弱める機能を果たしていることによって説明される。 現在知られているレンズの構造において特殊な保護層を使用するのは、眼をまぶしい光から護るという補助機能を果たすためであるのが普通である。 そのため、保護層は均質な空間的およびスペクトル光学的特性を有しており、従って前記問題を解決することはできない。 【0004】 例えば、装飾用のサングラスが知られている(ソビエト連邦特許1761001,G02 C 7/10,11/02,1992年9月7日[1])が、これは光学的に透明なベースと保護層(ワニスタイプの膜,擦り傷に強い層,またはガラス)とを有しており、ベースの使用者側の表面には、半反射すると共に半透過するホログラフ感光乳剤層が基板に塗布されており、そこに少なくとも1つの立体ホログラムが記録されている。 ホログラムの記録は入射光束または20〜40度で感光乳剤層に入る参照波のもとで作られ、物体波は記録される物体に反射した後、層の反対側から進む。 【0005】 [1]の感光乳剤層によって、光の流れに基本的な弱化が生じるが、それはホログラムの記録を含む感光乳剤の中に形成される反射および吸収の局在中心からの数多くの反射によるばかりでなく、感光乳剤の半透明な材料にも依っている。 保護層においても光は弱められるから、必要な範囲で[1]のレンズの透過係数を補助的に変更することができる。 【0006】 [1]のこのレンズの欠点は、ホログラム層に、像の形成という基本的な機能以外に、眼に見えるスペクトル全域における通過光線の弱化という補助機能が加わっていることである。 このため、ホログラフ像の鮮明度と表現力とを同時に低下させることなく、光線の空間的変調を低減することができない。 すなわち、変調の低減を進めれば、像の鮮明度は下がって像が相対的にぼんやりとにじんだようになり、表現力が失われて眼鏡は魅力的でなくなる。 保護層はスペクトルを選択するわけではなく、層を通過する光線をスペクトル毎に均等に弱めるから、ホログラフ像の形成によって生じるホログラム層通過の空間的非均質性を補うことができない。 【0007】 本出願に最も近いものは、次のホログラフ眼鏡レンズである(PCT出願WO 96/2 5686,G 02C 7/10,11/02,1996年8月22日[2])。 これは光学的に透明なベースを有しており、その表面の一方にホログラム回折効果が最大になるスペクトル域を持つ透明な材料で作られた層が設けられ、そこに少なくとも1つの立体ホログラムが記録されている。 ホログラム層の使用者側には少なくとも1つの補正層が配されており、これは前記スペクトル域を除いて最大のスペクトル透過係数を有すると共に選択的に光を吸収する材料で作られており、レンズの照射で形成されるホログラフ像の鮮明度が増大することにより、光の通過の際に生じるレンズの開口による色コントラストを減少させる働きをする。 【0008】 前記スペクトル特性を有し、選択的に光を吸収する材料で作られた補正層を使うことによって、[1]のレンズの欠点はその大半を克服することができる。 これは、層を通過した光線のスペクトル成分の相対的な弱化によるものであるが、 このスペクトル成分は、ホログラムの最大の回折効果に対応したかなり狭いスペクトル域にある。 すなわち、使用者の眼には歪められた部分として知覚される光線の空間的な変調を生じさせるスペクトル成分の弱化による。 こうしてレンズの開口によるこれらの部分の間で色コントラストは減少し、つまり使用者の不快も低減することになる。 【0009】 しかしながら、本発明者の研究によれば、選択的に光を吸収する材料の補正層の使用によって可能になる[2]の眼鏡構造の利点は一定の限界がある。 それは、このような材料の補正層のスペクトル特性がきわめて固定的なものであり、ホログラムの最大回折効果がレンズの照射条件(再生光の入射角)の変更によってスペクトルにより変化することと関連している。 補正層における光を吸収するかなり狭いスペクトル域が、[2]におけるホログラムの回折効果のスペクトル幅に束ねられるので、回折効果のそのような変化が照射角の変化によって、ホログラム層の透過の空間的非均質性の補正を妨げる。 