【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ガス通路内を流れるガス流の偏向状態またはガス流量の変化状態などを感熱抵抗素子を用いて電気的に検出するガスフローセンサに係り、特に、半導体基板を用いたマイクロマシニング加工によってガス通路が形成される半導体ガスフローセンサに関する。 【0002】 【従来の技術】ガスフローセンサの一種として、ポンプによってガス通路内にガスを定常的に送りながら、センサ本体に角速度が作用したときのガス通路内を流れるガス流の偏向状態を、そのガス通路内にガス流の偏向方向に並設された一対の感熱抵抗素子としてのヒートワイヤによって検出するようにしたガスレートセンサがある。 最近、この種のガスレートセンサにあっては、ガス通路およびそのガス通路内に設けられるヒートワイヤ対からなるセンサ本体部分が、IC製造技術を利用した半導体基板のマイクロマシニング加工によって形成されたものが開発されている(特開平3−29858号公報参照)。 【0003】この種のガスレートセンサにおけるセンサ本体としては、図2ないし図4に示すように、半溝41 がエッチングによって形成された下側半導体基板1と上側半導体基板2とを、それぞれの半溝41をつき合せるように重ねて、両者を接合させることによってガス通路4を構成するようにしている。 【0004】しかして、このようなものでは下側半導体基板1と上側半導体基板2とを接合する際、その接合を強固にするとともに、その接合部からガスが漏れることがないように気密性を確保する必要がある。 【0005】従来、半導体基板を接合する技術として、 圧力センサを構成するべくマイクロマシニング加工された2つの半導体基板を接合するに際して、その接合を強固に、かつ気密性をもって密着性良く行わせるための半田材料としてガラスを用いて、2つの半導体基板を重ね合せて加圧した状態で約470℃まで加熱して両者を接合させるようにしたものがある(特開昭58−5647 6号公報参照)。 【0006】しかし、そのような接合方法によれば、圧力センサを構成する2つの半導体基板を接合する場合には特に問題ないが、ガス通路内に感熱抵抗素子が配設されているガスフローセンサの場合、2つの半導体基板を接合するための半田材料としてガラスを用いて高温で加熱すると、その感熱抵抗素子の特性が損なわれてしまうという問題がある。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】解決しようとする問題点は、半導体ガスフローセンサにあって、ガス通路を形成するべくマイクロマシニング加工された2つの半導体基板を重ねて、半田材料を用いて圧力を加えながら加熱することにより両者を密着性良く接合する場合、その半田材料の加熱温度が高くて、ガス通路内に配設される感熱抵抗素子に悪影響を与えてしまうことである。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも一方にガス通路となる溝がエッチングによって形成された2つの半導体基板を重ねて接合することによってガス通路を形成するようにした半導体ガスフローセンサにあって、その各半導体基板を強固に、かつ気密性をもって密着性良く接合する目的をもって、また、接合のための半田材料の加熱温度がガス通路内に配設される感熱抵抗素子に悪影響を与えることがないように、比較的低い加熱温度で合金化することのできる異種金属を半田材料として用いて、各半導体基板の接合面に異種金属による半田材料をそれぞれ膜形成したうえで、加圧した状態で加熱することによって両半導体基板を合金接合させるようにしている。 【0009】 【実施例】以下、半導体ガスレートセンサの場合について、本発明を説明する。 【0010】半導体ガスレートセンサとしては、そのセンサ本体が、図2ないし図4に示すように、半溝41がエッチングによって形成された下側半導体基板1と上側半導体基板2とを、それぞれの半溝41をつき合せるように重ねて、両者を接合させることによってガス通路4 を構成するようにしている。 【0011】そして、下側半導体基板1には、その下側半導体基板1をエッチングしてガス通路4にかかるブリッジ部6が形成され、そのブリッジ部6の上面には一対のヒートワイヤ51,52がパターン成形されている。 【0012】なお、ここでは、下側半導体基板1と上側半導体基板2とにはそれぞれエッチングにより半孔31 が形成されており、それらの半孔31をつき合せることによってマイクロポンプから送られてきたガスをガス通路4内に噴出させるノズル孔3が構成されている。 