言い換えれば、補正層は、ホログラムを再生させる光の入射角の幅が制限されている場合、ホログラム層を通過した光の空間的変調を減少させる。 このことは、ホログラフ像の観察が可能な角度範囲を拡張したいという、装飾用およひ広告用のホログラフ眼鏡の使用者の自然な希望を考慮に入れるならば、[2]のレンズ構造の機能的可能性を著しく制限するものである。 【0010】 (発明の要点) 以上の分析から、ホログラフ像の観察が可能な角度範囲の拡張(ホログラムを再生させる光の入射角範囲の拡張)によって、光が通過する際に生じるレンズの開口による色コントラストを低下させるという課題の設定およびその解決の必然性に帰結する。 追加される課題は、前記角度範囲の拡大の際のホログラフ像の鮮明度および表現力の保存ということである。 【0011】 前記課題は、光学的に透明なベースを有し、その表面の一方に少なくとも1つの立体ホログラムが記録されている層が配され、この層の使用者側に通過光線を選択的に弱める少なくとも1つの補正層が配され、これが光の通過の際にレンズの開口によって生ずる色コントラストを減少させるのに役立つようなホログラフ眼鏡レンズにおいて、前記補正層が、立体ホログラムの回折効果が最大になるような波長を含む1つ以上のスペクトル域において指定された空間角度から入射する光線を選択的に反射し、前記1つ以上のスペクトル域以外の光線を通過させるという発明によって解決される。 【0012】 前記課題解決の本発明によるもう1つの変形は、光学的に透明な基部を有し、 その表面の一方に少なくとも1つの立体ホログラムが記録された層が配されているホログラフ眼鏡レンズにおいて、その層に1つ以上の鏡面像の反射ホログラムを記録し、これがホログラフ像の形成される空間角度以外では立体ホログラムの回折効果が最大であるような波長を含む1つ以上のスペクトル域において指定された空間角度から入射する光線を選択的に反射し、前記1つ以上のスペクトル域以外の光線を通過させ、これによって光の通過の際にレンズの開口によって生ずる色コントラストを低下させるものである。 【0013】 本発明の要点は、記録材の層に立体的回折構造を形成する立体ホログラムの特性の利用に基礎づけられている。 ホログラム層を広帯域の自然光線または人工光線で照射すると、その最大回折効果はかなり狭いスペクトル域に現れる。 照射条件を変更すると(再生光の入射角を拡大すると)ホログラムの回折効果の最大値が角度に関してもスペクトルに関しても変化する。 反射する補正層のスペクトル選択によって、層を通過した光線のスペクトル成分の相対的弱化は確保されるが、そのスペクトル成分は前記立体ホログラムの回折効果が最大になるような波長を含む1つ以上のスペクトル域内にあり、つまり使用者の眼には歪められた部分として知覚される光線の空間的変調を生じさせる成分である。 【0014】 本発明者の研究が示すとおり、照射角度の変化によって補正層による光の反射の最大値はスペクトルによっても異なるが、ホログラムの回折効果の最大値の変化も同様である。 もっとも、その際の変化の大きさとスペクトル帯の変形の程度とに完全な対応があるわけではない。 このことは補正層を、あらかじめ指定された1つ以上のスペクトル域に対し、1つ以上の鏡面像の反射ホログラムを記録した層にしてみた場合に極めて明確である。 この場合、変化は2つの層にとって1 つの物理的性質を有しているが、違いは記録された物体の様々な性質によって説明される。 補正層の反射のこのようなスペクトル帯の変化によって、選択的に光を吸収する材料の補正層(初期型のような)よりも、レンズに入射する再生光のより広い角度範囲(空間的角度)において、立体ホログラム層(ホログラフ像の形成による)の透過の空間的非均質性の補正が確保される。 【0015】 補正層による選択的な弱化、すなわち吸収ではなく反射による弱化の実現という本発明者の提案する考えは、前記反射補正層の特性の利用に基礎を置いているばかりでなく、それ以上に光の反射が実現するスペクトル域の幅の選択にも基礎づけられている。 スペクトル域の幅は、ホログラムの照射の空間的角度の幅によって、すなわちホログラムを再生させる光の空間的角度によって定められ、照射角度の変化による変移を考慮に入れて、立体ホログラム(複数の場合もある)の対応する回折の最大値を「カバー」できるようにする。 まさにこうすることによって、ここに出願されたレンズの構造の機能的可能性は、その初期型におけるよりもはるかに大きなものとなる。 というのも、立体ホログラム層を通過する光の空間的非均質性の補正が、レンズの照射のより広い空間的角度において、従ってホログラフ像の観察が可能なより広い角度範囲において確保され得るからである。 そして、このことによりレンズの開口による色コントラストの減少はより広い角度範囲で確保されることになり、こうして問題が解決することになる。 【0016】 反射補正層の利用のもう1つの重要な利点を指摘しておかなければならない。 必要な幅および位置のスペクトル域を含む層の生産技術と材料の収集とが、(初期型におけるような)選択的に吸収する材料の補正層よりもはるかに容易だということである。 後者にとっては、像の個々の要素の間で色がめまぐるしく変化する多色のホログラムを利用する場合、そのような材料収集は事実上実現不可能である。 この場合、選択的に吸収する材料の補正層において、吸収スペクトル帯を拡張して利用しても問題の解決にはならない。 なぜならそうすることによって、 もともとそのために初期型に導入されたはずの補正の性質が劣悪なものになるからである(選択性の喪失)。 【0017】 提案されている発明の重要な特徴は、立体ホログラム層の透過の空間的非均質性を低減するためには、前記スペクトル特性を伴った選択的反射機能の実現自体が重要であり、その機能を実現するレンズ構造の諸要素の構成ではないということである。 実際、前記1つ以上のスペクトル域に対し1つ以上の鏡面像の反射ホログラムを使って本発明のアイデアを実施するためには、反射ホログラムが独立した補正層に記録されるか、あるいはすでに少なくとも1つの立体ホログラムが記録されている層に記録されるかは重要ではないことが分かる。 何れの場合にも光が通過する際にレンズの開口によって生ずる色コントラストは低減し、それに応じて使用者の不快も減少する。 ホログラフ像の形成される空間角度以外の領域で一定の空間角度から入射する光線を反射するホログラムを反射用として利用した場合、反射された光線が周囲にホログラフ像と同じ色の背景を作り出すことはないので、ホログラフ像にとっても最も良い観察条件が確保されることになる。 この特徴は本発明者の企図の統一性を物語るものであり,具体的な状況に応じて様々な変形を利用する可能性を示すものである。 そして、その際、どのような変形も初期型の根本的な利点であるレンズの構成要素とその特徴の最適化とを可能にする。 【0018】 例えば、立体ホログラムの回折効果が最大であるような波長を含む特定の1つ以上のスペクトル域に対して透明な材料から立体ホログラム層を作成することができる。 そのような材料は、例えば漂白したハロゲン化銀感光乳材や重クロム酸処理ゼラチンや感光性ポリマーとすることができる。 この場合、ホログラフ像を形成する光線は、立体ホログラム層の材料そのものによっては吸収されないので、それ以外の同様な条件における最大限に可能な像の鮮明度を獲得することができる。 そればかりか、ホログラフ像はその際(記録された物体の細部とニュアンスのより良好な再生によって)よりはっきりしたものになり、像はきわめて表現力に富み、周囲の注意を眼鏡の使用者に引きつけることになる。 このようにして追加課題の解決も確保される。 【0019】 ホログラフ像の鮮明度が最大限になるのは、立体ホログラムの記録に使用される材料自体ばかりでなく、ホログラムの記録の結果として作成され、立体回折構造を形成する幾多の局在中心が特定なスペクトル域の光線を吸収しない場合である。 このような中心(例えば重クロム酸処理ゼラチン層における屈折データの局部的変化)は、その光学的特性が(吸収しないという点で)[1]の写真感光乳材タイプの材料に形成される反射吸収の中心とは異なっている。 