【0013】しかして、このようにセンサ本体が構成された半導体ガスレートセンサにあっては、図示しないマイクロポンプの駆動によってセンサ本体におけるノズル孔3からガス通路4内にガスが定常的に層流として送り込まれ、センサ本体に角速度が作用したときのガス流の偏向状態を、そのガス通路4内に設けられた一対のヒートワイヤ51,52によって各抵抗値の変化としてとらえて、基準抵抗とともに構成されたブリッジ回路から角速度検出信号が得られることになる。 【0014】このように構成されたものにあって、本発明では、下側半導体基板1と上側半導体基板2とを重ねて接合する場合、比較的低い加熱温度で合金化することのできる異種金属を半田材料として用いて、各半導体基板の接合面に異種金属による半田材料をそれぞれ膜形成したうえで、加圧した状態で加熱することによって両半導体基板1,2を合金接合させるようにしたことを特徴としている。 【0015】具体的には、図1に示すように、下側半導体(Si)基板1と上側半導体(Si)基板2との各接合面に、接合基材としてのチタンTiをそれぞれ蒸着によって膜形成したうえで、そのうえから、下側半導体基板1側には加熱によって合金化される異種金属からなる半田材料の一方としての金Auを蒸着によって膜形成し、上側半導体基板2側にはその半田材料の他方としての錫Snを蒸着によって膜形成するようにする。 【0016】チタンTiからなる接合基材は、合金接合された下側半導体基板1と上側半導体基板2との密着性を向上させるために必要に応じて設けられるもので、チタンTiの代わりにニッケルNiや白金Ptなどを用いてもよい。 【0017】そして、例えば、Ti層を500nm程度の厚さとしたうえで、Auが20%,Snが80%の合金となるように、Au層を1μm,Sn層を0.66μ m程度の厚さに形成し、下側半導体基板1と上側半導体基板2とを重ねた上に1Kg/cm 2程度の錘をのせて加圧した状態で、約250〜400℃の温度で5分間加熱することにより、半田材料の合金化が均一に進行して、下側半導体基板1と上側半導体基板2との接合が強固に、かつ気密性をもって密着性良く行われる。 【0018】その際、半田材料の合金化が進行するにしたがって接合強度が強くなり、またAu層とSn層との当接面が消失して気密性が確保されるようになる。 【0019】また、AuおよびSnからなる半田材料を加熱して合金化を図る際、単体材料の融点よりも低い温度で合金化を進行させることができるので、低温加熱が可能になり、その加熱によってヒートワイヤ51,52 の感熱抵抗特性を何ら劣化させることなく、下側半導体基板1と上側半導体基板2とを合金接合させることができるようになる。 【0020】したがって、加熱温度を適正に選定することにより、半田材料の合金化を良好に進行させながら、 しかも半田材料がやわらかくなって接合面からはみ出すようなことなく、その合金接合を最適に行わせることができる。 【0021】その際、加熱温度が250℃よりも低いと合金化の進行が悪くなって接合状態が低下し、また、4 00℃よりも高いと半田材料が接合面からはみ出してしまう。 【0022】なお、下側半導体基板1と上側半導体基板2とを接合させる半田として単体材料を用いるのでは、 その半田材料がやわらかくなるまで加熱する必要があり、半田材料が接合面からはみ出してしまう。 【0023】 【発明の効果】以上、本発明による半導体ガスフローセンサにあっては、少なくとも一方にガス通路となる溝がエッチングによって形成された2つの半導体基板を重ねて接合することによってガス通路を形成するようにした、ガス流の変化を感熱抵抗素子によって検出する半導体ガスフローセンサにおいて、各半導体基板の接合面に、加熱によって合金化される異種金属からなる半田材料をそれぞれ膜形成したうえで、加圧した状態で加熱することによって両半導体基板を合金接合させるようにしたもので、その各半導体基板を強固に、かつ気密性をもって密着性良く接合することができ、また、比較的低い加熱温度で半田材料を合金化することができて、ガス通路内に配設される感熱抵抗素子に悪影響を与えることなく各半導体基板の接合を行わせることができるという利点を有している。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例による半導体ガスフローセンサにおけるガス通路となる溝が形成された2つの半導体基板を重ねて接合する状態を示す正面図である。 【図2】半導体ガスフローセンサのセンサ本体の一構成例を示す斜視図である。 【図3】図2に示したセンサ本体における下側半導体基板の平面図である。 【図4】図2に示すセンサ本体の正断面図である。 【符号の説明】 1 下側半導体基板 2 上側半導体基板 3 ノズル孔 4 ガス通路 51 ヒートワイヤ 52 ヒートワイヤ |