【0020】 指摘しておかなければならないのは、本発明の実現の2つの変形実施形態に関する前記利点は、ベースの表面における立体ホログラム層の具体的配置や、ベースとの接触の性質とは関係がないことである。 【0021】 立体ホログラム層は、使用者側に向く内側面に配置してもよく、使用者に対して基板の外側面に直接配置してもよい。 立体ホログラム層はまた、使用者側に配された光学的に透明な材料の独立した特殊な基板に設けられれ、光学的接着剤層によってベースと接合することもできる。 立体ホログラム層はそれ以外にも、例えば、レンズの端面に塗布される接着剤の如き密閉材料によって、ベースとレンズの構成要素の最後のもの(基板や適当な変形の補正層)との間に密閉されてもよい。 【0022】 レンズのその他の構成要素との接触位置および性質が、このように自由に選択できることは、反射補正層が立体ホログラム層の使用者側に配されるという条件であれば、反射補正層についても言える。 このような自由度によって生産計画におけるレンズの最適化や当該課題以外の様々な課題の解決が可能になる。 【0023】 例えば、立体ホログラム層がベースの内側面に配され、基板の表面に設けられるのであれば、補正層は使用者側のベースの表面に設けることができる。 また、 前記補正層は使用者側に配され、例えば薄板の形態や視力矯正レンズの形態を持つ光学的に透明な材料で作られた特別な基板に設けることもできる。 この場合、 立体ホログラム層は基板の補正層に設けられ、光学的接着剤層によってベースと接合することができる。 しかしながら、その反対に立体ホログラム層を基板に設け、補正層を使用者側のベースの表面に設けることも可能である。 【0024】 またこの課題は、レンズのあらゆる開口において一様に光の透過を減少させる非選択的吸収材料で作られた立体ホログラム層から補正層を分離することによっても解決できる。 こうすることにより、反射補正層の実現の必要性を減少させることができる。 というのも、その場合には反射補正層は反射係数を最小限に考慮して作ることができるが、このことは層を干渉膜として作成する場合に重要である。 また、この非選択的吸収材料層は、立体ホログラム層の使用者側に配置することが肝要である。 そうすると、ホログラフ像の鮮明度と表現力とが失われず、 同時にまぶしい光からの防御にも役立つ。 この場合、この追加層を光強度によってレンズの全開口による光学的透過を変化させる光互変性材料で作成する場合、 例えば明るいところから暗いところへの使用者の移動というような、照度の急激かつ頻繁な変化にも適応することが可能になる。 【0025】 補正層と組み合わせられるこの追加層は、単に補正層の1つの実施形態と見なすこともできる。 その他の補正層の実施形態もすでに見てきた。 すなわち、補正層は特定の1つ以上のスペクトル域に対して1つ以上の鏡面像の反射ホログラムの記録された層として作成することもでき、あるいは干渉膜として作られることもできる。 このような多彩な例から、この課題の解決にあたって、この層の実施形態は重要でないことが分かる。 【0026】 もちろん、ここに提案されている発明の要点に関する上述のすべてのことは、 眼鏡の用途によってそれ以外の可能性を提供する2つ以上のホログラムレンズの使用の場合にも該当する。 例えば、これらすべてのホログラムが1つのスペクトル域で最大の回折効果を有する場合、例えばレンズ面の法線に対して40.5度から80度というような、所与の角度範囲を有する角度間隔に配された参照波の様々な角度においてこれらを記録することができる。 こうすることによって、同一のホログラフ像の変化を観察者にダイナミックに提示することができるので、 そのレンズの提示の可能性を広げることになる。 この場合、補正層は1つで十分であるが、例えばレンズによる色コントラストを最小限に抑える目的で、2つ以上の補正層を取り付けることもできる。 必要な装飾用および広告用の効果のため、角度範囲やホログラムの記録配置を変えることができることは言うまでもない。 【0027】 物体の多色ホログラフ像を得るためには、その断片の少なくとも2つのホログラムが様々なスペクトル域における最大の回折効果を持たなければならないが、 その際にもそれらは1つの角度範囲(例えば入射光束において)で記録することができる。 その場合、生産技術上の理由によっては、適当なスペクトル域におけるレンズの開口による光のコントラストを減少させるために、1つではなく2つ以上の補正層の利用が好ましい場合もあり得る。 また、あるスペクトル域でのある物体やその個々の断片のホログラムは別個の層に記録することもできるが、それは特に記録の生産技術を簡素化することになる。 この場合、レンズには1つ以上の層が追加されることが好ましいが、その各々の層には少なくとも1つの立体ホログラムが記録されており、ベースの表面の一方に同じ立体ホログラム層と一緒に配置するか、またはこの立体ホログラム層とは反対の表面に配置してもよい。 何れの場合にも、1つ以上の補正層は使用者側にある最後の立体ホログラム層に配されることになる。 例えば、立体ホログラムのすべての層がベースの内側面に設けられる場合、前記補正層はすべてベースの使用者側に設けられることになる。 【0028】 発明の要点およびその様々な変形実施形態の以上の分析は、ここに出願されているホログラフ眼鏡用レンズの一般的な特徴を裏付けると共に、その際立った特徴によって、ここに出願されている発明が新規な発明の特許条件にふさわしいことを物語っている。 【0029】 生産技術レベルの分析によって、この課題が本発明者によって初めて認識され、その解決がこの領域の生産技術にとって全く新しいものであることが分かる。 その裏付けとしては、例えば特定な光学的特性を持つ補正層という際立った特徴が、ホログラフ眼鏡に関する同様の技術分野において、本発明者の知る限り利用されていないことを挙げることができる。 ただし、本発明者のその後の研究によれば、補正層を選択的反射にすることの、選択的吸収(初期型を参照)に対する一定の利点は、ホログラムの最大回折効果以上にスペクトル域が拡張される場合である。 このようなスペクトルの具体的な大きさは、ホログラム再生光の空間的角度によって決定され、ホログラフ像の観察が期待される。 以上のことから、ここに出願されている発明が発明レベルの特許条件にふさわしいという結論になる。 【0030】 この出願の利点は、初期型の利点を実際にすべて保存しているということである。 とりわけ、本発明はレンズ構造の様々な要素およびその組合せの特徴や変形形態を幅広く許容するものであり、その際、生産技術上および構造上最適の解決策でこの課題を解決することができる。 立体ホログラム層および反射補正層に関する可能性については既に上で述べた。 補足として、光学的に透明なベースは、 通常のホログラフでない眼鏡に利用されているポリマー材やケイ酸塩ガラスによっても作ることができることを指摘しておこう。 この際、ベースは薄板の形態を取ることもできるし、例えば視力矯正用レンズの形態を取ることもできる。 後者の形態を取った場合には、視力に異常のある使用者にとっては好都合である。 また、そのような使用者に対しては別の解決策もある。 ベースが例えば平らな薄板の形態を有する場合、視力矯正レンズの形は、使用者の側に配され光学的に透明な材料で作られた補正層の基板(または本発明のもう1つの変形用の立体ホログラム層の基板)が持つことになる。 何れの場合にも、(初期型の場合と同様に) 基板に設けられる(または基板を有する補正層に設けられる)立体ホログラム層は、光学的接着剤層によってベースと接合される。 このようにして形成される統一構造は、特定の利点を有している。 ホログラム層は、この構造の中で環境から絶縁されることになるが、それによってこの層の質的劣化速度が著しく抑えられ、ホログラフ像の鮮明度と表現力の保持期限とが増大する。 また、力学的には、 この構造は「トリプレックス」タイプの構造に似ている。 すなわち、例えば強い衝撃による破損の場合には、レンズはばらばらに分解されることはなく、ひびが入るだけであるから、使用者の眼の安全も高まる。 【0031】 以上説明した発明の実施形態およびその他の変形を図1〜8の説明図に示してある。 そこにはここに出願されているホログラフ眼鏡用レンズ構成の断面図が示されているが、その際、1はベース,2は立体ホログラム層,3は選択的反射補正層,4は補正層の基板,5は光学的接着剤層,6は立体ホログラムの追加層, 7は密閉層,8は非選択的吸収材層を表している。 図9および図10には、テスト物体の立体ホログラム層の透過スペクトルの記録(図10)と選択的反射の補正層の透過スペクトルの記録(図9)とが記載されている。 【0032】 (本発明の変形実施形態) ホログラフ眼鏡用レンズ(図1)は、薄板の形(厚さ1.3mm)のケイ酸塩ガラスで作られた光学的に透明なベース1を有し、その使用者側の内側面に1つの立体ホログラムが記録された写真記録剤層2−重クロム酸処理ゼラチンで作られた(厚さ10ミクロン)−が基板に設けられている。 層2の使用者側には選択的反射補正層3が配され、さらに使用者側に平らな薄板の形態の光学的に透明な材料4の基板が付されている。 補正層3は、特定のスペクトル域用の鏡面像の反射ホログラムが記録されているように作られている。 【0033】 図2は、補正層4の基板が視力矯正レンズの形態を取っているという点で図1 とは異なる本発明の変形実施形態を示している。 【0034】 図3に示した本発明の変形実施形態では、図1とは異なり、補正層3が基板を持たず、光学的接着剤層5によって立体ホログラム層2に接合されている。 【0035】 図4に示された本発明の変形実施形態において、視力矯正レンズの形態を取っているのはベース1である。 それ以外は、図3の変形と同様である。 【0036】 図5および図8に示された本発明の変形実施形態においては、その他の変形とは異なり、立体ホログラム層2が基板の補正層3に設けられ、光学的接着剤層5 によってベース1に接合されている。 ベース1の外側面には(図5)立体ホログラムの追加層6が設けられ、補正層3の使用者側の表面には、この追加層6を通過する光の空間的変調を減少させるために第2の補正層3が設けられている。 【0037】 図6に示された本発明の変形実施形態では、補正層3がレンズの全開口の一様な光学的透過を減少させる非選択的吸収材の層8によって、立体ホログラム層2 から分離されている点でのみ図3と異なる。 【0038】 図7のベース1は湾曲した薄板の形態を有しており、その内側面の基板に立体ホログラム層2が設けられており、補正層3が基板の層2に設けられている。 これらの要素の端面に塗布された接着剤層7が層2を隔離し、その特性の劣化速度を遅らせる。 【0039】 これらのレンズは眼鏡フレームの形に切断され、また研磨されて、フレームに嵌め込まれた後に使用される。 【0040】 ホログラムを再生させる光の入射角度範囲を拡張するために、ホログラム層を通過した光の空間的変調の補正の可能性をチェックするための実験が行われたが、その要点は以下の通りである。 【0041】 写真記録媒体(ガラス基板上の厚さ約10ミクロンの重クロム酸処理ゼラチン層)に波長514nmの試験物体のホログラムを記録した。 平らな波面の参照光の感光板の表面に対する入射角はブラッグ角に等しかった(感光板の表面による好ましくない光の乱反射を除くため)。 撮影は次のように行われた。 物体に対する照明は感光板を通過した参照光によって行われた。 試験物体としては、30度の範囲内で様々な角度で反射する1組の鏡を用いた(それ以上の範囲は、眼鏡のフレームに嵌め込まれたそのようなホログラムを通して観察する人の眼にはとらえられない)。 この種の「鏡」の物体は、ホログラムの記録に際してホログラムを通過した「白色」光の空間的変調という形で最も大きな反射を生ずるが、その光はホログラムを通して眼で観察する際に大きな色コントラストを伴う。 得られたホログラムは、50%以上の回折効果を持っていた。 分光測光器によって、様々な角度から照射した際のこれらのホログラムの透過(反射)のスペクトル特性が得られた。 例えば、再生光の垂直入射では、最大70nmの0.5のレベルの帯の幅で波長565nmの場合、最大反射(Tの最小透過)に達した(図10の一点鎖線を参照)。 再生光の入射角を垂直面から30度まで拡大すると(観察角度の変更)、反射の最大値は波長の減少の側におよそ35nm移行し(図10の点線を参照)、従って通過光の色も変化する。 このように、鏡面像のホログラムの記録からはっきりと表されたスペクトル帯が形成され、その範囲内では、この帯の外よりも透過がはるかに少ない。 つまり、色コントラストが生じる。 変調を補正するため、この目的のために特別に用意された補正層が使われた。 これは、ホログラフ像が形成される空間角度以外の領域で、垂直面から30度の幅の角度範囲から入射する光線を選択的に反射する多層の絶縁干渉鏡であった。 このような鏡のスペクトル透過(図9)は、最小限の透過帯(あるいは複数の帯)が(最大限の反射は100%に近い)、対応するホログラムの回折効果のスペクトル帯を覆うように形成された。 約100nmの幅で反射係数95%以上で波長570nmの場合、 帯の最大値に達した。 再生光線の入射角を帯の30度まで変更すると、実質的に同じ幅で、立体ホログラム層の最小限の透過と同じ側に25nm移行した。 従って、ホログラムの反射(回折効果)のスペクトル帯を補正層のスペクトル帯で覆うことは、必要な角度範囲で確保され、前記変調の効果的な補正がなされた。 すなわち、ホログラムとそれに対応する補正層を同時に観察した場合、レンズの開口には眼に見える歪められた部分が存在しなかった。 同様な実験が、別の波長のホログラムの記録で行われ、また再生光の別の角度範囲のために行われ、またホログラフィクな方法で用意された補正層に対しても行われた。 【0042】 ここに出願されているホログラフ眼鏡用レンズは以下のように働く。 自然光または人工光がベース1に入射し、そこを通過して層2の内部に記録されたホログラムで吸収されずに回折する。 このホログラムで分散された光線は、眼に見える範囲の緑色部分の狭いスペクトル域で(図10参照)鮮明なホログラフ像(例えばコウモリ)を形成し、それを観察者は眼鏡の2つのレンズの開口に見る。 層2 を通過した最大のスペクトル域の光線は補正層3で反射する。 眼に見える残りの部分にある(図9参照)層3のスペクトル域の外にある光線は、層3で反射する度合いが低く、使用者はレンズを通して濃紫褐色の色調の回りの風景を観察することができるが、その際、層3がなければ見えるはずの光線の空間変調によって生ずる歪められた部分にわずらわされることがない。 【0043】 引用された例や本発明の様々な変形実施形態が網羅的ではないことを指摘しておかなければならない。 しかし、それと同時に、これらは本発明を限定するものと見なしてはならない。 それらはすでに述べたように、本発明の本質をよりよく理解するための例に過ぎず、本発明の本質は特許請求の範囲に最も完全な形で記載されている。 【0044】 (産業上の利用可能性) 本発明は、日除け用,装飾用,広告用およびクラブ用のホログラフ眼鏡の製造に利用することができる。 本発明の上述のすべての変形を実施する際に、特定の要素,材料,物質が利用されるが、それらの生産は工業的に開発されている。 幾多の層を様々な基板に設ける方法およびホログラムの記録は、当技術分野の専門家にはよく知られている。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の実施形態を示す図である。 【図2】 本発明の実施形態を示す図である。 【図3】 本発明の実施形態を示す図である。 【図4】 本発明の実施形態を示す図である。 【図5】 本発明の実施形態を示す図である。 【図6】 本発明の実施形態を示す図である。 【図7】 本発明の実施形態を示す図である。 【図8】 本発明の実施形態を示す図である。 【図9】 試験物体の立体ホログラム層の透過スペクトルの記録を示す図である。 【図10】 選択的反射補正層の透過スペクトルの記録を示す図である。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I 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